(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のケイ素化合物を含有するケイ酸エステル組成物であって、該全ケイ素化合物中における、下記式(1)で表されるケイ酸エステルの含有量が65質量%以上であり、下記式(2)で表されるケイ酸エステルの含有量が1.0質量%以下である、ケイ酸エステル組成物。
(R1O)4Si (1)
(R1O)2(R2O)2Si (2)
(式中、R1Oは香料1級アルコールの水酸基から水素原子を除いたアルコキシ基、R2Oは炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、複数のR1O及びR2Oは同一でも異なっていてもよい。)
複数のケイ素化合物を含有するケイ酸エステル組成物の製造方法であって、得られるケイ酸エステル組成物が、該全ケイ素化合物中における、下記式(1)で表されるケイ酸エステルの含有量が65質量%以上であり、下記式(2)で表されるケイ酸エステルの含有量が1.0質量%以下であり、
(R1O)4Si (1)
(R1O)2(R2O)2Si (2)
香料1級アルコールと、炭素数1〜3のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランと、塩基性物質とを、前記テトラアルコキシシランに対する前記香料1級アルコールのモル比が4.0〜10となるように混合して反応させると共に、生成する炭素数1〜3のアルコールを除去する工程を有する、ケイ酸エステル組成物の製造方法。
(式中、R1Oは香料1級アルコールの水酸基から水素原子を除いたアルコキシ基、R2Oは炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、複数のR1O及びR2Oは同一でも異なっていてもよい。)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ケイ酸エステル組成物]
本発明のケイ酸エステル組成物は、複数のケイ素化合物を含有するケイ酸エステル組成物であって、該全ケイ素化合物中における、下記式(1)で表されるケイ酸エステルの含有量が65質量%以上であり、下記式(2)で表されるケイ酸エステルの含有量が1.0質量%以下である、ケイ酸エステル組成物。
(R
1O)
4Si (1)
(R
1O)
2(R
2O)
2Si (2)
(式中、R
1Oは香料1級アルコールの水酸基から水素原子を除いたアルコキシ基、R
2Oは炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、複数のR
1O及びR
2Oは同一でも異なっていてもよい。)
なお、本発明のケイ酸エステル組成物は、上記の式(1)及び式(2)のケイ酸エステルの他に、後述する式(3)〜(5)で表されるケイ酸エステル等を含有していてもよい。
また、本発明において、香料1級アルコールとは、「合成香料 化学と商品知識 増補改訂版」(化学工業日報社、2005年発行)又は「香料と調香の基礎知識」(産業図書、第3版2000年発行)に記載のアルコールからなる香料であって、炭素数4以上の1級アルコールを意味する。
【0010】
本発明のケイ酸エステル組成物が、徐放性に優れ、かつ保存時に色調の変化の少ない理由は明らかではないが、次のように考えられる。
すなわち、式(1)で表されるケイ酸エステルは、4つのアルコキシ基の総てが香料1級アルコールの水酸基から水素原子を除いたアルコキシ基であり、当該アルコキシ基の炭素数が大きい。そのため、式(1)で表されるケイ酸エステルは、安定性が高く、徐放性に優れ、かつ保存時に色調の変化が少ない。
一方、4つのアルコキシ基の少なくとも1つにR
2Oで表される炭素数1〜3のアルコキシ基を有するケイ酸エステルは、当該アルコキシ基の炭素数が小さいために親水性が高く、加水分解を受けやすい。そのため、香料1級アルコールが脱離しやすく、酸化を受けるなどして保存時に色調が変化するものと考えられる。
なかでも、式(2)で表されるケイ酸エステルは、R
2Oで表される炭素数1〜3のアルコキシ基とR
1Oで表される香料1級アルコールの水酸基から水素原子を除いたアルコキシ基の両方を同じ比率で有するため、加水分解を受けたものが、ケイ酸エステル組成物全体に再分散しやすく、ケイ酸エステル組成物全体の加水分解や酸化等を促進するものと考えられる。
本発明のケイ酸エステル組成物は、上記のとおり加水分解に対して安定な式(1)で表されるケイ酸エステルの全ケイ素化合物中における含有量が65質量%以上と多いため、加水分解を受けやすい条件や製品形態に使用した場合においても長期に亘って香料1級アルコールを徐々に放出し続け、香料前駆体等として優れているものと考えられる。
また、本発明のケイ酸エステル組成物は、式(2)で表されるケイ酸エステルの全ケイ素化合物中における含有量が1.0質量%以下と少ないため、加水分解や酸化等が促進されにくく、色調が維持されるものと考えられる。
以下、本発明に用いられる各成分等について説明する。
【0011】
<式(1)で表されるケイ酸エステル>
本発明のケイ酸エステル組成物は、保存時における色調の変化を抑制し、香りを長期間にわたり持続させる(徐放性を向上させる)観点、及び製造容易性の観点から、式(1)で表されるケイ酸エステルの含有量は、該全ケイ素化合物中、65質量%以上である。当該観点から、当該含有量は、好ましくは75質量%以上であり、より好ましくは77質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、また、好ましくは75〜90質量%であり、より好ましくは75〜85質量%であり、更に好ましくは77〜85質量%である。
【0012】
