(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131049
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】自動車のエンジンのためのEGR回路の制御方法
(51)【国際特許分類】
F02M 26/06 20160101AFI20170508BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20170508BHJP
F02D 21/08 20060101ALI20170508BHJP
F02M 26/51 20160101ALI20170508BHJP
F16K 11/18 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
F02M26/06 331
F02D9/02 S
F02D21/08 301A
F02M26/51
F16K11/18 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-545340(P2012-545340)
(86)(22)【出願日】2010年12月22日
(65)【公表番号】特表2013-515194(P2013-515194A)
(43)【公表日】2013年5月2日
(86)【国際出願番号】EP2010070595
(87)【国際公開番号】WO2011076901
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年11月29日
【審判番号】不服2015-19036(P2015-19036/J1)
【審判請求日】2015年10月22日
(31)【優先権主張番号】0906248
(32)【優先日】2009年12月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508021716
【氏名又は名称】ヴァレオ システム ドゥ コントロール モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー オデブール
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン アデノ
【合議体】
【審判長】
伊藤 元人
【審判官】
中村 達之
【審判官】
槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/106726(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第1136688(EP,A2)
【文献】
欧州特許出願公開第1103715(EP,A1)
【文献】
特開平8−270508(JP,A)
【文献】
特開2006−299934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の内燃エンジン(M)のための排気ガス再循環回路(2c)を制御する方法であって、前記内燃エンジン(M)は、空気吸入回路(2a)と、前記排気ガス再循環回路(2c)、前記排気ガス再循環回路(2c)の上流の空気の流量を調整するための第1の弁体(15)、および前記排気ガス再循環回路(2c)内の再循環排気ガスの流量を調整するための第2の弁体(16)を介して、前記空気吸入回路(2a)に接続されている排気ガス排出回路(2b)とに接続される方法において、
a)前記第1の弁体(15)を開いたまま、角度が0°の閉位置から開く前記第2の弁体(16)を徐々に開いていくステップと、
b)前記第2の弁体(16)が、25〜35°の範囲の角度だけ開いたときに、前記第2の弁体(16)を徐々に開いていくことと並行して、前記第1の弁体(15)を徐々に閉じていくステップとを含み、
