(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、前記制御部から出力される前記制御コードに応じて前記第2のD/A変換器を駆動する駆動回路を有することを特徴とする請求項4に記載の逐次比較型A/D変換器。
抵抗ラダーを含むD/A変換部と、比較部と、制御部とを備え、サンプルフェーズとコンバージョンフェーズとを交互に実行してアナログ入力信号に対応するデジタルコードを決定する逐次比較型A/D変換器の駆動方法において、
前記サンプルフェーズの間に前記D/A変換部から前記比較部に当該比較部内の比較回路のオフセット電圧に対応する電圧を前記抵抗ラダーにて生成して容量に保持し、
前記コンバージョンフェーズでは前記容量に保持した電荷により前記比較回路のオフセット電圧をキャンセルし、
前記制御部が、前記D/A変換部に制御コードを出力して前記D/A変換部から出力される信号電圧を順次変更し、前記比較回路から出力される信号の極性の変化の有無を検出するとそのときの制御コードを記憶部に記憶し、
前記サンプルフェーズの間に前記制御コードを前記D/A変換部に出力して、前記D/A変換部で前記比較回路のオフセット電圧に対応する電圧を生成する
ことを特徴とする逐次比較型A/D変換器の駆動方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0014】
前述したように、比較部のオフセット電圧は、逐次比較型A/D変換器の性能に影響する。
【0015】
オートゼロ(Auto-zero)機能を有する前置増幅器とダイナミックラッチ回路とで構成された比較部を使用することで、比較部のオフセット電圧による影響を低減することができる。
【0016】
図1,
図2は、この種の比較部を使用した逐次比較型A/D変換器の一例を示す回路図である。
図1はサンプルフェーズの状態を示し、
図2はコンバージョンフェーズの状態を示している。
【0017】
図1,
図2に例示する逐次比較型A/D変換器10は、容量D/A変換器11a,11bと、複数の抵抗素子が直列に接続された抵抗ラダーを有する抵抗D/A変換器12と、コンパレータ13と、ロジック回路14と、デコーダ15a,15bと、スイッチSW1,SW2とを有する。コンパレータ13は比較部の一例である。
【0018】
容量D/A変換器11a,11bは解となるデジタルコードの上位Nビット(Nは任意の整数)を決定し、抵抗D/A変換器12は解となるデジタルコードの下位Mビット(Mは任意の整数)を決定する。
【0019】
図3(a)は
図1,
図2中の容量D/A変換器11aを拡大して示す図、
図3(b)は
図1,
図2中の容量D/A変換器11bを拡大して示す図である。
【0020】
容量D/A変換器11aは、
図3(a)に示すように、複数の容量C
1,0',C
1,0〜C
1,N-1と、スイッチS
1,0',S
1,0〜S
1,N-1と、スイッチS
2,0,〜S
2,N-1と、スイッチSA
1,0〜SA
1,N-1とを有する。
【0021】
容量C
1,0',C
1,0の容量値をCとしたときに、容量C
1,1の容量値は2C、…、容量C
1,N-2の容量値は2
N-2C、容量C
1,N-1の容量値は2
N-1Cというように設定されている。
【0022】
スイッチS
1,0',S
1,0〜S
1,N-1は第1のクロック信号によりオン−オフ動作し、スイッチS
2,0〜S
2,N-1は第2のクロック信号によりオン−オフ動作する。また、スイッチSA
1,0〜SA
1,N-1は、ロジック回路14から出力される信号により切替動作する。
【0023】
端子23aには正負一対のアナログ入力信号のうちのプラス側の信号V
inpが供給される。この端子23aは、スイッチS
1,0',S
1,0〜S
1,N-1の各接点aに接続されている。また、スイッチS
1,0',S
1,0〜S
1,N-1の接点bは、それぞれ対応する容量C
1,0',C
1,0〜C
1,N-1のボトムプレートに接続されている。更に、容量C
1,0',C
1,0〜C
1,N-1のトッププレートは、いずれもノードN
11に接続されている。
【0024】
スイッチS
2,0〜S
2,N-1の接点aはそれぞれ対応するスイッチSA
1,0〜SA
1,N-1の共通接点cに接続され、接点bはそれぞれ対応する容量C
1,0〜C
1,N-1のボトムプレートに接続されている。
【0025】
また、スイッチSA
1,0〜SA
1,N-1の接点aはいずれも端子22aに接続されており、接点bはいずれも端子21aに接続されている。端子21aにはプラス側参照電圧V
refpが供給され、端子22aにはマイナス側参照電圧V
refmが供給される。
【0026】
容量C
1,0'のボトムプレートは、更に容量D/A変換器11aと抵抗D/A変換器12との間に配置されたスイッチSW1の接点bに接続されている。
【0027】
図3(b)に示すように、容量D/A変換器11bも、複数の容量C
2,0',C
2,0〜C
2,N-1と、スイッチS
3,0',S
3,0〜S
3,N-1と、スイッチS
4,0〜S
4,N-1と、スイッチSB
1,0〜SB
1,N-1とを有する。
【0028】
容量C
2,0',C
2,0の容量値をCとしたときに、容量C
2,1の容量値は2C、…、容量C
2,N-2の容量値は2
N-2C、容量C
2,N-1の容量値は2
N-1Cというように設定されている。
【0029】
スイッチS
3,0',S
3,0〜S
3,N-1は第1のクロック信号によりオン−オフ動作し、スイッチS
4,0〜S
4,N-1は第2のクロック信号によりオン−オフ動作する。また、スイッチSB
1,0〜SB
1,N-1は、ロジック回路14から出力される信号により切替動作する。
【0030】
端子23bには正負一対のアナログ入力信号のうちのマイナス側の信号V
inmが供給される。この端子23bは、スイッチS
3,0',S
3,0,〜S
3,N-1の各接点aに接続されている。また、スイッチS
3,0',S
3,0,〜S
3,N-1の各接点bは、それぞれ対応する容量C
2,0',C
2,0〜C
2,N-1のボトムプレートに接続されている。更に、容量C
2,0',C
2,0〜C
2,N-1のトッププレートは、いずれもノードN
