(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
機体と、該機体に設けられたアウトリガと、該機体に対して起伏可能に設けられたブームと、該ブームを起伏させる起伏シリンダとを備える作業車において、該起伏シリンダのストロークエンドを検出する装置であって、
前記ブームの水平面に対する角度である対地角度を検出する対地角度検出器と、
前記アウトリガのジャッキアップが完了したことを検出するジャッキアップ状態検出器と、
前記対地角度検出器および前記ジャッキアップ状態検出器の検出値が入力されていると共に、前記起伏シリンダがストロークエンドである場合の前記ブームの前記機体に対する角度であるストロークエンド対機角度が予め記憶されているストロークエンド判定手段と、を備え、
前記ストロークエンド判定手段は、
前記ジャッキアップ状態検出器が検出した際の前記対地角度を機体傾斜角とし、
前記ストロークエンド対機角度と前記機体傾斜角とから、前記起伏シリンダがストロークエンドである場合の前記ブームの水平面に対する角度であるストロークエンド対地角度を求め、
前記ストロークエンド対地角度と現在の前記対地角度とを比較して、前記起伏シリンダがストロークエンドであるか否かを判定する
ことを特徴とする起伏シリンダのストロークエンド検出装置。
機体と、該機体に設けられたアウトリガと、該機体に対して起伏可能に設けられたブームと、該ブームを起伏させる起伏シリンダとを備える作業車において、該起伏シリンダのストロークエンドを検出する装置であって、
前記ブームの水平面に対する角度である対地角度を検出する対地角度検出器と、
前記アウトリガのジャッキアップが完了したことを検出するジャッキアップ状態検出器と、
前記対地角度検出器および前記ジャッキアップ状態検出器の検出値が入力されていると共に、前記起伏シリンダがストロークエンドである場合の前記ブームの前記機体に対する角度であるストロークエンド対機角度が予め記憶されているストロークエンド判定手段と、を備え、
前記ストロークエンド判定手段は、
前記ジャッキアップ状態検出器が検出した際の前記対地角度を機体傾斜角とし、
前記機体傾斜角と現在の前記対地角度とから、前記ブームの前記機体に対する角度である対機角度を求め、
前記ストロークエンド対機角度と前記対機角度とを比較して、前記起伏シリンダがストロークエンドであるか否かを判定する
ことを特徴とする起伏シリンダのストロークエンド検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明に係るストロークエンド検出装置は、移動式クレーンや高所作業車などのブームを有する作業車に設けられ、ブームを起伏させる起伏シリンダのストロークエンドを検出するために用いられる。移動式クレーンとしては、オールテレーンクレーン、ラフテレーンクレーン、トラッククレーン、積載形トラッククレーンなどが挙げられる。以下では、積載形トラッククレーンを例に説明するが、他の作業車においても本発明を適用することで同様の効果を奏することができる。
【0013】
まず、積載形トラッククレーンの構成について説明する。
図16(A)に示すように、積載形トラッククレーンMは、汎用トラック30の運転室31と荷台32との間の車両フレーム33に小型クレーン40が搭載されたものである。なお、汎用トラック30が特許請求の範囲に記載の「機体」に相当する。
【0014】
小型クレーン40は、車両フレーム33上に固定されたベース41と、ベース41に対して旋回可能に設けられたポスト42と、ポスト42の上端部に起伏可能に設けられたブーム43と、ベース41の左右両側に設けられた一対のアウトリガ44とを備えている。アウトリガ44は、ベース41に挿入された張出ビーム44aと、張出ビーム44aの先端部に固定されたアウトリガジャッキ44bとで構成されている。
【0015】
ベース41には旋回モータが内蔵されており、旋回モータの駆動によりポスト42が旋回する。ポスト42とブーム43との間には起伏シリンダ45が取り付けられている。この起伏シリンダ45を伸長させるとブーム43が起仰し、起伏シリンダ45を収縮させるとブーム43が倒伏する。ブーム43はテレスコピック状に構成されており、伸縮シリンダにより伸縮動作する。ポスト42にはウインチが内蔵されており、このウインチからワイヤロープをブーム43の先端部に導いて、ブーム43先端部の滑車を介してフック46に掛け回すことにより、フック46をブーム43の先端部から吊り下げている。
【0016】
クレーン作業の開始時には張出ビーム44aを張り出し、アウトリガジャッキ44bを伸長して下端のフロートを接地させる。以下、この操作を「ジャッキアップ」と称する。ジャッキアップすることで、積載形トラッククレーンMが支持され安定が確保される。クレーン作業の終了時には、アウトリガジャッキ44bを収縮し、張出ビーム44aを引き込んで、アウトリガ44を格納する。
【0017】
図16(B)に示すように、ジャッキアップすると、積載形トラッククレーンMは前方がアウトリガ44で支持されるため、後輪34のサスペンションが沈み、前輪35のサスペンションが伸びて、前方が高くなるように前後方向に傾斜する。なお、大型の移動式クレーンは、アウトリガが4本であり基本的には機体が水平となるようにジャッキアップされるが、地面の傾斜や作業員の技量などによって完全に水平にできない場合もある。
【0018】
ブーム43は、ジャッキアップ作業中や汎用トラック30による走行中などクレーン作業以外の場合では格納状態とされる。積載形トラッククレーンMにおいてブーム43の格納状態とは、ブーム43を汎用トラック30の前方または後方に旋回させ、倒伏させた状態である。
【0019】
図17に示すように、本明細書では、機体30(汎用トラック30)の水平面Gに対する角度を機体傾斜角αと称する。機体30を水平面Gに静置した場合の機体傾斜角αを0とする。
【0020】
また、ブーム43の水平面Gに対する角度を対地角度θ
gと称する。機体30を水平面Gに静置しブーム43を格納状態とした場合の対地角度θ
gを0とする。ブーム43の機体30に対する角度を対機角度θ
bと称する。ブーム43を格納状態とした場合の対機角度θ
bを0とする。
【0021】
