【文献】
中川精和,溶融炭酸塩型燃料電池における構成材料の腐食,鉄と鋼,1989年10月,Vol.75, No.10,p.1852-1860,ISSN:0021-1575
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステンレス鋼からなるケーシング内の下部に少なくもニッケル(Ni)とクロム(Cr)とを含む金属元素供給体と、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)とを収納し、前記ケーシングと金属元素供給体の組合せとして、SUS304とSUS304、SUS316LとSUS304、SUS316LとNi・Cr合金及びSUS304とSUS316の組合せのうち、いずれか一つを選択し、前記ケーシングを水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの融点以上で700℃以下に加熱して溶融塩触媒とし、この溶融塩触媒から微細粒子を触媒上の反応空間内に飛散せしめ、この微細粒子に水蒸気を反応空間内で接触せしめて水素を発生せしめ、前記ケーシング内に、水素の発生に伴って前記水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが逐次補給される、水から水素を発生させる水素発生方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施態様について説明する。
図1は、本発明の一実施態様の水素発生装置の基本構造を示すものであり、例えば、SUS304からなるケーシング(触媒筒)1には、水の注入口2と水素の出口3が設けられ、水はケーシング1内の蒸気室4内に注入される。蒸気室4が触媒筒内で一体に形成されると構成が簡単となると共に触媒と同一の加熱装置によって加熱されることができる。ケーシング1の下面は、ヒーター(加熱装置)5によって加熱され、これによりケーシング1内は300〜600℃に加熱される。ケーシング1内には触媒室6が形成され、この触媒室6内には触媒Cが収納されている。また、金属元素供給体(フィン材料)7も収納され、例えば、これはCr−Ni−FeからなるSUS304の板材である。触媒室6の上部は、水蒸気を流すための水蒸気通路(反応空間)8であり、ここを水蒸気が通るようになっており、蒸気室4で生成された120〜130℃の過熱水蒸気は、水蒸気通路8で分解され、ここで分解された水素は出口3から放出される。
【0033】
また、水蒸気通路8には、触媒Cから飛散した細かいナノオーダーの粒子が無数に存在して、細粒群11をなしている。
【0034】
図2は、縦型の基本構造を示すものであり、水の分解反応は、主として水蒸気と触媒Cから飛散した細粒群との間で行われるので、細粒群が多量に飛散する構造にするのが好ましい。すなわち、縦型の、例えばSUS304からなる円筒状のケーシング(触媒筒)20の底部には、触媒Cが注入され、この触媒C内には、金属元素供給体(フィン材料)7が収納され、前記触媒C上には触媒Cの細粒群11が存在し、ケーシング(触媒筒)20内には、水パイプ21が臨まされ、その下端には、筒状の水受け(蒸気発生部)22が設けられ、水パイプ21から滴下した水は、水受け22の底面に当って120〜150℃の水蒸気となり、この水蒸気は反応空間24内で前記細粒群11と反応する。前記ケーシング20の外面は面状ヒータ(加熱装置)23により300〜600℃に加熱される。
なお、横型の利点は、触媒Cの液面の面積が広くなり、細粒群11が飛び出す面積が大きくなり、細粒群11の反応空間における濃度が高まる。これに対して縦型の利点は反応空間が大きな容積となるばかりでなく、ケーシングの上面に溶接部分を作ることができ、溶接部分と触媒の液面からの距離が離れるので溶接部分の侵食が防止できる。このように面状ヒータを使用すると、反応空間24と触媒を収納している底部分も均一に加熱でき、特に反応空間24の温度低下を防止することができる。
【0035】
以下、反応に関わる各要素に区分して述べる。
【0036】
1.供給水について
一般の水でよく、水道水程度の塩素(Cl)を含んでいても支障はない。水は加熱されて120〜150℃の水蒸気になり、この水蒸気が反応空間8、11に供給されるので、硬水でも、蒸気室4又は水受け22でミネラル分は除去されるので問題はない。海水の場合は、蒸気室4又は水受け22に塩分(NaCl)が残り、量が多くなれば、除去しなければならない。したがって、海水、硬水の場合には、蒸気室と触媒を収納したケーシング1を別個に設け、塩分、ミネラル分の除去が便利なように構成するとよい。
【0037】
2.触媒について
1)溶融塩
吸湿性の大きなアルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物である水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化バリウム(Ba(OH)
2)、および水酸化ストロンチウム(Sr(OH)
2)のうち、少なくとも1種又はこれらの物質の数種の混合物である。
すなわち、アルカリ金属水酸化物(アルカリ土類金属水酸化物を含む)のうち、300〜600℃で溶融し、他の金属元素を溶融して溶融塩を生成するもので、例えば水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)は、この温度範囲では固体であり溶融塩を作らないし、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)は、高温で分解して液状にならない。水酸化リチウム(LiOH)は、溶融塩を作るが、実験では水素は発生しなかった。また、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)は、溶融塩を作るが、850℃以上必要であり、実用的でないが、炭酸リチウム(Li
2CO
3)および炭酸カリウム(K
2CO
3)は、700℃以下で溶融塩を作り、水素を発生させる。
【0038】
なお、触媒は300℃〜600℃に加熱して溶融状態で使用するので、これらの温度に加熱すると、液面からはこの成分の微粒子が飛散し、この微粒子の径はナノオーダーであり目には見えない。なお、触媒は、水蒸気との接触度を高めるためには、大きな吸湿性を有することが必要である。
【0039】
2)固体
なお、触媒は必ずしも溶融塩でなくともよく、固体状態として使用してもよい。すなわち、アルカリ金属水酸化物(NaOH、KOH等)に例えば、金属酸化物(一般に融点はアルカリ金属水酸化物の融点よりかなり高い)である酸化チタン(TiO
2)、酸化マグネシウム(MgO)等を加えて混合した粒子を
図1、
図2のケーシング1、20内に入れ、そのまま500℃前後に加熱すれば、金属水酸化物は溶融し、固体の金属酸化物と反応して化合物となる。この場合、アルカリ金属水酸化物と金属酸化物の重量比は3:1位が好ましい。かかる化合物においても、その表面から細粒群11が飛散してこの細粒群と水蒸気とが反応して水素が分離される。
【0040】
更に詳しく説明すれば、前記化合物は、少なくとも一種類の親水性の低融点(250〜450℃)の金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム(NaOH))、水酸化カリウム(KOH)、水酸化バリウム(Ba(OH)
2)(融点408℃)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)
2)の少なくとも一種類(粒状)に、粉状または粒状の他の金属酸化物(酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ニッケル(NiO)、酸化スズ(SnO
2)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化銅(CuO)、酸化タングステン(WO
3)、酸化クロム(Cr
2O
3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化モリブデン(MoO
3)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化バリウム(BaO)の少なくとも一種類を均一に混合させ、ケーシング1,20内で加熱すると、水酸化カリウム(KOH)と酸化チタン(TiO
2)の場合、両者の加熱中には
2KOH+2TiO
2→K
2Ti
2O
5+H
2O …(a)
の反応により脱水して複合金属酸化物であるチタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)が生じる。
【0041】
なお、酸化チタンと同様に酸化ジルコニウム(ZrO
2)も、水酸化カリウムと化合物を作るときに、
2KOH+2ZrO
2→K
2Zr
2O
5+H
2O …(b)
の反応をして、ジルコン酸カリウム(K
2Zr
2O
5)を生じ、これも上述のチタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)と同様の作用をする。
【0042】
同様に、酸化マグネシウム(MgO)と水酸化ナトリウム(NaOH)の反応は、
MgO+2NaOH→Na
2MgO
2+H
2O …(c)
となり、マグネシウム酸ナトリウムが出来る。
【0043】
水酸化ナトリウム(NaOH)と水酸化カリウム(KOH)は類似の性質を有するので、交換しても良く、また、両者を加えたものに他の成分を加えてもかまわない。
【0044】
3.金属元素供給体について
アルカリ金属溶融塩の液体触媒又はアルカリ金属水酸化物と金属酸化物との金属化合物からなる固体触媒中に溶かす金属としては、水素と酸素との結合を裁断して電子を放出する作用をする、例えば、ニッケル(Ni)、パラシウム(Pd)および白金(Pt)のうち、少なくとも1種の元素を含むことが必要であり、更に液体、固体触媒中で放出された電子の移動を助長する電極としての作用をする元素、例えば、遷移元素のうち、クロム(Cr)、鉄(Fe)、タングステン(W)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)およびモリブデン(Mo)を含むことが好ましいことが確認されている。なお、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)は、単独では反応が激し過ぎて使用が難しい。従って、他の勤続との合金を作って使用することが好ましい。これらの条件を具備する金属材料としては、SUS304ステンレス鋼(18Cr−8Ni−残Fe)が最も安定しており、使用し易い。また、SUS316のようにMoを若干含むものは反応が良好であることが確認されている。なお、ニッケル単体で他の遷移元素を含まない場合、鉄単体で他の遷移元素を含まない場合は(水素を発生せしめる)反応はせず、鉄−ニッケル合金、ニッケル−クロム合金は水素を発生するが、SUS430のようなクロム−鉄合金でニッケル、パラジウム、白金を含まない場合は、反応が長く続かない。なお、金属供給体の形状は、フィン状、塊状又は粉状でも良い。
【0045】
また、ニッケル容器の中に水酸化ナトリウムを入れ、金属供給体としてSUS304を入れた場合も水素は発生しなかった。
【0046】
すなわち、ケーシング1,20も金属元素供給体としての作用を果たし、これらの関係で水素が発生したりしなかったりする。その関係を表1に示す。
【0048】
なお、表1においては、溶融塩(NaOH)とケース材料とフィン材料との関係を示し、固体触媒でも同じような関係にあると思われる。ここで、最も適切な組合せは、表1におけるNo.1、2、4、
13の組合せであり、溶融塩中には、Ni、Cr、Feが存在すれば安定して水素が発生し、Moが存在すると更に反応は良くなる(No.
13)。また、No.
5に示すように、Fe、Crが存在せず、Niのみでは反応しないことが判る。また、Niの代わりにPd(パラジウム)でもよいことが判る(No.
