(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、少子高齢化が進む我が国では、2020年には4人に1人が高齢者になると予測されている。加齢とともに衰える身体機能の中でも、特に尿失禁または尿漏れに関する問題を抱える人は非常に多い。また、女性の場合、加齢とともに尿失禁または尿漏れによる悩みを抱える人が増加してくる傾向にある。従来、この解決策として、通常の生活をしている尿漏れ量の少ない人(軽失禁)には、厚手の生地に防水カバーをつけたような失禁パンツで対応してきて、尿漏れ量の多い人(軽失禁〜中失禁)には、紙オムツで対応したり紙パットをオムツカバーに付けて対応したりしてきた。この尿漏れ量の程度は、個人差が大きく、様々な商品(介護商品を含む)が市場に出回っている。
【0003】
一方、男性においては、健常者であっても、このような軽失禁よりもさらに少量の尿が滲み出る軽い症状であって、排尿後に局部(陰茎)をよく振ったにもかかわらず、パンツに局部を収納してズボン等のアウターのファスナーを閉じて、小便器から離れようと歩き始めると、じわじわとまたはだらだらと尿が滲み出ることがある。加齢が進むに従い(たとえば50歳代半ば以降)、排尿後に尿道内に残存している尿が滴下する傾向は多くなる。これは、尿道をとりかこむ球海綿体筋の収縮機能が低下することなどが原因と言われている。この排尿後滴下の程度は、尿失禁または尿漏れと同じく個人差が大きいものの、軽失禁と呼ばれる場合の尿量(5〜10ml)よりも少なく、おおよそ1〜2ml程度といわれている。
【0004】
このような排尿後滴下については、上述した女性の尿失禁および尿漏れとは異なり、その尿量の少なさ故に疾病とは言えるものではない。しかしながら、潜在者を含めて、このような排尿後滴下の症状に悩まされる健常な男性は少なくない。このような症状に悩まれる男性の多くは、たとえば、特開2011−179139号公報(特許文献1)に示すような失禁パンツを着用して対応することになる。
【0005】
この特許文献1に開示された失禁パンツの着用感は、たとえば、特開平10−183401号公報(特許文献2)に示すような着用感が良好なパンツとは大きく異なり、好ましい着用感が得られない。
このために、着用感が良好で排尿後滴下の問題を解決するためには、特許文献2に開示されたような履き心地の良いパンツに、特許文献1に開示された平面視略アーモンド形状の尿吸収シートを設ければ良いことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された失禁パンツは、その失禁用パンツ主体部に尿吸収パッドを取り付けるにあたり、尿吸収パッドはパンツ主体部の縫製の途次、前立部と左右の前身頃および後身頃との縫製後に前立部の内面に左右の前身頃間に縫着される。このように縫着してしまうと、ミシンの穿孔穴および/または縫目から尿が伝播して、失禁パンツの表側(すなわちアウターであるズボン側)へ滲み出す可能性がある。
【0008】
さらに、特許文献1に開示された平面視略アーモンド形状の尿吸収シートを特許文献2に開示されたパンツに適用すると、ミシンの穿孔穴および/または縫目の問題に加えて、着用感を向上させるための膨出部を形成する前身側股部と前身中央生地との縫合位置(特許文献2の
図1に示す接続縫着部40)が、外尿道口の近傍に位置することになり、排尿
後に尿が滲み出た場合に、この縫合位置のミシンの穿孔穴および/または縫目から尿が伝播して、パンツの表側(すなわちアウターであるズボン側)へ滲み出す可能性がある。
【0009】
このように、たとえ失禁パンツの着用感を向上させることができたとしても、排尿後滴下した尿が縫合線のミシンの穿孔穴や縫目からアウターへ滲み出す可能性がある。
