(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130863
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】半導体パワーモジュール及びデバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20170508BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20170508BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20170508BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20170508BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L29/80 H
【請求項の数】55
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-558857(P2014-558857)
(86)(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公表番号】特表2015-509665(P2015-509665A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】US2013027294
(87)【国際公開番号】WO2013126679
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】13/405,041
(32)【優先日】2012年2月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511193374
【氏名又は名称】トランスフォーム インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100162330
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 幹規
(72)【発明者】
【氏名】ウー,イフェン
【審査官】
井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0101466(US,A1)
【文献】
特開2001−358285(JP,A)
【文献】
特開2011−036017(JP,A)
【文献】
特開2009−141150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 21/338
H01L 25/18
H01L 29/778
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のエリアを有する第1の導電性部分を備える第1のパッケージに入れられ、前記第1の導電性部分の上に実装される第1のトランジスタと、
第2のエリアを有する第2の導電性部分を備える第2のパッケージに入れられ、前記第2の導電性部分の上に実装される第2のトランジスタと、
第1の金属層と第2の金属層との間に絶縁層を備える基板であって、前記第1の金属層が前記基板の第1の面上にあり、前記第2の金属層が前記基板の第2の面上にある、基板とを備え、
前記第1のパッケージが、前記第1の導電性部分が前記第1の金属層に電気的に接続された状態で、前記基板の前記第1の面上にあり、
前記第2のパッケージが、前記第2の導電性部分が前記第2の金属層に電気的に接続された状態で、前記基板の前記第2の面上にあり、
前記第1の導電性部分の前記第1のエリアの少なくとも50%が前記第2の導電性部分の前記第2のエリアに対向した状態で、前記第1のパッケージが前記第2のパッケージに対向しており、
前記第1のパッケージがソース線を有し、前記第2のパッケージがドレイン線を有し、前記ソース線及び前記ドレイン線が互いに電気的に接続される、電子部品。
【請求項2】
前記第1及び第2のトランジスタが半ブリッジ回路の一部である、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記基板が、前記半ブリッジ回路の動作中における前記第1及び第2の金属層間の電圧を安定させる役割を果たすコンデンサを形成する、請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記基板によって形成された前記コンデンサが第1のコンデンサであり、前記電子部品が、前記第1のコンデンサと並列に接続される第2のコンデンサを更に備える、請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記基板がビアホールを含み、前記第2のコンデンサのリード線が前記ビアホールを通り抜ける、請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記基板がビアホールを含み、前記第1のパッケージの前記ソース線を前記第2のパッケージの前記ドレイン線に電気的に接続するコネクタが前記ビアホールを通り抜ける、請求項1に記載の電子部品。
【請求項7】
前記第1のトランジスタが、前記第1の導電性部分に電気的に接続される第1の電極を有し、前記第2のトランジスタが、前記第2の導電性部分に電気的に接続される第2の電極を有する、請求項1に記載の電子部品。
【請求項8】
前記第1の電極が前記第1のトランジスタのドレイン電極であり、前記第2の電極が前記第2のトランジスタのソース電極である、請求項7に記載の電子部品。
【請求項9】
前記第1の導電性部分が前記第1の金属層上に直接位置し、かつ前記第1の金属層に接触しており、前記第2の導電性部分が前記第2の金属層上に直接位置し、かつ前記第2の金属層に接触している、請求項1に記載の電子部品。
【請求項10】
前記第1のトランジスタ又は前記第2のトランジスタがIII族窒化物トランジスタである、請求項1に記載の電子部品。
【請求項11】
前記第1のトランジスタ又は前記第2のトランジスタが横型デバイスである、請求項1に記載の電子部品。
【請求項12】
前記第1のパッケージがソース線を有し、前記第2のパッケージがドレイン線を有し、前記ソース線が前記ドレイン線と実質的に一直線上に配置されている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項13】
前記第1のパッケージに入れられた第3のトランジスタを更に備え、前記第1のトランジスタのソースが前記第3のトランジスタのドレインに電気的に接続され、前記第1のトランジスタのゲートが前記第2のトランジスタのソースに電気的に接続される、請求項1に記載の電子部品。
【請求項14】
前記第1のトランジスタが高電圧デプレッションモードトランジスタであり、前記第3のトランジスタが低電圧エンハンスメントモードトランジスタである、請求項13に記載の電子部品。
【請求項15】
ソース線及び第1の導電性部分を備える第1のパッケージに入れられ、前記第1の導電性部分の上に実装される第1のトランジスタと、
ドレイン線及び第2の導電性部分を備える第2のパッケージに入れられ、前記第2の導電性部分の上に実装される第2のトランジスタと、
第1の金属層と第2の金属層との間に絶縁層を備える基板であって、前記第1の金属層が前記基板の第1の面上にあり、前記第2の金属層が前記基板の第2の面上にある、基板とを備え、
前記第1のパッケージが、前記第1の導電性部分が前記第1の金属層に電気的に接続された状態で、前記基板の前記第1の面上にあり、
前記第2のパッケージが、前記第2の導電性部分が前記第2の金属層に電気的に接続された状態で、前記基板の前記第2の面上にあり、
前記第1のパッケージの前記ソース線が前記第2のパッケージの前記ドレイン線と実質的に一直線上に配置された状態で、前記第1のパッケージが少なくとも部分的に前記第2のパッケージに対向しており、前記第1のパッケージの前記ソース線及び前記第2のパッケージの前記ドレイン線が互いに電気的に接続される、電子部品。
【請求項16】
前記基板が二層プリント回路(PCB)基板である、請求項15に記載の電子部品。
【請求項17】
前記第1のトランジスタのドレイン電極が前記第1の導電性部分に電気的に接続され、前記第2のトランジスタのソース電極が前記第2の導電性部分に電気的に接続される、請求項15に記載の電子部品。
【請求項18】
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタがIII族窒化物トランジスタである、請求項15に記載の電子部品。
【請求項19】
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタが横型デバイスである、請求項15に記載の電子部品。
【請求項20】
第1の導電層と第2の導電層との間に絶縁層を備えるコンデンサと、
第1の導電性部分を有する第1のパッケージに入れられた第1のトランジスタと、
第2の導電性部分を有する第2のパッケージに入れられた第2のトランジスタとを備え、
前記第1の導電性部分が前記第1の導電層の上に直接実装され、前記第2の導電性部分が前記第2の導電層の上に直接実装されており、
前記第1のパッケージがソース線を有し、前記第2のパッケージがドレイン線を有し、前記ソース線及び前記ドレイン線が互いに電気的に接続される、電子部品。
【請求項21】
前記コンデンサがプリント回路(PCB)基板を含む、請求項20に記載の電子部品。
【請求項22】
前記第1のパッケージがドレイン線を有し、前記第2のパッケージがソース線を有し、前記第1のパッケージの前記ドレイン線が前記第1の導電性部分に電気的に接続され、前記第2のパッケージの前記ソース線が前記第2の導電性部分に電気的に接続される、請求項20に記載の電子部品。