EGR率の曲線が顕著な鈍化を伴うことなく一定に増加している範囲に対するEGRガス用の弁体の開き角度の範囲において、前記EGR率の曲線の二次微分係数は、実質的に0または正であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2の弁体(16)を徐々に開いていく前記ステップは、前記第2の弁体(16)の開き角度が65〜85°の範囲に達したときに中断され、そのとき、前記第1の弁体(15)を完全に閉じる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の弁体(15)は、前記第1の弁体(15)が完全に閉じられているときに、漏洩空気流の通過を可能にするようになっている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1および第2の弁体(15、16)は、三方バルブ(9)内に配置されており、該三方バルブ(9)は、前記第1の弁体(15)を有する流入ポート(9a)、前記第2の弁体(16)を有する流入ポート(9b)、および前記内燃エンジン(M)にガスを吸入させるためのマニホルド(6)と、直接的または間接的に連絡する流出ポート(9c)を備えている、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記三方バルブ(9)は、前記第1の弁体(15)および前記第2の弁体(16)を駆動するための単一の駆動モータ(18)を備えており、前記三方バルブ(9)は、
− 前記駆動モータ(18)の回転によって、開位置にある前記第1の弁体(15)が駆動されることなく、前記第2の弁体(16)の開閉が行われる第1の動作モード(I)と、
− 前記駆動モータ(18)の回転によって、前記第2の弁体(16)が開かれていくことに並行して、前記第1の弁体(15)が閉じられていく第2の動作モード(II)であって、前記第2の弁体(16)の開き角度が25〜35°に達してから、前記第1の弁体(15)が閉じられ始める第2の動作モード(II)
との少なくとも2つの動作モードを備えている、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の内燃エンジンのための排気ガス再循環回路の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃エンジンは、一般に複数のシリンダによって形成された燃焼室を備えている。この燃焼室内では、内燃エンジンを作動させるために、支燃性(酸化性)物質と燃料との混合ガスの燃焼が行われる。支燃性物質は、内燃エンジンがコンプレッサを備えているか否かに依存して、圧縮状態または非圧縮状態にある空気を含んでいる。圧縮されているとき、空気は過給空気と呼ばれる。さらに、空気(「新鮮な空気」すなわち外気とも呼ばれる)は、排気ガスと混合されている場合がある。このような混合ガスは再循環排気ガスと呼ばれる。この動作モードは、通常、当業者によって、英語の「Exhaust Gas Recirculation(排気ガス再循環)」を表わす頭字語でEGRと呼ばれている。燃焼室に吸入されるガスは、吸入ガスと呼ばれる。したがって、吸入ガスは、外気だけから成る場合もあるし、外気と排気ガスとの混合ガスから成る場合もある。エンジン速度の調整のために、自動車のアクセルペダルがどの程度押し下げられているかに応じて制御されるバタフライバルブタイプのバルブを用いて、吸入ガスの流量を調整することができる。
【0003】
内燃エンジンが、コンプレッサまたはターボコンプレッサなどの圧縮手段を備えている場合には、空気は、内燃エンジンの吸入回路に吸入され、コンプレッサによって圧縮され、次に、冷却されて、シリンダに吸入される。シリンダ内で、空気は、燃料と一緒に燃焼し、次いで、排気管を介して排出される。排気ガスは、コンプレッサに取り付けられており、コンプレッサとともにターボコンプレッサを形成しているタービンを駆動する。排気ガス再循環は、タービンの後方で取り出されて、コンプレッサの前方で再度取り込まれる排気ガスに対して行なわれる場合には、「低圧」排気ガス再循環と呼ばれ、タービンの前方で取り出されて、コンプレッサの後方で再度取り込まれる排気ガスに対して行なわれる場合には、「高圧」排気ガス再循環と呼ばれることがある。この2つのタイプの再循環が組み合わされている場合もある。一例として、ガソリンエンジンの場合には、低圧排気ガス再循環によって、排気温度を低下させる(また、それによって、燃焼混合ガスをあまり濃厚にする必要がなくなるから、燃料消費量を低下させる)ことができ、高圧縮比において、ガソリンエンジンが音を発生させる現象を避けることができる。ディーゼルエンジンの場合には、環境基準を満たすように、汚染を少なくすることができる。
【0004】
