特許第6131151号(P6131151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6131151ポリアミド樹脂組成物、樹脂成形品、及びメッキ層付樹脂成形品の製造方法
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  • 特許6131151-ポリアミド樹脂組成物、樹脂成形品、及びメッキ層付樹脂成形品の製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131151
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物、樹脂成形品、及びメッキ層付樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20170508BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20170508BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20170508BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20170508BHJP
   C08J 7/06 20060101ALI20170508BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08K3/34
   C08K7/00
   C08K7/14
   C08J7/06 ACFG
   C08G69/26
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-182398(P2013-182398)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-48440(P2015-48440A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】高野 隆大
(72)【発明者】
【氏名】住野 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆介
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−144767(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128219(WO,A1)
【文献】 特開2002−283498(JP,A)
【文献】 特開2010−084007(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/137703(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0065327(US,A1)
【文献】 特開2013−035908(JP,A)
【文献】 特開2012−017429(JP,A)
【文献】 特開2011−102360(JP,A)
【文献】 特開2006−131821(JP,A)
【文献】 特表2010−510374(JP,A)
【文献】 特開2008−007753(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0280311(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 69/00 − 69/50
C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C08J 7/04 − 7/06
C23C 18/00 − 20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中浸漬した際の飽和吸水率が4重量%以下であるポリアミド樹脂(A)50重量%以上を含む、ポリアミド樹脂成分100重量部に対し、ガラス繊維20〜150重量部、および、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤1〜30重量部を含む、ポリアミド樹脂組成物であって、
前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤がCuCr24を含み、
さらに、ガラスフレークをポリアミド樹脂組成物100重量部に対し、1〜150重量部含むポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂(A)が、分子内に芳香環を含み、芳香環を構成する炭素原子の分子中の割合が、分子中の全炭素原子の数に対し30モル%以上である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
タルクを、ポリアミド樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜20重量部含む、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記ガラス繊維の断面が下記式による扁平率が2.5以上の長手形状のガラス繊維である、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
扁平率=ガラス繊維長径D2/ガラス繊維短径D1
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミン単位に由来し、ジカルボン酸構成単位の50モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂であって、キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン由来単位を20〜100モル%、メタキシリレンジアミン由来単位を0〜80モル%含有する、ポリアミド樹脂である、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂成分の90重量%以上が、水中浸漬した際の飽和吸水率が4重量%以下であるポリアミド樹脂(A)である、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品。
【請求項8】
さらに、表面にメッキ層を有する、請求項に記載の樹脂成形品。
【請求項9】
前記メッキ層がアンテナとしての性能を保有する、請求項に記載の樹脂成形品。
【請求項10】
携帯電子機器部品である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の樹脂成形品。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキ層を形成することを含む、メッキ層付樹脂成形品の製造方法。
【請求項12】
前記メッキ層が銅メッキ層である、請求項11に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関する。さらに、ポリアミド樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品および、樹脂成形品の表面に、メッキ層を形成したメッキ層付樹脂成形品に関する。さらに、かかるメッキ層付樹脂成形品の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂成形品の表面に、導電回路等の各種電子機器部品(メッキ層)を設ける技術が広く検討されている。そのような技術として、レーザーダイレクトストラクチャリング(以下、「LDS」ということがある)技術が注目されている。LDS技術は、例えば、LDS添加剤を含む樹脂成形品の表面にレーザーを照射し、レーザーを照射した部分のみを活性化させ、活性化させた部分に金属を適用することによってメッキ層を形成する技術である。かかるLDS技術は、例えば、特許文献1〜3等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−503817号公報
【特許文献2】特表2004−534408号公報
