特許第6130908号(P6130908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130908
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】ベルトリトラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/28 20060101AFI20170508BHJP
【FI】
   B60R22/28 106
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-513016(P2015-513016)
(86)(22)【出願日】2013年5月8日
(65)【公表番号】特表2015-517435(P2015-517435A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】DE2013200013
(87)【国際公開番号】WO2013174375
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2016年4月27日
(31)【優先権主張番号】102012208700.1
(32)【優先日】2012年5月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512143350
【氏名又は名称】タカタ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】グレックラー,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ペヒホールド,クリストファ
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−35444(JP,A)
【文献】 特開平9−286302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルトを巻き付け及び巻き戻すためのベルトリール、及び
ロック可能なロッキングベース、を有し、当該ロッキングベースは、前記ベルトリールに接続され、ロック前は前記ベルトリールと共に回転し、ロック後は回転運動をブロックされ、
前記ロッキングベースがロックした場合に、ベルトの力を制限するために、前記ロッキングベースと前記ベルトリールとの間の相対的な回転が可能な、
シートベルト用のベルトリトラクタであって、
当該ベルトリトラクタは、前記ベルトリールと前記ロッキングベースとの間で相対的な回転が起きた場合に、隙間内に引き込まれるバンドを有し、
前記隙間の端は少なくとも一つの変形可能要素によって境界を定められ、前記変形可能要素は前記隙間内に引き込まれた前記バンドによって変形させられる、
ベルトリトラクタ。
【請求項2】
前記隙間は、環状であり、外側環状隙間壁及び内側環状隙間壁によって境界を定められる、請求項1記載のベルトリトラクタ。
【請求項3】
前記少なくとも一つの変形可能要素は、前記外側環状隙間壁上又は前記内側環状隙間壁上に形成され、
前記少なくとも一つの変形可能要素が変形した場合は、半径方向に見た場合の環状の前記隙間の隙間幅が増大する、
請求項2記載のベルトリトラクタ。
【請求項4】
前記隙間の前記外側環状隙間壁は少なくとも2つの環状ディスクの環状内側壁によって形成され、前記少なくとも2つの環状ディスクは、前記ベルトリールの軸に沿って見て互いに重ねて配列され、いずれも、多数の内側に突出する変形可能要素が設けられている、請求項3記載のベルトリトラクタ。
【請求項5】
前記の少なくとも二つの環状ディスクの内側に突出する変形可能要素は、前記隙間内に導入される前記バンドが当該少なくとも二つの環状ディスクの内側に突出する変形可能要素に対して時間差で動くような方法で、互いに対して回転して配列されている、請求項4記載のベルトリトラクタ。
【請求項6】
前記隙間の前記外側隙間壁は、前記ベルトリールの軸に沿って見たときに互いに重ねて配列され、いずれも、複数の内側に突出する変形可能要素が設けられた少なくとも3つの環状ディスクの前記環状内側壁によって形成され、
前記環状ディスクの前記内側に突出する変形可能要素は互いに対して回転させられ、前記隙間内に導入される前記バンドが当該少なくとも3つの環状ディスクの内側に突出する変形可能要素に対して時間差で動く、請求項5記載のベルトリトラクタ。
【請求項7】
前記環状ディスクは、前記ロッキングベースと共に回転するために前記ロッキングベースに接続された鋳造物又は型抜きされた部品であり、特に前記ロッキングベースに取り付けられるか又は前記ロッキングベース内に配置されている、請求項4乃至6のいずれか一項に記載のベルトリトラクタ。
【請求項8】
前記隙間は、前記ロッキングベースによって又は前記ロッキングベースと共に回転するために前記ロッキングベースに接続された少なくとも一つの要素によって片側の境界を定められ、前記ベルトリールによって又は前記ベルトリールと共に回転するために前記ベルトリールに接続された少なくとも一つの要素によって反対側の境界を定められる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のベルトリトラクタ。
【請求項9】
前記内側環状隙間壁は、前記ベルトリールの環状外側部によって形成される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のベルトリトラクタ。
【請求項10】
前記隙間及び/又は前記環状隙間壁は、当該ベルトリトラクタの軸に対して同心状に配列されている、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のベルトリトラクタ。
【請求項11】
前記バンドは、一方のバンド端で前記ベルトリールに接続されている、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のベルトリトラクタ。
