特許第6130855号(P6130855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テンスコン リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6130855-張力印加装置 図000002
  • 特許6130855-張力印加装置 図000003
  • 特許6130855-張力印加装置 図000004
  • 特許6130855-張力印加装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130855
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】張力印加装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 31/04 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   F16B31/04 Z
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-548183(P2014-548183)
(86)(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公表番号】特表2015-501914(P2015-501914A)
(43)【公表日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】GB2012053167
(87)【国際公開番号】WO2013093443
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年11月16日
(31)【優先権主張番号】1121976.3
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516106715
【氏名又は名称】テンスコン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】セニー スタン
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−110807(JP,A)
【文献】 特開昭59−161278(JP,A)
【文献】 米国特許第05075950(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の予荷重までボルト継手内のスタッドに張力印加するための装置であって、
前記スタッドと係合するために適合されるロッキング手段と、
筒状の形状を有する取外し可能ブリッジ部材であって、その内側の空間に位置する前記ロッキング手段を少なくとも部分的に閉囲し、取外し可能ブリッジ部材を通して前記スタッドを受取るように配置される、取外し可能ブリッジ部材と、
前記ブリッジ部材を通して前記ロッキング手段を作動させるように動作可能な取外し可能アクチュエータと、
前記ブリッジ部材の荷重担持表面に張力を印加して、前記スタッドに張力を伝達するように構成される取外し可能張力印加手段と、を備え、
前記アクチュエータは、前記スタッド内の前記所望の予荷重が達成されると、前記ロッキング手段をロックするように動作可能であり、
前記取り外し可能ブリッジ部材の一端をなす開口の外周は、前記ボルト継手の表面に設けられた凸部に係合可能となっている
装置。
【請求項2】
前記ロッキング手段はネジ山を切られたナットである請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ナットは、前記ナットの本体を貫通する少なくとも1つの半径方向ボアホールを備える請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ナットは複数の半径方向ボアホールを備える請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ブリッジ部材は、少なくとも1つのアパーチャを備え、前記少なくとも1つのアパーチャを通して、前記アクチュエータが前記ロッキング手段に着脱可能に係合する請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