9)。これによりNi、Pdと同族であるPt(白金)でも発生すると思われる。
【0050】
4.水素を発生させるメカニズム
1)準備
a)溶融塩触媒
アルカリ金属を含む水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)並びにアルカリ土類金属を含む水酸化バリウム(Ba(OH)
2)、又は水酸化ストロンチウム(Sr(OH)
2)のうち、1種又は2種以上の混合物を触媒室に入れる。実験の結果、水酸化ナトリウム単体を触媒として使うことが最も好ましく、次に水酸化カリウムが好ましく、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムは水素を発生させる量が少ないことが判明している。2種以上の混合では水酸化ナトリウム単体の場合より良い結果が得られていないが、水素は発生する。
【0051】
次に、ヒーター5、23を作動させて触媒室6を触媒の溶融温度以上に加熱する。すなわち、水酸化ナトリウムの溶融温度は340℃であるが、市販のものは不純物が入っているので280〜300℃程度で溶融する。なお、水酸化カリウムの溶融温度は、360℃であるが、市販のものは、320〜340℃程度で溶融する。したがって、これらの触媒を使用する場合は、300℃以上に加熱することが必要であり、金属元素供給体7からの元素をこれらの溶融塩に充分に溶融させるためには、当初は500〜600℃に数時間加熱するのがよい。ケーシング1,20をSUS304として、金属元素供給体7としてはSUS304(主成分:Cr18%−Ni8%−残Fe)が最も好ましく、SUS316L(主成分:Cr18%−Ni12%−Mo2.5%−低C(0.03%以下)−残Fe)はSUS304よりも反応が激しくなる。なお、アルカリ金属炭酸塩(炭酸リチウム(Li
2O
3)、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3))でも良く、これらの溶融塩内では、これらの溶融温度以上に加熱すると金属イオン(Na
+、K
+、Sr
2+、Ba
2+)と水酸化物イオン(OH
-)又は炭酸イオン(CO
32-)に電離している。
【0052】
b)固体触媒
固体触媒としてKOH又はNaOH等のアルカリ金属水酸化物の粒子とTiO
2、MgO等の金属酸化物(粉状又は粒状)を約3:1(質量比)の割合で均一に混合してケーシング1,20に入れて約450〜550℃程度に加熱すると金属水酸化物は溶融し、金属酸化物と反応して脱水しながら500℃前後で固体の化合物を作る(K
2Ti
2O
5、K
2MgO
2)。
【0053】
2)水素初期発生
a)溶融塩触媒
触媒室の温度が十分に上昇し、SUS304の場合にNi、Fe、Cr元素が十分に溶融塩中に溶け出してくると、これらの遷移元素はイオン化し(Ni
2+、Fe
2+、Cr
2+)、それとともに電子(e
-)が溶融塩10の中に放出される(
図3)。一方、水酸化ナトリウム(NaOH)の場合(水酸化カリウム(KOH)の場合にはNaをKに置換して考える)、溶融塩は電離してナトリウムイオン(Na
+)と水酸化物イオン(OH
-)に別れている。溶融塩10の液面からは、細かいナノオーダーの溶融塩の細粒群11が発生している。
【0054】
水を注入する前には、各金属元素から放出された電子(e
-)が溶融塩中で電離している水酸化物イオン(OH
-)に作用して水素(H
2)と2価の酸素イオン(O
2-)が発生する。
OH
- + e
- → 1/2H
2↑ + O
2- ・・・(1)
この2価の酸素の陰イオン(O
2-)は、電離しているナトリウムイオン(Na
+)と反応して酸化ナトリウム(Na
2O)を生ぜしめる。
【0055】
2Na
+ + O
2- → Na
2O ・・・(2)
ここで発生した酸化ナトリウム(Na
2O)は、後に注入される水蒸気(H
2O)と反応して水酸化ナトリウム(NaOH)となる。
【0056】
Na
2O + H
2O → 2NaOH ・・・(3)
この水酸化ナトリウムは電離して、ナトリウムイオン(Na
+)と水酸化物イオン(OH
-)に別れる。
【0057】
このようにして水を注入する前においても、金属元素が十分に溶融塩中に溶け出すと水素(H
2)が発生することとなり、(1)式において、水酸化物イオン(OH
-)を切断する作用をニッケルイオン(Ni
2+)が触媒として助長し、電子(e
-)の移動を助長して反応を活性させる役割をクロムイオン(Cr
2+)、鉄イオン(Fe
2+)が担っている。そして、(3)式によって、(1)式による水酸化物イオン(OH
-)の減少を水蒸気注入後に補うこととなる。
【0058】
b)固体触媒
水酸化カリウムと酸化チタンの場合においては、
2KOH + 2TiO
2 → K
2Ti
2O
5 + H
2O↑ ・・・(4)
のような反応をし、水蒸気が発生するが、水を注入する前には、300℃以上でKOHが溶融して、TiO
2粒子と反応するが、この際KOHは電離して溶融塩触媒と同じような作用をする。
【0059】
すなわち、各金属元素が溶融して電子リッチな雰囲気内で、
OH
- + e
- → 1/2H
2↑ + O
2- ・・・(5)
の反応により水素を発生する。
【0060】
(2)、(3)式と同じように、
2K
+ + O
2- → K
2O ・・・(6)
K
2O + H
2O → 2KOH ・・・(7)
となり、溶融塩(KOH)を補うこととなる。
【0061】
3)主反応
a)溶融塩触媒
水蒸気(H
2O)からの水素(H
2)の主たる分離は、溶融液面S(
図3)から上方に飛散して水蒸気通路8に充満している細粒群11が行ない、これに加えて溶融液面Sでも水素の分離が行われ、更には溶融液の中でも行われる。
【0062】
図4において、細粒群11の中の径がナノオーダーである細粒12は、溶融塩内の成分と同一の成分を有し、電離したナトリウムイオン(Na
+)と水酸化物イオン(OH
-)と溶融金属成分のニッケルイオン(Ni
2+)、クロムイオン(Cr
2+)と鉄イオン(Fe
2+)を含み、更には、各金属元素から放出された電子(e
-)を含んでいる。この細粒12に水蒸気(120〜150℃)が当たると、細粒12は強い吸湿性を有しているので、その周囲12aは水蒸気で濡れるが、そこに存在している電子(e
-)の作用により水蒸気は水素(H
2)と水酸化物イオン(OH
-)を生ぜしめる。
2H
2O + 2e
- → H
2 + 2OH
- ・・・(8)
【0063】
ここで発生した水酸化物イオン(OH
-)(以後Aイオンという)はナトリウムイオン(Na
+)と平衡状態にある水酸化物イオン(OH
-)(以後Bイオンという)と置換可能であり、AイオンとBイオンは混在状態となる。これにより水酸化物イオンは余剰となり、この余剰の水酸化物イオン(OH
-)は2個結合して水蒸気と2価の酸素イオン(O
2-)とを生成する。
2OH
- → H
2O↑ + O
2- ・・・(9)
【0064】
ここで生じた水(H
2O)は、(8)式により電子リッチな雰囲気の中で、再び水素を発生せしめる。このようにして、順次水素が発生していく。
【0065】
ここでの2価の酸素イオン(O
2-)はナトリウムイオン(Na
+)と結合して酸化ナトリウム(Na
2O)となる。
2Na
+ + O
2- → Na
2O ・・・(10)
【0066】
この酸化ナトリウムは新たに供給された水(H
2O)と反応して水酸化ナトリウムを生成する。
Na
2O + H
2O → 2NaOH ・・・(11)
【0067】
こうして、水酸化ナトリウムが補充され、この段階ではナトリウムイオン(Na
+)の減少はない。
【0068】
このようなサイクルによって、水素ガスが順次発生していくが、水素ガスの発生に応じて水から分離した酸素が順次残留していくことになる。この残留酸素は十分な量が存在するナトリウムイオン(Na
+)によって酸化されて酸化ナトリウム(Na
2O)となり、次いで水と反応して水酸化ナトリウム(NaOH)となる((10)(11)式)。これらの水酸化ナトリウムは、細粒群11(
図3,4)となり、その一部は水素ガス(H
2)と共に排出し、水タンクからなる後述の水蒸気除去室でトラップされる。この水酸化ナトリウム溶液を触媒室6に戻してやれば、触媒を補うことができる。このシステムは触媒補充装置を構成している。
【0069】
なお、溶けたニッケルイオン(Ni
2+)は、(8)、(9)式の反応が活発に起きるように電子の操作をする作用をし、クロムイオン(Cr
2+)や鉄イオン(Fe
2+)は、ニッケルイオン(Ni
2+)の作用を補助し、電子(e
-)の移動を活発にする電極の作用をする。
【0070】
b)固体触媒
金属水酸化物(NaOH、KOH等)と金属酸化物(TiO
2、MgO等)との化合物は、水蒸気が注入されると、KOHの場合において、
【0072】
の反応をし、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムを生じ、この反応は可逆反応であり、酸化チタンと水酸化カリウムの場合には、
図5,6に示すように、固体部分25は、チタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)と水酸化カリウム(KOH)と、酸化チタン(TiO2)との混合物となる。ここでの飛散する細粒群26の細粒27は、その表面27aが水により溶けて混合物となり、また電子リッチの状態であるので、(8)乃至(11)式と同じように、
2H
2O + 2e
- → H
2 + 2OH
- ・・・(13)
2OH
- → H
2O↑ + O
2- ・・・(14)
2K
+ + O
2- → K
2O ・・・(15)
K
2O + H
2O → 2KOH ・・・(16)
となり、触媒を補うこととなる。
【0073】
4)触媒の特徴
上述のように、効率よく水から水素を分離する触媒の特徴は以下の通りである。
【0074】
(a)溶融塩の場合、強い吸湿性を有しており、供給された水蒸気を直ちに捕捉する。
【0075】
(b)溶融塩の場合、300〜600℃の温度に加熱し、固体触媒の場合、約500℃に加熱すると、細粒群が飛散し、この細粒群の全体の表面積が著しく大きいので水蒸気の殆どが捕捉され、反応表面積が著しく大となる。
【0076】
(c)液体触媒の場合、高温(300〜600℃)で溶融塩を作り、この溶融塩内では、アルカリ(土類)金属と水酸基とが電離してイオンとして存在し、更に金属元素供給体から溶融塩内に2種以上の金属元素が溶け出してイオン化し、同時に電子を放出して溶融塩を電子リッチな状態としており、前記金属元素は水酸基の酸素と水素との結合状態を調整するために、電子の挙動を規制する作用をする金属元素(Ni,Pd,Pt)と溶融塩内に放出された電子を動き易くするための、いわゆる電子キャリアの働きをする金属元素(遷移元素が好ましく、クロム(Cr)、鉄(Fe)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、銅(Cu)、ロジウム(Rh)等)からなる。また、固体触媒の場合には、水蒸気に触れると、アルカリ金属水酸化物と酸化物との化合物が可逆反応で元のアルカリ金属水酸化物と酸化物に戻り、このアルカリ金属水酸化物が液体触媒と同じ作用をし、金属元素も固体触媒に溶けて同様の作用をする。
【0077】
(d)供給された水分子(H
2O)の中の1つの水素原子(ガス)が先ず放出され、もう1つの水素原子(水酸基(OH
-)の中に存在)は、一旦水(H
2O)を作って新たに供給された水と一体になって、次の反応サイクルでその半分が水素ガスとなり、残りの半分は次の反応サイクルで水素ガスとなる。
