特許第6131021号(P6131021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6131021ウインドレギュレータサブアッシの組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131021
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】ウインドレギュレータサブアッシの組立方法
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20170508BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   E05F11/48 C
   E05F11/48 F
   B60J1/17 A
   B60J1/17 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-237821(P2012-237821)
(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2014-88672(P2014-88672A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次
(72)【発明者】
【氏名】土本 洋介
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/095414(WO,A1)
【文献】 特開2009−287310(JP,A)
【文献】 特許第2919770(JP,B2)
【文献】 特開2009−013668(JP,A)
【文献】 特開2011−157693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/38−11/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるガイドレールと、このガイドレールの上下の少なくとも一方に位置する嵌込凹部とが一体に成形された樹脂製パネルを準備するステップ; 前記ガイドレールに、ウインドガラスが固定されるスライダベースを昇降自在に保持するステップ;及び 前記スライダベースに固定されたワイヤをプーリアセンブリのプーリ本体に巻回して、前記プーリアセンブリを前記嵌込凹部に嵌め込むステップ;を有し、 前記プーリアセンブリを前記嵌込凹部に嵌め込むステップでは、 前記プーリアセンブリのプーリ本体に前記ワイヤを1回転未満巻回する第1のステップ; 前記プーリアセンブリの軸線を前記嵌込凹部の軸線に対して傾け、前記プーリアセンブリのうち前記プーリ本体のワイヤ巻回領域に対応する部分を樹脂製パネルの前記嵌込凹部に嵌め込む第2のステップ;及び 前記プーリアセンブリの軸線を前記嵌込凹部の軸線に一致する方向に傾け、前記プーリアセンブリのうち前記プーリ本体のワイヤ非巻回領域に対応する部分を樹脂製パネルの前記嵌込凹部に嵌め込む第3のステップ; を順に実行することを特徴とするウインドレギュレータサブアッシの組立方法。
【請求項2】
請求項1記載のウインドレギュレータサブアッシの組立方法において、 前記樹脂製パネルには、平面視したときに前記嵌込凹部の周縁部から中心方向に延びて、前記嵌込凹部に嵌め込まれた前記プーリアセンブリのプーリ本体に重なり、前記プーリ本体が前記嵌込凹部から抜けるのを防止するプーリ抜止突起が形成されており、 前記第2のステップでは、前記プーリアセンブリの軸線を前記嵌込凹部の軸線に対して傾け、前記プーリ抜止突起の下方の前記嵌込凹部に、前記プーリアセンブリのうち前記プーリ本体のワイヤ巻回領域に対応する部分を挿入するウインドレギュレータサブアッシの組立方法。
【請求項3】
請求項1記載のウインドレギュレータサブアッシの組立方法において、 前記樹脂製パネルには、平面視したときに前記嵌込凹部の周縁部から中心方向に延びるワイヤ抜止突起が形成されており、 前記第2のステップでは、前記プーリアセンブリの軸線を前記嵌込凹部の軸線に対して傾け、前記ワイヤ抜止突起の下方の前記嵌込凹部に、前記プーリアセンブリのうち前記プーリ本体のワイヤ巻回領域に対応する部分を挿入するウインドレギュレータサブアッシの組立方法。