R
1Oは、香りを長期間にわたり持続させる観点から、香料1級アルコール、すなわち香料として用いられる1級アルコール(R
1OH)の水酸基から水素原子を除いたアルコキシ基である。
なお、ケイ酸エステルに反応後のR
1Oは、原料である香料1級アルコール(R
1OH)の水酸基から水素原子を除いた構造と同一の構造のほかに、R
1が不飽和結合を有する場合には当該不飽和結合が異性化した構造も含まれる。
R
1OHで表される香料1級アルコールとしては、色調の変化を抑制し、拙速なケイ酸エステル化合物の分解を抑制する観点から、好ましくは炭素数6以上であり、より好ましくは炭素数8以上であり、更に好ましくは炭素数10以上である。また、色調の変化を抑制し、香りを長期間にわたり持続させる観点から、炭素数15以下が好ましく、炭素数12以下がより好ましい。色調の変化を抑制し、香りを長期間にわたり持続させる観点から、炭素数6〜15が好ましく、炭素数8〜15がより好ましく、炭素数10〜15が更に好ましく、炭素数10〜12がより更に好ましく、炭素数10のテルペン系香料アルコールがより更に好ましい。
かかる1級アルコールの具体例としては、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、テトラヒドロゲラニオール、フェニルヘキサノール、サンダルマイソールコア等が挙げられ、これらのなかでもフローラルの香気を有する香料アルコールが好ましく、バラ様の香気を有する香料アルコールがより好ましい。なかでも、色調の変化を抑制し、香りを長期間にわたり持続させる観点から、好ましくはゲラニオール、ネロール、シトロネロールであり、ゲラニオール、ネロールがより好ましく、ゲラニオールが更に好ましい。
【0013】
<式(2)で表されるケイ酸エステル>
本発明のケイ酸エステル組成物は、色調の変化を抑制し、香りを長期間にわたり持続させる観点から、式(2)で表されるケイ酸エステルの含有量が、該全ケイ素化合物中、1.0質量%以下であり、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.7質量%以下である。また、色調の変化を抑制する観点及び製造の容易性の観点から、当該含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上である。上記観点から、当該含有量は、好ましくは0.1〜0.8質量%であり、より好ましくは0.2〜0.7質量%であり、更に好ましくは0.5〜0.7質量%である。
式(2)中のR
1Oは、式(1)中のR
1Oと同じであり、好ましい態様も同じである。
R
2Oは、R
1OHで示される香料1級アルコールの香調を阻害しない観点から、炭素数1〜3のアルコキシ基であり、好ましくはエトキシ基である。
【0014】
<任意成分>
本発明のケイ酸エステル組成物は、他の任意成分を含んでいてもよい。次に各種任意成分について説明する。
【0015】
(式(3)で表されるケイ酸エステル)
本発明のケイ酸エステル組成物は、下記式(3)で表されるケイ酸エステルを含有してもよい。
(R
1O)
1(R
2O)
3Si (3)
(式中、R
1Oは香料1級アルコールから水素原子を除いたアルコキシ基、R
2Oは炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、複数のR
1O及びR
2Oは同一でも異なっていてもよい。)
式(3)で表されるケイ酸エステルは、炭素数が小さく加水分解を受け易いR
2Oのアルコキシ基を有するため、式(1)で表されるケイ酸エステルと比べて徐放性に劣り、色調の変化が大きい。このため、全ケイ素化合物中における、式(3)で表されるケイ酸エステルの含有量は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。
全ケイ素化合物中における、式(3)で表されるケイ酸エステル及び式(2)で表されるケイ酸エステルの合計量は、徐放性の向上及び色調の変化の低減の観点から、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは0.8質量%以下である。
【0016】
(式(4)で表されるケイ酸エステル)
本発明のケイ酸エステル組成物は、下記式(4)で表されるケイ酸エステルを含有してもよい。
(R
1O)
3(R
2O)
1Si (4)
(式中、R
1Oは香料1級アルコールから水素原子を除いたアルコキシ基、R
2Oは炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、複数のR
1O及びR
2Oは同一でも異なっていてもよい。)
式(4)で表されるケイ酸エステルは、炭素数が小さく加水分解を受け易いR
2Oのアルコキシ基を有するため、式(1)で表されるケイ酸エステルと比べて徐放性に劣り、色調の変化が大きい。このため、全ケイ素化合物中における、式(3)で表されるケイ酸エステルの含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下である。また、製造の容易性の観点、及び相対的に式(2)及び式(3)で表されるケイ酸エステルの含有量を低減する観点からは、当該含有量は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上である。これらの観点から、当該含有量は、1〜20質量%が好ましく、2〜13質量%がより好ましい。
全ケイ素化合物中における、式(4)で表されるケイ酸エステル及び式(1)で表されるケイ酸エステルの合計量は、徐放性の向上及び色調の変化の低減の観点から、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上であり、更に好ましくは88質量%以上であり、より更に好ましくは90質量%以上である。
