特許第6131146号(P6131146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6131146-レーザノズル及びレーザ加工ヘッド 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131146
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】レーザノズル及びレーザ加工ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20170508BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20170508BHJP
   B23K 26/14 20140101ALI20170508BHJP
【FI】
   B23K26/064 A
   B23K26/00 Q
   B23K26/14
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-164765(P2013-164765)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-33705(P2015-33705A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】塩地 功明
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−210577(JP,A)
【文献】 特開昭56−041092(JP,A)
【文献】 特開平03−027889(JP,A)
【文献】 特開平10−006053(JP,A)
【文献】 特開平11−083146(JP,A)
【文献】 特開2000−275080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工ヘッドの先端部に着脱可能なレーザノズルであって、前記レーザノズルのノズル本体の上面に前記レーザ加工ヘッドに対して着脱可能な取付部を備え、前記レーザ加工ヘッドから前記ノズル本体へ冷却エアが噴出される流体噴出孔の位置に対応して、前記ノズル本体が所定の温度以上になったとき膨張して前記流体噴出孔を閉鎖自在な熱膨張部材を、前記ノズル本体の上面に備えていることを特徴とするレーザノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザノズルを着脱可能なレーザ加工ヘッドであって、流体供給源と前記流体噴出孔とを接続した流体路に、当該流体路内の圧力上昇又は流体の流量減少を検出するための異常検出センサを備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザノズルを着脱可能なレーザ加工ヘッドであって、前記ノズル本体に備えた前記熱膨張部材が膨張したことを検出するための膨張検出手段を備えていることを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機におけるレーザ加工ヘッドの先端部に着脱可能なレーザノズル及び当該レーザノズルを備えるレーザ加工ヘッドに関する。さらに詳細には、レーザノズルが異常な高温に上昇した場合に、この異常な高温を検知可能なレーザノズル及びレーザ加工ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工機におけるレーザ加工ヘッドの先端部にはノズル(レーザノズル)が着脱交換可能に備えられている。レーザ加工機によるレーザ加工時には、前記レーザノズルはワークのレーザ加工位置に近接配置されるものであり、例えばスパッタ等の付着やレーザ光の反射光、輻射熱などによって常に加熱されており、高温になることが知られている。前記レーザノズルが異常な高温になると、レーザ加工精度やレーザ加工ヘッドにおける構成要素に悪影響が生じるので、前記レーザノズルに対して冷却用の流体(例えばエア)を噴射することが行われている(例えば特許文献1参照)。また、レーザノズルの温度上昇を検出するためのセンサを、レーザノズルに備えることも提案されている(例えば特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−273591号公報
【特許文献2】特開昭56−41092号公報
【特許文献3】特開平3−27889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の構成においては、レーザ加工ヘッド側からレーザノズルに対して冷却用のエアを噴出する構成である。したがって、常態においては、レーザノズルの冷却が維持されており、レーザノズルが、例えば200℃以上の異常高温になるようなことはない。しかし、例えばレーザ光の光路異常等によってレーザ光の一部がレーザノズルの内周面を照射するようになると、温度バランスが崩れて異常高温になることがある。この場合、レーザノズルが異常高温になったことを検出する手段が講じられていないので、レーザ加工の加工精度やレーザ加工ヘッドの構成要素に対する熱伝導によって種々の問題を生じることがある。
【0005】
前記特許文献2,3には、レーザノズルに温度センサを備えることが提案されている。したがって、前記特許文献1に記載の構成において、レーザノズルに温度センサを備えることも考えられる。
【0006】
しかし、周知のように、レーザノズルは消耗部品であり、また加工条件によっては別個のレーザノズルと着脱交換されるものである。したがって、レーザノズルにセンサを備えた場合における配線の結線等を考慮すると、レーザノズルにセンサを備えることは難しいものである。また、レーザ加工時に飛散するスパッタ等によってレーザノズルに備えたセンサに損傷を生じ易いものである。よって、レーザノズルに温度センサを備えることも難しいものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述のごとき問題に鑑みてなされたもので、レーザ加工ヘッドの先端部に着脱可能なレーザノズルであって、前記レーザノズルのノズル本体の上面に前記レーザ加工ヘッドに対して着脱可能な取付部を備え、前記レーザ加工ヘッドから前記ノズル本体へ冷却エアが噴出される流体噴出孔の位置に対応して、前記ノズル本体が所定の温度以上になったとき膨張して前記流体噴出孔を閉鎖自在な熱膨張部材を、前記ノズル本体の上面に備えていることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記レーザノズルを着脱可能なレーザ加工ヘッドであって、流体供給源と前記流体噴出孔とを接続した流体路に、当該流体路内の圧力上昇又は流体の流量減少を検出するための異常検出センサを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記レーザノズルを着脱可能なレーザ加工ヘッドであって、前記ノズル本体に備えた前記熱膨張部材が膨張したことを検出するための膨張検出手段を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザノズルが異常高温になると膨張する熱膨張部材をレーザノズルに備えているので、前記熱膨張部材の膨張を検出することにより、レーザノズルが異常高温であることを検知することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るレーザ加工ヘッドの構成を概念的、概略的に示した断面説明図である。
