特許第6131157号(P6131157)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131157
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】吊り下げ機構
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/54 20060101AFI20170508BHJP
   B66D 5/12 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   B66D1/54 Z
   B66D5/12
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-192032(P2013-192032)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-58993(P2015-58993A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】304039065
【氏名又は名称】カヤバ システム マシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】勝井 宗一
(72)【発明者】
【氏名】駒田 佳則
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−42287(JP,U)
【文献】 米国特許第2980400(US,A)
【文献】 実開平3−21089(JP,U)
【文献】 特公昭43−9642(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/54
B66D 3/04
B66D 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンのフレームに設置される吊り下げ機構であって、
負荷を吊り下げるワイヤーロープが巻回される吊り具と、
前記吊り具を支持する支持部と前記支持部の上面から上方へ延設される延設部と前記延設部の外周に設けられ前記延設部より大径な大径部とを有する支持ブラケットと、
前記フレームに固定され、前記大径部を収容する収容部を有する固定ブラケットと、
前記収容部内で上下方向にスライド可能に設けられ、前記支持ブラケットが前記延設部の軸心を中心として回動可能なように前記大径部を軸方向に支持する回動支持部材と、
前記収容部内に設けられ前記回動支持部材を上方に付勢する付勢部材と、
前記支持部の前記上面と前記収容部の下面との間に形成され、前記支持ブラケットと前記固定ブラケットとの相対回転を制動する制動部と、
を備え、
前記回動支持部材が前記付勢部材の付勢力によって上方にスライドした場合、前記支持ブラケットと前記固定ブラケットとの相対回転が前記制動部によって制動され、前記回動支持部材が前記付勢部材の付勢力に抗して下方にスライドした場合、前記支持ブラケットと前記固定ブラケットとの相対回転が許容される、
ことを特徴とする吊り下げ機構。
【請求項2】
前記回動支持部材は、前記収容部内を上下にスライド可能なスライド部材と、前記スライド部材と前記大径部との間に介装されるスラスト軸受と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の吊り下げ機構。
【請求項3】
前記収容部の内周面に設けられ、前記スライド部材の外周面と摺接して前記大径部の径方向への移動を規制するスライドプレートをさらに備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の吊り下げ機構。
【請求項4】
前記スライド部材は、前記付勢部材の付勢力に抗して下方へスライドした場合の下降端を規定するストッパを有する、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の吊り下げ機構。
【請求項5】
前記制動部は、前記支持部の上面と前記収容部の下面との間に介装される摩擦板である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の吊り下げ機構。
【請求項6】
前記付勢部材は、前記収容部内の底面と前記回動支持部材の下面との間に介装される皿バネである、