【0017】
(式(5)で表されるケイ酸エステル)
本発明のケイ酸エステル組成物は、下記式(5)で表されるケイ酸エステルを含有してもよい。
(RO)
3SiOSi(RO)
3 (5)
(式中、ROはR
1O及びR
2Oのいずれかを示し、複数のROは同一でも異なっていてもよい。)
相対的に式(1)で表されるケイ酸エステルの含有量を多くする観点及び製造容易性の観点から、全ケイ素化合物中における、式(5)で表されるケイ酸エステルの含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは8.7質量%以下であり、また、3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましく、7〜8.7質量%が更に好ましい。
【0018】
(R
1OHで表される香料1級アルコール)
本発明のケイ酸エステル組成物は、R
1OHで表される香料1級アルコールを含有してもよい。
ここで、R
1OHで表されるアルコールは、式(1)中のR
1Oで表されるアルコキシ基において水素原子を付加した香料1級アルコールと同じであり、好ましい態様も同じである。
色調の変化を抑制する観点及び製造容易性の観点から、R
1OHで表されるアルコールの含有量は、前記ケイ素化合物100質量部に対して、好ましくは3質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上であり、更に好ましくは8質量部以上であり、また、好ましくは12質量部以下であり、また、好ましくは5〜12質量部であり、より好ましくは8〜12質量部である。
【0019】
(各種成分の含有量)
本発明のケイ酸エステル組成物中における、前記式(1)〜(5)で表されるケイ酸エステル及び前記R
1OHで表される香料1級アルコールの合計含有量は、徐放性の向上及び色調の維持の観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
本発明のケイ酸エステル組成物中における、前記式(1)〜(5)で表されるケイ酸エステルの合計含有量は、徐放性の向上及び色調の維持の観点から、好ましくは88質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92質量%以下である。
本発明のケイ素化合物の総量中における、前記式(1)〜(5)で表されるケイ酸エステルの含有量は、徐放性の向上及び色調の維持の観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
【0020】
[ケイ酸エステル組成物の製造方法]
本発明のケイ酸エステル組成物の製造方法には、特に制限はないが、以下の方法によって製造することが好ましい。
すなわち、本発明の好ましいケイ酸エステル組成物の製造方法は、香料1級アルコールと、炭素数1〜3のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランと、塩基性物質とを、前記テトラアルコキシシランに対する前記香料1級アルコールのモル比が3.7〜10となるように混合して反応させると共に、生成する炭素数1〜3のアルコールを除去する工程を有する。
以下、本方法について説明する。
【0021】
<香料1級アルコールとテトラアルコキシシランとのモル比>
本方法においては、ケイ酸エステル組成物を目的の組成で効率よく得る観点、及び色調の変化を低減する観点から、香料1級アルコールと炭素数1〜3のアルキル基を有するテトラアルコキシシランとのモル比(香料1級アルコール/テトラアルコキシシラン)を3.7〜10で混合する。当該モル比(香料1級アルコール/テトラアルコキシシラン)は、当該観点から、好ましくは4.0以上であり、より好ましくは4.1以上であり、更に好ましくは4.2以上であり、また、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは4.5以下であり、更に好ましくは4.4以下であり、また、好ましくは4.0〜5.0であり、より好ましくは4.1〜4.5であり、更に好ましくは4.2〜4.4である。
【0022】
香料1級アルコールを2種類以上用いる場合は、これら香料1級アルコールの合計が上記の数値範囲内になるように混合することが好ましい。
【0023】
<テトラアルコキシシラン>
炭素数1〜3のアルキル基を有するテトラアルコキシシランのアルコキシ基は、本発明のケイ酸エステル組成物を目的の組成で効率よく得る観点から、炭素数1〜3であり、炭素数1〜2がより好ましい。具体的にはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が好ましく、エトキシ基がより好ましい。
【0024】
<香料1級アルコール>
香料1級アルコールとしては、前述した、R
1OHで表される香料1級アルコールが好適に用いられ、好ましい態様も前述のとおりである。
【0025】
<塩基性物質>
本方法はエステル交換反応であるため、本発明のケイ酸エステル組成物を目的の組成で効率よく得る観点から、触媒として塩基性物質を用いる。
塩基性物質としては、反応性と得られる香料放出剤の色調の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド等のアルカリ金属の炭素数1〜3のアルコキシド等を好適に用いることができ、アルカリ金属の炭素数1〜3のアルコキシドを用いることがより好ましく、ナトリウムエトキシドを用いることが更に好ましい。