【請求項12】
当該ベルトリトラクタは環状保管隙間を有し、
前記バンドは、前記ベルトリールと前記ロッキングベースとの間の相対的な回転の前は前記環状保管隙間内で巻き付けられた形態で保管され、
前記ロッキングベースが当該ベルトリトラクタに対して相対的に回転する場合は、前記バンドは、前記少なくとも一つの変形可能要素によって前記環状保管隙間から前記隙間内に引き込まれる、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のベルトリトラクタ。
【請求項13】
前記環状保管隙間及び前記少なくとも一つの変形可能要素によって境界を定められた前記隙間は、互いに対して同心状に配列される、請求項12記載のベルトリトラクタ。
【請求項14】
複数の前記変形可能要素のうちの少なくとも一つは、前記隙間の内部の方向に向けられた歯部又は突出部によって形成され、かつ/或いは
複数の前記変形可能要素のうちの少なくとも一つは、前記外側環状隙間壁の弧状部又は前記内側隙間壁の弧状部を形成する接続部によって互いに接続された少なくとも二つの支持部材を有する、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載のベルトリトラクタ。
【請求項15】
組付けの範囲内で、前記ベルトリールは前記ロッキングベースに対して回転させられ、回転のために要求されるトルクが所定の最大値に到達するまで、前記バンドは前記隙間内に引き込まれる、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のベルトリトラクタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルトを巻き付け及び巻き戻すためのベルトリール及びロック可能なロッキングベースを有するベルトリトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種類のベルトリトラクタは、米国特許公報US6,216,972B1から知られる。既に知られるベルトリトラクタは、シートベルトを巻き付け及び巻き戻すためのベルトリール、及び、ロック可能なロッキングベースを有する。ロッキングベースは、ベルトリールに接続され、ロックする前はベルトリールと一緒に回転させられ、ロックした後にその回転位置でブロックされる。ロッキングベースがロックした場合に、ベルトの力を制限するために、ロッキングベースとベルトリールとの間の相対的な回転が可能である。その相対的な回転の間に、金属バンドがシケインチャネルを通って案内され、その過程で繰り返して折り曲げられる。バンドの繰り返しの折り曲げはエネルギーを消費させ、ひいてはロッキングベースとベルトリールとの間の相対的な回転及びそれに関連してシートベルトの更なる伸長が、より難しくなり、ベルトを抑止する力が生み出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公報US6,216,972B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コンパクトな構造を有し、ベルトリールとロッキングベースとの間で相対的な回転が起きた場合について、ベルト抑止力を特定された方法で広い範囲で予め定めることを可能にするベルトリトラクタを明確に述べる目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、特許請求の範囲の請求項1による特徴を有するベルトリトラクタにより、本発明によって達成される。本発明によるベルトリトラクタの有利な改良は、従属請求項に明記されている。
【0006】
本発明によれば、それに応じてベルトリールとロッキングベースとの間で相対的な回転が起きた場合に、隙間(gap)の内に引き込まれるバンドを有するベルトリトラクタが提供され、隙間の端は、隙間内に引き込まれるバンドによって変形させられる少なくとも一つの変形可能要素によって境界を定められるように準備される。
【0007】
本発明によるベルトリトラクタの実質的な利点は、上記のベルトリトラクタの場合は、拘束力を生み出すためにバンドの変形が使用されるのではなく、代わりに、隙間内に引き込まれたバンドによって変形させられた少なくとも一つの変形可能要素の変形が使用されるという事実にみられる。本発明により、バンド自体によってではなく変形可能要素による、供給されるエネルギーの消散を用いて、拘束力が非常に特定された方法で設定されることができ、それでもなおベルトリトラクタの構造は非常にコンパクトに保たれることができる。このように、少なくとも一つの変形可能要素の存在のおかげで多数の設定パラメータが正確に利用可能であり、その設定パラメータは、ベルトリトラクタとロッキングベースとの間で相対的な回転が起きた場合にベルトリトラクタとロッキングベースがベルトの拘束力に影響を与えるために使用されることができる。例えば、どの程度の相対的な回転の角度に渡ってバンドによって拘束力が生み出されるかは、バンドの長さによって決定されることができる。一つの変形可能要素又は複数の変形可能要素の形状及び材料及び隙間の隙間幅は、更なる設定の選択肢を提供する。これらによって、ベルトバンドの伸長の特性が、ロッキングベースとベルトリールとの間で相対的な回転が起きた場合に影響を受けることができ、又ははっきり限定された方法でそれぞれの要求に従って設定されることができる。
【0008】
例えば、本発明によるベルトリトラクタを使って、ベルトリールとロッキングベースとの間の相対的な回転の角度がバンドによって制限されるべきであるかどうかが、非常に単純でありそれ故に有利な方法で決定されることができる。例えば、第一の有利な変形例によれば、バンドが完全に隙間内に引き込まれた場合に、ロッキングベースとベルトリールとの間の更なる相対的な回転が、例えばバンドの一端に配置された停止要素の補助を用いて阻止(ブロック)されることが提供され得る。
【0009】
