(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JIS−R−3505に適合した500mlメスシリンダーに、500mlの目盛りまで電着塗料を入れ、200時間放置後の沈降物が高さ3mm以上で沈降している、請求項1に記載の顔料分散ペーストを含む電着塗料。
上記電着塗料を20μmの膜厚で塗装した塗板の塗面上に、刃厚0.38mmのカッターで、20μmの深さに100mmの長さのクロスカットキズを入れた際、JIS−Z−2371に準じて1000時間の塩水噴霧試験を行った場合に、カッター傷からの錆、フクレの最大幅が2mm未満である、請求項5に記載の電着塗料。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき詳しく説明する。
本発明で用いられる非分散性セルロースとは、主にセルロースを主成分とするものであり、例えば木材パルプ、精製リンターなどのセルロース系素材を、酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解などにより解重合処理して得られるセルロースで、複合体成分(複合体成分の定義については後述する。)を実質的に含まず、かつ平均重合度が100を超えて230以下であり、セルロースの濃度が1質量%になるように、純水に高速攪拌機、例えば、エクセルオートホモジナイザー(日本精機株式会社製、ED−7型)で、15000rpmで5分間分散し、得られた分散液を24時間放置した際に沈降を生じる(非分散性)ものをいう。ここでいう平均重合度とは、第15改正 日本薬局方で定める結晶セルロースの確認試験(3)の方法によって測定されたものをいう。ここでいう「実質的に含まない」とは、セルロース中の複合体成分が1質量%以下のことをいう。本願のセルロースの平均重合度は100を超えて230以下である。平均重合度を100超えとすることで水溶性成分の増加を抑えることができ、耐水性に影響を与えることもなく、さらに、凝集も引き起こしにくく、貯蔵安定性にも優れる。平均重合度を230以下とすることで、本発明の効果が得られに、加えて塗膜にブツ・ワキの発生も起こりにくくなる。好ましい平均重合度の範囲は110〜200、より好ましくは120〜170である。
【0010】
本発明で用いられる非分散性セルロースの体積平均粒径は1〜500μmが好ましい。ここでいう体積平均粒径とは、セルロース濃度が1質量%になるように純水に、エクセルオートホモジナイザー(日本精機株式会社製、ED−7型)で、15000rpmで5分間分散し、その分散液の体積平均粒径を測定することにより得られる値をいう。体積平均粒径の分析は、レーザー回折散乱装置(堀場製作所製 LA−910)により相対屈折率1.2、超音波ありで測定した場合の積算体積が50%になる値のことをいう。一般的には、体積平均粒径が小さいほど、電着塗料に使用した際の塗膜への影響が小さいため好ましいが、体積平均粒径の小さいセルロースは、製造コストが高く、体積平均粒径が5μm以下のものは一般的に入手困難か、極めて高価である。本発明で用いられる非分散性セルロースは、体積平均粒径が大きくても電着塗料に使用した際の塗膜への影響が小さいという優れた効果を有する。本発明においては、容易に入手可能で安価な、体積平均粒径10〜150μmのセルロースがより好ましく、体積平均粒径15〜90μmのセルロースが最も好ましい。
【0011】
これまでの技術では、分散性の良いセルロース複合体を塗料に使用するのが通常であった。セルロース複合体とは、セルロースと親水性高分子をセルロース:親水性高分子=90〜10:10〜90質量比程度の割合内で混合し、湿式磨砕して、乾燥・粉砕することにより得られるものであり、通常、該親水性高分子は10質量%を超えてセルロース複合体に含まれている。親水性高分子があることにより、容易にセルロースが微粒子レベルまで分散し、懸濁安定機能や再分散性付与機能を発揮するものである。ただし、セルロース複合体の場合、加えられている親水性高分子と樹脂類との相性が悪いと懸濁安定機能や再分散性付与機能を発揮しにくく、あらかじめ予備分散などが必要な場合や、セルロース複合体の添加量を増やすと塗膜の耐水性が悪化するという欠点があった。一方で、親水性高分子を含まないセルロースを加えても懸濁安定機能や再分散性付与機能を発現させにくいというのが通常であった。
【0012】
しかし、セルロースの中でも複合体成分を実質的に含まず、平均重合度が100を超えて230以下の非分散性セルロースを通常の顔料分散工程中で用いると驚くべきことに、得られた顔料分散ペーストはセルロース複合体を用いた場合を超える懸濁安定性機能および再分散性付与機能を示すことが分かった。例えば、親水性高分子であるカルボキシメチルセルロースナトリウムとのセルロース複合体と酸化チタンを水の存在下ビーズミルで分散する場合よりも、複合体成分を実質的に含まず、平均重合度が100を超えて230以下のセルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムと酸化チタンを水の存在下でビーズミル分散した場合のほうが、驚くべきことに懸濁安定機能や再分散性付与機能が優れるということを本発明者は見出したのである。
【0013】