【請求項4】
請求項2または3記載のウインドレギュレータサブアッシの組立方法において、 前記樹脂製パネルには、平面視したときに前記嵌込凹部の周縁部から中心方向に延びる弾性突起が形成されており、 前記第3のステップでは、前記プーリアセンブリの軸線を前記嵌込凹部の軸線に一致する方向に傾け、前記弾性突起を弾性変形させながら、前記プーリアセンブリのうち前記プーリ本体のワイヤ非巻回領域に対応する部分を前記嵌込凹部に嵌め込むウインドレギュレータサブアッシの組立方法。
【請求項5】
請求項3または4記載のウインドレギュレータサブアッシの組立方法において、 前記ワイヤ抜止突起は、平面視したときに前記嵌込凹部の周縁部から中心方向に延びて、前記嵌込凹部に嵌め込まれた前記プーリアセンブリのプーリ本体に重なり、前記プーリ本体が前記嵌込凹部から抜けるのを防止するプーリ抜止突起を兼ねているウインドレギュレータサブアッシの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアのウインドレギュレータ、特に車両ドアに固定する前のウインドレギュレータサブアッシの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属製のガイドレールを車両ドア内に固定するウインドレギュレータに代わって、ガイドレールが一体に成形された樹脂製パネルを車両ドア内に固定するウインドレギュレータが採用されている(例えば特許文献1)。樹脂製パネルには、ガイドレールの上下に位置させてプーリを予め支持し、ガイドレールに昇降自在に支持したスライダベースに結合したワイヤを、プーリを介して巻上ドラムに巻回して、ウインドレギュレータのサブアッシ化を図り、部品点数の削減、軽量化、高強度化を実現している。ウインドレギュレータサブアッシを車両ドアに固定する際には、プーリの軸穴に挿入した結合ボルトにより樹脂製パネルをドアパネル(インナパネル)に結合し、スライダベースにウインドガラスを結合する。
【0003】
このような樹脂製パネルを備えたウインドレギュレータでは、樹脂製パネルに支持されるプーリは、樹脂製パネルとの摩擦をなくして回転自在性を担保するべく、プーリ本体をプーリブラケットに回転自在に支持したプーリアセンブリとするのが普通である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/095414号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂製パネルを備えたウインドレギュレータにおいて、ウインドレギュレータサブアッシを組み立てる際には、プーリ本体にワイヤのテンション荷重が掛かった状態で、樹脂製パネルにプーリアセンブリを支持しなければならない。このため、プーリ本体に掛かるワイヤのテンション荷重を考慮することなく無作為に樹脂パネルにプーリアセンブリを支持しようとすると、プーリ本体に巻き掛けられたワイヤが外れたり、プーリアセンブリ(プーリ本体)が破損するといった不具合が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、以上の問題意識に基づいて完成されたものであり、樹脂製パネルにプーリアセンブリを支持するときに、プーリ本体に巻き掛けられたワイヤが外れたり、プーリアセンブリ(プーリ本体)が破損するといった不具合を確実に防止することができるウインドレギュレータサブアッシの組立方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のウインドレギュレータサブアッシの組立方法は、上下方向に延びるガイドレールと、このガイドレールの上下の少なくとも一方に位置する嵌込凹部とが一体に成形された樹脂製パネルを準備するステップ;前記ガイドレールに、ウインドガラスが固定されるスライダベースを昇降自在に保持するステップ;及び前記スライダベースに固定されたワイヤをプーリアセンブリのプーリ本体に巻回して、前記プーリアセンブリを前記嵌込凹部に嵌め込むステップ;を有し、前記プーリアセンブリを前記嵌込凹部に嵌め込むステップでは、前記プーリアセンブリのプーリ本体に前記ワイヤを1回転未満巻回する第1のステップ;前記プーリアセンブリの軸線を前記嵌込凹部の軸線に対して傾け、前記プーリアセンブリのうち前記プーリ本体のワイヤ巻回領域に対応する部分を樹脂製パネルの前記嵌込凹部に嵌め込む第2のステップ;及び前記プーリアセンブリの軸線を前記嵌込凹部の軸線に一致する方向に傾け、前記プーリアセンブリのうち前記プーリ本体のワイヤ非巻回領域に対応する部分を樹脂製パネルの前記嵌込凹部に嵌め込む第3のステップ;を順に実行することを特徴としている(請求項1)。
