【実施例】
【0031】
以下実施例により詳細を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
(A)ゴム変性スチレン系樹脂:実施例及び比較例で使用した(A)ゴム変性スチレン系樹脂は、それぞれ以下の組成である。ゴム状重合体にシス1、4結合を90モル%以上の比率で含有するハイシスポリブタジエンゴムを使用したゴム変性スチレン系樹脂である。このゴム変性スチレン系樹脂の組成は、マトリックス部分の還元粘度が0.76dl/gであり、ゴム状重合体の含有量が9.1質量%であり、ゴム状重合体のゲル含有量が26質量%であり、及びゴム状重合体の体積平均粒子径2.8μmである。ここで言う還元粘度、ゴム状重合体の質量%、ゴム状重合体のゲル含有量の質量%、ゴム状重合体の体積平均粒子径は以下の方法で測定した。
【0033】
還元粘度(ηsp/C)の測定:ゴム変性スチレン系樹脂1gにメチルエチルケトン17.5mlとアセトン17.5mlの混合溶媒を加え、温度25℃で2時間振とう溶解した後、遠心分離で不溶分を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を取り出し、250mlのメタノールを加えて樹脂分を析出させ、不溶分を濾過乾燥する。同操作で得られた樹脂分をトルエンに溶解してポリマー濃度0.4%(質量/体積)の試料溶液を作成した。この試料溶液、及び純トルエンを30℃の恒温でウベローデ型粘度計により溶液流下秒数を測定して、下式にて算出した。
ηsp/C=(t1/t0−1)/C
t0:純トルエン流下秒数
t1:試料溶液流下秒数
C :ポリマー濃度
【0034】
ゴム状重合体含有量の測定:該スチレン系難燃性樹脂組成物をクロロホルムに溶解させ、一定量の一塩化ヨウ素/氷酢酸溶液を加え暗所に約30分放置後、15質量%のヨウ化カリウム溶液と純水50mlを加え、過剰の一塩化ヨウ素を0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、付加した一塩化ヨウ素量から算出した。
【0035】
ゲル含有量の測定:ゴム変性スチレン系樹脂をトルエンに3.3%(質量/体積)の割合で加え、温度25℃で40分振とう溶解した後、遠心分離(回転数10000〜14000rpm、分離時間30分)で不溶分(ゲル分)を沈降させ、デカンテーションにより上澄み液を除去してゲルを得た。次に、この膨潤ゲルを温度100℃で2時間予備乾燥した後、温度120℃の真空乾燥機で1時間乾燥した。デシケータで常温まで冷却し精秤し下式にて算出した。
ゲル分率(%)=[(m1−m0)/S]×100
m0:遠心沈降管質量
m1:乾燥ゲル+遠心沈降管質量
S:試料樹脂質量
【0036】
ゴム状重合体の体積平均粒子径の測定:ゴム変性スチレン系樹脂をジメチルホルムアミドに完全に溶解させ、レーザー回析方式粒度分布装置にて測定した。
【0037】
(B)臭素化フタルイミド化合物:商品名SAYTEX BT−93(アルベマール日本社製)を使用した。
【0038】
(C)臭素化ジフェニルアルカン化合物:商品名SAYTEX 8010(アルベマール日本社製)を使用した。
【0039】
難燃剤の比較例としてトリブロモフェノキシトリアジン:商品名SR245(第一工業製薬社製)を使用した。
【0040】
(D)難燃化助剤:三酸化アンチモン商品名AT−3CN(鈴裕化学社製)を使用した。
【0041】
(E)タルク:商品名KPタルク(富士タルク社製)を使用した。
【0042】
(F)紫外線吸収剤:2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール商品名JF−79(城北化学社製)を使用した。
【0043】
(G)光安定剤:ビス(2,2,6,6-テトラメチル−4−ピペリジル)セパケート商品名JF−90(城北化学社製)を使用した。
【0044】
[樹脂組成物の調製]
【0045】
表1〜4に記載した質量部の(A)ゴム変性スチレン系樹脂、(B)臭素化フタルイミド化合物、(C)臭素化ジフェニルアルカン化合物、(D)難燃化助剤、(E)タルク(F)紫外線吸収剤、(G)光安定剤を秤量し、ヘンシェルミキサー(三井三池化工(株)製、FM20B)で混合し、得られた混合物をスクリューフィーダ付き二軸押出機(日本製鋼所(株)製、TEM26SS)で混練して樹脂組成物のペレットを製造した。
