【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、特許請求の範囲の請求項1による特徴を有するベルトリトラクタにより、本発明によって達成される。本発明によるベルトリトラクタの有利な改良は、従属請求項に明記されている。
【0006】
本発明によれば、それに応じてベルトリールとロッキングベースとの間で相対的な回転が起きた場合に、隙間(gap)の内に引き込まれるバンドを有するベルトリトラクタが提供され、隙間の端は、隙間内に引き込まれるバンドによって変形させられる少なくとも一つの変形可能要素によって境界を定められるように準備される。
【0007】
本発明によるベルトリトラクタの実質的な利点は、上記のベルトリトラクタの場合は、拘束力を生み出すためにバンドの変形が使用されるのではなく、代わりに、隙間内に引き込まれたバンドによって変形させられた少なくとも一つの変形可能要素の変形が使用されるという事実にみられる。本発明により、バンド自体によってではなく変形可能要素による、供給されるエネルギーの消散を用いて、拘束力が非常に特定された方法で設定されることができ、それでもなおベルトリトラクタの構造は非常にコンパクトに保たれることができる。このように、少なくとも一つの変形可能要素の存在のおかげで多数の設定パラメータが正確に利用可能であり、その設定パラメータは、ベルトリトラクタとロッキングベースとの間で相対的な回転が起きた場合にベルトリトラクタとロッキングベースがベルトの拘束力に影響を与えるために使用されることができる。例えば、どの程度の相対的な回転の角度に渡ってバンドによって拘束力が生み出されるかは、バンドの長さによって決定されることができる。一つの変形可能要素又は複数の変形可能要素の形状及び材料及び隙間の隙間幅は、更なる設定の選択肢を提供する。これらによって、ベルトバンドの伸長の特性が、ロッキングベースとベルトリールとの間で相対的な回転が起きた場合に影響を受けることができ、又ははっきり限定された方法でそれぞれの要求に従って設定されることができる。
【0008】
例えば、本発明によるベルトリトラクタを使って、ベルトリールとロッキングベースとの間の相対的な回転の角度がバンドによって制限されるべきであるかどうかが、非常に単純でありそれ故に有利な方法で決定されることができる。例えば、第一の有利な変形例によれば、バンドが完全に隙間内に引き込まれた場合に、ロッキングベースとベルトリールとの間の更なる相対的な回転が、例えばバンドの一端に配置された停止要素の補助を用いて阻止(ブロック)されることが提供され得る。
【0009】
第二の有利な変形例によれば、例えば、ロッキングベースとベルトリールとの間の回転の所定の最大制限角度からの隙間幅に基づいて、隙間がもはや更なるバンドの引き込みを許容せず、バンドが隙間内でブロックされるか又はつかえるという事実によって、ロッキングベースとベルトリールとの間の相対的な回転が終了されることが提供されることができる。
【0010】
第三の有利な変形例によれば、例えば、ロッキングベースとベルトリールとの間の回転角度の制限が存在せず、バンドは、完全に隙間内に引き込まれた後に、例えば単に一緒に回転させられ続けることが提供されることができる。
【0011】
複数の変形可能要素が存在する場合は、特に有利であると考えられる。そのような場合、拘束力の特性は、変形可能要素の互いに対する配列によっても追加的に決定されることができる。
【0012】
端が少なくとも一つの変形可能要素によって境界を定められた隙間は、バンドが導入される前に既に存在していてもよく、又はバンドが隙間内に引き込まれる前にゼロよりも大きな隙間幅を有してもよい。代替的に、隙間はまた、バンドの導入によってのみ形成されてもよい。
【0013】
隙間が環状であり、外側環状隙間壁及び内側環状隙間壁によって境界を定められる場合は、特に有利であると考えられる。ここで環状の隙間の形は、要求される通りである。環状隙間は、円形、楕円形又はたとえ多角形であってもよい。環状隙間は、バンドの繰り返しの巻き付け及びそれ故に360°を超える回転の相対的な角度を許容する。
【0014】
隙間は、好ましくはロッキングベースによって又はロッキングベースと共に回転するためにロッキングベースに接続された少なくとも一つの要素によって片側(一方の側)の境界を定められ、ベルトリールによって又はベルトリールと共に回転するためにベルトリールに接続された少なくとも一つの要素によって反対側の境界を定められる。
【0015】
部品の最小の数に関して、内側環状隙間壁がベルトリールの環状外側部によって形成される場合は、有利であると考えられる。
【0016】