例えば低圧排気ガス再循環ループにおいては、通常、「三方バルブ」と呼ばれるバルブが、EGR率(内燃エンジン内に流入する吸入ガスの総流量中に占める、再循環排気ガスの流量の割合を意味する)を制御するために設けられている。このような三方バルブは、2つの流入導管(一方は外気のための、他方は再循環排気ガスのための)を備えている(以下において、再循環排気ガスは、「EGRガス」と呼ばれることもある)。EGRガスは、通常、外気との混合に先立って冷却される。三方バルブは、さらに、外気および/またはEGRガスを取り入れるために2つの流入導管と連絡している流出導管を備えている。この流出導管は、例えばコンプレッサに通じており、外気および/またはEGRガスは、内燃エンジンに吸入される前に、このコンプレッサから、冷却器(または、この冷却器のバイパス路)に導かれる。当然ながら、三方バルブを、2つの単純な二方バルブに置き換えることが可能である。一方の二方バルブは外気の吸入管中に、他方の二方バルブは排気ガスの再循環管中に配置される。これらのバルブを通過するガスの流量は、シャッタまたはバタフライなどの遮断手段によって調整される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
三方バルブ、したがって内燃エンジンに対して、いくつかの動作モードの設定が可能であることが判明している。内燃エンジンの排気側と吸気側との間の圧力差が、排気ガスの再循環を引き起こすのに十分である場合には、内燃エンジンは、EGRガスの含まれていない外気のみを取り入れることができるだけではなく、外気とEGRガスとの混合ガスを取り入れることができる。圧力差が、排気ガスの再循環を引き起こすことができるほどに、また妥当なEGR率を与えるほどに十分に大きくない場合には、EGRループの下流側で排気路を狭くすることによって、背圧を生み出し、それによって、排気ガスの一部を、内燃エンジンの吸入路に送り込むことができる。しかしながら、この解決方法は、その複雑さのゆえに、十分に満足できるものではない。本発明は、背圧を生み出して、妥当なEGR流量を確保するという問題に対する別の解決方法を見出すことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、自動車の内燃エンジンのための排気ガス再循環回路を制御する方法を提供するものである。内燃エンジンは、空気吸入回路と、排気ガス再循環回路、排気ガス再循環回路の上流の空気の流量を調整するための第1の弁体、および排気ガス再循環回路内の再循環排気ガスの流量を調整するための第2の弁体を介して、空気吸入回路に接続されている排気ガス排出回路とに接続される。この方法は、次の2つのステップを含んでいる。
a)第1の弁体を開いたまま、第2の弁体を徐々に開いていくステップと、
b)第2の弁体が、25〜35°の範囲の値を超過する角度だけ開いたときに、第2の弁体を徐々に開いていくことに並行して、第1の弁体を徐々に閉じていくステップ。
【0007】
本発明によれば、空気用の弁体(第1の弁体)を閉じることによって、EGRガスの吸引される現象が発生するために、EGR率をかなり上昇させることができる。さらに、このEGR率に対する制御も、より容易になる。特に、空気用の弁体を閉じ始める、EGRガス用の弁体(第2の弁体)の開き角度を25〜35°の範囲に選ぶことによって、EGRガス用の弁体の開き角度に対するEGR率の曲線を、顕著な鈍化を伴うことなく、常に上昇させることができるという効果がもたらされる。すなわち、EGR率の曲線の二次微分係数を、EGRガス用の弁体のほぼ全開き角度にわたって正にすることができる。したがって、EGRガス用の弁体を開くことによって、EGR率を直接に、かつ効果的に制御することができる。
【0008】
本発明は、特に、ディーゼルエンジンにおける低圧排気ガス再循環の制御に好適である。本発明によると、EGRガス用の弁体の開き角度の関数として、EGR率をより線形に、かつより漸進的に調整することができ、それによって、EGRガス用の弁体の制御、したがってEGR率の制御の精度を向上させることができる。
【0009】
一実施形態によれば、第2の弁体を徐々に開いていくステップは、第2の弁体の開き角度が65〜85°の範囲に達したときに中断され、そのとき、第1の弁体は完全に閉じられる。
【0010】
したがって、第1の弁体が閉じる速度は速い。
【0011】
一実施形態によれば、第1の弁体は、第1の弁体が閉じられているときに、漏洩空気流の通過を可能にするように作られている。
