(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の作業を行う作業装置と、外部電源の電力によって駆動可能であり、作業装置を駆動させる電動機と、を有する作業機械において、作業装置を外部電源の電力によって駆動させる際に、電動機に供給する電流を所定の電流値以下に制限することで電動機に供給する電力を制限する作業機械の供給電力制限装置であって、
外部電源から電動機に供給する電流の最大電流値を設定する最大電流値設定手段と、
外部電源の電力による電動機の駆動中における電流が、最大電流値設定手段によって設定された最大電流値を超えないように、電動機の出力を制限する出力制限手段と、
作業装置に関する情報を表示する表示部と、
出力制限手段によって電動機の出力が制限された場合における作業装置の動作速度が低下する割合を表示部に表示する速度低下割合表示手段と、を備えた
ことを特徴とする作業機械の供給電力制限装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至
図6は、本発明の一実施形態を示すものである。なお、以下の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0015】
本発明の供給電力制限装置を備えた作業機械としての移動式クレーン1は、
図1に示すように、走行する車両10と、クレーン装置20と、を備えている。
【0016】
車両10は、車輪11を有し、図示しないエンジン、または、エンジンおよび後述するモータジェネレータを動力源として走行する。また、車両10の前側および後側の左右両側には、クレーン作業時に車両10の転倒を防止するとともに、車両10を安定的に支持するためのアウトリガ12が設けられている。アウトリガ12は、幅方向外側に移動可能であるとともに、油圧式のジャッキシリンダ13によって下方に伸長可能である。アウトリガ12は、下端を接地させることにより車両10を地面に対して安定的に支持する。
【0017】
クレーン装置20は、車両10の前後方向略中央部に水平面上を旋回可能に設けられた旋回台21と、旋回台21に対して起伏可能に設けられるとともに、伸縮可能に設けられたブーム22と、ブーム22の先端側から垂下されるワイヤロープ23と、ワイヤロープ23の巻き込みまたは繰り出しを行うためのウインチ24と、旋回台21の前側に設けられ、車両10の走行およびクレーン装置20による作業に関する操作を行うためのキャビン25と、を備えている。
【0018】
旋回台21は、ボールベアリング式またはローラベアリング式の旋回サークル21aを介して車両10に対して旋回自在に設けられ、図示しない油圧式の旋回モータによって旋回する。
【0019】
ブーム22は、複数のブーム部材22a,22b,22cおよび最先端側のブーム部材22dからなり、各ブーム部材22a,22b,22cの内部に先端側に隣り合うブーム部材22b,22c,22dが収納可能なテレスコープ式に構成されている。最基端側のブーム部材22aは、基端部が旋回台21のブラケット21cに揺動自在に連結されている。ブーム部材22aとブラケット21cとの間には、油圧式の起伏シリンダ22eが連結されており、起伏シリンダ22eの伸縮動作によってブーム22を起伏させる。また、最基端側のブーム部材22aの内部には、図示しない油圧式の伸縮シリンダが設けられ、伸縮シリンダの伸縮によってブーム22を伸縮させる。
【0020】
フックブロック23aは、ワイヤロープ23の先端側に設けられ、ブーム22の先端部から垂下される。フックブロック23aには吊荷を係止可能であり、フックブロック23aに係止された吊荷がブーム22の先端部から吊り下げられる。
【0021】
ウインチ24は、ワイヤロープ23が巻き掛けられるドラム24aを有し、ドラム24aは図示しない油圧式のウインチモータによって正逆回転可能に構成されている。
【0022】
キャビン25は、旋回台21上のブラケット21cの側方に設けられ、旋回台21と共に旋回する。
【0023】
各ジャッキシリンダ13、旋回モータ、起伏シリンダ22e、伸縮シリンダおよびウインチモータ等のアクチュエータ60は、作動油によって作動する。
図2に示すように、各アクチュエータ60を作動させる作動油は、油圧供給装置30によって供給される。
【0024】
油圧供給装置30は、
図2に示すように、油圧を生じさせるための油圧ポンプ31と、油圧ポンプ31から吐出された作動油を各アクチュエータ60に供給するための作動油回路32と、を備えている。
【0025】
油圧ポンプ31は、
図2に示すように、車両10に設けられ、車両10を走行させる動力を発生させると共に動力を車輪11に伝達するための動力装置40から取出された動力によって駆動する。油圧ポンプ31は、例えば、斜板式のアキシャルプランジャ油圧ポンプであり、斜板の角度を変更可能な可変容量型の油圧ポンプである。つまり、油圧ポンプ31は、入力される所定の回転数に対して作動油の吐出量が可変に構成されている。本実施形態の油圧ポンプ31では、少なくとも容量を「大」および「小」の二段階に切換え可能である。