【請求項23】
前記電子部品が半ブリッジモジュールを含む、請求項20に記載の電子部品。
【請求項24】
前記半ブリッジモジュールが電気負荷に接続されるように構成される、請求項23に記載の電子部品。
【請求項25】
前記第1の導電性部分が前記第1の導電層に電気的に接続され、前記第2の導電性部分が前記第2の導電層に電気的に接続される、請求項20に記載の電子部品。
【請求項26】
第1のパッケージに入れられた第1のスイッチ及び第2のパッケージに入れられた第2のスイッチを備え、前記第1のスイッチと前記第2のスイッチが基板の対向面上にある、半ブリッジ回路を動作させる方法であって、
前記第2のスイッチのソースに対して、少なくとも300ボルトの電圧で前記第1のスイッチのドレインにバイアスをかけるステップと、
前記第1のスイッチにバイアスをかけてオンにし、前記第2のスイッチにバイアスをかけてオフにし、それによって、少なくとも3アンペアの電流を前記第1のスイッチに流すと共に、前記第2のスイッチによって電圧を阻止するステップと、
前記第1のスイッチをオフへと第1の時間でスイッチングする際に、前記電流を前記第2のスイッチに流すと共に、前記第1のスイッチによって電圧を阻止するステップとを含み、
前記第1のスイッチをスイッチングする前記ステップが、少なくとも100ボルト/ナノ秒のスイッチング速度での前記第1のスイッチをハードスイッチングすることを含む、方法。
【請求項27】
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチがそれぞれ1以上のトランジスタを備える、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のスイッチをオフからオンへと第2の時間でスイッチングする際に、前記電流を前記第1のスイッチに流すと共に、前記第2のスイッチによって電圧を阻止するステップを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の時間が前記第1の時間の後である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記半ブリッジ回路を電気負荷に接続するステップを更に含み、前記電流が前記電気負荷を流れる、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記第2のスイッチの前記ソースに対して、少なくとも400ボルトの電圧で前記第1のスイッチの前記ドレインがバイアスをかけられる、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
第1のエリアを有する第1の導電性部分を備える第1のパッケージに入れられた第1のスイッチであって、前記第1のスイッチが前記第1の導電性部分の上に実装される、第1のスイッチと、
第2のエリアを有する第2の導電性部分を備える第2のパッケージに入れられ、前記第2の導電性部分の上に実装される第2のスイッチと、
絶縁層及び金属層を備える基板とを備え、
前記第1のパッケージが前記基板の第1の面上にあり、前記第2のパッケージが前記基板の第2の面上にあり、
前記第1の導電性部分の前記第1のエリアの少なくとも50%が前記第2の導電性部分の前記第2のエリアに対向した状態で、前記第1のパッケージが前記第2のパッケージに対向しており、
前記第1のパッケージがソース線を有し、前記第2のパッケージがドレイン線を有し、前記ソース線及び前記ドレイン線が互いに電気的に接続される、半ブリッジ。
【請求項33】
前記第1のスイッチが、前記第1の導電性部分に電気的に接続される第1の電極を有し、前記第2のスイッチが、前記第2の導電性部分に電気的に接続される第2の電極を有する、請求項32に記載の半ブリッジ。
【請求項34】
前記第2の電極が前記第2のスイッチのソース電極である、請求項33に記載の半ブリッジ。
【請求項35】
前記第1の電極が前記第1のスイッチのドレイン電極である、請求項34に記載の半ブリッジ。
【請求項36】
前記第1のスイッチ又は前記第2のスイッチがIII族窒化物トランジスタを含む、請求項32に記載の半ブリッジ。
【請求項37】
前記第1のスイッチ又は前記第2のスイッチが横型トランジスタを含む、請求項32に記載の半ブリッジ。
【請求項38】
前記第1のスイッチが第1のトランジスタ及び第2のトランジスタを含み、前記第1のトランジスタのソースが前記第2のトランジスタのドレインに電気的に接続され、前記第1のトランジスタのゲートが前記第2のトランジスタのソースに電気的に接続される、請求項32に記載の半ブリッジ。
【請求項39】
前記第1のトランジスタが高電圧デプレッションモードトランジスタであり、前記第2のトランジスタが低電圧エンハンスメントモードトランジスタである、請求項38に記載の半ブリッジ。
【請求項40】
前記低電圧エンハンスメントモードトランジスタが前記高電圧デプレッションモードトランジスタの前記ソースの上に直接実装される、請求項39に記載の半ブリッジ。
【請求項41】
前記第1のトランジスタが横型トランジスタであり、前記第2のトランジスタが縦型トランジスタである、請求項38に記載の半ブリッジ。
【請求項42】
前記金属層が金属マウントを含む、請求項32に記載の半ブリッジ。
【請求項43】
前記金属マウントがヒートシンクに接続されるか又はヒートシンクの一部である、請求項42に記載の半ブリッジ。
【請求項44】
第1の導電性部分と第2の導電性部分との間に絶縁層を備え、前記第1の導電性部分が第1のエリアを有し、前記第2の導電性部分が第2のエリアを有するコンデンサと、
前記第1の導電性部分を備える第1のパッケージに入れられた第1のトランジスタと、
前記第2の導電性部分を備える第2のパッケージに入れられた第2のトランジスタとを備え、
前記第1のパッケージが前記絶縁層の第1の面上にあり、前記第2のパッケージが前記絶縁層の第2の面上にあり、
前記第1のパッケージがソース線を有し、前記第2のパッケージがドレイン線を有し、前記ソース線及び前記ドレイン線が互いに電気的に接続される、半ブリッジ。
【請求項45】
前記第1の導電性部分の前記第1のエリアの少なくとも50%が前記第2の導電性部分の前記第2のエリアに対向した状態で、前記第1のパッケージが前記第2のパッケージに対向する、請求項44に記載の半ブリッジ。
【請求項46】
前記第1のパッケージがドレイン線を有し、前記第2のパッケージがソース線を有し、前記第2のパッケージの前記ソース線が前記第2の導電性部分に電気的に接続される、請求項44に記載の半ブリッジ。
【請求項47】
前記第1のパッケージの前記ドレイン線が前記第1の導電性部分に電気的に接続される、請求項46に記載の半ブリッジ。
【請求項48】
電気負荷に接続されるように構成された半ブリッジであって、
第1のパッケージに入れられた第1のスイッチ及び第2のパッケージに入れられた第2のスイッチであって、前記第1のスイッチが第1のソースを含み、前記第2のスイッチが第2のドレインを含み、前記第1のソースが前記第2のドレインに電気的に接続された、第1のスイッチ及び第2のスイッチを備え、
前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチが金属マウントの対向面上にあり、
前記半ブリッジが、少なくとも3アンペアの電流が前記電気負荷を流れている状態で、少なくとも100ボルト/ナノ秒のスイッチング速度で前記電気負荷の両端間における少なくとも300ボルトの電圧をハードスイッチングするように動作可能である、半ブリッジ。
【請求項49】
前記電流が少なくとも6アンペアである、請求項48に記載の半ブリッジ。
【請求項50】
前記金属マウントがヒートシンクに接続されるか又はヒートシンクの一部である、請求項48に記載の半ブリッジ。
【請求項51】
絶縁層を更に備え、前記第1のスイッチ及び前記第2のスイッチが前記絶縁層の対向面上にある、請求項48に記載の半ブリッジ。
【請求項52】
前記第1のスイッチが第1のトランジスタ及び第2のトランジスタを含み、前記第1のソースが前記第2のトランジスタのソースであり、前記第1のトランジスタのソースが前記第2のトランジスタのドレインに電気的に接続され、前記第1のトランジスタのゲートが前記第2のトランジスタの前記ソースに電気的に接続される、請求項48に記載の半ブリッジ。
【請求項53】
前記第1のトランジスタが高電圧デプレッションモードトランジスタであり、前記第2のトランジスタが低電圧エンハンスメントモードトランジスタである、請求項52に記載の半ブリッジ。
【請求項54】
前記低電圧エンハンスメントモードトランジスタが前記高電圧デプレッションモードトランジスタの前記ソースの上に直接実装される、請求項53に記載の半ブリッジ。
【請求項55】
前記第1のトランジスタが横型トランジスタであり、前記第2のトランジスタが縦型トランジスタである、請求項52に記載の半ブリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体電子デバイスで形成された電子モジュールの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
ブリッジ回路などのパワースイッチング回路は、一般に、様々な用途で使用されている。モータを駆動するように構成された三相ブリッジ回路10の回路図が
