【実施例】
【0013】
図1に示すように、実施例に係る化粧用塗布具10は、多孔質体からなる塗布部12,14と、この塗布部12,14を支持するグリップ16とから構成されている。化粧用塗布具10は、グリップ16を摘んで塗布部12,14に付着させたアイシャドウ等の化粧料を肌に塗布したり、塗布部12,14で肌に塗った化粧料を整えるためのものであり、人体の比較的狭い部位に塗布するのに用いられる。なお、化粧用塗布具10で塗布する化粧料としては、パウダー状やリキッド状などの何れの性状であってもよい。
【0014】
前記化粧用塗布具10は、棒状のグリップ16の端部の夫々に、互いに形状の異なる塗布部12,14を有しており(
図1参照)、化粧料の塗布部位や塗布方法に合わせて2つの塗布部12,14を切り替えて使用される。実施例では、一方の塗布部(区別する場合は第1塗布部12という)が、先細り形状に形成されると共に、他方の塗布部(区別する場合は第2塗布部14という)が略球形状に形成されている。第1塗布部12は、グリップ16に支持される根元側から離れるにつれて細くなる扁平な略涙滴状に形成されて、その先端部分で目の際などの狭い領域に化粧料を塗布するのに主に用いられる。第2塗布部14は、グリップ16に臨む根元側の面を除いて外面が曲面で構成されて、まぶたなどの領域に化粧料を塗布するのに主に用いられる。グリップ16は、ポリアミドなどの合成樹脂からなる成形品や金属その他で形成され、実施例では扁平形状の棒状体が用いられている。ここで、グリップ16は、後述するインサート成形に際して、塗布部12,14をなす熱可塑性樹脂の溶融温度で形状および物性が変化しない安定性が必要である。また、塗布部12,14に埋め込まれるグリップ16の先端部分16bは、持ち手となる本体部分16aよりも薄く形成されている(
図1(b)参照)。なお、扁平な第1塗布部12の平たい向きと扁平なグリップ16の平たい向きとが揃えられている。第1塗布部12は、先端部12aと比べて幅および厚みの変化が緩やかな胴部12bにグリップ16の先端部分16bが埋め込まれ、該第1塗布部12を支持するグリップ16に邪魔されずに先端部12aの曲げが可能になっている。
【0015】
前記塗布部12,14は、セルが三次元で連通する三次元連通網目構造を有する多孔質体で構成され、柔軟性および自身の弾力性により曲げたり凹んだ状態から元に戻る形状復元性を有している。また、塗布部12,14は、表面に微細なセル孔が露出しており、これにより化粧料の保持や伸ばしや掻き取りなどを好適に行い得るようになっている。多孔質体としては、射出成形により塗布部12,14に合わせた形状に形成された成形物から水溶性核材を抽出除去する抽出法によって形成されたものが用いられる。ここで、成形物には、グリップ16を成形型内に挿入した状態で、熱可塑性樹脂とこの熱可塑性樹脂の溶融温度で形状が変化しない水溶性核材とを混合した混合物を成形型に注入するインサート成形を行うことで、グリップ16が配設される。すなわち、化粧用塗布具10では、グリップ16を最終的に塗布部12,14となる成形物の射出成形時に挿入して該塗布部12,14に一体化されている。このように、化粧用塗布具10は、接着剤による接着、熱溶着あるいはグリップ16の凹凸と塗布部12,14の凹凸との形状的な噛み合いなどによって、塗布部12,14とグリップ16とが後付けされるものではなく、塗布部12,14をなす熱可塑性樹脂自体によりグリップ16が固定される。
【0016】
前記塗布部12,14をなす熱可塑性樹脂としては、水に不溶性で、かつ加熱することで溶融する樹脂であり、また人体(肌)に悪影響を与えないものであれば、特に制限されることなく使用できる。例えば、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリエーテルポリエステル系、スチレン系およびポリアミド系などの熱可塑性エラストマー(TPE);ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)および熱可塑性ポリオレフィン(TPO)などのポリオレフィン;熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU);ポリアミド;ポリイミド;およびポリアセタールなどを使用することができる。ポリエチレンとして、低密度ポリエチレン(LD−PE)、高密度ポリエチレン(HD−PE)、直鎖低密度ポリエチレン(LL−PE)およびα−オレフィン化ポリエチレンなどが挙げられる。この中でも、ポリオレフィン樹脂を選択することで、リサイクル性を向上させることができる。また、これらの熱可塑性樹脂を2種類以上併用することもできる。
