特許第6131087号(P6131087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 協立化学産業株式会社の特許一覧

特許6131087電池のタブリード封止用液状組成物及び電池の製造方法
<>
  • 特許6131087-電池のタブリード封止用液状組成物及び電池の製造方法 図000003
  • 特許6131087-電池のタブリード封止用液状組成物及び電池の製造方法 図000004
  • 特許6131087-電池のタブリード封止用液状組成物及び電池の製造方法 図000005
  • 特許6131087-電池のタブリード封止用液状組成物及び電池の製造方法 図000006
  • 特許6131087-電池のタブリード封止用液状組成物及び電池の製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131087
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】電池のタブリード封止用液状組成物及び電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/08 20060101AFI20170508BHJP
   H01M 2/06 20060101ALI20170508BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   H01M2/08 K
   H01M2/06 K
   H01M10/04 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-78518(P2013-78518)
(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公開番号】特開2014-203645(P2014-203645A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100125793
【弁理士】
【氏名又は名称】川田 秀美
(72)【発明者】
【氏名】徳永 大輔
(72)【発明者】
【氏名】永松 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木野 祐次
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/147070(WO,A1)
【文献】 特開2011−009516(JP,A)
【文献】 特開2005−126658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/08
H01M 2/06
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性化合物、潜在性硬化剤及び熱可塑性フィラー(但し、ゴム状コアシェルポリマーを除く)を含む、電池のタブリード封止用液状組成物。
【請求項2】
熱硬化性化合物、潜在性硬化剤、熱可塑性フィラー(但し、ゴム状コアシェルポリマーを除く)及び無機フィラーを含む、電池のタブリード封止用液状組成物。
【請求項3】
熱硬化性化合物100質量部に対して、熱可塑性フィラーを10〜90質量部含む、請求項1又は2記載のタブリード封止用液状組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性フィラーが、ポリオレフィン類、脂環族飽和炭化水素樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレートポリマー、塩化ポリビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル、ポリエポキシド、ポリアセタール、それらのコポリマー、ポリスチレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリ塩化ビニリデン及びこれらのポリマーの混合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む粉状物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池のタブリード封止用液状組成物
【請求項5】
金属箔とヒートシールフィルムが積層された外装材のヒートシールフィルムに、熱硬化性樹脂、潜在性硬化剤及び熱可塑性フィラー(但し、ゴム状コアシェルポリマーを除く)を含むタブリード封止用液状組成物を塗布する工程と、外装材のヒートシールフィルムに塗布されたタブリード封止用液状組成物中にタブリードを配置し、2つの外装材でタブリード封止用液状組成物とタブリードを挟み、外装材とタブリードを加熱接着する工程とを含む、電池の構成部材を内包する電池の製造方法。
【請求項6】
外装材とタブリードを加熱接着する工程において、2つの外装材を加圧しながら加熱する、請求項記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の外装材とタブリードを接着するタブリード封止用液状組成物及び電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報関連機器、通信機器の分野が発達し、ノートパソコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話等の小型携帯電子機器の普及が促進し、これらの機器に用いる電源や電気自動車用の電池として、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池等の非水系電解液を使用する二次電池が広く使用されている。