【0012】
これによって、内燃エンジンの作動のために必要な最小限の外気のレベルを確保することができる。
【0013】
一実施形態によれば、第1および第2の弁体は、三方バルブ内に配置されており、この三方バルブは、第1の弁体を有する流入ポート、第2の弁体を有する流入ポート、および内燃エンジンにガスを吸入させるためのマニホルドと直接的または間接的に連絡する流出ポートを備えている。
【0014】
このような実施形態はコンパクトであり、容易に操作することができる。
【0015】
この場合には、一実施形態として、三方バルブは、第1の弁体および第2の弁体を駆動するための単一の駆動モータを備えており、少なくとも、次の2つの動作モードで動作する。
− 駆動モータの回転によって、開位置にある第1の弁体が駆動されることなく、第2の弁体の開閉が行われる第1の動作モードと、
− 駆動モータの回転によって、第2の弁体が開かれていくことに並行して、第1の弁体が閉じられていく第2の動作モードであって、第2の弁体の開き角度が25〜35°に達してから、第1の弁体が閉じられ始める第2の動作モード。
【0016】
添付図面を参照して、本発明の制御方法についての、いくつかの好適な実施形態に関する、以下の説明を読むことによって、本発明をよりよく理解することができると思う。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の制御方法の好適な実施形態を実行することができる内燃エンジン、および空気の吸入回路、排気ガスの排出回路、排気ガス再循環回路の概要図である。
【
図2a】本発明の制御方法の好適な実施形態を実行するための、
図1のEGRバルブの4つの動作モードのうちの第1の動作モードを説明する図である。
【
図2b】本発明の制御方法の好適な実施形態を実行するための、
図1のEGRバルブの4つの動作モードのうちの第2の動作モードを説明する図である。
【
図2c】本発明の制御方法の好適な実施形態を実行するための、
図1のEGRバルブの4つの動作モードのうちの第3の動作モードを説明する図である。
【
図2d】本発明の制御方法の好適な実施形態を実行するための、
図1のEGRバルブの4つの動作モードのうちの第4の動作モードを説明する図である。
【
図3】本発明の制御方法の好適な実施形態を実行するための、EGRガスの流量を調整するシャッタの角度位置の関数として、
図1のEGRバルブの2つのシャッタにおける空気およびEGRガスの通過断面を示すグラフである。
【
図4】本発明の制御方法の好適な実施形態を実行するための、EGRガスの流量を調整するシャッタの角度位置の関数として、EGR率を示すグラフである。
【
図5b】
図1のEGRバルブの、別の方向から見た斜視図である。
【
図6a】
図2aの動作モードにおける、
図1のEGRバルブの平面図である。
【
図6b】
図2dの動作モードにおける、
図1のEGRバルブの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、自動車の内燃エンジンMは、複数(この例においては、全部で4つの)のシリンダを有しており、支燃性物質と燃料(この例においては、ディーゼルエンジン用の)との混合ガスを取り入れるように作られている燃焼室1を備えている。シリンダ内での混合ガスの燃焼によって、内燃エンジンMは駆動される。内燃エンジンMの動作は、通常通りである。すなわち、混合ガスは燃焼室1に吸入され、燃焼室1内で圧縮されて燃焼し、次いで、排気ガスの形態で放出される。これらのステップは、内燃エンジンの通常の4サイクル(吸入、圧縮、燃焼、排気)である。
【0019】
内燃エンジンMにガス(空気および/またはEGRガス)を吸入させる吸入回路2aは、供給された空気すなわち外気(その流れる方向が、矢印F1によって示されている)を吸入するための吸入管3、供給されたガス(空気および/またはEGRガス)を圧縮するためのコンプレッサ4(この場合には、ターボコンプレッサである)、およびコンプレッサ4から出たガスを冷却するための熱交換器5を備えている。この熱交換器5は、一般に、当業者によって、「refroidisseur d'air de suralimentation(過給空気冷却器)」の頭字語「RAS」という名称で呼ばれている。その機能は、吸入ガス、特に、圧縮されているために過給空気と呼ばれる空気を効果的に冷却することである。