また、起伏シリンダ45がストロークエンドである場合のブーム43’の対地角度θ
gをストロークエンド対地角度Θ
gと称する。起伏シリンダ45がストロークエンドである場合のブーム43’の対機角度θ
bをストロークエンド対機角度Θ
bと称する。ストロークエンド対地角度Θ
gおよびストロークエンド対機角度Θ
bには、それぞれ起伏シリンダ45の伸長側ストロークエンド(ブーム43の起仰側のストロークエンド)と、収縮側ストロークエンド(ブーム43の倒伏側のストロークエンド)の2種類が含まれる。
【0022】
積載形トラッククレーンMには、安定性を確保するために過負荷防止装置が設けられる。一般に、過負荷防止装置は、ブーム43の長さを検出する長さ検出器と、ブーム43の対地角度θ
gを検出する対地角度検出器と、ブーム43の旋回角度を検出する旋回角度検出器と、起伏シリンダ45に作用する負荷を検出する起伏反力検出器とを備えている。長さ検出器で検出されたブーム43の長さと、対地角度検出器で検出されたブーム43の対地角度θ
gと、旋回角度検出器で検出されたブーム43の旋回角度とから転倒モーメントの限界値を演算し、起伏反力検出器で検出されたブーム43に作用するモーメントが転倒モーメントの限界値を超えようとする場合に、ブームの操作を規制したり警報を発したりして、積載形トラッククレーンMの転倒を防止している。
【0023】
また、積載形トラッククレーンMには、安全装置としてジャッキアップ状態検出器が設けられる。ジャッキアップ状態検出器はアウトリガ44のジャッキアップが完了したことを検出する検出器である。ジャッキアップが完了した状態のみにおいてクレーン作業を許容することで、ジャッキアップ忘れを防止し、積載形トラッククレーンMの安定性を確保している。
【0024】
また、積載形トラッククレーンMには、安全装置としてブーム格納状態検出器が設けられる。ブーム格納状態検出器はブーム43が格納状態であることを検出する検出器である。ブーム43が格納状態である場合にのみ汎用トラック30による走行を許容することで、ブーム43の格納忘れを防止し、走行中の事故を防止している。
【0025】
(第1実施形態)
つぎに、本発明の第1実施形態に係るストロークエンド検出装置Aについて説明する。
図1に示すように、ストロークエンド検出装置Aは、対地角度検出器11と、ジャッキアップ状態検出器12と、ストロークエンド判定手段20とを備えている。
【0026】
対地角度検出器11はブーム43の対地角度θ
gを検出する検出器である。対地角度検出器11は、例えばロータリーポテンショメータなどで構成される。前述のごとく、対地角度検出器11は過負荷防止装置に用いられるため、1つの対地角度検出器11をストロークエンド検出装置Aと過負荷防止装置とで併用すればよく、新たに検出器を設ける必要はない。
【0027】
ジャッキアップ状態検出器12は、アウトリガ44のジャッキアップが完了したことを検出する検出器である。ジャッキアップ状態検出器12は、例えばアウトリガジャッキ44bの伸長動作側の油室に接続された油路に設けた油圧センサなどからなり、油圧センサで測定された油圧からジャッキアップが完了したことを検出するよう構成されたものである。前述のごとく、ジャッキアップ状態検出器12は安全装置として用いられるため、1つのジャッキアップ状態検出器12をストロークエンド検出装置Aと安全装置とで併用すればよく、新たに検出器を設ける必要はない。
【0028】
ストロークエンド判定手段20は、CPUやメモリなどで構成されたものであり、対地角度検出器11およびジャッキアップ状態検出器12の検出値が入力されている。また、ストロークエンド判定手段20にはストロークエンド対機角度Θ
bが予め記憶されている。なお、ストロークエンド対機角度Θ
bは、積載形トラッククレーンMの構造から求められる。また、ストロークエンド対機角度Θ
bとして、起伏シリンダ45が正にストロークエンドである場合の対機角度θ
bを設定してもよいし、その対機角度θ
bに至る前の余裕を設けた値を設定してもよい。
【0029】
ストロークエンド判定手段20は、対地角度検出器11およびジャッキアップ状態検出器12の検出値を入力として、起伏シリンダ45がストロークエンドであるか否かを判定し、その結果を出力する。
図1中、符号Xは、過負荷防止装置や表示灯などであり、ストロークエンド判定手段20の出力を基にして動作する。
【0030】
ストロークエンド判定手段20は、以下の手順で起伏シリンダ45のストロークエンドを判定する。
図2に示すように、ストロークエンド判定手段20は、前処理であるストロークエンド対地角度演算処理(ステップS100)を行った後に、ストロークエンド判定処理(ステップS200)を行う。ストロークエンド判定処理(ステップS200)は繰り返し行われ、起伏シリンダ45がストロークエンドであるか否かを随時判定する。なお、ストロークエンド判定手段20は、例えばパワーテイクオフ装置を動力取出状態(エンジンの動力を小型クレーン40に供給する状態)に切り換えた場合に電源がONになり、処理を開始する。また、例えばパワーテイクオフ装置の動力取出状態を解除した場合に電源がOFFになり、処理を終了する。
【0031】
つぎに、ストロークエンド対地角度演算処理(ステップS100)の詳細を説明する。
図3に示すように、まず、ストロークエンド判定手段20は、ジャッキアップ状態検出器12がアウトリガ44のジャッキアップが完了したことを検出したか否かを判断する(ステップS111)。ジャッキアップが完了するまではステップS111を繰り返し行い、ジャッキアップの完了まで待機する。
【0032】
ジャッキアップが完了した場合には、ストロークエンド判定手段20は対地角度検出器11で検出された対地角度θ
gを取得して、その対地角度θ
gを機体傾斜角αとする(ステップS112)。すなわち、ジャッキアップ状態検出器12がジャッキアップの完了を検出した際に対地角度検出器11で検出された対地角度θ
gを機体傾斜角αとする。ジャッキアップ完了直後のブーム43は格納状態であるため対機角度θ
bは0である。そのため、ブーム43の対地角度θ
gと機体傾斜角αとが等しくなり、対地角度θ
gから機体傾斜角αを求めることができる(
図17参照)。