第二の有利な変形例によれば、例えば、ロッキングベースとベルトリールとの間の回転の所定の最大制限角度からの隙間幅に基づいて、隙間がもはや更なるバンドの引き込みを許容せず、バンドが隙間内でブロックされるか又はつかえるという事実によって、ロッキングベースとベルトリールとの間の相対的な回転が終了されることが提供されることができる。
【0010】
第三の有利な変形例によれば、例えば、ロッキングベースとベルトリールとの間の回転角度の制限が存在せず、バンドは、完全に隙間内に引き込まれた後に、例えば単に一緒に回転させられ続けることが提供されることができる。
【0011】
複数の変形可能要素が存在する場合は、特に有利であると考えられる。そのような場合、拘束力の特性は、変形可能要素の互いに対する配列によっても追加的に決定されることができる。
【0012】
端が少なくとも一つの変形可能要素によって境界を定められた隙間は、バンドが導入される前に既に存在していてもよく、又はバンドが隙間内に引き込まれる前にゼロよりも大きな隙間幅を有してもよい。代替的に、隙間はまた、バンドの導入によってのみ形成されてもよい。
【0013】
隙間が環状であり、外側環状隙間壁及び内側環状隙間壁によって境界を定められる場合は、特に有利であると考えられる。ここで環状の隙間の形は、要求される通りである。環状隙間は、円形、楕円形又はたとえ多角形であってもよい。環状隙間は、バンドの繰り返しの巻き付け及びそれ故に360°を超える回転の相対的な角度を許容する。
【0014】
隙間は、好ましくはロッキングベースによって又はロッキングベースと共に回転するためにロッキングベースに接続された少なくとも一つの要素によって片側(一方の側)の境界を定められ、ベルトリールによって又はベルトリールと共に回転するためにベルトリールに接続された少なくとも一つの要素によって反対側の境界を定められる。
【0015】
部品の最小の数に関して、内側環状隙間壁がベルトリールの環状外側部によって形成される場合は、有利であると考えられる。
【0016】
ベルトリトラクタのコンパクトな構成に関して、隙間及び/又は複数の環状隙間壁は、好ましくはベルトリトラクタの軸に対して同心状に配列されている。代替的に、しかしながら、非同心状又は軸がずれたベルトリトラクタの軸に対する環状隙間の中心の配列もまた、考えられる。一つの中心がずれた配列の場合において、ベルトリールとロッキングベースとの間で相対的な回転が起きた場合における力の増大のプロファイルは、非常に単純に設定されることができる。
【0017】
少なくとも一つの変形可能要素の配置に関して、上記の要素が外側環状隙間壁上又は内側環状隙間壁上に形成される場合は、有利であると考えられる。
【0018】
隙間の外側隙間壁は、例えば、単一の環状ディスクの環状内側壁によって形成されてもよい。しかしながら、隙間の外側隙間壁が、ベルトリールの軸に沿って見たときに、重ねて配列され、いずれも、多数の内側に突出する変形可能要素が設けられた、少なくとも二つの環状ディスクの環状内側壁によって形成される場合は、特に有利であると考えられる。この改良において、ベルトバンドの伸長中に所望の力のプロファイルを、材料の異なる選択及び/又は環状ディスクの変形可能要素の異なる幾何学的形状によって特に正確に得ることが可能である。
【0019】
環状ディスクの内径は、例えば、外周に渡って変化を付けられた内側に突出する変形可能要素の寸法によって外周に渡って変化してもよい。これは、例えば、ロッキングベースとベルトリールとの間で相対的な回転が起きた場合に連続的又は段階的な力の増大を可能にする。
【0020】
隙間の外側隙間壁が二つ以上の環状ディスクによって形成される場合、そのときは特に好ましい改良によれば、少なくとも二つの環状ディスクの内側に突出する変形可能要素は、
隙間内に導入されるバンドが少なくとも二つの環状ディスクの内側に突出する変形可能要素に対して時間差で動くような方法で、互いに対して回転して配列されることが提供される。環状ディスクの変形可能要素の互いに対して回転させられた配置は、特に単純な方法で、ロッキングベースとベルトリールとの間の回転の相対的な角度を用いてベルトバンド伸長力の連続的なプロファイルを設定することを可能にする。なぜなら、環状ディスクの連続する複数の変形可能要素の間の部分における力の急激な低下は、他の環状ディスクのずられた変形可能要素によって補償されることができるからである。
【0021】
特に連続的な力のプロファイルに関して、隙間の外側隙間壁が、ベルトリールの軸に沿って見たときに互いに重ねて配列され、いずれも、複数の内側に突出する変形可能要素が設けられた少なくとも3つの環状ディスクの環状内側壁によって形成され、環状ディスクの内側に突出する変形可能要素は互いに対して回転させられ、隙間内に導入されるバンドが少なくとも3つの環状ディスクの内側に突出する変形可能要素に対して時間差で動く場合は、有利であると考えられる。
【0022】
環状ディスクは、好ましくは鋳造物又は型抜きされた部品である。その部品は、好ましくは共に回転するためにロッキングベース又はベルトリールに接続される。その接続は、例えば、取り付け(例えばボルトでの)によって、ネジ止めによって、リベットによって、接着によって、溶接によって、はんだ付けによって等である。そのような構成の場合において、環状ディスクの外側の輪郭は、バンドが隙間内に引き込まれる前にバンドが置かれる支持表面及びそれ故に座面を形成することができる。
【0023】
代替的に、(複数の)環状ディスクの外側の輪郭は、少なくとも断面で、環状ディスクがロッキングベースと共にインターロッキング接続を形成するような方法で、ロッキングベースの一部分の内側の輪郭に適合させられることができる。この場合において、環状ディスクは、ロッキングベースの上に又はロッキングベースの中に直接的に差し込まれることができる。歯部は、好ましくは(複数の)環状ディスクの外側の輪郭上に、例えば波形状によって設けられる。上記の歯部は、ロッキングベースの一部分の内側の輪郭上の対応する歯部又は波形状に対して一致している。