塩基性物質の使用量は、ケイ酸エステル組成物を目的の組成で効率よく得る観点及び得られる香料放出剤の色調の観点から、前記テトラアルコキシシラン100モル部に対して、好ましくは0.05モル部以上、より好ましくは0.1モル部以上、更に好ましくは0.15モル部以上であり、また、好ましくは0.5モル部以下、より好ましくは0.3モル部以下、更に好ましくは0.2モル部以下であり、また、好ましくは0.05〜0.5モル部、より好ましくは0.1〜0.3モル部、更に好ましくは0.15〜0.2モル部である。
【0026】
<反応条件>
エステル交換反応の反応温度は、原料の有効利用の観点から、炭素数1〜3のアルキル基を有するテトラアルコキシシラン及びR
1OHで示される香料1級アルコールの沸点以下が好ましい。具体的には、反応性の向上の観点から、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、90℃以上が更に好ましく、110℃以上がより更に好ましい。また、色調の観点から、200℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましく、180℃以下が更に好ましく、170℃以下がより更に好ましい。これらの観点から、30〜200℃が好ましく、50〜190℃がより好ましく、90℃〜180℃が更により好ましく、110℃〜170℃がより更に好ましい。
【0027】
エステル交換反応は、大気圧又は減圧下で行うことが好ましく、反応を速やかに進行させる観点から、減圧下で行うことが好ましい。減圧温度は反応温度にもよるが、炭素数1〜3のアルキル基を有するテトラアルコキシシラン及び香料1級アルコールの沸点以下で行うことが好ましい。
また、エステル交換反応では、反応の進行と共に炭素数1〜3のアルコールが生成するが、収率の向上の観点から、生成する炭素数1〜3のアルコールを蒸留により除去しながら反応を行う。その際、アルコールの除去効率を向上させる観点からも、減圧下でエステル交換反応を行うことが好ましい。
具体的には、エステル交換反応時の圧力は、好ましくは100kPa以下、より好ましくは50kPa以下、更に好ましくは10kPa以下であり、また、好ましくは0.01kPa以上、より好ましくは0.1kPa以上、更に好ましくは1kPa以上であり、また、好ましくは0.01〜100kPa、より好ましくは0.1〜50kPa、更に好ましくは1〜10kPaである。反応は反応初期から減圧下で行っても、途中から減圧下で行っても良い。
【0028】
[香料前駆体組成物]
本発明の香料前駆体組成物は、本発明のケイ酸エステル組成物を含んでおり、R
1OHで示される香料1級アルコールを加水分解により徐放する組成物である。
本発明の香料前駆体組成物は、ケイ酸エステル組成物以外に、油剤、界面活性剤、有機溶媒を含有してもよい。
本発明の香料前駆体組成物は、様々な製品に配合することができるため、R
1OHで示される香料1級アルコールを長期に亘り安定に徐放でき、長期に亘りR
1OHで示される香料1級アルコールに由来する香気を発生させることができる。
本発明の香料前駆体組成物を配合することができる製品としては、油系消臭芳香剤組成物、粉末洗剤、固形石鹸、入浴剤、オムツ等の衛生品、エアゾール型等の消臭剤組成物等、非水溶液系製品が挙げられる。
更に、本発明の香料前駆体組成物は、水溶液系での保存安定性に優れるため、香水、コロン、水系消臭芳香剤をはじめ、食器用洗剤、液体石鹸・化粧水等の各種化粧用品、シャンプー・リンス・コンディショナー・スタイリング剤等の頭髪用製品、液体入浴剤等に使用することができる。
本発明のケイ酸エステル組成物又は香料前駆体組成物を用いて芳香剤組成物を構成する場合、芳香剤組成物中の式(1)で表されるケイ酸エステルの含有量は0.001〜90質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましい。
また、本発明のケイ酸エステル組成物又は香料前駆体組成物を用いて消臭剤組成物を構成する場合には、消臭剤組成物中の式(1)で表されるケイ酸エステルの含有量は0.0001〜10質量%が好ましく、0.001〜5質量%がより好ましい。
なお、本発明の香料前駆体組成物は本発明のケイ酸エステル組成物を含有するものであるが、このケイ酸エステル組成物は前述の本願発明の製造方法により製造したものであることが好ましい。
【0029】
[繊維処理剤]
本発明の繊維処理剤は、本発明のケイ酸エステル組成物を含んでおり、ケイ素化合物の加水分解により香料1級アルコールを徐放するものである。このように、本発明の繊維処理剤は、本発明のケイ酸エステル組成物を含むため、水系製品に配合した場合にも拙速な加水分解を抑制することができ、実際の使用態様において、香料1級アルコールを長期に亘り安定に徐放することが可能である。特に、本発明の繊維処理剤は、衣料用洗浄剤及び柔軟仕上げ剤等の繊維処理剤用途において有用である。
【0030】
本発明のケイ酸エステル組成物を用いて衣料用洗浄剤組成物や柔軟仕上げ剤組成物等の繊維処理剤組成物を構成する場合、繊維処理剤組成物中の式(1)で表されるケイ酸エステルの含有量は0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
【0031】
上述した実施形態に関し、本発明は以下の組成物、剤及び製造方法を開示する。
<1>複数のケイ素化合物を含有するケイ酸エステル組成物であって、該全ケイ素化合物中における、下記式(1)で表されるケイ酸エステルの含有量が65質量%以上であり、下記式(2)で表されるケイ酸エステルの含有量が1.0質量%以下である、ケイ酸エステル組成物。
(R
1O)
4Si (1)
(R
1O)
2(R
2O)
2Si (2)
(式中、R