【0033】
つぎに、ストロークエンド判定手段20は、機体傾斜角αと、予め記憶されているストロークエンド対機角度Θ
bとから、ストロークエンド対地角度Θ
gを求める(ステップS113)。
【0034】
具体的には、下記数1に示すように、ストロークエンド対機角度Θ
bに機体傾斜角αを加算してストロークエンド対地角度Θ
gを演算する。なお、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
bに機体傾斜角αを加算すれば、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
gが求まり、収縮側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
bに機体傾斜角αを加算すれば、収縮側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
gが求まる。
【数1】
【0035】
なお、予め複数の機体傾斜角αごとのストロークエンド対地角度Θ
gを記憶しておき、ステップS112で求められた機体傾斜角αに対応するストロークエンド対地角度Θ
gを取得するように構成してもよい。
【0036】
つぎに、ストロークエンド判定処理(ステップS200)の詳細を説明する。
図4に示すように、まず、ストロークエンド判定手段20は、対地角度検出器11で検出された現在の対地角度θ
gを取得する(ステップS211)。
【0037】
つぎに、ストロークエンド対地角度演算処理(ステップS100)で求められたストロークエンド対地角度Θ
gと現在の対地角度θ
gとを比較する(ステップS212)。現在の対地角度θ
gが、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g以上、または収縮側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g以下の場合には、ストロークエンドであると判定しその判定結果を出力する(ステップS213)。一方、現在の対地角度θ
gが、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g未満、かつ収縮側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
gより大きい場合には、ストロークエンドでないと判定しストロークエンド判定処理(ステップS200)を終了する。なお、ストロークエンドでないと判定した場合にも、その判定結果を出力するように構成してもよい。
【0038】
上記ストロークエンド判定処理(ステップS200)が繰り返し行われることにより(
図2参照)、クレーン作業中において起伏シリンダ45がストロークエンドであるか否かが随時判定される。
【0039】
ストロークエンド検出装置Aの出力を過負荷防止装置Xに入力する場合には、過負荷防止装置Xはストロークエンド検出装置Aからの入力に基づいて、ストロークエンドである場合に起伏反力検出器の検出値を用いないように動作する。なお、過負荷防止装置Xは、伸長側ストロークエンドの場合のみ動作を変更すればよい。そのため、上記ストロークエンド対地角度Θ
gおよびストロークエンド対機角度Θ
bとして、伸長側ストロークエンドの場合のみを考慮するように構成してもよい。この場合、ステップS212では、現在の対地角度θ
gが伸長側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g以上の場合にはストロークエンドであると判定し、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g未満の場合にはストロークエンドでないと判定する。
【0040】
ストロークエンド検出装置Aの出力を表示灯Xに入力する場合には、表示灯Xはストロークエンド検出装置Aからの入力に基づいて、ストロークエンドである場合に点灯するなどして、作業員に警告を発する。
【0041】
以上のように、ストロークエンド検出装置Aは、予め記憶されているストロークエンド対機角度Θ
bと対地角度検出器11の検出値とを基に求めたストロークエンド対地角度Θ
gと、現在の対地角度θ
gとを比較することで、起伏シリンダ45がストロークエンドであるか否かを判定するので、汎用トラック30が水平面Gに対して傾いていてもストロークエンドを正常に検出できる。
【0042】
また、過負荷防止装置に用いられる対地角度検出器11を用いることができるので、新たな検出器を設ける必要がなく、安価な構成で起伏シリンダ45のストロークエンドを検出できる。
【0043】
(第2実施形態)
つぎに、本発明の第2実施形態に係るストロークエンド検出装置Bについて説明する。
図5に示すように、ストロークエンド検出装置Bは、対地角度検出器11とジャッキアップ状態検出器12に加え、ブーム43の旋回角度φを検出する旋回角度検出器13を備えている。対地角度検出器11、ジャッキアップ状態検出器12、および旋回角度検出器13の検出値はストロークエンド判定手段20に入力されている。なお、本明細書では、ブーム43を格納状態とした場合の旋回角度φを0とする。
【0044】
本実施形態においても、
図2に示すように、ストロークエンド判定手段20は、前処理であるストロークエンド対地角度演算処理(ステップS100)を行った後に、ストロークエンド判定処理(ステップS200)を繰り返し行う。
【0045】
本実施形態のストロークエンド対地角度演算処理(ステップS100)の基本的なフローは第1実施形態と同様である(
図3参照)。ただし、ステップS113における処理が異なる。本実施形態では、ステップS113において、ストロークエンド判定手段20は、機体傾斜角αと、予め記憶されているストロークエンド対機角度Θ
bとから、ブーム43の旋回角度φに依存したストロークエンド対地角度Θ
gを求める。ここで、「旋回角度φに依存したストロークエンド対地角度Θ
g」とは、ストロークエンド対地角度Θ
gが旋回角度φの関数である場合や、ストロークエンド対地角度Θ
gが複数の旋回角度φごとの値の組合せである場合が含まれる概念である。
【0046】