このことは、同じカルボキシメチルセルロースを含む場合でも、あらかじめセルロースを複合体化させない方が、より容易に顔料分散ペーストを製造できることを示しており、加えて配合された樹脂との相性や耐水性への影響はほとんど考慮しなくてよいということでもある。例えば、本発明の顔料分散ペーストを用いた電着塗料では、該塗料を20μmの膜厚で塗布した塗板の塗膜面上に刃厚0.38mmのカッターナイフにて100mmの長さのX状の傷(クロスカットキズ)を付けた場合においての、JIS−Z−2371に準じて1000時間の塩水噴霧試験を行った際の、錆、フクレの最大幅が前述の傷から2mm未満という高い耐水性・耐塩性を示す。
【0014】
ここでいう複合体成分とは、セルロースと複合体を成している成分で、100℃では揮発しない成分のことをいう。複合体成分となりうる成分としては、例えば、カルボキシメチルセルロース及びその塩、キサンタンガム、カラヤガム、カラギーナン、アラビアガム、グルコマンナン、ジェランガム、アルギン酸及びその塩や、アルギン酸プロピレングリコールエステルのような親水性高分子が挙げられる。本発明においての複合体成分はセルロースと複合体化されているものを指すので、単にセルロースに複合体成分となりうる成分を粉混ぜしたものは含まれない。すなわち、後述するセルロースと複合体になりうる成分が複合化したものかどうかの判断によって、複合化していないと判断できるセルロース粉末に対し、上記の複合体成分になりうる成分を単純に粉混ぜしたものは、本発明で定義される、複合体成分を実質的に含まず、かつ平均重合度が100を超えて230以下の非分散性セルロースに含まれる。
【0015】
一般的に、セルロースと複合体になりうる成分が複合化したものかどうかの判断は、安定な水分散液となり得るか否かで判断でき、そしてそれは高速攪拌機やホモジナイザー等での一般的な分散操作を行い、セルロースの粒径を測定することで判断できる。例えば、複合体成分となりうる成分を含んだセルロース組成物を、純水に対して、セルロースの濃度が1質量%になるように、純水に高速攪拌機、例えば、エクセルオートホモジナイザー(日本精機株式会社製、ED−7型)で、15000rpmで5分間分散操作を行い、その分散操作後の液内のセルロースの体積平均粒径を測定することにより判断できる。すなわち該分散操作後の液を、分散操作後に直ちにレーザー回折散乱装置(堀場製作所製 LA−910)により相対屈折率1.2で測定した場合の積算体積が50%になる値(体積平均粒子径)が10μm以下であれば、安定な水分散液となり得るので複合体成分となりうる成分が複合体を成しているものと判断できる。この場合は、該セルロース組成物に含まれる複合体となりうる成分は複合体成分であるといえるので、それはセルロース複合体であり、本発明における非分散性セルロースとは異なる。ここで、注意するのは本発明の非分散性セルロースは該分散操作で安定に分散しないので経時的に沈降を生じる。そのため、分散操作を行い、沈降が起こる前に分析する必要がある。分散操作後、10秒以内にレーザー回折装置に投入し分析するか、もしくはレーザー回折装置に入れる前に、分散操作後の液を攪拌や振とうなどで見かけ上は均一に分散した状態にしてから測定することが必要である。
【0016】
本発明における非分散性セルロースの含有量は顔料100質量部に対して0.3質量部〜20質量部である。顔料に対して0.3質量部以上とすることで、本発明の効果である懸濁安定性や再分散性付与機能が十分に得られる。顔料に対して、非分散性セルロースの含有量の増加に伴い懸濁安定性や再分散性付与機能が向上する傾向にあるが、20質量部以下とすることで、顔料の色彩等に大きく影響を及ぼすこともない。非分散性セルロースの含有量は好ましくは0.5質量部〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。
【0017】
本発明で用いる顔料は特に制限はなく、その顔料の形状も板状、球状、鱗片状など特に限定されず使用できる。例えば、クロム酸亜鉛、クロム酸鉛、鉛丹、リン酸亜鉛、リン酸バナジウム、リン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、トリポリリン酸アルミニウム、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス、ハイドロタルサイト、亜鉛末、雲母状酸化鉄などの防錆顔料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、ケイソウ土、カオリン、タルク、クレー、マイカ、バリタ、有機ベントナイト、ホワイトカーボン等の体質顔料、二酸化チタン、亜鉛華、酸化アンチモン、リトポン、鉛白、カーボンブラック、鉄黒、複合金属酸化物ブラック、ペリレンブラック、モリブデン赤、カドミウムレッド、ベンガラ、硫化セリウム、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、ビスマスイエロー、シェナ、アンバー、緑土、マルスバイオレット、群青、紺青、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫化亜鉛、三酸化アンチモン、カルシウム複合物、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、オーカなどの着色顔料、アルミニウム粉、銅粉、真鍮粉、ステンレス粉などの金属粉顔料、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母のような金属酸化物被覆雲母などの真珠光沢様顔料、亜鉛酸化銅、銀粒子、アナターゼ型酸化チタン、酸化鉄系焼成顔料、導電性金属粉、電磁波吸収フェライトなどの特殊機能顔料の単独もしくは2種類以上の混合物が挙げられる。