図2】ノズル本体の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係るレーザノズル及びレーザ加工ヘッドの構成について説明する。本発明の実施形態に係るレーザ加工ヘッド1は、円筒形状の加工ヘッド本体3を備えており、この加工ヘッド本体3の先端部(下端部)には、レーザノズルのノズル本体5が着脱交換可能に備えられている。前記加工ヘッド本体3の先端部には、前記ノズル本体5の上面に突出して備えた取付部としての雄ねじ部7が着脱自在に螺合する雌ねじ部9が形成してある。なお、加工ヘッド3に対してノズル本体5を着脱交換自在に取付ける構成としては、前述したごとき螺子部の関係に限ることなく、例えばコレットチャックと工具のシャンクとの関係のように、着脱可能に嵌合する構成とすることも可能である。
【0013】
前記加工ヘッド本体3の先端部には、環状の流体通路11が形成してあり、この流体通路11には、加工ヘッド本体3の先端面に開口した複数の流体噴出孔13が連通してある。上記各流体噴出孔13は、周方向に等間に備えられている。そして、前記流体通路11に対してエアを供給するために、前記加工ヘッド本体3の外周には外筒14が嵌合してあり、この外筒14には、前記流体通路11に接続した連通路15が形成してある。この連通路15は、流体路17を介してエア源などの流体供給源19と接続してある。そして、当該流体路17には、流体路17内の圧力の変化を検出する圧力センサ又は流体路17内の流量変化を検出する流量センサなどのごとき異常検出センサ21が備えられている。
【0014】
前記ノズル本体5は、前記雄ねじ部7を上面から突出して備えた構成であって、前記加工ヘッド本体3における前記流体噴出孔13に対応(対向)した上面の位置には、熱膨張部材23が備えられている。この熱膨張部材23は、前記ノズル本体5が予め設定された温度、例えば200℃以上になると、厚さ方向に数倍〜数十倍に膨張する機能を有するもので、例えば積水化学工業株式会社から「フィブロック」名で市販されている。前記熱膨張部材23は、ノズル本体5が異常な高温、例えば200℃以上に加熱されると厚さ方向に膨張して、前記流体噴出孔13を閉鎖する機能を奏するものである。
【0015】
以上のごとき構成において、レーザ加工ヘッド1におけるノズル本体5のノズル孔5Aを透過してワークWにレーザ光を照射すると共に、前記ノズル孔5AからワークWへアシストガスを噴出することにより、ワークWにレーザ加工が行われる。そして、レーザ加工時にノズル本体5が高温になることを抑制するために、流体供給源19から冷却用のエアが供給され、レーザ加工ヘッド本体3の先端面に備えた流体噴出孔13から冷却用の前記エアがノズル本体5へ噴射される。したがって、ノズル本体5が冷却されて高温になることが防止されるものである。
【0016】
ところで、ワークWのレーザ加工部からのレーザ光の反射や、レーザ加工部から飛散したスパッタ等の付着や、レーザ加工部の輻射熱等に起因してノズル本体5が高温になり、例えば200℃以上の高温になると、熱膨張部材23が厚み方向、すなわち流体噴出孔13に近接する方向に膨張して前記流体噴出孔13を閉鎖することになる。上述のように、流体噴出孔13が閉鎖されて、連通路15、流体路7内の圧力が予め設定された設定圧以上、又は予め設定された流量以下になると、圧力センサ又は流量センサとしての異常検出センサ21が作動される。そして、レーザ加工機におけるレーザ発振が停止されると共にレーザ加工が停止される。したがって、レーザ加工ヘッド1に備えたノズル本体5が異常高温になることに起因する種々の不都合を解消することができるものである。
【0017】
ところで、本発明は、前述したごとき実施形態に限るものではなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でもって実施可能なものである。すなわち、前記説明においては、複数の流体噴出孔13にそれぞれ対応して熱膨張部材23を備えるべく説明した。しかし、適宜の流体噴出孔13が閉鎖されることによって、流体路17内の圧力変化や流量変化が生じればよいものである。したがって、選択した適数の流体噴出孔13のみに対応して熱膨張部材23を設けることも可能である。
【0018】
この場合、前記熱膨張部材23によって閉鎖されることのない流体噴出孔13から冷却エアをノズル本体5へ継続して噴射することができるものである。したがって、ノズル本体5を冷却する冷却効果を維持してノズル本体5の異常高温を検出することができるものである。なお、前記熱膨張部材23は、複数の流体噴出孔13に対応すべく、流体噴出孔13の配置に沿って環状に又は円弧状に配置することも可能である。
【0019】
前述した説明より理解されるように、前記熱膨張部材23が膨張して流体噴出孔13を閉鎖すると、流体路17内の圧力又は流量が変化し、この変化を異常検出センサ21によって検出することにより、前記熱膨張部材23が膨張したこととして検出することができるものである。したがって、前記異常検出センサ21は、熱膨張部材23が膨張したことを検出するための膨張検出手段に相当するものである。
【0020】
ここで、熱膨張部材23が膨張したことを検出する膨張検出手段の構成としては、ノズル本体5に備えた熱膨張部材23に対応して、レーザ加工ヘッド1の適宜位置、例えば加工ヘッド本体3の先端面又は外筒14の先端面に、熱膨張部材23によって作動される電気的接点を備えた構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 レーザ加工ヘッド
3 加工ヘッド本体
5 ノズル本体
13 流体噴出孔
17 流体路
19 流体供給源
21 異常検出センサ
23 熱膨張部材
図1
図2