12に接続されている。
【0031】
スイッチS
4,0〜S
4,N-1の接点aはそれぞれ対応するスイッチSB
1,0〜SB
1,N-1の共通接点cに接続され、接点bはそれぞれ対応する容量C
2,0〜C
2,N-1のボトムプレートに接続されている。
【0032】
スイッチSB
1,0〜SB
1,N-1の接点aはいずれも端子22bに接続されており、接点bはいずれも端子21bに接続されている。端子21bにはプラス側参照電圧V
refpが供給され、端子22bにはマイナス側参照電圧V
refmが供給される。
【0033】
容量C
2,0'のボトムプレートは、更に容量D/A変換器11bと抵抗D/A変換器12との間に配置されたスイッチSW2の接点bに接続されている。
【0034】
図4は、
図1,
図2中の抵抗D/A変換器12を拡大して示す図である。この
図4に示すように、抵抗D/A変換器12は、2
M個の抵抗R
1〜R
2Mと、スイッチSC
1〜SC
2M-1と、スイッチSD〜SD
2M-1とを有する。
【0035】
抵抗R
1〜R
2Mは、プラス側参照電圧V
refpが供給される端子24aとマイナス側参照電圧V
refmが供給される端子24bとの間に直列接続されている。これらの抵抗R
1〜R
2Mの抵抗値は同一に設定されている。
【0036】
スイッチSC
1〜SC
2M-1は、各抵抗R
1〜R
2M間のノードNR
1〜NR
2M-1とノードN
31との間にそれぞれ接続されている。ノードN
31は、容量D/A変換器11aと抵抗D/A変換器12との間に配置されたスイッチSW1の接点aに接続されている。
【0037】
また、スイッチSD
1〜SD
2M-1は、各抵抗R
1〜R
2M間のノードNR
1〜NR
2M-1とノードN
32との間にそれぞれ接続されている。ノードN
32は、容量D/A変換器11bと抵抗D/A変換器12との間に配置されたスイッチSW2の接点aに接続されている。
【0038】
スイッチSC
1〜SC
2M-1はデコーダ15aから出力される信号に応じてオン−オフ動作し、スイッチSD
1〜SD
2M-1はデコーダ15bから出力される信号に応じてオン−オフ動作する。
【0039】
図5は、
図1,
図2中のコンパレータ13を拡大して示す図である。この
図5に示すように、コンパレータ13は、複数(この例では3個)の前置増幅器A1,A2,A3と、ダイナミックラッチ回路16と、複数のスイッチSW
11〜SW
18とを有する。
【0040】
前置増幅器A1の反転出力端子(−)と前置増幅器A2の非反転入力端子(+)との間には容量C
31が接続され、前置増幅器A1の非反転出力端子(+)と前置増幅器A2の反転入力端子(−)との間には容量C
32が接続されている。
【0041】
また、前置増幅器A2の反転出力端子(−)と前置増幅器A3の非反転入力端子(+)との間には容量C
33が接続され、前置増幅器A2の非反転出力端子(+)と前置増幅器A3の反転入力端子(−)との間には容量C
34が接続されている。
【0042】
更に、前置増幅器A3の反転出力端子(−)とダイナミックラッチ回路16の非反転入力端子(+)との間には容量C
35が接続され、前置増幅器A2の非反転出力端子(+)とダイナミックラッチ回路16の反転入力端子(−)との間には容量C
36が接続されている。
【0043】
前置増幅器A1の非反転入力端子(+)は、スイッチSW
11の接点bとノードN
11とに接続されている。また、前置増幅器A1の反転入力端子(−)は、スイッチSW
12の接点bとノードN
12とに接続されている。スイッチSW
11,SW
12の接点aは、いずれも端子25に接続されている。端子25は、コモン電圧(V
cm)に保持される。
【0044】
前置増幅器A2の非反転入力端子(+)と端子25との間にはスイッチSW
13が接続されており、反転入力端子(−)と端子25との間にはスイッチSW
14が接続されている。また、前置増幅器A3の非反転入力端子(+)と端子25との間にはスイッチSW
15が接続されており、反転入力端子(−)と端子25との間にはスイッチSW
16が接続されている。
【0045】
更に、ダイナミックラッチ回路16の非反転入力端子(+)と端子25との間にはスイッチSW
17が接続されており、反転入力端子(−)と端子25との間にはスイッチSW
18が接続されている。このダイナミックラッチ回路16の出力は、ロジック回路14に入力される。
【0046】
ロジック回路14は、サンプルフェーズ及びコンバージョンフェーズの各フェーズにおいて、所定のタイミングでスイッチSW1,SW2、並びに容量D/A変換器11a,11b、抵抗D/A変換器12及びコンパレータ15内の各スイッチを制御する。
【0047】
以下、上述の逐次比較型A/D変換器10の動作について説明する。
【0048】
サンプルフェーズでは、第1のクロック信号が“H”となり、第2のクロック信号が“L”となる。そして、
図1のように、スイッチSW1,SW2がオフとなり、容量D/A変換器11a,11bと抵抗D/A変換器12との間が電気的に分離される。
【0049】
また、
図3(a),(b)に示すように、容量D/A変換器11a内のスイッチS
1,0’,S
1,0〜S
1,N-1がオンとなり、スイッチS
2,0〜S
2,N-1がオフとなり、入力端子23aに供給されたプラス側差動入力信号V
inpが容量C
1,0',C
1,0〜C
1,N-1に保持される。
【0050】
これと同様に、容量D/A変換器11b内のスイッチS
3,0',S
3,0〜S
3,N-1がオンとなり、スイッチS
4,0〜S
4,N-1がオフとなり、入力端子23bに供給されたマイナス側差動入力信号V
inmが容量C
2,0',C
2,0〜C
2,Nに保持される。
【0051】
このとき、
図5に示すように、コンパレータ13のスイッチSW
11〜SW
18はいずれもオンとなり、前置増幅器A1,A2,A3及びダイナミックラッチ回路16の非反転入力端子(+)及び反転入力端子(−)はいずれもコモン電圧に保持される。
【0052】
そして、容量C
31,C
32には前置増幅器A1のオフセット電圧に対応する電荷が蓄積され、容量C
33,C
34には前置増幅器A2のオフセット電圧に対応する電荷が蓄積され、容量C