1Oは香料1級アルコールの水酸基から水素原子を除いたアルコキシ基、R
2Oは炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、複数のR
1O及びR
2Oは同一でも異なっていてもよい。)
【0032】
<2>R
1OHで表されるアルコールを、前記全ケイ素化合物100質量部に対して、3質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、また、好ましくは12質量部以下、また、好ましくは5〜12質量部、より好ましくは8〜12質量部含有する、<1>に記載のケイ酸エステル組成物。
<3>式(1)及び(2)におけるR
1Oで表されるアルコキシ基は、好ましくは炭素数6以上であり、より好ましくは炭素数8以上であり、更に好ましくは炭素数10以上であり、また、好ましくは炭素数15以下であり、より好ましくは炭素数12以下であり、また、好ましくは炭素数6〜15であり、より好ましくは炭素数8〜15であり、更に好ましくは炭素数10〜15であり、更に好ましくは炭素数10〜12である、<1>又は<2>に記載のケイ酸エステル組成物。
<4>R
1Oで表されるアルコキシ基が、テルペン系香料アルコールの水酸基から水素原子を除いたアルコキシ基である、<1>〜<3>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物。
<5>R
1Oで表されるアルコキシ基が、ゲラニオールの水酸基から水素原子を除いたアルコキシ基である、<1>〜<4>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物。
【0033】
<6>式(2)で表されるケイ酸エステルの含有量が、該全ケイ素化合物中、1.0質量%以下であり、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.7質量%以下であり、また、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは0.1〜0.8質量%であり、より好ましくは0.2〜0.7質量%であり、更に好ましくは0.5〜0.7質量%である、<1>〜<5>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物。
<7>下記式(3)で表されるケイ酸エステルの含有量が、全ケイ素化合物中、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である、<1>〜<6>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物。
(R
1O)
1(R
2O)
3Si (3)
(式中、R
1Oは香料1級アルコールから水素原子を除いたアルコキシ基、R
2Oは炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、複数のR
1O及びR
2Oは同一でも異なっていてもよい。)
<8>下記式(3)で表されるケイ酸エステル及び式(2)で表されるケイ酸エステルの合計量は、全ケイ素化合物中、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは0.8質量%以下である、<1>〜<7>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物。
(R
1O)
1(R
2O)
3Si (3)
(式中、R
1Oは香料1級アルコールから水素原子を除いたアルコキシ基、R
2Oは炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、複数のR
1O及びR
2Oは同一でも異なっていてもよい。)
<9>下記式(4)で表されるケイ酸エステルの含有量は、全ケイ素化合物中、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは13質量%以下であり、また、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、また、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは2〜13質量%ある、<1>〜<8>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物。
(R
1O)
3(R
2O)
1Si (4)
(式中、R
1Oは香料1級アルコールから水素原子を除いたアルコキシ基、R
2Oは炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、複数のR
1O及びR
2Oは同一でも異なっていてもよい。)
<10>全ケイ素化合物中における、式(4)で表されるケイ酸エステル及び式(1)で表されるケイ酸エステルの合計量は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上であり、更に好ましくは88質量%以上であり、より更に好ましくは90質量%以上である、<1>〜<9>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物。
(R
1O)
3(R
2O)
1Si (4)
(式中、R
1Oは香料1級アルコールから水素原子を除いたアルコキシ基、R
2Oは炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、複数のR
1O及びR
2Oは同一でも異なっていてもよい。)
【0034】