【0024】
この前に記述された改良において、分離環がロッキングベース上の単一の部分として一体的に形成される場合、又は分離環がロッキングベース上に外側からぴったりと適合し、その外側の輪郭には、バンドが隙間内に引き込まれる前にバンドが置かれる支持表面及びそれ故に座面を分離環が形成する場合は、有利であると考えられる。
【0025】
その上に、単純な組み付けに関して、バンドが一方のバンド端でベルトリールに接続されている場合は、有利であると考えられる。
【0026】
バンドの他方のバンド端には、例えば、バンドが完全に隙間内に引き込まれたとき又はその前にロッキングベースとベルトリールとの間の更なる相対的回転を終わらせるための停止要素が設けられることができる。
【0027】
その上に、コンパクトな構成に関して、ベルトリトラクタが環状保管隙間を有し、バンドは、ベルトリールとロッキングベースとの間の相対的な回転の前は環状保管隙間内で巻き付けられた形態で保管され、ロッキングベースがベルトリトラクタに対して相対的に回転する場合は、バンドは、少なくとも一つの変形可能要素によって環状保管隙間から、以下で短く“変形可能な隙間”とも呼ばれる隙間内に引き込まれる場合は、有利であると考えられる。
【0028】
環状保管隙間及び少なくとも一つの変形可能要素によって境界が定められる変形可能な隙間は、特に好ましくは互いに対して同心状に配列される。そのような構成は、バンドが環状保管隙間の断面から移る(外れる)必要なく、ベルトリールとロッキングベースとの間の相対的な回転が起こるとすぐにバンドを環状保管隙間から変形可能な隙間へ引き込むことを可能にする。
【0029】
環状保管隙間に関して、環状保管隙間の直径が少なくとも一つの変形可能要素によって境界を定められた環状の変形可能な隙間の直径よりも大きく、環状保管隙間が変形可能な隙間の周りに同心状に配置されている場合は、有利であると考えられる。
【0030】
変形可能な隙間内にバンドを簡単に通すために、外側隙間壁が、バンドが外側から変形可能な隙間内に引き込まれることを可能にするスロットを有する場合は、有利であると考えられる。スロットの長手方向は、好ましくはベルトリトラクタの軸に対して平行に延びる。
【0031】
変形可能要素は、例えば、外側環状隙間壁上及び/又は内側環状隙間壁上に形成された複数の歯部によって形成されることができる。複数の歯部は、好ましくは隙間の内部の方向を向いている。
【0032】
追加的又は代替的に、変形可能要素又は複数の変形可能要素がそれぞれ、内側環状隙間壁又は外側環状隙間壁の一部分によって形成されることが提供されることができる。その部分は、隙間の内部の方向に半径方向に向けられている。それらの部分の変形可能性は、好ましくはそれぞれ一つ以上の開口部又は一つ以上の穴によって確実にされる。開口部又は穴は、好ましくは半径方向に見て内側、すなわちそれぞれの隙間壁の裏側に位置し、上記の隙間壁を弱くし、ひいてはそれぞれの隙間壁はバンドが内側に巻かれるときに曲がることができる。
【0033】
隙間の外側隙間壁が、例えば環状ディスクの環状内側壁によって形成されている場合は、変形可能要素は、環状ディスクの環状内側壁の内側に突出する変形可能な部分によって形成されることができ、開口部又は穴はそれぞれの部分の裏側、すなわち環状ディスクの材料における半径方向外側上に存在する。開口部又は穴は、好ましくは貫通孔として設計され、好ましくはベルトリール軸に対して平行に延びる。
【0034】
代替的に、一つの変形可能要素又は複数の変形可能要素が、それぞれ、接続部によって互いに接続された少なくとも二つの支持部材を有することが提供されることができる。接続部は、好ましくは外側環状隙間壁の円弧形状部又は内側隙間壁の円弧形状部を形成する。その構成は、動作の観点から、環状ディスクの環状内側壁が開口部によって機械的に弱められる、上述の実施形態に対応する。
【0035】
支持部材は、好ましくは隙間の内部の方向に向けられている。
【0036】
バンドの材料に関して、上記のバンドが鉄、例えばばね鋼で作られている場合は、有利であると考えられる。変形可能要素は、好ましくは鉄又はアルミニウムで作られている。
【0037】
その上に、バンドが掛止部に二重の形でベルトリールに掛けられ、部分的又は転属的に二重の形でロッキングベースとベルトリールとの間の隙間内に引き込まれている場合は、有利であると考えられる。二重の掛止めは組み付けを単純にする。
【0038】
ロッキングベースとベルトリールとの間の隙間内へのバンドの二重の引き込みの場合において、バンドが部分的に二重の形で引き込まれ、部分的に単層の形で引き込まれる場合は、更に有利であると考えられる。好ましくは、バンドは前方の二重バンド部の付近で二重の形でベルトリールとロッキングベースとの間の隙間内に引き込まれ、前方の二重バンド部に隣接する後方の単層バンド部の付近では単層の形でのみ引き込まれる。そのような構成の場合においては、場合により折り返しがもたらされた後に存在する弾性のために変形可能要素がなおもバンド上に働かせている摩擦力が、それぞれ、仮にあるとしても、前方の二重バンド部の領域でのみ役割を果たし、単層バンド部の領域においては有意(significantly)に低い又は完全に無視すらできるという効果が、有利に達成されることができる。
【0039】
本発明は、上述されたようにベルトリトラクタを取り付けるための方法にも関係する。本発明によれば、組み付けの範囲内で、ロッキングベースはロッキングベースに対して回転させられ、回転のために要求されるトルクが所定の最大値に到達するまで又は超えるまで、バンドが隙間内に引き込まれることが提供される。一つの代替として、組み付けの範囲内で、ロッキングベースはロッキングベースに対して回転させられることができ、バンドは所定の回転の角度が達成されるまで隙間内に引き込まれることができる。
【0040】