35,C
36には前置増幅器A3のオフセット電圧に対応する電荷が蓄積される。
【0053】
次に、サンプルフェーズからコンバージョンフェーズに移行する。コンバージョンフェーズでは、第1のクロック信号が“L”となり、第2のクロック信号が“H”となる。そして、
図2のように、スイッチSW1,SW2がオンとなる。
【0054】
また、
図6(a),(b)に示すように、容量D/A変換器11a,11b内のスイッチS
1,0’,S
1,0〜S
1,N-1,S
3,0’,S
3,0〜S
2,N-1がオフとなり、スイッチS
2,0〜S
2,N-1,S
4,0〜S
4、
N-1がオンとなる。更に、
図7に示すように、コンパレータ13内の各スイッチSW
11〜SW
18がいずれもオフとなる。
【0055】
そして、ロジック回路14は、容量D/A変換器11a,11bのスイッチSA
1,0〜SA
1,N-1及びスイッチSB
1,0〜SB
1,N-1を所定の順番でオン−オフ動作させ、二分探索法により上位ビットから順に解を探索していく。
【0056】
上位Nビットが確定すると、ロジック回路14は更にデコーダ15a,15bを介して抵抗D/A変換器12内のスイッチSC
1〜SC
2M-1,SD
1〜SD
2M-1を所定の順番でオン−オフ動作させ、下位Mビットを探索していく。
【0057】
このようにして上位Nビット及び下位Mビットが確定すると、ロジック回路14から、端子23a,23bに入力されたアナログ信号に対応するデジタルコードD
outが出力される。
【0058】
ところで、コンバージョンフェーズでは、サンプルフェーズの間に容量C
31〜C
36に蓄積された電荷により、前置増幅器A1,A2,A3のオフセット電圧の影響がキャンセルされる。すなわち、
図7に示すコンパレータ13では、前置増幅器A1,A2,A3の出力側に配置された容量C
31〜C
36により、前置増幅器A1,A2,A3のオートゼロ機能が実現される。これにより、高精度のD/A変換が可能になる。
【0059】
上述した逐次比較型A/D変換器10では、前置増幅器A1,A2,A3のオフセット電圧はオートゼロ機能により低減され、ダイナミックラッチ回路16の入力換算オフセット電圧は、前置増幅器A1,A2,A3の利得の逆数倍されることで低減される。従って、前置増幅器の数が多いほど、ダイナミックラッチ回路16の入力換算オフセット電圧の影響が低減される。
【0060】
しかし、上述の逐次比較型A/D変換器10では、高分解能が要求されるほど、オフセット電圧による影響を低減するために多数の前置増幅器が必要になる。そのため、半導体デバイスの小型化が阻害されるとともに、消費電力が多くなるという欠点がある。
【0061】
図8は逐次比較型A/D変換器の他の例を示す回路図、
図9は
図8中のコンパレータ13aを拡大して示す図である。なお、
図8において、
図1と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0062】
図8に例示する逐次比較型A/D変換器10aでは、コンパレータ13aが、ダイナミックラッチ回路16aと、デコーダ26a,26bと、D/A変換器27a,27bと、スイッチSW
21,SW
22とにより構成されている。
【0063】
図9のようにダイナミックラッチ回路16aの非反転入力端子(+)はノードN
11に接続され、反転入力端子(−)はノードN
12に接続されている。また、ダイナミックラッチ回路16aの非反転入力端子(+)と端子25との間にはスイッチSW
21が接続されており、反転入力端子(−)と端子25との間にはスイッチSW
22が接続されている。
【0064】
ロジック回路14aは、デコーダ26a,26b及びD/A変換器27a,27bを使用して、オフセット電圧が最も小さくなるようにダイナミックラッチ回路16aを補正する。
【0065】
しかし、
図8に例示する逐次比較型A/D変換器10aでは、高分解能が要求される場合に、分解能が高いD/A変換器が必要となる。しかし、高分解能のD/A変換器は小型化が困難であり、消費電力も大きい。
【0066】
また、
図8に例示する逐次比較型A/D変換器10aでは、ダイナミックラッチ回路16aのオフセット電圧が温度や電源電圧に応じて変化するため、温度又は電源電圧の変動により補正エラーが発生するという問題もある。
【0067】
以下の実施形態では、比較的簡単な構成でコンパレータのオフセット電圧の影響を低減できる逐次比較型A/D変換器及びその駆動方法について説明する。
【0068】
(第1の実施例)
図10,
図11は、第1の実施形態に係る逐次比較型A/D変換器を示す回路図である。
図10はサンプルフェーズの状態を示し、
図11はコンバージョンフェーズの状態を示している。
図10,
図11において、
図1,
図2と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0069】
図10,
図11に示すように、本実施形態に係る逐次比較型A/D変換器30は、容量D/A変換器11a,11bと、抵抗D/A変換器12と、コンパレータ33と、ロジック回路34と、デコーダ35a,35bと、スイッチSW1,SW2とを有する。
【0070】
D/A変換部は、容量D/A変換器11a,11bと、抵抗D/A変換器12と、スイッチSW1,SW2とを含んで構成される。容量D/A変換器11a,11bは第1のD/A変換器の一例であり、抵抗D/A変換器12は第2のD/A変換器の一例である。また、スイッチSW1,SW2はスイッチ素子の一例である。
【0071】
容量D/A変換器11a,11b及び抵抗D/A変換器12の構成は
図3(a),(b)及び
図5を参照して既に説明しているので、ここではその説明は省略する。但し、本実施形態では、抵抗D/A変換器12内のノードN
31,N
32が、コンパレータ33内のスイッチSW
53,SW
54に接続されている。
【0072】
ノードN
11,N
12はD/A変換部の第1の出力端子の一例であり、ノードN
31,N
32はD/A変換部の第2の出力端子の一例である。
【0073】
図12は、
図10,
図11中のコンパレータ33を拡大して示す図である。この