ベルトリトラクタのコンパクトな構成に関して、隙間及び/又は複数の環状隙間壁は、好ましくはベルトリトラクタの軸に対して同心状に配列されている。代替的に、しかしながら、非同心状又は軸がずれたベルトリトラクタの軸に対する環状隙間の中心の配列もまた、考えられる。一つの中心がずれた配列の場合において、ベルトリールとロッキングベースとの間で相対的な回転が起きた場合における力の増大のプロファイルは、非常に単純に設定されることができる。
【0017】
少なくとも一つの変形可能要素の配置に関して、上記の要素が外側環状隙間壁上又は内側環状隙間壁上に形成される場合は、有利であると考えられる。
【0018】
隙間の外側隙間壁は、例えば、単一の環状ディスクの環状内側壁によって形成されてもよい。しかしながら、隙間の外側隙間壁が、ベルトリールの軸に沿って見たときに、重ねて配列され、いずれも、多数の内側に突出する変形可能要素が設けられた、少なくとも二つの環状ディスクの環状内側壁によって形成される場合は、特に有利であると考えられる。この改良において、ベルトバンドの伸長中に所望の力のプロファイルを、材料の異なる選択及び/又は環状ディスクの変形可能要素の異なる幾何学的形状によって特に正確に得ることが可能である。
【0019】
環状ディスクの内径は、例えば、外周に渡って変化を付けられた内側に突出する変形可能要素の寸法によって外周に渡って変化してもよい。これは、例えば、ロッキングベースとベルトリールとの間で相対的な回転が起きた場合に連続的又は段階的な力の増大を可能にする。
【0020】
隙間の外側隙間壁が二つ以上の環状ディスクによって形成される場合、そのときは特に好ましい改良によれば、少なくとも二つの環状ディスクの内側に突出する変形可能要素は、
隙間内に導入されるバンドが少なくとも二つの環状ディスクの内側に突出する変形可能要素に対して時間差で動くような方法で、互いに対して回転して配列されることが提供される。環状ディスクの変形可能要素の互いに対して回転させられた配置は、特に単純な方法で、ロッキングベースとベルトリールとの間の回転の相対的な角度を用いてベルトバンド伸長力の連続的なプロファイルを設定することを可能にする。なぜなら、環状ディスクの連続する複数の変形可能要素の間の部分における力の急激な低下は、他の環状ディスクのずられた変形可能要素によって補償されることができるからである。
【0021】
特に連続的な力のプロファイルに関して、隙間の外側隙間壁が、ベルトリールの軸に沿って見たときに互いに重ねて配列され、いずれも、複数の内側に突出する変形可能要素が設けられた少なくとも3つの環状ディスクの環状内側壁によって形成され、環状ディスクの内側に突出する変形可能要素は互いに対して回転させられ、隙間内に導入されるバンドが少なくとも3つの環状ディスクの内側に突出する変形可能要素に対して時間差で動く場合は、有利であると考えられる。
【0022】
環状ディスクは、好ましくは鋳造物又は型抜きされた部品である。その部品は、好ましくは共に回転するためにロッキングベース又はベルトリールに接続される。その接続は、例えば、取り付け(例えばボルトでの)によって、ネジ止めによって、リベットによって、接着によって、溶接によって、はんだ付けによって等である。そのような構成の場合において、環状ディスクの外側の輪郭は、バンドが隙間内に引き込まれる前にバンドが置かれる支持表面及びそれ故に座面を形成することができる。
【0023】
代替的に、(複数の)環状ディスクの外側の輪郭は、少なくとも断面で、環状ディスクがロッキングベースと共にインターロッキング接続を形成するような方法で、ロッキングベースの一部分の内側の輪郭に適合させられることができる。この場合において、環状ディスクは、ロッキングベースの上に又はロッキングベースの中に直接的に差し込まれることができる。歯部は、好ましくは(複数の)環状ディスクの外側の輪郭上に、例えば波形状によって設けられる。上記の歯部は、ロッキングベースの一部分の内側の輪郭上の対応する歯部又は波形状に対して一致している。
【0024】
この前に記述された改良において、分離環がロッキングベース上の単一の部分として一体的に形成される場合、又は分離環がロッキングベース上に外側からぴったりと適合し、その外側の輪郭には、バンドが隙間内に引き込まれる前にバンドが置かれる支持表面及びそれ故に座面を分離環が形成する場合は、有利であると考えられる。
【0025】
その上に、単純な組み付けに関して、バンドが一方のバンド端でベルトリールに接続されている場合は、有利であると考えられる。
【0026】
バンドの他方のバンド端には、例えば、バンドが完全に隙間内に引き込まれたとき又はその前にロッキングベースとベルトリールとの間の更なる相対的回転を終わらせるための停止要素が設けられることができる。
【0027】
その上に、コンパクトな構成に関して、ベルトリトラクタが環状保管隙間を有し、バンドは、ベルトリールとロッキングベースとの間の相対的な回転の前は環状保管隙間内で巻き付けられた形態で保管され、ロッキングベースがベルトリトラクタに対して相対的に回転する場合は、バンドは、少なくとも一つの変形可能要素によって環状保管隙間から、以下で短く“変形可能な隙間”とも呼ばれる隙間内に引き込まれる場合は、有利であると考えられる。