【0008】
前記樹脂製パネルには、平面視したときに前記嵌込凹部の周縁部から中心方向に延びて、前記嵌込凹部に嵌め込まれた前記プーリアセンブリのプーリ本体に重なり、前記プーリ本体が前記嵌込凹部から抜けるのを防止するプーリ抜止突起が形成されており、前記第2のステップでは、前記プーリアセンブリの軸線を前記嵌込凹部の軸線に対して傾け、前記プーリ抜止突起の下方の前記嵌込凹部に、前記プーリアセンブリのうち前記プーリ本体のワイヤ巻回領域に対応する部分を挿入することが好ましい(請求項2)。
【0009】
前記樹脂製パネルには、平面視したときに前記嵌込凹部の周縁部から中心方向に延びるワイヤ抜止突起が形成されており、前記第2のステップでは、前記プーリアセンブリの軸線を前記嵌込凹部の軸線に対して傾け、前記ワイヤ抜止突起の下方の前記嵌込凹部に、前記プーリアセンブリのうち前記プーリ本体のワイヤ巻回領域に対応する部分を挿入することが好ましい(請求項3)。
【0010】
前記樹脂製パネルには、平面視したときに前記嵌込凹部の周縁部から中心方向に延びる弾性突起が形成されており、前記第3のステップでは、前記プーリアセンブリの軸線を前記嵌込凹部の軸線に一致する方向に傾け、前記弾性突起を弾性変形させながら、前記プーリアセンブリのうち前記プーリ本体のワイヤ非巻回領域に対応する部分を前記嵌込凹部に嵌め込むことが好ましい(請求項4)。
【0011】
前記ワイヤ抜止突起は、平面視したときに前記嵌込凹部の周縁部から中心方向に延びて、前記嵌込凹部に嵌め込まれた前記プーリアセンブリのプーリ本体に重なり、前記プーリ本体が前記嵌込凹部から抜けるのを防止するプーリ抜止突起を兼ねていることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、プーリアセンブリのうちプーリ本体のワイヤ巻回領域(特に駆動ワイヤのテンション荷重が最も大きく掛かる領域)に対応する部分を先に嵌込凹部に嵌め込み、その後、プーリアセンブリのうちプーリ本体のワイヤ非巻回領域に対応する部分を嵌込凹部に嵌め込んでいるので、プーリ本体に駆動ワイヤのテンション荷重が掛かっているにもかかわらず、プーリ本体に巻き掛けられた駆動ワイヤが外れたり、プーリアセンブリ(プーリ本体)が破損するといった不具合を確実に防止することができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、樹脂製パネルに形成したプーリ抜止突起がプーリアセンブリのプーリ本体を直接的に押さえ込むので、たとえウインドレギュレータサブアッシの納入時(搬入時)において、プーリ本体に駆動ワイヤのテンション荷重が掛かったり、プーリアセンブリに予期せぬ衝撃が加わったとしても、プーリ本体が樹脂製パネルの嵌込凹部から抜ける(外れる)のを確実に防止することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、ウインドレギュレータサブアッシの納入時(搬入時)において、プーリ本体に駆動ワイヤのテンション荷重が掛かったり、プーリアセンブリに予期せぬ衝撃が加わったとしても、プーリ本体に巻回された駆動ワイヤが嵌込凹部から抜けるのを確実に防止することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、プーリアセンブリの嵌込凹部への挿入容易性を向上させることができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、ウインドレギュレータサブアッシの納入時(搬入時)において、プーリ本体に駆動ワイヤのテンション荷重が掛かったり、プーリアセンブリに予期せぬ衝撃が加わったとしても、プーリ本体を有するプーリアセンブリが樹脂製パネルの嵌込凹部から抜けるのを確実に防止することができる。また、ワイヤ抜止突起とプーリ抜止突起を別個に形成する必要がないので、樹脂製パネルの構造を簡単にして製造を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によるウインドレギュレータを車外側から見た図である。
