特許第6130994号(P6130994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130994
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】サムターン装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 3/00 20060101AFI20170508BHJP
   E05B 13/08 20060101ALI20170508BHJP
   E05B 41/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   E05B3/00 A
   E05B13/08 B
   E05B41/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-9067(P2012-9067)
(22)【出願日】2012年1月19日
(65)【公開番号】特開2013-147852(P2013-147852A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 清文
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 勇貴
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−255135(JP,A)
【文献】 実公昭41−9598(JP,Y1)
【文献】 特開2005−2562(JP,A)
【文献】 特開平11−324429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00− 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠装置を解錠キーなしに室内から施解錠操作するために扉に固定されるサムターン装置であって、
サムターン装着開口を備えたサムターンケース内にサムターン軸を回転自在に保持して扉に固定され、扉への固定状態においてサムターン軸が錠装置に連結されるサムターン本体と、
前記サムターン装着開口からサムターンケース内に挿入可能な連結突部を備え、サムターン本体に着脱自在に装着されるサムターンとを有し、
前記サムターン軸の前端部には、該サムターン軸に対して空転自在で、かつ、前記連結突部が嵌合可能な嵌合凹部を備えたカバー部材が配置されるとともに、
サムターン軸とカバー部材とはサムターンの装着時に回転方向に連結され、
かつ、前記サムターン軸とカバー部材とは、サムターンが装着されていない状態で所定の相対トルクが発生した際に空転可能に連結されるサムターン装置。
【請求項2】
前記カバー部材には、サムターンケースに開設された表示窓に臨む施解錠マークが表示される請求項1記載のサムターン装置。
【請求項3】
前記サムターン軸とカバー部材との間には、サムターン軸とカバー部材との間に所定のトルク差が発生した際にサムターン軸とカバー部材の双方に回転方向に係止する係止位置からいずれか一方との係止状態が解除される係止解除位置に移動するクラッチ部材が介装されるとともに、
サムターンには、クラッチ部材の係止解除位置への移動を規制する移動規制部が設けられる請求項1または2記載のサムターン装置。
【請求項4】
前記クラッチ部材は適宜の付勢手段により遠心方向に付勢されるとともに、
前記移動規制部は、カバー部材の回転中心位置に設けられたガイド凹部に嵌合して前記クラッチ部材の向心方向の移動を規制する請求項3記載のサムターン装置。
【請求項5】
前記連結突部は、カバー部材に形成される複数種の嵌合凹部の一に嵌合可能な形状に形成され、異種の嵌合凹部を有するカバー部材へのサムターンの装着を禁止する請求項1から4のいずれかに記載のサムターン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サムターン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
錠装置を解錠キーなしに室内から施解錠操作するために扉に固定されるサムターン装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この従来例において、サムターン装置は、ベースに回転自在に装着されるサムターン軸に着脱サムターンを着脱自在に連結して形成され、着脱サムターンに与えた回転操作力をサムターン軸を介して錠装置に伝達することにより錠装置の施解錠操作を行うようように構成される。
【0004】
着脱サムターンは、回転中心上に配置される着脱軸の外周に突設される突起を有しており、該突起をサムターン軸の切欠部に嵌合させることにより着脱サムターンの回転力がサムターン軸に伝達される。
【0005】
しかし、上述した従来例において、突起が比較的細径の着脱軸に形成されるために、回転操作時における突起の応力負担が大きなために、着脱軸を強度の高い金属材料等により形成する必要が生じ、コストアップを招くという欠点がある。