【0026】
作動油回路32には、クレーン装置20に設けられたアクチュエータ60(起伏シリンダ、伸縮シリンダ、ウインチモータ)がロータリージョイント33を介して接続されている。また、作動油回路32には、複数のコントロールバルブ(図示せず)が設けられ、各コントロールバルブによって各アクチュエータ60に流入する作動油の流量および流通方向が制御される。各コントロールバルブは、キャビン25内の操作レバーや操作ペダル等の後述する操作入力部51によって操作され、操作入力部51の操作量に応じて作動油の流量の調整が可能である。各コントロールバルブは、ソレノイド等の切換手段を有し、後述するコントローラ50からの信号によって操作が可能である。
【0027】
動力装置40は、動力を発生させるための動力源ユニット41と、動力源ユニット41から出力される動力を、トルクを転換して車輪11側に伝達するためのトルクコンバータ42と、トルクコンバータ42から出力される動力の回転速度およびトルクを変更するためのトランスミッション43と、トランスミッション43から出力される動力を車輪11に伝達するプロペラシャフト44と、プロペラシャフト44に設けられた電気式のリターダ45と、を備えている。
【0028】
動力源ユニット41は、主に車両走行用の動力源であるエンジン41aと、供給された電力によって電動モータとして機能するとともに、エンジン41aの動力によって、または走行中の減速時等に発電機として機能するモータジェネレータ41bと、モータジェネレータ41bで発電された電力を蓄えるとともに、モータジェネレータ41bを電動モータとして機能させる場合に電力を供給可能なバッテリ41cと、バッテリ41cの出力を制御したりモータジェネレータ41bの動作を制御したりするためのモータジェネレータ駆動制御部41dと、エンジン41aの出力軸とモータジェネレータ41bの入出力軸との連結および連結の解除を切換可能なクラッチ41eと、を備えている。
【0029】
モータジェネレータ41bは、エンジン41aとトルクコンバータ42との間に設けられている。エンジン41aの動力は、クラッチ41eによってエンジン41aの出力軸とモータジェネレータ41bの入出力軸とを連結することにより、モータジェネレータ41bの入出力軸を介してトルクコンバータ42に伝達される。
【0030】
モータジェネレータ駆動制御部41dは、インバータ、昇圧コンバータ、モータ制御部、ジェネレータ制御部等を有している。モータジェネレータ駆動制御部41dは、バッテリ41cの出力を制御してモータジェネレータ41bに電力を供給したり、後述するコントローラ50からの信号に応じてモータジェネレータ41bの機能を発電機または電動モータに切換えたりする。また、モータジェネレータ駆動制御部41dには、外部電源に接続するための電源ケーブル41fが接続可能に設けられている。モータジェネレータ駆動制御部41dは、モータジェネレータ41bを電動モータとして機能させる場合に、電源をバッテリ41cまたは外部電源に切換えることが可能である。外部電源は、例えば3相交流200Vや3相交流400V等の電源が用いられる。
【0031】
トルクコンバータ42は、入力軸に設けられたポンプインペラと、出力軸に設けられたタービンライナと、ポンプインペラとタービンライナとの間に固定されたステータと、を有し、入力軸に入力された動力がオイルを介してトルクが増幅されて出力軸から出力されるものである。トルクコンバータ42の出力側には、トランスミッション43に伝達される動力を取出し可能なPTO(パワーテイクオフ)機構46が設けられ、PTO機構46を介して油圧ポンプ31が連結可能である。PTO機構46は、油圧ポンプ31に対するエンジン41aの出力軸およびトルクコンバータ42の入出力軸との連結と連結の解除の切換えが可能である。
【0032】
また、移動式クレーン1は、車両10の走行時やクレーン装置20による作業時における油圧供給装置30および動力装置40の制御を行うためのコントローラ50を有している。
【0033】
コントローラ50は、CPU、ROM、RAM等を有している。コントローラ50は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0034】
コントローラ50には、各アクチュエータ60に対応するコントロールバルブ(図示せず)と、油圧ポンプ31と、動力源ユニット41と、操作レバーやアクセルペダル等の車両10およびクレーン装置20の操作を行うための操作入力部51と、車両10の走行およびクレーン装置20の駆動等の各種設定を行うための設定入力部52と、キャビン25内に設けられ、作業者による設定や運転状態を表示するための液晶パネル等からなる表示装置53と、油圧ポンプ31から吐出される作動油の流量を検出するための流量センサ54と、油圧ポンプ31の吐出側の圧力を検出するための圧力センサ55と、が接続されている。ここで、車両10とクレーン装置20との間で信号を伝達するための信号線は、ロータリージョイント33に備えられたスリップリングを介して接続されている。