記半径方向ボアホールの少なくとも1つに係合するように適合される細長いロッドを備える、請求項3又は請求項4に従属するときに請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記張力印加手段は、ジャックナット或いは複数のジャックボルト又はキャップスクリューからなるマルチジャックボルトテンショナを備える請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記張力印加手段と前記ブリッジ部材との間に取外し可能に配設されるワッシャを更に備える請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記ブリッジ部材に対する前記張力印加手段の作用は、前記スタッドの長さに沿う前記スタッドの弾性変形をもたらす請求項1からのいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
マルチジャックボルトテンショナと共に使用するための張力印加キットであって、
ボルト継手内にスタッドを係合させるためのロッキング手段と、
筒状の形状を有するブリッジ部材であって、その内側の空間に位置する前記ロッキング手段を少なくとも部分的に閉囲し、ブリッジ部材を通して前記スタッドを受取るように配置され、前記テンショナ作用下で張力を前記スタッドに伝達するように動作可能である、ブリッジ部材と、
前記ブリッジ部材を通して前記ロッキング手段を作動させ、前記スタッド内の所望の予荷重が達成されると、前記ロッキング手段をロックするように動作可能であるアクチュエータとを備え
前記ブリッジ部材の一端をなす前記開口の外周は、前記ボルト継手の表面に設けられた凸部に係合可能となっている
張力印加キット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、張力印加装置に関し、特に、ボルト継手内のスタッド及びボルトに張力印加するための装置及びキットに関する。
ボルト継手が、正しい圧縮力又は荷重と共に正しく張力印加されるか又は固定されない場合、これらの継手が、最終的に故障するか又はそうでなければ何らかの形態の機械的疲労を受ける可能性があることが一般的に知られている。相応して、ボルト継手が正しく張力印加されない場合におそらくは生じると思われる多数の機械的問題がしたがって存在する。
【0002】
多くのボルト継手は、スタッド、ボルト、ネジ山を切られたロッド、又は両端に2つの従来型ナットを有するシャフトによって共に締結され、その後、共に締付けられて、継手内に所望の予荷重張力(preload tension)が得られる。しかし、従来のスタッド締付け技法に関連する主要な問題の1つは、スタッドの直径が増加するにつれて、スタッドを締付けるために必要とされるトルクの量が直径の3乗として指数関数的に増加することである。その結果、通常、手で締付けることができる最大サイズのスタッド及びボルトは約3cmである。
【0003】
この問題に対処するために、従来技術は、スタッド又はボルトを締付けるために過剰な量のトルクを必要とすることなく、スタッド又はボルトに張力印加する幾つかの方法を提供する。1つのよく使うデバイスは、従来のナットを直接置換するものである「マルチジャックボルトテンショナ(multi−jackbolt tensioner)」として知られるものである。そのデバイスは、ナットの本体又はボルトヘッドを通してねじ込まれる複数のジャックボルト又はキャップスクリューを使用することによって、新しいか又は既存のスタッド、ボルト、ロッド、又はシャフト或いは工作物上に簡単にねじ込まれ得る。ボルト継手の張力印加は、単純なハンドツールによって締付けるのに十分に小さいジャックボルトのそれぞれにトルクを印加することによって達成される。ジャックボルトは、硬化ワッシャを押付け、硬化ワッシャは、予荷重を、最終的にスタッド又はボルト内に、その結果ボルト継手上に伝達する。
【0004】
こうして、約100MN以上までの集団的荷重が、トルクレンチ又は空気圧ツール等のハンドツールだけを使用することによって達成されることができる。したがって、特に、ボルト継手が純粋な張力(すなわち、ねじり歪なし)で締付けられ、単純なツールだけが締付けのために必要とされる点で、マルチジャックボルトテンショナの使用が、他の締付け技法に優って多くの利益を提供することが明らかであり、一方、マルチジャックボルトテンショナはまた、大幅なダウンタイムを発生させることなく、(マルチジャックボルトテンショナがナットを直接置換するものであるため)制限された空間内に設置され得る。