本発明は、このような問題点に鑑みて開発されたもので、疾病者が着用する失禁パンツとは形態が異なり通常の履き心地の良い下着であって、かつ、排尿後滴下があったとしてもズボン等のアウターに滲み出して汚すことのない健常な男性向けの男性用下着を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る男性用下着は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明にある局面に係る男性用下着は、臀部および脇部を覆う身生地部と、腰ゴム部と、局部を収納する膨出部を備えた前立て部とが縫合された男性用下着であって、前記男性用下着を平面に載置した状態における腹側の平面視で、前記前立て部の略中央から下方へ向けて引いた直線と交錯する縫合線が視認できないことを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記身生地部の背中側股部と前記前立て部の腹側股部との間に股部用生地が配置され、前記前立て部と前記股部用生地とは一体化された生地であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記身生地部の背中側股部と前記前立て部の腹側股部との間に股部用生地が配置され、前記前立て部と前記股部用生地とは別体の生地であって、前記股部用生地は略長方形であってその短辺は前記男性用下着における太腿部の周囲長の略1/4以下であって、かつ、前記股部用生地における腹側と背中側との略中心線が、前記男性用下着における腹側と背中側との略中心線よりも背中側にあるように構成することができる。
【0012】
また、本発明に別の局面に係る男性用下着は、臀部および脇部を覆う身生地部と、腰ゴム部と、局部を収納する膨出部を備えた前立て部と、股部用生地とが縫合された男性用下着であって、前記股部用生地は略長方形であってその短辺は前記男性用下着における太腿部の周囲長の略1/4以下であって、かつ、前記股部用生地における腹側と背中側との略中心線が、前記男性用下着における腹側と背中側との略中心線よりも背中側にあることを特徴とする。
【0013】
さらに好ましくは、いずれの局面に係る男性用下着においても、前記前立て部において、肌側の反対の面が撥水加工されているように構成することができる。
さらに好ましくは、いずれの局面に係る男性用下着においても、前記前立て部は、表側前立て部と裏側前立て部とから構成され、前開きの表側開口部を形成し、前記裏側前立て部において、肌側の反対の面が撥水加工されているように構成することができる。
【0014】
さらに好ましくは、いずれの局面に係る男性用下着においても、前記男性用下着を構成する各部を縫合する糸は、防水糸であるように構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、疾病者が着用する失禁パンツとは形態が異なり通常の履き心地の良い下着であって、かつ、排尿後滴下があったとしてもズボン等のアウターに滲み出して汚すことのない男性用下着を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態として、男性用下着100を、図面に基づき詳しく説明する
。
<男性用下着の全体構成>
図1〜
図3は、本実施の形態に係る前開きタイプの男性用下着100を示す図であって、
図1は男性用下着100の概略構成を示す正面図であって、
図2は男性用下着100の背面図であって、
図3は男性用下着100を着用した状態で股下を見上げた図である。
【0018】
これらの図に示すように、この男性用下着100は、大きくは、脇部を覆う前身側脇部132および臀部を覆う後身頃134から構成される一体化身生地部130と、裾部140と、腰ゴム部150と、股部用生地160と、男性用局部を収納する膨出部を備えた前立て部120とが縫合されて構成されている。この男性用下着100を構成する各部を縫合する糸は、防水糸であることが好ましい。
【0019】