図12に示すように、コンパレータ33は、前置増幅器A11と、ダイナミックラッチ回路39と、容量C
61,C
62と、スイッチSW
51〜SW
54とを有する。
【0074】
コンパレータ33は比較部の一例であり、ダイナミックラッチ回路39は比較回路の一例である。また、容量C
61,C
62は第1の容量の一例である。更に、スイッチSW
53,W
54は第1のスイッチの一例である。
【0075】
本実施形態では、容量D/A変換器11a,11bのビット数をNとしたときに、前置増幅器A11の利得Aは2
N以上(A≧2
N)であるものとする。
【0076】
前置増幅器A11の非反転入力端子(+)はノードN
11及びスイッチSW
51の接点bに接続されており、反転入力端子(−)はノードN
12及びスイッチSW
52の接点bに接続されている。また、スイッチSW
51の接点a及びスイッチSW
52の接点aは、いずれも端子25に接続されている。端子25は、コモン電圧(V
cm)に保持される。
【0077】
前置増幅器A11の反転出力端子(−)は容量C
61のボトムプレートに接続されており、容量C
61のトッププレートはダイナミックラッチ回路39の非反転入力端子(+)に接続されている。また、前置増幅器A11の非反転出力端子(+)は容量C
62のボトムプレートに接続されており、容量C
62のトッププレートはダイナミックラッチ回路39の反転入力端子(−)に接続されている。
【0078】
スイッチSW
53の接点aは抵抗D/A変換器12内のノードN
31に接続されており、接点bはダイナミックラッチ回路39の非反転入力端子(+)に接続されている。また、スイッチSW
54の接点aは抵抗D/A変換器12内のノードN
32に接続されており、接点bはダイナミックラッチ回路39の反転入力端子(−)に接続されている。
【0079】
スイッチSW
51〜SW
54は、いずれも第1のクロック信号によりオン−オフ動作する。
【0080】
図13(a),(b)は前置増幅器A11の回路構成例を示す図である。
図13(a)は能動負荷の前置増幅器であり、電流源I
1と4個のトランジスタQ
11〜Q
14とにより構成されている。
図13(b)は受動負荷の前置増幅器であり、電流源I
2と2個のトランジスタQ
21,Q
22と2個の抵抗R
1,R
2とにより構成されている。
【0081】
図14はダイナミックラッチ回路39の回路構成例を示す図である。この
図14に示すダイナミックラッチ回路は、9個のトランジスタQ
31〜Q
39により構成されている。
【0082】
ロジック回路34は、
図10,
図11に示すように、レジスタ34a及びクロックジェネレータ34bを備えている。レジスタ34aには、後述するように、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧に対応する制御コードが記憶される。ロジック回路34は制御部の一例であり、レジスタ34aは記憶部の一例である。
【0083】
クロックジェネレータ34bは、第1のクロック信号、第2のクロック信号及び第3のクロック信号を生成する。
【0084】
図15は、通常動作時における第1のクロック信号Clk1、第2のクロック信号Clk2及び第3のクロック信号Clk3のタイミングチャートである。
【0085】
図15からわかるように、第1のクロック信号Clk1が“H”のときには第2のクロック信号Clk2が“L”になり、第1のクロック信号Clk1が“L”のときには第2のクロック信号Clk2が“H”になる。
【0086】
通常動作時には、第1のクロック信号Clk1が“H”になるとサンプルフェーズとなり、第2のクロック信号Clk2が“H”になるとコンバージョンフェーズとなる。そして、コンバージョンフェーズでは、所定の周波数の第3のクロック信号Clk3が出力される。
【0087】
容量D/A変換器11a,11b内のスイッチS
1,0',S
1,0〜S
1,N-1,S
3,0',S
3,0〜S
3,N-1及びコンパレータ33内のスイッチSW
51〜SW
54は、第1のクロック信号Clk1が“H”のときにオンになり、“L”のときにオフになる。
【0088】
また、スイッチSW1,SW2及び容量D/A変換器11a,11b内のスイッチS
2,0〜S
2,N-1、S
4,0〜S
4,N-1は、第2のクロック信号Clk2が“H”のときにオンになり、“L”のときにオフとなる。
【0089】
容量D/A変換器11a,11b内のスイッチSA
1〜SA
N-1,SB
1,0〜SB
1,N-1、及び抵抗D/A変換器12内のスイッチSC
1〜SC
2M-1,SD
1〜SC
2M-1は、第3のクロック信号Clk3に同期したタイミングでオン−オフ動作する。また、ダイナミックラッチ回路39も、第3のクロック信号Clk3に同期したタイミングで、前置増幅器A11から出力される信号をラッチする。
【0090】
本実施形態では、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧に相当する電圧を抵抗D/A変換器12(抵抗ラダー)で生成し、その電圧を容量C
61,C
62に印加する。そして、容量C
61,C
62に蓄積された電荷により、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧の影響をキャンセルする。
【0091】
図16は、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧に相当する電圧を抵抗D/A変換器12で生成するための制御コードの決定方法を示すフローチャートである。
【0092】
まず、ステップS11において、ロジック回路34は、第1のクロック信号Clk1を“L”、第2のクロック信号Clk2を“H”とする。
【0093】
これにより、スイッチSW1,SW2がオフとなり、容量D/A変換器11a,11bと抵抗D/A変換器12との間が電気的に分離される。また、
図12に示すように、コンパレータ33内のスイッチSW
51〜SW
54がいずれもオンとなり、容量C
61,C
62に前置増幅器A11のオフセット電圧に相当する電荷が蓄積される。
【0094】