【0006】
これを解消するためには、着脱軸の径を太くする等、作用点を回転軸から遠ざけることも可能であるが、この場合、着脱軸等を挿入するためにベースに開設される挿入口を大きくすることが必要となる。挿入口を大きくすると、指で直接サムターン軸の前端部を操作しやすくなるために、不正操作に対する耐性が低くなる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-255135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、不正操作に対する耐性を低めることなく、製造コストを低減させることのできるサムターン装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば上記目的は、
錠装置5を解錠キーなしに室内から施解錠操作するために扉4に固定されるサムターン装置であって、
サムターン装着開口1を備えたサムターンケース2内にサムターン軸3を回転自在に保持して扉4に固定され、扉4への固定状態においてサムターン軸3が錠装置5に連結されるサムターン本体6と、
前記サムターン装着開口1からサムターンケース2内に挿入可能な連結突部7を備え、サムターン本体6に着脱自在に装着されるサムターン8とを有し、
前記サムターン軸3の前端部には、該サムターン軸3に対して空転自在で、かつ、前記連結突部7が嵌合可能な嵌合凹部9を備えたカバー部材10が配置されるとともに、
サムターン軸3とカバー部材10とはサムターン8の装着時に回転方向に連結され、
かつ、前記サムターン軸3とカバー部材10とは、サムターン8が装着されていない状態で所定の相対トルクが発生した際に空転可能に連結されるサムターン装置を提供することにより達成される。
【0010】
本発明において、サムターン8にはカバー部材10の嵌合凹部9に嵌合する連結突部7が突設されており、サムターン本体6に装着されたサムターン8とカバー部材10とは、連結突部7を介して回転方向に連結される。錠装置5を操作するサムターン軸3に対して空転自在なカバー部材10とは、サムターン8の装着により相互に連結され、以後、サムターン8に加えた回転操作力はサムターン軸3に伝達され、錠装置5を操作することができる。
【0011】
また、カバー部材10はサムターン8が装着されていない状態ではサムターン軸3に対して空転自在なために、サムターン8未装着状態でカバー部材10に回転操作力を与えても回転操作力をサムターン軸3に伝達して錠装置5を操作することができない。
【0012】
カバー部材10とサムターン軸3とを相互に空転自在で、かつ、サムターン8を装着した際に連結する構成は、後述するように、適宜のクラッチ機構により容易に実現可能であるが、このほかに、図9に示すように、サムターン8に形成される連結突部7の一部、あるいは全部をカバー部材10の嵌合凹部9を貫通する長さに形成し、サムターン軸3側に形成した連結孔3aに嵌合させるように構成することもできる。
【0013】
したがって本発明において、サムターン軸3の前端部に空転自在なカバー部材10を配置することにより、サムターン8を取り外した状態でサムターン軸3を直接操作することが不可能になるために、不正操作に対する耐性が向上する。
【0014】
また、サムターン軸3への直接操作が不可能となることによって、サムターン装着開口1が大きくなってもサムターン軸3を指で直接操作される虞がなくなる。この結果、不正操作に対する耐性を低下させることなくサムターン8の連結突部7を回転中心から離隔した位置におくことが可能となる。このため、連結突部7における荷重負担を小さくすることができ、金属等の高価な材料を使用する必要がなくなるため、コスト低減が可能になる。
【0016】
さらに、サムターン軸3とカバー部材10を相対トルクが発生するまで連結関係を保持するように構成することにより、サムターン軸3とカバー部材10との相対位置を通常の使用状態において一定させることが可能になる。この結果、図9に示すように、サムターン8の連結突部7をカバー部材10とサムターン軸3との連結手段に使用する場合には、カバー部材10を所定回転位置に保持して連結突部7と連結孔3aとを一致させてずれを防止できるために、使い勝手が向上する。このような構成は、図9に示すように、カバー部材10とサムターン軸3との境界部に圧縮スプリング17により付勢されるボール18を配置し、カバー部材10に凹設された半球状凹部19に嵌合させることにより実現できる。
【0017】
また、サムターン軸3とカバー部材10とを所定の相対トルクが発生するまで連結可能に構成することにより、サムターン軸3側に負荷を加えた場合にはサムターン軸3とカバー部材10との間には相対トルクはほとんど発生しないために、サムターン軸3の回転にカバー部材10を追随させることができる。
【0018】
したがって、
前記カバー部材10には、サムターンケース2に開設された表示窓11に臨む施解錠マーク12が表示されるサムターン装置を構成することによって、構造を複雑にすることなく錠装置5の施解錠状態を室内から知ることが可能になる。