本発明は、複数の例示的な実施形態を参照して以下により詳細に説明される。本明細書において、各図面は例として、以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本発明によるベルトリトラクタのための、第一の例示的な実施形態の複数の構成要素を分解図で示す。
図2図2は、図1による複数の構成要素を部分的に組み込まれた状態で示す。
図3図3は、図1による複数の構成要素のうちのいくつかを予め組み込まれた状態で示す。
図4図4は、図1による複数の構成要素を切り開いた状態の三次元ビューで示す。
図5図5は、図1によるベルトリトラクタの動作を初期状態、すなわちベルトリールとロッキングベースとの間の相対的な回転の前の断面図で示す。
図6図6は、ベルトリールがロックされたロッキングベースの回りをおよそ360°だけ回転した後の、図1によるベルトリトラクタを示す。
図7図7は、ベルトリールがロッキングベースに対して二度回転した後の、図1によるベルトリトラクタを示す。
図8図8は、本発明によるベルトリトラクタのための、第二の例示的な実施形態の複数の構成要素を示す。複数の変形可能要素は、接続部を有する支持部材によって形成されている。
図9図9は、本発明によるベルトリトラクタのための、第三の例示的な実施形態の複数の構成要素を示す。バンドは、一つ以上の環状ディスクの外側の輪郭又は外面の上に置かれており、上記の外面から、(複数の)環状ディスクの内側とロッキングベースとの間に位置する隙間内に引き込まれる。
図10図10は、図9による例示的な実施形態を異なる図で示す。
図11図11は、本発明によるベルトリトラクタのための、第四の例示的な実施形態の複数の構成要素を示す。一つ以上の環状ディスクは、インターロッキング接続によって、ロッキングベースにぴったりと適合した又は一体的に形成された支持環内に保持される。バンドは、分離環の外側の輪郭又は外面から、(複数の)環状ディスクの内側とロッキングベースとの間に位置する隙間内に引き込まれる。
図12図12は、内側環の内側の輪郭上の変形可能要素の形状の一つの例示的な実施形態を示す。変形可能要素の変形可能性は、“隠された”開口部又は穴によってもたらされる。
図13図13は、内側環の内側の輪郭上の変形可能要素の形状の一つの更なる例示的な実施形態を示す。変形可能要素の変形可能性は、隠された又は異なる半径方向の距離で裏側に位置する開口部又は穴によってもたらされる。
図14図14は、複数の隣接する環状ディスクの複数の変形可能要素の間の回転角度のずれを、例として、異なる図で示す。
図15図15は、本発明によるベルトリトラクタのための、第五の例示的な実施形態の複数の構成要素を示す。バンドは、二重の形でベルトリールとロッキングベースとの間の隙間内に引き込まれる。
図16図16は、本発明によるベルトリトラクタのための、第六の例示的な実施形態の複数の構成要素を示す。バンドは、前方のバンド部分の領域において二重の形で、その他の領域においては単層の形で、ベルトリールとロッキングベースとの間の隙間内に引き込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
明瞭さのために、同じ参照符号は、同一の又は同等な構成要素のために常に使用される。
【0043】
図1は、ベルトリトラクタ10の複数の構成要素を示す。ベルトリトラクタ10は、ベルトリール20及びロッキングベース30を有する。3つの環状ディスク40,50及び60、バンド70、分離環80、トーションバー90及び外側ハウジング環100もまた、図1に見られる。
【0044】
図1に示される複数の構成要素の組み付けの後に、環状隙間110は、ベルトリール20の環状外側部21と3つの環状ディスク40,50及び60の環状内側壁41,51及び61との間に形成される。換言すれば、ベルトリール20の環状外側部21は環状隙間110の内側環状隙間壁111を形成し、3つの環状ディスク40,50及び60の3つの環状内側壁41,51及び61は、環状隙間110の外側環状隙間壁112を形成する。
【0045】
更に、図1に示される複数の構成要素の組み付けの後に、環状保管隙間120が形成される。環状保管隙間は、ロッキングベース30にぴったりと適合されているか、又はロッキングベース30上に一体的に形成された分離環130の外側壁131によって、及び外側ハウジング環100によって、境界を定められている。
【0046】
環状保管隙間120は、バンド70を包含する。バンド70は、そのバンド端71で分離環130内のスロット132を通し、3つの環状ディスク40,50及び60のスロット42,52及び62並びにベルトリール20内のスロット22を通して案内され、ベルトリール20の内部において掛け止められる。
【0047】
図1は更に、3つの環状ディスク40,50及び60並びにロッキングベース30の間の差し込み接続を可能にするボルト140を示す。上記の差し込み接続及びボルト140によって、3つの環状ディスク40,50及び60はロッキングベース30と共に回転するためにロッキングベース30に接続される。代替的に、ロッキングベース30と環状ディスク40,50及び60との間の回転に関して固定された接続は、インターロッキング接続によってもたらされてもよい。そのような構成は図11と併せて更に説明される。
【0048】
加えて、図1は3つの環状ディスク40,50及び60の環状内側壁41,51及び61にはいずれも複数の歯部150が設けられていることを明らかにする。複数の歯部150は、半径方向内側に向けられており、以下により詳細について更に説明されるように、バンド70が環状保管隙間120から隙間110内へ引き込まれた場合に環状隙間110のための変形可能要素を形成する。したがって、隙間110は“変形可能な”隙間である。
【0049】
図2は、図1によるベルトリトラクタ10の複数の構成要素を予め組み込まれた状態で示す。複数の環状ディスクはボルトによってロッキングベース30に取り付けられること及びバンド70のバンド端71はロッキングベース30の分離環130内のスロットを通し、そして複数の環状ディスク内のスロットを通して差し込まれることが理解される。バンド端71は角度を付けられた部分72を有し、部分72を用いてバンド70がベルトリール20内に掛け止められる。