次に、ステップS12に移行し、ロジック回路34は、デコーダ35a,35b及ダイナミックラッチ回路39に第3のクロック信号Clk3を供給するとともに、デコーダ35a,35bに制御信号(デジタル信号)を出力する。このとき、ロジック回路34は、抵抗D/A変換器12のノードN
31,N
32の電圧がプラス側参照電圧Vrefpとマイナス側参照電圧Vrefmとの中間となるように制御信号を出力する。
【0095】
次に、ステップS13に移行し、ロジック回路34は現在のダイナミックラッチ回路39の出力に応じて、デコーダ35a,35bに供給する制御信号を変更する。
【0096】
例えば、ダイナミックラッチ回路39の出力が“H”の場合、ロジック回路34は、デコーダ35a,35bに供給する制御信号を変更して、抵抗D/A変換器12の差動出力電圧を1ビット分(LSB)だけ負側に変化させる。
【0097】
また、ダイナミックラッチ回路39の出力が“L”の場合、ロジック回路34は、デコーダ35a,35bに供給する制御信号を変更して、抵抗D/A変換器12の差動出力電圧を1ビット分(LSB)分だけ正側に変化させる。
【0098】
次に、ステップS14に移行し、ロジック回路34は、ダイナミックラッチ回路39の出力電圧の極性が変化したか否かを判定する。極性が変化していない場合(NOの場合)はステップS13に戻り、更に制御信号を変更する。
【0099】
ステップS13,S14を繰り返すことにより、ダイナミックラッチ回路39の出力電圧の極性が変化する。ダイナミックラッチ回路39の出力電圧の極性が変化したときの抵抗D/A変換器12の出力電圧が、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧に相当する。
【0100】
ステップS14においてダイナミックラッチ回路39の出力電圧の極性の変化を検出すると、ステップS15に移行する。そして、ロジック回路34は、このときの制御信号を、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧に対応する制御コードとして、レジスタ34aに記憶する。
【0101】
このようにして、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧に相当する電圧を抵抗D/A変換器12で生成するための制御コードが決定される。以下、
図16に示す一連のフローを、制御コード決定フローと呼ぶ。
【0102】
なお、本実施形態では、デコーダ35a,35bに供給する制御信号を順次変更して制御コードを決定しているが、制御コードの決定方法はこれに限定されない。例えば、サンプルフェーズにおいてC
1,N-1を参照電圧Vrefp、残りの容量を参照電圧Vrefm、容量C
61、C
62を参照電圧Vrefpと参照電圧Vrefmとの中点に接続し、コンバージョンフェーズでは通常のA/D変換動作と同様の動作を行うと、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧に相当するデジタルコードがDoutとして出力される。このデジタルコードの上位Mビットを制御コードとして用いてもよい。
【0103】
図17は、本実施形態に係る逐次比較型A/D変換器30の動作を示すフローチャートである。
【0104】
まず、電源が投入されると、ステップS21において、
図16に例示した制御コード決定フローを実施して、制御コードを決定する。
【0105】
ステップS21において制御コード決定フローが終了すると、次にステップS22に移行する。ステップS22において、ロジック回路34は、第1のクロック信号Clk1を“H”とし、第2のクロック信号Clk2を“L”として、サンプルフェーズを実行する。
【0106】
サンプルフェーズでは、容量D/A変換器11a,11bの容量C
1,0',C
1,0〜C
1,N-1,C
2,0’,C
2,0〜C
2,N-1に、差動入力信号Vinp,Vinmが保持される。
【0107】
また、コンパレータ33内の前置増幅器A11の非反転入力端子(+)及び反転入力端子(−)はいずれもコモン電圧V
cmに保持され、前置増幅器A11のオフセット電圧に対応する電荷が容量C
61,C
62に蓄積される。
【0108】
更に、レジスタ34aに記憶した制御コードがデコーダ35a,35bに出力され、コンパレータ33内の容量C
61,C
62にはダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧に対応する電荷も蓄積される。
【0109】
次に、ステップS23に移行し、ロジック回路34は、第1のクロック信号Clk1を“L”とし、第2のクロック信号Clk2を“H”として、コンバージョンフェーズを実行する。
【0110】
コンバージョンフェーズでは、ロジック回路34、容量D/A変換器11a,11b、抵抗D/A変換器12及びコンパレータ33により、端子23a,23bに入力された差動アナログ信号V
inp,V
inmに対応するデジタル信号が、上位ビットから順に決定される。
【0111】
端子23a,23bに入力されたアナログ信号V
inp,V
inmに対応するデジタル信号の全てのビットが決定すると、ロジック回路34から当該デジタル信号がデジタルコードD
outとして出力される。
【0112】
コンバージョンフェーズでは、容量C
61,C
62に蓄積された電荷により、前置増幅器A11のオフセット電圧及びダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧がキャンセルされる。これにより、精度のよいA/D変換が可能になる。
【0113】
次いで、ステップS24に移行し、A/D変換を終了するか否かを判定する。A/D変換を継続する場合は、ステップS22に戻る。
【0114】
本実施形態に係る逐次比較型A/D変換器30は、抵抗D/A変換器12を使用してダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧を補正するので、コンパレータ33の部品数が少なくてすむ。これにより、半導体デバイスのより一層の小型化及び省電力化が可能となる。
【0115】
本実施形態に係る逐次比較型A/D変換器30は、前置増幅器A11の利得Aが2