【0019】
サムターン軸3とカバー部材10とを所定の相対トルクが発生するまで連結状態を維持する構成は、種々のクラッチ機構を使用することにより実現可能であり、
前記サムターン軸3とカバー部材10との間には、サムターン軸3とカバー部材10との間に所定のトルク差が発生した際にサムターン軸3とカバー部材10の双方に回転方向に係止する係止位置からいずれか一方との係止状態が解除される係止解除位置に移動するクラッチ部材13が介装されるとともに、
サムターン8には、クラッチ部材13の係止解除位置への移動を規制する移動規制部14が設けられるサムターン装置を構成すると、構造が簡単になる。
【0020】
この場合、
前記クラッチ部材13は適宜の付勢手段15により遠心方向に付勢されるとともに、
前記移動規制部14は、カバー部材10の回転中心位置に設けられたガイド凹部16に嵌合して前記クラッチ部材13の向心方向の移動を規制するサムターン装置を構成することができる。
【0021】
さらに、
前記連結突部7は、カバー部材10に形成される複数種の嵌合凹部9の一に嵌合可能な形状に形成され、異種の嵌合凹部9を有するカバー部材へのサムターン8の装着を禁止するサムターン装置を構成すると、サムターン8は、連結突部7が嵌合可能なカバー部材10にのみ連結することができるために、不正なサムターン8を装着することによる不正解錠操作を防止できる。
なお、本発明によれば、
サムターン装着開口1を備えたサムターンケース2内にサムターン軸3を回転自在に保持して扉4に固定され、扉4への固定状態においてサムターン軸3が錠装置5に連結されるサムターン本体6と、
前記サムターン装着開口1からサムターンケース2内に挿入可能な連結突部7を備え、サムターン本体6に着脱自在に装着されるサムターン8とを有し、
前記サムターン軸3の前端部には、該サムターン軸3に対して空転自在で、かつ、前記連結突部7が嵌合可能な嵌合凹部9を備えたカバー部材10が配置されるとともに、
サムターン軸3とカバー部材10とはサムターン8の装着時に回転方向に連結されるサムターン装置を提供することも可能である。


【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、不正操作に対する耐性を低めることなく、製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ハンドル装置を示す図で、(a)はインサイドハンドルと電気錠の位置関係を示す図、(b)は(a)のB方向矢視図である。
図2】サムターン装置を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の2B-2B線断面図である。
図3】サムターン装置の分解斜視図である。
図4】クラッチ部材を示す図で、(a)は図2(b)の4A-4A線断面図、(b)は図2(b)の4B-4B線断面図である。
図5】サムターンの装着状態を示す説明図で、(a)は側面図、(b)は(a)においてサムターンを4B方向から見た平面図、(c)はカバー部材を(a)の4C方向から見た図、(d)から(f)は嵌合凹部の変化を示す図である。
図6】着脱レバーを示す図で、(a)は分解図、(b)はロック状態を示す図、(c)はロック解除状態を示す図である。
図7】クラッチ部材を示す図で、(a)は平面図、(b)は右側面図、(c)は底面図、(d)は(a)の7D-7D線断面図、(e)は底面方向から見た斜視図である。
図8】クラッチ部材の動作を示す図で、(a)はサムターンを装着した状態でサムターンを回転させたときの図2(b)の4A-4A線断面図、(b)は(a)の状態における図2(b)の4B-4B線断面図、(c)はサムターンを取り外したときの図8(a)に対応する図、(d)は(c)の状態における(b)に対応する図、(e)はサムターンを取り外した状態でカバー部材を回転させたときの図8(a)に対応する図、(f)は(e)における(b)に対応する図である。
図9】本発明の動作を示す説明図で、(a)はサムターンを装着した状態を示す図、(b)はサムターンを取り外した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に本発明のサムターン装置が搭載されたハンドル装置(H)を示す。ハンドル装置(H)は、扉4の室内側壁面に固定される一対のサムターン装置(S)と、サムターン装置(S)に連結されるインサイドハンドル20とから構成される。扉4には各々のサムターン装置(S)に対応して2個の電気錠(錠装置5)が固定されており、各々の電気錠5に、図外のアクチュエータにより施解錠駆動されるデッドボルト5aが収容される。
【0025】
また、上方に配置される電気錠5には、デッドボルト5aに加えて、ストライク21に係止させることにより扉4の閉扉状態を維持するためのラッチボルト5bが収容され、上記インサイドハンドル20を軸(CH)周りに回転操作すると、ラッチボルト5bの係止解除動作が行われる。
【0026】