【0017】
前記水溶性核材としては、前記成形物をなす熱可塑性樹脂が熱溶融する溶融温度において熱的に安定で、射出成形時に形状を維持し得る物質であり、かつ水に漬けた際に該水に溶ける水溶性を有するものが用いられる。水溶性核材としては、NaCl、KCl、CaCl
2、NH
4Cl、NaNO
3、NaNO
2などの無機物や、トリメチロールエタン(TME)、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、しょ糖、可溶性でんぷん、ソルビトール、グリシン、有機酸(リンゴ酸、クエン酸、グルタミン酸またはコハク酸)のナトリウム塩などの有機物を用いることができる。また、水溶性核材としては、非吸湿性で、固結し難いという風化性の特性を有する、硫酸ナトリウム無水物(無水芒硝)、炭酸ナトリウム無水物、メタケイ酸ナトリウム無水物および四ホウ酸ナトリウム無水物なども用いることができる。そして、これらの水溶性核材を2種類以上併用することも可能である。
【0018】
前記成形物をなす混合物には、水に溶解し、成形時の混合物(熱可塑性樹脂)の粘度を低下させる働きをする水溶性高分子化合物を配合してもよい。水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール;ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテルなどのポリエチレングリコールモノアルキルエーテル;ポリエチレングリコールモノステアリン酸エステルなどのポリエチレングリコールモノカルボン酸エステル;ポリエチレングリコールソルビタンラウリル酸エステルなどのポリエチレングリコールソルビタンモノカルボン酸エステル;ポリエチレングリコールジアセテート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジオレエートなどのポリエチレングリコール誘導体;ポリビニルピロリドン;メチルセルロース;カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを使用することができる。また、これらの高分子化合物を2種類以上併用することもできる。
【0019】
前記塗布部12,14をなす多孔質体には、着色剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防カビ剤などの成分を任意に配合することができる。また、成形物をなす混合物には、前記水溶性高分子化合物等の添加剤とは別にまたは合わせて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂を配合してもよい。成形物の成形時に溶解した熱可塑性樹脂中において、水溶性核材が該熱可塑性樹脂の流動性を妨げるように作用するが、フッ素樹脂を混合物に配合しておくことで、熱可塑性樹脂の適切な流動性を担保することができ、成形物の射出成形を行い易くできる。
【0020】
前記塗布部12,14をなす多孔質体は、熱可塑性樹脂内でフィブリル化物質をフィブリル化させた骨格から構成してもよい。フィブリル化物質としては、ポリテトラフルオロエチレンの如き繊維軸方向に繊維が裂けることで繊維配向化、所謂フィブリル化を起こすものが使用される。このようなフィブリル化した多孔質体とする場合は、フィブリル化物質との間に相溶性がある熱可塑性樹脂が好適に採用され、フィブリル化物質がポリテトラフルオロエチレンの場合、ポリプロピレンまたはポリエチレンが好適である。