前立て部120は、表側前立て部122と裏側前立て部124との二重構造で構成され、前開きの表側開口部を形成している。裏側前立て部124において、肌側の反対の面が撥水加工されており、男性が排尿後に局部(陰茎)をこの男性用下着100に収納したときに、この男性用下着100内で滴下した尿は、肌側の面により速やかに吸収されて、撥水加工された肌側の反対の面から尿が滲み出すことを防止している。裏側前立て部124を編成する原糸として、綿等の天然繊維以外に、キュプラ、ビスコースレーヨン等の再生セルロース繊維、吸水加工されたポリエステル等の合成繊維等、吸水性を有する繊維を用いることができ、また、編地としてフライス編みやスムース編み、更には天竺編み等の緯編地や、ラッセル編み等の経編地が好適に用いられる。裏側前立て部124の肌側の反対の面に施されている撥水加工としては、シリコーン系撥水剤、フッ素系撥水剤など、通常の合成繊維の撥水剤として使用されるものを用いればよく、特に限定されない。中でも、耐久性や安全性の観点から、フッ素系撥水剤が好ましい。加工手段としては、ローラー捺染やスクリーン捺染、インクジェットプリント等の捺染手段により、撥水加工を容易に施すことができる。
【0020】
捺染による撥水加工は、裏側前立て部124の肌側の反対の面の面積に対して40%以上に施されていることが好ましい。
前立て部120が、消臭・抗菌加工されていれば、さらに好ましく、生地片に吸収された体液の臭いが消臭機能によって消臭され、長時間快適な状態を維持することができる。
例えば、特許第3787675号に開示されているように、原糸となる繊維をキトサン及び/または修飾キトサン、カルボン酸ポリマー、酸化亜鉛及びバインダー樹脂を含む処理液で処理し、これらの被覆層が形成された繊維を用いることにより、優れた消臭効果を奏し、かつ耐洗濯性(耐久性)の良好な肌着等の生地が得られる。なお、肌側の面に吸水加工を施すことも好ましい。吸水加工としては、例えばポリエステルのアルカリ減量加工や、ポリエステルポリアルキレングリコール共重合樹脂いわゆる吸水ポリエステル樹脂や、セルロース、親水シリコン等の親水性を持つ加工剤を繊維表面へ付着することなどが挙げられる。
【0021】
さらに、このように前立て部120の肌側の反対の面から尿が滲み出すことを防止するためであれば、表側前立て部122においても、このような吸水加工および/または撥水加工することも好ましい。
また、裏側前立て部124の肌側の反対の面を疎水性糸で構成することもできる。疎水性糸は特に限定されないが、ポリプロピレン糸、ポリエステル撥水加工糸、アクリル系撥水加工糸、ナイロン撥水加工糸、アセテート撥水加工糸及びエチレンビニルアルコール撥水加工糸などが好適に用いられる。
【0022】
表側前立て部122は、たとえば、先ず緯編地や経編地などの編地や、または織地などで凸状形側縁部を形成するように裁断しておいて、この側縁部を凸状曲線に沿って一体的に縫合線170にて縫合して凸状に膨出した膨出部を備えるように形成されている。これにより、腹部および/または男性用局部を過度に締め付けず、柔らかく被覆できる。
裏側前立て部124は、たとえば、一重の緯編地や経編地などの編地や、または織地などにより構成され、裏側前立て部124の身丈の長さを表側前立て部122の身丈の長さよりも短くしてあり、さらに裏側前立て部124の下縁部は、股部側に何等縫合されるこ
となく、開放状に形成して、小用時に局部を容易に取り出せるようにしてある。
【0023】
一体化身生地部130は、前身側脇部132および後身頃134を一体的に形成してなる一体化身生地部で、縫合線170により前立て部120と一体的に縫製されている。なお、本実施の形態においては、前身側脇部132と後身頃134とを一体化した身生地としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、別形状の身生地部材(たとえば、前身側脇部132と後身頃134とが別体)であっても構わない。
【0024】
裾部140は、脚部の裾周り下端部に、輪状に形成した伸縮性のある適宜な細幅生地から形成してあり、一体化身生地部130の下端部に、二重に折曲げた状態で裾周りに適宜縫合するようにしてある。
腰ゴム部150は、胴回り部に、輪状に形成した伸縮性のある適宜な細幅生地から形成してあり、一体化身生地部130、表側前立て部122および裏側前立て部124のウエスト側上端部に適宜縫合するようにしてある。
【0025】