ガスは、RASすなわち熱交換器5から出ると、内燃エンジンMの燃焼室1にガスを吸入させるためのマニホルド6内に入る。マニホルド6は、内燃エンジンMのシリンダヘッドにガスを送るためのケースを形成している。この特定の例においては、吸入回路2aは、RASすなわち熱交換器5を含む通路をバイパスするためのバイパス路14を備えている。冷却路に入るガスと非冷却路であるバイパス路14に入るガスとの間の調整は、それ自体としては周知の手段であるバルブ13によってなされる。吸入回路2aは、内燃エンジンMにガスを吸入させるためのマニホルド6の上流に、バタフライタイプの止め弁を有するバタフライバルブ17を備えている。このバタフライバルブ17の機能は、ガソリンエンジンの場合、エンジン速度を調整するためにガス流量を調整することである。ディーゼルエンジンの場合には、バタフライバルブ17は、一般的に、「チョーク」と呼ばれている。このバタフライバルブ17は、当業者にはよく知られているように、エンジン制御ユニット(通常、英語のEngine Control Unitの頭字語ECUで表される)によって制御される。
【0020】
排気ガスの排出回路2bは、内燃エンジンMの燃焼室1の出口に、排気ガスのための排気路8すなわち排気管に連結された、排気ガスのためのマニホルド7を備えている。排出回路2bは、さらに、吸入されたガスを圧縮するためのコンプレッサ4に回転可能に連結されており、コンプレッサ4とともにターボコンプレッサを形成しているタービン10を備えている。タービン10は、排気路8の排気ガスによって駆動される。排気ガスの流れる方向は、矢印F2によって概略的に示されている。
【0021】
最後に、排出回路2bは、排気ガス再循環回路2cに連結されている。排気ガス再循環回路2cは、排出回路2bの出口の近傍において、排気ガスの一部を排出回路2bから取り出し、それらの排気ガスを、バルブ9(この例においてはコンプレッサ4の上流の)において吸入回路2aに再注入するように、再循環排気ガス(「EGRガス」)を導くための再循環管11を有している。バルブ9(以下において、EGRバルブ9と呼ぶ)は、この例においては三方バルブであり、排気ガス再循環回路2cと吸入回路2aとの接続位置ないし接続ゾーンを形成している。このような排気ガス再循環は、排出回路2b(タービン10の下流側の)からの、相対的に低圧である排気ガスに対して行われるから、低圧排気ガス再循環と呼ばれる。さらに、これらの再循環排気ガスのための冷却器12が、排気ガス再循環回路2c内に備えられている。排気ガス再循環回路2cに再注入されない排気ガスは、自動車の排気ガスを形成する。そのような排気ガスの流れる方向は、矢印F3によって示されている。
【0022】
EGRバルブ9は、供給された空気が流入する空気流入ポート9a(または空気流入導管9a)、EGRガス流入ポート9b(またはEGRガス流入導管9b)、および吸入ガスを形成するガス(その組成は、空気流入ポート9aからの空気とEGRガス流入ポート9bからのEGRガスとの流量に応じて変化する)のためのガス流出ポート9c(またはガス流出導管9c)を有している。EGRバルブ9は、その空気流入ポート9a内にシャッタ15(以下において、「空気シャッタ15」と呼ぶ)、およびそのEGRガス流入ポート9b内にシャッタ16(以下において、「EGRガスシャッタ16」と呼ぶ)を有している。したがって、機能に関しては、
図2a〜
図2cに特に明瞭に示されているように、EGRバルブ9は、一方が外気の流量を調整し、他方がEGRガスの流量を調整する、2つの二方バルブの機能を遂行する。
【0023】
次に、EGRバルブ9の4つの動作モードを、概括的に説明する。これらの動作モードの適用、特に、空気シャッタ15とEGRガスシャッタ16との間の、一方の開き度合いの変化に対する他方の開き度合いの変化を、EGRバルブ9の実施形態に応じて変えることができる。
【0024】
図2aに示されている、内燃エンジンMが、排気ガス再循環を伴わずに動作している動作モード(例えば内燃エンジンMが、特に寒い環境において動作しているときに用いられる)である、EGRバルブ9の第1の動作モードにおいては、空気シャッタ15は開かれており(完全に、または部分的に)、EGRガスシャッタ16は閉じられており、したがって、再循環管11は完全に塞がれている。
【0025】