図2】本発明によるウインドレギュレータを車内側から見た図である。
図3】本発明によるウインドレギュレータを車両前後方向から見た図である。
図4図1のIV−IV線に沿う断面図である。
図5】樹脂製パネルの嵌込凹部の構造を示す拡大平面図である。
図6】樹脂製パネルの嵌込凹部の構造を示す拡大斜視図である。
図7図7(A)〜(D)は駆動ワイヤのテンション荷重が掛かった状態のプーリアセンブリを樹脂製パネルの嵌込凹部に嵌め込む工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1ないし図3は、本発明によるウインドレギュレータ1の構成を示している。同図では、車両ドアに組み込む前のウインドレギュレータサブアッシの状態のウインドレギュレータ1を描いている。以下の説明中の方向は図中に記載した矢線の各方向を基準とする。
【0020】
ウインドレギュレータ1は、車幅方向(車外側または車内側)からマクロに見たときにH形状をなし、車両前後方向から見たときに車内側から車外側に向かってやや湾曲した樹脂製の一体成形品からなる樹脂製パネル10を備えている。樹脂製パネル10の車両前方側と車両後方側には、上下方向に延びる直線状のガイドレール11とガイドレール12がそれぞれ一体に成形されている。ガイドレール11とガイドレール12には、ウインドガラス(図示せず)が固定されるスライダベース13とスライダベース14がそれぞれ昇降自在に支持されている。
【0021】
樹脂製パネル10には、ガイドレール11とガイドレール12の上下に位置させて、嵌込凹部20a、20b、20c、20dが一体に成形されている。嵌込凹部20a、20b、20c、20dには、プーリアセンブリ30a、30b、30c、30dがそれぞれ嵌め込まれている。4つの嵌込凹部20a−20dと、4つのプーリアセンブリ30a−30dとは同一構造を有している。
【0022】
樹脂製パネル10の中央部には、駆動ドラム15と、この駆動ドラム15を正逆に回転駆動するモータユニット16とが支持されている。駆動ドラム15には駆動ワイヤW1が巻回されており、この駆動ワイヤW1は、一端部がプーリアセンブリ30bによって方向を転換した後にスライダベース13に結合されており、他端部がプーリアセンブリ30cによって方向を転換した後にスライダベース14に結合されている。またスライダベース13とスライダベース14は、プーリアセンブリ30aとプーリアセンブリ30dによって方向を転換した駆動ワイヤW2(駆動ワイヤW1とは別部材)によって結合されている。従って、モータユニット16によって駆動ドラム15を正逆に回転駆動すると、スライダベース13とスライダベース14(ウインドガラス)がガイドレール11とガイドレール12に案内されて昇降する。図1図2では、ウインドレギュレータ1を車両ドアに組み込んだ状態で、ウインドガラス(図示せず)が全閉状態となるスライダベース13とスライダベース14の上死点位置と、ウインドガラス(図示せず)が全開状態となるスライダベース13とスライダベース14の下死点位置との双方を描いている。
【0023】
図4ないし図6を参照して、それぞれ同一構造を有する嵌込凹部20a−20dとプーリアセンブリ30a−30dを代表して、嵌込凹部20aとプーリアセンブリ30aの構成について詳細に説明する。
【0024】
図4ないし図6に示すように、嵌込凹部20aは平面視したときに略円形をなしておりその中心部に貫通穴21が形成されている。嵌込凹部20aには、中心部の貫通穴21を径方向から挟んで対向するように、剛性抜止突起(ワイヤ抜止突起、プーリ抜止突起)22と弾性抜止突起(弾性突起)23とが独立して形成されている。弾性抜止突起23は、剛性抜止突起22より軟質で弾性変形容易な材料(例えば板ばね材料)から構成されている。剛性抜止突起22と弾性抜止突起23はともに広義の弾性部材に含まれるものであり、「剛性」と「弾性」の文言は両突起の相対的な硬さの尺度を示すために用いている。
【0025】