図1に示される。回路10の三つの半ブリッジ15、25、及び35はそれぞれ、二つのトランジスタ41及び42、43及び44、並びに45及び46をそれぞれ含み、それらのトランジスタは、第1の方向の電圧を阻止することができると共に、第1の方向の又は任意に両方向の電流を導通することができる。ブリッジ回路10で用いられるトランジスタが一方向でのみ電流を導通することができる用途では、例えばシリコンIGBTが使用される場合、逆並列ダイオード(図示なし)がトランジスタ41〜46それぞれに接続されてもよい。トランジスタ41〜46はそれぞれ、バイアスをかけられオフ状態にあるとき、少なくとも回路10の高電圧(HV)源11程度の大きさの電圧を阻止することができる。即ち、トランジスタ41〜46のいずれかのゲート・ソース間電圧V
GSがトランジスタ閾値電圧V
thよりも低い場合、ドレイン・ソース間電圧V
DS(即ち、ソースに対するドレインの電圧)が0V〜HVであると、電流は実質的にトランジスタを流れない。バイアスをかけられオン状態にある(即ち、V
GSがトランジスタ閾値電圧よりも高い)とき、トランジスタ41〜46はそれぞれ、それらが使用されている用途に対して十分な高電流を導通することができる。
【0003】
トランジスタ41〜46は、エンハンスメントモード、即ちEモードトランジスタ(ノーマリーオフ型、V
th>0)、又はデプレッションモード、即ちDモード(ノーマリーオン型、V
th<0)トランジスタである。パワー回路では、エンハンスメントモードデバイスは、一般的に、デバイス又は他の回路部品に対する損傷を引き起こすことがある偶発的な作動を防ぐのに使用される。ノード17、18、及び19は全て、誘導負荷を介して、即ちモータコイル(
図1には図示なし)などの誘導部品を介して互いに連結される。
【0004】
図2aは、ノード17と18との間にあるモータの巻線(誘導部品21によって表される)と共に、
図1の三相モータ駆動部全体の半ブリッジ15を示す。モータ電流が供給されるトランジスタ44も示される。この電力相の場合、トランジスタ44は継続的にオン(V
gs44>V
th)、トランジスタ42は継続的にオフ(V
gs42<V
th、即ち、エンハンスメントモードトランジスタが使用される場合、V
gs42=0V)であり、トランジスタ41は、所望のモータ電流を実現するようにパルス幅変調(PWM)信号を用いて変調される。
図2bは、トランジスタ41がバイアスをかけられオンになる時間の電流27の経路を示す。このバイアスの場合、モータ電流はトランジスタ41及び44を流れるが、トランジスタ42はバイアスをかけられオフになっているため、トランジスタ42には電流が流れず、ノード17の電圧はHVに近いので、トランジスタ42はHVに近い電圧を阻止する。
【0005】
本明細書で使用されるとき、「電圧を阻止する」という用語は、トランジスタ、デバイス、又は部品の両端間に電圧が印加されたとき、標準的なオン状態の導通の間の平均動作電流の0.001倍を超える電流などの、意味のある(影響がある)電流が、トランジスタ、デバイス、又は部品を流れないようにされた状態にあるトランジスタ、デバイス、又は部品を指す。換言すれば、トランジスタ、デバイス、又は部品がその両端間に印加されている電圧を阻止している間、トランジスタ、デバイス、又は部品を通過する全電流は、標準的なオン状態の導通時の平均動作電流の0.001倍を超えない。
【0006】
図2cを参照すると、トランジスタ41がオフに切り換えられると、電流はトランジスタ41を流れることができないので、モータ電流がトランジスタ42を通って逆方向に流れるが、これはトランジスタ42がバイアスをかけられオン又はオフのどちらになっているかに係わらず起こり得る。或いは、逆並列の環流ダイオード(図示なし)をトランジスタ42の両端間に接続することができるが、その場合、逆電流が環流ダイオードを通って流れる。かかる動作中、誘導部品21によってノード17の電圧が十分に負の値になって、トランジスタ42を通る逆導通を引き起こし、トランジスタ41はHVに近い電圧を阻止する。
【0007】
図3a〜3cは、
図2a〜2cに示されるのとは逆方向で電流が誘電負荷を通過する条件下における半ブリッジ15の動作を示しており、ノード17の電圧はローサイドトランジスタ42を切り換えることによって制御される。
図3a〜3cに示される動作モードの場合、モータ電流27は、トランジスタ43を通って誘導モータ21に供給される。この動作モード中、トランジスタ43は継続的にオン(V
gs43>V
th)、トランジスタ41は継続的にオフ(V
gs41<V
th、即ち、エンハンスメントモードトランジスタが使用される場合、V
gs41=0V)であり、トランジスタ42は、所望のモータ電流を実現するようにパルス幅変調(PWM)信号を用いて変調される。
図3bは、トランジスタ42がバイアスをかけられオンになっている時間の電流27の経路を示す。このバイアスの場合、モータ電流はトランジスタ43及び42を流れるが、トランジスタ41はバイアスをかけられオフになっているため、トランジスタ41には電流が流れず、ノード17の電圧は0Vに近いので、トランジスタ41はHVに近い電圧を阻止する。
【0008】
図3cを参照すると、トランジスタ42がオフに切り換えられると、電流はトランジスタ42を流れることができないので、モータ電流がトランジスタ41を通って逆方向に流れるが、これはトランジスタ41がバイアスをかけられオン又はオフのどちらになっているかに係わらず起こり得る。或いは、逆並列の環流ダイオード(freewheeling diode)(図示なし)はトランジスタ41の両端間に接続することができるが、その場合、逆電流が環流ダイオードを通って流れる。かかる動作中、誘導部品21によってノード17の電圧が十分に高い値(HVを僅かに上回る)になって、トランジスタ41を通る逆導通を引き起こし、トランジスタ42はHVに近い、又はそれよりも僅かに高い電圧を阻止する。
【0009】
モータ駆動の用途における使用に加えて、半ブリッジ及びブリッジ回路は、他の多くの用途に、例えばブースト若しくはバックコンバータに、又は電源にも使用することができる。半ブリッジ15を利用して電気負荷28を駆動する例示的な回路が
図4に示される。電気負荷28は、例えば、容量性及び/又は抵抗性であることができ、或いは場合によっては、バッテリー又は直流電源であり得る。
図4に更に示されるように、多くの用途では、誘導性素子23及び/又は容量性素子24を含むことができるフィルタ22が、それぞれ、半ブリッジ15と電気負荷28との間に挿入される。
【0010】
図2a〜2c及び3a〜3cに示されるスイッチングのモードは、ハードスイッチングとして一般に知られている。ハードスイッチング回路構成は、オンに切り換えられるとすぐに高電流を通過させ、オフに切り換えられるとすぐに高電圧になるように、スイッチングトランジスタが構成されているものである。換言すれば、非ゼロの電流が誘導負荷を流れる期間の間、トランジスタがオンに切り換えられることにより、電流が徐々に上昇するのではなく、トランジスタがオンに切り換えられると直ちに又はそのすぐ後に、相当の高電流がトランジスタを流れる。同様に、高電圧をトランジスタによって阻止しなければならない期間の間、トランジスタがオフに切り換えられることにより、電圧が徐々に上昇するのではなく、トランジスタがオフに切り換えられると直ちに又はそのすぐ後に、相当の高電圧がトランジスタによって阻止される。これらの条件下で切り換えられるトランジスタは、「ハードスイッチング」されると言われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
代替の回路構成は、トランジスタを「ソフトスイッチング」するのを可能にするため、追加の受動素子及び/又は能動素子、或いは信号タイミング技術を使用する。ソフトスイッチング回路構成は、ゼロ電流(若しくはほぼゼロ電流)条件の間はオンに切り換えられ、ゼロ電圧(若しくはほぼゼロ電圧)条件の間はオフに切り換えられるように、スイッチングトランジスタが構成されているものである。ソフトスイッチングの方法及び構成は、ハードスイッチング回路で、特に高電流及び/又は高電圧の印加において観測される、高レベルの電磁妨害(EMI)及びそれに関連するリンギングに対処するために開発されてきた。ソフトスイッチングは多くの場合にこれらの問題を軽減することができるが、ソフトスイッチングに必要な回路類は、一般的に多くの追加部品を含み、結果的に全体のコスト及び複雑性が増大する。ソフトスイッチングはまた、一般的に、ゼロ電流又はゼロ電圧条件が満たされる特定の時間にのみ切り換わるように回路が構成されることを必要とし、その結果、適用することができる制御信号が限定され、多くの場合に回路性能が低減される。したがって、EMIを十分に低いレベルで維持するために、ハードスイッチング方式のパワースイッチング回路のための代替の構成及び方法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一つの態様では、第1のエリアを有する第1の導電性部分を含む第1のパッケージに入れられ、第1の導電性部分の上に実装される第1のトランジスタを含む、電子部品が記載される。電子部品は更に、第2のエリアを有する第2の導電性部分を含む第2のパッケージに入れられ、第2の導電性部分の上に実装される第2のトランジスタを含む。電子部品はまた、第1の金属層と第2の金属層との間に絶縁層を備える基板であって、第1の金属層が基板の第1の面上にあり、第2の金属層が基板の第2の面上にある、基板を含む。第1のパッケージは、第1の導電性部分が第1の金属層に電気的に接続された状態で、基板の第1の面上にあり、第2のパッケージは、第2の導電性部分が第2の金属層に電気的に接続された状態で、基板の第2の面上にあり、第1の導電性部分の第1のエリアの少なくとも50%が第2の導電性部分の第2のエリアに対向した状態で、第1のパッケージが第2のパッケージに対向する。
【0013】