顔料の一次体積平均粒径は10μm以下が好ましい。より好ましくは5μm以下である。10μm以下であれば、分散安定性が低下する可能性もなく、塗膜の平滑性が損なわれる可能性もない。下限に特に制限はないが、一般的に入手可能な超微粒子顔料は10nm程度である。本願の塗料として特に好ましい顔料としてはカーボンブラックやチタンホワイト、二酸化チタン、タルク、クレー、カオリンなどが挙げられる。
【0018】
顔料分散ペースト中の顔料の含有量は5質量%〜60質量%であり、好ましくは10質量%〜50質量%である。5質量%以上とすることで、顔料の含有量が低すぎることもなく塗料等への使用も可能である。一方で、顔料の含有量を60質量%以下とすることで、ペーストの粘度が高くなりすぎることもない。
【0019】
本発明の顔料分散ペーストは、少なくとも一種類以上の樹脂を含む。特に、本発明における樹脂としては、電荷を持ったアニオン性もしくはカチオン性の樹脂が好ましい。樹脂としては、例えば、水性アクリル樹脂、変性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、水性アクリルウレタン樹脂、水性塩化ビニル樹脂、水性酢酸ビニル樹脂、水性エポキシ樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性アルキド樹脂、水性ポリアミド樹脂、水性セルロース系樹脂が使用できる。特に、3級アミン型などのアミノ基含有エポキシ樹脂、4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂、4級アンモニウム塩型樹脂などの顔料分散樹脂が好ましい。
【0020】
また、樹脂として合成重合体エマルションを用いることもできる。合成重合体エマルションの例としては、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、ポリスチレン系重合体ラテックス、ポリブタジエン系重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体ラテックス、ポリウレタン系重合体ラテックス、ポリメチルメタクリレート系重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン系共重合体ラテックス、ポリアクリレート系重合体ラテックス、塩化ビニル系重合体ラテックス、酢酸ビニル系重合体エマルション、酢酸ビニル−エチレン系共重合体エマルション、ポリエチレンエマルション、カルボキシ変性スチレンブタジエン共重合樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルションなどが挙げられる。
【0021】
前記の樹脂を構成する単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、また酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ウレタン、エチレンなどが挙げられる。さらにその他共重合可能な単量体として、必要に応じ、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシル、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、アクリルアミド、スチレンスルホン酸ソーダ及びイタコン酸、フマール酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのエチレン系不飽和カルボン酸が使用される。
【0022】
顔料分散ペースト中の樹脂の含有量は0.1〜30質量%であり、好ましくは0.12〜15質量%である。樹脂の含有量を0.1質量%以上とすることで、本発明に係る非分散性セルロースによる顔料分散ペーストの懸濁安定性機能が十分に発揮される。一方、樹脂の含有量を30質量%以下とすることで、顔料分散ペーストの粘度が高くなりすぎることもなく、製造が困難になることもない。
【0023】