剛性抜止突起22と弾性抜止突起23は、嵌込凹部20aの周縁部による片持ち梁状をなしており、平面視したときに嵌込凹部20aの周縁部から中心部に向かって互いに近づくように延びている。剛性抜止突起22は嵌込凹部20aの周縁部から中心部に向かって水平方向に延びており、弾性抜止突起23は嵌込凹部20aの周縁部から中心部に向かって垂れる(お辞儀をする)ように延びる円弧形状(湾曲形状)をなしている。
【0026】
図4に示すように、プーリアセンブリ30aは、プーリ本体31と、プーリブラケット32と、プーリ本体31をプーリブラケット32に回転自在に支持するナット部材33とを備えている。
【0027】
プーリ本体31は、ともに全円板状の底面フランジ部311と天面フランジ部312、及び底面フランジ部311と天面フランジ部312の間に形成されたワイヤガイド溝313を有している。ワイヤガイド溝313には、スライダベース13とスライダベース14に固定された駆動ワイヤW2が巻き掛けられる。プーリ本体31の中心部には、ナット部材33を挿通するための挿通穴314が形成されている。
【0028】
プーリブラケット32は、プーリ本体31の底面フランジ部311を支持するプーリ支持面321と、このプーリ支持面321の中央部から下方に延びて嵌込凹部20aの貫通穴21に嵌め込まれる嵌込筒部322とを有している。プーリ支持面321の周方向の一部には起立壁部323が形成されており、この起立壁部323は、平面視したときにプーリ本体31(ワイヤガイド溝313)のワイヤ巻回領域、特に駆動ワイヤW2のテンション荷重が最も大きく掛かる領域を覆っている。
【0029】
ナット部材33は、プーリ本体31の挿通穴314に挿通されプーリブラケット32の嵌込筒部322の下端部にかしめ固定された軸部材からなる。ナット部材33の上端部には、プーリ本体31の天面フランジ部312に当接するフランジ部331が形成されている。ナット部材33の中心部には、サブアッシ状態のウインドレギュレータ1を車両ドアに組み込むための結合ボルト(図示せず)が挿通されるボルト挿通穴332が形成されている。
【0030】
以上のように構成された嵌込凹部20aにプーリアセンブリ30aを嵌め込んだ状態では、剛性抜止突起22と弾性抜止突起23が、平面視したときにプーリアセンブリ30aのプーリ本体31を挟み込むようにしてプーリ本体31に重なっている。剛性抜止突起22の先端部は、プーリ本体31の天面フランジ部312に対向しており、弾性抜止突起23の先端部は、プーリ本体31のワイヤガイド溝313の内部に位置している。このように、剛性抜止突起22と弾性抜止突起23がプーリアセンブリ30aのプーリ本体31を直接的に押さえ込んでいるので、プーリ本体31が樹脂製パネル10の嵌込凹部20aから抜ける(外れる)のを確実に防止することができる。また、剛性抜止突起22によってプーリ本体31を有するプーリアセンブリ30aの抜止防止機能を向上させるとともに、弾性抜止突起23によってプーリアセンブリ30aの嵌込凹部20aへの挿入容易性を向上させることができる。さらに、プーリ本体31を有するプーリアセンブリ30aを樹脂製パネル10の嵌込凹部20aに嵌め込む際の弾性抜止突起23の弾性変位量を小さく設定して、弾性抜止突起23の耐久性を向上させることができる。
【0031】
剛性抜止突起22は、駆動ドラム15とモータユニット16から最も遠い側に位置しており、平面視したときにプーリ本体31(ワイヤガイド溝313)のワイヤ巻回領域、特に駆動ワイヤW2のテンション荷重が最も大きく掛かる領域を覆っている。これにより、剛性抜止突起22に、プーリ本体31を有するプーリアセンブリ30aの抜止防止機能に加えて、プーリ本体31に巻回された駆動ワイヤW2の抜止防止機能を担わせることができる。弾性抜止突起23は、駆動ドラム15とモータユニット16に最も近い側に位置しており、平面視したときにプーリ本体31(ワイヤガイド溝313)のワイヤ非巻回領域、つまり駆動ワイヤW2のテンション荷重が掛からない領域を覆っている。
【0032】