さらに、扉4の屋外側壁面には、ハンドルベース22aを介してアウトサイドハンドル22bがR方向に回転操作自在に装着されており、アウトサイドハンドル22bへの回転操作により上記ラッチボルト5bの係止解除操作を行うことができる。
【0027】
図2、3に示すように、サムターン装置(S)は、サムターンケース2内にカバー部材10、サムターン軸3、および着脱操作レバー23を組み込んだサムターン本体6と、サムターン本体6に着脱自在に連結されるサムターン8とから構成される。サムターンケース2は裏面に開放されたボックス形状に形成され、裏面開口が裏蓋24により閉塞される。また、サムターンケース2の正面壁には、上記サムターン8を挿入するためのサムターン装着開口1と、インサイドハンドル20の連結部(図示せず)を挿入するためのハンドル挿入開口2aとが開設される。
【0028】
上記サムターン軸3は、軸部3bの一端に連結フランジ3c、他端にセレーション部3dを備える。また、サムターン軸3には、サムターン軸3の回転中心に位置して連結フランジ3cの表面に開放される凹部3eと、サムターン軸3の回転中心に直交し、連結フランジ3cの表面に開放されるスリット3fとが設けられる。
【0029】
以上のように形成されるサムターン軸3は、裏蓋24に形成される軸受開口24aに軸部3bを挿入することにより回転自在に保持され、サムターン本体6を扉4に固定した状態でセレーション部3dが直接、あるいは適宜の仲介部材を介して電気錠5に連結されて、サムターン8への回転操作力を電気錠5に伝達する。
【0030】
上記サムターン8は、図5に示すように、合成樹脂材を射出成形、あるいは切削加工して形成され、円板状基部8aと、円板状基部8aの表面部に突設され、指で摘んでサムターン8に回転操作を与えるための操作突部8bと、円板状基部8aの裏面部に突設される移動規制部14、および連結突部7とを有する。
【0031】
移動規制部14は、円柱状に形成されて円板状基部8aの回転中心上に配置され、連結突部7は、移動規制部14から適宜間隔離れ、該移動規制部14を囲むように複数配置される。各連結突部7の外周には、着脱操作レバー23が係止する係止溝7aが設けられる。
【0032】
カバー部材10は、サムターンケース2のサムターン装着開口1を裏面側から閉塞する円形平板状のプレート部10aの裏面にクラッチ筒部25を突設して形成され、クラッチ筒部25を上記サムターン軸3の連結フランジ3cに外嵌させてサムターン軸3と同軸上で、該サムターン軸3に対して空転自在に保持される。クラッチ筒部25には、先端に行くに従って漸次幅狭となる一対の斜面を有してほぼV字形状に形成される作動凹部25aが一対設けられる。
【0033】
上記プレート部10aには回転中心に位置し、上記サムターン8の移動規制部14が挿通可能なの円孔からなるガイド凹部16が開設される。また、プレート部10aの表面には識別リング26が貼り付けられ、サムターンケース2には、サムターン装着開口1の一部を拡径することにより識別リング26に表示された施解錠マーク12をケース外から視認できるようにした扇状の表示窓11が設けられる。
【0034】
また、プレート部10aには、上記サムターン8の連結突部7が嵌合可能な嵌合凹部9が開設される。図5に示すように、嵌合凹部9は図5(b)、および(d)から(f)に示すように4種が設定され、サムターン8にも嵌合凹部9に嵌合可能な連結突部7が4種類設定される。
【0035】
したがって本例において、図5(b)に示す嵌合凹部9を有するカバー部材10がサムターンケース2に保持されている場合、この嵌合凹部9に嵌合可能な連結突部7を有するサムターン8のみがカバー部材10、すなわち、サムターン本体6に装着可能になる。
【0036】
上記サムターン8のサムターン本体6への保持、脱離操作は、上記着脱操作レバー23を操作することにより行われる。図6に示すように、着脱操作レバー23は、中央部に小径部27aと大径部27bとを連結したロック用開口27を有する板状部材であり、サムターン8の回転中心、すなわち、移動規制部14に直交する面内で図6(b)に示す初期位置と,図6(c)に示す作動位置との間でスライド操作される。
【0037】
着脱操作レバー23は、図外の圧縮スプリングにより初期位置側に付勢されるとともに、一端がサムターンケース2から露出させて配置され、先端部をサムターンケース2内に押し込むようにして初期位置から作動位置に移動させることができる。
【0038】
図6はサムターン8の連結突部7と着脱操作レバー23のロック用開口の関係を示すもので、(a)に示すように、ロック用開口27の小径部27aの径(Da)は、連結突部7に形成される係止溝7aの外周径(D)にほぼ等しく、大径部の径(Db)は、連結突部7の外周径よりやや大寸に形成され、さらに、大径部7bと小径部7aとの中心間距離(d)は、着脱操作レバー23のストロークに一致する。
【0039】
図6(b)は着脱操作レバー23が初期位置にあるときの関係を示すもので、初期位置において上記ロック用開口27の小径部27aの内周壁面は連結突部7の係止溝7aに摺接している。この状態で、連結突部7に着脱操作レバー23が噛み込んでいるために、サムターン8をサムターンケース2から引き抜くことはできず、かつ、小径部27aの内周壁と係止溝7aとは同一円で接するために、サムターン8の回転操作に支障を来さない。