【特許文献3】国際公開WO2009/141800号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、LDS添加剤を含む樹脂成形品の表面に導電回路を設ける場合、導通に問題が生じる場合があることが分かった。本発明者がさらに検討したところ、この導通が悪くなる原因の1つが樹脂成形品と導電回路(メッキ層)の密着性にあることが分かった。特に、湿気の多い雰囲気下や高温下に置かれた場合に、密着性に問題が起こることが分かった。本発明は、かかる問題点を解決することを目的としたものであって、適切にメッキ層が形成でき、かつ、樹脂成形品とメッキ層の密着性に優れたメッキ層付樹脂成形品を提供できる、ポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況のもと、本発明者が検討を行った結果、特定のポリアミド樹脂を採用することにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、以下の手段<1>により、好ましくは<2>〜<15>により、上記課題は解決された。
<1>水中浸漬した際の飽和吸水率が4重量%以下であるポリアミド樹脂(A)50重量%以上を含む、ポリアミド樹脂成分100重量部に対し、ガラス繊維20〜150重量部、および、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤1〜30重量部を含む、ポリアミド樹脂組成物。
<2>前記ポリアミド樹脂(A)が、分子内に芳香環を含み、芳香環を構成する炭素原子の分子中に対する割合が30モル%以上である、<1>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<3>タルクを、ポリアミド樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜20重量部含む、<1>または<2>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<4>アスペクト比が3以上で平均粒子径が50μm以下の板状フィラーを、ポリアミド樹脂組成物100重量部に対し1〜30重量部含む、<1>〜<3>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
<5>前記ガラス繊維の断面が下記式による扁平率が2.5以上の長手形状のガラス繊維である、<1>〜<4>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
扁平率=ガラス繊維長径D2/ガラス繊維短径D1
<6>前記ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミン単位に由来し、ジカルボン酸構成単位の50モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂であって、キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン由来単位を20〜100モル%、メタキシリレンジアミン由来単位を0〜80モル%含有する、ポリアミド樹脂である、<1>〜<5>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
<7>前記ポリアミド樹脂成分の90重量%以上が、水中浸漬した際の飽和吸水率が4重量%以下であるポリアミド樹脂(A)である、<1>〜<6>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
<8>レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が銅を含む、<1>〜<7>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
<9><1>〜<8>のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品。
<10>さらに、表面にメッキ層を有する、<9>に記載の樹脂成形品。
<11>携帯電子機器部品である、<9>または<10>に記載の樹脂成形品。
<12>前記メッキ層がアンテナとしての性能を保有する、<10>または<11>に記載の樹脂成形品。
<13><1>〜<8>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキ層を形成することを含む、メッキ層付樹脂成形品の製造方法。
<14>前記メッキ層が銅メッキ層である、<13>に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法。
<15><13>または<14>に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、適切にメッキ層が形成でき、かつ、樹脂成形品とメッキ層の密着性に優れたメッキ層付樹脂成形品を提供になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を示す概略図である。図1中、1は樹脂成形品を、2はレーザーを、3はレーザーが照射された部分を、4はメッキ液を、5はメッキ層をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、水中浸漬した際の飽和吸水率が4重量%以下であるポリアミド樹脂(A)(以下、「ポリアミド樹脂(A)」ということがある)50重量%以上を含む、ポリアミド樹脂成分100重量部に対し、ガラス繊維20〜150重量部、および、LDS添加剤1〜30重量部を含むことを特徴とする。
このようなポリアミド樹脂組成物を採用することにより、適切にメッキ層を形成でき、かつ、メッキ層付樹脂成形品を高湿度下(水中で飽和させた後)や高温下(昇温冷却後)においても、メッキ層と樹脂成形品の密着性を保つことが可能になる。以下、本発明の詳細について、説明する。
【0010】
<ポリアミド樹脂>
本発明で用いるポリアミド樹脂は、その50重量%以上が、水中浸漬した際の飽和吸水率が4重量%以下である。このようなポリアミド樹脂(A)を採用することにより、成形後の吸水寸法変化が小さくなるという理由(メカニズム)により、適切にメッキを形成でき、かつ、水中飽和後や昇温冷却後においても、メッキ層と樹脂成形品の密着性を保つことが可能になる。ここで、水中浸漬した際の飽和吸水率とは、後述する実施例で述べる方法によって測定されたときの吸水率をいう。本発明で用いるポリアミド樹脂(A)の飽和吸水率は、3.5重量%以下であることが好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂のうち、ポリアミド樹脂(A)の割合は、50重量%以上であるが、90重量%以上であることが好ましく、99重量%以上であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂(A)は、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となる。
【0011】
本発明で用いるポリアミド樹脂(A)は、水中浸漬した際の飽和吸水率が4重量%以下であれば特に定めるものではないが、分子内に芳香環を含み、芳香環を構成する炭素原子の、分子中に対する割合が30モル%以上であることが好ましい。このようなポリアミド樹脂を用いることにより、吸水率が小さくなり、メッキ層付樹脂成形品を水中で飽和させた後の樹脂成形品とメッキ層の密着性をより高いレベルで維持することが可能になる。前記芳香環の割合は、30〜80モル%であることが好ましく、30〜50モル%であることがより好ましい。
【0012】
ポリアミド樹脂(A)は、ジアミン構成単位の70モル%以上、より好ましくは80モル%以上がキシリレンジアミン単位に由来し、ジカルボン酸構成単位の50モル%以上、より好ましくは70モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂であることが好ましい。さらに、キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン由来単位を20〜100モル%、メタキシリレンジアミン由来単位を0〜80モル%含有することが好ましく、パラキシリレンジアミン由来単位を25〜100モル%、メタキシリレンジアミン由来単位を0〜75モル%含有することがさらに好ましい。
【0013】