【0005】
しかし、マルチジャックボルトテンショナは、所望の荷重までボルト継手を圧縮するための確実でかつ安全なデバイスであるが、マルチジャックボルトテンショナが(複数の部品を必要とし、作製中に正確な機械加工を必要とするため)高価なコンポーネントであり、1つのテンショナが、張力印加される各スタッド又はボルトについて永久的に必要とされるという欠点を実際に持つ。したがって、機械的構造が多数のボルト継手を備える場合、ボルト継手のそれぞれを締付けるためのコストは、法外である場合がある。その理由は、テンショナが、ボルト継手から取外されない場合、後続のスタッド又はボルトのために再使用されることができないからである。
【0006】
したがって、各継手について永久的なテンショナを有する必要なく、複数のボルト継手に張力印加するための再使用可能な張力印加装置及びキットを提供することによって、当技術分野の上記問題の全部ではないが幾つかに対処することが本発明の目的である。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、所望の予荷重までボルト継手内のスタッドに張力印加するための装置が提供され、装置は、
スタッドと係合するために適合されるロッキング手段と、
取外し可能ブリッジ部材であって、ロッキング手段を少なくとも部分的に閉囲し、取外し可能ブリッジ部材を通してスタッドを受取るように配置される、取外し可能ブリッジ部材と、
ブリッジ部材を通してロッキング手段を作動させるように動作可能な取外し可能アクチュエータと、
ブリッジ部材の荷重担持表面に張力を印加して、スタッドに張力を伝達するように構成される取外し可能張力印加手段とを備え、
アクチュエータは、スタッド内の所望の予荷重が達成されると、ロッキング手段をロックするように動作可能である。
【0008】
スタッドについて所望の予荷重が達成された後に取外し可能である少なくとも幾つかのコンポーネントを備える張力印加装置を提供することは、複数のスタッドに張力印加するために単一テンショナ(例えば、マルチジャックボルトテンショナ等)だけが必要とされるため、特に有利であることがわかる。対照的に、従来の技法は、それぞれスタッドについてかつ全てのスタッドについて永久的なテンショナを必要とし、そのテンショナは、スタッドが所望の予荷重まで張力印加された後でも、所定の場所に留まらなければならない。
【0009】
したがって、本発明は、同じテンショナの再使用を可能にし、そのことが、複数のテンショナを取得しなければならないコストを回避する。
本明細書における用語「スタッド(stud)」の使用が、全ての種類のスタッド、ボルト、ネジ山を切られたロッド及びシャフトを包含することを意図されることが認識され、実際には、本発明の装置は、必要とされる張力までボルト継手を圧縮するために通常使用される全ての種類の締結デバイスと共に使用されることができ、例えばマルチジャックタイプのテンショナは、継手に張力を印加するために従来的に使用される。
【0010】
「ボルト継手(bolted joint)」によって、本発明者等は、制限なしで共に締結又は圧縮されることができる2つ以上のコンポーネント又は機械的組立体間の任意の機械的継手、結合、又は接続を意味する。
【0011】
特に好ましい実施形態では、ロッキング手段は、ネジ山を切られたナットであるとすることができる。ナットは、好ましくは、スタッドのネジ山に往復方式で係合するためにネジ山が切られる。こうして、ロッキング手段は、その後、スタッド上に単にねじ込まれることができる。
【0012】
ナットは、円形又は六角形断面を有することができる。しかし、任意の適した断面を使用することができる。
好ましくは、例示的な実施形態では、ナットは、円形断面を有し、ナットの本体を貫通する少なくとも1つの半径方向ボアホールを備え、最も好ましくは、複数の半径方向ボアホールを備える。「半径方向ボアホール(radial bore hole)」によって、本発明者等は、ナットの本体を貫通する好ましくは円形のチャネルであって、それにより、チャネルが、ナットの長手方向軸にほぼ垂直である軸を有する、好ましくは円形のチャネルを意味する。ボアホールは、ナットの本体を完全に貫通して延在する(すなわち、両端で開口する)ことができる、そうでなければ、本体を部分的にだけ貫通して延在する(すなわち、一端、すなわち、ナットの内部表面に最も近い端部で閉鎖する)ことができる。