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の吊り下げ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、海洋観測船のデッキ上に設置される門型フレームの梁部に、観測機器を吊り下げるワイヤーロープをガイドするシーブが支持されることが開示されている。このシーブは、シーブを軸支する支持ブラケットが垂直方向の軸線を中心として回動する首振りシーブであり、海洋に投下された観測機器が波の影響等で揺動した場合にはワイヤーロープの移動に対して追従するように首振り動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−45988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術では、支持ブラケットが常に首振り可能であるので、ワイヤーロープに作用する張力が弱くなった場合にワイヤーロープのよりが戻ろうとしてシーブを首振り方向に回動させる力が作用する。このとき、シーブが回動すると、ワイヤーロープがシーブに絡みつく可能性がある。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、ワイヤーロープに作用する張力が弱くなった場合にシーブ等の吊り具が回動することを抑制可能な吊り下げ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、クレーンのフレームに設置される吊り下げ機構であって、負荷を吊り下げるワイヤーロープが巻回される吊り具と、吊り具を支持する支持部と支持部の上面から上方へ延設される延設部と延設部の外周に設けられ延設部より大径な大径部とを有する支持ブラケットと、フレームに固定され、大径部を収容する収容部を有する固定ブラケットと、収容部内で上下方向にスライド可能に設けられ、支持ブラケットが延設部の軸心を中心として回動可能なように大径部を軸方向に支持する回動支持部材と、収容部内に設けられ回動支持部材を上方に付勢する付勢部材と、支持部の上面と収容部の下面との間に形成され、支持ブラケットと固定ブラケットとの相対回転を制動する制動部と、を備え、回動支持部材が付勢部材の付勢力によって上方にスライドした場合、支持ブラケットと固定ブラケットとの相対回転が制動部によって制動され、回動支持部材が付勢部材の付勢力に抗して下方にスライドした場合、支持ブラケットと固定ブラケットとの相対回転が許容される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワイヤーロープに作用する張力が弱くなった場合に、回動支持部材が付勢部材の付勢力によって上方にスライドして、支持ブラケットと固定ブラケットとの相対回転が制動されるので、吊り具の回動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るシーブユニットを示す構成図である。
図2図1の範囲Aを拡大して示す断面図である。
図3図2のIII−III断面を示す断面図である。
図4】シーブユニットの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態におけるシーブユニット100を示す構成図である。
【0011】
吊り下げ機構としてのシーブユニット100は、船舶の甲板上に搭載されるAフレームクレーン(図示せず)のフレーム1に設置される。特に、Aフレームクレーンの先端部に横方向に延設される梁状のフレーム1に設置される。なお、シーブユニット100は、Aフレームクレーンに限らずその他のクレーンのフレームに設置されていてもよいし、地上に配置される各種クレーンのフレームに設置されていてもよい。
【0012】
シーブユニット100は、負荷を吊り下げるワイヤーロープ2が巻回される吊り具としてのシーブ3と、シーブ3を回転可能に軸支する支持ブラケット10と、支持ブラケット10に連結されてフレーム1に固定される固定ブラケット20と、を備える。
【0013】
シーブ3は、例えば海洋観測機器等の負荷を吊り下げるワイヤーロープ2が巻回される。シーブ3の外周面には環状の溝(図示せず)が形成されており、ワイヤーロープ2が溝に沿って巻回される。シーブ3は、ワイヤーロープ2の繰り出し及び繰り戻しに応じて回転する。
【0014】
支持ブラケット10は、シーブ3の回転軸3aを軸支する支持部11を有し、鉛直方向の軸線を中心に回動可能なように固定ブラケット20に連結される。
【0015】
固定ブラケット20は、フレーム1に溶接等によって固定される取付部21と、フレーム1と平行な水平軸線を中心として回動可能なように取付部21に軸支される第1回動部22と、フレーム1に垂直な水平軸線を中心として回動可能なように第1回動部22に軸支される第2回動部23と、第2回動部23から下方に延設され内部に収容室24a(図2)を有する収容部24と、を有する。
【0016】
固定ブラケット20は、第1回動部22及び第2回動部23がフレーム1の傾きや船舶の動揺に応じて回動することで、支持ブラケット10を常に鉛直方向下方に垂下させる。