また、本発明の顔料分散ペーストは必要に応じて更に添加剤を含んでいても構わない。添加剤としては、界面活性剤などの顔料分散剤、ポリジメチルシロキサン、変性シリコーン化合物、脂肪酸エステルなどの消泡剤、ポリアクリル酸ポリマー、ポリアミド、有機クレーなどの増粘剤、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキシド、ジブチル錫ジベンゾエートなどの有機錫化合物、N−メチルモルホリンなどのアミン類、酢酸鉛、ストロンチウム、銅、コバルトなどの金属塩などの硬化触媒、有機銅、有機錫、有機ハロゲン、フェノール、アミン化合物などの防腐剤、ベンゾフェノン、ベンゾチアゾール、シュウ酸アニリド、ヒンダードアミン化合物、フェノール化合物、チオエーテル化合物などの耐光性向上剤・紫外線吸収剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、導電性カーボン、導電性金属粉などの帯電防止剤、アミン化合物(アミノ樹脂系塗料)、ハイドロキノン(酸化重合、ラジカル硬化塗料)などの反応抑制剤、ラクタム系化合物、オキシム系化合物、脂肪族アルコール類、芳香族アルキルアルコール類、エーテルアルコール系化合物などのブロック剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール、N,N−ジメチルアミノエタノール、ギ酸、酢酸、乳酸などの中和剤、ハロゲン、有機リン、アンチモン系化合物、水酸化マグネシウムなどの難燃剤、微粉シリカ、尿素・ウレタン・アクリルなどのポリマービーズなどのつや消し剤、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、フッ素系ワックスなどの擦り傷防止・非粘着化剤、シリコーンオイルなどの色分け防止剤、界面活性剤、アルキルリン酸エステル、ポリアミドなどの湿潤剤、アルコール類などの有機溶剤が挙げられる。必要な場合は、これらから選ばれる1種類もしくは2種類以上の組み合わせからなる添加剤を目的とする用途・機能に応じて適切な量を使用する。
【0024】
前述の有機溶剤のより具体的な例としては、炭化水素類、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコール類の誘導体、ケトン類、エステル類、エーテル類、カーボネート類から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせからなる溶剤が挙げられる。
【0025】
炭化水素類としては、キシレン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、テレビン油、ソルベンナフサ等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、n−ウンデカノール又は、これらの異性体、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。好ましくは、アルキル炭素数が1〜6個を有するアルコール類である。
【0026】
多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0027】
多価アルコールの誘導体類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸セロソルブ等が挙げられる。
【0028】
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0029】
エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エステル、酪酸エステル、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、及び、ε−カプロラクトン、ε−カプロラクタム等の環状エステル類が挙げられる。
【0030】
エーテル類としては、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0031】
カーボネート類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。
【0032】
本発明の顔料分散ペーストは、顔料、特定の平均重合度を有する非分散性セルロース、樹脂、分散媒(通常は水)をビーズミルで粉砕・混合することにより得られる。ここでいうビーズミルとは、粉体と液体を混合したスラリーを微細化処理する湿式媒体撹拌ミルのことであり、容器の中にビーズ(メディア)を充填して回転させ、原料スラリーを入れて、原料を摺りつぶして粉砕・分散を行う装置のことをいう。同様の機構であるSGミル、ボールミルなどもメディアを充填して回転させて、原料を粉砕・分散するものであり、本願でいうビーズミルに含まれる。
【0033】
本発明の顔料分散ペーストは、貯蔵安定性が高く、塗料にしても耐塩性・耐水性を悪化させないため、自動車塗料、建築・建材塗料、船舶塗料、缶用塗料、プラスチック塗料など様々な用途の塗料に好適に使用できる。塗装方法も、電着塗装、スプレー塗装、刷毛塗りなど特に制限はない。中でも電着塗料は粘度が低く、攪拌を止めると沈降を生じやすいため、本発明の懸濁安定性の良い顔料分散ペーストが非常に有用に利用可能である。
本願の顔料分散ペーストを電着塗料に用いる場合、一般的な電着塗料の顔料ペースト(F1)と同様に使用すれば良い。すなわち、樹脂分散物(F2)とF1:F2=1:1〜1:8の好ましい混合比で混合して、電着塗料とする一般的な使用方法である。樹脂分散物(F2)も一般的なもので良い。樹脂分散物(F2)に使用する樹脂も、特に制限はなく、通常の電着塗料に用いられる樹脂を用いれば良い。最も一般的なものとしては変性エポキシ樹脂が挙げられる。
