特許第6131027号(P6131027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131027
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】地山弾性波速度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/00 20060101AFI20170508BHJP
   E02D 1/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   G01V1/00 C
   E02D1/00
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-259381(P2012-259381)
(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公開番号】特開2014-106128(P2014-106128A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】大沼 和弘
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−226975(JP,A)
【文献】 特開2008−076352(JP,A)
【文献】 特開2003−014863(JP,A)
【文献】 特開平08−304559(JP,A)
【文献】 特開昭62−101800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−99/00
E02D 1/00− 3/115
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーカーを含む打撃式の掘削機械を用いて地山を打撃掘削することにより発生する地山の掘削振動で地山を伝播する弾性波及び空気中を伝播する音波をそれぞれ測定し、
前記測定した弾性波及び音波から、前記掘削機械による任意の打撃掘削時点から同一時間に発生した弾性波と音波をそれぞれの波形の類似性から特定し、前記特定の音波から前記特定の弾性波の発振時刻を計測し、前記特定の弾性波から前記特定の弾性波の到達時刻を計測して、前記弾性波の伝播時間を求め、当該伝播時間に基いて地山の弾性波速度を算出する、
ことを特徴とする地山弾性波速度測定方法。
【請求項2】
地山の既知の弾性波測定地点に受振センサ及び測定器を設置して、前記受振センサ及び前記測定器により地山を伝播する弾性波を検知し、弾性波データを生成、記録して、弾性波の到達時刻を計測する請求項1に記載の地山弾性波速度測定方法。
【請求項3】
受振センサにジオフォンを含む可搬型の電気機械式の受振センサを採用する請求項2に記載の地山弾性波速度測定方法。
【請求項4】
地山の打撃掘削地点に近接する既知の音波測定地点にマイクロホンを設置し、地山の既知の弾性波測定地点側に前記マイクロホンと通信機材を介して接続する測定器を設置して、前記マイクロホン及び前記測定器により空中を伝播する音波を検出し、音波データを生成、記録して、音波の発振時刻を計測する請求項1乃至3のいずれかに記載の地山弾性波速度測定方法。
【請求項5】
地山の打撃掘削地点から異なる距離離間する既知の複数の音波測定地点にそれぞれマイクロホンを設置し、地山の既知の弾性波測定地点側に前記各マイクロホンと通信機材を介して接続する測定器を設置して、前記各マイクロホン及び前記測定器により空中を伝播する音波を検出し、音波データを生成、記録して、音波の伝播速度を補正して音波の発振時刻を計測する請求項1乃至のいずれかに記載の地山弾性波速度測定方法。
【請求項6】
測定器にICレコーダを含む可搬型の不揮発性の記憶装置を採用する請求項乃至のいずれかに記載の地山弾性波速度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム、トンネル及び造成などの土木工事において、岩盤を掘削する場合に、地山の地質状況を探査するために行う地山弾性波速度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム、トンネル及び造成などの土木工事では、地山の掘削や支保を安全かつ合理的に行うために、地山の掘削面の地質状況を事前に調査しておく必要がある。
