特許第6131063号(P6131063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6131063液体急結剤、それを用いたセメント組成物および吹付け工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131063
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】液体急結剤、それを用いたセメント組成物および吹付け工法
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/14 20060101AFI20170508BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20170508BHJP
   C04B 22/12 20060101ALI20170508BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20170508BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   C04B22/14 A
   C04B24/38 B
   C04B22/12
   C04B24/12 A
   C04B28/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-21589(P2013-21589)
(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公開番号】特開2014-152058(P2014-152058A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】原 啓史
(72)【発明者】
【氏名】荒木 昭俊
(72)【発明者】
【氏名】三島 俊一
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−294470(JP,A)
【文献】 特開平08−048553(JP,A)
【文献】 特開2005−089276(JP,A)
【文献】 特開2002−249361(JP,A)
【文献】 特開2000−219553(JP,A)
【文献】 特開平10−087358(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0035952(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102786256(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
30〜50質量%の硫酸アルミニウム0.01〜5質量%の平均分子量が10,000〜100,000である水溶性セルロースエーテル、水混合して液体急結剤を調製することと
−10〜40℃の温度範囲において、前記液体急結剤を1か月以上の期間に亘って貯蔵し、不溶性粒子が液中に分散し、体積割合で液の90%以上が懸濁している状態を保つことと
を含む、液体急結剤の保存方法
【請求項2】
前記液体急結剤がさらに、フッ素化合物を含有する請求項1記載の保存方法
【請求項3】
前記液体急結剤がさらに、アルコールアミン類を含有する請求項1または2記載の保存方法
【請求項4】
前記液体急結剤の20℃における粘度が300〜5,000 mPa・sである請求項1〜3のうちのいずれか1項記載の保存方法
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか1項記載の保存方法により保存した液体急結剤を、セメント100質量部に対し3〜20質量部添加することでセメント組成物を調製し、調製したセメント組成物を用いる吹付け工法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、鉄道、および導水路等のトンネルにおいて、露出した地山面へ吹付けるセメントコンクリートに使用する、液体急結剤、それを用いたセメント組成物および吹付け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削等、露出した地山の崩落を防止するために、急結剤をコンクリートに混合した急結性コンクリートの吹付け工法が用いられている(特許文献1)。
この工法は、通常、掘削工事現場に設置した計量混合プラントで、セメント、骨材、及び水を計量混合して吹付け用のコンクリートを調製し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で他方から圧送された急結剤と混合して急結性吹付けコンクリートとし、地山面に所定の厚さになるまで吹付ける工法である。
【0003】
急結剤としては、カルシウムアルミネートにアルカリ金属アルミン酸塩やアルカリ金属炭酸塩等を混合した粉体急結剤が使用される場合が多いが、近年、吹付け時の粉塵量が少なく、アルカリ薬傷がないという点から、アルミニウム塩を主成分とする酸性の液体急結剤の使用が望まれている(特許文献2〜6)。
【0004】
液体急結剤に用いられるアルミニウム塩は硫酸塩である場合が多く、濃度が高いほど、急結性が高くなり、吹付け時の添加率を減らすこともできる。