具体的には、下記数2に示すように、ストロークエンド対機角度Θ
bと機体傾斜角αとから、ストロークエンド対地角度Θ
gを旋回角度φの関数として求める。なお、数2に伸長側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
bを代入すれば、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g(φ)が求まり、数2に収縮側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
bを代入すれば、収縮側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g(φ)が求まる。
【数2】
【0047】
なお、数2は以下のように導出される。
まず、機体傾斜角αを機体30の方位φの関数として求める。ここで、機体30の方位φはブーム43の旋回角度φと同一とする。方位φは格納状態とした場合のブーム43の方向を0とする。また、機体30の傾斜方向は格納状態のブーム43の方向と同一であると仮定する。
【0048】
図18に示すように、ステップS112で求められた機体傾斜角αは、格納状態のブーム43の対地角度θ
gであるから、方位φ=0における機体傾斜角αである。機体30の傾斜面Iに沿って原点Oから方位φ=0へ延びる単位長さeの線分を線分OAとすると、点Aから原点Oを通る水平面G(x-y平面)への垂線の長さh
1は数3で表される。
【数3】
【0049】
原点Oから方位φへ延びる単位長さeの線分を線分OBとし、点Bから線分OAへの垂線と線分OAの交点を点Cとすると、線分OCの長さlは数4で表される。数3と数4から、点Cから水平面Gへの垂線の長さh
2は数5で表される。
【数4】
【数5】
【0050】
点Bから水平面Gへの垂線の長さは、点Cから水平面Gへの垂線の長さh
2と等しいので、方位φにおける機体傾斜角α(φ)は数6で表される。数6で求められたα(φ)を、数1のαに代入することで、数2が得られる。
【数6】
【0051】
なお、ストロークエンド対地角度Θ
gを旋回角度φの関数として求めるのに代えて、予め複数の機体傾斜角αおよび旋回角度φごとのストロークエンド対地角度Θ
gを記憶しておき、ステップS112で求められた機体傾斜角αに対応するストロークエンド対地角度Θ
gを、複数の旋回角度φごとの値の組合せとして取得するように構成してもよい。
【0052】
つぎに、ストロークエンド判定処理(ステップS200)の詳細を説明する。
図6に示すように、まず、ストロークエンド判定手段20は、対地角度検出器11で検出された現在の対地角度θ
gを取得し(ステップS221)、旋回角度検出器13で検出された現在の旋回角度φを取得する(ステップS222)。
【0053】
つぎに、ストロークエンド対地角度演算処理(ステップS100)で求められたストロークエンド対地角度Θ
g(φ)に現在の旋回角度φを代入し、現在の旋回角度φにおけるストロークエンド対地角度Θ
g(φ)を求める(ステップS223)。
【0054】
予め複数の機体傾斜角αおよび旋回角度φごとのストロークエンド対地角度Θ
gを記憶している場合には、ストロークエンド対地角度演算処理(ステップS100)で取得された複数の旋回角度φごとのストロークエンド対地角度Θ
gから、現在の旋回角度φに対応するストロークエンド対地角度Θ
gを取得する(ステップS223)。
【0055】
つぎに、ストロークエンド対地角度Θ
g(φ)と現在の対地角度θ
gとを比較する(ステップS224)。現在の対地角度θ
gが、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g(φ)以上、または収縮側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g(φ)以下の場合には、ストロークエンドであると判定しその判定結果を出力する(ステップS225)。一方、現在の対地角度θ
gが、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g(φ)未満、かつ収縮側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g(φ)より大きい場合には、ストロークエンドでないと判定しストロークエンド判定処理(ステップS200)を終了する。
【0056】
なお、伸長側ストロークエンドのみを考慮する場合には、ステップS224では、現在の対地角度θ
gが伸長側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g(φ)以上の場合にはストロークエンドであると判定し、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g(φ)未満の場合にはストロークエンドでないと判定する。
【0057】
上記ストロークエンド判定処理(ステップS200)が繰り返し行われることにより(
図2参照)、クレーン作業中において起伏シリンダ45がストロークエンドであるか否かが随時判定される。
【0058】
以上のように、本実施形態のストロークエンド検出装置Bは、ブーム43の旋回角度φを考慮して対地角度θ
gとストロークエンド対地角度Θ
g(φ)とを比較するので、ジャッキアップが完了した状態からブーム43を旋回させた場合においても、起伏シリンダ45のストロークエンドを正常に検出できる。
【0059】
(第3実施形態)
前記第2実施形態では、機体30の傾斜方向と格納状態のブーム43の方向とが同一であると仮定している。積載形トラッククレーンMの場合、機体30の傾斜方向は主に前後方向であり、ブーム43は前方または後方に旋回させた状態で格納されるため、上記仮定は現実とよく一致する。しかし、厳密に考えると機体30が左右方向にも傾斜する場合があり、その場合には機体30の傾斜方向と格納状態のブーム43の方向とが同一とならない。また、大型の移動式クレーンなど、アウトリガが4本の場合には傾斜方向はいかなる方向でもあり得る。本発明の第3実施形態に係るストロークエンド検出装置Cは、機体30の傾斜方向と格納状態のブーム43の方向とが同一でない場合を考慮した形態である。