別の態様では、ソース線及び第1の導電性部分を備える第1のパッケージに入れられ、第1の導電性部分の上に実装される第1のトランジスタを含む、電子部品が記載される。電子部品はまた、ドレイン線及び第2の導電性部分を備える第2のパッケージに入れられ、第2の導電性部分の上に実装される第2のトランジスタを含む。電子部品は更に、第1の金属層と第2の金属層との間に絶縁層を備える基板であって、第1の金属層が基板の第1の面上にあり、第2の金属層が基板の第2の面上にある、基板を含む。第1のパッケージは、第1の導電性部分が第1の金属層に電気的に接続された状態で、基板の第1の面上にあり、第2のパッケージは、第2の導電性部分が第2の金属層に電気的に接続された状態で、基板の第2の面上にあり、第1のパッケージのソース線が第2のパッケージのドレイン線と実質的に一直線上に配置された状態で、第1のパッケージが少なくとも部分的に第2のパッケージに対向する。
【0014】
更に別の態様では、第1の導電層と第2の導電層との間に絶縁層を備えるコンデンサを含む、電子部品が記載される。電子部品はまた、第1の導電性部分を有する第1のパッケージに入れられた第1のトランジスタと、第2の導電性部分を有する第2のパッケージに入れられた第2のトランジスタとを含む。第1の導電性部分は第1の導電層の上に直接実装され、第2の導電性部分は第2の導電層の上に直接実装される。
【0015】
更にまた別の態様では、電気負荷に接続されるように構成された半ブリッジが記載される。半ブリッジは、第1のパッケージに入れられた第1のスイッチ及び第2のパッケージに入れられた第2のスイッチを含み、第1のパッケージはソース線を有し、第2のパッケージはドレイン線を有し、第1のパッケージのソース線が第2のパッケージのドレイン線に電気的に接続されている。半ブリッジは、少なくとも3アンペアの電流が電気負荷を流れている状態で、少なくとも100ボルト/ナノ秒のスイッチング速度で電気負荷の両端間における少なくとも300ボルトの電圧をハードスイッチングするように動作可能である。
【0016】
本明細書に記載する電子部品及び半ブリッジは、次の特徴の1以上を含むことができる。第1及び第2のトランジスタは半ブリッジ回路の一部であることができる。基板は、半ブリッジ回路の動作中における第1及び第2の金属層間の電圧を安定させる役割を果たすコンデンサを形成することができる。基板によって形成されたコンデンサは第1のコンデンサであることができ、電子部品は、第1のコンデンサと並列に接続される第2のコンデンサを更に備える。基板はビアホールを含むことができ、第2のコンデンサのリード線がビアホールを通り抜けることができる。第1のパッケージはソース線を有することができ、第2のパッケージはドレイン線を有することができ、ソース線及びドレイン線は互いに電気的に接続される。基板はビアホールを含むことができ、第1のパッケージのソース線を第2のパッケージのドレイン線に電気的に接続するコネクタは、ビアホールを通り抜けることができる。第1のトランジスタは、第1の導電性部分に電気的に接続される第1の電極を有することができ、第2のトランジスタは、第2の導電性部分に電気的に接続される第2の電極を有することができる。第1の電極は第1のトランジスタのドレイン電極であることができ、第2の電極は第2のトランジスタのソース電極であることができる。第1の導電性部分は、直接第1の金属層上にあって第1の金属層に接触していることができ、第2の導電性部分は、直接第2の金属層上にあって第2の金属層に接触していることができる。
【0017】
第1のトランジスタ又は第2のトランジスタは、III族窒化物のトランジスタ或いは横型デバイスであることができる。第1のパッケージはソース線を有することができ、第2のパッケージはドレイン線を有することができ、ソース線はドレイン線と実質的に一直線上に配置されている。電子部品は、第1のパッケージに入れられた第3のトランジスタを更に含むことができ、第1のトランジスタのソースは第3のトランジスタのドレインに電気的に接続され、第1のトランジスタのゲートは第2のトランジスタのソースに電気的に接続される。第1のトランジスタは高電圧デプレッションモードトランジスタであることができ、第3のトランジスタは低電圧エンハンスメントモードトランジスタであることができる。
【0018】
基板は、二層プリント回路(PCB)基板などのプリント回路(PCB)基板であることができる。第1のトランジスタのドレイン電極は、第1の導電性部分に電気的に接続することができ、第2のトランジスタのソース電極は、第2の導電性部分に電気的に接続することができる。第1のパッケージはドレイン線を有することができ、第2のパッケージはソース線を有することができ、第1のパッケージのドレイン線は第1の導電性部分に電気的に接続され、第2のパッケージのソース線は第2の導電性部分に電気的に接続される。電子部品は、電気負荷に接続されるように構成することができる、半ブリッジモジュールを含むことができる。第1の導電性部分は第1の導電層に電気的に接続することができ、第2の導電性部分は第2の導電層に電気的に接続することができる。電気負荷を流れる電流は少なくとも6アンペアであることができ、第1のスイッチ及び第2のスイッチは基板の対向面上にあることができる。
【0019】
更に別の態様では、第1のパッケージに入れられた第1のスイッチ及び第2のパッケージに入れられた第2のスイッチを備える半ブリッジ回路を動作させる方法が記載される。方法は、第1のスイッチのドレインを、第2のスイッチのソースに対して少なくとも300ボルトの電圧でバイアスをかけるステップと、第1のスイッチにバイアスをかけてオンにすると共に第2のスイッチにバイアスをかけてオフにし、それによって、少なくとも3アンペアの電流を第1のスイッチに流すと共に、第2のスイッチによって電圧を阻止するステップとを含む。方法は更に、第1のスイッチをオフへと第1の時間でスイッチングする際に、電流を第2のスイッチに流すと共に、第1のスイッチによって電圧を阻止するステップを含む。第1のスイッチのスイッチングは、少なくとも100ボルト/ナノ秒のスイッチング速度での第1のスイッチのハードスイッチングを含む。
【0020】
本明細書に記載する方法はそれぞれ、次の特徴の1以上を含むことができる。第1のスイッチ及び第2のスイッチはそれぞれ、1以上のトランジスタを備えることができる。方法は更に、第1のスイッチをオフからオンへと第2の時間でスイッチングする際に、電流を第1のスイッチに流すと共に、第2のスイッチによって電圧を阻止するステップを更に含むことができる。前記第2の時間は前記第1の時間の後であることができる。方法は更に、半ブリッジ回路を電気負荷に接続するステップを含むことができ、電流は電気負荷を流れる。第2のスイッチのソースに対して、少なくとも400ボルトの電圧で第1のスイッチのドレインにバイアスをかけることができる。
【0021】
本明細書に記載される主題の1以上の実施形態の詳細は、添付図面及び以下の説明において記述される。主題の他の特徴、態様、及び利点は、説明、図面、及び請求項から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来技術の三相ブリッジ回路を示す回路図である。
【
図2a】様々な動作条件下における
図1の従来技術の三相ブリッジ回路の部分を示す図である。
【
図2b】様々な動作条件下における
図1の従来技術の三相ブリッジ回路の部分を示す図である。
【
図2c】様々な動作条件下における
図1の従来技術の三相ブリッジ回路の部分を示す図である。
【
図3a】様々な動作条件下における
図1の従来技術の三相ブリッジ回路の部分を示す図である。
【
図3b】様々な動作条件下における
図1の従来技術の三相ブリッジ回路の部分を示す図である。
【
図3c】様々な動作条件下における
図1の従来技術の三相ブリッジ回路の部分を示す図である。
【
図4】電気負荷を駆動するのに半ブリッジを利用する回路を示す図である。
【
図5a】ブリッジ回路の一部分を示す回路図である。
【
図5b】ブリッジ回路の一部分を示す回路図である。
【
図6】半ブリッジモジュールとして機能するように構成された電子部品の概略断面図である。
【
図8a】半ブリッジモジュールのハイサイドスイッチを示す断面図である。
【
図8b】半ブリッジモジュールのローサイドスイッチを示す断面図である。
【
図9a】電子モジュールで使用することができる電子デバイスを示す図である。
【
図9b】電子モジュールで使用することができる電子デバイスを示す図である。
【
図10a】誘導負荷を駆動している半ブリッジ回路のハイサイドスイッチングに対する時間の関数としての電流及び電圧特性を示すプロット図である。
【
図10b】誘導負荷を駆動している半ブリッジ回路のローサイドスイッチングに対する時間の関数としての電流及び電圧特性を示すプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
様々な図面における同様の参照符号は同様の要素を示す。
【0024】
本明細書において、パワースイッチング電子回路におけるEMIを低レベルで維持し、それによって回路安定性をより向上させ、性能を改善できるようにするのに適した、電子部品及び方法を記載する。記載する電子部品はまた、従来の部品と比べてサイズを低減することができ、それによって生産コストを低下させることができる。
【0025】