【0028】
環状保管隙間及び少なくとも一つの変形可能要素によって境界が定められる変形可能な隙間は、特に好ましくは互いに対して同心状に配列される。そのような構成は、バンドが環状保管隙間の断面から移る(外れる)必要なく、ベルトリールとロッキングベースとの間の相対的な回転が起こるとすぐにバンドを環状保管隙間から変形可能な隙間へ引き込むことを可能にする。
【0029】
環状保管隙間に関して、環状保管隙間の直径が少なくとも一つの変形可能要素によって境界を定められた環状の変形可能な隙間の直径よりも大きく、環状保管隙間が変形可能な隙間の周りに同心状に配置されている場合は、有利であると考えられる。
【0030】
変形可能な隙間内にバンドを簡単に通すために、外側隙間壁が、バンドが外側から変形可能な隙間内に引き込まれることを可能にするスロットを有する場合は、有利であると考えられる。スロットの長手方向は、好ましくはベルトリトラクタの軸に対して平行に延びる。
【0031】
変形可能要素は、例えば、外側環状隙間壁上及び/又は内側環状隙間壁上に形成された複数の歯部によって形成されることができる。複数の歯部は、好ましくは隙間の内部の方向を向いている。
【0032】
追加的又は代替的に、変形可能要素又は複数の変形可能要素がそれぞれ、内側環状隙間壁又は外側環状隙間壁の一部分によって形成されることが提供されることができる。その部分は、隙間の内部の方向に半径方向に向けられている。それらの部分の変形可能性は、好ましくはそれぞれ一つ以上の開口部又は一つ以上の穴によって確実にされる。開口部又は穴は、好ましくは半径方向に見て内側、すなわちそれぞれの隙間壁の裏側に位置し、上記の隙間壁を弱くし、ひいてはそれぞれの隙間壁はバンドが内側に巻かれるときに曲がることができる。
【0033】
隙間の外側隙間壁が、例えば環状ディスクの環状内側壁によって形成されている場合は、変形可能要素は、環状ディスクの環状内側壁の内側に突出する変形可能な部分によって形成されることができ、開口部又は穴はそれぞれの部分の裏側、すなわち環状ディスクの材料における半径方向外側上に存在する。開口部又は穴は、好ましくは貫通孔として設計され、好ましくはベルトリール軸に対して平行に延びる。
【0034】
代替的に、一つの変形可能要素又は複数の変形可能要素が、それぞれ、接続部によって互いに接続された少なくとも二つの支持部材を有することが提供されることができる。接続部は、好ましくは外側環状隙間壁の円弧形状部又は内側隙間壁の円弧形状部を形成する。その構成は、動作の観点から、環状ディスクの環状内側壁が開口部によって機械的に弱められる、上述の実施形態に対応する。
【0035】
支持部材は、好ましくは隙間の内部の方向に向けられている。
【0036】
バンドの材料に関して、上記のバンドが鉄、例えばばね鋼で作られている場合は、有利であると考えられる。変形可能要素は、好ましくは鉄又はアルミニウムで作られている。
【0037】
その上に、バンドが掛止部に二重の形でベルトリールに掛けられ、部分的又は転属的に二重の形でロッキングベースとベルトリールとの間の隙間内に引き込まれている場合は、有利であると考えられる。二重の掛止めは組み付けを単純にする。
【0038】
ロッキングベースとベルトリールとの間の隙間内へのバンドの二重の引き込みの場合において、バンドが部分的に二重の形で引き込まれ、部分的に単層の形で引き込まれる場合は、更に有利であると考えられる。好ましくは、バンドは前方の二重バンド部の付近で二重の形でベルトリールとロッキングベースとの間の隙間内に引き込まれ、前方の二重バンド部に隣接する後方の単層バンド部の付近では単層の形でのみ引き込まれる。そのような構成の場合においては、場合により折り返しがもたらされた後に存在する弾性のために変形可能要素がなおもバンド上に働かせている摩擦力が、それぞれ、仮にあるとしても、前方の二重バンド部の領域でのみ役割を果たし、単層バンド部の領域においては有意(significantly)に低い又は完全に無視すらできるという効果が、有利に達成されることができる。
【0039】
本発明は、上述されたようにベルトリトラクタを取り付けるための方法にも関係する。本発明によれば、組み付けの範囲内で、ロッキングベースはロッキングベースに対して回転させられ、回転のために要求されるトルクが所定の最大値に到達するまで又は超えるまで、バンドが隙間内に引き込まれることが提供される。一つの代替として、組み付けの範囲内で、ロッキングベースはロッキングベースに対して回転させられることができ、バンドは所定の回転の角度が達成されるまで隙間内に引き込まれることができる。
【0040】
本発明は、複数の例示的な実施形態を参照して以下により詳細に説明される。本明細書において、各図面は例として、以下を示す。