【0003】
非水電解液等を使用する電池等の外装材は、例えばアルミニウム箔等の金属箔の片面に、機械的強度を備えたポリアミドフィルムが積層され、他面にポリプロピレン又はポリエチレンのような熱可塑性樹脂からなるヒートシールフィルムが積層された構造を有する外装材が用いられている。
【0004】
電池のケースは、上記のような外装材を用いて、熱可塑性樹脂から構成されるヒートシールフィルム同士が内側に接するように重ねあわされて、周囲の端縁部をヒートシールして、一端が開口する袋状のケースが形成される。この電池ケース内に、正極、負極、電解質等の電池構成部材とタブリードを収納し、タブリードをケースの外側に延長し、延長したタブリードを挟んだ状態で、外装材の開口部を封止してラミネート型の電池パック又は電池が形成される。
【0005】
小型携帯電子機器や電気自動車を使用する、高温又は低温の屋外環境等の過酷な状況を考慮し、電池パック内部の非水系電解液等の電解液が漏出せず、また外部の水や空気等が電池パック内に侵入しないように、外装材とタブリードの封止部分には高い接着性が求められている。
【0006】
外装材とタブリードの封止部分の接着性、気密性を上げるために、複数の孔を設けたタブリードを利用する方法が提案されている(特許文献1)。
また、気密性を上げるために、タブリードにヒートシールフィルムを配置し、外装材のヒートシールフィルムと熱融着する方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−86153号公報
【特許文献2】特開2009−26581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記外装材を使用する場合であっても、外装材とタブリードの接続は、従来、次のような方法によって封止するために接着層に気泡や隙間が残存し、非水系電解液等の電解液の漏出を生じる可能性がある。図1は、従来の方法によって外装材とタブリードを接着する概念図であり、図1(a)は熱融着する前の外装材とタブリードを示す側面図であり、図1(b)は、熱融着後の外装材とタブリードを示す側面図である。
【0009】
図1(a)に示すように、金属箔2に熱可塑性樹脂から構成されるヒートシールフィルム1と外面側フィルム3とを積層した外装材4は、2枚の外装材4、4のヒートシールフィルム1,1側を内面とし、このヒートシールフィルム1,1の間に挟むように、熱可塑性樹脂から構成されるヒートシールフィルム8を周囲に配置したタブリード6a,6bを配置し、タブリード6a,6bを間に挟んだ2枚の外装材4を加圧して、各外装材4のヒートシールフィルム1と、タブリード6の周囲に配置したヒートシールフィルム8とを融着して、2枚の外装材4,4の間にタブリード6を挟んだ状態で貼り合わせて封止する。
【0010】
図1(a)に示すように、2枚の外装材4,4のヒートシールフィルム1,1と、タブリード6の周囲に配置したヒートシールフィルム8を挟んだ状態では、2枚の外装材4,4の間を完全に封止することが困難であり、隙間9が残っている。外装材4,4のヒートシールフィルム1,1と、タブリード6a,6bの周囲に配置したヒートシールフィルム8,8を熱融着して貼り合わせると、図1(b)に示すように、ヒートシールフィルム1,8が溶融した溶融物が広がることによって、隙間(図1(a)の隙間9参照)が埋まり、封止することができるが、隙間が完全に埋まらず、気泡10や隙間を含む接着層7が形成される場合がある。このような接着層7中の気泡10や隙間が、電池の内部の非水系電解液等の電解液の漏出や外部の水や空気の電池の内部への侵入の原因となる場合がある。また、タブリード6の周囲に配置したヒートシールフィルム8中に気泡が存在している場合もあり、これも気泡10を含む接着層7が形成される要因の一つとなっている。
【0011】
近年、電池の高容量化、高出力化が求められており、このような要求を満たす比較的大型の電池では、タブリードの厚さを大きくする傾向があり、このような厚さの厚いタブリードを用いた場合には、気泡や隙間がさらに発生しやすくなる。
【0012】
本発明は、電池の外装材とタブリードの封止部に気泡や隙間を生じることなくより気密性が高く接着することができる、タブリード封止用液状組成物及び電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明1は、熱硬化性化合物、潜在性硬化剤及び熱可塑性フィラーを含む、電池のタブリード封止用液状組成物に関する。
本発明2は、熱硬化性化合物、潜在性硬化剤、熱可塑性フィラー及び無機フィラーを含む、電池のタブリード封止用液状組成物に関する。
本発明3は、熱硬化性化合物100質量部に対して、熱可塑性フィラーを10〜90質量部含む、本発明1又は2のタブリード封止用液状組成物に関する。
【0014】
本発明4は、金属箔とヒートシールフィルムが積層された外装材のヒートシールフィルムに、熱硬化性樹脂、潜在性硬化剤及び熱可塑性フィラーを含むタブリード封止用液状組成物を塗布する工程と、外装材のヒートシールフィルムに塗布されたタブリード封止用液状組成物中にタブリードを配置し、2つの外装材でタブリード封止用液状組成物とタブリードを挟み、外装材とタブリードを加熱接着する工程とを含む、電池の構成部材を内包する電池の製造方法に関する。