【0078】
すなわち、今供給した水中の水素量をXとし、その後に水の供給を停止したとすると、最初のサイクルで1/2X分だけ水素ガスとなり、次の反応サイクルでは、残りの1/2Xの半分、すなわち1/4Xが水素ガスとなり、更に次の反応サイクルで1/4Xの半分、すなわち1/8Xが水素ガスとなる。したがって、水の供給を停止した場合でも、ある一定時間は水素が発生し続けることとなる。
【0079】
(e)供給された水(H
2O)の中の酸素原子(O)の数の半分は水素原子とともに水分子を作り((9)式)、次の反応サイクルに回され、残りの半分は酸化物を介して触媒を作る((10)、(11)式)。(9)式の水は次の反応サイクルに回されて水素ガスを発生させる。
【0080】
なお、この反応サイクルにおいて、順次酸素が残留してくるが、この酸素は酸化物を介して、触媒となり、残りは細粒群の一部として外部に排出される。
【0081】
(f)実験によれば、触媒室4、22内に5分毎に水を注入していくと、触媒C内の温度は僅かに上昇する(1時間に2〜3℃)。
【0082】
また、放出される水素の温度は、触媒が十分に機能しているときは、常温より僅かに高い程度である。これは、細粒群11、26が作用して水を電離させているときは、吸熱反応であり、しかも水素は比熱が著しく大きいので、分離した水素は低温で瞬間的には、温度は上昇せず、低温(常温)のまま外部に放出されるものと思われる。また、水素の発生量は水の連続注入時には少しずつ減少するが、これは反応空間8、24内の温度が次第に下降するためと思われる。
【0083】
したがって、反応空間内に例えばヒータ13(
図1)等の加熱源を設置するとよい。
【0084】
(g)上述のような反応サイクルにおいて、ケーシング1に穴が開いて外部から空気が混入すると、ナトリウムイオン(Na
+)、クロムイオン(Cr
2+)、鉄イオン(Fe
2+)は、酸素と結合してそれぞれ酸化物(Na
2O, Cr
2O
3, Fe
2O
3)を作り反応サイクルは死滅する。従って、水が触媒室に送られ、水素は回収される系内において、触媒室に空気が侵入しないようにするために空気侵入防止装置(水タンク、密封水管、水蒸気除去装置等)を設ける必要がある(
図22参照)。なお、ニッケルイオン(Ni
2+)は殆ど酸化物を作らない。
【0085】
5)実験例
次に、
図1に示す水素発生装置を使用した実験例について説明する。なお、水素の存在は水素の燃焼試験により確認した。
1.第1実験例
ケーシング1(幅50mm×長さ200mm×高さ15mm)内には全く触媒を入れることなく、空のまま加熱しながら10分毎に0.2ccの水を蒸気室4に供給したところ、700℃前後の温度で水素が発生したが、4〜6時間で燃焼しなくなった。
【0086】
ケーシング1の材質は18−8ステンレス鋼であり、Cr18%、Ni8%、残部Feである。
【0087】
また、ケーシング1内に屑ステンレス鋼を20g程度入れたら2日間燃焼した。屑ステンレス鋼の代わりに銅屑を10g程度入れたら1日で失活した。また、鉄の塊(96g)を入れたら、200℃で2日間燃焼した。これは単なる鉄の酸化反応と思われる。銅(Cu)、アルミニウム(Al)イオンは燃焼に寄与しなかった。
【0088】
2.第2実験例
ケーシング1内に水酸化ナトリウム(NaOH)を100g入れ、600℃〜700℃の加熱で1週間燃焼した。600℃〜700℃の温度では、水酸化ナトリウムは液状に溶けており、この中にステンレス鋼(ケーシング1の内壁)からニッケルイオン(Ni
2+)、クロムイオン(Cr
3+)及び鉄イオン(Fe
2+)が溶け出し、NaOHもNa
+とOH
-に電離している。この場合ケーシング1は、金属元素供給体の役割を果たしている。
【0089】
これらが溶融塩(イオン液体)を作り、この液面からの細粒群11(
図1、2)および液面に水蒸気が接触すると水が水素イオン(H
+)と水酸化物イオン(OH
-)とに電離される。なお、このイオン液体は親水性が強く、注入された水蒸気を直ちに捕捉する。前記イオン液体中のOH
-は金属イオン(Na
+、Fe
2+、Ni
2+、Cr
3+)特にNi
2+によりO
2-とH
+に一部分断され、一方水のOH
-はその一部がイオン液体中に入ってイオン液体中のOH
-と置換したり、置換しないものは金属元素イオンによりO
2-とH
+に分断される。ここで、H
+は、イオン液体中の豊富な電子(e
-)と結合して水素原子、水素分子(H、H
2)となり、外部に放出される。一方、電離された酸素イオン(O
2-)は、Na
+と結合して参加ナトリウム(Na
2O)となる。
【0090】
また、NaOHの代わりに、水酸化カリウム(KOH)100gをケーシング1内に注入して600℃〜700℃に加熱してイオン液体を生成したら、NaOHと同じように燃焼したが、その寿命は3日間であり、NaOHよりも短命であることが判明した。
【0091】
次いで、NaOH100gに対して18−8ステンレス鋼98gを入れてNi
2+、Cr
3+、Fe
2+イオンをイオン液中に増加せしめたところ、300℃〜400℃の温度で燃焼し、その寿命は10日間に延びた。
【0092】
また、NaOH50g、KOH50gのみを注入し600℃〜700℃に加熱したが、その寿命は4日間程度であり、NaOH100g単体のイオン液体の方が好ましいことが判明した。
【0093】
更に、NaOH50g、KOH50gの混合液にステンレス鋼100g程度を加えたところ、寿命が7日間程度に伸びたが、NaOHにステンレス鋼を加えたものよりも寿命が短かった。
【0094】
更にまた、NaOH100g又はKOH100gにチタン合金を30g程度加えたところ、300℃〜400℃で激しく反応しイオン液体中のOH
-の酸素と結合してイオン液そのものが燃焼し、液体状態から固体状態に変化した。この固体はチタン酸ナトリウム(Na
2Ti
2O
5)であり、これを600℃〜700℃に加熱したら触媒としての作用を果たした。
【0095】
3.第3実験例
金属水酸化物と金属酸化物とを均一に混合してケーシング1内に注入し、ケーシング1を450〜700℃程度に加熱し、固体触媒とした。その組み合わせは、種々あり、特に記載されていない場合は、その寿命は3日〜5日間であった。
【0096】
1)KOH 100g
TiO
2 10g
この場合に脱水してチタン酸カリウム(K
2Ti
2O
5)ができ、500℃程度で水素が派生した。
【0097】
2)KOH 100g
TiO
2 30g
酸化チタンの量を増やした方が水素発生力が増した。500℃程度で水素が発生した。
【0098】
3)KOH 100g
Cr
2O
3 10g
700℃前後で水素が発生した。
【0099】
4)KOH 100g
MgO 20g
寿命が長い(1週間)。この場合マグネシウム酸カリウム(K
2MgO
2)ができる。
【0100】
5)KOH 100g
MoO
3 34g
この場合、モリブデン酸カリウム(K
2MoO
4)ができる。
【0101】
6)NaOH 100g
ZnO 40g
この場合、亜鉛酸ナトリウム(Na
2ZnO
2)ができる。
【0102】
7)NaOH 100g
ZrO
2 20g
この場合、ジルコン酸ナトリウム(Na
2ZrO
3)ができる。
【0103】
8)NaOH 100g
SnO
2 70g
この場合、スズ酸ナトリウム(Na
2SnO
3)ができる。
【0104】
9)NaOH 100g
WO
3 140g
この場合、タングステン酸ナトリウム(Na
2WO
4)ができ、WO
3はNaOH以上に多量に混合した。
【0105】
10)NaOH 100g
CaO
45g
この場合、カルシウム酸ナトリウム(Na
2CaO
2)ができる。
【0106】
11)NaOH 100g
TiO
2 34g
この場合、チタン酸ナトリウム(Na
2Ti
2O
5)ができる。
TiO
2はNaOHよりKOHになじみ易い。
【0107】
4.第4実験例
金属水酸化物と金属水酸化物の組み合わせで水素を発生した組合わせは、NaOH100g、Ca(OH)
28gの組み合わせであり、KOH50g、NaOH50gの組み合わせ、更に、KOH100g、Ba(OH)
2・8H
2O100gの組み合わせで水素は僅かに発生したが、全ての場合について十分ではなかった。
【0108】
5.第5実験例
金属水酸化物と非金属酸化物の組み合わせで、僅かに水素が発生したものは、NaOH100g、SiO
224gの組み合わせであり、これらに鉄塊を加えた場合にはよく燃焼し、しかも10日間も寿命があった。
【0109】
なお、KOH200g、SiO
235gの組み合わせは、SiO
2がKOHと結合できず燃焼しなかった。
【0110】
また、更にNaOH100g、SiO
217g、Al
2O
312gの組み合わせは、別に加えられた鉄イオン(Fe
2+)の存在の下に非常に良好な燃焼をした。すなわち、ステンレス容器に別に加えられた鉄イオンの存在の下にAl
2O
3をNaOHとSiO
2の組み合わせに加えると大きく変化して良好な触媒となることが判る。
6.第6実験例
以下に示す組み合わせは鉄イオンの存在の下、600℃〜700℃の温度においても不燃であった。
【0111】
1)KOH 200g
Al
2O
3 60g
2)KOH 100g
MnO
2 40g
3)KOH 100g
V
2O
5 20g
4)KOH 100g
Ba(OH)
2・8H
2O 100g
5)NaOH 200g
MgO 20g
Al
2O
3 20g
6)NaOH 100g
Ca(OH)
2 7g
7)NaOH 100g
Ca(OH)
2 50g
水酸化カルシウムの量を増やしても不燃であった。
8)NaOH 100g
NiO 140g
9)NaOH 100g
Bi
2O
3 25g
10)NaOH 100g
Al
2O
3 60g
11)NaOH 100g
SiO
2 25g
MnO
2 15g
12)NaOH 100g
SiO
2 20g
TiO
2 4g
MgO 2g
【0112】
次に触媒セルの構造について説明する。
図7において、この触媒セル30は複数の円筒状のSUS304からなる触媒筒31、31…31からなり、この触媒筒31は、水蒸気供給管32と水素管33を備え、その内部には
図8に示すように複数のSUS304からなる円板上フィン34が加熱気体を通すパイプ35に所定間隔で取付けられている。前記円板状フィン34には、小孔34aが多数開設されている。前記触媒筒31内には、イオン液体をなす水酸化ナトリウム等のアルカリ溶融塩が収納され、300℃〜500℃では触媒Cは液体状であり、その液面が円筒の中心より上方に位置するように触媒Cの収納量が調整され、このイオン液体は小孔34aの存在により円板状フィン34を通過して自由に移動できるようになっている。なお、フィン34からニッケル、クロム、鉄がイオン液体の中に溶け出してイオン液体が触媒作用を果たす。
【0113】
前記触媒筒31の端面には、ガイドボックス36、37が設けられ、このガイドボックス36、37はエルボー管38、39を介して水蒸気供給管32および水素管33に連絡され、これら連結構造は、触媒Cが各管32、33内に入り込まないようにするためのものである。すなわち、触媒Cが水蒸気に触れて飛散したときに、ガイドボックス36、37内に入ってもエルボー管32、33の垂直部分に沿って落下するので各管32、33が詰まることが避けられる。
【0114】
なお、触媒筒31内に供給された水蒸気はフィン34に衝突して