【0050】
その上に、図2は環状保管隙間120の形成を非常に簡単に明らかにする。環状保管隙間120は、ロッキングベース30、ロッキングベース30の分離環130及びハウジング環100によって境界を定められる。環状保管隙間120は、スロットを通して差し込まれてベルトリール20内に掛け止められるバンド端71を除いて、バンド70を包含する。
【0051】
図3は、図1によるベルトリトラクタ10の複数の構成要素を完全に組み込まれた状態で示す。バンド70及びベルトリール20内に掛け止められたバンド端71が見られる。その上に、3つの環状ディスクの環状内側壁上に配列された複数の歯部150が互いに対してずれている(オフセットしている)ことが、理解され得る。上記のずれは、環状ディスク40,50及び60上の複数の歯部150の互いに対して回転させられた配列に基づく。上記のずれにより、ベルトバンド70は、ベルトバンド70が環状隙間110内に引き込まれた場合に、非常に連続的な力のプロファイルがロッキングベース30とベルトリール20との間の回転の相対的な角度に渡って確実にされるように、3つの環状ディスクの複数の歯部150に対して時間差で動くことができる。
【0052】
図4は、図1によるベルトリトラクタ10の複数の構成要素を、ベルトリール20が切り開いて示された、適合された状態で示す。図4による説明図において、バンド70の角度を付けられた部分72はベルトリール20内に掛け止められ、従って、ベルトリール20とロッキングベース30との間で相対的な回転が起きた場合には、バンドは3つの環状ディスクとベルトリール20の環状外側部21との間の環状隙間110内に引き込まれることが理解され得る。
【0053】
その上に、図4は組み込まれたトーションバー90を示す。トーションバー90は、ロッキングベース30とベルトリール20との間で相対的な回転が起きた場合に、更なるベルト拘束力を生み出す。その拘束力は、バンド70によって引き起こされるベルト拘束力に加えて生じる。トーションバー90及びバンド70の両方が同じ機能、すなわちロッキングベース30とベルトリール20との間で相対的な回転が起きた場合にベルト拘束力を生み出す機能を有しているが、上記の二つの構成要素は互いから独立して機能し、従ってベルト拘束力はこれら二つの構成要素を互いに独立して用いて設定されることができる。また、トーションバーは、十分なベルト拘束力がバンド70によって単独で生み出される場合は、省略されてもよい。
【0054】
図5,6及び7に併せて、図1乃至4によるベルトリトラクタ10におけるバンド70の働きがより詳細に説明される。図5は、図1による環状ディスク40が位置する断面における、ベルトリトラクタ10を通る断面図を示す。
【0055】
図5において、バンド70のバンド端71は、環状ディスク40内のスロット42を通して案内され、ベルトリール20内に掛け止められることが理解され得る。環状隙間110に対して同心状に配列され、環状隙間110を半径方向外側で取り囲む環状保管隙間は、明瞭さの理由のために特に図5内においては図示されていない。
【0056】
ロッキングベースがブロックされ、その後ベルトリール20とロッキングベース30との間の相対的回転が起こる場合には、バンド端71、及びそれ故に全体としてのバンド70は、ベルトリール20の環状外側部21と環状ディスク40の環状内側壁41との間の環状隙間110内に引き込まれる。環状ディスク40の環状内側壁41上に形成された複数の歯部150は、歯先端部151とベルトリール20の環状外側部21との距離がバンド70の厚さよりも小さくなるような寸法に作られている。これは、バンド70が図5内の第一の歯部150aに接触して動き、変形のエネルギーが消費された場合に、上記の歯部の変形が生じることに結果する。対応する方法で、更なる複数の歯部150b,150c,150d等が、回転方向Pに沿ったベルトリール20の相対的な回転中にバンド70が上記の複数の歯部に接触して動いた場合に、変形する。
【0057】
図6は、ベルトリール20がロッキングベースに対して360°だけ回転した後の状況を示す。歯先端部151とベルトリール20の環状外側部21との間の最初の距離がバンド70の厚さよりも小さいために、環状ディスク40の環状内側壁上に配列された複数の歯部150の歯先端部151が変形させられていることが、理解され得る。対応する方法で、環状ディスク40の環状内側壁上の複数の歯部150の歯先端部151の更なる変形及び更なる離れる方向への折れ曲がりが、バンド70が更に環状隙間内に巻き込まれるときに生じる。
【0058】
図7は、ロッキングベースに対するベルトリール20の二回転後の状況を示す。半径方向において見られるように、バンド70が引き込まれてベルトリール20の環状部分21上に巻き付けられることによって環状隙間110の隙間幅bが増大しており、隙間幅bの増大は、変形可能要素として働く複数の歯部150の変形に基づくことが、理解され得る。
【0059】
要約すれば、図1乃至7による例示的な実施形態において、内側に突出する複数の歯部150の形の変形可能要素によって外側の境界を定められた環状隙間110が存在し、従って、ベルトリール20とロッキングベース30との間の相対的な回転の間及びバンド70が環状隙間110内に引き込まれるときに、複数の歯部150の変形が起こり、その結果としてベルト拘束力がもたらされることが、確認され得る。
【0060】
バンド70の材料は、好ましくは強度値Rmが少なくとも1400N/mmのステンレス鋼又はばね鋼である。
【0061】
図8は、本発明によるベルトリトラクタ10のための、第二の例示的な実施形態の複数の構成要素を示す。この例示的な実施形態において、その環状内側壁が環状隙間110の外側環状隙間壁112を形成する環状ディスクには、図1乃至7による例示的な実施形態の場合のように複数の歯部が設けられていない。その代わりに、変形可能要素は、橋梁構造に類似し、いずれも4つの支持部材210を有する変形部材200によって形成されている。4つの支持部材210は、接続部220によって互いに接続されている。接続部220は、好ましくは円弧の形状をしている。