本発明5は、外装材とタブリードを加熱接着する工程において、2つの外装材を加圧しながら加熱する、本発明4の電池の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、タブリードと外装材の接着にタブリード封止用液状組成物を用いたことによって、タブリードの端部等に発生しやすい気泡や隙間の発生を抑制することができ、外装材と、タブリードとをより気密性が高く接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来例を示し、(a)2枚の外装材と、この2枚の外装材に挟まれたタブリード(正極用、負極用)とを熱融着する前の状態を示す側面図であり、(b)熱融着後の状態を示す側面図である。
図2】本発明の電池の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
図3】電池構造のイメージを示す上面図(a)と断面図(b)である。
図4】外装材と外装材を接着した試験体15を示し、(a)正面図、(b)側面図、(c)上面図である。
図5】外装材とタブリードを接着した試験体16を示し、(a)正面図、(b)側面図、(c)上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明は、熱硬化性化合物、潜在性硬化剤及び熱可塑性フィラーを含む、電池のタブリード封止用液状組成物に関する。
【0018】
熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物又はオキセタン化合物、(メタ)アクリレート化合物、部分(メタ)アクリル化エポキシ化合物を用いることが好ましい。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
熱硬化性化合物がエポキシ化合物である場合、エポキシ化合物としては、液状のエポキシ樹脂であることが好ましい。この液状のエポキシ樹脂は、例えば重量平均分子量400万以下のビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、多環芳香族エポキシ化合物、それらの変性エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等の1種で液状の化合物を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのエポキシ化合物に常温で固体または高粘性のエポキシ化合物を溶解させて使用してもよい。固体のエポキシ化合物としては、例えば、HP−4700、EXA−4710、HP−4770〔DIC社製〕が挙げられる。高粘性のエポキシ化合物としては、例えば、粘度が10,000mPa・s以上のエポキシ化合物が挙げられる。高粘性のエポキシ化合物としては、例えばHP−4032D、N740、N660、HP−7200〔DIC社製〕等が挙げられる。
【0020】
熱硬化性化合物がオキセタン化合物である場合、オキセタン化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXA)、1,4−ビス〔{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル〕ベンゼン(XDO)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(OXT−211(POX))、2−エチルヘキシルオキセタン(OXT−212(EHOX))、キシリレンビスオキセタン(OXT−121(XDO))、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221(DOX))、3−エチル−〔{(3−トリエトキシシリルプロポキシ)メチル)オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。カッコ内は東亞合成社の品番を示す。それぞれのオキセタン化合物は、1種を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
熱硬化性化合物がエポキシ化合物である場合、潜在性硬化剤としては、ポリアミン、イミダゾール等のアニオン硬化系硬化剤、スルホニウム塩若しくはヨードニウム塩等のオニウム塩系のカチオン硬化系硬化剤、又はエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、3,3’−ジエチル−4,4’アミノジフェニルメタン等のアミン硬化系硬化剤等を用いることが好ましい。熱硬化性化合物がエポキシ化合物であり、潜在性硬化剤がアニオン硬化系硬化剤である場合、熱硬化性化合物100質量部に対して、潜在性硬化剤の配合量は1〜20質量部、より好ましくは3〜15質量部である。これらの潜在性硬化剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
潜在性硬化剤がカチオン硬化系硬化剤である場合、熱硬化性化合物100質量部に対して、潜在性硬化剤の配合量は0.1〜15質量部、より好ましくは0.5〜10質量部である。これらの潜在性硬化剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
潜在性硬化剤がアミン硬化系硬化剤である場合、熱硬化性化合物100質量部に対して、潜在性硬化剤の配合量は1〜150質量部、より好ましくは5〜100質量部である。これらの潜在性硬化剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。熱硬化性化合物に対して、上記範囲の潜在性硬化剤を配合することによって、外装材とタブリードとを良好に接着する接着層を形成することができる。
【0022】