股部用生地160は、緯編地や経編地などの編地や、または織地などにより構成された長方形状の生地であって、その前身側の縁部において表側前立て部122および前身側脇部132と縫合線180にて縫合され、その後身側の縁部において後身頃134と縫合線190にて縫合されている。なお、本発明において、前身頃(前身側脇部132)および後身頃134と別体の股部用生地160は必須の構成ではないが、股部用生地160によりシック部を形成することにより脚の動きを妨げずスムーズな動作が可能となり、脚を大きく広げるなどの動作をした場合でもパンツに裂けや破れが生じることがなく、またパンツのずり下がりも起こりにくい。
【0026】
<股部用生地の構成>
本実施の形態に係る男性用下着100は、以下のような特徴を備える股部用生地160により構成されている。この股部用生地160は略長方形であってその短辺は男性用下着100における太腿部の周囲長の略1/4以下であって、かつ、股部用生地160における腹側と背中側との略中心線が、この男性用下着100における腹側と背中側との略中心線よりも背中側にあることを特徴とする。
【0027】
図3に示すように、この男性用下着100を着用した状態で股下を見上げると、この股部用生地160の短辺は男性用下着100における太腿部の周囲長の略1/4以下である長さL(1)であって、かつ、股部用生地160における腹側と背中側との略中心線(股部用生地中心線)が、男性用下着における腹側と背中側との略中心線(下着中心線)よりも背中側にあることがわかる。このような構成によると、
図1に示すように、男性用下着100を平面に載置した状態における腹側の平面視で、前立て部120の略中央から下方へ向けて引いた直線と交錯する縫合線が視認できない。
【0028】
これに対して、比較例として、従来の男性用下着200および男性用下着300について図を用いて説明する。
図4および
図5に示す従来の男性用下着200は、脇部を覆う前身側脇部232および臀部を覆う後身頃234から構成される一体化身生地部230と、裾部140と、腰ゴム部150と、股部用生地260と、男性用局部を収納する膨出部を備えた前立て部220とが縫合されて構成されている。この男性用下着200を構成する股部用生地260は略長方形であってその短辺は男性用下着100における太腿部の周囲長の略1/4より長い略1/3程度である。
【0029】
このため、
図5に示すように、この男性用下着200を着用した状態で股下を見上げると、この股部用生地260の短辺は男性用下着100における太腿部の周囲長の略1/4より長い長さL(2)である。このような構成によると、
図4に示すように、男性用下着200を平面に載置した状態における腹側の平面視で、前立て部220の略中央から下方へ向けて引いた直線と交錯する縫合線280が視認できる。
【0030】
さらに、
図6および
図7に示す従来の別の男性用下着300は、脇部を覆う前身側脇部332および臀部を覆う後身頃334から構成される一体化身生地部330と、裾部140と、腰ゴム部150と、股部用生地360と、男性用局部を収納する膨出部を備えた前立て部320とが縫合されて構成されている。この男性用下着300を構成する股部用生
地360は略長方形であってその短辺は男性用下着100における太腿部の周囲長の略1/4以下であるが、股部用生地360における腹側と背中側との略中心線が、この男性用下着300における腹側と背中側との略中心線よりも腹側にある。
【0031】
このため、
図7に示すように、この男性用下着300を着用した状態で股下を見上げると、この股部用生地360の短辺は男性用下着300における太腿部の周囲長の略1/4以下である長さL(3)であるが、股部用生地360における腹側と背中側との略中心線(股部用生地中心線)が、男性用下着における腹側と背中側との略中心線(下着中心線)よりも腹側にあることがわかる。このような構成によると、
図6に示すように、男性用下着300を平面に載置した状態における腹側の平面視で、前立て部320の略中央から下方へ向けて引いた直線と交錯する縫合線380が視認できる。
【0032】
このように、本実施の形態に係る男性用下着100は、特徴的な形状(短辺が長さL(1))で股部用生地160を構成して、特徴的な位置関係(股部用生地中心線が下着中心線よりも背中側)で、この男性用下着100の各部に縫合することにより、縫合線180が、