以上のように構成されたウインドレギュレータ1は次のようにして組み立てる。まず、樹脂製パネル10のガイドレール11とガイドレール12に、スライダベース13とスライダベース14を昇降自在に支持する。次いで、一端部と他端部がスライダベース13とスライダベース14に固定され且つ中間部が駆動ドラム15に巻回された駆動ワイヤW1をプーリアセンブリ30bとプーリアセンブリ30cのプーリ本体31に巻回して、駆動ワイヤW1のテンション荷重が掛かった状態のプーリアセンブリ30bとプーリアセンブリ30cを樹脂製パネル10の嵌込凹部20bと嵌込凹部20cに嵌め込む。同時に、一端部と他端部がスライダベース13とスライダベース14に固定された駆動ワイヤW2をプーリアセンブリ30aとプーリアセンブリ30dのプーリ本体31に巻回して、駆動ワイヤW2のテンション荷重が掛かった状態のプーリアセンブリ30aとプーリアセンブリ30dを樹脂製パネル10の嵌込凹部20aと嵌込凹部20dに嵌め込む。
【0033】
いま、図7(A)〜(D)を参照して、駆動ワイヤW2のテンション荷重が掛かった状態のプーリアセンブリ30aを樹脂製パネル10の嵌込凹部20aに嵌め込む工程についてより詳細に説明する。
【0034】
まず、図7(A)に示すように、プーリアセンブリ30aのプーリ本体31のワイヤガイド溝313に駆動ワイヤW2を1回転未満巻回する(第1のステップ)。
【0035】
次いで、図7(B)に示すように、プーリアセンブリ30aの軸線を嵌込凹部20aの軸線に対して傾け、プーリアセンブリ30aのうちプーリ本体31のワイヤ巻回領域に対応する部分を嵌込凹部20aに嵌め込む(第2のステップ)。より具体的には、プーリアセンブリ30aの軸線の嵌込凹部20aの軸線に対する傾き角度を最大にして且つプーリ本体31のワイヤ巻回領域(特に駆動ワイヤW2のテンション荷重が最も大きく掛かる領域)と剛性抜止突起22の周方向位置をずらした状態で、プーリアセンブリ30aのうちプーリ本体31のワイヤ巻回領域に対応する部分を嵌込凹部20aに嵌め込み、その後、プーリアセンブリ30aの軸線の嵌込凹部20aの軸線に対する傾き角度を徐々に小さくしながらプーリ本体31のワイヤ巻回領域(特に駆動ワイヤW2のテンション荷重が最も大きく掛かる領域)と剛性抜止突起22の周方向位置を一致させる。これにより、剛性抜止突起22の下方の嵌込凹部20aに、プーリアセンブリ30aのうちプーリ本体31のワイヤ巻回領域に対応する部分が挿入される。
【0036】
次いで、図7(C)に示すように、プーリアセンブリ30aの軸線を嵌込凹部20aの軸線に一致する方向に傾け、プーリアセンブリ30aのうちプーリ本体31のワイヤ非巻回領域に対応する部分を嵌込凹部20aに嵌め込む(第3のステップ)。このとき、弾性抜止突起23は、プーリブラケット32のプーリ支持面321に押し下げられて弾性変形し、プーリ本体31のワイヤガイド溝313の内部で弾性復帰して自由状態に戻る。この状態では、剛性抜止突起22と弾性抜止突起23が、プーリアセンブリ30aのプーリ本体31に重なっており、プーリ本体31が嵌込凹部20aから抜ける(外れる)のが防止される(第4のステップ)。
【0037】
以上の工程によって、図7(D)に示すように、車両ドアに組み込む前のサブアッシ状態のウインドレギュレータ1が完成する。本実施形態では、プーリアセンブリ30aのうちプーリ本体31のワイヤ巻回領域(特に駆動ワイヤW2のテンション荷重が最も大きく掛かる領域)に対応する部分を先に嵌込凹部20aに嵌め込み(第2のステップ)、その後、プーリアセンブリ30aのうちプーリ本体31のワイヤ非巻回領域に対応する部分を嵌込凹部20aに嵌め込んでいる(第3のステップ)ので、プーリ本体31に駆動ワイヤW2のテンション荷重が掛かっているにもかかわらず、プーリ本体31に巻き掛けられた駆動ワイヤW2が外れたり、プーリアセンブリ30a(プーリ本体31)が破損するといった不具合を確実に防止することができる。
【0038】
サブアッシ状態のウインドレギュレータ1は、ナット部材33のボルト挿通穴332に挿通した結合ボルト(図示せず)によって樹脂製パネル10をドアパネル(インナパネル)に結合すると同時に、スライダベース13とスライダベース14にウインドガラス(図示せず)を結合することで、完成状態のウインドレギュレータ1として車両ドアに組み込まれる。
【0039】