図9に示すように触媒Cの液面上で乱流となり、細粒群と液面に接触する量が増加して分解効率が向上する。また、このように触媒筒31を円筒状に形成すれば、矩形の箱と比較して強度的にも向上するし、端面のみを溶接すればよく溶接部分も減少し、耐久性が向上する。
【0115】
図10、11は、触媒セルの他の実施例を示すものであり、この触媒セル40は、全体として円盤状に形成され、浅底の本体41と蓋体42からなり、蓋体42は本体41の上面周囲に形成されたフランジ43に溶着されている。前記本体41内には、その側部に仕切板44によって蒸気室45が画成され、この蒸気室45内には水供給管46を介して水が供給され、更にステンレス(SUS304)のフィン47、47…47が設けられ、触媒Cがフィン47に接触するように収納されている。なお、フィン47の下部には触媒が動き得るように開孔49、49…49が設けられている。このような構造により生成された水素は水供給管46の直径方向反対側に設けられた水素管48から取り出される。このような円盤状の本体41は絞り加工により形成できるので、強度的にも強く、しかも大量生産に好適である。
【0116】
また、前記フランジ43に蓋体42をボルト絞めするときには、
図12、13に示すように、パッキン構造として、蓋体42の下面に円形の凹部50を形成するとともに、フランジ43に凹部50に対応して円形の突起51を形成し、前記凹部50内に銅リング52を収納し、突起51によって銅リング52を押し潰すようにしてねじ53を締め付けるようにする。
次に、前述の触媒セルを組み合わせた水素発生装置について説明する。
図14、15において、本発明の水素発生装置M
1は、
図19に示すような矩形の複数の触媒室110、110…110を積層してなる触媒ユニットU
1を有し、この触媒ユニットU
1は、密封ケーシング111内に収納されて加熱装置によって作られた加熱空気によって加熱される。前記加熱装置は、水素バーナ112を備え、この水素バーナ112は、触媒ユニットU
1の全高に亘って加熱空気を送給する向きの異なるノズル113a、113b、113cを備え、これらのノズル周辺にドーナツ状の空気供給管114から空気が送られ、水素バーナ112の背面に突出する水素管15を経て水素バーナ112内に水素が送り込まれる。
【0117】
一方、前記各触媒室110には、水素バーナ112からの熱風を通したり、補助ヒータ116、116…116をガイドする複数のガイド筒117、117…117が設けられ、前記触媒室110の水素バーナ112側には、熱風をガイド筒117内にガイドするガイド板118、118…118が取り付けられ、前記補助ヒータ116は、触媒ユニットU
1の後側から挿入され、その端子は密封ケーシング111外に突出している。補助ヒータ116は、熱風の補助のために適宜本数だけガイド筒117内に挿入され、ガイド筒117は熱風通路及び補助ヒータの支持筒としての作用をする。
【0118】
前記触媒室110内は、概ね
図19に示す構造を有し、
図15において、水タンク120からの水は水管121を介して各触媒室110内の水蒸気室に送られる。前記水管121には、水の流量計122及び流量調整弁123が設けられ、これらは、コントローラ124に接続され、前記コントローラ124は、触媒の分解力に合わせて水の送り量を調整するように流量計122からのデータに応じて流量調整弁123の開度を調整する。なお、触媒室110内の温度(触媒温度及び水蒸気温度)は温度計125によって測定され、この温度計125からのデータに応じて触媒室110内に送られる水量が調整される。
【0119】
前記水素バーナ112で作られた熱風は、触媒ユニットU
1を加熱した後に、密封ケーシング111を出て、熱風系路126を経て、前記水タンク120と水管121を覆うケーシング127を通ってそれらを加熱した後に熱風系路128を介して前記密封ケーシング111の水素バーナ112の前方近傍に送られる。
【0120】
前記触媒ユニットU
1の背面側には、触媒室110内で反応生成された水素と水蒸気からなる排気を送り出す排気系路129が設けられ、この排気系路129には水タンクからなる水蒸気除去装置130が設けられ、この装置130と触媒室110間に開閉弁131と切換バルブ132が設けられ、この切換バルブ132には、触媒ボックス110内の触媒の酸化を防止するために触媒酸化防止装置(空気侵入防止装置)133が接続され、この装置133は、アキュムレータ134とアルゴン等の不活性ガスタンク135を有している。前記開閉弁131と切換バルブ132はコントローラ124に接続されている。
【0121】
そして、前記水蒸気除去装置130によって水蒸気が除去された後の水素は流量計136及びコンプレッサ137を介して水素タンク138に圧縮貯蔵され、この圧縮水素は外部負荷系路140を介して外部エネルギーとして取り出されるとともに水素バーナ112にバーナ系路141を介して送られ、この流量は流量調整バルブ139によって調整される。前記流量計136、コンプレッサ137、流量調整バルブ139もコントローラ124に接続される。
【0122】
このコントローラ124は以下の動作を行なう。
【0123】
1.温度計125からのデータにより触媒室110の温度に対応して触媒の分解力に合わせて流量調整弁123を調整し触媒室110内に送る水量を調整する。このとき、流量調整弁123は流量計122からのデータによりフィードバック制御される。
【0124】
2.排気系路129に設けられた水素流量計136からのデータにより水素の発生量を認識し、温度計125からの温度上昇と併せて触媒の分解力の低下(触媒の劣化)状態を求め、温度操作を内蔵したタイマー(図示なし)と協同して行なう。
【0125】
3.前記温度計125のデータにより、触媒の温度を知り、それに応じて水素バーナ112に送る水素の流量を前記バーナ系路141に設けた流量調整バルブ139の開度を調整することによって行なう。
【0126】
4.本装置M
1の操作を終了する時に、開閉弁131は開いており、切換弁132を切換えて触媒酸化防止装置133を動作せしめ、不活性ガスタンク135からのアルゴンをアキュムレータ134を介して一気圧程度に調整し、触媒室110の気圧の加熱装置のOFFによる減圧(気体の収縮)に応じて触媒室110内にアルゴンガスを送りこむ。これにより触媒の高温時(操作を終了する時は400℃程度)の酸化を有効に防止して触媒の寿命を伸ばす。なお、従来は、排気系路129で水蒸気除去装置130の手前に図示しない開放弁を設け、装置の操作終了時にこの開放弁を開放して外気を取り入れ、触媒室110内の減圧による水蒸気除去装置130内の水の逆流を防止していた。
【0127】
5.前記4のような不活性ガス供給手段の代りに、装置の運転終了時に、そのときの温度を記憶し(コントローラ124は記憶装置を備えている)、開閉弁131を閉じて触媒室内を減圧状態のままとする。次に装置の運転を開始する時は、開閉弁131を閉じたまま、運転終了時の温度まで加熱装置を動作させて触媒ユニットU
1を加熱し、記憶した温度になった時に開閉弁131を開ければ、触媒室110内は減圧状態ではなくなるので、水蒸気除去装置130の水が触媒室110内に逆流することはないし、触媒室に外気を取り入れないので触媒が酸化することもない。
【0128】
図16は、第2の水素発生装置M
2を示し、採集された水素で触媒を加熱する自己加熱触媒水素発生システムであって、
図1とほぼ同様の構造を有する触媒ユニットU
2を有し、前記触媒ユニットU
2の下面には、燃焼室230が形成され、この燃焼室230内に水素バーナ231が収納されている。この燃焼室230はその先端のガイド筒232に連なり、このガイド筒232の上端部には、パラジウム合金からなる分離膜233が斜めに設けられ、この分離膜233により、水素バーナ231により燃焼して生成した高温水蒸気が水平管234を通って、水タンク235から垂下している水供給経路をなす水管236に供給される。前記分離膜233を通過した空気は水タンク235の周囲に形成された熱交換部237を通って外部に放出される。前記触媒ユニットU
2により生成された水素と未分解の水蒸気は流出管208を通り、パラジウム合金膜239を収納した分離器238で、水蒸気が分離され、この分離された水蒸気は前記水供給経路の水管236に戻され、再び触媒ユニットU
2内に入る。前記分離膜239を通過した水素と酸素はコンプレッサ240によって加圧され、ボンベ241内に一旦貯溜される。ボンベ241内で所定圧とされた水素と酸素の混合ガスは、開閉弁242の開閉及び開閉弁243の開閉により外部に取出されるか、バーナ231に送られる。なお、燃焼室230内には空気供給管244により空気が所定量送られ水素バーナ231の水素が完全燃焼するようになっている。
【0129】
次に他の実施例である前記触媒ユニットU
3は
図17に示すように密封ケーシング264内に複数積層された矩形触媒セル265を備え、この各触媒セル265内には前記アルカリ金属化合物からなる触媒cが収納されている。この触媒セル265内は斜めに複数の仕切板280、280…280で仕切られ、各仕切板280間には、
図18に示すようなフィン状の金属元素イオン供給体281が収納されている。前記触媒セル265の一隅部には、蒸気室282が形成され、この蒸気室282内に水供給配管269の枝管269aを介して水滴が流入される。触媒セル265内で分離された水素及び未分解の水蒸気は触媒セル265の蒸気室282と対角に形成された隅部から突出する流出枝管283a、283a…283aを介して流出管283内に流出する。流出管283には分離器284が設けられ、ここで分離された未分解の水蒸気は蒸気管285を通って前記水供給配管269に戻され、再び触媒セル265内に流入する。前記密封ケーシング264には、加熱された熱風がその中に流入する導入管285が設けられ、この導入管285の反対側に導出管286が設けられている。前記各触媒セル265の側壁には、高圧時の圧力を逃がすための安全弁287と触媒を補給するための触媒補給筒288が設けられ、これには、開閉蓋288aが設けられ、触媒が不足してきたときに開閉蓋288aを開いて触媒が補給される。上側の触媒セル265の底面と下側の触媒セルの上面には、互いに対向して半円凹部が形成され、上下の凹部により熱風が流通する流通孔266が形成されている。
【0130】
図19、20、21は触媒セルの他の実施例を示すものであって、触媒セル300は複数個積層され、各触媒セル300には、熱風を通過せしめる複数のパイプ301が収納され、これらのパイプ301にはフィン状の金属元素供給体302が嵌め込まれ、各フィンはバー303、303によって固定され、各フィンには、パイプ301に嵌合させる嵌合穴304が形成されている。一方、触媒セル300の一隅部には仕切板305によって蒸気室306が形成され、触媒セル300の対角隅部の片側側壁には、一段おきに、やや大径の兼用管307、307…307が形成され、他の側壁には同じように一段置きにやや大径の複数の作用をなす兼用管308、308…308が設けられ、それは相互に交錯しないように配置されている。前記兼用管307、308には、水平管309、310が設けられ、これら水平管309、310には圧力逃がし弁311、312が設けられている。各水平管309、310からは枝管313、314を介してガス排出管315、316が接続されている。前記兼用管307、308の上端には開閉キャップ317、318が設けられ、この開閉キャップ317、318を開けて触媒原料が補給される。
【0131】
前記兼用管307、308の開口部320は触媒面csより上方に開口しており、その開口部320の下側には、触媒が開口部を塞がないように遮蔽板321が設けられ、この遮蔽板321は開口322を有し、触媒が遮蔽板321上に載ったときに落下し易いようになっている。また、この遮蔽板321は触媒原料を補給するときのガイド板にもなっている。