本明細書に記載する回路のトランジスタ又は他のスイッチング素子は、一般的に、上述したように、非常に高いスイッチング速度で(即ち、非常に短いスイッチング時間で)ハードスイッチングされるように構成される。本明細書の回路のうち一つの回路のトランジスタがオフ状態であって、そのトランジスタに実質的に電流が流れていないとき、一般的に、そのトランジスタは、その回路の高電圧に近い電圧をサポートする。本明細書の回路のうち一つの回路のトランジスタがオン状態のとき、一般的に、そのトランジスタに相当の電流が通っており、そのトランジスタをまたがる両端間の電圧は小さい。ハードスイッチング条件下で切り換えられるスイッチングトランジスタのスイッチング時間は、以下のように定義される。トランジスタが、上述のオフ状態から上述のオン状態へと切り換えられると、スイッチングの開始時にデバイスを通る電流が増加し始め、その増加速度は制御回路類の条件を調節することによって調節可能であり、そのデバイスの両端間の電圧はほぼ同じままである。デバイスの両端間の電圧は、ほぼ全ての負荷電流がトランジスタを通過する時点まで実質的に降下しない。スイッチングの開始とデバイスの両端間における電圧の降下との間に経過する時間は、トランジスタをオンにするための「スイッチング時間」と呼ばれる。切り換えられたデバイスの両端間の合計電圧をスイッチング時間で割ったもの(dV/dt)は、「電圧スイッチング速度(voltage switching rate)」又は単に「スイッチング速度」と呼ばれる。
【0026】
オン状態からオフ状態へとトランジスタを切り換えると、デバイスの両端間の電圧は、ほぼスイッチングの開始時にオフ状態電圧へと増加するが、オン状態値からオフ状態値への電流の減少にはより長い時間が掛かり、減少速度はやはり、制御回路類の条件を調節することによって調節可能である。スイッチングの開始と、デバイスを通る電流がゼロに降下するまでの間に経過する時間は、トランジスタをオフにするための「スイッチング時間」と呼ばれる。切り換えられたデバイスを通る合計電流をスイッチング時間で割ったもの(dI/dt)は、「電流スイッチング速度(current switching rate)」又は単に「スイッチング速度」と呼ばれる。概して、より短いスイッチング時間(したがってより高いスイッチング速度)は、一般的により少ないスイッチング損失をもたらすが、一般的にはより高いレベルのEMIも引き起こし、それによって回路部品が劣化するか、又は動作不能になるようなダメージが生じる場合がある。
【0027】
図1〜2の回路の適切な動作を担保するために、直流高電圧ノード11を交流アースとして維持しなければならない。即ち、
図5aに示されるように、コンデンサ51の一方の端子を高電圧ノード11に、且つコンデンサの他方の端子をアース12に接続することによって、ノード11を直流アース12に容量結合することができる。したがって、トランジスタ41又は42のどちらをオン若しくはオフに切り換えると、コンデンサ51が必要に応じて充電又は放電して、回路の高電圧側及び低電圧側における十分な定電圧を維持するのに必要な電流を供給することができる。より高いスイッチング速度によって生じたEMIにより、一般的に、回路を安定させるためにコンデンサ51がより高い電流レベルを供給することが必要になる。多くの場合、コンデンサ51と回路との間の導電性コネクタは、
図5bのインダクタ52及び53によって表される、大きな寄生インダクタンスを有する。この寄生インダクタンスによって、コンデンサ51を通過する電流が十分に迅速に切り換わることができないようになり、それによって、トランジスタ41若しくは42のどちらかがオン又はオフに切り換わった後のトランジスタ41若しくは42の両端間の電圧変動を防ぐのに十分な高速で、コンデンサ51が電流を供給することができなくなる。これによって、電圧振動(即ち、リンギング)及び過度に高レベルのEMIなどの有害な影響がもたらされる場合がある。特に、回路中のトランジスタのうちいずれかの両端間における過度に大きい電圧振動は、トランジスタの故障を引き起こし、トランジスタが動作不能になる場合がある。
【0028】
図6は、半ブリッジモジュールとして機能するように構成された電子部品の概略断面図である。電子部品は、寄生インダクタンスが最小限に抑えられるように構成され、それによって、後述するように、EMI及びリンギングが容認可能な程低い、非常に高いスイッチング速度での大きな電流及び電圧のハードスイッチングが可能になる。電子部品は、
図5aの回路図に示される回路素子のそれぞれを含む。具体的には、電子部品は、
図5aのトランジスタ41及び42にそれぞれ対応する、ハイサイドスイッチ60及びローサイドスイッチ70を含む。スイッチ60及び70は、スイッチ60及び70を固定することができる剛性の表面を提供すると共に、
図5aのコンデンサ51としても機能する、二層プリント回路(PCB)基板85の対向面に実装される。
図7a及び7bは、
図6の電子部品の斜視図であり、
図8a及び8bはそれぞれ、ハイサイドスイッチ60及びローサイドスイッチ70の断面図であって、スイッチ60及び70の個々のパッケージ内に収容されたトランジスタを示している。
【0029】
図8a及び8bに示されるように、スイッチ60及び70はそれぞれ、トランジスタを取り囲むパッケージに入れられ密閉されたトランジスタ90を含む。スイッチ60及び70のパッケージはそれぞれ、電気絶縁部分64及び74、並びに導電性ベース部分65及び75を含む。上記パッケージはまた、それぞれ、ソース線(source lead)61/71、ゲート線(gate lead)62/72、及びドレイン線(drain lead)63/73を含み、リード線はそれぞれ、絶縁部分64及び74それぞれの側壁の一つに接続されると共に、そこから延在する。いくつかの実現例では、ベース部分65及び75それぞれの一部分のみが導電性であり、他の実現例では、ベース部分65及び75それぞれの全体が導電性である。
図6〜8に示される代替実現例では、パッケージの部分64及び74は導電性材料で形成され、ソース線、ゲート線、及びドレイン線は、リード線を部分64及び74から電気的に隔離するために、絶縁材料によって部分64及び74から分離される。
【0030】
トランジスタ90(
図8a及び8bに示される)は、Eモード又はDモードトランジスタであることができるが、多くの用途では、Eモードトランジスタが好ましい。トランジスタ90は、一般的に、高電圧スイッチングトランジスタである。本明細書で使用されるとき、高電圧スイッチングトランジスタなどの「高電圧スイッチングデバイス」は、高電圧スイッチング用途向けに最適化された電子デバイスである。即ち、トランジスタがオフのときは、約300V以上、約600V以上、約1200V以上、又は約1700V以上などの高電圧を阻止することができ、トランジスタがオンのときは、トランジスタが使用される用途に対して十分に低いオン抵抗(R
ON)を有し、即ち、十分な電流がデバイスを通過するときに起こる導通損失が十分に低い。高電圧デバイスは少なくとも、高電圧源に等しい電圧、又はデバイスが使用される回路における最高電圧を阻止することができる。高電圧デバイスは、300V、600V、1200V、1700V、又は用途によって求められる他の適切な阻止電圧を阻止することが可能であってもよい。換言すれば、高電圧デバイスは、0V〜少なくともV
maxの間の任意の電圧を阻止することができ、ここで、V
maxは、回路又は電源によって供給することができる最大電圧である。いくつかの実現例では、高電圧デバイスは、0V〜少なくとも2*V
maxの任意の電圧を阻止することができる。本明細書で使用するとき、低電圧トランジスタなどの「低電圧デバイス」は、0V〜V
low(V
lowはV
maxよりも低い)などの低電圧を阻止することができるが、V
lowよりも高い電圧は阻止することができない、電子デバイスである。いくつかの実現例では、V
lowは、約|V
th|、|V
th|よりも大きい値、約2*|V
th|、約3*|V
th|、又は、約|V
th|と3*|V
th|との間の値、に等しく、ここで、|V
th|は、
図7a及び7bに示され、より詳細に後述されるような、ハイブリッド部品内に収容される、高電圧デプレッションモードトランジスタなど、高電圧トランジスタの閾値電圧の絶対値である。他の実現例では、V
lowは、約10V、約20V、約30V、約40V、又は約5Vと50Vとの間の値、例えば約10V〜40Vである。更に他の実現例では、V
lowは、約0.5*V
max未満、約0.3*V
max未満、約0.1*V
max未満、約0.05*V
max未満、又は約0.02*V
max未満である。
【0031】
図8a及び8bを参照すると、いくつかの実現例では、トランジスタ90は、横型電界効果トランジスタ(lateral field-effect transistor)などの横型デバイスである。即ち、トランジスタチャネルは、トランジスタ90の半導体層94内に収容され、ソース電極91、ゲート電極92、及びドレイン電極93は、それぞれ、図示されるように、半導体層94の同じ面にある。具体的には、層94内のチャネルに対するオーム接点を形成するソース電極91及びドレイン電極93の部分、並びにチャネル内の電流を変調するゲート電極92の部分はそれぞれ、半導体層94の同じ面にある。
【0032】
いくつかの実現例では、トランジスタ90は、III族窒化物高電子移動度トランジスタ(HEMT)などのIII族窒化物トランジスタである。III族窒化物トランジスタは、高いスイッチング速度でハードスイッチングされたときに被るスイッチング損失が最小限に抑えられるという能力により、
図6〜7の電子部品が使用される用途の多くに適している。本明細書で使用するとき、III族窒化物又はIII−N材料、層、デバイス、構造などの用語は、化学量論式Al
xIn
yGa
zN(x+y+zは約1)に従った化合物半導体材料から成る材料、層、デバイス、又は構造を指す。III族窒化物材料はまた、III族元素のホウ素(B)を含むことができる。トランジスタ若しくはHEMTなどのIII族窒化物又はIII−Nデバイスでは、導電性チャネルは、部分的又は全体的にIII−N材料層内に収容することができる。