熱硬化性化合物が(メタ)アクリレート化合物である場合、(メタ)アクリレート化合物としては、液状の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、例えば重量平均分子量200万以下のメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。これらの(メタ)アクリレート化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの(メタ)アクリレート化合物に常温で固体または高粘性の(メタ)アクリレート化合物を溶解させて使用してもよい。本明細書において常温とは、20℃±5℃をいう。また、高粘性の(メタ)アクリレート化合物とは、例えば、粘度が10,000mPa・s以上の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。高粘性の(メタ)アクリレート化合物としては、例えばUN7700、R280、UA−1〔ライトケミカル社製〕等が挙げられる。
【0023】
熱硬化性化合物が部分(メタ)アクリル化エポキシ化合物である場合、部分(メタ)アクリル化エポキシ化合物としては、液状の部分(メタ)アクリル化エポキシ化合物であることが好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物である部分(メタ)アクリル化エポキシ化合物が挙げられる。この化合物は、ビスフェノールA型エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸を、常法に従い、塩基性触媒の存在下で、エポキシ基2当量に対してカルボン酸基0.9〜1.1当量を反応させることにより得られる。次いで、この反応生成物に、重量比で約4倍のトルエンと、同量の純水を加え、60〜80℃で1時間撹拌した後、静置して有機層と水層とに分離し、水層は除去する。この操作を3〜5回繰り返し、最後に有機層を回収し残存するトルエンを真空蒸留により除去して水可溶イオン性物質を低減化処理した部分(メタ)アクリル化エポキシ化合物を精製する。上述のビスフェノールA型エポキシ化合物の具体例として、例えば、jER828、834〔三菱化学社製〕、エピクロン850〔DIC社製〕等が挙げられる。これら原料化合物の中で、水可溶イオン性物質の低減化処理を行った化合物が好ましく、例えばエピクロン850S〔DIC社製〕等が好適である。これらの部分(メタ)アクリル化エポキシ化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの部分(メタ)アクリル化エポキシ化合物に常温で固体または高粘性の部分(メタ)アクリル化エポキシ化合物を溶解させて使用してもよい。また、高粘性の部分(メタ)アクリレート化合物とは、例えば、粘度が10,000mPa・s以上の部分(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。高粘性の部分(メタ)アクリレート化合物としては、例えばjER1001、1004〔三菱化学社製〕、エピクロン860、4055〔DIC社製〕から導かれる化合物等が挙げられる。
【0024】
熱硬化性化合物が(メタ)アクリレート化合物である場合、潜在性硬化剤としては、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート等のパーオキシエステル;α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物を用いることが好ましい。熱硬化性化合物が(メタ)アクリレート化合物である場合、熱硬化性化合物100質量部に対して、潜在性硬化剤の配合量は、良好な接着性が得られる範囲であればよく、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部である。熱硬化性化合物に対して、上記範囲の潜在性硬化剤を配合することによって、外装材とタブリードとを良好に接着する接着層を形成することができる。
【0025】
熱可塑性フィラーとしては、ポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレフィン類、脂環族飽和炭化水素樹脂、ポリスチレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレートポリマー、塩化ポリビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル、ポリエポキシド、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)若しくはそれらのコポリマー、ポリフェニレンオキサイド、ポリ塩化ビニリデン又はこれらのポリマーの混合物等の熱可塑性樹脂を含む粉状物を用いることが好ましい。これらの熱可塑性フィラーは、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
熱可塑性フィラーは、熱硬化性化合物100質量部に対して、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは15〜80質量部、さらに好ましくは20〜75質量部、特に好ましくは20〜60質量部である。タブリード封止用液状組成物中の熱可塑性フィラーの配合量が上記範囲内であると、ヒートシールフィルムを含む外装材を用いて、外装材のヒートシールフィルムとタブリードを加熱接着する前に、タブリード封止用液状組成物によって、タブリード封止部分の隙間を埋めることが可能である。外装材のヒートシールフィルムとタブリードを加熱接着する際に、タブリード封止用液状組成物と溶融したヒートシールフィルムとが混ざり合い若しくは相溶して接着層を形成し、予め隙間を埋めているためタブリードの端部等に気泡や隙間が生じることなく、タブリードと外装材を接着することができる。