ここで、サブアッシ状態のウインドレギュレータ1を製造する工程と、サブアッシ状態のウインドレギュレータ1を車両ドアに組み込む工程とは、別の製造ラインまたは別の製造工場で行われるので、両工程の間に、サブアッシ状態のウインドレギュレータ1の納入工程(搬入工程)を挟むのが必須である。この納入工程(搬入工程)では、プーリ本体31に駆動ワイヤW2のテンション荷重が掛かること又はプーリアセンブリ30aに予期せぬ衝撃が加わることがある。本実施形態では、剛性抜止突起22と弾性抜止突起23がプーリアセンブリ30aのプーリ本体31を直接的に押さえ込んでいるので、サブアッシ状態のウインドレギュレータ1の納入時(搬入時)において、プーリ本体31が樹脂製パネル10の嵌込凹部20aから抜ける(外れる)のを確実に防止することができる。また、プーリ本体31に巻回された駆動ワイヤW2が嵌込凹部20aから抜けるのを確実に防止することができる。
【0040】
本実施形態で述べた嵌込凹部20aとプーリアセンブリ30aの嵌め込み構造による優位な作用効果は、嵌込凹部20b−20dとプーリアセンブリ30b−30dの嵌め込み構造によっても全く同様にして得ることができる。
【0041】
以上の実施形態では、車両前後方向に位置するガイドレール11とガイドレール12にスライダベース13とスライダベース14を昇降自在に支持したいわゆるダブルガイド式のウインドレギュレータ1を例示して説明した。しかし本発明は、単一のガイドレールに単一のスライダベースを昇降自在に支持したいわゆるシングルガイド式のウインドレギュレータにも同様に適用可能である。シングルガイド式のウインドレギュレータに本発明を適用する場合は、ガイドレールの上下にプーリアセンブリを支持する態様、あるいは、ガイドレールの上部にプーリアセンブリを支持する一方、ガイドレールの下部にワイヤ駆動機構を支持する態様(いわゆる下端ドライブ)が可能である。すなわち、本発明は、樹脂製パネルのガイドレールの上下の少なくとも一方にプーリアセンブリが支持されている限りにおいて成立する。
【0042】
以上の実施形態では、剛性抜止突起(ワイヤ抜止突起、プーリ抜止突起)22と弾性抜止突起(弾性突起)23とを1つずつ設けた場合を例示して説明したが、剛性抜止突起22と弾性抜止突起23は少なくとも1つずつ設けられていればよく、これらの一方または双方を2つ以上設ける態様も可能である。
【0043】
以上の実施形態では、剛性抜止突起22の先端部をプーリ本体31の天面フランジ部312に対向させ、弾性抜止突起23の先端部をプーリ本体31のワイヤガイド溝313の内部に位置させた場合を例示して説明した。しかし剛性抜止突起22と弾性抜止突起23を設ける態様はこれに限定されるものではなく、例えば、剛性抜止突起22と弾性抜止突起23の双方をプーリ本体31の天面フランジ部312に対向させる態様も可能である。
【0044】
以上の実施形態では、平面視したときに剛性抜止突起22の先端部がプーリ本体31の天面フランジ部312に対向して重なる位置まで延びているが、これに限定されず、平面視したときに剛性抜止突起22の先端部がプーリ本体31の天面フランジ部312の周縁部近傍まで延びている態様も可能である。
【0045】
以上の実施形態では、剛性抜止突起22がプーリ抜止突起とワイヤ抜止突起を兼用している場合を例示して説明しているが、樹脂製パネル10の嵌込凹部20a、20b、20c、20dの周縁部に、プーリ抜止突起としての剛性抜止突起と、ワイヤ抜止突起としての剛性抜止突起とをそれぞれ別個に形成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 ウインドレギュレータ
10 樹脂製パネル
11 12 ガイドレール
13 14 スライダベース
15 駆動ドラム
16 モータユニット
20a 20b 20c 20d 嵌込凹部
21 貫通穴
22 剛性抜止突起(ワイヤ抜止突起、プーリ抜止突起)
23 弾性抜止突起(弾性突起)
30a 30b 30c 30d プーリアセンブリ
31 プーリ本体
311 底面フランジ部
312 天面フランジ部
313 ワイヤガイド溝
314 挿通穴
32 プーリブラケット
321 プーリ支持面
322 嵌込筒部
323 起立壁部
33 ナット部材
331 フランジ部
332 ボルト挿通穴
W1 W2 駆動ワイヤ
図1
図2
図3
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図5
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図7