なお、相溶性を表す指標としては一般的に溶解度パラメータが使用され、熱可塑性樹脂とフィブリル化物質との間の該溶解度パラメータの差が1.0以下、好適には0.5〜1の範囲となることが望まれる。溶解度パラメータの差が0.5未満の場合には、フィブリル化物質がその形状を維持できず、フィブリル化による構造的な強化作用が得られない。溶解度パラメータの差が0.5〜1の範囲の場合には、熱可塑性樹脂およびフィブリル化物質は互いに部分的に相溶する程度であり、フィブリル化物質による好適な構造的な強化作用が得られる。また溶解度パラメータの差が1を越える場合には、熱可塑性樹脂とフィブリル化物質との構造的な分離により、かえって強度劣化を生じるおそれがある。
【0021】
前記熱可塑性樹脂と水溶性核材を含む水溶性物質との混合割合は、体積百分率で10:90〜40:60の範囲内が好適である。熱可塑性樹脂の割合が10%未満の場合には、水溶性物質の抽出・除去時に塗布部12,14が形状を維持できず崩壊してしまう。一方、熱可塑性樹脂の割合が40%を越える場合、すなわち水溶性物質が60%未満の場合には、充分なセルが形成されなくなってしまい、その結果充分な三次元連通網目構造が形成されず空隙率も低下してしまうことで塗布部12,14の感触が悪化する。特に熱可塑性樹脂の混合割合は、15〜38%の範囲内が好適である。ここで、熱可塑性樹脂と水溶性核材を含む水溶性物質との混合割合を調節することで、塗布部12,14は、空隙率が62%〜85%の範囲に設定される。そして、空隙率を前記範囲に設定することで、肌に触れる塗布部12,14について好適な使用感が得られる。
【0022】
前記塗布部12,14は、平均セルサイズが10μm〜250μmの範囲にあり、かつ密度が0.13g/cm
3〜0.40g/cm
3の範囲に設定される。抽出法で得られる塗布部12,14では、水溶性核材の粒径が略そのままセルの大きさとなり、水溶性核材の粒径を分級等により調節することで、塗布部12,14のセルサイズを適宜に調節することができる。そして、塗布部12,14のセルサイズおよび密度を前述の範囲に設定することで、肌に触れる塗布部12,14について好適な使用感が得られる。
【0023】
実施例に係る化粧用塗布具10の製造方法について説明する。グリップ16は、射出成形等によって成形されて、塗布部12,14の形成に先立って別途準備されている。塗布部12,14を製造する工程において、先ず熱可塑性樹脂と水溶性核材と任意の添加物とを、一軸式もしくは二軸式押出機、ニーダ、加圧式ニーダ、コニーダ、バンバリーミキサ、ヘンシェルミキサまたはロータミキサその他の混練機などを用いて混合・混練し、押出機などを使用してペレット状の混合物を形成する。ここで、水溶性核材は、分級により大きさが揃えられており、塗布部12,14に要求される物性に応じた三次元網目構造を得られるよう、適宜サイズの水溶性核材が用いられる。この混合・混練について、特殊な装置は必要なく、また混練速度なども限定されない。混練時の温度は、使用する熱可塑性樹脂などの溶融温度によって適宜設定されるが、この熱可塑性樹脂の溶融温度で、水溶性核材が溶融または昇華することがない。また混練時間は各種混合物の物性により左右されるが、該混合物が充分に混合・混練されればよいが、主材料である熱可塑性樹脂の劣化を抑えるために、通常では30〜40分程度が好ましい。なお、添加物としてフィブリル化物質を配合する場合は、フィブリル化物質をフィブリル化させるために剪断力等を加える必要があるが、これは混錬・混合工程により達成し得る。
【0024】
成形型における得るべき塗布部12,14の形状に合わせて設定されたキャビティに、グリップ16の先端部分16bを臨ませて、該グリップ16を成形型にセットする。溶融させた混合物を、キャビティに射出圧を加えつつ押し込んで該キャビティに充填する。溶融した混合物を冷却することで、得るべき塗布部12,14の外形に合わせた外形に成形された成形物が得られる。このように、グリップ16が挿入されたキャビティで射出成形することで、得られた成形物にグリップ16が配設される。
【0025】