【0033】
やはり
図8aを参照すると、トランジスタ90は、以下のようにハイサイドスイッチ60のパッケージに接続される。トランジスタ90は、パッケージベース部分65の上方に、又はその上に直接実装される。電気絶縁性又は半絶縁性である層95は、半導体層94とパッケージベース部分65との間にあり、半導体層94をパッケージベース部分65から電気的に隔離する役割を果たす。いくつかの実現例では、層95は絶縁性又は半絶縁性基板であり、その上にトランジスタ90の半導体層94をエピタキシャル成長させる。ソース電極91は、ワイヤ接合部34によってソース線61に電気的に接続される。ゲート電極92は、別のワイヤ接合部34によってゲート線62に電気的に接続される。ドレイン電極93(別のワイヤ接合部34を経由)及びドレイン線63はそれぞれ、パッケージベース65の導電性部分に電気的に接続される。トランジスタ電極91〜93間の電気的接続は、
図8aに示されるようにワイヤ接合部34によって、或いは他のタイプの電気コネクタによって形成することができる。
【0034】
本明細書で使用するとき、導電性の層若しくは部品など、2以上の接点又は他の部材は、バイアス条件に係わらず、接点又は他の部材それぞれにおける電位が実質的に同じ又はほぼ同じであることを担保するのに十分な導電性をもつ材料によって接続されている場合、「電気的に接続」されていると言われる。
【0035】
図8bを参照すると、トランジスタ90は、以下のようにローサイドスイッチ70のパッケージに接続される。トランジスタ90は、パッケージベース部分75の上方に、又はその上に直接実装される。電気絶縁性又は半絶縁性である層95は、半導体層94とパッケージベース部分75との間にあり、半導体層94をパッケージベース部分75から電気的に隔離する役割を果たす。いくつかの実現例では、層95は絶縁性又は半絶縁性基板であり、その上にトランジスタ90の半導体層94をエピタキシャル成長させる。ドレイン電極93は、ワイヤ接合部34によってドレイン線73に電気的に接続される。ゲート電極92は、別のワイヤ接合部34によってゲート線72に電気的に接続される。ソース電極93(更に別のワイヤ接合部34を経由)及びソース線73はそれぞれ、パッケージベース75の導電性部分に電気的に接続される。トランジスタ電極91〜93間の電気的接続は、
図6bに示されるようにワイヤ接合部34によって、或いは他のタイプの電気コネクタによって形成することができる。
【0036】
図6及び7a〜7bを再び参照すると、ハイサイドスイッチ60及びローサイドスイッチ70は、基板85の対向面上に実装され、互いに対して反転される。寄生インダクタンスを最小限に抑えるために、
図6に示されるように、ハイサイドスイッチ60の導電性ベース部分65のエリアの少なくとも50%がローサイドスイッチ70の導電性ベース部分75の反対側にあるようにして、ハイサイドスイッチ60及びローサイドスイッチ70を互いに対向させて実装することができる。例えば二層プリント回路(PCB)基板であることができる基板85は、図示されるように構成された、電気絶縁性材料83の対向面上にある導電性金属層81及び82を含む。
図6及び7a〜7bで分かるように、ハイサイドスイッチ60のパッケージの導電性ベース部分65は導電性金属層81に電気的に接続されるが、これは、図示されるように、導電性ベース部分65を導電性金属層81上に直接実装することによって実現することができる。同様に、ローサイドスイッチ70のパッケージの導電性ベース部分75は導電性金属層82に電気的に接続されるが、これは、図示されるように、導電性ベース部分75を導電性金属層82上に直接実装することによって実現することができる。いくつかの実現例では、導電性ベース部分65及び75を導電性金属層81及び82にそれぞれ固定するため、導電性及び/又は熱伝導性接着剤が使用される。
【0037】
スイッチ60及び70を固定することができる剛性の表面を提供することに加えて、基板85は、
図5a及び5bの回路図におけるコンデンサ51の機能も果たす。即ち、基板85は、導電性ベース部分65及び75がそれぞれ接続される金属層81及び82の表面の面積に静電容量が比例する、平行板コンデンサであるように構成される。そのため、更に後述するように、ハイサイドスイッチ60のドレイン93は導電性金属層81に電気的に接続され、ローサイドトランジスタ70のソース91は導電性金属層82に電気的に接続される。
【0038】
図6、7a、及び8aを参照すると、ハイサイドスイッチ60のパッケージの導電性ベース部分65は、導電性金属層81(その上に実装される)と、ハイサイドスイッチ60のトランジスタ90のドレイン電極93(ワイヤ接合部34を介する)の両方に電気的に接続されるので、ハイサイドスイッチ60のドレイン電極93は金属層81に電気的に接続される。導電性ベース部分65と導電性金属層81との間が直接接続されること、並びにドレイン電極93と導電性ベース部分65との間のワイヤ接合部34の長さが短いことによって、ハイサイドスイッチ60のドレイン電極93と金属層81との間の電気的接続が低インダクタンス接続であることが担保され、それによって、ハイサイドスイッチ60のトランジスタのドレイン93と導電性金属81との間の寄生インダクタンスが最小限に抑えられる。この寄生インダクタンスは、
図5bのインダクタ52によって表される。
【0039】
同様に、
図6、7b、及び8bを参照すると、ローサイドスイッチ70のパッケージの導電性ベース部分75は、導電性金属層82(その上に実装される)と、ローサイドスイッチ70のトランジスタ90のソース電極91(ワイヤ接合部34を介する)の両方に電気的に接続されるので、ローサイドスイッチ70のソース電極91は金属層82に電気的に接続される。導電性ベース部分75と導電性金属層82との間が直接接続されること、並びにソース電極91と導電性ベース部分75との間のワイヤ接合部34の長さが短いことによって、ローサイドスイッチ70のソース電極91と金属層82との間の電気的接続が低インダクタンス接続であることが担保され、それによって、ローサイドスイッチ70のトランジスタのソース91と導電性金属81との間の寄生インダクタンスが最小限に抑えられる。この寄生インダクタンスは、
図5bのインダクタ53によって表される。
【0040】
金属層81は、
図5a及び5bのコンデンサ51のプレートの一つであることに加えて、高電圧面としての役割を果たすこともできる。即ち、回路の高電圧源に直接接続されるように構成することができる。そのため、金属層81は、金属層81を回路の高電圧源に接続する手段、例えばボンディングパッド(図示なし)を含むことができる。好ましくは、回路の高電圧源と金属層81との間の接続は、寄生インダクタンスを最小限に抑えるために、ハイサイドスイッチ60にできるだけ接近して形成される。同様に、金属層82も、低電圧又はアース面としての役割を果たすことができる。即ち、回路の低電圧源又は直流アースに直接接続されるように構成することができる。そのため、金属層82は、金属層82を回路の低電圧源又は直流アースに接続する手段、例えばボンディングパッド(図示なし)を含むことができる。好ましくは、金属層82と回路の低電圧源又は直流アースとの間の接続は、寄生インダクタンスを最小限に抑えるために、ローサイドスイッチ70にできるだけ接近して形成される。
【0041】
図5a及び5bで分かるように、半ブリッジ回路では、ハイサイドスイッチ41のソース電極はローサイドスイッチ42のドレイン電極に電気的に接続される。
図6及び7a〜7bの電子部品では、これは、ハイサイドスイッチ60のソース線61をローサイドスイッチ70のドレイン線73に接続することによって達成される。この接続における寄生インダクタンスは、コネクタ22をできるだけ短くすることによって最小限に抑えることができる。これは、図示されるように、ハイサイドスイッチ60のソース線61がローサイドスイッチのドレイン線73とほぼ一直線上に配置される(align)のを担保することによって、また、コネクタ22を基板85の穴23に通すことによって達成することができる。次に、回路によって駆動されている電気負荷(図示なし)は、ハイサイドスイッチ60のソース線61、ローサイドスイッチのドレイン線73、又はコネクタ22のうち任意の一つに電気的に接続される。
【0042】
多くの場合、基板85の静電容量は、安定した回路動作に十分な程大きくないことがある。これらの場合、
図6及び7bに示される1以上の追加のコンデンサ31を、基板85によって形成されるコンデンサに並列に接続することができる。即ち、各コンデンサ31の一方の側は金属層81に接続され、各コンデンサ31の反対側は金属層82に接続される。寄生インダクタンスを最小限に抑えるために、コンデンサ31はスイッチ60及び70にできるだけ接近して配置され、コンデンサ31と金属層81及び82との間のコネクタはできるだけ短くされる。
図6及び7a〜7bで分かるように、コンデンサ31は、各コンデンサをビアホール33に接近させて、基板85の一方の面に実装することができる。次に、各コンデンサ31の一方の側は、基板85のコンデンサ31が実装されるのと同じ金属層に電気的に接続され、各コンデンサの反対側にあるコネクタは、ビアホール33を通り抜け、基板85のコンデンサとは反対側にある金属層に電気的に接続される。いくつかの実現例では、図示されるように、コンデンサ31と金属層81及び82との間の電気接続は、はんだ接合部32によって形成される。
【0043】
図8a及び8bでは、スイッチ60及び70はそれぞれ、パッケージに入れられた単一の横型トランジスタ90で形成されるものとして示されているが、他のデバイスを代わりに使用することができる。例えば、