本発明のポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂成分のうち、上記ポリアミド樹脂(A)以外のポリアミド樹脂はその種類等特に定めるものではなく、公知のポリアミド樹脂を用いることができる。他のポリアミド樹脂は、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。
他のポリアミド樹脂としては、特開2011−132550号公報の段落番号0011〜0013の記載を参酌することができる。好ましくは、ジアミン構成単位(ジアミンに由来する構成単位)の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂である。ジアミンの50モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸と重縮合されたキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂である。
好ましくは、ジアミン構成単位の70モル%以上、より好ましくは80モル%以上がメタキシリレンジアミンおよび/またはパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)の好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特には80モル%以上が、炭素原子数が好ましくは4〜20の、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂である。4〜20のα、ω−直鎖脂肪族二塩基酸は、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸などが好適に使用できる。
【0014】
本発明のポリアミド樹脂組成物中におけるポリアミド樹脂成分(ポリアミド樹脂(A)と他のポリアミド樹脂の合計)の配合量は、50〜100重量%であることが好ましく、70〜100重量%であることがより好ましい。
【0015】
<ガラス繊維>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を、ポリアミド樹脂成分100重量部に対し、20〜150重量部含み、35〜110重量部含むことがより好ましい。ガラス繊維は、1種類のみでもよいし、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となる。このようなガラス繊維を含むことにより、樹脂成形品の機械的強度を向上させるとともに、線膨張係数を低下させ、昇温冷却後も高い密着性を維持することが可能になる。
ここで、ガラス繊維とは、外観が繊維状を呈するガラスをいう。
【0016】
本発明で好ましく使用されるガラス繊維は、平均直径が20μm以下のものが好ましく、さらに1〜15μmのものが、物性バランス(強度、剛性、耐熱剛性、衝撃強度)をより一層高める点、並びに成形反りをより一層低減させる点で好ましい。また、通常断面形状が円形のガラス繊維が一般的に用いられることが多いが、本発明では、特に扁平状のものが好ましく用いられる。扁平状のものを用いることにより、得られた成形品の流動直角方向の線膨張係数、及び吸水寸法変化が小さくなることにより、メッキ層付樹脂成形品を水中で飽和させた後の樹脂成形品とメッキ層の密着性をより高いレベルで維持することが可能になる。
【0017】
ガラス繊維の長さは特定されるものでなく、長繊維タイプ(ロービング)や短繊維タイプ(チョップドストランド)等から選択して用いることができる。この場合の集束本数は、100〜5000本程度であることが好ましい。また、ポリアミド樹脂組成物混練後のポリアミド樹脂組成物中のガラス繊維の長さが平均0.1mm以上で得られるならば、いわゆるミルドファイバー、ガラスパウダーと称せられるストランドの粉砕品でもよく、また、連続単繊維系のスライバーのものでもよい。原料ガラスの組成は、無アルカリのものも好ましく、例えば、Eガラス、Cガラス、Sガラス等が挙げられるが、本発明では、Eガラスが好ましく用いられる。
【0018】
ガラス繊維は、例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等で表面処理されていることが好ましく、その付着量は、通常、ガラス繊維重量の0.01〜1重量%である。さらに必要に応じて、脂肪酸アミド化合物、シリコーンオイル等の潤滑剤、第4級アンモニウンム塩等の帯電防止剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の被膜形成能を有する樹脂、被膜形成能を有する樹脂と熱安定剤、難燃剤等の混合物で表面処理されたものを用いることもできる。
【0019】
本発明では、ガラス繊維として、断面が扁平のものを好ましく採用できる。断面が扁平のものを採用することにより、得られた成形品の流動直角方向の線膨張係数、及び吸水寸法変化が小さくなることにより、メッキ層付樹脂成形品を水中で飽和させた後の樹脂成形品とメッキ層の密着性をより高いレベルで維持することが可能になる。
断面が扁平のガラス繊維としては、扁平率2.5以上の長手形状であるガラス繊維(以下、「扁平断面ガラス繊維」と称することがある)が好ましい。ここで、扁平断面とは、断面の形状が通常の円形ではない非円形断面をしており、例えば長方形、長方形に近い長円形、楕円形、長手方向の中央部がくびれた繭型等の特開平7−41670号公報の図1に示されているもの等が挙げられる。本発明における扁平率は、長径をD2、短径をD1とし、強化繊維の扁平の程度を扁平率としたとき、下記で表される。
扁平率=ガラス繊維長径D2/ガラス繊維短径D1
【0020】
この扁平率を算出するためのガラス繊維断面の長径(D2)及び短径は(D1)は、具体的には、メーカーの上記定義による公称値があればそれをそのまま用いるが、無い場合は断面の顕微鏡写真から実寸を測定することにより求める。
【0021】
本発明のポリアミド樹脂組成物に使用される扁平断面ガラス繊維の扁平率(D2)/(D1)は2.5〜10がより好ましく、3〜10がさらに好ましく、3.1〜6が特に好ましい。また、樹脂等との混合、混練、成形時にガラス繊維に加わる荷重でガラス繊維が破砕され、成形品中での実際の扁平率が小さくなる場合があるので、扁平率はそれほど大きい必要は無い。
【0022】
本発明においては、扁平断面ガラス繊維断面の長径(D2)及び短径(D1)については任意であるが、長径(D2)が1.25〜300μm、短径(D1)が0.5〜25μmであることが好ましい。長径及び短径を上記範囲内とすることにより、ガラス繊維の紡糸が容易となり、また樹脂とガラス繊維表面の接触面積が少なくなり成形品の強度が低下することを抑止できるため好ましい。本発明においては、短径(D1)が3μm以上であることがより好ましく、短径(D1)が3μm以上で、かつ、長径(D2)/短径(D1)が3より大きい場合が特に好ましい。
【0023】
本発明における扁平断面ガラス繊維は、例えば特公平3−59019号公報、特公平4−13300号公報、特公平4−32775号公報等に記載の方法を用いて製造することができる。特に、底面に多数のオリフィスを有するオリフィスプレートにおいて、複数のオリフィス出口を囲み、オリフィスプレート底面より下方に延びる凸状縁を設けたオリフィスプレート、又は単数又は複数のオリフィス孔を有するノズルチップの外周部先端から下方に延びる複数の凸状縁を設けた異形断面ガラス繊維紡糸用ノズルチップを用いて製造された扁平断面ガラス繊維が好ましい。
【0024】
<レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、LDS添加剤を含む。本発明のポリアミド樹脂組成物における、LDS添加剤の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、1〜30重量部であり、好ましくは2〜25重量部であり、より好ましくは10〜18重量部である。LDS添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となる。
【0025】