例えば、地山を掘削してトンネルを形成する工事においては、地山の性状を把握するために、地山の各部の弾性波速度を測定することが行われており、この弾性波速度に基いてトンネル切羽近傍の岩盤等級を区分し、岩盤等級毎に適切なトンネル掘削や支保工パターンを選定する。
この種の地山弾性波速度測定方法としては、地山の所定の地点(起振点)で人工的に振動(地震)を起こすことにより弾性波(地震波)を発生させ、この弾性波を起振点から離れた既知の地点で計測し、これを解析することにより、弾性波速度を測定する屈折法弾性波探査や簡便な手法としての簡易弾性波探査などが周知であり、特許文献1その他多くの文献に開示されている。
一般に、屈折法弾性波探査は、トンネル切羽や側壁の起振点から離れた既知の地点に複数の地震計を設置し、起振点で弾性波探査用発破器(専用の起振装置)により小規模の発破を爆破したり重錘により打撃を加えたりして振動を発生させ、これにより岩盤を伝播する弾性波を各地震計により計測し、弾性波の地震計までの到達時間から、岩盤の弾性波速度を求める手法である。また、トンネル掘削用の発破を直接利用した手法もあり、この場合は、トンネル切羽を発破で爆破した際に発生する弾性波を切羽後方の地震計で計測して、岩盤の弾性波速度を求める。
簡易弾性波探査では、地表面の既知の1箇所から3箇所に地震計を設置した上で、起振点をハンマーやカケヤにより打撃を加えて弾性波を発生させ、各地震計に到達する弾性波の到達時間から、岩盤を伝播する弾性波速度を求めることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−14863公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の地山弾性波速度測定方法では、次のような問題がある。
(1)一般の屈折法弾性波探査では、地山に人工的に振動を起こすために、発破や弾性波探査用発破器が必要になる。トンネル掘削用の発破を利用して岩盤の弾性波速度を測定する方法は発破を使用しない軟岩トンネルには適用できない。弾性波探査用発破器は、特殊な機器であることから、測定機材が高価であり、また、その取扱いが難しく専門の技術者(弾性波探査業者)が必要になるため、弾性波の測定に要するコストが増大する。
(2)一般の簡易弾性波探査では、ハンマーやカケヤを用いて人力で地山に打撃を加えて振動を起こすので、探査距離が短くならざるを得ず、地質探査を効率良く行うことができない。また、トンネル坑内の弾性波測定の場合、切近傍での測定作業になるため、作業の安全上好ましくない。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種の弾性波速度測定方法において、発破や弾性波探査用発破器を不要とすること、一般の土木工事に使用する汎用機械を利用し、簡単な測定機材を用いて、弾性波の測定作業を容易かつ低コストに行うこと、特に、トンネル工事においては、硬岩トンネル、軟岩トンネルに関らず適用できること、弾性波測定のための測定距離及び測定深度が十分に大きくなり、地質探査を効率良く行うこと、弾性波の測定作業を切から離れた位置で安全に行うこと、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の地山弾性波速度測定方法は、ブレーカーを含む打撃式の掘削機械を用いて地山を打撃掘削することにより発生する地山の掘削振動で地山を伝播する弾性波及び空気中を伝播する音波をそれぞれ測定し、前記測定した弾性波及び音波から、前記掘削機械による任意の打撃掘削時点から同一時間に発生した弾性波と音波をそれぞれの波形の類似性から特定し、前記特定の音波から前記特定の弾性波の発振時刻を計測し、前記特定の弾性波から前記特定の弾性波の到達時刻を計測して、前記弾性波の伝播時間を求め、当該伝播時間に基いて地山の弾性波速度を算出する、ことを要旨とする。
また、この方法では、地山の既知の弾性波測定地点に受振センサ及び測定器を設置して、前記受振センサ及び前記測定器により地山を伝播する弾性波を検知し、弾性波データを生成、記録して、弾性波の到達時刻を計測することが望ましい。
この場合、受振センサにジオフォンを含む可搬型の電気機械式の受振センサを採用することが好ましい。