【0013】
ボアホールの機能は、アクチュエータが、ボアホールに着脱可能に係合して、ナットが締付けられるようにナットがスタッド上で回転される(すなわち、ねじ込まれる)ことを可能にすることができる点で、取外し可能アクチュエータを受取ることである。こうして、ロッキング手段は、以下でより詳細に論じるように、所望の予荷重がスタッド内で達成されるとロックされることができる。
【0014】
好ましい実施形態では、取外し可能ブリッジ部材は、形状が実質的に円柱(例えば、管状)であり、好ましくは、開口端と閉鎖端を備える。開口端の外周「リップ(lip)」は、好ましくは、張力印加されるボルト継手の平坦表面に係合するための「表面(surface)」として働き、一方、閉鎖端は、好ましくは、スタッドを受取るための開口ボア(例えば、円形アパーチャ)を含む。換言すれば、ブリッジ部材は、スタッドがブリッジ部材の長手方向軸を通りかつそこに沿って通過するようにスタッドを覆って設置されることができる。
【0015】
ブリッジ部材は、スタッドを覆って設置されると、ロッキング手段を少なくとも部分的に閉囲する(又は覆う)。好ましい実施形態では、ブリッジ部材は、ロッキング手段に着脱可能に係合するためにアクチュエータがそこを貫通することができる少なくとも1つのアパーチャ又は窓を備える。アパーチャは、好ましくは、ブリッジ部材の側壁内に位置付けられ、通常、ブリッジ部材のカットアウト又はカットアウェイ部分の形態をとることになる。実際には、特に好ましい実施形態では、アパーチャは、「開口端(open edge)」を有する実質的に「U形状の(U−shaped)」カットアウトであるとすることができ、そのカットアウトはブリッジ部材の開口端の外周リップまで延在する。
【0016】
しかし、任意の形状又は形態のアパーチャを使用することができることが認識される。ただし、ロッキング手段に対するアクチュエータのアクセスを可能にする場合に限る。更に、本装置の特定の用途及び実施態様に応じて、2つ以上のアパーチャが使用されて、ロッキング手段に対するより多くのアクセスを可能にすることができる。
【0017】
特に好ましい実施形態では、取外し可能アクチュエータは、半径方向ボアホールの少なくとも1つに係合するように適合される細長いロッドを備える。細長いロッドは、好ましくは、硬化鋼から作製され、最も好ましくは、従来の「トミーバー(tommy bar)」である。したがって、アクチュエータは、ブリッジ部材のアパーチャを通して挿入されて、ボアホールに係合することができ、ロッキング手段(例えば、ナット)が回転されることを可能にする。アパーチャに入るよう回転されたアクチュエータは、その後、取外され、次のボアホールに(再)挿入されることができる。こうして、ナットは、ナットに対するトミーバーの反復した適用によって回転され締付けられることができる。
【0018】
トミーバー及び円形ナットの使用は、特に有利である。その理由は、ナットとブリッジ部材との間に小さな内部(外周)ギャップだけが存在するようなサイズに、ナット及びブリッジ部材がそれぞれ作られることを可能にするからである。結果として、ブリッジ部材の「フットプリント(foot print)」(すなわち、直径)は、比較的小さく維持されることができ、本装置が、制限された空間又は設置が難しい場所で使用されることを可能にする。対照的に、ナットが従来の六角形ナットであり、アクチュエータがレンチ又はスパナである場合、ナットとブリッジ部材との間の間隔は、レンチがアパーチャを通してナットに係合することを可能にするよう、かなり大きくなる必要があることになる。こうした配置構成は、本発明によって排除されないが、これは好ましくない。しかし、こうした配置構成が、一部の用途及び/又は実施態様で使用され得ることが可能である。
【0019】
取外し可能張力印加手段は、好ましくは、ジャックナット或いは複数のジャックボルト又はキャップスクリューからなるマルチジャックボルトテンショナを備える。実際には、例示的な実施形態では、テンショナは、理想的には、従来技術で知られるように、キャップスクリューのピッチ円直径を有するナットタイプマルチジャックボルトテンショナである。