本発明におけるLDS添加剤は、PA−MP6(後述する実施例で合成しているPAMP6)樹脂100重量部に対し、LDS添加剤と考えられる添加剤を4重量部添加し、波長1064nmのYAGレーザーを用い、出力10W、周波数80kHz、スキャン速度3m/sにて照射し、その後のメッキ工程は無電解のMacDermid社製MIDCopper100XB Strikeのメッキ槽にて実施し、レーザー照射面に金属を適用したときに、メッキを形成できる化合物をいう。本発明で用いるLDS添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品はLDS添加剤として市販されているものの他、本発明におけるLDS添加剤の要件を満たす限り、他の用途として販売されている物質であってもよい。
【0026】
本発明で用いるLDS添加剤は、銅を含むことが好ましい。LDS添加剤中の金属成分のうち銅の含有量は、20〜95重量%であることが好ましい。銅を含むLDS添加剤の好ましい例としては、Cu3(PO42Cu(OH)2やCuCr24が挙げられる。銅を含むLDS添加剤を用いると、樹脂成形品とメッキ層の密着性が優れるため、メッキ層付樹脂成形品を水中で飽和させた後の樹脂成形品とメッキ層の密着性をより高いレベルで維持することが可能になる。特に、LDS添加剤の配合量をポリアミド樹脂成分100重量部に対し、10重量部以上配合するとその効果がより顕著なものとなる。
【0027】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、タルク、板状フィラー、熱安定剤、光安定剤、アルカリ、離型剤、他の樹脂成分、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染顔料、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
また、これらの成分は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
<タルク>
本発明のポリアミド樹脂組成物はタルクを含んでいてもよい。本発明では、タルクを配合することにより、メッキ性が向上することから添加が可能である。
本発明のポリアミド樹脂組成物における、タルクの配合量は、ポリアミド樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜20重量部であることが好ましく、0.2〜10重量部であることがより好ましく、0.3〜5重量部であることがさらに好ましい。タルクは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となる。
【0029】
<板状フィラー>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、板状フィラーを含んでいてもよい。本発明のポリアミド樹脂組成物における、板状フィラーの配合量は、ポリアミド樹脂組成物100重量部に対し、1〜150重量部であることが好ましく、10〜100重量部であることがより好ましく、20〜70重量部であることがさらに好ましい。板状フィラーは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となる。
【0030】
ここで、板状フィラーとは、無機または有機性の扁平状の微粒子を意味する。
板状フィラーの平均粒子径は、平板構造であって、50μm以下のものが好ましく、5〜30μmのものがより好ましい。
また、板状フィラーのアスペクト比は、3以上が好ましく、5〜20がより好ましい。
上記平均粒子径とアスペクト比を満たす板状フィラーを用いることにより、得られた成形品の流動直角方向の線膨張係数、及び吸水寸法変化が小さくなることにより、メッキ層付樹脂成形品を水中で飽和させた後の樹脂成形品とメッキ層の密着性をより高いレベルで維持することが可能になる。
【0031】
板状フィラーとしては、例えば、ガラスフレーク、マイカ、タルク、クレー、黒鉛、セリサイト、モンモリロナイト、板状炭酸カルシウム、板状アルミナ等が挙げられる。これらの中では、曲げ特性、耐衝撃性、寸法安定性、流動性、製品外観のバランスの観点から、ガラスフレーク、マイカ、タルクが好ましい。携帯電子機器部品は、特に高い耐衝撃性が求められる場合が多いため、耐衝撃性が最も優れるガラスフレークの使用が最も好ましい。
【0032】
板状フィラーとして好適なガラスフレークは、一般市販品として、Eガラス組成、Cガラス組成のものが入手可能である。平均粒子径は、各社グレードによって異なるが、平板構造のガラスであって、50μm以下のものが好ましい。また、平均粒子径の異なるガラスフレーク2種以上を併用してもよい。
更に、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤などで表面処理されていることが好ましく、表面処理剤の付着量は、通常ガラスフレーク重量の0.01重量%以上である。
【0033】
<熱安定剤>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、有機系および/または無機系熱安定剤をさらに含有していてもよく、有機系熱安定剤を含むことがより好ましい。
有機系熱安定剤としては、フェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ヒンダードアミン系化合物、トリアジン系化合物、及びイオウ系化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
熱安定剤としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
フェノール系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヒンダートフェノール系化合物を挙げることができる。ヒンダードフェノール系化合物としては、例えば、N,N'−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及び1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸などが挙げられる。
【0035】
ホスファイト系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−テトラ−トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4'−イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス(4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル))・1,6−ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4、4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2、2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(3−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイトなどが挙げられる。
【0036】
ホスファイト系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物を挙げることもできる。