【0132】
次に、別の実施例について説明する。
図22において、水素発生装置M
3は、触媒ユニットU
5を有し、この触媒ユニットU
5は断熱ケーシング441を備え、この断熱ケーシング441内には、触媒収納セル442が3段に積層され、各触媒収納セル442の底面には面状発熱体443、443、443が付着され、これにより各触媒収納セル442が300℃〜600℃に加熱される。前記各触媒収納セル442内には、水タンク444からの水が流量計445、これに連結された補助タンク446の底面から伸びている水パイプ447、447、447を介して所定量送られる。
【0133】
なお、水タンク444の液面には、コンプレッサ448を介して所定圧力が供給され、前記各触媒収納セル内の水蒸気の気体圧に負けないようになっている。前記触媒収納セル442の水パイプ447が配管される側壁の反対側の側壁には、水素配管449が設けられ、この水素配管449は水蒸気除去装置450に連なり、この装置450は水タンクであり、この水タンク内の液面下に水素配管449が伸び、これにより触媒収納セル442内で分解されなかった一部の水蒸気および水素とともに流出する触媒の細粒が除去され、この水タンクはチラー451により冷却され、高温の水蒸気が逆流しないようになっている。水蒸気除去装置450を通った水素は、ポンプ452により水素タンク453に一旦貯溜され、この水素タンク453から水素が、例えばボイラのバーナ454に送られ燃焼される。また、水素の濃度を上げるパラジウム合金膜からなる濃度増大装置455を通して、純度の高い水素を燃料電池456に送って発電される。
【0134】
一方、水素タンク453からの気体の一部は、前記面状発熱体443を加熱する補助熱源として使用される。前記面状発熱体443は
図23に示すように、最上段に配置されたもので、アルミ合金のような熱伝導性の高い板状体に炭素を主成分とする発熱体460を面状に塗布したもので、前記板状体の一側には、加熱部443aがケーシング441外に突出して形成され、ここが水素バーナ461によって加熱され、その熱は直ちに板状体全体に伝導する。同様に中段、下段の面状発熱体443は上段とは異なる位置にそれぞれ加熱部443b、443cが形成され、これらが水素バーナ462、463によって加熱され、各水素バーナ461、462、463には、弁464、465、466及び図示しない水封装置からなる図示しないバックファイヤー防止装置を介して水素が供給される。
【0135】
前記触媒収納セル442は、全体としてステンレス板で形成され、
図24に示すように複数の仕切壁470、471が設けられ、仕切壁470と触媒収納セル440の側壁間には、水滴が送られる蒸気室472が形成され、この蒸気室472には、水パイプ447の分岐配管447aにより複数個所に水滴が送られ、ここで、300℃〜600℃の水蒸気が発生する。前記蒸気室472に隣接して触媒室473、473が形成され、この触媒室473内には、例えば、ステンレス板からなるフィン475、475…475が収納され、このフィン475は、例えば、前述のイオン液体触媒内に位置する。また、固形触媒を収納することも可能である。蒸気室472の反対側の側壁には分岐配管449aが設けられ、水素は分岐配管449aを経て集合配管449に集められ、水蒸気除去装置450に送られる。
【0136】
なお、水素を圧縮するポンプ452および水タンク444の下側にある開閉バルブVは流量計445からの信号により、コントローラ490により調整される。
【0137】
更に、他の実施例の水素発生装置Mについて説明する。
図25において、本発明の水素発生装置M
4は、密閉ケーシング520を備え、この密閉ケーシング520内には、複数の密閉室521、521…521が設けられ、この密閉室521内には、出入自在に
図26に示すような触媒カセット522が収納されている。前記密閉室521には、
図27に示すような開閉蓋523が設けられ、この開閉蓋523を開放した状態で前記触媒カセット522が密閉室521内に出し入れされる。前記開閉蓋523は、密閉ケーシング520の正面に取り付けられた入口枠525に複数のネジ526によって開閉自在に固定される。前記触媒カセット522は、平たい矩形のケーシング524を備え、このケーシング524の上面には、その内側に伸びる内フランジ524aが設けられ、触媒Cが外側に飛散しないようになっており、前記ケーシング524内には、前記金属元素供給体507が収納されている。前記密閉ケーシング520の密閉室521の周囲には、120〜150℃程度の過熱水蒸気が流通する水蒸気通路R、R、…Rが形成され、これら通路の過熱水蒸気によって各密閉室521およびその内に収納されている触媒が300〜600℃程度に加熱される。
【0138】
前記密閉ケーシング501の側面には、
図28に示すような、NaOHまたはKOHのようなアルカリ金属水酸化物粒子を触媒カセット522に補給するための補充装置527が設けられ、この補充装置527は、ホッパー528と供給筒529とこれら両部材間に設けられる開閉弁530とを有し、前記供給筒529の先端は触媒カセット522上に伸び、触媒が不足してくると逐次開閉弁530を開いて触媒カセット522内に補給するようになっている。これによりベーパーとして外部に流出されるアルカリ金属および前記各種酸化物の放出による触媒の減少を補ってその寿命を著しく伸ばすことが可能となる。
【0139】
前記補充装置527の触媒補充時に空気中の酸素が密閉室521に入ると、触媒の異常酸化が起こり、酸化物が多量に出来て触媒の寿命を縮めるので、
図29に示すような補給装置531を形成することが好ましい。すなわち、補充装置531はホッパー528と供給筒529を備え、この供給筒529を中間筒529aと最終筒529bとで構成し、中間筒529aの両端に開閉弁530、532を設け、補給時には先ず開閉弁530を開くとともに開閉弁532を閉じ、一旦触媒を中間筒529aに保持し開閉弁530を閉じ、次いで開閉弁532を開いて中間筒529a内の触媒を触媒カセット522内に補給するようにする。
【0140】
図25において、密閉ケーシング520の蒸気通路Rには、ライン540を介して過熱水蒸気が送り込まれ、一方、ライン541を介して触媒カセット上に過熱水蒸気が送られる。前記過熱水蒸気は、過熱蒸気発生装置550により作られ、この過熱蒸気発生装置550は、水を100℃の水蒸気に変えるためのボイラー551と、この一次水蒸気を120〜150℃に過熱するための熱交換器552とからなり。前記ボイラー551は、水タンク553と、この水タンク553の下部に設けられた水素バーナ554とからなり、この水素バーナ554には、ライン557を介して水素が送られ、このライン557は各触媒カセット522からポンプ564を有するライン556を介して流出する水素を貯蔵しておくための水素ボンベ555に連結されている。
【0141】
前記熱交換器552も水素バーナ558によって駆動され、ここで120〜150℃の過熱水蒸気が作られ、この過熱水蒸気はバルブ559を操作してライン540、541に適宜の割合で水蒸気を分配し、これにより、水蒸気通路Rおよび触媒カセット522に適量の水蒸気が送られる。前記水素バーナ558は、ライン557から分岐したライン560に連なり、ライン560はバルブ561を備え、一方水素バーナ554に連なるライン557の部分には、バルブ562が設けられ、ライン557の入口部分にはバルブ563が設けられ、水素ボンベ555からは、外部で仕事するためのライン565が伸び、このライン565にはバルブ566が取り付けられている。前記ボイラー551の水タンク553には、外部タンク567が設けられ、この外部タンク567には、塩素除去装置をなすイオン交換樹脂568が設けられ、このイオン交換樹脂568により水道水から塩素(Cl)を取り除くようにするのが好ましい。塩素は触媒の作用を劣化せしめるので塩素を含まない水を使用するのが好ましい。
【0142】
なお、
図30に示すように、水蒸気室570を備えた触媒カセット571を密閉室521内に出入自在にセットし、この水蒸気室570にライン572を介して水タンク573からの水を供給する場合には、アルカリ金属触媒タンク574を別に設け、適宜の量のアルカリ金属触媒を水タンク573からの水に溶かし込んで触媒カセット571内に補給してもよい。なお、水道水の場合には、水タンク573内にイオン交換樹脂を内包した塩素イオン除去装置595を設けて塩素を取り除くことが好ましい。
【0143】
前記水素を送るライン556には、水素とともに触媒Cの細粒およびその酸化物、更には、分解されなかった水蒸気が供給されるが、これらのうち細粒、その酸化物(NaOH触媒の場合、Na
2O、NaOH)および水蒸気が、水タンクである水蒸気除去装置590で捕捉されるが、これらの細粒群と酸化物は水と反応して触媒(NaOH)の水溶液となるので、この水溶液を戻しライン591を介して水タンク573に戻せば、触媒の補充ができ、これら水蒸気除去装置590と戻しライン591も触媒補充装置をなしている。この補充は空気を遮断して行わなければならない。なお、この場合には、水タンク573から塩素イオン除去装置595は取り除いた方が良い。
【0144】
次に、本発明の触媒ユニットを船舶に適用した場合のシステムについて説明する。
【0145】
船の場合には、揺れがあるので固体触媒を使用すれば良いが、イオン液体の方が触媒機能が大であるで、それを使用するには工夫が必要である。
【0146】
図31において、触媒ユニットU
6は、ジャイロを備えた水平維持装置Hに支持させるのが、良いが、装置が高価となるので、
図32、33に示す構造とするのが好ましい。すなわち、触媒ユニットU
6は、深底のステンレス材からなるケーシング601を有し、このケーシング601内には、格子状のステンレス板からなる仕切板602が収納され、この仕切板602はケーシング601内を小部屋に仕切っており、このように仕切ることにより船が傾斜してもケーシング601の上板605に取付けられる水蒸気供給パイプ603及び水素排出パイプ604がイオン液体(溶融塩触媒)によって詰まることがない。なお、前記両パイプ603、604は上板605の前後方向両端部で幅方向中心に設けられ、触媒ユニット600の幅方向中心は船の中心軸C
x上に配置されることが好ましい。イオン液体は上板から下方所定位置まで降下して設け、船が揺れても両パイプ603、604にイオン液体が詰らないようにされる。なお、上板605には、イオン液体が消耗した時に補給する補給筒606が設けられ、補給筒606から供給されたイオン液がケーシング内の各部屋に流入するように、
図33に示すように、仕切板602の底部近傍に開口606、606…606が設けられている。
【0147】
前記触媒ユニットU
6は、水素バーナ610によって300℃〜600℃に加熱される。海水はポンプ611により公知の淡水化装置612に送られ、ここで塩分が取り除かれて水タンク613に入り、ここから所定量の水が触媒ユニットU
6に供給されて分解され、水素は、フィルタ623により酸化物が除去された後に、水素タンク614に貯溜される。貯溜された水素は水素エンジン616に供給されてスクリュー617が回転される。なお、水素は水素バーナ610にも送られる。水素エンジン616には発電機627が接続され、発電された電気はキャパシタ618に貯えられ、キャパシタ618は電気分解炉619に送られる。電気分解炉619には、淡水化装置612で分離された塩分が供給されて電気分解されて水酸化ナトリウム(NaOH)が採集される。水素エンジン616の排気(高温水蒸気)はNO