前記射出成形工程で得られた成形物を、適宜温度の水に浸漬し、水溶性核材(水溶性物質)を抽出・除去する。なお、抽出工程では、混合物に水溶性高分子化合物等の他の水溶性添加剤が配合されていれば、この水溶性添加剤も抽出・除去される。抽出工程では、成形物の形状・厚さなどにもよって異なるが24〜48時間程度、水に浸漬し、水溶性核材および水溶性添加物を水に溶解させることで、成形物から除去している。このように、水溶性物質が水に溶けることで、成形物に表面から空隙ができ、この空隙が内側に次第に進行する。この際の成形物の浸漬は、どのような方法であってもよいが、成形物全体を水に接触させる水中浸漬による抽出・除去が好ましい。このとき使用される水の温度についても、特に限定がなく、室温程度であってもよいが、各水溶性物質の効率的な除去のために、15〜60℃の温水を利用することが好ましい。そして、水から引き上げて乾燥等の所要の後処理を行うことで、微細なセルを多数備える三次元連通網目構造とされた多孔質体からなる塗布部12,14が形成される。このように得られた塗布部12,14には、グリップ16が一体化されている。
【0026】
〔実施例の作用〕
次に、実施例の作用について説明する。塗布部12,14をなす多孔質体を抽出法により形成するので、発泡剤により発泡して膨脹するために閉じた空間で成形することができない化学発泡法や、加圧すると気泡が壊れてしまう機械的発泡法などでは採用することができない射出成形によって、多孔質体とする前の成形物を形成することができる。このように、射出成形によって塗布部12,14の元になる成形物を成形しているので、塗布部12,14の形状の自由度が非常に高い。従来例で説明した打ち抜きや研磨加工では事実上不可能であった、筆のように先端部12aが尖った第1塗布部12の形状や、略球状に形成された第2塗布部14の形状などを、射出成形であれば簡単に成形することができる。すなわち、先端部12aが筆状に尖った第1塗布部12であれば、従来のアイカラーチップでは行うことができないアイカラーを引くこともでき、真球に近い曲面形状の第2塗布部14によれば、肌への負担を軽減しつつ広い範囲に化粧料を伸ばすことができる。しかも、射出成形とすることで、成形物を押し出し成形やその他の成形方法で成形するのと比べて、成形にかかるサイクルタイムを短くすることができ、大量生産に向くので、化粧用塗布具10の製造にかかるコストを低廉にできる。また、成形物を塗布部12,14の外形と同じに成形し得るので、成形物から水溶性物質を抽出・除去する以外に、後から研磨等の形状を作るための加工工程を行う必要はない。
【0027】
前記化粧用塗布具10は、グリップ16を成形物の成形時に挿入して塗布部12,14と一体化することができるので、塗布部12,14をグリップ16に貼り合わせたり、塗布部12,14に穴を開けてグリップ16を挿入する等、グリップ16を塗布部12,14に後付けするための工程を省略することができ、製造工程を簡易にすることができる。また、グリップ16は、成形物の成形時に挿入して塗布部12,14と一体化されるので、前述したシート材56の溶着等に伴って生じる貼り合わせ部58などに起因する塗布部12,14の物性のバラツキを回避でき、全体的に均一な物性を有する塗布部12,14を得られる。従って、化粧用塗布具10は、使い勝手のよさと好適な使用感とを高いレベルで両立し得る。
【0028】
(変更例)
前述した構成に限定されず、以下のように変更することも可能である。
(1)塗布部の形状は、前述した形状に限定されず、塗布部位や塗布方法などに応じて任意の形状とすることができる。
図2に示す変更例に係る化粧用塗布具20のように、塗布部22の表面に凹または凸形状あるいは凹凸両方を設けることで、この表面形状22aによって化粧料を保持し易くしたり、表面形状22aによって構成される模様によって付加価値を付けることができる。なお、変更例の塗布部22には、波形の表面形状22aが形成されている。また、
図3に示す別の変更例に係る化粧用塗布具30のように、塗布部32の外形をへら型に形成したり、
図4に示す更に別の変更例に係る化粧用塗布具40のように、塗布部42の外形をハート型に形成してもよい。
(2)形状の異なる塗布部ではなく同じ形状の塗布部を設けてもよい。また、塗布部は片方だけであってもよい。