【0062】
図8に見ることができるように、好ましくは回転方向に対称的な方法で配列された複数の変形部材200が存在する。複数の変形部材200は、互いに直接的に隣接して配列されてもよく、又は図8に例として示されるように、分離部300によって分離されてもよい。
【0063】
先の記述は、図8によるベルトリトラクタ10の働きに対応して当てはまる。バンド70の厚さは、好ましくは、半径方向から見て、環状隙間110の隙間幅よりも大きく、従って、バンド70が環状隙間110内に巻き込まれた場合に、変形可能要素又は変形部材200は変形し、変形エネルギーが生み出される。変形エネルギーは次いで、ベルトリール20とロッキングベースとの間で相対的な回転が起きた場合のベルト拘束力の原因となる。代替的に、半径方向から見た環状隙間110の隙間幅もまた、バンド70の厚さよりも大きくなることができ、従って、変形部材200はベルトリールが1度以上回転した後にのみ、曲がる。
【0064】
図9は、ベルトリトラクタのための、第三の例示的な実施形態の複数の構成要素を示す。この例示的な実施形態において、バンド70は環状ディスク40の外側の輪郭又は外面45の上に及び残りの環状ディスク50及び60の外側の輪郭又は外面の上に置かれており、上記の外面45から、環状ディスク40の環状内側壁41とロッキングベース20との間に位置する隙間110の中へ引き込まれる。この例示的な実施形態において、複数の環状ディスクは、好ましくはネジ又はボルトによってロッキングベース20に固定されている。
【0065】
図10は、図9による例示的な実施形態を、異なる説明図で再び示す。図10において、環状ディスク40に加えて、環状ディスク50及び60並びに複数の歯部150の回転方向のずれも見られる。バンド70が環状ディスク40の外面45上に位置し、そこから隙間内へ引き込まれることも理解され得る。
【0066】
図11は、ベルトリトラクタのための、第四の例示的な実施形態の複数の構成要素を示す。この例示的な実施形態において、環状ディスク40は、インターロッキング接続によって分離環130内に保持される。分離環130は好ましくはロッキングベース上に一体的に形成される。インターロッキング接続は、分離環130の波状の内側輪郭133及び内側環40の波状の外側輪郭又は外面45に基づいている。もちろん、分離環130は更なる複数の内側環を保持することができ、そのような更なる複数の内側環が存在する場合は、同じ様にインターロッキングの方法で保持することができる。この構成において、内側環40を固定するためのネジ又はボルトは省略されてもよい。
【0067】
図11による例示的な実施形態において、バンド70は、分離環130の外側壁131に接触して位置し、そこから、環状ディスク40の環状内側壁とロッキングベースとの間の隙間(特には示されていない)の中に引き込まれる。
【0068】
図12は、内側環の内側輪郭上の変形可能要素400の構成の他の例示的な実施形態を示す。内側環40が見られる。内側環40の環状内側壁41上には、複数の歯部の代わりに複数の弧状の突出部が存在する。上記の複数の突出部は、環状内側壁41の半径方向外側又は半径方向裏側に配列された複数の開口部410又は複数の穴によって弱められ、従って、バンドが引き込まれた場合に、複数の弧状の突出部は外側に向けて曲げられることができる。したがって、変形可能要素の変形可能性は、それらの後側にあるか又は隠された複数の開口部又は複数の穴によってもたらされる。
【0069】
図13は、内側環40の内側輪郭上の変形可能要素400の構成の更なる例示的な実施形態を示す。変形可能要素400の変形可能性は、それらの後側にあり、異なる半径方向の距離にある複数の開口部410又は複数の穴によってもたらされる。その他の点では、図13による例示的な実施形態は、図12による例示的な実施形態に対応する。
【0070】
図12及び図13による例示的な実施形態において、内側環40は波状の外側輪郭又は外面を有し、従ってロッキングベース、例えばロッキングベースの分離環へのインターロッキング接続が可能である。もちろん、異なる種類、例えばネジ、ボルト又は同様の物を用いてロッキングベースへの接続が行われてもよい。
【0071】
図14は、例として、複数の隣接する環状ディスク510,520及び530の複数の変形可能要素500の間の回転角度のずれを更なる説明図で示す。複数の変形可能要素500の互いに回転させられた配列は、特に単純な方法でロッキングベースとベルトリールとの間の回転の相対的な角度に渡ってベルトバンドの伸長力の連続的なプロファイルを達成することを可能にする。なぜなら、一つの環状ディスクの連続する複数の変形可能要素の間の部分における力の急激な低下が、他の環状ディスクの複数のずれた(オフセット)変形可能要素によって補償(又は相殺)されることができるからである。
【0072】
使用の準備ができ、組み込まれたベルトリトラクタ内のバンド70が巻かれる状態に関して、様々な可能性が存在する。ここで、それらの可能性を例として概説する。
【0073】
1.バンド端71のみがベルトリール内に掛け止められ、残りのバンド材料は、隙間の外側に留まり、ベルトリトラクタの続く使用の間、例えば事故に誘発されたベルトリールとロッキングベースとの間の相対的回転の場合にのみ、隙間内に引き込まれる。
【0074】
2.バンド70の一部分は、ベルトリトラクタの組み付けの間に既に隙間内に引き込まれるか又は隙間内に挿入され、従って、ベルトリール内へのバンド端71の掛け止め点は、負荷から機械的に解放される。例えば、前もって組み込まれた状態は図5及び6に示されているように現れてもよい。
【0075】