しかし、高濃度の液体急結剤は、長期間貯蔵すると、液中に析出物が生成したり、液がゲル化したり、懸濁粒子が沈降したりする場合があった。硫酸アルミニウムの水に対する溶解度は、20℃で27%であり、共存する溶質や液温によって変動するが、溶解度以上の硫酸アルミニウムを含有する液体急結剤は、貯蔵安定性が悪く、製造直後の性状を保持することが難しい。液中に析出物が生成したり、液がゲル化したり、懸濁粒子が沈降したりした状態の液体急結剤を使用すると、ポンプが閉塞したり、コンクリートとの混合性が悪くなり、優れた性状が得られなかったりする場合があった。また、溶解度は液温によって変動するため、この貯蔵性の問題は、貯蔵する温度に依存し、高温または低温で貯蔵すると、より顕著に現れる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭60−4149号公報
【特許文献2】特開平10−87358号公報
【特許文献3】特開2003−246659号公報
【特許文献4】特開2005−89276号公報
【特許文献5】特開2006−193388号公報
【特許文献6】特開2008−30999号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明者は、前期課題を種々検討した結果、液体急結剤に水溶性セルロースエーテルを含有させることで、溶解度以上の硫酸アルミニウムを、水中で沈降せずに、微小粒子として均一に分散させ、前期課題を解決する知見を得て本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、(1)硫酸アルミニウム、水溶性セルロースエーテル、水を含有し、−10〜40℃において、不溶性粒子が液中に分散し、体積割合で液の90%以上が懸濁している液体急結剤、(2)硫酸アルミニウム濃度が30〜50質量%、水溶性セルロースエーテル濃度が0.01〜5質量%である(1)の液体急結剤、(3)水溶性セルロースエーテルの平均分子量が10,000〜100,000である(1)または(2)の液体急結剤、(4)さらに、フッ素化合物を含有する(1)〜(3)のうちのいずれかの液体急結剤、(5)さらに、アルコールアミン類を含有する(1)〜(4)のうちのいずれかの液体急結剤、(6)20℃における粘度が300〜5,000mPa・sである(1)〜(5)のうちのいずれかの液体急結剤、(7)(1)〜(6)のうちのいずれかの液体急結剤を、セメント100質量部に対し3〜20質量部含有するセメント組成物、(8)(7)のセメント組成物を用いた吹付け工法、である
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体急結剤は、従来の液体急結剤に比べ、硫酸アルミニウム濃度が高いにもかかわらず、貯蔵安定性および流動性に優れる。さらに、この液体急結剤を使用することで、従来の液体急結剤に比べ、急結性吹付けコンクリートの急結性、強度発現性の向上する効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、およびセメントコンクリートの総称である。
なお、本発明における部や%は特に規定しない限り質量基準である。
【0010】
本発明で使用する硫酸アルミニウムは、無水物、水和物、さらに水溶液のいずれも使用することができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。この中では、溶解時の分離度が低く、分散性が優れるという点で、水和物が好ましく、14水和物がより好ましい。
液体急結剤の硫酸アルミニウム濃度は、30〜50%が好ましく、32〜40%がより好ましい。30%未満ではコンクリートと混合した際に、優れた急結性が得られない場合があり、50%以上では懸濁液の粘度が高く、流動性に優れず、圧送が困難だったり、だまが生成し、均一な液が製造できなかったりする場合がある。
【0011】
本発明で使用する水溶性セルロースエーテルとは、セルロースのヒドロキシル基がエーテル置換した物質のことであり、水溶性をもつものを言う。
具体的には、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上使用することができる。これらの中では、カルボキシメチルセルロースが特に好ましい。その他の水溶性セルロースエーテルでは、不溶性粒子が均一に分散しにくかったり、懸濁液の粘性が高く、ポンプ圧送が困難だったりする場合がある。また、カルボキシメチルセルロースは、カルボキシル基の水素原子の一部または全部がアルカリ金属に置換されているものでも使用できる。
【0012】
液体急結剤の水溶性セルロースエーテルの濃度は、0.01〜5%が好ましく、0.1〜3%がより好ましい。0.01%未満では不溶性粒子が沈降し、分離しやすい場合があり、5%以上では懸濁液の粘性が高く、ポンプ圧送が困難な場合がある。
【0013】
本発明で使用する水溶性セルロースエーテルの平均分子量は、10,000〜100,000が好ましく、15,000〜5,000がより好ましい。10,000未満では不溶性粒子が沈降し、分離しやすい場合があり、100,000以上では懸濁液の粘性が高く、ポンプ圧送が困難な場合がある。
【0014】
本発明の液体急結剤は、フッ素化合物を含有してもよい。フッ素化合物は、凝結性状や初期強度発現性を向上する目的で使用する。フッ素化合物は、水または酸性水溶液に溶解するものであれば、特に限定されるものではない。また、液に添加して均一な状態になるようであれば、製造時に投入する順序も問われない。