<11>全ケイ素化合物中における、式(5)で表されるケイ酸エステルの含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは8.7質量%以下であり、また、好ましくは3〜20質量%であり、より好ましくは5〜15質量%であり、更に好ましくは7〜8.7質量%である、<1>〜<10>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物。
(RO)
3SiOSi(RO)
3 (5)
(式中、ROはR
1O及びR
2Oのいずれかを示し、複数のROは同一でも異なっていてもよい。)
<12>ケイ酸エステル組成物中における、式(1)〜(5)で表されるケイ酸エステルの合計量は、好ましくは88質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92質量%以下である、<1>〜<11>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物。
<13>ケイ素化合物の総量中における、式(1)〜(5)で表されるケイ酸エステルの合計量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは100質量%である、<1>〜<12>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物。
<14><1>〜<13>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物を含んでおり、前記ケイ素化合物の加水分解により香料1級アルコールを徐放する、香料前駆体組成物。
<15><1>〜<13>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物を含んでおり、前記ケイ素化合物の加水分解により香料1級アルコールを徐放する、繊維処理剤。
【0035】
<16>複数のケイ素化合物を含有するケイ酸エステル組成物の製造方法であって、得られるケイ酸エステル組成物が、該全ケイ素化合物中における、下記式(1)で表されるケイ酸エステルの含有量が65質量%以上であり、下記式(2)で表されるケイ酸エステルの含有量が1.0質量%以下であり、
(R
1O)
4Si (1)
(R
1O)
2(R
2O)
2Si (2)
香料1級アルコールと、炭素数1〜3のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランと、塩基性物質とを、前記テトラアルコキシシランに対する前記香料1級アルコールのモル比が3.7〜10となるように混合して反応させると共に、生成する炭素数1〜3のアルコールを除去する工程を有する、ケイ酸エステル組成物の製造方法。
(式中、R
1Oは香料1級アルコールの水酸基から水素原子を除いたアルコキシ基、R
2Oは炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、複数のR
1O及びR
2Oは同一でも異なっていてもよい。)
【0036】
<17>香料1級アルコールと炭素数1〜3のアルキル基を有するテトラアルコキシシランとのモル比(香料1級アルコール/テトラアルコキシシラン)は、好ましくは4.0以上であり、より好ましくは4.1以上であり、更に好ましくは4.2以上であり、また、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは4.5以下であり、更に好ましくは4.4以下であり、また、好ましくは4.0〜5.0であり、より好ましくは4.1〜4.5であり、更に好ましくは4.2〜4.4である、<16>に記載のケイ酸エステル組成物の製造方法。
<18>炭素数1〜3のアルキル基を有するテトラアルコキシシランのアルコキシ基は、炭素数1〜3であり、好ましくは炭素数1〜2であり、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、及びイソプロポキシ基の少なくとも1種であり、好ましくはメトキシ基及びエトキシ基の少なくとも1種であり、更に好ましくはエトキシ基である、<16>又は<17>に記載のケイ酸エステル組成物の製造方法。
<19>塩基性物質は、水酸化ナトリウム、アルカリ金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、及びアルカリ金属の炭素数1〜3のアルコキシドの少なくとも1種であり、好ましくはアルカリ金属の炭素数1〜3のアルコキシドであり、より好ましくはナトリウムエトキシドである、<16>〜<18>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物の製造方法。
<20>塩基性物質の使用量は、前記テトラアルコキシシラン100モル部に対して、好ましくは0.05モル部以上、より好ましくは0.1モル部以上、更に好ましくは0.15モル部以上であり、また、好ましくは0.5モル部以下、より好ましくは0.3モル部以下、更に好ましくは0.2モル部以下であり、また、好ましくは0.05〜0.5モル部、より好ましくは0.1〜0.3モル部、更に好ましくは0.15〜0.2モル部である、<16>〜<19>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物の製造方法。
【0037】
<21>エステル交換反応の反応温度は、炭素数1〜3のアルキル基を有するテトラアルコキシシラン及びR