【0035】
コントローラ50は、設定入力部52に入力された設定内容に関する信号に基づいて油圧ポンプ31の容量を「大」または「小」に切換える信号を出力する。また、コントローラ50は、設定入力部52に入力された設定内容に関する信号、流量センサ54と圧力センサ55のそれぞれの検出結果に関する信号に基づいてモータジェネレータ41bの動作を制御するための制御信号を出力する。また、コントローラ50は、動力源ユニット41においてモータジェネレータ駆動制御部41dからモータジェネレータ41bに供給される電力量をHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等のデータ記憶装置に記録する。さらに、コントローラ50は、表示装置53の表示を制御するための信号を出力する。
【0036】
以上のように構成された作業機械としての移動式クレーン1において、車両10による走行を行う場合には、主にエンジン41aの動力がプロペラシャフト44に伝達される。また、車両10の走行中において、車速を上げる場合や坂道を上る場合等、大きな出力を要する場合には、電力によってモータジェネレータ41bを駆動させることによりモータジェネレータ41bの動力をアシスト出力としてプロペラシャフト44に伝達する。さらに、車両10の走行中において、車速を下げる場合や坂道を下る場合等、エンジン41aに対する負荷が負となる場合には、プロペラシャフト44によってモータジェネレータ41bを駆動させて発電し、発電された電力をモータジェネレータ駆動制御部41dを介してバッテリ41cに充電する。また、車両10の停車中等のエンジン41aのアイドリング状態では、エンジン41aの動力によってモータジェネレータ41bを駆動させ、発電された電力をモータジェネレータ駆動制御部41dを介してバッテリ41cに充電してもよい。その際、PTO機構46は、油圧ポンプ31に対してエンジン41aの出力軸およびモータジェネレータ41bの入出力軸の連結が解除された状態とする。また、エンジン41aは、モータジェネレータ41bの動力によって始動される。さらに、車両10の走行中に減速させる際には、リターダ45において発電してもよく、この場合発電された電力は、モータジェネレータ駆動制御部41dを介してバッテリ41cに充電される。
【0037】
また、クレーン装置20による作業を行う場合には、エンジン41aの動力、バッテリ41cの電力および外部電源の電力のいずれかによって、油圧ポンプ31を駆動させることが可能である。このため、クレーン装置20は、エンジン41aの動力によって油圧ポンプ31を駆動させるためのエンジン作業モード、バッテリ41cの電力によって油圧ポンプ31を駆動させるためのバッテリ作業モード、または、外部電源の電力によって油圧ポンプ31を駆動させるための外部電源作業モードによって駆動される。作業者は、エンジン作業モード、バッテリ作業モードおよび外部電源作業モードのいずれかを、作業の開始前に設定入力部52を操作して設定する。
【0038】
エンジン作業モードでは、トランスミッション43をニュートラルの状態とし、クラッチ41eによってエンジン41aとモータジェネレータ41bとを連結した状態で、PTO機構46によって油圧ポンプ31に対してエンジン41aの出力軸とモータジェネレータ41bの入出力軸を連結した状態とする。
【0039】
エンジン作業モードにおいて、エンジン41aの回転数は、作業者の操作入力部51に対するアクセル操作によって調整され、使用者の操作入力部51に対するアクセル操作がない状態では作業アイドリング回転数で駆動される。また、エンジン作業モード時における作業の合間の待機状態では、作業アイドリング回転数で駆動するエンジン41aの動力によってモータジェネレータ41bを駆動させ、発電された電力をモータジェネレータ駆動制御部41dを介してバッテリ41cに充電する。さらに、エンジン作業モード時において、バッテリ41cは、外部電源の電力によっても充電が可能である。
【0040】
バッテリ作業モードおよび外部電源作業モードでは、トランスミッション43をニュートラルの状態とし、クラッチ41eをエンジン41aとモータジェネレータ41bとの連結を解除した状態とする。また、バッテリ作業モードおよび外部電源作業モードでは、PTO機構46を油圧ポンプ31に対してモータジェネレータ41bの入出力軸を連結した状態とする。
【0041】