図2bに示されている、内燃エンジンMが排気ガス再循環を伴う動作の初期状態にある、EGRバルブ9の第2の動作モードにおいては、EGRガスシャッタ16は次第に開かれ、一方、空気シャッタ15は完全に開かれたままである。したがって、排気ガスの一部が外気と混じり合って、吸入ガスとなる。
【0026】
図2cに示されている、EGRバルブ9の第3の動作モードにおいては、EGRガスシャッタ16は次第に開かれ、並行して、空気シャッタ15は次第に閉じられる。空気シャッタ15が部分的に閉じている状態と、EGRガスシャッタ16が開いている状態とを組み合わせることによって、外気の流量が減少するために、EGRガスが吸い込まれるという現象を通じて、EGRガスの流量が増加する。この第3の動作モードは、本発明によれば、後に示すように、EGRガスシャッタ16の開き角度が25〜35°の範囲(この例においては28°)になってから開始される。
【0027】
図2dに示されている、EGRバルブ9の第4の動作モードにおいては、EGRガスシャッタ16は部分的に開かれており(EGRガスシャッタ16に割り当てられている範囲で、動的に最大に開かれている状態で)、空気シャッタ15は閉じられている。したがって、EGR率は、その最大値にある。この実施形態によれば、空気シャッタ15の外周と、空気シャッタ15が収容されている導管の内側壁面との間に、遊び「J」ができるように、空気シャッタ15は、その直径が、この導管の直径より小さくなるように構成されている。したがって、この遊びJの存在によって、外気の漏洩流が、内燃エンジンMへの最小空気流量を保ちながら通過することができ、そのために、EGRバルブ9は、この第4の動作モードにおいて動作することができる。
【0028】
図5a、
図5b、
図6a、
図6bに示されている、本発明の好適な一実施形態においては、EGRバルブ9は、その空気シャッタ15およびEGRガスシャッタ16を作動させるために、単一のモータ18を備えている。この例においては、モータ18は、直流モータである。EGRバルブ9は、モータ18のシャフト19から、空気シャッタ15およびEGRガスシャッタ16をそれぞれ回転させる駆動シャフト20および21まで展開している、一群の歯車から成る歯車機構を備えている。この特定の例においては、駆動シャフト20と21とは、互いに平行であり、かつモータ18のシャフト19にも平行である。
【0029】
モータ18のシャフト19には、中間歯車23を駆動するピニオン22が固定されている。中間歯車23には、その外周に歯24、中心部に歯25が形成されている(2つの歯24と25とは上下に、かつ同心に配置されている)。中間歯車23の外周の歯24は、空気シャッタ15の回転をもたらす駆動機構28のリング歯車26と噛み合っている。中間歯車23の中心部の歯25は、EGRガスシャッタ16の回転をもたらすためのリング歯車27と噛み合っている。
【0030】
この例においては、モータ18は、反時計回りの向きに回転しているときには、そのピニオン22を介して、中間歯車23を時計回りの向きに回転させる。その回転において、中間歯車23は、その歯24、25を介して、空気シャッタ15、EGRガスシャッタ16が反時計回りの向きに回転するように、リング歯車26、27を回転させる。
【0031】
EGRガスシャッタ16は、その位置に拘わらず、それを駆動するリング歯車27の回転によって、リング歯車27と一体になって、連続的に回転する。EGRガスシャッタ16は、その閉位置(EGRガスシャッタ16を駆動するリング歯車27が、第1のストッパ33に突き当たっている状態に対応する)と、ある角度(この例においては68°に等しい)だけ開いている位置(EGRガスシャッタ16を駆動するリング歯車27が、第2のストッパ34に突き当たっている状態に対応する)との間の、いかなる位置も占めることができる。
【0032】
空気シャッタ15を駆動する駆動機構28は、リング歯車26の回転によって、空気シャッタ15を駆動する駆動シャフト20が、リング歯車26の行程の一部分である第1の部分では回転しないように、かつリング歯車26の行程の残りの部分である第2の部分では回転するようにする係合/脱係合システムを有している。そのために、この特定の例においては、駆動機構28は、リング歯車26を支えており、扇形欠落領域を形成している凹みを設けられているホイール29を有している。この扇形欠落領域には、押圧作用によって駆動を行う駆動面30が設けられている。駆動機構28は、さらに、EGRガスシャッタ16を駆動する駆動シャフト21と一体に回転する駆動ピン31(一般には「先導体」31と呼ばれる)を有している。ホイール29の駆動面30が、駆動ピン31に突き当たって、駆動ピン31を回転駆動するときしか、空気シャッタ15は、回転駆動されない。したがって、