1OHで示される香料1級アルコールの沸点以下であり、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは90℃以上、更に好ましくは110℃以上であり、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、更に好ましくは180℃以下、更に好ましくは170℃以下であり、また、好ましくは30〜200℃、より好ましくは50〜190℃、更に好ましくは90℃〜180℃、更に好ましくは110℃〜170℃である、<16>〜<20>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物の製造方法。
<22>エステル交換反応時の圧力は、好ましくは100kPa以下、より好ましくは50kPa以下、更に好ましくは10kPa以下であり、また、好ましくは0.01kPa以上、より好ましくは0.1kPa以上、更に好ましくは1kPa以上であり、また、好ましくは0.01〜100kPa、より好ましくは0.1〜50kPa、更に好ましくは1〜10kPaである、<16>〜<21>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物の製造方法。
<23>エステル交換反応時の減圧温度は、炭素数1〜3のアルキル基を有するテトラアルコキシシラン及び香料1級アルコールの沸点以下である、<22>に記載のケイ酸エステル組成物の製造方法。
<24><16>〜<23>のいずれかに記載のケイ酸エステル組成物の製造方法で得られたケイ酸エステル組成物を含有する香料前駆体。
【実施例】
【0038】
[実施例1〜4及び比較例1〜4]
<ケイ酸エステル組成物の製造>
実施例1
(式(1)で表されるケイ酸エステルを含むケイ酸エステル組成物の合成)
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン20.83g(0.10mol)、ゲラニオール64.79g(0.42mol)、5.17%ナトリウムエトキシドエタノール溶液0.24g(0.185mmol)を入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら120℃で2時間攪拌した。その後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら120℃でさらに3時間攪拌した。その後、冷却し、圧力を大気圧とした後、生成物を濾過し、式(1)で表されるケイ酸エステルを含む68.18gの黄色油状物を得た。得られた油状物をガスクロマトグラフィーにより分析を行った。表1に組成を示す。
【0039】
実施例2
(式(1)で表されるケイ酸エステルを含むケイ酸エステル組成物の合成)
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン20.83g(0.10mol)、ゲラニオール64.79g(0.42mol)、5.17%ナトリウムエトキシドエタノール溶液0.24g(0.185mmol)を入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら120℃で2時間攪拌した。その後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら120℃でさらに3時間攪拌した。その後、槽内の圧力を徐々に4kPaまで下げ、エタノールを留出させながら120℃でさらに3時間攪拌した。その後、冷却し、圧力を大気圧とした後、生成物を濾過し、式(1)で表されるケイ酸エステルを含む67.93gの黄色油状物を得た。得られた油状物をガスクロマトグラフィーにより分析を行った。表1に組成を示す。
【0040】
実施例3
(式(1)で表されるケイ酸エステルを含むケイ酸エステル組成物の合成)
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン20.83g(0.10mol)、ゲラニオール64.79g(0.42mol)、5.17%ナトリウムエトキシドエタノール溶液0.24g(0.185mmol)を入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら130℃で攪拌した。2時間攪拌後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら130℃でさらに2時間攪拌し、その後、槽内の圧力を徐々に4kPaまで下げ、エタノールを留出させながら130℃でさらに2時間攪拌した。その後、槽内の圧力を0.1kPaまで下げ、エタノール及びゲラニオールを留出させながら130℃でさらに1時間攪拌した。その後、冷却し、圧力を大気圧とした後、生成物を濾過し、式(1)で表されるケイ酸エステルを含む61.78gの黄色油状物を得た。得られた油状物をガスクロマトグラフィーにより分析を行った。表1に組成を示す。
【0041】
実施例4
実施例1で得られたケイ酸エステル組成物9.4gと比較例1で得られたケイ酸エステル組成物0.6gを混合し、黄色油状物10.0gを得た。得られた油状物をガスクロマトグラフィーにより分析を行った。表1に組成を示す。
【0042】
比較例1
(式(1)で表されるケイ酸エステルを含むケイ酸エステル組成物の合成)
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン20.83g(0.10mol)、ゲラニオール55.53g(0.36mol)、5.17%ナトリウムエトキシドエタノール溶液0.24g(0.185mmol)を入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら120℃で攪拌した。2時間攪拌後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら120℃でさらに2時間攪拌した。その後、冷却し、圧力を大気圧とした後、生成物を濾過し、式(1)で表されるケイ酸エステルを含む60.03gの黄色油状物を得た。得られた油状物をガスクロマトグラフィーにより分析を行った。表1に組成を示す。