外部電源作業モードでは、クレーン作業を行う場所に設置された電源に接続された電源ケーブル41fを、モータジェネレータ駆動制御部41dに接続する。また、外部電源作業モードでは、外部電源が供給可能な最大電流値である供給可能最大電流値を作業者が設定入力部52を用いて設定する。外部電源作業モードにおいて、コントローラ50は、電流が作業者の設定した最大電流値を超えない範囲でモータジェネレータ41bを駆動させる。また、外部電源作業モード時における作業の合間の待機状態では、外部電源の電力によってバッテリ41cを充電可能である。
【0042】
また、外部電源作業モードでは、
図3に示すように、複数の情報が表示装置53に表示される。
このときの表示装置53には、外部電源の電圧を表示するための使用電圧表示部53aと、作業者が設定した供給可能最大電流値を表示するための供給可能最大電流値表示部53bと、供給可能な電流が制限されてモータジェネレータ41bの出力が制限されることによるクレーン装置20の駆動速度の低下割合を表示するための速度低下割合表示部53cと、クレーン装置20がクレーン作業によって使用した電力を表示するための使用電力量表示部53dと、外部電源がモータジェネレータ駆動制御部41dに接続されているか否かを表示するための外部電源状態表示部53eと、外部電源によるクレーン装置20の操作の可否を表示するための操作可否表示部53fと、が設けられている。
【0043】
外部電源作業モードでは、作業者の供給可能最大電流値の設定を、クレーン作業を可能とする条件としている。このとき、コントローラ50は、供給可能最大電流値の設定によってクレーン装置20の駆動の規制を解除する駆動規制解除処理を行う。このときのコントローラ50の動作を
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、外部電源作業モードが設定されているか否かを判定する。外部電源作業モードが設定されていると判定した場合にはステップS2に処理を移し、外部電源作業モードが設定されてないと判定した場合には駆動規制解除処理を終了する。
【0045】
(ステップS2)
ステップS1において外部電源作業モードが設定されていると判定した場合に、ステップS2においてCPUは、モータジェネレータ41bの供給可能最大電流値が設定されているか否かを判定する。供給可能最大電流値が設定されていると判定した場合にはステップS3に処理を移し、供給可能最大電流値が設定されていないと判定した場合にはステップS4に処理を移す。
【0046】
(ステップS3)
ステップS2において供給可能最大電流値が設定されていると判定した場合に、ステップS3においてCPUは、クレーン装置20の駆動が可能である旨を表示装置53に表示し、駆動規制解除処理を終了する。
【0047】
具体的には、
図3に示すように、表示装置53の供給可能最大電流値表示部53bに供給可能最大電流値を表示し、操作可否表示部53fに「操作可能」と表示する。
【0048】
(ステップS4)
ステップS2において供給可能最大電流値が設定されていないと判定した場合に、ステップS4においてCPUは、モータジェネレータ41bの駆動を規制してクレーン装置20の駆動を制限し、ステップS5に処理を移す。
【0049】
具体的には、供給可能最大電流値が設定されていない場合に、操作入力部51の操作を行ってもモータジェネレータ41bを駆動させない。
【0050】
(ステップS5)
ステップS5においてCPUは、クレーン装置20の駆動が制限されている旨を表示装置53に表示し、駆動規制解除処理を終了する。
【0051】
具体的には、表示装置53の操作可否表示部53fに「操作不可」と表示する。
【0052】
また、外部電源作業モードにおいて、コントローラ50は、モータジェネレータ41bを流れる電流が供給可能最大電流値を超えないようにモータジェネレータ41bの出力を制御する。モータジェネレータ41bの出力が制限された場合には、油圧ポンプ31の出力が低下して、クレーン装置20の駆動速度が低下する。このため、コントローラ50は、モータジェネレータ41bの出力を制御するとともに、クレーン装置20の駆動速度が低下することを作業者に報知するための出力制限報知処理を行う。このときのコントローラ50の動作を
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0053】
(ステップS11)
ステップS11においてCPUは、外部電源作業モードが設定されているか否かを判定する。外部電源作業モードが設定されていると判定した場合にはステップS12に処理を移し、外部電源作業モードが設定されてないと判定した場合には出力制限報知処理を終了する。
【0054】
(ステップS12)
ステップS11において外部電源作業モードが設定されていると判定した場合に、ステップS12においてCPUは、モータジェネレータ41bが駆動しているか否かを判定する。モータジェネレータ41bが駆動していると判定した場合にはステップS13に処理を移し、モータジェネレータ41bが駆動していないと判定した場合には出力制限報知処理を終了する。