ペンタエリストール型ホスファイト化合物としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・メチル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2−エチルヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・イソデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ラウリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・イソトリデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ステアリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・シクロヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ベンジル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・エチルセロソルブ・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ブチルカルビトール・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ノニルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,6−ジ−t−ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,4−ジ−t−ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,4−ジ−t−オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2−シクロヘキシルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリストリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2,6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0037】
ペンタエリストール型ホスファイト化合物としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2、6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが好ましく、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
【0038】
ヒンダードアミン系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β',β'−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物などが挙げられる。
【0039】
トリアジン系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン類が挙げられる。
ヒドロキシフェニルトリアジン類としては、例えば、2,4,6−トリス(2'−ヒドロキシ−4'−オクチルオキシ−フェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2'−ヒドロキシ−4'−ヘキシルオキシ−フェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2',4'−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2',4'−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2',4'−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2'−ヒドロキシ−4'−プロピルオキシ−フェニル)−6−(2',4'−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(4'−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2'−ヒドロキシ−4'−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2',4'−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2'−ヒドロキシ−4'−イソプロピルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2'−ヒドロキシ−4'−n−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、及び2,4,6−トリス(2'−ヒドロキシ−4'−エトキシカルボニルメトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0040】
イオウ系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3'−チオジプロピオネート、及びジステアリル3,3'−チオジプロピオネートなどを挙げることができる。
【0041】
無機系熱安定剤の例としては、金属水酸化物が好ましく、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムや、三酸化アンチモンが例示される。特に、LDS添加剤が酸性物質のときに、無機系熱安定剤として、アルカリを添加すると、後述するLDS添加剤の色合いを均一するためのアルカリ成分を兼ねることができる。また、このようなアルカリは、熱安定剤としても働く場合がある。
【0042】
熱安定剤の含有量は、本発明のポリアミド樹脂組成物100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部であることが好ましく、0.01〜3重量部であることがより好ましく、0.03〜2重量部であることがさらに好ましい。熱安定剤が少なすぎると熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤が多すぎると効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0043】
<光安定剤>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、有機系および/または無機系光安定剤を含むことが好ましく、有機系光安定剤を含むことがより好ましい。
有機系光安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、及びシアノアクリレート系化合物などの紫外線吸収効果のある化合物、並びにヒンダードアミン系化合物及びヒンダードフェノール系化合物などのラジカル捕捉能力のある化合物などが挙げられる。
光安定剤としては、紫外線吸収効果のある化合物とラジカル捕捉能力のある化合物を併用することにより、より高い安定化効果を発揮させることができる。
光安定剤としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
ベンゾフェノン系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、及び2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0045】
サリシレート系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、及びp−オクチルフェニルサリシレートなどが挙げられる。
【0046】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−アミノフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2'−ヒドロキシ−3'−(3'',4'',5'',6''−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス{4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール}、及び6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−t−オクチル−6'−t−ブチル−4'−メチル−2,2'−メチレンビスフェノールなどが挙げられる。
【0047】
シアノアクリレート系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、及びエチル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。
【0048】