図6aの位置においては、ホイール29が反時計回りの向きに回転しても、駆動ピン31に突き当たらないから、駆動ピン31、したがって空気シャッタ15は動かない。それに反して、例えば
図6bの位置におけるように、ホイール29の駆動面30が駆動ピン31に突き当たると、ホイール29は、空気シャッタ15を回転駆動する。ホイール29が、駆動面30と駆動ピン31とが互いに突き当たっている位置から、時計回りの向きに回転すると、駆動ピン31のデフォルト位置を定めるように、すなわち空気シャッタ15の開位置を定めるように配置されている、駆動ピン31に対するストッパ32の位置に達するまで、駆動ピン31を駆動面30に向かって復帰させるばねの作用を受けて、空気シャッタ15は、ホイール29の動きに追随する。
【0033】
モータ18による、空気シャッタ15、EGRガスシャッタ16の駆動に関する運動学的規定が、
図3のグラフに示されている。
図3において、EGRガスシャッタ16の回転角度α(回転角度αは、EGRガスシャッタ16が直接に噛み合っている、モータ18のシャフト19の角度に、実質的に線形に依存する)の関数として、縦座標に、空気シャッタ15、EGRガスシャッタ16における、空気、EGRガスの通過断面Sが表されている(曲線C1は、空気シャッタ15における、空気の通過断面に対するものであり、曲線C2は、EGRガスシャッタ16における、EGRガスの通過断面に対するものである)。空気、EGRガスの通過断面Sは、それぞれの最大通過断面に対する比率として示されている。通過断面Sが、駆動機構のシャフト19、駆動シャフト20、21の回転に線形に依存しないから、曲線C1、C2は直線分(まっすぐな線分)で表されていないことに注意されたい。
【0034】
図3に示すように、第1の領域I(この例においては、EGRガスシャッタ16の開きが0〜28°である範囲の)においては、EGRガスシャッタ16だけが、その閉位置から、28°だけ開かれた部分開位置まで回転駆動される。したがって、EGR率は、EGRガスシャッタ16が開かれるにつれて増加する。歯車機構が、
図6aの位置にある(EGRガスシャッタ16のリング歯車27が、第1のストッパ33に突き当たっている)ときには、EGRガスシャッタ16は閉じられており、一方、空気シャッタ15は開かれている。これは、
図2aを参照して説明した動作モードであり、
図3の最初の点(左端の)に対応している。この第1の領域Iの、
図3の曲線のその他の部分においては、空気シャッタ15を駆動するための、ホイール29の駆動面30が、駆動ピン31に突き当たる位置まで達していないから、これらの部分は、空気シャッタ15の回転駆動を伴わない、EGRガスシャッタ16の回転駆動に対応している(
図2bを参照して説明した動作モードに対応している)。
【0035】
第2の領域II(この例においては、EGRガスシャッタ16の開きが28〜68°である範囲の)においては、空気シャッタ15とEGRガスシャッタ16との両方が回転駆動される。EGRガスシャッタ16は、漸進的に開かれ続け、同時に、他方において、ホイール29の駆動面30による、駆動ピン31の回転駆動によって、空気シャッタ15は、漸進的に閉じられる。これは、
図2cを参照して説明した動作モードである。歯車機構の、
図6bの位置は、EGRガスシャッタ16が十分に開かれており、空気シャッタ15は完全に閉じられている状態、すなわち、EGRガスシャッタ16が68°までに開かれている、
図3の最後の点(右端の)に対応している。この位置は、EGRガスシャッタ16を駆動するリング歯車27が、第2のストッパ34に突き当たっている状態に対応している。これは、
図2dを参照して説明した動作モードである。
図3において、空気シャッタ15が閉じているこの点でも、空気シャッタ15の周囲の遊びJが、漏洩空気流の通過を可能にするから、空気の通過断面は0ではないということに注意されたい。
【0036】