図4および
図5に示す従来の男性用下着200の縫合線280ならびに
図6および
図7に示す従来の男性用下着300の縫合線380よりも前身頃側(腹側)に出ないで、約30mm程度が後身頃側(背中側)へ回り込む構成となる。これは、男性用下着100、男性用下着200および男性用下着300を平面に載置した状態における腹側の平面視で、
図1に示すように男性用下着100では、前立て部120の略中央から下方へ向けて引いた直線と交錯する縫合線180が視認できないのに対して、
図4に示すように男性用下着200では、前立て部220の略中央から下方へ向けて引いた直線と交錯する縫合線280が視認できる点、および、
図6に示すように男性用下着300では、前立て部320の略中央から下方へ向けて引いた直線と交錯する縫合線380が視認できる点で大きく異なる。
【0033】
このように本実施の形態に係る男性用下着100においては、男性が排尿後に局部をこの男性用下着100に収納したときに、尿道に残存等した尿がこの男性用下着100内で滴下して、重力に従い下方(股側)へ伝搬しても、縫合線180が後身頃側(背中側)へ回り込んでいるので、この縫合線180にまで到達することがない。このため、この縫合線180のミシンの穿孔穴および/または縫目から尿が伝播して、この男性用下着100の表側(すなわちアウターであるズボン側)へ滲み出すことがない。
【0034】
一方、比較例に係る男性用下着200、300では、尿道に残存等した尿が男性用下着200、300で滴下すると、重力従い下方(股側)へ伝搬して、縫合線280、380が後身頃側(背中側)へ回り込んでいないので、この縫合線280、380まで滴下した尿が到達する可能性がある。このため、この縫合線280、380のミシンの穿孔穴および/または縫目から尿が伝播して、この男性用下着200、300の表側(すなわちアウターであるズボン側)へ滲み出す可能性がある。
【0035】
<滴下実験による評価>
上述したような、本実施の形態に係る男性用下着100を実施例として、男性用下着300(男性用下着200でも構わない)を比較例として、滴下実験による評価を行った。以下にその評価結果を説明する。
滴下実験の方法は、穴付きトルソーに実施例に係る男性用下着100および比較例に係る男性用下着300をそれぞれ着用させて、外尿道口の位置近傍に取り付けたチューブの開放端から所定の水分量(1mlまたは2ml)を滴下した。滴下後の1分間放置して、その後、トルソーに着用された男性用下着の上に外衣を着用させ、男性用下着および外衣への水分の滲み出しを目視にて確認した。これは、排尿後、男性用下着(パンツ)に局部を収納し、外衣(ズボン)をパンツに接するように着用する(ズボン等のアウターを引き上げたり、ファスナーを閉じる)ことを模擬したことを意味する。
【0036】
なお、実施例である男性用下着100は、上述したように、裏側前立て部124において、肌側の反対の面が撥水加工されており、かつ、男性用下着100を構成する各部を縫合する糸は、防水糸を用いている。比較例である男性用下着300は、前立て部の生地は身頃の生地と同じであって吸水加工も撥水加工もされておらず、かつ、男性用下着300
を構成する各部を縫合する糸は、防水糸でない通常の糸を用いている。また、外衣としては、目視確認しやすいように、グレー色の通常のボクサーパンツをアウターの代用として採用した。
【0037】
図8の実施例に示すように、滴下量が1mlであっても2mlであっても、男性用下着100においては、白色丸印で囲んだ領域に男性用下着100の表には滲み出しているが(当然であるが男性用下着100の裏側には滴下した水分が浸透している)、外衣には滲み出していない。これは、男性用下着100内において、チューブの開放端から滴下された水分が、重力に従い下方(股側)へ伝搬しても、縫合線180が後身頃側(背中側)へ回り込んでいるために、この縫合線180まで到達することがないので、外衣に滲み出すことがない。
【0038】
一方、