【0040】
この状態から図6(c)に示すように、着脱操作レバー23をサムターンケース2内(矢印6C方向)に押し込んで作動位置に移動させると、大径部27bの中心がサムターン8の回転中心に移動する。この状態で、ロック用開口27と連結突部7との干渉が解消されるために、以後、サムターン8を自由に引き抜くことができる。図6(c)に示すように、一旦着脱操作レバー23を作動位置に移動させると、サムターン8の回転角度にかかわらず、どの回転位置でもサムターン8の抜去、装着が可能になる。
【0041】
上記カバー部材10とサムターン軸3との境界部には、クラッチ部材13が介装される。図7に示すように、クラッチ部材13は一側壁に上記カバー部材10の作動凹部25aとほぼ同一形状の作動突部13aを、対向側壁部に上記サムターン8の移動規制部14とほぼ同一の曲率を有する曲率壁13bを備えた主体部13cの裏面に連結脚部13dを突設して形成される。
【0042】
図4、8に示すように、クラッチ部材13は、対称形状を有する一対が曲率壁13bを対向させるとともに、主体部13cがカバー部材10のプレート部10a裏面とサムターン軸3の連結フランジ3cとの間に摺動自在に挟まれてクラッチ筒部25内に収容される。クラッチ筒部25への収容状態において、カバー部材10の回転中心軸に沿って延びる連結脚部13dは、サムターン軸3のスリット3fに嵌合し、クラッチ部材13とサムターン軸3とは回転方向に連結される。
【0043】
図4に示すように、各クラッチ部材13は、クラッチ部材13間に介装される圧縮スプリング(付勢手段15)により離隔方向に付勢されており、離隔位置において各クラッチ部材13の作動突部13aが作動凹部25aに嵌合する。クラッチ部材13の対向壁面には、圧縮スプリング15を保持するボス13eが突設される。
【0044】
また、クラッチ部材13の曲率壁13bは、各クラッチ部材13の作動突部13aが作動凹部25aに嵌合した状態でサムターン8の移動規制部14が挿入可能な円筒空間の周壁を構成するように形成される。
【0045】
したがってこの実施の形態においてサムターン8をカバー部材10に連結した状態において、図4(a)に示すように、クラッチ部材13の作動突部13aはカバー部材10の作動凹部25aに嵌合しており、さらに、クラッチ部材13の接近方向への移動がサムターン8の規制突部により妨げられているために、サムターン8に回転操作力を加えると、図8(a)に示すように、カバー部材10、およびクラッチ部材13はサムターン8とともに回転する。クラッチ部材13の回転により、図8(b)に示すように、連結脚部13dを介してクラッチ部材13に連結されたサムターン軸3も回転し、電気錠5を操作することができる。
【0046】
さらに、電気錠5がアクチュエータ等、サムターン装置(S)以外の手段で回転操作された場合には、電気錠5における回転動作がサムターン軸3を介してカバー部材10に伝達されるために、カバー部材10の施解錠マーク12を見ることにより、施解錠状態を知ることができる。
【0047】
これに対し、図8(c)に示すように、サムターン8を装着しない状態でサムターン装着開口1に臨むカバー部材10を指等で回転操作すると、電気錠5を施解錠操作するためには、適度の回転トルクを要するために、クラッチ部材13とカバー部材10との間に回転トルク差が発生する。この状態からさらに回転操作力をカバー部材10に負荷すると、クラッチ部材13にはクラッチ筒部25の作動凹部25aから受ける向心方向の分力により中心方向に移動して作動凹部25aと作動突部13aとの係合関係が解除される。この結果、図8(e)に示すように、カバー部材10のみが回転してサムターン軸3を回転操作することはできないために、電気錠5に対する不正操作が禁止される。
【0048】
さらに、サムターン8を取り外した状態でも、クラッチ部材13とサムターン軸3とは回転方向に連結されており、かつ、サムターン軸3側から回転操作力を入力した場合には、カバー部材10の回転は規制されていないために、カバー部材10とサムターン軸3との間にはトルク差は発生しない。この結果、カバー部材10はサムターン軸3、すなわち、電気錠5の施解錠動作に連動して回転するために、上述したサムターン8装着状態と同様に、カバー部材10の施解錠表示を見ることにより、施解錠状態を知ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 サムターン装着開口
2 サムターンケース
3 サムターン軸
4 扉
5 錠装置
6 サムターン本体
7 連結突部
8 サムターン
9 嵌合凹部
10 カバー部材
11 表示窓
12 施解錠マーク
13 クラッチ部材
14 移動規制部
15 付勢手段
16 ガイド凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9