フッ素化合物としては、フッ化水素、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カリウム、フッ化アルミニウム、フッ化亜鉛、フッ化アンモニウム、フッ化水素カリウム、三フッ化ホウ素、六フッ化アルミニウムナトリウム、六フッ化アルミニウムカリウム、ケイフッ化水素、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化マグネシウム、ケイフッ化カリウム、ケイフッ化亜鉛、ケイフッ化アンモニウム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上が使用可能である。この中では、凝結性状が優れるという点で、六フッ化アルミニウムナトリウムが好ましい。
液体急結剤のフッ素化合物の濃度は、0.1〜10%が好ましく、1〜8%がより好ましい。0.1%未満では凝結性状や初期強度発現性の向上が小さい場合があり、10%を超えると貯蔵安定性が低下したり、長期強度発現性を阻害したりする場合がある。
【0015】
本発明の液体急結剤は、アルコールアミン類を含有してもよい。アルコールアミン類は、凝結性状や初期強度発現性を向上する目的で使用する。アルコールアミン類は、水または酸性水溶液に溶解するものであれば、特に限定されるものではない。また、液に添加して均一な状態になるようであれば、製造時に投入する順序も問われない。
アルコールアミン類とは、アミノ基とヒドロキシル基の両方を有する有機化合物の総称である。アルコールアミン類としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上が使用可能である。この中では、凝結性状が優れるという点で、ジエタノールアミンが好ましい。
液体急結剤のアルコールアミン類の濃度は、0.1〜5%が好ましく、0.5〜3%がより好ましい。0.1%未満では凝結性状や初期強度発現性の向上が小さい場合があり、5%を超えると貯蔵安定性が損なわれたり、長期強度発現性を阻害したりする場合がある。
【0016】
本発明の液体急結剤の20℃における粘度は、300〜5,000 mPa・sが好ましく、500〜2,000mPa・sがより好ましい。300 mPa・s未満では不溶性粒子が沈降し、分離しやすい場合があり、5,000mPa・sを超えると懸濁液の粘性が高く、ポンプ圧送が困難な場合がある。
【0017】
本発明のセメント組成物において、液体急結剤の使用量は、セメント部に対して、3〜20部が好ましく、5〜15部がより好ましく、7〜10部が最も好ましい。3部未満では急結性吹付けコンクリートの急結性を促進しにくい場合があり、20部以上では長期強度発現性が損なわれる場合がある。
【0018】
ここでセメントとは、通常市販されている普通、早強、中庸熱、および超早強などの各種ポルトランドセメントや、これら各種ポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグなどを混合した各種混合セメントなどが挙げられ、これらを微粉末化して使用することも可能である。
【0019】
本発明で使用するセメントコンクリートはセメントと骨材とを含有するものである。ここで骨材としては、吸水率が低く、骨材強度が高いものが好ましい。骨材の最大寸法は吹付けできれば特に限定されるものではない。
細骨材としては、川砂、山砂、石灰砂、及び珪砂などが使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利などが使用可能である。
【0020】
セメントコンクリートに使用する水の量は、強度発現性の面から水/セメント比で35%以上が好ましく、40〜55%がより好ましい。35%未満ではセメントコンクリートを十分に混合できない場合がある。
【0021】
本発明の吹付け工法は、特に限定されるものではないが、湿式吹付け工法としては、例えば、セメント、細骨材、粗骨材、及び水を加えて練り混ぜ、空気圧送し、途中にY字管を設け、その一方から急結剤供給装置により圧送した急結剤を合流混合して急結性湿式吹付けコンクリートとしたものを吹付ける方法が挙げられる。
【0022】
また、急結剤を圧送する圧送空気の圧力は、コンクリートが急結剤の圧送管内に混入した際に圧送管内が閉塞しないように、コンクリートの圧送圧力より0.01〜0.3MPa高いことが好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【0024】
「実験例1」
硫酸アルミニウムと種々のセルロースエーテルを、表1に示す濃度になるように水に添加し、1時間攪拌することで、種々の液体急結剤を調製した。また、攪拌後、3時間液を静置し、粘度計で粘度を測定した。さらに、1か月間液を静置し、分離度を評価した。結果を表1に併記する。
【0025】
<使用材料>
硫酸アルミニウム:硫酸アルミニウム14水和物、市販品
水溶性セルロースエーテル(CEと表記)
A:メチルセルロース、平均分子量27,000
B:ヒドロキシエチルセルロース、平均分子量34,000
C:ヒドロキシプロピルセルロース、平均分子量26,000
D:ヒドロキシプロピルメチルセルロース、平均分子量32,000
E1:カルボキシメチルセルロース、平均分子量7,000
E2:カルボキシメチルセルロース、平均分子量10,000
E3:カルボキシメチルセルロース、平均分子量15,000
E4:カルボキシメチルセルロース、平均分子量33,000
E5:カルボキシメチルセルロース、平均分子量50,000
E6:カルボキシメチルセルロース、平均分子量73,000
E7:カルボキシメチルセルロース、平均分子量100,000
E8:カルボキシメチルセルロース、平均分子量160,000