【0060】
本実施形態のストロークエンド検出装置Cは、第2実施形態のストロークエンド検出装置Bと同様に、対地角度検出器11、ジャッキアップ状態検出器12、および旋回角度検出器13を備えており、それらの検出値がストロークエンド判定手段20に入力されている(
図5参照)。
【0061】
本実施形態においても、
図2に示すように、ストロークエンド判定手段20は、前処理であるストロークエンド対地角度演算処理(ステップS100)を行った後に、ストロークエンド判定処理(ステップS200)を繰り返し行う。
【0062】
つぎに、ストロークエンド対地角度演算処理(ステップS100)の詳細を説明する。
図7に示すように、まず、ストロークエンド判定手段20は、ジャッキアップ状態検出器12がアウトリガ44のジャッキアップが完了したことを検出したか否かを判断する(ステップS131)。ジャッキアップが完了するまではステップS131を繰り返し行い、ジャッキアップの完了まで待機する。
【0063】
ジャッキアップが完了した場合には、ストロークエンド判定手段20は対地角度検出器11で検出された対地角度θ
gを取得して、その対地角度θ
gを方位φ=0(旋回角度φ=0)における機体傾斜角α
0とする(ステップS132)。
【0064】
つぎに、ストロークエンド判定手段20は、ブーム43を所定の旋回角度φだけ旋回させる(ステップS133)。ここで、ストロークエンド判定手段20の指示により自動的にブーム43を旋回させるように構成してもよいし、音声や表示などで作業員に通知することで、作業員の操作によりブーム43を旋回するように構成してもよい。
【0065】
ブーム43の旋回後、対地角度検出器11で検出された対地角度θ
gを取得して、その対地角度θ
gを方位φ(旋回角度φ)における機体傾斜角α
φとする(ステップS134)。以上より、ジャッキアップが完了した際の、2方位(0、φ)における対地角度(機体傾斜角α
0、α
φ)が求まる。
【0066】
つぎに、ストロークエンド判定手段20は、これら2方位(0、φ)における対地角度(機体傾斜角α
0、α
φ)から、機体傾斜方向βと、機体傾斜方向βにおける機体傾斜角αとを求める(ステップS135)。
【0067】
具体的には、下記数7より、機体傾斜角αと機体傾斜方向βとが求まる。
【数7】
【0068】
なお、数7は以下のようにして求められる。
図19に示すように、機体30の傾斜面Iに沿って原点Oから方位φ=0へ延びる単位ベクトルをベクトルAとすると、ベクトルAと原点Oを通る水平面G(x-y平面)とのなす角は、方位φ=0における機体傾斜角α
0である。また、傾斜面Iに沿って原点Oから方位φへ延びる単位ベクトルをベクトルBとすると、ベクトルBと原点Oを通る水平面G(x-y平面)とのなす角は、方位φにおける機体傾斜角α
φである。したがって、ベクトルAおよびベクトルBを直交座標で表すと数8の通りである。
【数8】
【0069】
傾斜面Iの法線ベクトルNは、ベクトルAとベクトルBの外積で求められ、数9の通りである。
【数9】
【0070】
機体傾斜方向βは法線ベクトルNの水平面Gへの射影ベクトルとx軸とのなす角と等しく、機体傾斜方向βにおける機体傾斜角αは法線ベクトルNのz軸とのなす角と等しいことから、数7が導かれる。
【0071】
つぎに、ストロークエンド判定手段20は、機体傾斜角αと、機体傾斜方向βと、予め記憶されているストロークエンド対機角度Θ
bとから、ブーム43の旋回角度φに依存したストロークエンド対地角度Θ
gを求める(ステップS136)。
【0072】
具体的には、下記数10に示すように、ストロークエンド対機角度Θ
bと機体傾斜角αと機体傾斜方向βとから、ストロークエンド対地角度Θ
gを旋回角度φの変数として求める。なお、数10に伸長側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
bを代入すれば、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g(φ)が求まり、数10に収縮側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
bを代入すれば、収縮側ストロークエンドのストロークエンド対地角度Θ
g(φ)が求まる。
【数10】
【0073】
なお、ストロークエンド対地角度Θ
gを旋回角度φの関数として求めるのに代えて、予め複数の機体傾斜角α、機体傾斜方向β、および旋回角度φごとのストロークエンド対地角度Θ
gを記憶しておき、ステップS135で求められた機体傾斜角αおよび機体傾斜方向βに対応するストロークエンド対地角度Θ
gを、複数の旋回角度φごとの値の組合せとして取得するように構成してもよい。
【0074】
本実施形態のストロークエンド判定処理(ステップS200)は、第2実施形態と同様であるため、説明を省略する(
図6参照)。
【0075】
以上のように、本実施形態のストロークエンド検出装置Cは、機体傾斜方向βを考慮してストロークエンド対地角度Θ
gを求めるので、ジャッキアップが完了した状態のブーム43の方向と機体傾斜方向βとがずれていても、起伏シリンダ45のストロークエンドを正常に検出できる。
【0076】
なお、本実施形態では2方位における機体傾斜角α
0、α
φを基に、機体傾斜角αと機体傾斜方向βとを求めたが、3方位以上の機体傾斜角を基に機体傾斜角αと機体傾斜方向βと求めてもよい。このように、多方位の機体傾斜角を基に演算することで、機体傾斜角αと機体傾斜方向βを精度よく求めることができる。
【0077】
(第4実施形態)
上記実施形態のストロークエンド対地角度演算処理(ステップS100)では、ストロークエンド検出装置が処理を開始した際(電源ON)のブーム43は格納状態であることを前提としている。通常、積載形トラッククレーンMは、ブーム43を格納状態として作業現場まで走行し、パワーテイクオフ装置を動力取出状態に切り換えて(ストロークエンド検出装置が電源ON)クレーン作業を開始する。そして、クレーン作業終了後にはブーム43を格納状態に戻す。そのため、通常は、ストロークエンド検出装置が処理を開始した際のブーム43は格納状態である。
【0078】