ヒンダードアミン系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)n−ブチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルマロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとコハク酸の縮合物、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−第三オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンの直鎖状又は環状縮合物、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,1'−(1,2−エタンジイル)−ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−2−n−ブチル−2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジル)マロネート、3−n−オクチル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)スクシネート、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレンジアミンと4−モルホリノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンの直鎖状又は環状縮合物、2−クロロ−4,6−ビス(4−n−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジンと1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタンの縮合物、2−クロロ−4,6−ジ−(4−n−ブチルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジンと1,2−ビス−(3−アミノプロピルアミノ)エタンの縮合物、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン、3−ドデシル−1−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン、4−ヘキサデシルオキシ−と4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの混合物、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−シクロヘキシルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンの縮合物、1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン並びに4−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの縮合物(CAS登録番号[136504−96−6]);1,6−ヘキサンジアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン並びにN,N−ジブチルアミンと4−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの縮合物(CAS登録番号[192268−64−7]);N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−n−ドデシルスクシンイミド、N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−n−ドデシルスクシンイミド、2−ウンデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1−オキサ−3,8−ジアザ−4−オキソ−スピロ[4.5]デカン、7,7,9,9−テトラメチル−2−シクロウンデシル−1−オキサ−3,8−ジアザ−4−オキソ−スピロ[4.5]デカンとエピクロロヒドリンの反応生成物、1,1−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)−2−(4−メトキシフェニル)エテン、N,N'−ビス−ホルミル−N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン、4−メトキシメチレンマロン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジンとのジエステル、ポリ[メチルプロピル−3−オキシ−4−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)]シロキサン、マレイン酸無水物−α−オレフィンコポリマーと2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン又は1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジンとの反応生成物、2,4−ビス[N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N−ブチルアミノ]−6−(2−ヒドロキシエチル)アミノ−1,3,5−トリアジン、1−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)−4−オクタデカノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、5−(2−エチルヘキサノイル)オキシメチル−3,3,5−トリメチル−2−モルホリノン、サンドゥバー(Sanduvor)(クラリアント(Clariant);CAS登録番号[106917−31−1])、5−(2−エチルヘキサノイル)オキシメチル−3,3,5−トリメチル−2−モルホリノン、2,4−ビス[(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−ピペリジン−4−イル)ブチルアミノ]−6−クロロ−s−トリアジンとN,N'−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン)との反応生成物、1,3,5−トリス(N−シクロヘキシル−N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−3−オン−4−イル)アミノ)−s−トリアジン、1,3,5−トリス(N−シクロヘキシル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペラジン−3−オン−4−イル)アミノ)−s−トリアジン、N,N',N",N'''−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10ジアミン、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]などが挙げられ、中でもビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、N,N',N",N'''−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10ジアミンなどが挙げられる。
【0049】
ヒンダードフェノール系化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド、トリエチレングリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ハイドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3ハイドロキシ−2,6−ジメチルベンジ)イソシアネートなどが挙げられる。
【0050】
光安定剤の含有量は、本発明のポリアミド樹脂組成物100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部であることが好ましく、0.01〜3重量部であることがより好ましく、0.03〜2重量部であることがさらに好ましい。
【0051】
<アルカリ>