【0020】
マルチジャックボルトテンショナの使用は、このタイプのテンショナの多くの利点が本用途において利用されることを可能にするため有益である。したがって、スタッドは、キャップスクリューのそれぞれに対する比較的小さなトルクだけの印加によって、比較的大きな予荷重張力まで張力印加されることができる。結果として、単純なハンドツール又は空気圧デバイスだけが、必要とされる張力までボルト継手に荷重印加するために使用される必要がある。更に、マルチジャックボルトテンショナが純粋な張力でスタッドを締付けるため、ねじり歪が存在しない。
【0021】
装置は、張力印加手段とブリッジ部材との間に取外し可能に配設されるワッシャを更に備えることができ、それにより、ワッシャはブリッジ部材の閉鎖端に当接する。ワッシャは、好ましくは、硬化鋼から作られ、キャップスクリューがテンショナ内で締付けられるときにブリッジ部材の閉鎖端表面に対する損傷を防止するのに役立つ。
【0022】
使用時、本装置は、キャップスクリューのそれぞれにトルクを印加することによって、所望の予荷重までスタッドに張力印加する。ブリッジ部材は、好ましくは、ボルト継手の頂上に載り、ロッキング手段を覆い、ロッキング手段は、スタッドに係合し(例えば、ナットがスタッド上にねじ込まれた)、ボルト継手の表面に対して締付けられた。硬化ワッシャは、好ましくは、ブリッジ部材と張力印加手段(例えば、マルチジャックボールテンショナ)との間に着座し、張力印加手段は、スタッド上にねじ込まれ、ブリッジ部材の上部のワッシャに載る。
【0023】
スタッドが荷重下に設置されると、スタッドがフックの法則に従ってその弾性限界内で弾性的に延長又は伸長する(すなわち、スタッドが、その長さに沿って弾性変形を受ける)ことがわかる。スタッド内の所望の予荷重は、テンショナ内の複数のキャップスクリューの間で分割され得る。その理由は、キャップスクリューに関する個々の荷重が、結合されて、スタッドにかかる総合荷重を形成するからである。各キャップスクリューについて必要とされる個々の荷重を知ることによって、トルク設定が、確立された荷重値の表から導出されることができ、それにより、単純なハンドツール(たとえば、トルクレンチ)が使用されて、キャップスクリューのそれぞれに必要とされるトルクを印加することができる。
【0024】
ボルト継手の確実な張力印加を保証するために、キャップスクリューは、好ましくは、キャップスクリューのどんな非対称荷重印加も回避する注意深いシーケンスで締付けられる。したがって、キャップスクリューが、好ましくは星型イメージ上の点に似ている順序でキャップスクリューが締付けられるため、キャップスクリューを締付けるための「星型(star)」シーケンスが、好ましくは採用される。例えば、対角線上で対向するキャップスクリューが次々に締付けられ、それにより、継手の対称荷重印加が達成される。
【0025】
初期荷重印加後、スタッドが延長したため、ナットは、ボルト継手の表面にもはや当接しない。実際には、スタッド内の張力の結果として、ナットとボルト継手の表面との間にエアギャップが実際に形成される。アクチュエータが、その後、ナットに再挿入されて、ナットを好ましくは更に締付け、それにより、エアギャップをなくし、ナットがボルト継手の表面に着座することを可能にすることができる。キャップスクリューの更なる締付けが、その後実施されることができ、所望の予荷重がスタッド内で達成されるまで、上記プロシージャが、必要に応じて何度も繰返される。
【0026】
予荷重が獲得されると、スタッド内の張力が(ロッキング手段の作用によって)ボルト継手の圧縮又は荷重印加を維持するため、キャップスクリューは、その後、緩められることができる。テンショナ、ブリッジ部材、及びアクチュエータは、その後、継手をひとまとめにするためにロッキング手段を所定場所に残したまま、全てボルト継手から取外されることができる。
【0027】
結果として、取り外し可能コンポーネントは、その後、有利には、別のテンショナを必要とすることなく、更なるボルト継手を締付けるために再使用されることができる。再使用されない唯一のコンポーネントは、ロッキング手段であるが、これは、別のテンショナほどには置換するのに精巧(又は高価)でない。もちろん、ロッキング手段は、その後、ボルト継手を圧縮下に維持するためにもはや必要でなくなる場合、再使用されることができる。