【0027】
電池のタブリード封止用液状組成物は、熱硬化性化合物、潜在性硬化剤、熱可塑性フィラー及び無機フィラーを含む。
無機フィラーとしては、例えばシリカ、アルミナ、ベーマライト、ジルコニア、酸化チタン等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、複合酸化物等が挙げられる。中でも、無機フィラーは、レーザー回折法による粒子径D50が0.5〜50μmのタルクが好ましい。無機フィラーを含むことによって、透湿度の低減や耐フッ酸性向上、難燃性の付与等の利点がある。無機フィラーを含む場合には、熱硬化性化合物100質量部に対して、無機フィラーを好ましくは10〜90質量部、より好ましくは20〜60質量部である。
【0028】
次に、電池の製造方法について説明する。
【0029】
本発明は、金属箔とヒートシールフィルムが積層された外装材のヒートシールフィルムに、熱硬化性化合物、潜在性硬化剤及び熱可塑性フィラーを含むタブリード封止用液状組成物を塗布する工程と、外装材のヒートシールフィルムに塗布されたタブリード封止用液状組成物中にタブリードを配置し、2つの外装材でタブリード封止用液状組成物とタブリードを挟み、外装材とタブリードを加熱接着する工程とを含む、電池の構成部材を内包する電池の製造方法である。本発明の製造方法に使用するタブリード封止用液状組成物は、さらに無機フィラーを含むものであってもよい。
【0030】
図2は、本発明の電池の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
図2(a)に示すように、まず、金属箔2とヒートシールフィルム1、外側面フィルム3が積層された外装材4のヒートシールフィルム1に、熱硬化性化合物、潜在性硬化剤及び熱可塑性フィラーを含むタブリード封止用液状組成物5を塗布する。塗布する方法としては、特に限定されないが、グラビアコーター、ダイコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ディスペンサー、ジェットディスペンサー、スクリーン印刷機等の機器を用いて塗布することができる。タブリード封止用液状組成物5は、さらに無機フィラーを含むものであってもよい。
【0031】
次に、図2(b)に示すように、外装材4のヒートシールフィルム1に塗布されたタブリード封止用液状組成物5中に、タブリード(正極用タブリード6a、負極用タブリード6b)を配置する。
【0032】
次に、図2(c)に示すように、金属箔2及びヒートシールフィルム1が積層された他の外装材4でタブリード封止用液状組成物5とタブリード(正極用タブリード6a、負極用タブリード6b)を挟む。
【0033】
最後に、図2(d)に示すように、タブリード封止用液状組成物5とタブリード(正極用タブリード6a、負極用タブリード6b)を、一の外装材4のヒートシールフィルム1と他の外装材4のヒートシールフィルム1とで挟み、加熱接着する。加熱によって、ヒートシールフィルム1,1が溶融し、溶融したヒートシールフィルムとタブリード封止用液状組成物5とが混ざり合い若しくは相溶して接着層7となり、気泡や隙間を生じることなく、外装材4とタブリード6とを接着することができる。加熱温度はタブリード封止用液状組成物及びヒートシールフィルムが溶融する温度であれば特に限定されないが、好ましくは100〜200℃、より好ましくは140〜180℃である。加熱時間も特に限定されないが、好ましくは0.1〜30分、より好ましくは5〜20分である。
【0034】
タブリードは、一般的な電池に用いられるものであれば特に限定されない。例えばラミネート型のリチウムイオン二次電池で通常使用されるタブリードは、電池の大きさによってもその仕様が異なり、大型の電池には、導体幅が15.0〜100mm、導体厚が0.1〜0.8mm程度のタブリードが使用される。中型の電池には、導体幅が8.0〜15.0mm、導体厚が0.1〜0.5mm程度のタブリードが使用される。小型の電池には、導体幅が1.5〜10mm、導体厚が0.08〜0.2mm程度のタブリードが使用される。また、タブリードを構成する材料も、正極用又は負極用によってそれぞれ異なる。本発明の電池のタブリード封止用液状組成物は、タブリードの厚さや材質等に影響されることなく、タブリードの端部等に気泡や隙間が生じることなく、タブリードと外装材を接着することができる。また、本発明の電池のタブリード封止用液状組成物は、周囲にヒートシールフィルムを配置したタブリードにも適用することができる。周囲にヒートシールフィルムを配置したタブリードと、タブリード封止用液状組成物とは、外装材のヒートシールフィルムと加熱接着する際に、溶融したタブリードの周囲に配置したヒートシールフィルムと、溶融した外装材のヒートシールフィルムと混ざり合い若しくは相溶して、接着層を形成し、タブリード封止用液状組成物で予め隙間が埋められているタブリードの端部に気泡や隙間を生じることなく、タブリードと外装材とを接着することができる。
【0035】
図3は、電池の2つの外装材とタブリードとを接着し、正極14a、負極14b、セパレーター12、電解液13等の電池構成部材を内包する実際の電池構造のイメージを示す上面図(a)と断面図(b)である。図3に示すように、本発明によれば、タブリード封止用液状組成物5と、溶融したヒートシールフィルム1とを含む接着層7が、タブリード6と外装材4、外装材4と外装材4とをより気密性が高く接着できる。