本発明のポリアミド樹脂組成物はアルカリを含んでいてもよい。本発明で用いるLDS添加剤が酸性物質(例えば、pH6以下)の場合に、組み合わせによって自身が還元することで色目がまだら模様となるケースがあるが、アルカリを添加することにより、得られる樹脂成形品の色あいをより均一にすることができる。アルカリの種類は特に定めるものではなく、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を用いることができる。アルカリは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物における、アルカリの配合量は、LDS添加剤の種類及びアルカリの種類にもよるが、LDS添加剤の配合量の、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.05〜5重量%である。
【0052】
<離型剤>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0053】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0054】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0055】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0056】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0057】
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、脂肪族炭化水素の数平均分子量は好ましくは5,000以下である。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
【0058】
離型剤の含有量は、ポリアミド樹脂とガラス繊維の合計100重量部に対して、0.001〜2重量部であることが好ましく、0.01〜1重量部であることがより好ましい。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
【0059】
<ポリアミド樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、任意の方法を採用することができる。例えば、ポリアミド樹脂と、LDS添加剤と、ガラス繊維とをV型ブレンダー等の混合手段を用いて混合し、一括ブレンド品を調整した後、ベント付き押出機で溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。あるいは、二段階練込法として、予め、ガラス繊維以外の成分等を、十分混合後、ベント付き押出機で溶融混練りしてペレットを製造した後、そのペレットとガラス繊維を混合後、ベント付き押出機で溶融混練りする方法が挙げられる。
【0060】
さらに、ガラス繊維以外の成分等を、V型ブレンダー等で十分混合したものを予め調整しておき、この混合物をベント付き二軸押出機の第一シュートより供給し、ガラス繊維は押出機途中の第二シュートより供給して溶融混練、ペレット化する方法が挙げられる。
押出機の混練ゾーンのスクリュー構成は、混練を促進するエレメントを上流側に、昇圧能力のあるエレメントを下流側に配置されることが好ましい。
【0061】
混練を促進するエレメントとしては、順送りニーディングディスクエレメント、直交ニーディングディスクエレメント、幅広ニーディングディスクエレメント、および順送りミキシングスクリューエレメント等が挙げられる。
【0062】
溶融混練に際しての加熱温度は、通常180〜360℃の範囲から適宜選択することができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。そのため、剪断発熱等を考慮したスクリュー構成を選定することが望ましい。また、混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する観点から、酸化防止剤や熱安定剤を使用することが望ましい。
【0063】
樹脂成形品の製造方法は、特に限定されず、ポリアミド樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。
【0064】
<メッキ層付樹脂成型品の製造方法>
次に、本発明のメッキ層付樹脂成型品の製造方法、具体的には、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形した樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を図1に従って説明する。
【0065】
図1は、レーザーダイレクトストラクチャリング技術によって、樹脂成形品1の表面にメッキを形成する工程を示す概略図である。図1において、樹脂成形品1は、平坦な基板となっているが、必ずしも平坦な基板である必要はなく、一部または全部が曲面している樹脂成形品であってもよい。また、樹脂成形品1には、最終製品に限定されず、各種部品も含まれる。
【0066】
本発明における樹脂成形品1としては、携帯電子機器部品が好ましい。携帯電子機器部品は、高い耐衝撃特性と剛性、優れた耐熱性を併せ持つうえ、異方性が小さく、反りが小さいという特徴を有し、電子手帳、携帯用コンピューター等のPDA、ポケットベル、携帯電話、PHSなどの内部構造物及び筐体として極めて有効である。特に、成形品がリブを除く平均肉厚が1.2mm以下(下限値は特に定めるものではないが、例えば、0.4mm以上)である平板形状の携帯電子機器用部品に適しており、中でも筐体として特に適している。
再び図1に戻り、本発明のメッキ層付樹脂成型品の製造方法においては、樹脂成形品1にレーザー2を照射する。
【0067】
レーザー2は、特に限定されるものではなく、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、特にYGAレーザーが好ましい。また、レーザー2の波長も特に限定されるものではない。好ましいレーザー2の波長範囲は、200nm〜1200nmであり、特に好ましくは800〜1200nmである。
【0068】
レーザー2が樹脂成型品1に照射されると、レーザー2が照射された部分3のみ、樹脂成形品1が活性化される。このように活性化された状態で、樹脂成形品1をメッキ液4に適用する。メッキ液4としては、特に定めるものではなく、公知のメッキ液を広く採用することができ、金属成分として銅、ニッケル、金、銀、パラジウムが混合されているものが好ましく、銅がより好ましい。
【0069】
樹脂成形品1をメッキ液4に適用する方法についても、特に限定されないが、例えば、メッキ液を配合した液中に投入する方法が挙げられる。メッキ液を適用後の樹脂成形品1は、レーザー2を照射した部分のみ、メッキ層5が形成される。
【0070】
本発明の方法では、1mm以下、さらには、150μm以下の幅の回路間隔(下限値は特に定めるものではないが、例えば、30μm以上)を形成することができる。かかる回路は携帯電子機器部品のアンテナとして好ましく用いられる。すなわち、本発明の樹脂成形品1の好ましい実施形態の一例として、携帯電子機器部品の表面に設けられたメッキ層が、アンテナとしての性能を保有する樹脂成形品が挙げられる。
【0071】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2011−219620号公報、特開2011−195820号公報、特開2011−178873号公報、特開2011−168705号公報、特開2011−148267号公報の記載を参酌することができる。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0073】
<ポリアミド樹脂>
<製造例1>
(ポリアミド(PAMP6)の合成)
アジピン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)とメタキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35Mpa)下でジアミンとアジピン酸(ローディア社製)とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を270℃まで上昇させた。滴下終了後、滴下終了後、0.06MPaまで減圧し10分間反応を続け分子量1,000以下の成分量を調整した。その後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミドを得た。以下、「PAMP6」という。
【0074】
<製造例2>
(ポリアミド(PAMP10)の合成)