図9a及び9bに示されるハイブリッドデバイス107を、トランジスタ90の代わりにスイッチ60及び70で使用することができる。高電圧エンハンスメントモードトランジスタは、高い信頼性で作製することが困難な場合があるので、単一の高電圧Eモードトランジスタに代わるものとして、
図9a及び9bの構成で、高電圧Dモードトランジスタ108を低電圧Eモードトランジスタ109と組み合わせて、ハイブリッドデバイス107を形成する。ハイブリッドデバイス107は、単一の高電圧Eモードトランジスタと同じように動作させることができ、多くの場合、単一の高電圧Eモードトランジスタと同じ又は同様の出力特性を実現する。
図9aは、ハイブリッドデバイス107の概略平面図を示し、
図9bは、ハイブリッドデバイス107の回路図を示す。ハイブリッドデバイス107は、高電圧Dモードトランジスタ108及び低電圧Eモードトランジスタ109を含む。
図9a及び9bに示される構成では、Eモードトランジスタ109は縦型トランジスタ(vertical transistor)であって、そのドレイン電極113が、そのソース電極111及びゲート電極112とはデバイスの反対側にあり、Dモードトランジスタ108は横型トランジスタであって、そのソース電極114、ゲート電極115、及びドレイン電極116が全てデバイスの同じ側にある。しかし、トランジスタ108及び109のそれぞれについて他の構成が同様に可能である。
【0044】
低電圧Eモードトランジスタ109のソース電極111及び高電圧Dモードトランジスタ108のゲート電極115は、例えばワイヤ接合部34によって互いに電気的に接続され、共にハイブリッドデバイス107のソース121を形成する。低電圧Eモードトランジスタ109のゲート電極112は、ハイブリッドデバイス107のゲート122として機能する。高電圧Dモードトランジスタ108のドレイン電極116は、ハイブリッドデバイス107のドレイン123として機能する。高電圧Dモードトランジスタ108のソース電極114は、低電圧Eモードトランジスタ109のドレイン電極113に電気的に接続される。
図7aで分かるように、Eモードトランジスタ109のソース電極111及びドレイン電極112とは反対側にあるドレイン電極113は、例えば導電性のはんだ又は樹脂を使用することにより、ドレイン電極113をソース電極114に直接接触させて、低電圧Eモードトランジスタ109をソース電極114の上に直接実装することによって、ソース電極114に電気的に接続することができる。そのため、低電圧Eモードトランジスタ109のフットプリント(且つしたがって、断面積)は高電圧Dモードトランジスタ108よりも小さいものであることができ、特に、低電圧Eモードトランジスタ109のフットプリントは、高電圧Dモードトランジスタ108のソース電極114よりも小さいものであることができる。
【0045】
本明細書で使用するとき、「ハイブリッドエンハンスメントモード電子デバイス又は部品」、或いは単に「ハイブリッドデバイス又は部品」は、デプレッションモードトランジスタがエンハンスメントモードトランジスタに比べて高い動作電圧及び/又は破壊電圧に対応可能であり、ハイブリッドデバイス又は部品が、デプレッションモードトランジスタとほぼ同じ破壊電圧及び/又は動作電圧で、単一のエンハンスメントモードトランジスタと同様に動作するように構成される、デプレッションモードトランジスタ及びエンハンスメントモードトランジスタで形成される電子デバイス又は部品である。即ち、ハイブリッドエンハンスメントモードデバイス又は部品は、次の性質を有する少なくとも三つのノードを含む。第1のノード(ソースノード)及び第2のノード(ゲートノード)が同じ電圧で保たれているとき、ハイブリッドエンハンスメントモードデバイス又は部品は、ソースノードに対して第3のノード(ドレインノード)に印加される高い正電圧(即ち、エンハンスメントモードトランジスタが阻止することができる最大電圧よりも高い電圧)を阻止することができる。ゲートノードがソースノードに対して十分な正電圧(即ち、エンハンスメントモードトランジスタの閾値電圧よりも高い)で保たれているとき、ソースノードに対して十分な正電圧がドレインノードに印加されると、電流は、ソースノードからドレインノードへ、又はドレインノードからソースノードへと移動する。エンハンスメントモードトランジスタが低電圧デバイスであり、デプレッションモードトランジスタが高電圧デバイスであるとき、ハイブリッド部品は、単一の高電圧エンハンスメントモードトランジスタと同様に動作することができる。デプレッションモードトランジスタは、エンハンスメントモードトランジスタの少なくとも二倍、少なくとも三倍、少なくとも五倍、少なくとも十倍、若しくは少なくとも二十倍の破壊電圧及び/又は最大動作電圧を有することができる。
【0046】
高電圧スイッチングトランジスタが使用される一般的なパワースイッチング用途では、ほとんどの時間、トランジスタは二つのうち一つの状態にある。一般に「オン状態」と呼ばれる第1の状態では、ソース電極に対するゲート電極の電圧はトランジスタの閾値電圧よりも高く、十分な電流がトランジスタを流れる。この状態では、ソースとドレインとの間の電圧差は一般的に低く、通常、約0.1〜5ボルトなど、数ボルト以下である。一般に「オフ状態」と呼ばれる第2の状態では、ソース電極に対するゲート電極の電圧はトランジスタの閾値電圧よりも低く、オフ状態の漏れ電流を除くと、実質的に電流はトランジスタを全く流れていない。この第2の状態では、ソースとドレインとの間の電圧は、約0Vから回路の高電圧源の値までの範囲であることができ、場合によっては、100V、300V、600V、1200V、1700V、又はそれ以上であり得るが、トランジスタの破壊電圧未満でもあり得る。いくつかの用途では、回路中の誘導素子によって、ソースとドレインとの間の電圧が回路の高電圧源よりも更に高くなる。それに加えて、ゲートがオン又はオフに切り換えられた直後に短い時間があり、その間、トランジスタは上述した二つの状態の間の遷移モードにある。トランジスタがオフ状態のとき、それは、ソースとドレインとの間の「電圧を阻止する」と言われる。本明細書で使用するとき、「電圧を阻止する」とは、トランジスタ、デバイス、又は部品の両端間に電圧が印加されたとき、標準的なオン状態の導通の間の平均動作電流の0.001倍を超える電流などの、意味のある(影響がある)電流が、トランジスタ、デバイス、又は部品を流れないようにする、トランジスタ、デバイス、又は部品の能力を指す。換言すれば、トランジスタ、デバイス、又は部品がその両端間に印加されている電圧を阻止している間、トランジスタ、デバイス、又は部品を通過する合計電流は、標準的なオン状態の導通の間の平均動作電流の0.001倍を超えない。
【0047】
本明細書に記載する電子部品は、スイッチ及びスイッチに含まれるトランジスタが、電子部品が使用される回路を不安定にすることなく、又は回路部品に損傷を与えることなく、高いスイッチング速度で高電圧及び/又は高電流を切り換えることができるように構成される。各スイッチが1以上のトランジスタで形成され、個別にパッケージ化される(即ち、ハイサイドスイッチのトランジスタが全て第1のパッケージに入れられ、ローサイドスイッチのトランジスタが全て第2のパッケージに入れられる)、ハイサイド及びローサイドスイッチで形成される従来の半ブリッジ回路では、寄生インダクタンスが一般的に大きすぎるため、電子部品が使用される回路を不安定にすることなく、高いスイッチング速度で高電圧及び/又は高電流を切り換えることが、困難若しくは不可能であるのが一般的である。
図6及び7a〜7bに示される半ブリッジの構成を利用することによって、更に後述するように、切り換えられる電圧が少なくとも300ボルトであり、切り換えられる電流が少なくとも3アンペアである条件下で、少なくとも100ボルト/ナノ秒の速度でのスイッチングの成功が実証されている。追加の試験では、切り換えられる電圧が少なくとも400ボルトであり、切り換えられる電流が少なくとも6アンペアである条件下で、少なくとも100ボルト/ナノ秒の速度でのスイッチングの成功が実証された。3アンペアという高い電流を切り換える場合、個別にパッケージ化されたスイッチを利用する半ブリッジ回路の従来の実現例では、少なくとも100ボルト/ナノ秒のスイッチング速度で少なくとも300ボルトの電圧を切り換えることには成功していなかった。
【0048】
図10aは、誘導負荷を駆動している半ブリッジ回路のハイサイドスイッチングに対する時間の関数としての電流及び電圧特性のプロットを示す。回路は、
図2a〜2cのように構成されるが、
図6の電子部品が半ブリッジ15の代わりに使用されている。
図10a、2a〜2c、及び6を参照すると、半ブリッジのハイサイド及びローサイドスイッチはそれぞれ、
図9a及び9bのハイブリッドデバイス107を含む。
図10aにプロットされている電流は、誘導負荷21を通過する電流27であり、
図10aにプロットされている電圧はノード17(誘導負荷21、ハイサイドスイッチのソース線61、及びローサイドスイッチのドレイン線73によって共有されている共通ノード)の電圧である。
【0049】
図10aの電圧及び電流測定中の回路の動作条件は以下の通りであった。駆動されていた半ブリッジとは反対側の誘導負荷21のノードである、ノード18は、アース又はその付近で保持した。ローサイドスイッチ70のソースに電気的に接続される、
図6に示される電子部品の金属層82は、直流アースに電気的に接続した。ハイサイドスイッチ60のドレインに電気的に接続される、
図6に示される電子部品の金属層81は、400ボルトの直流電圧源に電気的に接続した。ローサイドスイッチ70をバイアスをかけられオフ状態にするように、ローサイドスイッチ70のソース線71に対して、ローサイドスイッチ70の閾値電圧よりも低い電圧でローサイドスイッチ70のゲート線72にバイアスをかけた。