【0036】
一の外装材のヒートシールフィルムと、他の外装材のヒートシールフィルムの間にタブリードを挟んで加熱接着する工程において、一の外装材、タブリード、他の外装材は、両方の外装材の外方を加圧して、加熱接着することが好ましい。加熱接着することによって、溶融したヒートシールフィルム及び溶融したタブリード封止用液状組成物によって、より気密性が高く外装材とタブリードを接着することができる。
【実施例】
【0037】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0038】
(実施例1〜3)
表1に示す熱硬化性化合物、潜在性硬化剤及び熱可塑性フィラーを用いて、表1に示す配合で混合し、実施例1〜3及び比較例1〜2の組成物を得た。表1に示す数値は、質量部を表す。
【0039】
(外装材と外装材を接着した試験体の製造方法)
外装材4として、外面側フィルム3と、アルミ箔層2と、ポリプロピレン(PP)製のヒートシールフィルム1とがこの順序で積層された外装材4を用いた。この外装材4を幅3cm、長さ6cmにカットして試験片を作製した。2枚の試験片の外装材4,4の両端部に幅0.5cm、厚さ220μmの2スペーサー11,11を配置した。2つのスペーサーの間にディスペンス法により、実施例1〜3及び比較例1〜2の組成物5をそれぞれ縦3cm、横2cmの大きさに塗布した。2つの外装材4,4のヒートシールフィルム1,1の間に組成物5、2つのスペーサー11を挟み、さらに2つの外装材の外方にガラス(図示省略)を配置して、ガラス、外装材4、組成物5とスペーサー11、外装材4、ガラスの順で配置された積層体をクリップで挟み、2枚の外装材4,4の外方から加圧した。積層体をクリップで挟んだ状態で180℃のオーブンに入れ、10分間、加熱して、外装材4のヒートシールフィルム1及び組成物5を溶融させて、外装材4と外装材4を接着した試験体15を作製した。図4は、外装材と外装材を接着した試験体15を示し、(a)正面図、(b)側面図、(c)上面図である。
【0040】
(外装材とタブリードを接着した試験体の製造方法)
外装材4として、外面側フィルム3と、アルミ箔層2と、ポリプロピレン(PP)製のヒートシールフィルム1とがこの順序で積層された外装材4を用いた。この外装材4を幅3cm、長さ6cmにカットして試験片を作製した。1枚の試験片の外装材4と、幅3cm、長さ6cmにカットしたタブリード6の両端部に幅0.5cm、厚さ220μmの2スペーサー11,11を配置した。2つのスペーサーの間にディスペンス法により、実施例1〜3及び比較例1〜2の組成物5をそれぞれ縦3cm、横2cmの大きさに塗布した。1つの外装材4のヒートシールフィルム1と1つのタブリード6の間に組成物5、2つのスペーサー11を挟み、さらに外装材4とタブリード6の外方にガラス(図示省略)を配置して、ガラス、外装材4、組成物5とスペーサー11、タブリード6、ガラスの順で配置された積層体をクリップで挟み、外装材4とタブリード6の外方から加圧した。積層体をクリップで挟んだ状態で180℃のオーブンに入れ、10分間、加熱して、外装材4のヒートシールフィルム1及び組成物5を溶融させて、外装材4とタブリード6を接着した試験体16を作製した。図5は、外装材とタブリードを接着した試験体16を示し、(a)正面図、(b)側面図、(c)上面図である。
【0041】
(接着性試験)
各試験体の一方の外装材を固定し、他方の外装材を180°方向に人手で引っ張り、引っ張り強度を観察した。強く引っ張っても外装材がはがれない場合を○とし、容易に外装材がはがれる場合を×とした。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すとおり、実施例1〜3のタブリード封止用液状組成物を用いた試験片は、強く引っ張っても外装材がはがれず、気泡や隙間等を生じることなく、外装材と外装材が気密に接着されていることが確認できた。一方、無機フィラーだけを含む組成物を用いた比較例1の試験片やフィラーを含まない組成物を用いた比較例2の試験片は、気泡や隙間が生じることなく接着されていたが、外装材同士が容易にはがれてしまい、電池として充分な接着強度を有していないことが確認できた。また、表1に示すとおり、実施例1〜3のタブリード封止用液状組成物を用いた試験片は、強く引っ張っても外装材とタブリードが剥がれず、気泡や隙間等を生じることなく、外装材とタブリードが気密に接着されていることが確認できた。一方、無機フィラーだけを含む組成物を用いた比較例1の試験片やフィラーを含まない組成物を用いた比較例2の試験片は、気泡や隙間が生じることなく接着されていたが、外装材とタブリードが容易にはがれてしまい、電池として充分な接着強度を有していないことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、電池の構成部材を内包する外装材と、外部端子と接続可能なタブリードとを気密に接着することができ、屋外環境等の過酷な条件で使用される場合であっても、安全性、耐久性を有する電池の製造が可能であり、産業上有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 ヒートシールフィルム
2 金属箔
3 外面側フィルム
4 外装材
5 タブリード封止用液状組成物
6 タブリード
6a 正極用タブリード
6b 負極用タブリード
7 接着層
8 ヒートシールフィルム
9 隙間
10 気泡
11 スペーサー
12 セパレーター
13 電解液
14a 正極
14b 負極
15 試験体(外装材と外装材)
16 試験体(外装材とタブリード)
図1
図2
図3
図4
図5