N以上のときに、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧を、当該逐次比較型A/D変換器30の分解能(N+Mビット)よりも細かく補正することができる。
【0116】
なお、本実施形態では、電源投入時に制御コード決定フローを行うものとしている。しかし、制御コード決定フローは、最初の電源投入時のみに行うようにしてもよく、外部装置から所定の信号を受信したときに行うようにしてもよい。
【0117】
ところで、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧は、ダイナミックラッチ回路39を構成する差動増幅器の差動間ミスマッチによって発生する。差動間ミスマッチにより発生するオフセット電圧をV
ofstとすると、ダイナミックラッチ回路39の入力差動信号V
in,latchは、電荷保存則により下記(1)式で表わされる。
【0119】
ここで、V
calDACは補正電圧、すなわち抵抗D/A変換器12の出力電圧である。この(1)式からも明らかなように、抵抗D/A変換器12の出力電圧V
calDACをオフセット電圧V
ofstと一致させる(V
ofst=−V
calDAC)ことで、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧の影響を排除することができる。
【0120】
また、本実施形態によれば、前置増幅器A11の利得をAとしたときに、補正残差電圧(V
calDAC+V
ofst)の温度及び電源電圧依存による影響は、1/A倍に低減される。
【0121】
(第2の実施形態)
図18,
図19は、第2の実施形態に係る逐次比較型A/D変換器を示す回路図である。
図18はサンプルフェーズの状態を示し、
図19はコンバージョンフェーズの状態を示している。
図18,
図19において、
図10,
図11と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0122】
なお、第1の実施形態はコンパレータ内の前置増幅器の利得が大きい(A≧2
N)ときに適用し、第2の実施形態はコンパレータ内の前置増幅器の利得が小さい(A<2
N)ときに適用する。
【0123】
図18,
図19に示すように、本実施形態に係る逐次比較型A/D変換器40は、容量D/A変換器11a,11bと、抵抗D/A変換器12と、コンパレータ43と、ロジック回路44と、デコーダ35a,35bと、スイッチSW1,SW2とを有する。
【0124】
図20は、
図18,
図19中のコンパレータ43を拡大して示す図である。この
図20に示すように、コンパレータ43は、前置増幅器A12と、ダイナミックラッチ回路39と、容量C
61〜C
64と、スイッチSW
51〜SW
58とを有する。
【0125】
容量C
63,C
64は第2の容量の一例である。また、スイッチSW
57,SW
58は第2のスイッチの一例である。更に、スイッチSW
55,SW
56は第3のスイッチの一例である。
【0126】
本実施形態では、容量D/A変換器11a,11bのビット数をNとしたときに、前置増幅器A12の利得Aは2
Nよりも小さい(A<2
N)ものとする。
【0127】
前置増幅器A12の非反転入力端子(+)はノードN
11及びスイッチSW
51の接点bに接続されており、反転入力端子(−)はノードN
12及びスイッチSW
52の接点bに接続されている。スイッチSW
51,SW
52の接点bはいずれも端子25に接続されている。端子25は、コモン電圧(V
cm)に保持される。
【0128】
前置増幅器A12の反転出力端子(−)は容量C
61のボトムプレートに接続されており、容量C
61のトッププレートはダイナミックラッチ回路39の非反転入力端子(+)に接続されている。また、前置増幅器A12の非反転出力端子(+)は容量C
62のボトムプレートに接続されており、容量C
62のトッププレートはダイナミックラッチ回路39の反転入力端子(−)に接続されている。
【0129】
スイッチSW
53の接点aは抵抗D/A変換器12内のノードN
31に接続されており、接点bはスイッチSW
55の接点b及び容量C
63のボトムプレートに接続されている。スイッチSW
55の接点aは接地されており、容量C
63のトッププレートはダイナミックラッチ回路39の非反転入力端子(+)に接続されている。
【0130】
スイッチSW
54の接点aは抵抗D/A変換器12内のノードN
32に接続されており、接点bはスイッチSW
56の接点b及び容量C
64のボトムプレートに接続されている。スイッチSW
56の接点aは接地されており、容量C
64のトッププレートはダイナミックラッチ回路39の反転入力端子(−)に接続されている。
【0131】
スイッチSW
57の接点bはダイナミックラッチ回路39の非反転入力端子(+)に接続されており、接点aは端子25に接続されている。また、スイッチSW
58の接点bはダイナミックラッチ回路
39の反転入力端子(−)に接続されており、接点aは端子25に接続されている。
【0132】
ロジック回路44は、
図18,
図19に示すように、レジスタ44a及びクロックジェネレータ44bを備えている。レジスタ44aにはダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧に対応する制御コードが記憶される。
【0133】
クロックジェネレータ44bは、第1の実施形態と同様に、第1のクロック信号Clk1、第2のクロック信号Clk2、及び第3のクロック信号Clk3を出力する。また、クロックジェネレータ44bは、後述するように制御コード決定フローにおいて、第1のクロック信号Clk1とは別のクロック信号Clk1'と、第2のクロック信号Clk2とは別のクロック信号Clk2'とを出力する。
【0134】
通常動作時(サンプルフェーズ及びコンバージョンフェーズ)には、スイッチSW
51,SW
52,SW
53,SW
54,SW
57,SW
58は第1のクロック信号によりオン−オフ動作し、スイッチSW
55,SW
56は第2のクロック信号によりオン−オフ動作する。
【0135】
但し、制御コード決定フロー実行時には、スイッチSW