図8の比較例に示すように、滴下量が1mlであっても、男性用下着300においては、男性用下着300から水分が落下している。これは、男性用下着300内において、チューブの開放端から滴下された水分が、重力に従い下方(股側)へ伝搬して、縫合線380が後身頃側(背中側)へ回り込んでいないので、この縫合線380まで到達した水分が、縫合線380のミシンの穿孔穴および/または縫目から水分が落下した。このような状態であるので、当然ながら、比較例においては外衣には水分が滲み出すことになる。
【0039】
このように、実施例に係る男性用下着100においては、滴下量を1mlから2mlへ変更しても男性用下着100内部での水分の拡散量が増えていることが確認できるのみで、外衣への滲み出しはない。一方、比較例に係る男性用下着300においては、1mlの水分を滴下した時点で(外衣を着用して確認するまでもなく)男性用下着300の縫合線380から水分が落下している。
【0040】
以上のようにして、本実施の形態に係る男性用下着100によると、股部用生地160は略長方形であってその短辺は男性用下着100における太腿部の周囲長の略1/4以下であって、かつ、股部用生地160における腹側と背中側との略中心線が、この男性用下着100における腹側と背中側との略中心線よりも背中側にあるように構成した。このため、男性が排尿後に局部をこの男性用下着100に収納したときに、尿道に残存等した尿がこの男性用下着100内で滴下して、重力に従い下方(股側)へ伝搬しても、縫合線180が後身頃側(背中側)へ回り込んでいるので、ミシンの穿孔穴および/または縫目が存在する縫合線180にまで到達することがなく、この男性用下着100の表側(すなわちアウターであるズボン側)へ滴下した尿が滲み出すことがない。
【0041】
<その他の実施の形態>
(1)上述した実施の形態に係る男性用下着100においては、前立て部120が表側前立て部122と裏側前立て部124との二重構造で構成され、前開きの表側開口部を形成していた。しかしながら、本発明は、このような表側開口部を備えない前閉じタイプであっても構わない。この場合においても、前立て部は膨出部を備えるとともに、肌側の反対の面が撥水加工されており、男性が排尿後に局部をこの男性用下着に収納したときに、この男性用下着内で滴下した尿は、肌側の面により速やかに吸収されて、撥水加工された肌側の反対の面から尿が滲み出すことを防止している。
【0042】
(2)上述した実施の形態に係る男性用下着100においては、股部用生地160が前身頃(前身側脇部132)および後身頃134と別体の生地であった。しかしながら、本発明は、股部用生地が前身頃(前身側脇部132)と一体の生地で構成されていても構わない。この場合には、そもそも股部用生地と前身頃との縫合線(
図2に示す縫合線180)が存在しないことになる。このため、男性用下着100と同じように、男性が排尿後に局部を、このような縫合線180が存在しない男性用下着に収納したときに、尿道に残存等した尿がこの男性用下着内で滴下しても、男性用下着の表側(すなわちアウターであるズボン側)へ滲み出すことがない。
【0043】
なお、このような縫合線180が存在しない男性用下着であっても、この男性用下着を着用したときには脚の動きを妨げずスムーズな動作が可能であるように構成されている。
(3)さらに、上記(2)の場合において、股部用生地が前身頃(前身側脇部132)
および後身頃134と一体の生地で構成されていても構わない。この場合には、上記(2)と同じくそもそも股部用生地と前身頃との縫合線(
図2に示す縫合線180)が存在しないことになり、加えて、股部用生地と後身頃との縫合線(
図2に示す縫合線190)が存在しないことになる。このため、男性用下着100と同じように、男性が排尿後に局部を、このような縫合線180が存在しない男性用下着に収納したときに、尿道に残存等した尿がこの男性用下着内で滴下しても、男性用下着の表側(すなわちアウターであるズボン側)へ滲み出すことがない。
【0044】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。