【0017】
図2は、図1の範囲Aを拡大して示す断面図である。図3は、図2のIII−III断面を示す断面図である。
【0018】
支持ブラケット10は、支持部11の上面11aから上方へ延設される延設部12と、延設部12の外周に設けられ延設部12より大径な大径部13と、を有する。
【0019】
延設部12は、固定ブラケット20の収容部24の底面24bに形成される挿通孔24cを介して支持部11の上面11aから収容室24a内まで延設される。大径部13は、延設部12の上端に嵌装される円筒状部材であり、収容室24a内に収容される。なお、大径部13は延設部12と一体的に形成されていてもよい。
【0020】
シーブユニット100はさらに、収容室24a内で上下方向にスライド可能なスライド部材31と、収容部24の内周に設けられスライド部材31の外周面31aと摺接するスライドプレート32と、を備える。
【0021】
スライド部材31は、図3に示すように、矩形断面を有する角柱状に形成され、円筒状の内周面31bを有する。スライド部材31の内周面31bには、図2に示すように、上下方向略中央に内径が縮径した縮径部31cが形成される。
【0022】
スライドプレート32は、固定ブラケット20の収容部24の4つの側面にそれぞれ貫設され、各側面の上下に離間した2つの位置に設けられる。スライドプレート32の内側の端面は樹脂等によって形成され、スライド部材31の外周面31aに摺接することでスライド部材31の横方向への移動及び鉛直方向を軸とする回転を規制する。
【0023】
シーブユニット100はさらに、支持ブラケット10の大径部13の下面13aとスライド部材31の縮径部31cの上面31dとの間に介装されるスラスト軸受33と、固定ブラケット20の収容部24の底面24bとスライド部材31の縮径部31cの下面31eとの間に介装される皿バネ34と、を備える。
【0024】
スラスト軸受33は、支持ブラケット10の自重と支持ブラケット10がシーブ3を介して下向きに受ける負荷とを支持する。また、スラスト軸受33は、支持ブラケット10が延設部12の軸心を中心として回動可能なように大径部13を支持する。
【0025】
皿バネ34は、例えば複数個積層して構成され、スライド部材31を常に上方に付勢する。なお、皿バネ34に代えて、スプリングやゴム等を用いてもよい。
【0026】
皿バネ34の付勢力は、スラスト軸受33を介してスライド部材31に入力される荷重が支持ブラケット10、シーブ3及びワイヤーロープ2の自重相当である場合に、スライド部材31の下端31fが収容部24の底面24bから離間する程度に設定される。
【0027】
ワイヤーロープ2によって負荷を吊り下げた場合、スライド部材31は収容部24の底面24bに当接するまで付勢力に抗して下降する。つまり、スライド部材31の下端31fはスライド部材31の下降端を規定するストッパとして機能する。
【0028】
シーブユニット100はさらに、支持ブラケット10の支持部11の上面11aと固定ブラケット20の収容部24の下面24dとの間に介装される摩擦板35を備える。摩擦板35は、支持部11の上面11aと収容部24の下面24dとによって挟持されることで両者の相対回転を制動する。
【0029】
なお、摩擦板35は、支持部11の上面11a又は収容部24の下面24dに接着されていてもよい。また、摩擦板35を省略して、支持部11の上面11a及び収容部24の下面24dの少なくとも一方の表面を摩擦係数が高くなるように粗く形成してもよい。
【0030】
次に、図2及び図4を参照してシーブユニット100の動作について説明する。
【0031】
図4は、図2と同様に、図1の範囲Aを拡大して示す断面図である。図2は、負荷を吊り下げていない場合の断面を示し、図4は負荷を吊り下げている場合の断面を示している。
【0032】
海洋観測機器等の負荷がシーブユニット100によって吊り下げられている場合、支持ブラケット10にはシーブ3の自重に加えて負荷の自重に相当する荷重が下向きに作用する。これにより、支持ブラケット10の大径部13からスラスト軸受33を介してスライド部材31にも同様の荷重が下向きに作用するので、スライド部材31は皿バネ34の付勢力に抗して下降する。
【0033】
したがって、図4に示すように、スライド部材31の下端31fが収容部24の底面24bに当接する。このとき、摩擦板35は支持部11の上面11aと収容部24の下面24dとの間で摩擦力を発揮しないので、支持部11の上面11aと収容部24の下面24dとの相対回転が制動されず、支持ブラケット10は延設部12の軸心を中心として自由に回動可能である。
【0034】