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)とメタキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35Mpa)下でジアミンとアジピン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を235℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応継続し、分子量1,000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミドを得た。以下、「PAMP10」という。
【0075】
<製造例3>
(ポリアミド(PAP10)の合成)
撹拌機、分縮器、冷却器、温度計、滴下装置及び窒素導入管、ストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したセバシン酸(伊藤製油(株)製、製品名セバシン酸TA)8950g(44.25mol)、次亜リン酸カルシウム12.54g(0.074mol)、酢酸ナトリウム6.45g(0.079mol)を秤量して仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素で0.4MPaに加圧し、撹拌しながら20℃から190℃に昇温して55分間でセバシン酸を均一に溶融した。次いでパラキシリレンジアミン(三菱瓦斯化学(株)製)5960g(43.76mol)を撹拌下で110分を要して滴下した。この間、反応容器内温は293℃まで連続的に上昇させた。滴下工程では圧力を0.42MPaに制御し、生成水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。分縮器の温度は145〜147℃の範囲に制御した。パラキシリレンジアミン滴下終了後、反応容器内圧力0.42MPaにて20分間重縮合反応を継続した。この間、反応容器内温は296℃まで上昇させた。その後、30分間で反応容器内圧力を0.42MPaから0.12MPaまで減圧した。この間に内温は298℃まで昇温した。その後0.002MPa/分の速度で減圧し、20分間で0.08MPaまで減圧し、分子量1,000以下の成分量を調整した。減圧完了時の反応容器内の温度は301℃であった。その後、系内を窒素で加圧し、反応容器内温度301℃、樹脂温度301℃で、ストランドダイからポリマーをストランド状に取出して20℃の冷却水にて冷却し、これをペレット化し、約13kgのポリアミド樹脂を得た。なお、冷却水中での冷却時間は5秒、ストランドの引き取り速度は100m/分とした。以下、「PAP10」という。
【0076】
<ポリアミド樹脂の水中浸漬した際の飽和吸水率の測定方法>
100×100mmで厚み2mmのプレート試験片を80℃熱水中に浸漬し、24時間毎にプレート重量を測定した。その際、プレート表面の水分はエアーブローによって十分に吹き飛ばすこととした。重量変化が飽和した時点で浸漬を終了とし、初期重量に対する重量変化率を飽和吸水率として算出した。
【数1】
【0077】
<ポリアミド樹脂>
PAMP6:上記により合成、水中浸漬した際の飽和吸水率6.8重量%
PAMP10:上記により合成、水中浸漬した際の飽和吸水率3重量%
PAP10:上記により合成、水中浸漬した際の飽和吸水率3重量%
PA12:ポリアミド12(エムス社製、商品名:L20G)、水中浸漬した際の飽和吸水率1.8重量%
【0078】
<ガラス繊維>
ガラス繊維1:03T−296GH(日本電気硝子製)
ガラス繊維2:扁平ガラス繊維(日東紡製、3PA−810S、扁平率:4)
【0079】
<板状フィラー>
ガラスフレーク:REFG313(日本板硝子製)、アスペクト比:3.2、平均粒子径:160μm
【0080】
<LSD添加剤>
Black 1G:CuCr24(Shephred color company製)
Black 30C965:CuCr24(Shephred color company製)
【0081】
<タルク>
タルク:林化成製、ミクロンホワイト5000S
【0082】
<コンパウンド>
後述する下記表に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、ガラスフィラーを除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した後で、ガラスフィラーをサイドフィードして樹脂ペレットを作成した。押出機の温度設定は、一律同温度とし、樹脂の種類により設定を変更した。PAMP6、PAMP10およびPA12では280℃、PAP10では300℃にて実施した。
【0083】
<プレート試験片の作成>
金型として100×100mmで厚みの2mmのキャビティに、幅100mmで、0.8mm厚みのファンゲートから樹脂組成物を充填して成形を行った。ゲート部分をカットし、プレート試験片を得た。
【0084】
<Plating外観>
得られたプレート試験片の40mm(プレート試験片の縦方向)×80mm(プレート試験片の横方向)の範囲に、Trumpf製、VMc1のレーザー照射装置(波長1064nmのYAGレーザー最大出力15W)を用い、出力80%、周波数60kHz、スキャン速度3m/sにて照射した。その後のメッキ工程は無電解のEnthone社製、ENPLATE LDS CU 400 PCの48℃のメッキ槽にて実施した。メッキ性能は20分間にメッキされた銅(メッキ層)の厚みを目視にて判断した。
以下の通り評価した。結果を下記表に示す。
○:良好な外観
△:メッキは乗っているが若干薄い様子(実用レベル)
×:全くメッキが乗らない様子
【0085】
<密着性の評価のためのプレートの準備>
メッキ層が形成されたプレート試験片のメッキ層を2mm角の碁盤目にカットし、10マス×10マスを2箇所作製した。
【0086】
<水中飽和試験>
上記密着性評価のためのプレートを、上記ポリアミド樹脂の水中浸漬した際の飽和吸水率の測定方法に従って調整した。そしてプレート上の碁盤目にセロハン粘着テープを充分圧着し、塗装面と粘着テープの角度を約45度に保ちながら一気に引き剥がす作業を行い、プレートに残った碁盤目の状態を観察、評価した。
以下の通り評価した。結果を下記表に示す。
○:いずれのマスも剥離が見あたらなかった
△:一つ以上のマスにおいて、部分的剥離が認められたが、完全に剥離したマスはなかった
×:一つ以上のマスが完全に剥離してしまった
【0087】
<昇温冷却試験>
上記密着性評価のためのプレートを、リフロー槽を用い、170℃まで昇温後、60秒保持し、その後室温まで冷却した。この工程を3回実施した。そしてプレート上の碁盤目にセロハン粘着テープを充分圧着し、塗装面と粘着テープの角度を約45度に保ちながら一気に引き剥がす作業を行い、プレートに残った碁盤目の状態を観察、評価した。
なお、PA12(実施例3)は170℃環境下でのプレート変形が著しいことから、評価は実施しなかった。
以下の通り評価した。結果を下記表に示す。
○:いずれのマスも剥離が見あたらなかった
△:一部のマスにおいて、部分的剥離が認められたが、完全に剥離したマスはなかった
×:一部のマスが完全に剥離してしまった
【0088】
【表1】
【0089】
上記表から明らかなとおり、本発明のポリアミド樹脂組成物を用いた場合(実施例1〜9)、Plating外観に優れ、水中飽和試験および昇温冷却試験を行っても、密着性が高く保たれることが分かった。これに対し、ポリアミド樹脂中の飽和吸水率が4重量%を超える場合(比較例1)、水中飽和試験後の密着性が顕著に劣っていた。また、LDS添加剤の配合量が少ない場合(比較例2)、メッキ層が形成できなかった。さらに、ガラス繊維の配合量が少ない場合(比較例3)、昇温冷却試験後の密着性が劣っていた。尚、比較例2はメッキがのらなかったため、水中飽和試験および昇温冷却試験を行っていない。
また、本発明の組成物においてタルクを配合した場合(実施例4)、水中飽和試験後の密着性がさらに向上した。本発明の組成物において板状フィラー(ガラスフレーク)を配合した場合(実施例5)、水中飽和試験後の密着性がさらに向上した。本発明の組成物においてガラス繊維として、扁平ガラス繊維を配合した場合(実施例6)、水中飽和試験後の密着性がさらに向上した。LDS添加剤の配合量を増やした場合(実施例8)、水中飽和試験後の密着性がさらに向上した。
図1