さらに、この方法では、地山の打撃掘削地点に近接する既知の音波測定地点にマイクロホンを設置し、地山の既知の弾性波測定地点側に前記マイクロホンと通信機材を介して接続する測定器を設置して、前記マイクロホン及び前記測定器により空中を伝播する音波を検出し、音波データを生成、記録して、音波の発振時刻を計測することが好ましい。また、地山の打撃掘削地点から異なる距離離間する既知の複数の音波測定地点にそれぞれマイクロホンを設置し、地山の既知の弾性波測定地点側に前記各マイクロホンと通信機材を介して接続する測定器を設置して、前記各マイクロホン及び前記測定器により空中を伝播する音波を検出し、音波データを生成、記録して、音波の伝播速度を補正して音波の発振時刻を計測するようにしてもよい。
この場合、測定器にICレコーダを含む可搬型の不揮発性の記憶装置を採用することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記の方法により、次のような効果を奏する。
(1)ブレーカーを含む打撃式の掘削機械を用いて地山を打撃掘削することにより発生する地山の掘削振動で地山を伝播する弾性波及び空気中を伝播する音波をそれぞれ測定するので、発破や弾性波探査用発破器を不要とすることができる。
(2)ブレーカーを含む打撃式の掘削機械を用いて地山を打撃掘削することにより発生する地山の掘削振動で地山を伝播する弾性波及び空気中を伝播する音波をそれぞれ測定し、測定した弾性波及び音波から弾性波の伝播時間を求め、この伝播時間に基いて地山の弾性波速度を算出するので、原位置で、一般の土木工事に使用する汎用機械と、例えばジオフォン、有線マイク、マイクロホン送信機及び受信機などの簡単な測定機材を用いて、弾性波の測定作業を容易かつ低コストに行うことができる。また、汎用機械を用いて弾性波探査を実施するので、土木工事における日常の施工管理に活用することができる。
(3)ブレーカーを含む打撃式の掘削機械を用いて地山を打撃掘削することにより発生する地山の掘削振動で地山を伝播する弾性波及び空気中を伝播する音波をそれぞれ測定するので、特に、トンネル工事においては、硬岩トンネル、軟岩トンネルに関らず適用することができ、また、比較的大きな起振力を得られ、弾性波測定のための測定距離及び測定深度が十分に大きくなり、地質探査を効率良く行うことができる。また、この場合、弾性波の測定作業をトンネル切から離れた位置で行えるので、作業を安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態における地山弾性波速度測定方法のイメージを示す図
図2】同方法において特に音波の測定方法の変更例を示す図
図3】同方法において特に音波の測定方法の変更例を示す図
図4】同方法において特に音波の測定方法の変更例を示す図
図5】同方法においてブレーカーによりトンネル切羽を打撃掘削した際に発生する弾性波と音波の測定例を示す図
図6図5の一部を拡大して示す図
図7】同方法による地山の弾性波速度の算出例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
この地山弾性波速度測定方法では、土木工事用のブレーカーを含む打撃式の掘削機械を用いて地山を打撃掘削することにより発生する地山の掘削振動で地山を伝播する弾性波及び空気中を伝播する掘削音(音波)をそれぞれ測定し、この測定した弾性波及び音波から弾性波の伝播時間を求め、当該伝播時間に基いて地山の弾性波速度を算出しようとするものである。
【0010】
図1にこの方法の具体例を示している。この図1では、ブレーカー1を用いて地山を掘削してトンネルを形成していく過程を示し、この過程の中でトンネル坑壁の弾性波速度を測定する具体的な手法を例示している。また、図2図4に特に音波の測定方法の変更例を示している。
【0011】
図1において、この方法では、まず、弾性波の発生源にブレーカー1の掘削振動を利用し、ブレーカー1でトンネル切羽T1を打撃掘削することにより発生する岩盤の掘削振動でトンネル坑壁T2を伝播する弾性波を受振センサ2及び測定器3を使用して測定し、トンネル坑内T0の空気中を伝播する音波をマイクロホン4、各種の通信機材42,43,5及び測定器3を用いて測定する。
【0012】
この場合、まず、ブレーカー1によるトンネル切羽T1への打撃掘削地点とトンネル坑壁T2に設定するトンネル切羽T1から所定距離離れた弾性波の測定地点を測量などにより求め、弾性波伝播距離(L)を把握する。
【0013】
次に、トンネル坑壁T2に設定した弾性波の測定地点に受振センサ2を設置し、受振センサ2の設置位置の近傍に測定器3を併せて設置する。