促進剤:六フッ化アルミニウムナトリウム(ア)、ジエタノールアミン(イ)、市販品
【0026】
<測定条件>
粘度:B型粘度計(たとえば、東機産業 TVB−10型)を使用
試験環境温度:20℃に設定
分離度:液全体に対する透明の上澄み液の体積割合をメスシリンダーで評価
○:0〜5%、△:5〜10%、×:10%、*:懸濁相なし(溶解)
【0027】
【表1】
【0028】
表1より、硫酸アルミニウム濃度30〜50%、水溶性セルロースエーテル濃度0.01〜5%の配合であることが、液体急結剤の粘度として望ましく、また、分離度が低く、分散性に優れる。水溶性セルロースエーテルの中では、カルボキシメチルセルロースが望ましい。水溶性セルロースエーテルの平均分子量は、10,000〜100,000であることが好ましい。
【0029】
「実験例2」
硫酸アルミニウム濃度が35%、水溶性セルロースエーテル濃度が0.5%、促進剤(フッ化物、またはアルコールアミン)濃度が表2に示す値になるように水に添加し、実験例1と同様に種々の液体急結剤を調製し、粘度を測定し、分離度を評価した。
【0030】
<使用材料>
硫酸アルミニウム:実験例1と同様
水溶性セルロースエーテル:カルボキシメチルセルロース、平均分子量33,000
促進剤(ア):六フッ化アルミニウムナトリウム
促進剤(イ):ジエタノールアミン
【0031】
【表2】
【0032】
表2より、硫酸アルミニウム濃度35%、水溶性セルロースエーテル濃度0.5%、一定の濃度の促進剤(フッ素化合物10%以下、アルコールアミン類5%以下)の配合であることが、液体急結剤の粘度として望ましく、また、分離度が低く、分散性に優れる。
【0033】
「実験例3」
表3に示すように、実験例1、実験例2で示した配合の液体急結剤を調製した。また、調製後の液を、−10、20、40℃の温度で、実験例1と同様の手順で、粘度を測定し、分離度を評価した。結果を表3に併記する。
【0034】
<測定条件>
粘度:実験例1と同様
分離度:液全体に対する透明の上澄み液の体積割合をメスシリンダーで評価
○:0〜5%、△:5〜10%、×:10%、*:懸濁相なし(溶解)、**:液が凝固
【0035】
【表3】
【0036】
表3より、液体急結剤の硫酸アルミニウム濃度が30〜50%、水溶性セルロースエーテル濃度が0.01〜5%の液体急結剤は、−10〜40℃において、調整後少なくとも1か月間、分離度が低く、分散性に優れる。さらに、硫酸アルミニウム濃度が35%、水溶性セルロースエーテル濃度が1%、一定の濃度の促進剤(フッ素化合物濃度が0.1〜10%、あるいはアルコールアミン類濃度が0.1〜5%)を含有する液体急結剤も、同様の条件で、貯蔵安定性に優れる。
【0037】
「実験例4」
実験例1と同様に、液体急結剤の濃度が、表4に示す値になるように硫酸アルミニウムと水溶性セルロースエーテルを水に添加し、液体急結剤を調製した。また、砂/セメント比=3、水/セメント比=54%のモルタルを調製し、そのセメント100部に対して、液体急結剤を7部添加し、急結性モルタルとし、その凝結時間、さらに圧縮強度を測定した。結果を表5に併記する。
【0038】
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン比表面積3,600cm/g、比重3.16
細骨材:新潟県糸魚川市姫川産川砂、表乾状態、比重2.62
硫酸アルミニウム、水溶性セルロースエーテル:実験例2と同様
【0039】
<測定方法>
凝結試験:急結性モルタルを土木学会基準「吹付けコンクリート用急結剤品質規格(JSCED−102)」に準じて測定
圧縮強度:急結性モルタルをJIS R 5201に準じて測定
試験環境温度:20℃に設定
【0040】
【表4】
【0041】
表4より、硫酸アルミニウム濃度30〜50%、水溶性セルロースエーテル濃度0.01〜5%の配合であることが、急結剤の性状として望ましい。
【0042】
「実験例5」
液体急結剤の濃度が、硫酸アルミニウム35%、水溶性セルロースエーテル0.5%の液体急結剤を調製した。また、実験例4と同様のモルタルを調製し、そのセメント100部に対して、液体急結剤を表5に示す量添加し、急結性モルタルとし、その凝結時間を、さらに、圧縮強度を測定した。結果を表5に併記する。
【0043】
【表5】
【0044】
表4より、急結剤の添加量は、セメント100部に対し、3〜20部であることが、吹付け材料の性状として望ましい。
【0045】
「実験例6」
実験例1と同様に、液体急結剤の硫酸アルミニウムの濃度が35%、水溶性セルロースエーテルの濃度が1%となるように調製し、さらに、実験例2と同様に、表6に示す種類および濃度の促進剤を含有する液体急結剤を調製した。また、実験例4と同様のモルタルを調製し、そのセメント100部に対して、急結剤を7部添加し、急結性モルタルとし、その凝結時間、さらに圧縮強度を測定した。液体急結剤は、製造1週間後のものを使用した。結果を表6に併記する。
【0046】
【表6】
【0047】
表6より、液体急結剤のフッ素化合物の濃度が0.1〜10%、アルコールアミン類の濃度が0.1〜5%であれば、凝結性状が向上し、強度発現性が大きく損なわることがないため、液体急結剤の性状として望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の液体急結剤、セメント組成物、それらを用いた吹付け工法を用いることにより、従来の急結剤に比べ、貯蔵安定性および流動性に優れ、さらに凝結性状や強度発現性を高くすることができるため、土木、建築の分野等で広範に使用することが可能である。