【0055】
(ステップS13)
ステップS12においてモータジェネレータ41bが駆動していると判定した場合に、ステップS13においてCPUは、電流が供給可能最大電流値を超えないようにモータジェネレータ41bの出力を制限する出力制限制御を行い、ステップS14に処理を移す。
【0056】
具体的には、クレーン装置20に作用する負荷が大きくなるとモータジェネレータ41bの回転数が低下して流れる電流が大きくなる。出力制限制御は、このときの電流が供給可能最大電流を超えることがないように、モータジェネレータ41bに供給する電力の電圧および電流を調整し、モータジェネレータ41bの出力を制限する。
【0057】
(ステップS14)
ステップS14においてCPUは、ステップS13においてモータジェネレータ41bの出力が制限されているときのクレーン装置20の駆動速度の低下割合を算出し、ステップS15に処理を移す。
【0058】
(ステップS15)
ステップS15においてCPUは、ステップS14において算出したクレーン装置20の駆動速度の低下割合を表示装置53に表示して出力制限報知処理を終了する。
【0059】
具体的には、クレーン装置20の駆動速度の低下割合を、例えば「20%」のように、表示装置53の速度低下割合表示部53cに表示する。
【0060】
また、外部電源作業モードでは、モータジェネレータ41bの出力制限制御を行う場合に、クレーン装置20の駆動力を優先する駆動力優先動作と、クレーン装置20の駆動速度を優先する駆動速度優先動作と、を作業者が選択可能となっている。作業者は、外部電源作業モードを設定するときに設定入力部52を操作することによって、駆動力優先動作または駆動速度優先動作を選択する。コントローラ50は、駆動力優先動作または駆動速度優先動作の作業者の選択に基づいて油圧ポンプ31の容量および各コントロールバルブの弁開度を制御する優先切換制御処理を行う。このときのコントローラ50の動作を
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
(ステップS21)
ステップS21においてCPUは、モータジェネレータ41bの出力制限制御中であるか否かを判定する。モータジェネレータ41bの出力制限制御中であると判定した場合にはステップS22に処理を移し、出力制限制御中でないと判定した場合には優先切換制御処理を終了する。
【0062】
(ステップS22)
ステップS21においてモータジェネレータ41bの出力制限制御中である判定した場合に、ステップS22においてCPUは、作業者によって駆動力優先動作が選択されているか否かを判定する。駆動力優先動作が選択されていると判定した場合にはステップS23に処理を移し、駆動力優先動作が選択されていないと判定した場合、すなわち駆動速度優先動作が選択されていると判定した場合にはステップS26に処理を移す。
【0063】
(ステップS23)
ステップS22において駆動力優先動作が選択されていると判定した場合に、ステップS23においてCPUは、油圧ポンプ31の容量を「小」に設定し、ステップS24に処理を移す。
【0064】
(ステップS24)
ステップS24においてCPUは、駆動しているアクチュエータ60に対応するコントロールバルブの弁開度を小さくし、ステップS25に処理を移す。
【0065】
ここで、複数のアクチュエータ60が同時に駆動している場合には、各アクチュエータの駆動速度に偏りが出ないように、各コントロールバルブの弁開度を調整する。
【0066】
(ステップS25)
ステップS25においてCPUは、油圧ポンプ31の作動油の吐出圧を保持するようにモータジェネレータ41bの電圧および電流を制御し、優先切換制御処理を終了する。
【0067】
(ステップS26)
ステップS22において駆動力優先動作が選択されていない(駆動速度優先動作が選択されている)と判定した場合に、ステップS26においてCPUは、油圧ポンプ31の容量を「大」に設定し、ステップS27に処理を移す。
【0068】
(ステップS27)
ステップS27においてCPUは、駆動しているアクチュエータ60に対応するコントロールバルブの弁開度を大きくし、ステップS28に処理を移す。
【0069】
ここで、複数のアクチュエータ60が同時に駆動している場合には、各アクチュエータの駆動速度に偏りが出ないように、各コントロールバルブの弁開度を調整する。
【0070】
(ステップS28)
ステップS28においてCPUは、表示装置53に吊荷を軽くする旨を報知してステップS29に処理を移す。
【0071】
(ステップS29)
ステップS29においてCPUは、油圧ポンプ31の作動油の吐出流量を保持するようにモータジェネレータ41bの電圧および電流を制御し、優先切換制御処理を終了する。
【0072】
また、コントローラ50は、外部電源作業モードが選択されている間のクレーン装置20の駆動によって消費した電力量をデータ記憶装置に記憶している。