この場合、受振センサ2にジオフォンを含む可搬型の電気機械式の受振センサを採用することが好ましく、ここでは、一般に市販される携帯用の可動コイル型ジオフォンを使用する。以下、受振センサ2をジオフォン2と称する。また、測定器3にはIC(Integrated Circuit)レコーダを含む可搬型の不揮発性の記憶装置を採用することが好ましく、ここでは、一般に市販される携帯用のICレコーダを使用する。以下、測定器3をICレコーダ3と称する。また、ここで使用するICレコーダ3はマイクロホン4側と共通でマイクロホン4側の測定器を兼用することが好ましく、このICレコーダ3にジオフォン2側の1本の通信ケーブル5及びマイクロホン4側の1本又は2本の通信ケーブル5を接続可能な2チャンネル又は3チャンネルの入力部を有する形式のものを選定する。
ジオフォン2を設置する場合、地震波ガイド(棒鋼、ロックボルト)を用い、地震波ガイドをトンネル坑壁T2の既知の弾性波測定地点に固定し、この地震波ガイドにジオフォン2を取り付ける。そして、このジオフォン2とICレコーダ3を通信ケーブル5を介して接続し、このICレコーダ3をこの既知の弾性波測定地点側に設置する。
【0014】
また、このジオフォン2の設置に前後して、ブレーカー1の打撃掘削地点に近接する音波の測定地点にマイクロホン4を設置する。この場合、マイクロホン4を、例えばブレーカー1又はこのブレーカー1を支持するアームやブームなどにマイク支持部材を介して取り付け、ブレーカー1の打撃掘削地点の近傍に配置すればよい。また、マイクロホン4は有線又は無線のいずれの形式でもよく、有線とする場合は、有線マイク41をジオフォン2と共通のICレコーダ3に通信ケーブル5を介して接続する。また、マイクロホン4を無線とする場合は、図2に示すように、マイクロホン4にワイヤレスマイクロホン送信機42をワイヤレス受信機43とともに使用する。この場合、ワイヤレスマイクロホン送信機42を、同様に、例えばブレーカー1又はこのブレーカー1を支持するアームやブームなどにマイク支持部材により取り付けて、ブレーカー1の打撃掘削地点に近接する音波測定地点に設置し、ワイヤレス受信機43をジオフォン2と共通のICレコーダ3に通信ケーブル5により接続して、弾性波測定地点側に設置する。
【0015】
また、このマイクロホン4の設置に当たり、マイクロホン4をブレーカー1の打撃掘削地点に近接する地点に設置できない場合は、図3又は図4に示すように、ブレーカー1の打撃掘削地点から異なる距離離間する既知の複数の音波測定地点にそれぞれマイクロホン4を設置してもよい。この場合、例えば2本のマイクロホン4をそれぞれ、例えばブレーカー1又はこのブレーカー1を支持するアームやブームなどにマイク支持部材を介して取り付け、ブレーカー1の打撃掘削地点から異なる距離離間する既知の2箇所の音波測定地点に配置すればよい。この2本のマイクロホン4を使って音の伝播速度(音速)の補正を行う。
また、この場合において、各マイクロホン4を有線とする場合は、図3に示すように、複数の有線マイク41を用い、複数の有線マイク41をジオフォン2と共通のICレコーダ3(2チャンネル)を含め、複数のICレコーダ3(2チャンネル)に通信ケーブル5を介して接続する。このとき、共通する信号をICレコーダ3に入力し、時刻の同期を可能な状態にしておく。
また、各マイクロホン4を無線とする場合は、図4に示すように、複数のワイヤレスマイクロホン送信機42及びワイヤレス受信機43を用い、複数のワイヤレス受信機43をジオフォン2と共通のICレコーダ3(2チャンネル)を含め、複数のICレコーダ3(2チャンネル)に通信ケーブル5を介して接続する。このとき、共通する信号をICレコーダ3に入力し、時刻の同期を可能な状態にしておく。
【0016】
このようにして、ブレーカー1によるトンネル切羽T1の打撃掘削に際し、ジオフォン2及びICレコーダ3により、トンネル切羽T1(の打撃掘削地点)から発生しトンネル坑壁T2を伝播する弾性波を検知し、弾性波データを生成し、弾性波の到達時刻及び振幅を記録して、弾性波の到達時刻を計測する。併せて、1本若しくは2本の有線マイク41、通信ケーブル5及びICレコーダ3により、又は1本若しくは2本のワイヤレスマイクロホン送信機42、ワイヤレス受信機43、通信ケーブル5及びICレコーダ3により、トンネル切羽T1(の打撃掘削地点)から発生しトンネル坑内T0の空中を伝播する音波を検出し、音波データを生成し、音波の到達時刻及び振幅を記録して、音波の到達時刻を計測する。