53,SW
54,SW
57,SW
58はクロック信号Clk1'によりオン−オフ動作し、スイッチSW
55,SW
56はクロック信号Clk2'によりオン−オフ動作する。なお、スイッチSW
51,SW
52は、制御コード決定フローにおいても、第1のクロック信号Clk1によりオンーオフする。
【0136】
図21は、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧に相当する電圧を抵抗D/A変換器12で生成するための制御コードの決定方法(制御コード決定フロー)を示すフローチャートである。
【0137】
まず、ステップS31において、ロジック回路44は、第1のクロック信号Clk1を“H”、第2のクロック信号Clk2を“L”とする。これにより、スイッチSW1,SW2がオフとなり、容量D/A変換器11a,11bと抵抗D/A変換器12とが電気的に分離される。また、コンパレータ43内のスイッチSW
51,SW
52がいずれもオンとなる。
【0138】
次に、ステップS32に移行し、ロジック回路44は、抵抗D/A変換器12のノードN
31,N
32の電圧がプラス側参照電圧Vrefpとマイナス側参照電圧Vrefmとの中間となるように、デコーダ35a,35bに制御信号を出力する。
【0139】
次に、ステップS33において、ロジック回路44は、クロック信号Clk1'を“H”、クロック信号Clk2'を“L”とする。これにより、容量C
63,C
64に、それぞれプラス側参照電圧Vrefpとマイナス側参照電圧Vrefmとの中間の電圧が印加される。
【0140】
次に、ステップS34に移行し、ロジック回路44は、クロック信号Clk1'を“L”、クロック信号Clk2'を“H”とする。これにより、ダイナミックラッチ回路39の非反転入力端子(+)及び反転入力端子(−)に、容量C
63,C
64に保持された電圧が入力される。
【0141】
次に、ステップS35に移行し、ロジック回路44から出力される第3のクロック信号Clk3が“H”になると、ダイナミックラッチ回路39は非反転入力端子(+)及び反転入力端子(−)に入力された信号をラッチする。このとき、ダイナミックラッチ回路39の非反転入力端子(+)及び反転入力端子(−)には同じ電圧が入力されるが、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧の影響により、ダイナミックラッチ回路39の出力電圧は“H”又は“L”のいずれかとなる。ロジック回路44は、ダイナミックラッチ回路39の出力が“H”であるのか“L”であるのかを判定する。
【0142】
次に、ステップS36に移行し、ロジック回路44は、ダイナミックラッチ回路39の出力電圧の極性が変化したか否かを判定する。1回目のループで比較対象がない場合や極性が変化していない場合(NOの場合)は、ステップS37に移行する。
【0143】
ステップS37において、ロジック回路44は制御信号を変更する。例えばステップS35でダイナミックラッチ回路39の出力が“H”であると判定した場合、ロジック回路49は、デコーダ35a,35bに供給する制御信号を変更して、抵抗D/A変換器12の差動出力電圧を1ビット分(LSB)だけ負側に変化させる。
【0144】
また、ステップS35でダイナミックラッチ回路39の出力が“L”であると判定した場合、ロジック回路44は、デコーダ35a,35bに供給する制御信号を変更して、抵抗D/A変換器12の差動出力電圧を1ビット分(LSB)だけ正側に変化させる。
【0145】
ステップS33〜S37を繰り返すことにより、ダイナミックラッチ回路39の出力電圧の極性が変化する。ダイナミックラッチ回路39の出力電圧の極性が変化したときの抵抗D/A変換器12の出力電圧が、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧に相当する。
【0146】
ステップS36においてダイナミックラッチ回路39の出力電圧の極性の変化を検出すると、ステップS38に移行する。そして、ロジック回路44は、このときの制御信号を、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧に対応する制御コードとして、レジスタ44aに記憶する。
【0147】
その後のサンプルフェーズ及びコンバージョンフェーズの動作は第1の実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0148】
本実施形態においても、抵抗D/A変換器12を使用してダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧を補正するので、コンパレータ33の部品数が少なくてすむ。これにより、半導体デバイスのより一層の小型化及び省電力化が可能となる。
【0149】
本実施形態に係る逐次比較型A/D変換器40は、前置増幅器A11の利得Aが2
Nよりも小さいときに、ダイナミックラッチ回路のオフセット電圧を当該逐次比較型A/D変換器40の分解能(N+Mビット)よりも細かく補正することができる。
【0150】
ところで、容量C
61,C
62の容量値をC
1、容量C
63,C
64の容量値をC
2とし、ダイナミックラッチ回路39の差動間ミスマッチにより発生するオフセット電圧をV
ofstとすると、ダイナミックラッチ回路39の入力差動信号V
in,latchは下記(2)式で表わされる。
【0152】
この(2)式からも明らかなように、V
ofst=−(C
2/C
1)V
calDACとすることで、ダイナミックラッチ回路39のオフセット電圧の影響を排除することができる。
【0153】
なお、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態では、いずれもD/A変換部が容量D/A変換器と抵抗D/A変換器とにより構成されている場合について説明している。しかし、D/A変換部は、抵抗D/A変換器のみで構成されていてもよい。
【0154】
また、例えば
図10等では正負一対のアナログ信号を受けてデジタル出力に変換するA/D変換器を例に説明したが、本発明は単相のアナログ入力を受けてデジタル出力に変換するA/D変換器に適用することもできる。その場合の比較部は、D/A変換部の出力を所定の基準値と比較する。