【0028】
ロッキング手段の使用は、コストを節約するだけでなく、ボルト継手の容易なメンテナンスを可能にする。その理由は、継手の圧縮を解除することが必要になる場合、従来のテンショナの複数のキャップスクリュー(それ自体、解除するのが非常に迅速である)と対照的に、1つのコンポーネントだけが緩められる必要があるからである。したがって、本発明は、従来技術に優るかなりの利点を提供し、メンテナンス及び修理等についてのダウンタイムを最小にし得る。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、マルチジャックボルトテンショナ等のタイプのテンショナと共に使用するための張力印加キットが提供され、キットは、
ボルト継手内にスタッドを係合させるためのロッキング手段と、
ブリッジ部材であって、ロッキング手段を少なくとも部分的に閉囲し、ブリッジ部材を通してスタッドを受取るように配置され、テンショナの作用下で張力をスタッドに伝達するように動作可能である、ブリッジ部材と、
ブリッジ部材を通してロッキング手段を作動させ、スタッド内の所望の予荷重が達成されると、ロッキング手段をロックするように動作可能であるアクチュエータとを備える。
【0030】
キットは、最も好ましくは、複数の個々のジャックボルト又はキャップスクリューを有する種類の従来のナットスタイルマルチジャックボルトテンショナと共に使用される。しかし、認識されるように、任意の適したテンショナが、本発明のキットと共に使用されることができる。
【0031】
本発明に関連して述べる態様又は実施形態はいずれも、互いに排他的でなく、したがって、1つの態様及び/又は実施形態の特徴及び機能が、制限なしで、他の実施形態の特徴及び機能に関して交換可能に又は付加的に使用されることができることが認識される。
【0032】
本発明の実施形態は、ここで、例としてまた添付図面を参照して詳細に述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の特に好ましい実施形態による張力印加装置の側面断面図である。
図2図1の実施形態で使用される例示的なテンショナの平面図である。
図3図1の装置の部品の上部断面図である。
図4】スタッドが所望の予荷重まで張力印加された後の、図1の張力印加装置の取外し不能部品の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照すると、本発明による張力印加装置10の特に好ましい実施形態が示される。図1に示す装置が一定比例尺に従って描かれておらず、したがって、図が、例証のためにだけ意図されるが、これが、任意の例示的なボルト継手を表現し得ることが理解される。
【0035】
張力印加装置10は、スタッド14と係合するために適合されるロッキング手段12と、ロッキング手段14を閉囲又は覆うように配置される取外し可能ブリッジ部材16と、ブリッジ部材16を通してロッキング手段14を作動させるように動作可能な取外し可能アクチュエータ18とを備える。
【0036】
更に、張力印加装置10はまた、この例ではキャップスクリュー22のピッチ円直径を有するナットタイプマルチジャックボルトテンショナである取外し可能張力印加手段20を備える(しかし、2つのキャップスクリューだけが図1の断面図に示される)。
【0037】
図1に示すように、張力印加装置10は、それぞれの当接フランジ24a及び24bを有する例示的なボルト継手24に対して使用するときに配備される。スタッド14は、フランジ24a、24bを貫通し、従来のナット26で終端する。ボルト継手24は、所望の荷重又は張力まで圧縮されることを意図される任意の機械的な継手、結合、又は機械的組立体であり得る。
【0038】
しかし、図1がスタッド14及びナッド26を示すが、これが、代替的に、ボルト、ヘッド付き締結具、又はキャップスクリュー等のような任意の形態の機械的締結具であり得ることが認識される。
【0039】
図示する例では、ロッキング手段12は、スタッド14のネジ山に往復式に係合するネジ山を切られたナットである。こうして、ナット12は、フランジ24aの表面に係合するまで、単にスタッド14上にねじ込まれることができる。
【0040】