x分解触媒620に送られ、ここでNO
xが除去された後に、分離器630で空気(N
2、O
2)を除去した水蒸気のみが触媒ユニットU
6に送られる。
【0148】
図34は、空気ボイラBに本発明の固体触媒をペレット状に成形したものを組み込んだ場合を示し、ボイラ本体710の下部には炉筒711が設けられ、この炉筒711内には、水素バーナ712が臨まされている。この炉筒711の上部には熱交換器713が設けられ、水素バーナ712からの熱気は通路714を通って空気流路715内の空気と熱交換し、前記熱気はボイラ本体710の上面に形成された流出口716から外部に放出される。この流出口716から出るのは高温の水蒸気と空気のみである。
【0149】
一方、前記ボイラ本体710の背面には、水素発生部720が設けられ、この水素発生部720は、蒸気室721と、触媒収納室722が設けられ、それらの連通路723には弁724が設けられている。前記蒸気室721内には、中空円筒形の蒸気筒725が設けられ、この蒸気筒725内は水素バーナ712からの熱風で加熱され120℃〜150℃の蒸気が発生する。この蒸気は触媒室722内でペレット触媒726に接触して水素が発生する。なお、触媒のペレットは約500℃以上で作用し水を分解して水素を発生せしめる。
【0150】
前記触媒収納室722の上部には、水蒸気と水素とを分離する分離部727が形成されている。この分離部727は、パラジウム合金からなる水素のみを通して水蒸気を通さないフィルタからなり、この分離部727の周囲から水蒸気が触媒収納室722内へ戻される。なお、触媒収納室722の底部には水蒸気を通過せしめるパンチングプレート729が向けられ、この上にペレット触媒726が支持されている。なお、水蒸気から分離された水素は、水素タンク750に貯留され、バルブ751および水封装置752を介して水素バーナ712に送られる。
【0151】
図35は、加熱装置としての別の水素バーナシステムを示すものであり、例えば、バーナをボイラに使用した場合には、ボイラのケーシング790の下部には炉心791が設けられ、この炉心791内に水素バーナ792が臨まされている。この水素バーナ792には、水素と空気(窒素と酸素)が供給されるが、炉心791で発生した高温水蒸気と空気は図示しない分離器で分離され、高温水蒸気のみが炉心791の上方に設けられた触媒ユニット793を通って水素が採集され、分離された空気は熱交換部794を通って排出される。この排気ガスは窒素と酸素であるので、そのまま放出しても何ら問題がない。前記触媒ユニット793で採集された水素はタンク795に貯蔵され、ここからポンプによりバーナ792に一定圧で送られる。
【0152】
図36は、蒸気ボイラ760に触媒ユニット761を適用したもので、炉心762の周囲に水管763が設けられ、この水管763から蒸気パイプ764により外部に300℃〜600℃の水蒸気が取出される。蒸気パイプ764からは分岐パイプ765が分岐し、この分岐パイプ765に前記触媒ユニット761が設けられ、ポンプ767でボンベ768に水素と酸素が一旦貯溜されバルブ771の開閉により水素バーナ769に水素が送られる。炉心762で発生した排気ガスは排出口770から外部に放出される。
【0153】
図37は水素エンジンシステムのうち、自動車のエンジン780に本発明の触媒を使用した水素発生装置を設置した場合を示している。水素エンジン780は、例えば自動車、発電機、飛行機等各種回転体を回転せしめるものに使用可能となる。水素エンジンはロータリーエンジンに適合すると言われており、このエンジン780の吸入孔782から吸入された水素ガスは、ピストン783により吸入、圧縮、爆発、排気の工程を経て排気孔781から排気される。この排気ガスは高温水蒸気、窒素、酸素からなっており、フィルタ784(例えばPd合金)で窒素(N
2)、酸素(O
2)と高温水蒸気(V)を分離した後、高温水蒸気を加熱器785を通して300℃以上とし、その後前記触媒を上下又は左右に多数積層又は並設した触媒ユニット786を通して水素(H
2)を採集し、必要に応じて未分解の水蒸気(V)を分離器787で水蒸気と水素を分離した後、水蒸気は加熱器785及び触媒ユニット786内を循環せしめて水素を採集し、前記エンジンの吸入孔782にポンプ788を経てエンジン内に水素が送られる。一般に、水素エンジンの排気ガスの温度は400℃〜500℃であり、本発明の触媒ユニット786の作動温度が300℃〜600℃であるので、必要に応じて設けられる加熱器785及び触媒ユニット786を作動温度に保持しておく必要がある。自動車の場合には、太陽光を採光してその不足分の熱を得ることも可能であるし、駆動開始等はバッテリーから不足分の熱を得て、その後は自らの水素を燃焼させて不足熱を得ることも可能である。なお、排気温度は400℃〜500℃であるので断熱を完全にすれば、加熱器785は不要である。
【0154】
図38において、水素エンジン850内にはピストン851が設けられ、このピストン851はクランクバー852を駆動して回転軸853を回転せしめる。この回転軸853には発電機854が接続され、この発電機854はエンジン点火に使用される。シリンダ855の上面には、吸入口856と排気口857とこれらの中間に水素噴射弁858と、点火プラグ859が設けられている。前記排気口857に排気ターボ過給機860の排気タービン861が接続され、この排気タービン861により、これと反対側に設けられたコンプレッサ862が駆動する。前記排気タービン861を回転せしめた排気(水蒸気、空気)は、補助加熱器863によって加熱された後に触媒ユニットU
1(
図14)に流入する。この補助加熱器863は、排気の温度が触媒ユニットU
1を加熱するのに十分でない場合に使用される。この触媒ユニットU
1は、密封ケーシング864を備え、この中には、多数の触媒セル865、865…865が積層されており、これら触媒セル865間には、触媒セル865を加熱するために高温の排気が通過する流通孔866、866…866が水平に前後に貫通して設けられている。前記密封ケーシング864内で触媒セル865を加熱した排気は、コンプレッサ868で加圧されて分離器867で水蒸気と空気に分離され、この水蒸気は水供給配管869に送られる。この水供給配管869は水タンク870からの水を前記触媒セル865内に送るためのものであり、前記水供給配管869には流量計871が設けられ、前記分離器867で分離された空気は水供給配管869の外周に送られてその中を流れる水を加熱する。一方、触媒セル865で採集された水素は、分離器884で水蒸気と分離されて配管895を通って、排気ターボターボ過給機860のコンプレッサ862に送られ、分離された水蒸気は、水蒸気管885を介して水供給配管869に戻される。
【0155】
前記補助加熱器863は、
図40に示すように、水素バーナbを備え、この水素バーナbには後述する水素ボンベ889から開閉バルブ890を介して水素が供給されるとともにファン891によって空気が供給され、ここでの燃焼ガス(水蒸気、空気)は、水素エンジン850の排気を加熱する熱交換器892に送られ、排気管893内を通過する排気を補助加熱する。この排気は、密封ケーシング864内に送られて触媒セル865を加熱する。また、ここでの燃焼ガスは分離器894によって水蒸気と窒素と酸素に分離され、分離水蒸気は前記蒸気管885に送られて触媒セル865内に流入する。
【0156】
前記分離器894で水蒸気と窒素とが分離された酸素は配管895を介して、水素とともに前記排気ターボ過給機860のコンプレッサ862に送られ、このコンプレッサ862によって加圧された混合気は分離器896で水素と酸素に分離され、この水素はアキュムレータ897を介して前記水素ボンベ889に送られ、この水素ボンベ889の水素は前記補助加熱器863の水素バーナbに送られるとともに開閉バルブ802を介して水素噴射弁858に送られる。一方、分離された酸素は酸素ボンベ898へ送られ、酸素ボンベ898の酸素は開閉バルブ899を介して吸気口856に送られるが、この吸気口856には、ポンプ800により空気管801を介して空気が取入れられる。このように酸素ボンベ898から吸引口856に酸素を送ると、吸入口856から取入れられる空気量が減少して水素エンジンから排出するNO
xが減少する(
図39)。
【0157】
図38における水素エンジンシステムにおいては、補助加熱器863からの酸素と、触媒ユニットU
1から排出される水素を分離しているが、
図39に示すように混合気のまま使用することも可能である。
【0158】
すなわち、配管895で送られる水素と酸素の混合ガスをコンプレッサ862により圧縮して混合ガスボンベ820に貯溜して一定圧とし、この混合ガスを前記補助加熱器813と水素エンジン850の混合ガス噴射弁821に送るようにしてもよい。
【0159】
図41は、既存の火力発電システムに本発明の触媒ユニットを組み込んだものであり、ボイラ900には、水タンク907からの水が後述する熱交換器904を介して供給されるとともに、ボイラ900は、水素タンク901からの水素で燃焼する水素バーナ902を有している。このボイラ900では、水が1000℃〜1500℃の水蒸気となり、この水蒸気は、発電機903に送られて、発電機のロータを回転した後に熱交換器904を介して水タンク907から供給される水と熱交換されて300℃〜600℃の水蒸気とするとともに熱交換器904で熱せられた水はボイラ900に送られる。
【0160】
ここで、300℃〜600℃に下げられた水蒸気は、触媒ユニット905に送られ、ここで収集された水素は分離器906により水蒸気と分離され、ここで分離された水素は前記水素タンク901に送られ、一方、水蒸気は熱交換器904で昇温され、再度触媒ユニット905内に供給される。前記水素バーナ902からの排気は分離器909で分離され高温の水蒸気は発電機903からの水蒸気と混合されて熱交換器904に送られ、前記分離器906で分離された熱風(O
2、N
2)は例えば、暖房等に別途使用される。
【0161】
次に、燃料電池を触媒ユニットに結合した場合のシステムについて説明する。
図42において、本システムは、2つの触媒ユニットU
a、U
bを有し、これらの触媒ユニットU
a、U
bは弁910の切換によって交互に動作するようになっており、弁910はコントローラ911によって、例えば、5分ごとに切換わり、水タンク912からの水の流れを切り換えるようになっている。これは、上述の触媒の表面が連続運転していると劣化し易いが、間欠的に運転すると、触媒の寿命が延びるからである。
【0162】
各触媒ユニットU
a、U
bには、パラジウム合金等のような水蒸気分離装置913、914が設けられ、ここで水素から分離された水蒸気は触媒ユニットの入口側に戻されて触媒ユニット内に流入され更に水素が採集される。水蒸気分離装置913、914で分離された水素は、その純度を上げるための純度増大装置915を介して燃料電池916に送られる。この燃料電池916の出口側は水素と酸素の結合により高熱となり、水蒸気が出るので、この水蒸気は前記コントローラ911により動作し水の供給を切り換える切換弁917を介して作動中の触媒ユニットU
a、U
bに送られる。
【0163】
また、燃料電池916で得られる電気の一部は各触媒ユニットU
a、U
b内のヒータ908、909に供給される。
【0164】
次に、
図43において、本発明の他の実施例である水素発生装置M