この第2の領域IIの開始時、すなわち、空気シャッタ15の、その閉位置に向けての駆動の開始時に対応する、EGRガスシャッタ16の開き角度(この例においては28°)は、ホイール29の駆動面30に対する駆動ピン31の位置を変更することによって、したがって、この駆動ピン31に対するストッパ32の位置を変更することによって調整される。実際、この開き角度は、空気シャッタ15の回転駆動の開始、したがって、この第2の領域IIの開始と同義である、駆動ピン31の回転駆動の開始に対応している。本発明によれば、この開き角度は25〜35°の範囲で選ばれ、この例においては28°である。
【0037】
さらに、
図3において灰色に網掛けされている第3の領域III(
図4にも示されている)は、この例においてEGRバルブ9に対して設定されていない値に対応している、すなわち、EGRガスシャッタ16を駆動するためのリング歯車27の回転を、第2のストッパ34を越えて継続させた場合の通過断面に対応していることに注意されたい。このストッパ34の位置を調整することによって、EGRガスシャッタ16が停止する開き角度(この例においては68°)が調整される。
【0038】
EGRガスシャッタ16の開き角度が25〜35°の範囲になってから、空気シャッタ15を閉じ始めるように選択することによって、
図4に示すように、EGR率およびその微分係数が、EGRガスシャッタ16の開き角度の全範囲にわたって増加していくという利点が得られる。0〜48°の範囲の、EGRガスシャッタ16の開き角度において、EGR率は、EGRガスシャッタ16の開き角度の関数として、ほぼ線形に増加する。48°から、曲線は、その勾配を変化させて、より急激に増加する。この48°という値は、
図3の通過断面の曲線C1とC2との交点に対応している。しかしながら、曲線のこの点がどのようなものであれ(この例においては、最初の数度を除いて)、この曲線の二次微分係数は、ほぼ常に、正または0である。したがって、EGRガスシャッタ16の開き角度を直接制御することによって、EGR率を容易に制御することができる。
【0039】
要約すると、EGRバルブ9の空気シャッタ15およびEGRガスシャッタ16の開閉に関して、主として、2つの相、すなわち動作モードが存在する。
− モータ18の回転によって、空気シャッタ15が最大に開かれたままで、EGRガスシャッタ16の開閉が行われる第1の動作モードIと、
− モータ18の回転によって、EGRガスシャッタ16が開かれていくのに並行して、空気シャッタ15が閉じられていく第2の動作モードII。EGRガスシャッタ16の開き角度が25〜35°の範囲(この特定の例においては28°)に達してから、空気シャッタ15が閉じられ始める。
【0040】
さらに、EGRバルブ9の操作は、内燃エンジンM、吸入回路2a、排出回路2b、および排気ガス再循環回路2cの操作と同様に従来通りである(どのような実施形態であろうとも)。これらの操作の全ては、ECUによって、特に、本発明の制御方法およびEGRバルブ9によって可能かつ容易になる、EGRガスシャッタ16の上流側と下流側との間の圧力差の測定によって調整される。
【0041】
シャッタを備えるバルブに関連付けて、本発明を説明してきたが、当然のことながら、バタフライなどの、他の遮断手段を備えたバルブを用いることもできる。さらに、既に上述したように、三方バルブを、単純な2つの二方バルブに置き換えることができる。
【0042】
以上、いくつかの好適な実施形態に関連付けて、本発明を説明してきたが、言うまでもなく、他の実施形態も考え得る。特に、記述されているいくつかの実施形態の態様を、両立不可能でない限り、互いに組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 燃焼室
2a 吸入回路
2b 排出回路
2c 排気ガス再循環回路
3 吸入管
4 コンプレッサ
5 熱交換器
6、7 マニホルド
8 排気路
9 EGRバルブ
9a 空気流入ポート
9b EGRガス流入ポート
9c ガス流出ポート
10 タービン
11 再循環管
12 冷却器
13 バルブ
14 バイパス路
15 空気シャッタ
16 EGRガスシャッタ
17 バタフライバルブ
18 モータ
19 シャフト
20、21 駆動シャフト
22 ピニオン
23 中間歯車
24、25 歯
26、27 リング歯車
28 駆動機構
29 ホイール
30 駆動面
31 駆動ピン
32、33、34 ストッパ
C1、C2 曲線
F1、F2、F3 矢印
J 遊び
M 内燃エンジン