【0017】
図5にブレーカーによりトンネル切羽を打撃掘削した際に発生する弾性波と音波の測定例を示している。なお、この場合、ブレーカーの打撃地点から約5m地点での測定であり、弾性波と音波の到達時間に大きな差は有していない場合の例である。
図5において、上段に示す波動が弾性波で、下段に示す波動が音波である。これらの波動から、振幅の最大及び最小を示す範囲は弾性波及び音波で類似性が認められ、波動の長周期成分が類似性を有することを示している。
図6図5の一部を拡大して示している。
図6に示すように、ブレーカーの打撃により、パルス状の弾性波を認めることができ、このブレーカーの打撃による音波をノイズとともに認めることができる。このことから、弾性波、音波の各波動に適切な解析範囲(時間窓)を設定することで、任意のブレーカー打撃又はその打撃群により発生する弾性波と音波を同定することが可能である。
【0018】
そこで、この測定方法では、ICレコーダ3に記録された弾性波データ及び音波データを比較し、ブレーカー1による任意の打撃掘削時点から同一時間に発生した弾性波と音波をそれぞれの波形の類似性から特定し、特定の音波から特定の弾性波の発振時刻を計測し、特定の弾性波からこの特定の弾性波の到達時刻を計測して、弾性波の伝播時間を求める。
この場合、弾性波と音波を、適切な解析範囲(時間窓)によるフィルタリングを実施した上で、次の方法により同定し、弾性波の伝播時間(t)を求める。
(1)弾性波データ及び音波データを各データに相互相関係数(コヒーレンス)を用いる方法により評価する方法(この方法を用いた弾性波速度の算出例(図7)参照)
(2)弾性波の到達遅延時間を設定して、その時の振幅の残差を求め、複数の到達遅延時間を比較して、残差が最小となるものを同一と評価する方法
また、この場合、図3又は図4に示すように、有線マイク41やワイヤレスマイクロホン送信機42をブレーカー1の打撃掘削地点から離して設置した場合は、音波の遅延が発生するので、図3又は図4に記載の式により、音速の補正(t1)を行っておく。
【0019】
そして、以上により得られた弾性波の伝播時間に基き、トンネル坑壁T2の弾性波速度(Vp)を次の式により求める。
Vp=L/(t−t1)
【0020】
以上説明したように、この地山弾性波速度測定方法によれば、ブレーカー1を含む打撃式の掘削機械を用いて地山を打撃掘削することにより発生する地山の掘削振動で地山を伝播する弾性波及び空気中を伝播する音波をそれぞれ測定するので、従来、必要とされる発破や弾性波探査用発破器を不要とすることができる。
また、この測定方法では、ブレーカー1を含む打撃式の掘削機械を用いて地山を打撃掘削することにより発生する地山の掘削振動で地山を伝播する弾性波を受振センサ及び測定器で測定し、空気中を伝播する音波をマイクロホン及び測定器で測定し、測定した弾性波及び音波から弾性波の伝播時間を求め、この伝播時間に基いて地山の弾性波速度を算出するので、原位置で、一般の土木工事に使用する汎用機械と、例えばジオフォン2、有線マイク41、ワイヤレスマイクロホン送信機42及び受信機43、ICレコーダ3などの一般的な簡単な測定機材を用いて、弾性波の測定作業を容易かつ低コストに行うことができる。また、汎用機械を用いて弾性波探査を実施するので、土木工事における日常の施工管理に活用することができる。
さらに、この測定方法では、ブレーカー1を含む打撃式の掘削機械を用いて地山を打撃掘削することにより発生する地山の掘削振動で地山を伝播する弾性波及び空気中を伝播する音波をそれぞれ測定するので、特に、トンネル工事においては、硬岩トンネル、軟岩トンネルに関らず適用することができ、また、比較的大きな起振力を得られ、弾性波測定のための測定距離及び測定深度が十分に大きくなり、地質探査を効率良く行うことができる。また、この場合、弾性波の測定作業をトンネル切T1から離れた位置で行えるので、作業を安全に行うことができる。

【符号の説明】
【0021】
T0 トンネル坑内
T1 トンネル切羽
T2 トンネル坑壁
1 ブレーカー
2 受振センサ(ジオフォン)
3 測定器(ICレコーダ)
4 マイクロホン
41 有線マイク
42 ワイヤレスマイクロホン送信機
43 ワイヤレス受信機
5 通信ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7