しかし、例えば、クレーン作業中の途中休憩など、作業員がブーム43を格納状態に戻すことなくエンジンを停止させ、ストロークエンド検出装置を停止させる場合がある。この場合、再度作業を開始するに際して、エンジンを始動させストロークエンド検出装置を起動させると、ストロークエンド検出装置が処理を開始した際にブーム43が格納状態でないことから、ストロークエンド対地角度演算処理(ステップS100)において正しいストロークエンド対地角度Θ
gを求めることができない。本発明の第4実施形態に係るストロークエンド検出装置Dは、このような問題を解消した実施形態である。
【0079】
図8に示すように、本実施形態に係るストロークエンド検出装置Dは、対地角度検出器11とジャッキアップ状態検出器12と旋回角度検出器13に加え、ブーム格納状態検出器14を備えている。対地角度検出器11、ジャッキアップ状態検出器12、旋回角度検出器13、およびブーム格納状態検出器14の検出値はストロークエンド判定手段20に入力されている。
【0080】
ブーム格納状態検出器14はブーム43が格納状態であることを検出する検出器である。ブーム格納状態検出器14は、例えばブームレストに設けられたリミットスイッチなどで構成される。前述のごとく、ブーム格納状態検出器14は安全装置として用いられるため、1つのブーム格納状態検出器14をストロークエンド検出装置Dと安全装置とで併用すればよく、新たに検出器を設ける必要はない。
【0081】
本実施形態においても、
図2に示すように、ストロークエンド判定手段20は、前処理であるストロークエンド対地角度演算処理(ステップS100)を行った後に、ストロークエンド判定処理(ステップS200)を繰り返し行う。
【0082】
つぎに、ストロークエンド対地角度演算処理(ステップS100)の詳細を説明する。
図9に示すように、まず、ストロークエンド判定手段20は、ジャッキアップ状態検出器12がアウトリガ44のジャッキアップが完了したことを検出したか否かを判断する(ステップS141)。ジャッキアップが完了するまではステップS141を繰り返し行い、ジャッキアップの完了まで待機する。
【0083】
ジャッキアップが完了した場合には、ストロークエンド判定手段20は、ブーム格納状態検出器14がブーム43が格納状態であることを検出したか否かを判断する(ステップS142)。
【0084】
ブーム格納状態検出器14がブーム43が格納状態であると検出した場合には、上記第1〜第3実施形態と同様の処理を行い、ストロークエンド対地角度Θ
gを求める(ステップS143〜S144)。そして、求めたストロークエンド対地角度Θ
gを記憶装置に記憶する(ステップS145)。
【0085】
ブーム格納状態検出器14がブーム43が格納状態であると検出していない場合、すなわちブーム43が格納状態でない場合には、ストロークエンド対地角度Θ
gを求めずに、記憶装置に記憶されたストロークエンド対地角度Θ
gを取得する(ステップS146)。これにより、ストロークエンド検出装置Dが処理を開始した際にブーム43が格納状態でない場合には、前回求めたストロークエンド対地角度Θ
gを用いることができる。
【0086】
ストロークエンド判定処理(ステップS200)では、ステップS144において求めたストロークエンド対地角度Θ
gか、ステップS146において記憶装置から取得したストロークエンド対地角度Θ
gを用いて、ストロークエンドの判定を行う。その詳細は、上記第1〜第3実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0087】
以上のように、本実施形態のストロークエンド検出装置Dは、ブーム43が格納状態でない場合は記憶されたストロークエンド対地角度Θ
gを取得するので、ブーム43を格納せずに作業を終了した後、作業を再開した場合でも、ストロークエンド対地角度Θ
gを正しい値とすることができる。
【0088】
(第5実施形態)
上記実施形態では、ストロークエンド対地角度Θ
gと現在の対地角度θ
gとを比較して、ストロークエンドであるか否かを判定しているが、ストロークエンド対機角度Θ
bと現在の対機角度θ
bとを比較して、ストロークエンドであるか否かを判定してもよい。以下では、後者の判定方法による実施形態を説明する。
【0089】
つぎに、本発明の第5実施形態に係るストロークエンド検出装置Eについて説明する。
本実施形態のトロークエンド検出装置Eは、第1実施形態のストロークエンド検出装置Aと同様に、対地角度検出器11、およびジャッキアップ状態検出器12を備えており、それらの検出値がストロークエンド判定手段20に入力されている(
図1参照)。
【0090】
ストロークエンド判定手段20は、以下の手順で起伏シリンダ45のストロークエンドを判定する。
図10に示すように、ストロークエンド判定手段20は、前処理である機体傾斜角演算処理(ステップS300)を行った後に、ストロークエンド判定処理(ステップS400)を行う。ストロークエンド判定処理(ステップS400)は繰り返し行われ、起伏シリンダ45がストロークエンドであるか否かを随時判定する。
【0091】
つぎに、機体傾斜角演算処理(ステップS300)の詳細を説明する。
図11に示すように、まず、ストロークエンド判定手段20は、ジャッキアップ状態検出器12がアウトリガ44のジャッキアップが完了したことを検出したか否かを判断する(ステップS351)。ジャッキアップが完了するまではステップS351を繰り返し行い、ジャッキアップの完了まで待機する。
【0092】
ジャッキアップが完了した場合には、ストロークエンド判定手段20は対地角度検出器11で検出された対地角度θ
gを取得して、その対地角度θ
gを機体傾斜角αとする(ステップS352)。すなわち、ジャッキアップ状態検出器12がジャッキアップの完了を検出した際に対地角度検出器11で検出された対地角度θ
gを機体傾斜角αとする。
【0093】
つぎに、ストロークエンド判定処理(ステップS400)の詳細を説明する。
図12に示すように、まず、ストロークエンド判定手段20は、対地角度検出器11で検出された現在の対地角度θ
gを取得する(ステップS451)。
【0094】