5は、120〜150℃の過熱水蒸気を発生せしめるための水蒸気発生装置1001と、この水蒸気発生装置1001で発生した過熱水蒸気を触媒に接触させて水素を発生せしめるための触媒ユニットU
1とを備えている。前記水蒸気発生装置U
1は、太陽光を集光せしめるための集光装置1003を備え、この集光装置1003は、凹面鏡1004および反射経1005により集光した光を水タンク1006の上面に設けたガラス等の透明体1007を通して水タンク1006内の水1008に当ててそれを加熱するようになっている。一方、水タンク1006の下面には、バーナ装置1009が設けられ、このバーナ装置1009は、水素バーナ1010を有し、この水素バーナ1010には、前記触媒ユニットU
1で採集した水素を貯溜しておく水素ボンベ1011からの水素が供給される。また、水タンク1006には、ポンプ1012が設けられ、このポンプ1012によって一定量の水が水タンク内に供給される。
【0165】
前記触媒ユニットU
1は密封ケーシング1013内に収納され、複数段積層された矩形の触媒セル1014、1014…1014を有している。この触媒セル1014内には、水酸化ナトリウム等の触媒が収納されており、この触媒は300℃〜500℃に加熱される。前記触媒セル1014内には、加熱気体が通過する複数のパイプ1015、1015…1015が設けられている。この加熱気体は、水タンク1006で発生した水蒸気が径路1016を通って送られるものと、バーナ装置1009で発生する水蒸気と加熱空気の混合気体が径路1017を通って送られるものとの混合気体である。
【0166】
前記加熱気体は、触媒セル1014を通ってそれらを加熱した後に、循環路1018を通って触媒セル1014の出口側から入口側に戻される。前期循環路1018には、熱交換部1019が設けられ、この熱交換部1019は、前記水素ボンベ1011からの水素を燃焼させるバーナ装置1020を備え、このバーナ装置1020により加熱空気を作り、この加熱空気を循環路1018の外周に送って、循環路1018内の加熱気体の温度をコントロールする。前記水タンク1006で発生した過熱水蒸気は、径路1021を通って各触媒セル1014内の触媒に接触することにより、そこから水素が分離され、この水素は触媒セル1014の出口管1022から前記水素ボンベ1011内に貯溜される。この水素ボンベ1011内の水素は、前述したように、各バルブ1023、1024、1025の開閉により、前記熱交換部1019、図示しない外部駆動装置、前記バーナ装置1009にそれぞれ送られる。なお、前記集光装置1001とバーナ装置1009は選択的に使用され、夜間、曇の日等は、バーナ装置1009のみを作動させ、晴れた日には集光装置1001のみを作動させることも可能であり、集光装置1001とバーナ装置1009の両方を併用させることも可能である。
【0167】
次に他の実施例である水素発生装置M
6について説明する。
図42において、本発明の水素発生装置M
6は、触媒ユニットU
7を有し、この触媒ユニット1121は、上下に2本ずつ配設された4本の円筒形の触媒セル1122、1122…1122を備えている。触媒ユニットU
7は、水タンク1123を備え、水タンク1123からバルブ1124を介して分配管1125に水が送られ、この分配管1125から水管1126を介して各触媒セル1122の前端部に一定量の水が送られる。一方各触媒セル1122の後端上部からは水素管1127、1127…1127が集合水素管1128に伸び、この集合水素管1128は水蒸気を除去するための水が収納されている水蒸気除去タンク1129に連なっている。ここで水蒸気が取り除かれるとともに水素と共に流出した細粒群が捕捉される。前記細粒群は水蒸気除去タンク1129内で完全には捕捉されないので、フィルター1130を設けて取り除くようにしており、フィルター1130を通過した水素ガスは、圧縮ポンプ1131を経て水素タンク1132に所定圧で貯留される。この水素タンク1132内の水素は、バルブ1133を備えたパイプライン1134を経てバーナー、水素エンジン等に送られるとともにバルブ1135を備えたパイプライン1136を経て各触媒セル1122の前端面に設けたバーナー1137、1137…1137に送られて燃焼される。また各バーナー1137にはプロパンボンベ1138からプロパンガスが供給され、水素ガスとプロパンガスとの混合ガスが燃焼される。前記パイプライン1136は分岐管1139と分岐管1140に分岐され、分岐管1139にはバルブ1141、1142が設けられるとともに分岐管1140には、バルブ1143、1144が取り付けられ、プロパンガスのパイプライン1145には、バルブ1147、1151、1152が、パイプライン1146には、バルブ1148、1149、1150が設けられている。
【0168】
前記触媒セル1122内の触媒の細粒群が外部に放出されることから触媒を補充するための触媒タンク1151Tが設けられ、この触媒タンク1151Tからパイプ1152P、1152P…を介して触媒が各触媒セル1122に送られる。
【0169】
前記各触媒セル1122は
図45、
図46に示すように、触媒筒1160を備え、この触媒筒1160の外側に外筒1161を備え、この触媒筒1160と外筒1161間を熱風が流れるようになっており、この熱風は排出筒1162から流出する。前記触媒筒1160の前端上部から前記水管1126が伸びるとともに、その後端上部から前記水素管1127が伸び、この水素管1127の近傍に触媒タンク1151Tに連なるパイプ1152Pが立設されている。
【0170】
前記触媒筒1160には、やや下方に偏心して炉筒1163が設けられ、この炉筒1163の前端には、バーナー1164が嵌め込まれ、このバーナー1164には、水素タンク1132に連なる水素パイプ1165と、前記プロパンボンベ1138に連なるプロパンパイプ1166が接続され、これら両パイプから水素およびプロパンガスが供給され、これら両ガスは混合して燃焼されるか、選択的に燃焼される。なお、プロパンガスの代りに重油等を使用することが可能である。一般的には、立上げ時に触媒筒1160を500℃前後に温度上昇させる時には、水素とプロパンガスとの混合ガスを燃焼せしめ、一旦温度が上昇した後は、水素ガスのみで温度維持する。前記触媒筒1160の前後は仕切壁1167、1168によって仕切られて、この両壁1167、1168間に触媒室1169が形成され、この両壁間で炉筒1163には、金属元素供給体としてのSUS304(18Cr−8Ni−残Fe)の筒体1170が外嵌している。前記前部仕切壁1167と触媒筒1160の前端壁1174間に蒸気室1171が形成され、蒸気室1171で発生した水蒸気(120〜140℃)は仕切壁1167の上側を通って触媒室1169に流入する。前記後部仕切壁1168と触媒筒1160の後端壁1173間には水素室1172が形成され、触媒室1169内で発生した水素ガスは後部仕切壁1168の上側を通り、更に水素室1172の上部を通って水素管1127に流入する。前記触媒筒1160の両端壁1173、1174間でドーナツ形の触媒室1169内には熱風を通す為の熱風壁1175、1175…1175が設けられており、上側の熱風管1175は触媒の細粒群中に伸びており、ここでの吸熱反応に対処するようにしている。バーナー1164の炎Fからの熱風は炉筒1163の先端から外筒の後端壁1176と触媒室1169の後端壁1173間の熱風室1177を通って熱風管1175内に入り(一部の熱風は外筒1161と触媒筒1160間の熱風通路1178を通る)、触媒筒1169の前端壁1174を出て外筒1161の前端壁1178と触媒筒1169の前端壁1174間の室1180を通って排出筒1162に送られる。なお、排出筒1162の適宜位置には水素センターH、Sが設けられ、発生した水素ガスが熱風内に混在した場合それを検出する。この水素センターH、Sが動作した場合にはバーナー1164を停止せしめる。
【0171】
次に縦型の本発明の他の実施例を示す水素発生装置M
7について述べる。
図47において、基本的構造として縦型の触媒セル1200が設けられ、この触媒セル1200は触媒筒1250を有し、触媒筒1250は触媒室として機能し、この触媒筒1250の底部に触媒としての溶融塩1201が収納され、この溶融塩1201内には、SUS304又はSUS316Lのステンレス材が金属元素供給体1202として浸漬されている。この金属元素供給体1202はパンチング穴を有する円筒形状をなしている。前記触媒セル1200は加熱炉としての炉筒1203上に設置され、この炉筒1203はバーナー1204によって熱風を作るためのものであり、この熱風は触媒筒1250の周壁に形成されたジャケット形の熱風通路1205を通り、排出口1206から排出され、前記熱風通路1205は円筒形の外筒1207と触媒筒1200の周壁間に形成されている。
【0172】
前記触媒筒1250の溶融塩上方は、細粒群11が充満した反応空間をなし、この細粒群11には水蒸気管1208を介して水蒸気が供給され、前記水蒸気管1208は水蒸気を作るための熱交換器1209に連なり、この熱交換器1209には水タンク1210から水が供給される。前記細粒群11と水蒸気との反応により分離した水素は触媒筒1250の天面の水素管1211から回収される。
【0173】
次に具体的構造について更に説明する。
図48、49において、前記触媒筒1250の底部には、溶融塩1201を攪拌するための攪拌羽根1220が設けられ、この攪拌羽根1220は、触媒筒1250の天板上に設けられたモータ1221によって軸1222を介して回転され、この軸1222の上部は天板より上方に離れた位置でシール装置1223によってシールされる。このようにシール装置1223を天板より上方に設けたのは、シール装置1223を低温部分に設けるためである。
【0174】
前記天板には、溶融塩1201を補充するために、例えば、水酸化ナトリウムを貯蔵しておく補充装置1224が設けられ、この補充装置1224は、ホッパーhと、このホッパーhに連なる長い補充筒1224aを有し、この補充筒1224aは、間隔を配して開閉弁1224bと1224cとを備え、補充時には、先ず開閉弁1224bを開いて、所定量の水酸化ナトリウムを両開閉弁1224b、1224c間に落下せしめ、次いで上側の開閉弁1224bを閉じて下側の開閉弁1224cを開いて、触媒筒内に水酸化ナトリウムを落下せしめる。これは、外気を触媒筒内に入れないためである。なお、このとき触媒筒の上部側壁に設けたアルゴン等の不活性ガス注入口1225から不活性ガスを触媒筒内に注入すれば、より有効に外気の侵入を防ぐことが可能である。
【0175】
前記外筒1207の上壁部から伸びる排出口1206は、前記水タンク1210迄伸び、この排気は水タンク1210内の水を加熱した後に外部に放出される。この水タンク1210の水は、触媒筒1250の下部周壁に巻かれた熱交換器1209としての熱コイルに送られ、ここで作られた蒸気は、前記水蒸気管1208に送られ、この水蒸気管1208は
図50に示すように、その底部が円形に形成された円形部1208aを備え、この円形部1208aには多数の噴出口を備えて溶融塩の液面全体に亘って水蒸気が噴出するようになっている。
【0176】
前記触媒筒1250の天板には、2本の熱電対1225、1226が固定され、長い熱電対1226の下端は溶融塩内に浸漬され、短い熱電対1225の下端は溶融塩の液面上に位置し、両熱電対1225、1226の下端間に液面を保持するようにし、液面が短い熱電対1225の上方に上った場合には、熱電対1225の温度が上昇し、液面が長い熱電対1226より下った場合には、熱電対1226の温度が下降するので、これにより液面の位置を判断できる。