3.ベルトリールは、ベルトリトラクタの組み付けの間に前もってロッキングベースに対して回転させられており、従って、バンド70の一部分は隙間内に引き込まれている。そのような回転は、予め定められた回転の角度まで又は予め定められたトルクが達成されるまで行われてもよい。最後に記述された変形例によって達成される効果は、事故に誘発されたベルトリールとロッキングベースとの間で相対的な回転が起きた場合の、後のベルトリトラクタの使用の間に、固定的に予め定められたトルクが、非常に正確に、即座に利用可能であることである。このようにして、構成要素の公差が単純な方法で補償されることができる。
【0076】
先の複数の記述から推測されることができるように、ベルトを伸長する力を生み出すことは、バンド70が隙間壁側に設けられた変形可能要素を変形させるときの環状隙間110の隙間幅の拡張に基づく。変形可能要素の材料、環状隙間110の隙間幅及びバンド70の厚さに依存して、ベルトリトラクタの動作の複数の異なる方法が実現され得る。例えば、バンド70が完全に環状隙間110内に引き込まれたときにベルトリール20とロッキングベース30との間の相対的な回転を終了させることが可能である。これは、例えばバンド70の他方のバンド端で停止要素を用いることによって可能である。代替的に、ロッキングベースとベルトリールとの間の相対的な回転を停止させることは、変形可能要素が更なる隙間幅の増大を阻止し、ベルトリール20は環状隙間110内に固定されたバンド70によって停止させられるという事実によって、予め定められた回転の角度から更なる回転を抑えることによって達成されることができる。バンド70が完全に環状隙間110内に引き込まれること、及びベルトバンド70以外の構成要素によってベルトリール20の相対的な回転の終了をもたらすことを許容することもまた、可能である。
【0077】
図15は、ベルトリトラクタのための、第五の例示的な実施形態の複数の構成要素を示す。この例示的な実施形態において、バンドは、二重(又は二層)の形で、掛け止め点25においてベルトリール20内に掛け止められており、ロッキングベースと共に回転するためにロッキングベースに接続された内側環40とベルトリール20の外側隙間110内に二重の形で引き込まれる。バンド70の二重の構造により、ベルト拘束力は、単層(又は一層)でのベルトの引き込み(図1乃至4による“単層の”例示的な実施形態を参照)の場合よりも有意に大きい。なぜなら、複数の歯部150は、有意により大きな程度まで変形されなければならず、それに応じて、ベルトバンドの伸長は、バンドの単層の引き込みの場合よりも大きな変形の力によって対抗されるからである。さらに、複数の歯部150の弾性的保存力が生じる可能性のため、バンドの単層の引き込みの場合よりも大きな摩擦力が、続いて生じる。
【0078】
図16は、ベルトリトラクタのための、第六の例示的な実施形態の複数の構成要素を示す。この例示的な実施形態において、バンド70は、二重の形で、掛け止め点25においてベルトリール20内に掛け止められており、前方の二重バンド部73を用いてベルトリール20とロッキングベースとの間の外側隙間110内に二重の形で引き込まれる。しかしながら、図15による例示的な実施形態とは対照的に、バンド70は不変に二重の形で引き込まれはせず、むしろ前方の二重バンド部73でのみ二重の形で引き込まれる。ベルトリール20内に掛け止められた前方の二重バンド部73は、後方の単層バンド部74に隣接している。後方の単層バンド部74は単層の形で引き込まれ、バンドの単層引き込みに結果する。
【0079】
バンドの二重での引き込みにより、複数の歯部150はいずれも原則的に二重部73によってのみ変形させられるが、続く単層部74によっては変形させられない。たとえ、複数の歯部(図16の複数の歯部150a及び150bを参照)のある程度の弾性により、二重バンド部73が通過した後にある程度複数の歯部150a及び150bが隙間110の方向においてばねで戻ることが生じたとしても、複数の歯部150a及び150bの接触圧力は、比較的小さいものとなる。その接触圧力は、二重バンド部73に作用する複数の歯部150c,150d及び150eの接触圧力よりも、少なくとも有意に小さい。従って、複数の歯部150a及び150bによって引き起こされ単層バンド部74に作用する接触圧力は、たとえ無視できるほど小さくはないとしても、有意に小さい。複数の歯部150が、あるとしてもわずかな弾性しか有していない場合は、単層でのバンドの引き込みはそのとき、複数の歯部150との接触をせず、かつ摩擦なしに行われることもできる。なぜなら、複数の歯部150は、二重バンド部73によって既に十分に離れるように曲げられ得るからである。
【0080】
変形可能要素が複数の歯部とは異なる形に形成される場合、例えば変形可能要素が図8,12及び13と併せて説明されたような場合でも、二重でのバンドの引き込みは、図15及び図16と併せて説明されたように、同一の方法で使用されることができる。
【符号の説明】
【0081】
10 ベルトリトラクタ
20 ベルトリール
21 外側部
22 スロット
25 掛け止め点
30 ロッキングベース
40 環状ディスク
41 環状内側壁
42 スロット
45 外面
50 環状ディスク
51 環状内側壁
52 スロット
60 環状ディスク
61 環状内側壁
62 スロット
70 バンド
71 バンド端
72 部分
73 前方二重バンド部
74 後方単層バンド部
80 分離環
90 トーションバー
100 ハウジング環
110 隙間
111 内側環状隙間壁
112 外側環状隙間壁
120 保管隙間
130 分離環
131 外側壁
132 スロット
133 内側輪郭
140 ボルト
150 歯部
150a 歯部
150b 歯部
150c 歯部
150d 歯部
151 歯先端部
200 変形部材
210 支持部材
220 接続部
300 分離部
400 変形可能要素
410 開口部
500 変形可能要素
510 環状ディスク
520 環状ディスク
530 環状ディスク

b 隙間幅
d 厚さ
P 回転方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16