ナット12は、円形断面を有し、ナットの本体を貫通する複数の半径方向ボアホール12aを備える(図3に最もよく見られる)。任意の数のボアホールが、使用されることができるが、本明細書で論じる例では、ナット12は、8つのボアホール12aを有する。
【0041】
各ボアホール12は、ナットの本体を貫通する円形チャネルであって、ナットの長手方向軸にほぼ垂直である軸を有する円形チャネルを画定する。各ボアホール12は、(図1及び図3に示すように)ナットの本体を完全に貫通して延在するが、代替的に、本体を部分的にだけ貫通して延在し得る(すなわち、一端、すなわち、ナットの内部表面に最も近い端部で閉鎖する)。
【0042】
ボアホール12aの機能は、アクチュエータ18が、(図1及び図3に示すように)ボアホール12aに着脱可能に係合して、ナット12が締付けられるようにナット12がスタッド14上で回転される(すなわち、ねじ込まれる)ことを可能にすることができる点で、取外し可能アクチュエータ18を受取ることである。こうして、ナット12は、以下でより詳細に論じるように、所望の予荷重がスタッド内で達成されるとロックされる(すなわち、完全に締付けられる)ことができる。
【0043】
取外し可能ブリッジ部材16は、形状が円柱(例えば、管状)であり、開口端16aと閉鎖端16bを備える。開口端16aの外周「リップ(lip)」は、フランジ24aの表面に係合するための「表面(surface)」として働き、一方、閉鎖端16bは、好ましくは、スタッド14を受取るための開口ボア(例えば、円形アパーチャ)を含む。換言すれば、ブリッジ部材16は、スタッド14がブリッジ部材の長手方向軸を通りかつそこに沿って通過するようにスタッド14を覆って設置される。
【0044】
図1を参照すると、ブリッジ部材16は、スタッド14を覆って設置されると、ナット12を覆う。しかし、ブリッジ部材16は、ナット12に着脱可能に係合するためにアクチュエータ18がそこを貫通できるアパーチャ又は窓を備える。アパーチャ17は、ブリッジ部材16の側壁内に位置付けられ、ブリッジ部材16のカットアウト部分の形態をとる。
【0045】
図示する例では、アクチュエータ18は、硬化鋼から作製される「トミーバー(tommy bar)」等の細長いロッドの形態である。したがって、トミーバー18は、ブリッジ部材16のアパーチャ17を通して挿入されて、(図1及び図3に示すように)ボアホール12aに係合することができ、ナット12が回転されることを可能にする。アパーチャ17に入るよう回転されたトミーバー18は、その後、取外され、次のボアホール12aに(再)挿入されることができる。こうして、ナット12は、ナットに対するトミーバー18の反復した適用によって回転され締付けられることができる。
【0046】
再び図1を参照すると、張力印加装置10は、マルチジャックボルトテンショナ20とブリッジ部材16との間に取外し可能に配設されるワッシャ13を更に備え、それにより、ワッシャ13はブリッジ部材の閉鎖端16bに当接する。ワッシャ13は、硬化鋼から作られ、キャップスクリュー22がテンショナ20内で締付けられるときにブリッジ部材16の閉鎖端表面に対する損傷を防止するのに役立つ。
【0047】
マルチジャックボルトテンショナ20の使用は、このタイプのテンショナの多くの利点が本用途において利用されることを可能にするため有益である。したがって、スタッド14は、キャップスクリュー22のそれぞれに対する比較的小さなトルクだけの印加によって、比較的大きな予荷重張力まで張力印加されることができる。結果として、単純なハンドツール又は空気圧デバイスだけが、必要とされる張力までボルト継手に荷重印加するために使用される必要がある。これは、設置者についての安全性を改善し、一方、重い機械類(例えば、かさばった及び/又は高圧の油圧又は電気コンプレッサ)が全く必要とされないため、同様に環境に役立ち、電力及び費用を節約する。
【0048】
更に、マルチジャックボルトテンショナが純粋な張力でスタッドを締付けるため、ねじり歪が存在せず、直接トルク印加法に関して一般に起こるネジ山のつぶれの可能性をなくす。
【0049】