よって、例えば海洋に投下されている海洋観測機器等が波の影響で揺動しても、繰り出されているワイヤーロープ2の動きに合わせてシーブ3を首振りさせることができるので、ワイヤーロープ2がシーブ3の溝から脱落することを防止することができる。
【0035】
一方、負荷がシーブユニット100によって吊り下げられていない場合、支持ブラケット10にはシーブ3及びワイヤーロープ2の自重に相当する荷重のみが下向きに作用する。これにより、スライド部材31は皿バネ34の付勢力によって上昇し、図2に示すように、スライド部材31の下端31fが収容部24の底面24bから離間する。
【0036】
このとき、摩擦板35が支持部11の上面11aと収容部24の下面24dとの間で挟持されて摩擦力を発揮するので、支持部11の上面11aと収容部24の下面24dとの相対回転は制動され、支持ブラケット10の延設部12の軸心を中心とする回動が制動される。
【0037】
よって、ワイヤーロープ2のよりが戻ろうとしてシーブ3を首振り方向に回動させる力が作用しても、シーブ3が回動しないのでワイヤーロープ2がシーブ3に絡みつくことを防止することができる。
【0038】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0039】
負荷がシーブユニット100によって吊り下げられていない場合等、ワイヤーロープ2に作用する張力が弱くなった場合に、スライド部材31が皿バネ34の付勢力によって上昇して、支持ブラケット10と固定ブラケット20との相対回転が摩擦板35によって制動されるので、シーブ3の回動を抑制することができる。
【0040】
よって、ワイヤーロープ2のよりが戻ろうとしてシーブ3を首振り方向に回動させる力が作用してワイヤーロープ2がシーブ3に絡みつくことを防止することができる。また、ワイヤーロープ2の架け替え等の段取り換えの際に、作業者が意図せずシーブ3が回転することを防止して作業性を向上させることができる。
【0041】
さらに、シーブユニット100は、スライド部材31とスラスト軸受33と収容部24の内周に設けられスライド部材31の外周面31aと摺接するスライドプレート32とを備えるので、支持ブラケット10から固定ブラケット20に作用する縦荷重をスラスト軸受33で受けて横荷重をスライド部材31及びスライドプレート32で受けることができる。
【0042】
さらに、スライド部材31の下端31fはスライド部材31の下降端を規定するストッパとして機能するので、負荷がシーブユニット100によって吊り下げられてスライド部材31が下方に押し下げられた場合に、皿バネ34が必要以上に圧縮され塑性変形することを防止することができる。よって、負荷が吊り下げられていない場合にスライド部材31を上昇させる付勢力が低下して支持ブラケット10と固定ブラケット20との相対回転が摩擦板35によって制動されなくなることを防止することができる。
【0043】
さらに、支持ブラケット10の支持部11の上面11aと固定ブラケット20の収容部24の下面24dとの間に摩擦板35が介装されるので、支持ブラケット10の支持部11の上面11a及び固定ブラケット20の収容部24の下面24dに特別な処理を施すことなく、支持ブラケット10と固定ブラケット20との相対回転を制動することができる。
【0044】
さらに、皿バネによってスライド部材31を上方へと付勢するので、スライド部材31が皿バネの付勢力に抗して下降して支持ブラケット10と固定ブラケット20との相対回転が制動される状態から許容される状態へと切り換わる際の荷重を、皿バネの種類や積層枚数を変えるだけで変更することができる。よって、シーブユニット100の設計自由度を向上させることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0046】
例えば、上記実施形態では、スライド部材31が収容部24に設けられるスライドプレート32に摺接することで横荷重を受けているが、これに代えて、ラジアル軸受やリニアガイド等を用いて横荷重を受けるようにしてもよい。
【0047】
さらに、上記実施形態では、シーブ3にワイヤーロープ2を巻回することで負荷を吊り下げているが、シーブ3をフック等の吊り下げ機構に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 フレーム
2 ワイヤーロープ
3 シーブ(吊り具)
3a 回転軸
10 支持ブラケット
11 支持部
11a 支持部の上面
12 延設部
13 大径部
20 固定ブラケット
24 収容部
24d 収容部の下面
31 スライド部材(回動支持部材)
31a スライド部材の外周面
31f スライド部材の下端(ストッパ)
32 スライドプレート
33 スラスト軸受(回動支持部材)
34 皿バネ(付勢部材)
35 摩擦板(制動部)
100 シーブユニット(吊り下げ機構)
図1
図2
図3
図4