つぎに、ストロークエンド判定手段20は、機体傾斜角演算処理(ステップS300)で求められた機体傾斜角αと、現在の対地角度θ
gとから、ブーム43の対機角度θ
bを求める(ステップS452)。具体的には、下記数11に示すように、現在の対地角度θ
gから機体傾斜角αを減算して対機角度θ
bを演算する。
【数11】
【0095】
つぎに、予め記憶されたストロークエンド対機角度Θ
bとステップS452で求められた現在の対機角度θ
bとを比較する(ステップS453)。現在の対機角度θ
bが、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
b以上、または収縮側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
b以下の場合には、ストロークエンドであると判定しその判定結果を出力する(ステップS454)。一方、現在の対機角度θ
bが、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
b未満、かつ収縮側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
bより大きい場合には、ストロークエンドでないと判定しストロークエンド判定処理(ステップS400)を終了する。
【0096】
なお、伸長側ストロークエンドのみを考慮する場合には、ステップS453では、現在の対機角度θ
bが伸長側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
b以上の場合にはストロークエンドであると判定し、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
b未満の場合にはストロークエンドでないと判定する。
【0097】
上記ストロークエンド判定処理(ステップS400)が繰り返し行われることにより(
図10参照)、クレーン作業中において起伏シリンダ45がストロークエンドであるか否かが随時判定される。
【0098】
以上のように、ストロークエンド検出装置Eは、対地角度検出器11の検出値を基に求めた対機角度θ
bと予め記憶されているストロークエンド対機角度Θ
bとを比較することで、起伏シリンダ45がストロークエンドであるか否かを判定するので、汎用トラック30が水平面Gに対して傾いていてもストロークエンドを正常に検出できる。
【0099】
また、過負荷防止装置に用いられる対地角度検出器11を用いることができるので、新たな検出器を設ける必要がなく、安価な構成で起伏シリンダ45のストロークエンドを検出できる。
【0100】
(第6実施形態)
つぎに、本発明の第6実施形態に係るストロークエンド検出装置Fについて説明する。
本実施形態のストロークエンド検出装置Fは、第2実施形態のストロークエンド検出装置Bと同様に、対地角度検出器11、ジャッキアップ状態検出器12、および旋回角度検出器13を備えており、それらの検出値がストロークエンド判定手段20に入力されている(
図5参照)。
【0101】
本実施形態においても、
図10に示すように、ストロークエンド判定手段20は、前処理である機体傾斜角演算処理(ステップS300)を行った後に、ストロークエンド判定処理(ステップS400)を繰り返し行う。
【0102】
本実施形態の機体傾斜角演算処理(ステップS300)は、第5実施形態と同様であるため、説明を省略する(
図11参照)。
【0103】
つぎに、ストロークエンド判定処理(ステップS400)の詳細を説明する。
図13に示すように、まず、ストロークエンド判定手段20は、対地角度検出器11で検出された現在の対地角度θ
gを取得し(ステップS461)、旋回角度検出器13で検出された現在の旋回角度φを取得する(ステップS462)。
【0104】
つぎに、機体傾斜角演算処理(ステップS300)で求められた機体傾斜角αと、現在の対地角度θ
gと、現在の旋回角度φとから、現在の対機角度θ
bを求める(ステップS463)。具体的には、下記数12より、現在の対機角度θ
bが求まる。なお、数12は、数6で求められたα(φ)を、数11のαに代入することで導出される。
【数12】
【0105】
なお、対機角度θ
bを数12に示す関数から演算するのに代えて、予め複数の機体傾斜角αおよび旋回角度φごとの対機角度θ
bを記憶しておき、ステップS461およびステップS462で求められた対地角度θ
gおよび旋回角度φに対応する対機角度θ
bを取得するように構成してもよい。
【0106】
つぎに、予め記憶されたストロークエンド対機角度Θ
bとステップS463で求められた現在の対機角度θ
bとを比較する(ステップS464)。現在の対機角度θ
bが、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
b以上、または収縮側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
b以下の場合には、ストロークエンドであると判定しその判定結果を出力する(ステップS465)。一方、現在の対機角度θ
bが、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
b未満、かつ収縮側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
bより大きい場合には、ストロークエンドでないと判定しストロークエンド判定処理(ステップS400)を終了する。
【0107】
なお、伸長側ストロークエンドのみを考慮する場合には、ステップS464では、現在の対機角度θ
bが伸長側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
b以上の場合にはストロークエンドであると判定し、伸長側ストロークエンドのストロークエンド対機角度Θ
b未満の場合にはストロークエンドでないと判定する。
【0108】
上記ストロークエンド判定処理(ステップS400)が繰り返し行われることにより(
図10参照)、クレーン作業中において起伏シリンダ45がストロークエンドであるか否かが随時判定される。
【0109】
以上のように、本実施形態のストロークエンド検出装置Fは、ブーム43の旋回角度φを考慮して対機角度θ