【0043】
比較例2
(式(1)で表されるケイ酸エステルを含むケイ酸エステル組成物の合成)
比較例1において、5.17%ナトリウムエトキシドエタノール溶液0.24g(0.185mmol)に変えて2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.36g(0.185mmol)を用いた以外は比較例1と同様にして、式(1)で表されるケイ酸エステルを含む59.25gの黄色油状物を得た。得られた油状物をガスクロマトグラフィーにより分析を行った。表1に組成を示す。
【0044】
比較例3
(式(1)で表されるケイ酸エステルを含むケイ酸エステル組成物の合成)
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン20.83g(0.10mol)、ゲラニオール58.62g(0.38mol)、5.17%ナトリウムエトキシドエタノール溶液0.24g(0.185mmol)を入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら120℃で攪拌した。2時間攪拌後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら120℃でさらに2時間攪拌した。その後、槽内の圧力を徐々に4kPaまで下げ、エタノールを留出させながら130℃でさらに2時間攪拌した。その後、冷却し、圧力を大気圧とした後、生成物を濾過し、式(1)で表されるケイ酸エステルを含む61.74gの黄色油状物を得た。得られた油状物をガスクロマトグラフィーにより分析を行った。表1に組成を示す。
【0045】
比較例4
実施例1で得られたケイ酸エステル組成物7.8gと比較例1で得られたケイ酸エステル組成物2.2gを混合し、黄色油状物10.0gを得た。得られた油状物をガスクロマトグラフィーにより分析を行った。表1に組成を示す。
【0046】
<色調保存性評価>
(株)マルエム製スクリュー管No.7に実施例及び比較例で得られたケイ酸エステル組成物を各々10g入れて密栓し、50℃の恒温槽に4日間保管した。保管した前後の色調の測定を次の方法で目視にて行った。ガードナー比色計「3000Comparator」(Lavibond製)を用い、ガードナー色数の1目盛りを4段階に細分化し、0.25を最小単位として測定した。保管した前後でのガードナー色数の値の差が小さい方が色調保存性に優れる。
【0047】
【表1】
【0048】
[実施例5及び比較例5]
<繊維処理剤の製造>
実施例5として実施例1で得られたケイ酸エステル組成物を、また比較例5としてゲラニオールを、表2に示す組成の未賦香液体柔軟仕上げ剤A 100質量部に対して、それぞれゲラニオール換算で0.5質量部になるように50mLのスクリュー管((株)マルエム製、No.7)に入れ、50℃加熱後冷却を行うことにより、繊維処理剤である柔軟仕上げ剤組成物を調製した。
【0049】
【表2】
【0050】
<香りの持続性評価>
あらかじめ、市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製、商品名「アタック」)を用いて、木綿タオル24枚を(株)日立製作所製の全自動洗濯機、型番「NW−6CY」で5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって、過分の薬剤を除去した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L使用、水温20℃、洗浄10分、ため濯ぎ2回)。
【0051】
National製電気バケツ、型番「N−BK2−A」に、5Lの水道水を注水し、ここに柔軟仕上げ剤組成物(調製後40℃で2週間保存したもの)を10g/衣料1.0kgとなるように溶解(処理浴の調製)させ、1分後に上述の方法で前処理を行った2枚の木綿タオルを5分間浸漬処理した。その後、この2枚の木綿タオルをNational製電気洗濯機、型番「NA−35」に移して3分間脱水処理を行った。脱水処理後、20℃の室内に放置して1晩乾燥させ、乾燥後のタオルを20℃の室内に1週間放置(吊し乾燥)した。
【0052】
脱水処理直後、1日後、7日後のタオルについて、ゲラニオールの香り強度を専門パネラー4人により下記基準で官能評価を行い平均値を求めた。なお、1日後及び7日後の評価においては、乾燥状態にあるタオルと、下記方法による湿潤処理(湿潤後1分後)後のタオルの両方について官能評価を行った。結果を表3に示す。
<湿潤処理>
リセッシュ(商品名、花王(株)製品)で使用されているトリガー容器(ポリエチレン製のスプレー容器であって、容器内の溶液を霧状に噴射することができるもの)に蒸留水を充填し、タオルより30cmほど離して水重量1.4g噴射することで湿潤処理を行った。評価は、蒸留水で湿潤させてから1分経過した後に、専門パネラー4人により以下の基準で官能評価を行い、平均値を求めた。
【0053】
評価基準
5:非常ににおいが強い
4:かなりにおいが強い
3:においが強い
2:においがする(認知閾値)
1:微かににおいがする(検知閾値)
0:においがしない
【0054】
【表3】
【0055】
表1及び3から明らかなように、本発明のケイ酸エステル組成物は、長期保存時の色調の変化が少なく、長期に亘り安定に香料を徐放させることができることから、柔軟仕上げ剤のような製品における香料前駆体として有用である。