【0050】
時限141の間、ハイサイドスイッチ60にバイアスをかけてオンにして(即ち、ソース線61に対するゲート線62の電圧はスイッチ60の閾値電圧よりも高かった)、
図2bのように、ハイサイドスイッチ60及び誘電負荷21の両方を電流が流れるようにし、ローサイドスイッチ70は約400ボルトの電圧を阻止した。
図10aで分かるように、時限141の間、負荷電流131は時限141の終了時には7アンペアよりも高い値になるまでほぼ線形的に増加し、ノード17の電圧は約400ボルトでほぼ一定のままであった。
【0051】
やはり
図10aを参照すると、時間144で、ハイサイドスイッチ60をオフに切り換えて、ハイサイドスイッチ60が約400ボルトの電圧を阻止すると共に、
図2cのように、負荷電流がローサイドスイッチ70を通って逆方向に流れるようにした。時間144におけるスイッチングの直後の時限142の間、負荷電流131は7アンペアよりも高い値でほぼ一定のままであり、ノード17の電圧は約0ボルトでほぼ一定のままであった。小さいリップル電流(即ち、電流変動)のみがスイッチング時間144の直後に観測され、時限142の間の電流は、この時限の間の平均電流値の1.1倍を上回ることはなかった。スイッチング時間144の直後の電圧変動も非常に低かった。
【0052】
時間145で、ハイサイドスイッチ60を再びオンに切り換えて、
図2bのように、負荷電流がハイサイドスイッチ60及び誘電負荷21の両方を再び流れるようにし、ローサイドスイッチは約400ボルトの電圧を阻止した。
図10aで分かるように、スイッチング時間145の直後の時限143の間、負荷電流131は時限143の終了時には7アンペアよりも高い値(ほぼ8アンペア)になるまでほぼ線形的に増加し、ノード17の電圧は約400ボルトでほぼ一定のままであった。スイッチング時間145の直後、電流131及び電圧132の両方に多少のリンギングが観測された。しかし、電圧が500ボルト(即ち、回路の高電圧の1.25倍)を上回ることはなく、電流変動の振幅は、時限142の間の平均電流値の0.1倍を上回ることはなかった。
【0053】
図10bは、
図3aのように構成され、但し
図6の電子部品が半ブリッジ15の代わりに使用されている、誘導負荷を駆動している半ブリッジ回路のローサイドスイッチングに対する時間の関数としての電流及び電圧特性のプロットを示す。半ブリッジのハイサイド及びローサイドスイッチはそれぞれ、
図9a及び9bのハイブリッドデバイス107を含む。
図10b、6、及び3aを参照すると、
図10bにプロットされている電流は、誘導負荷21を通過する電流27であり、
図10bにプロットされている電圧はノード17(誘導負荷21、ハイサイドスイッチのソース線61、及びローサイドスイッチのドレイン線73によって共有されている共通ノード)の電圧である。
【0054】
図10bの電流及び電圧測定中の回路の動作条件は以下の通りであった。駆動されていた半ブリッジとは反対側の誘導負荷21のノードである、ノード18は、400ボルト直流又はその付近で保持した。ローサイドスイッチ70のソースに電気的に接続される、
図6に示される電子部品の金属層82は、直流アースに電気的に接続した。ハイサイドスイッチ60のドレインに電気的に接続される、
図6に示される電子部品の金属層81は、400ボルトの直流電圧源に電気的に接続した。ハイサイドスイッチ60にバイアスをかけてオフ状態にするように、ハイサイドスイッチ60のソース線61に対して、ハイサイドスイッチ60の閾値電圧よりも低い電圧でハイサイドスイッチ60のゲート線62にバイアスをかけた。
【0055】
時限151の間、ローサイドスイッチ70にバイアスをかけてオフにして(即ち、ソース線71に対するゲート線72の電圧はスイッチ70の閾値電圧よりも低かった)、
図3cのように、ハイサイドスイッチ60及び誘電負荷21の両方を電流が流れるようにし、ローサイドスイッチ70は約400ボルトの電圧を阻止した。
図10bで分かるように、時限151の間、負荷電流133は約8アンペア以上の値でほぼ一定のままであり、ノード17の電圧は約400ボルトでほぼ一定のままであった。
【0056】
やはり
図6、3a〜c、及び10bを参照すると、時間154で、ローサイドスイッチ70をオンに切り換えて、ハイサイドスイッチ60が約400ボルトの電圧を阻止すると共に、
図3bのように、負荷電流がローサイドスイッチ60を通って流れるようにした。時間154におけるスイッチングの直後の時限152の間、負荷電流133は9アンペアよりも高い値までほぼ線形的に増加し、ノード17の電圧は約0ボルトでほぼ一定のままであった。小さいリップル電流(即ち、電流変動)のみがスイッチング時間154の直後に観測され、時限152の間の電流変動の振幅は、時限151の間の平均電流値の1.1倍を上回ることはなかった。スイッチング時間154の直後の電圧変動も非常に低かった。
【0057】
時間155で、ローサイドスイッチ60を再びオフに切り換えて、
図3cのように、負荷電流がハイサイドスイッチ60及び誘導負荷21の両方を再び流れるようにし、ローサイドスイッチ60は約400ボルトの電圧を阻止した。
図10bで分かるように、スイッチング時間155の直後の時限153の間、負荷電流133は9アンペアよりも高い値でほぼ一定のままであり、ノード17の電圧は約400ボルトでほぼ一定のままであった。スイッチング時間155の直後、電流133及び電圧134の両方に多少のリンギングが観測された。しかし、電圧が460ボルト(即ち、回路の高電圧の1.15倍)を上回ることはなく、電流変動の振幅は、時限153の間の平均電流値の0.1倍を上回ることはなかった。
【0058】
図11は、
図6及び7bのローサイドスイッチ70に対する代替の構成を示す。
図11で分かるように、
図6及び7bのようにローサイドスイッチ70を金属層82上に直接実装する代わりに、金属マウント76が金属層82に取り付けられ、ローサイドスイッチ70は、導電性部分75が金属マウント76に電気的に接続された状態で、金属マウント76に取り付けられる。
図11に示される実現例では、金属マウント76のローサイドスイッチ70が取り付けられる部分が、金属マウント76の金属層82に取り付けられる部分に対してほぼ垂直であるように、金属マウント76はL字形の屈曲を含む。そのため、ローサイドスイッチ70は、図示されるように、リード線71〜73が金属層82の表面に直交する方向に延在し、その方向にほぼ平行であるようにして実装される。ソース線71は、リード線72及び73よりも短くすることができ、例えば、図示されるように、はんだ接合部32’によって、金属層82に電気的に接続することができる。ゲート線72及びドレイン線73は、
図11に示されるように、ビアホール23を通り抜けて、基板85の厚さ全体を通して延在することができる。基板85の
図11に示されるのと反対側(即ち、基板85のハイサイドスイッチ60が実装される側)では、ローサイドスイッチ70のドレイン線72をハイサイドスイッチ60のソース線61に電気的に接続することができ(接続は図示なし)、ゲート線71をゲート駆動回路(やはり図示なし)に接続することができる。金属マウント76は、任意にヒートシンク(図示なし)に接続することができる。
【0059】
図11に示されるローサイドスイッチ70の構成は、ローサイドスイッチ70のリード線71〜73をいずれも屈曲させる必要なく、電子部品を組み立てることが可能になるという点で有利であり得る。ハイサイドスイッチ60は依然として、ハイサイドスイッチ60のソース線61がローサイドスイッチ70のドレイン線73とほぼ一直線上に配置された(align)状態で、
図6及び7aに示されるように構成することができる。或いは、ローサイドスイッチ70を、
図6及び7bのように、導電性ベース75の表面を金属層82の表面と平行にして実装することができ、ハイサイドスイッチ60を、ハイサイドスイッチからのソース線61及びゲート線62(図示なし)が基板85に形成されたビアホール23の一つを別々に通過し、ドレイン線63(図示なし)が金属層81に電気的に接続された状態で、
図11の構成と同様に、L字形の金属マウント76(図示なし)上に実装することができる。
【0060】
多数の実現例について記載してきた。しかしながら、本明細書に記載する技術及びデバイスの趣旨並びに範囲から逸脱することなく、様々な修正が成されてもよいことが理解されるであろう。例えば、
図2a〜c及び3a〜cにおいて電流をシンク又は供給するのに使用される、トランジスタ44及び43はそれぞれ、ソフトスイッチングされるように構成することができる。又は、
図2〜3のトランジスタ43〜44を排除し、各トランジスタのソース及びドレインがそれぞれ接続されたリード線を短絡する導電性材料と置き換えることができる。更に、本明細書に記載するブリッジ回路それぞれの低電圧側を、低電圧側をアースに接続する代わりに、場合によっては負であり得る、高電圧HVよりも低い直流電圧に接続することができる。また、パッケージのリード線61〜63及び71〜73は、
図7a〜b及び8a〜bではパッケージの側面から延在するように示されているが、代替のリード線構成を有する他のパッケージ構成を使用することができる。例えば、QFNパッケージなどの表面実装パッケージを使用することができるが、その場合、リード線はパッケージの底部に隣接し、それらが接続される構造にはんだ付けするように構成される。それに加えて、
図6及び7a〜7bの電子部品では、金属マウントを、基板85とスイッチ60及び70の一方又は両方との間に含めることができ、金属マウントを任意にヒートシンクに接続することができる。したがって、他の実現例は以下の請求項の範囲内である。