【0155】
以上の諸実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0156】
(付記1)抵抗ラダーを含み、アナログ入力信号及び制御コードに応じた電圧を第1の出力端子から出力するD/A変換部と、
前記D/A変換部の前記第1の出力端子に接続された比較部と、
前記比較部の出力に応じて前記制御コードを出力する制御部とを有し、
前記比較部には、前記抵抗ラダーから前記比較部のオフセット電圧をキャンセルする電圧が供給されることを特徴とする逐次比較型A/D変換器。
【0157】
(付記2)前記比較部は、
前記D/A変換部の前記第1の出力端子からの出力が入力される前置増幅器と、
比較回路と、
前記前置増幅器の出力端子と前記比較回路の入力端子との間に配置された第1の容量と、
前記抵抗ラダーの第2の出力端子と前記比較回路の前記入力端子との間に配置されて前記制御部によりオン−オフする第1のスイッチとを有することを特徴とする付記1に記載の逐次比較型A/D変換器。
【0158】
(付記3)更に、前記比較回路の前記入力端子と前記第1のスイッチとの間に配置された第2の容量と、
前記制御部により制御されて前記比較回路の前記入力端子をコモン電圧に保持する第2のスイッチと、
前記第2の容量と接地との間に配置された第3のスイッチとを有することを特徴とする付記2に記載の逐次比較型A/D変換器。
【0159】
(付記4)前記D/A変換部は、
前記アナログ入力信号に対応するデジタル信号の上位Nビット(Nは任意の整数)を決定する第1のD/A変換器と、
前記アナログ入力信号に対応するデジタル信号の下位Mビット(Mは任意の整数)を決定する、前記抵抗ラダーを含む第2のD/A変換器と、
前記第1のD/A変換器と前記第2のD/A変換器との間に接続されて前記制御部からの信号によりオン−オフする第4のスイッチとを有することを特徴とする付記2又は3に記載の逐次比較型A/D変換器。
【0160】
(付記5)前記第1のD/A変換器が容量D/A変換器であることを特徴とする付記4に記載の逐次比較型A/D変換器。
【0161】
(付記6)前記アナログ入力信号は、第1アナログ入力信号と、前記第1アナログ入力信号と逆位相である第2アナログ入力信号を含み、前記容量D/A変換器は、前記第1アナログ入力信号が入力されて正の信号を出力する正側容量D/A変換器と、前記第2アナログ入力信号が入力されて負の信号を出力する負側容量D/A変換器とを有することを特徴とする付記5に記載の逐次比較型A/D変換器。
【0162】
(付記7)更に、前記制御部から出力される前記制御コードに応じて前記第2のD/A変換器を駆動する駆動回路を有することを特徴とする付記4に記載の逐次比較型A/D変換器。
【0163】
(付記8)前記制御部には、前記オフセット電圧をキャンセルする電圧に対応する制御コードが記憶されていることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の逐次比較型A/D変換器。
【0164】
(付記9)前記比較回路が、ダイナミックラッチ回路であることを特徴とする付記2乃至8のいずれか1項に記載の逐次比較型A/D変換器。
【0165】
(付記10)前記制御部は、前記第1のD/A変換器に前記アナログ入力信号をサンプリングするサンプルフェーズと、前記サンプルフェーズの間にサンプリングしたアナログ信号に対応するデジタルコードを探索するコンバージョンフェーズとを交互に実行し、前記サンプルフェーズの間に前記第2のD/A変換器を制御して前記オフセット電圧をキャンセルする電圧を生成し、前記第1の容量及び前記第2の容量に伝達することを特徴とする付記4に記載の逐次比較型A/D変換器。
【0166】
(付記11)抵抗ラダーを含むD/A変換部と、比較部と、制御部とを備え、サンプルフェーズとコンバージョンフェーズとを交互に実行してアナログ入力信号に対応するデジタルコードを決定する逐次比較型A/D変換器の駆動方法において、
前記サンプルフェーズの間に前記D/A変換部から前記比較部に当該比較部内の比較回路のオフセット電圧に対応する電圧を前記抵抗ラダーにて生成して容量に保持し、
前記コンバージョンフェーズでは前記容量に保持した電荷により前記比較回路のオフセット電圧をキャンセルする
ことを特徴とする逐次比較型A/D変換器の駆動方法。
【0167】
(付記12)前記制御部は、前記D/A変換部に制御コードを出力して前記D/A変換部から出力される信号電圧を順次変更し、前記比較回路から出力される信号の極性の変化の有無を検出するとそのときの制御コードを記憶部に記憶し、
前記サンプルフェーズの間に前記記憶部に記憶した制御コードを前記D/A変換部に出力して、前記D/A変換部で前記比較回路のオフセット電圧に対応する電圧を生成することを特徴とする付記11に記載の逐次比較型A/D変換器の駆動方法。
【0168】
(付記13)前記D/A変換部は、
前記アナログ入力信号に対応するデジタル信号の上位Nビット(Nは任意の整数)を決定する第1のD/A変換器と、
前記アナログ入力信号に対応するデジタル信号の下位Mビット(Mは任意の整数)を決定する、前記抵抗ラダーを含む第2のD/A変換器と、
前記第1のD/A変換器と前記第2のD/A変換器との間に接続されて前記制御部からの信号によりオン−オフするスイッチ素子とを有し、
前記制御部は前記サンプルフェーズの間に前記アナログ入力信号を前記第1のD/A変換器にサンプリングするとともに、前記第2のD/A変換器を制御して前記比較回路のオフセット電圧に対応する電圧を生成することを特徴とすることを特徴とする付記11又は12に記載の逐次比較型A/D変換器の駆動方法。
【0169】
(付記14)前記第1のD/A変換器が容量D/A変換器であり、前記第2のD/A変換器が抵抗D/A変換器であることを特徴とする付記13に記載の逐次比較型A/D変換器の駆動方法。
【0170】
(付記15)前記制御部に、前記オフセット電圧をキャンセルする電圧に対応する制御コードを記憶しておくことを特徴とする付記11乃至14のいずれか1項に記載の逐次比較型A/D変換器の駆動方法。