【0177】
なお、水素管1211には、水タンクからなる水蒸気除去装置1230が接続され、この装置1230には、水素とともに出てくる一部の細粒群Pを除去するフィルター1231が接続され、フィルター1231を通過した水素は、加圧ポンプのような加圧装置1232を介して一定圧に加圧され、水素ボンベ1233に貯蔵される。この水素ボンベ1233およびプロパンガスボンベ1234からの水素及びプロパンガスは、選択的に、又は、同時にバーナ1204に送られる。
【0178】
このように装置を縦型にすれば、強度的に弱い溶接部分を反応炉の上部に設置できてその部分を溶融塩1201および細粒群11から離すことができるとともに、細粒群11が充満する反応空間を十分に確保することができるし、装置全体の設置面積を横型配置より小さくすることが可能である。
【0179】
次に、本発明の水素発生装置の他の実施例について説明する。
図51、52において、炉筒1300には、触媒と金属元素供給体が収納された細粒発生筒1301が立設され、この細粒発生筒1301の周囲には外筒1302が設けられ、この外筒1302は熱風の排出口1303が取付けられている。前記細粒発生筒1301の周りには4本の気相反応部をなす反応筒1304、1304…1304が設けられ、これら反応筒1304は熱風路を形成するための外筒1305、1305…1305を有し、これら外筒1305には排出口1306、1306…1306が設けられている。前記各反応筒1304内の中心部には、細粒発生筒1301内で発生した細粒群が送り管1307、1307…1307を介して送り込まれ、これに加えて、各反応筒1304内には、水蒸気が水蒸気管1308、1308…1308を介して送り込まれ、反応筒1304内で水蒸気と細粒群とが反応して水素が発生し、この水素は水素管1309から放出される。前記水蒸気管1308は熱交換器1310に連なり、この熱交換器1310には水タンク1311から水が一定量送り込まれて120〜140℃の過熱蒸気が作られる。前記各反応筒1304には順に水蒸気が送られ、反応筒1304内に細粒群が充満したときに水蒸気が送り込まれようになっている。このように、反応筒1304と細粒発生筒1301とを別個に設置したのは、反応筒1304は水蒸気と細粒群との反応に対して強度が必要であり、強度を高めるのが容易であるからである。また、細粒発生筒1301の1つに対して反応筒1304を複数設け、1つの反応筒1304の反応後に次の反応筒1304の反応をさせ休止時間に細粒発生筒1301から細粒群を供給するようにすれば、水素の発生量も増やすことができる。
【0180】
図53は、本発明の水素発生装置の反応炉の他の実施例を示したものである。一般に、触媒上での反応は激しい反応であり、水蒸気と触媒の細粒群とが衝突する空間近傍(特に触媒液面近傍)は、短時間で腐食されるので、液面より離れた場所で反応をさせる必要がある。そこで触媒筒1500を2分割し、下側の触媒収納部1501と気相反応部1502とを上下に組立てることとするのが好ましい。前記触媒収納部1501の上面周囲と気相反応部1502との下面周囲には、フランジ部1503が形成されて両部分が接合分離可能となっており、前記気相反応部1502の下面には仕切板1504が設けられ、その中心部には、細粒群11が上昇できる通過筒1505が設けられ、水蒸気管1506から水蒸気が気相反応部1502の中心部分に供給され、反応後の水素は水素管1507から放出される。
【0181】
次に、
図54を参照して加圧ポンプ1131(
図44)の代りになるような手動式の水素用加圧装置について説明する。
【0182】
本発明の水素発生装置に用いられる水素用加圧装置MPは、水素を加圧するための水を収納した水タンク1350を有し、この水タンク1350には、窒素パイプ1351を介して10気圧以上の窒素(不活性ガスなら何でもよく、アルゴンでもよい)を収納した窒素タンク1352が接続され、パイプ1351には、開閉弁1353、1354が設けられている。前記水タンク1350の底部から水パイプ1355を介して圧縮タンク1356が接続されている。この圧縮タンク1356は水タンク1350よりも高い位置に固定され、ヘッド(水頭)により圧縮タンク1356内の水は水タンク1350に戻ることが出来る。水パイプ1355には、流量調整弁1357が設けられ、前記圧縮タンク1356には、触媒ユニットから発生した水素ガスがガスパイプ1358を介して供給され、このガスパイプ1358には開閉弁1359が設けられている。前記圧縮タンク1356からは、使用する水素を貯蔵する運搬可能なガスボンベ1360がガスパイプ1361を介して接続され、ガスパイプ1361には開閉弁1362が設けられ、ガスボンベ1360には開閉弁1363が設けられ、ガスパイプ1361とガスボンベ1363間には着脱可能な接続具1364が設けられている。ガスボンベ1360に10気圧以下の水素ガスが貯留されたら、次のガスボンベ1365がガスパイプ1361に接続具1364を介して接続される。
【0183】
以上が水素加圧装置MPの主構成であるが、窒素タンク1352からの窒素ガスを節約するための補助装置Sについて説明する。
【0184】
前記補助装置Sは、十分な容積の窒素タンク1320を有し、この窒素タンク1320の頭部には開閉弁1321が設けられ、この開閉弁1321は窒素ガスライン1322の一端に接続され、窒素ガスライン1322の他端には、開閉弁1323が設けられ、これら開閉弁1321、1323の切換により、圧縮タンク1356と窒素タンク1320を接続したり、系内の窒素ガスを大気に開放したりする。前記窒素タンク1320の下面には、水ライン1324とドレンパイプ1325が接続され、水ライン1324には、逆止弁1326が、ドレンパイプ1325には開閉弁1327が取り付けられ、水ライン1324には、手動ポンプ1328(足踏みポンプでもより)が設けられ、この手動ポンプ1328には、例えば水道から水が供給される。なお、水タンク1350、圧縮タンク1356、窒素タンク1320には図示しない圧力計と水位計が、窒素タンク1352、ガスボンベ1360、1365には図示しない圧力計が取付けられている。
【0185】
次に水素用加圧装置MPの作用について説明する。
生成された水素ガスはガスパイプ1358を介して圧縮タンク1356に先ず貯留されるが、このとき開閉弁1359が開いており、水パイプ1355の流量調整弁1357が、圧縮タンク1356内に送られる水素ガスの量に対応して開かれ、圧縮タンク1356内の水がヘッド(水頭)によって水タンク1350内に流入する。このとき、窒素ガスライン1322の開閉弁1321、1323は連通し、水タンク1350の上部の窒素ガスは、窒素ガスライン1322を通って窒素タンク1320内に入る。一定量の水素ガスが圧縮タンク1356内に入ったら、ガスパイプ1358の開閉弁1359を閉じる。このときには、ガスパイプ1361の開閉弁1362、1363は閉じている。次いで、窒素パイプ1351の開閉弁1353、1354を開き窒素ガスライン1322の開閉弁1321、1323を閉じて、9〜10気圧の窒素ガスを水タンク1350の上部に供給して水面を下方に押して水を水パイプ1355を介して圧縮タンク1356に送り、圧縮タンク1356内の水素ガスを9〜10気圧まで圧縮し、次いでガスパイプ1361の開閉弁1362、1363を開放してガスボンベ1360内に送る。この後、窒素ガスライン1322の開閉弁1321、1323を連通させて水タンク1350内の窒素ガスパイプ1358の開閉弁1359を開き、水素ガスを圧縮タンク1356に送りながら、水頭を利用して水タンク1350内に送る。圧縮タンク1356内に所定量の水素ガスが送られたら窒素ボンベ1352内の圧力窒素で水タンク1350内の水を圧縮タンク1356に送って再び9〜10気圧に圧力を上げ、その後ガスボンベ1360内に水素ガスを送り込む。こうして、このサイクルを何回か繰り返してガスボンベ1360が9〜10気圧となったときに、接続具1364からガスボンベ1360を切り離して予備のガスボンベ1365を接続する。窒素タンク1352から流出した窒素は、窒素タンク1320に貯留されるが、水タンク1350の頭部の窒素ガスの圧力が圧縮タンク1356の水の水頭より高くなった場合は、開閉弁1323を切り換えて大気圧とし、水タンク1350の水の出入りをスムースにする。以後は窒素タンク1352を使用しなくても、窒素タンク1320の窒素ガスを圧縮すれば、水タンク1350の水を押し出すことが可能となる。すなわち開放弁1321を閉じ、ポンプ1328を作動させて水を窒素タンク1320に送りその中の窒素ガスを9〜10気圧まで上昇せしめる。その後ガスライン1322を介して窒素ガスを水タンク1350内に送り込めば圧縮動作を行うことができ、水タンク1350内の窒素ガスを吸収する時には、窒素タンク1320内の水を開閉弁1327を開放してドレンパイプ1325から排出する。
【0186】
このようにして、水を使用して採集した水素ガスを圧縮すれば、電気を使用することがないので安全に水素を空気を入れることなく圧縮できる。
【0187】
水蒸気が触媒液面上を流動しているが、
図55に示すように、触媒筒1510内に触媒Cを入れ、溶融させて液状にして蒸気供給管1511の下端を溶融触媒内に浸漬せしめ、水蒸気を直接触媒内を通して分解せしめ流出管から水素と酸素を回収するようにすれば、水蒸気は泡状に上昇する際に上述のような反応により水蒸気が十分に分解される。
【0188】
次に、各水素発生装置に供給する特殊触媒について説明する。
図56において、触媒製造装置CMは溶融釜1400を有し、この溶融釜1400はヒータ1401によって400〜600℃に加熱され、釜内には水酸化ナトリウム(NaOH)1402およびSUS304又はSUS316Lのフィン1403が収納され、フィン1403からのクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)および鉄(Fe)が十分溶け込んだら釜底面から伸長する供給管1404の弁1405を開いて密封ハウジング1406内に配設したケース1407内に触媒を順次供給する。前記ケース1407はコンベア1408上に複数個載置され、触媒溶液はケース1407内で冷却され固まって収納部1409に貯溜される。触媒溶液は酸化し易いので、密封ハウジング1406内は不活性ガスが注入されている。
【0189】
前記ケース1407は前記フィン1402と同様の作用を水素発生装置の触媒筒内で寄与するためにSUS304又はSUS316Lで形成され、このケース1407は例えば1mm以下の肉厚に形成され、このケース1407内には、SUS304又はSUS316Lの成分が溶け込んだ水酸化ナトリウムからなる触媒1409が固形化された状態で収納される。前記ケース1407の上面には必要に応じてSUS304からなる蓋1408が被せられて触媒1409が触媒補充装置に入れられる迄空気に触れないようになっている。このように、密封された触媒は、蓋1408を取り外して
図58に示すように、水素発生装置の触媒補給装置1410のホッパー1411の仕切部屋1413に縦に収納され、その底部にスライド自在に設けたスライド板1412を外方に引出して逐次触媒を触媒筒内に落下させるようになっている。このように、ケースごと触媒筒内に供給すれば、金属元素供給体としてのフィン等が不要となる。
【0190】
また、
図59に示すように触媒1409を収納したケース1407をカッター1415で適切な大きさに切断して触媒の小片1416を作り、これら小片1416を真空パックして通常の触媒補給装置に送るようにしてもよい。