【0046】
なお、予備混合時にカルシウムステアレート、ミネラルオイル、ポリテトラフルオロエチレン、フェノール系酸化防止剤{オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、ポリエチレンワックス、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及び酸化チタンも同時添加した。
【0047】
押出し条件
シリンダー設定温度:200℃(搬送部位)〜240℃(混練部位)
スクリュー回転数:300rpm
押出速度:30kg/h
【0048】
[機械物性測定用試験片の成形]
得られたペレットを温度70℃×3時間で加熱乾燥後、射出成形機(日本製鋼所(株)製、J100E−P)にて、JIS K 7139に記載のA型試験片(ダンベル)を成形した。この際、シリンダー温度205℃、金型温度45℃とした。
【0049】
[シャルピー衝撃強さ]
上記ダンベル片の中央部より切り出し、切削でノッチ(タイプA、r=0.25mm)を入れた試験片を用いて、JIS K 7111−1に基づき測定を行った。強度が8kJ/m2未満だと成形品の強度が不十分であり、8KJ/m2以上を合格とした。
【0050】
[耐光性]
耐光性の評価用試験片は、射出成形機(日本製鋼所(株)製、J100E−P)にて、80×50×2mmの試験片を成形した。この際、シリンダー温度190℃、金型温度30℃とした。アトラス社製キセノンウエザーメータCi4000を用い、ASTM D 4459に基づき、照射強度0.3W/m2、ブラックパネル温度55℃、湿度50%RHで300時間照射後のテストピースの色相差ΔE*abを日本電色工業社製Σ80で測定し、未暴露サンプルとの差で表した。ΔE*abが3より大きいと長期使用時の色相変化が顕著となるため、ΔE*abが3以下を合格とした。
【0051】
[燃焼性]
燃焼性の評価用試験片は、射出成形機(日本製鋼所(株)製、J100E−P)にて、127×12.7×2.0mmの燃焼用試験片を成形した。米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ社のサブジェクト94号の垂直燃焼試験方法(UL94)に基づき、燃焼試験を行った。この試験法で5Vの評価となった場合を合格とし、5Vに満たなかった場合を不合格とした。
【0052】
(A)ゴム変性スチレン系樹脂、(B)臭素化フタルイミド化合物、(C)臭素化ジフェニルアルカン化合物、(D)難燃化助剤、(E)タルク(F)紫外線吸収剤、(G)光安定剤の各配合量と共に評価結果を表1〜4に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
(各実施例・比較例について)
実施例1〜6は本発明のスチレン系難燃性樹脂組成物であり、本願発明の組成及び規定量を満たすことにより、UL94 5Vを満たし、シャルピー衝撃強さ、荷重たわみ温度、及び、耐光性が高度なバランスを有していることがわかる。
【0058】
しかし本発明の規定を満足しない比較例1〜9で得られたスチレン系難燃性樹脂組成物では、何れかに優れることはあっても、その全てに優れていることはないことがわかる。
【0059】
例えば(B)臭素化フタルイミド化合物と(C)臭素化ジフェニルアルカン化合物の比が規定量から外れると比較例1に示すように燃焼性、耐光性が不足する。(B)臭素化フタルイミド化合物単独で5V燃焼性を満たすまで難燃剤を加えると比較例2に示すようにシャルピー衝撃強さが不足する。(C)臭素化ジフェニルアルカン化合物単独で5V燃焼性を満たすまで難燃剤を加えると比較例10に示すように耐光性及びシャルピー衝撃強さが不足する。(C)臭素化ジフェニルアルカン化合物の代わりに他の難燃剤化合物を使用すると比較例3に示すように難燃性及びシャルピー衝撃強さが不足する。(B)臭素化フタルイミド化合物及び(C)臭素化ジフェニルアルカン化合物、(D)難燃化助剤、あるいは(E)タルクの量が少ないと比較例4、6、8に示すように難燃性が不足する。(B)臭素化フタルイミド化合物及び(C)臭素化ジフェニルアルカン化合物の量が多いと比較例5に示すようにシャルピー衝撃強さが不足する。(D)難燃化助剤、あるいは(E)タルクの量が多いと比較例7、9に示すようにシャルピー衝撃強さが不足し、難燃性もグローイング発生のためNGとなる。