bを求めるので、ジャッキアップが完了した状態からブーム43を旋回させた場合においても、起伏シリンダ45のストロークエンドを正常に検出できる。
【0110】
(第7実施形態)
つぎに、本発明の第7実施形態に係るストロークエンド検出装置Gについて説明する。
本実施形態のストロークエンド検出装置Gは、第2実施形態のストロークエンド検出装置Bと同様に、対地角度検出器11、ジャッキアップ状態検出器12、および旋回角度検出器13を備えており、それらの検出値がストロークエンド判定手段20に入力されている(
図5参照)。
【0111】
本実施形態においても、
図10に示すように、ストロークエンド判定手段20は、前処理である機体傾斜角演算処理(ステップS300)を行った後に、ストロークエンド判定処理(ステップS400)を繰り返し行う。
【0112】
つぎに、機体傾斜角演算処理(ステップS300)の詳細を説明する。
図14に示すように、まず、ストロークエンド判定手段20は、ジャッキアップ状態検出器12がアウトリガ44のジャッキアップが完了したことを検出したか否かを判断する(ステップS371)。ジャッキアップが完了するまではステップS371を繰り返し行い、ジャッキアップの完了まで待機する。
【0113】
ジャッキアップが完了した場合には、ストロークエンド判定手段20は対地角度検出器11で検出された対地角度θ
gを取得して、その対地角度θ
gを方位φ=0(旋回角度φ=0)における機体傾斜角α
0とする(ステップS372)。
【0114】
つぎに、ストロークエンド判定手段20は、ブーム43を所定の旋回角度φだけ旋回させる(ステップS373)。ブーム43の旋回後、対地角度検出器11で検出された対地角度θ
gを取得して、その対地角度θ
gを方位φ(旋回角度φ)における機体傾斜角α
φとする(ステップS374)。以上より、ジャッキアップが完了した際の、2方位(0、φ)における対地角度(機体傾斜角α
0、α
φ)が求まる。
【0115】
つぎに、ストロークエンド判定手段20は、上記数7より、これら2方位(0、φ)における対地角度(機体傾斜角α
0、α
φ)から、機体傾斜方向βと、機体傾斜方向βにおける機体傾斜角αとを求める(ステップS375)。
【0116】
つぎに、ストロークエンド判定処理(ステップS400)の詳細を説明する。
本実施形態のストロークエンド判定処理(ステップS400)の基本的なフローは第6実施形態と同様である(
図13参照)。ただし、ステップS463における対機角度演算処理が異なる。
【0117】
ステップS463では、機体傾斜角演算処理(ステップS300)で求められた機体傾斜角αおよび機体傾斜方向βと、現在の対地角度θ
gおよび旋回角度φとから、現在の対機角度θ
bを求める。具体的には、下記数13より、現在の対機角度θ
bが求まる。
【数13】
【0118】
以上のように、本実施形態のストロークエンド検出装置Gは、機体傾斜方向βを考慮して対機角度θ
bを求めるので、ジャッキアップが完了した状態のブーム43の方向と機体傾斜方向βとがずれていても、起伏シリンダ45のストロークエンドを正常に検出できる。
【0119】
(第8実施形態)
つぎに、本発明の第8実施形態に係るストロークエンド検出装置Hについて説明する。
本実施形態のストロークエンド検出装置Hは、第4実施形態のストロークエンド検出装置Dと同様に、対地角度検出器11、ジャッキアップ状態検出器12、旋回角度検出器13、およびブーム格納状態検出器14を備えており、それらの検出値がストロークエンド判定手段20に入力されている(
図8参照)。
【0120】
本実施形態においても、
図10に示すように、ストロークエンド判定手段20は、前処理である機体傾斜角演算処理(ステップS300)を行った後に、ストロークエンド判定処理(ステップS400)を繰り返し行う。
【0121】
つぎに、機体傾斜角演算処理(ステップS300)の詳細を説明する。
図15に示すように、まず、ストロークエンド判定手段20は、ジャッキアップ状態検出器12がアウトリガ44のジャッキアップが完了したことを検出したか否かを判断する(ステップS381)。ジャッキアップが完了するまではステップS381を繰り返し行い、ジャッキアップの完了まで待機する。
【0122】
ジャッキアップが完了した場合には、ストロークエンド判定手段20は、ブーム格納状態検出器14がブーム43が格納状態であることを検出したか否かを判断する(ステップS382)。
【0123】
ブーム格納状態検出器14がブーム43が格納状態であると検出した場合には、上記第5〜第7実施形態と同様の処理を行い、機体傾斜角αを求める(ステップS383)。そして、求めた機体傾斜角αを記憶装置に記憶する(ステップS384)。なお、第7実施形態と同様の処理を行う場合には、求めた機体傾斜角αと機体傾斜方向βとを記憶装置に記憶する。
【0124】
ブーム格納状態検出器14がブーム43が格納状態であると検出していない場合、すなわちブーム43が格納状態でない場合には、機体傾斜角αを求めずに、記憶装置に記憶された機体傾斜角αを取得する(ステップS385)。これにより、ストロークエンド検出装置Hが処理を開始した際にブーム43が格納状態でない場合には、前回求めた機体傾斜角αを用いることができる。なお、第7実施形態と同様の処理を行う場合には、記憶装置に記憶された機体傾斜角αと機体傾斜方向βとを取得する。
【0125】
ストロークエンド判定処理(ステップS400)では、ステップS383において求めた機体傾斜角αおよび/または機体傾斜方向βか、ステップS385において記憶装置から取得した機体傾斜角αおよび/または機体傾斜方向βを用いて、ストロークエンドの判定を行う。その詳細は、上記第5〜第7実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0126】
以上のように、本実施形態のストロークエンド検出装置Hは、ブーム格納状態検出器14が格納状態でないと検出した場合は記憶された機体傾斜角αおよび/または機体傾斜方向βを取得するので、ブーム43を格納せずに作業を終了した後、作業を再開した場合でも、機体傾斜角αおよび/または機体傾斜方向βを正しい値とすることができる。