張力印加装置10の例示的な動作が、ここで、図1及び図3を参照して論じられる。使用時、装置10は、キャップスクリュー22のそれぞれにトルクを印加することによって所望の予荷重までスタッド14に張力印加する。ブリッジ部材16は、ボルト継手のフランジ24aの頂部に着座し、ナット12を覆い、ナット12は、スタッド14にねじ込まれ、フランジ24aの表面に対して締付けられる。硬化ワッシャ13は、ブリッジ部材16とマルチジャックボールテンショナ20との間に着座し、マルチジャックボールテンショナ20は、スタッド14上に同様にねじ込まれ、ブリッジ部材16の上部のワッシャ13に載る。スタッド14が荷重下に設置されると、スタッド14がフックの法則に従ってその弾性限界内で弾性的に延長又は伸長する(すなわち、スタッド14が、その長さに沿って弾性変形を受ける)ことがわかる。スタッド14内の所望の予荷重は、テンショナ20内の複数のキャップスクリュー22の間で分割され得る。その理由は、キャップスクリュー22に関する個々の荷重が、結合されて、スタッドにかかる総合荷重を形成するからである。各キャップスクリュー22について必要とされる個々の荷重を知ることによって、トルク設定が、確立された荷重値の表から導出されることができ、それにより、単純なハンドツール(たとえば、トルクレンチ)が使用されて、キャップスクリュー22のそれぞれに必要とされるトルクを印加することができる。
【0050】
図2の例では、キャップスクリュー22は単純な六角形ナットであり、アレンキー又は同様のツールによって締付けられることができる。
ボルト継手の確実な張力印加を保証するために、キャップスクリュー22は、キャップスクリューのどんな非対称荷重印加も回避する注意深いシーケンスで締付けられる。したがって、キャップスクリューが、好ましくは星型イメージ上の点に似ている順序でキャップスクリューが締付けられるため、キャップスクリューを締付けるための「星型(star)」又は「スワン型(swan)」シーケンスが、好ましくは採用される。例えば、対角線上で対向するキャップスクリューが次々に締付けられ、それにより、継手の対称荷重印加が達成される(図2参照)。
【0051】
初期荷重印加後、スタッド14が延長したため、ナット12は、フランジ24aの表面にもはや当接しない。実際には、スタッド14内の張力の結果として、ナット12とフランジ24aとの間にエアギャップが実際に形成される。トミーバー18が、その後、ナット12に再挿入されて、ナットを更に締付け、それにより、エアギャップをなくし、ナットがフランジ24aの表面に着座することを可能にすることができる。キャップスクリュー22の更なる締付けが、その後実施されることができ、所望の予荷重がスタッド14内で達成されるまで、上記手順が、必要に応じて何度も繰返される。
【0052】
予荷重が獲得されると、スタッド14内の張力が(スタッド14固有の弾性回復力によって)ボルト継手の圧縮又は荷重印加を維持するため、すなわち、スタッド14がナット12をナット26向かって引張るため、キャップスクリュー22は、その後、緩められることができる。図4に示すように、テンショナ20、ブリッジ部材16、及びトミーバー18は、その後、フランジ24a及び24bをひとまとめにするためにナット12を所定場所に残したまま、全てボルト継手から取外されることができる。
【0053】
本装置及びキットの全てのコンポーネントは、安全性及び使用寿命のために高強度鋼から製造され、各コンポーネントは、保護コーティングで覆われて、腐食及び錆耐性を高めることができる。本装置を使用するために特別な訓練は全く必要とされず、したがって、半熟練オペレータ又は工学的経験がほとんどない人々でさえ本発明を実施できることになることも理解されるべきである。
【0054】
更に、本装置は、荷重表示デバイス、特に、同時係属中の出願PCT/GB2012/052114に開示され、Clarkwood Engineering Ltd.(英国所在)によって製造される荷重表示ワッシャと共に使用されることができる。
【0055】
先の実施形態から認識されるように、本発明は、所望の予荷重まで機械的継手に確実に張力印加する、単純で、フィット/レトロフィットするのが容易で、費用効果的な解決策を提供できる。したがって、張力印加装置及びキットは、スタッド、ボルト、ネジ山を切られたロッド、及びシャフト等の正確でかつ一貫性のある張力印加を保証するのに申し分なく適するが、本発明の原理の1つ又は複数が、少なくとも装置及びキットの固有の拡張性によって他の張力印加用途に拡張できることが認識される。
【0056】
上記実施形態は、例としてだけ述べられる。多くの変形が本発明から逸脱することなく可能である。
図1
図2
図3
図4