【0073】
コントローラ50は、例えば、1時間毎や一日毎の所定時間毎に、データ記憶装置に記憶された消費電力量を、表示装置53の使用電力量表示部53dに表示する。
【0074】
このように、本実施形態の作業機械によれば、供給可能最大電流値を設定可能とし、外部電源の電力によるモータジェネレータ41bの駆動中における電流が、設定された供給可能最大電流値を超えないように、モータジェネレータ41bの出力を制限している。
これにより、別体の装置を必要とすることなく、外部電源によって駆動中のクレーン装置20の突然の停止を防ぐことが可能となるので、各作業場所におけるクレーン装置20による作業中の安全性の向上および作業効率の向上を図ることができる。
【0075】
また、作業者が入力した電流を供給可能最大電流値としてモータジェネレータ41bの出力を制限するようにしている。
これにより、モータジェネレータ41bの出力が制限されることを作業者が意識しながら作業することができるので、安全性を向上させることが可能となる。また、作業者が供給可能最大電流値を小さく設定することによって、電力の消費量を低減することが可能となる。
【0076】
また、作業者によって供給可能最大電流値の設定がなされない場合に、モータジェネレータ41bの駆動を規制している。
これにより、供給可能最大電流値が設定されない状態でクレーン装置20が駆動することがないため、より安全性を向上させることが可能となる。
【0077】
また、モータジェネレータ41bの出力が制限されている場合に、クレーン装置20の駆動速度が低下する割合を表示装置53に表示するようにしている。
これにより、作業者がモータジェネレータ41bの出力が制限されている状態を意識してクレーン作業を行うことができるので、安全性の向上を図ることが可能となる。
【0078】
また、外部電源の電力によってクレーン装置20を駆動する場合に、クレーン装置20の駆動で消費した電力量を取得し、表示装置53に表示している。
これにより、表示装置53に表示された電力量に基づいて、消費した外部電源の電力の料金の精算を行うことが可能となる。
【0079】
また、外部電源の電力の消費量を所定時間毎に取得している。
これにより、所定時間毎の電力の消費量から作業現場ごとに消費した電力量を得ることが可能となるので、電力の料金の精算が容易である。
【0080】
なお、前記実施形態では、外部電源の電力によって駆動可能なクレーン装置20を備えた移動式クレーン1を作業機械として示したがこれに限られるものではない。外部電源の電力によって駆動可能な作業装置を備えたものであれば、例えば、高所作業車や掘削機等の作業機械に本発明を適用可能である。
【0081】
また、前記実施形態では、作動油の油圧によってアクチュエータ60を駆動させるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、空気圧によってアクチュエータを駆動させるようにしてもよいし、エンジンの出力軸および電動機の出力軸に直接アクチュエータを連結してアクチュエータを駆動させるようにしてもよい。
【0082】
また、前記実施形態では、クレーン装置20がエンジン41aおよびモータジェネレータ41bの一方または両方の動力によって駆動するものを示したがこれに限られるものではない。例えば、クレーン装置20は、外部電源の電力で駆動可能な電動モータの動力でのみ駆動するものでもよい。
【0083】
また、前記実施形態では、キャビン25内に設けられた表示装置53に外部電源作業モードに関する情報を表示するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、モータジェネレータ駆動制御部41dの電源ケーブル41fとの接続部の近傍等、車両10の外面に設けてもよい。
【0084】
また、前記実施形態では、作業者が供給可能最大電流値を設定するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、外部電源が、供給可能最大電流値に関する信号を送信する機能を有している場合には、作業者による供給可能最大電流値の設定を行うことなく、外部電源から送信された信号に基づいて供給可能最大電流値を設定するようにしてもよい。この場合には、作業者が供給可能最大電流値を設定する必要がないため、作業効率を向上させることが可能となる。
【0085】
また、前記実施形態では、外部電源作業モード時におけるクレーン装置20の駆動で消費された全ての電力量を記憶装置に記憶させるようにしているが、これに限られるものではない。例えば、消費された電力量の記録の開始および記録の停止を切り換えるスイッチを設け、作業者のスイッチの操作によってクレーン装置20の駆動で消費された電力量を記録するようにしてもよい。この場合には、クレーン装置20の作業ごとに消費した電力量を正確に取得することが可能となる。