本願の電着塗料は再分散性に優れる。例えば、本発明の顔料ペーストを用いた電着塗料をJIS−R−3505に適合した500mlのメスシリンダーに500mlの目盛りまで入れて200時間放置した場合の沈降物は、高さ3mm以上でソフトに沈降するため、容易に再分散が可能となる。また、同様に、本発明の顔料分散ペーストは、電着塗料で最も機能を効果的に発揮するものではあるが、電着塗料に限らず顔料を分散したインキ類等にも使用することは可能である。
【実施例】
【0034】
実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらによって本発明は何ら制限されるものではない。なお、測定及び評価は以下の通りに行った。なお、平均重合度及び体積平均粒径の測定方法は前述の通りである。
【0035】
<顔料分散ペーストの評価方法>
・懸濁安定性
顔料分散ペーストの試作サンプル50gをガラス製サンプル瓶に秤り取り、このサンプルを25℃の恒温室に7日間放置後、サンプル瓶を静かに取り出して、下記評価基準により経時安定性を評価した。
◎(優):沈降分離が見られず、初期と変化が見られない。
○(良):若干沈降分離が見られるが、初期とほとんど変化が見られない。
△(可):沈降分離により上澄みが確認されるが、嵩高い沈降となっている。
×(不可):沈降分離により完全に上澄みが確認でき、完全に沈降している。
【0036】
・再分散性
上記、7日間放置後のサンプルをおよそ10cmの振り幅で2回/秒のスピードで振ったあとの状態を観察した。
◎(優):すぐに(10秒以内)貯蔵前の状態に戻る。
○(良):11秒〜60秒振れば貯蔵前の状態に戻る。
△(可):60秒振っても、壁面への固着は取れるが、わずかに凝集物が残る。
×(不可):60秒振っても、壁面への固着が残る、若しくは明らかに凝集物が残る。
・貯蔵安定性(総合評価)
懸濁安定性及び再分散性の評価結果を総合して、下記の基準で貯蔵安定性を評価した。
◎(優):懸濁安定性又は再分散性のいずれかが◎の評価である。
○(良):懸濁安定性又は再分散性のいずれかが○の評価である。
△(可):懸濁安定性及び/又は再分散性が△の評価である。
×(不可):懸濁安定性及び再分散性が×の評価である。
【0037】
<顔料分散ペーストを使用した塗料の評価方法>
・懸濁安定性1
上記顔料分散ペーストを含む塗料を100mlのネスラー型比色管に100mlの目盛りまで入れて、48時間放置後の沈降の様子を、下記の基準で評価した。
◎(優):沈降分離が見られず、初期と変化が見られない。
○(良):若干沈降分離が見られるが、沈降量は10ml以下である。
△(可):沈降分離が起こっており、沈降量が10mlを超え、20ml未満である。
×(不可):沈降分離により完全に上澄みが確認でき、20ml以上沈降している。
・懸濁安定性2
上記顔料分散ペーストを含む塗料をJIS−R−3505に適合した500mlのメスシリンダーに500mlの目盛りまで入れて、200時間放置後の沈降の様子を、下記の基準で評価した。
◎(優):沈降物の高さが3mm以上である。
○(良):沈降物の高さが3mm未満2.5mm以上である。
△(可):沈降物の高さが2.5mm未満1.5mm以上である。
×(不可):沈降物の高さが1.5mm未満である。
・再分散性
塗料1Lを48時間放置後、プロペラ攪拌機(BL−600,新東科学(株)製)で500rpm×2時間攪拌し、目開き38μmの篩を通過させ、篩上の残渣量を測定した。
◎(優):残渣量が5mg未満。
○(良):残渣量が5mg以上10mg未満。
△(可):残渣量が10mg以上、30mg未満。
×(不可):残渣量が30mg以上。
・貯蔵安定性(総合評価)
懸濁安定性及び再分散性の評価結果を総合して、下記の基準で貯蔵安定性を評価した。
◎(優):懸濁安定性又は再分散性のいずれかが◎の評価である。
○(良):懸濁安定性又は再分散性のいずれかが○の評価である。
△(可):懸濁安定性及び/又は再分散性が△の評価である。
×(不可):懸濁安定性及び再分散性が×の評価である。
【0038】
・耐塩性・耐水性
電着塗料に鋼板(サイズ;0.8×70×150mm、普通鋼(SPCC)、表面処理;リン酸塩処理 PB−L3020)を浸漬し、それをカソードとして室温で印加電圧250Vの条件で膜厚20μmで電着塗装し、水洗した後、160℃で10分間の焼付けを行い試験塗板を作製した。前期の試験塗板を塗面上に刃厚0.38mmのカッターで、下地の鋼板が見える深さである20μmの深さまで100mmの長さのクロスカットキズを入れてJIS−Z−2371に準じて、1000時間の塩水噴霧試験を行い、カッター傷からの錆、フクレの発生状況を観察し、以下の基準で評価した。
◎(優):錆、フクレの最大幅がカット部より2mm未満。
○(良):錆、フクレの最大幅がカット部より2mm以上、3mm未満。
△(可):錆、フクレの最大幅がカット部より3mm以上、4mm未満。
×(不可):錆、フクレの最大幅がカット部より4mm以上。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に例示する。
【0039】
(実施例1、比較例1、比較例2)
顔料として酸化チタン40質量部、水溶性のアニオン性樹脂としてカルボキシメチルセルロースナトリウム0.1質量部、セルロース(実施例1又は比較例1)又はセルロース複合体(比較例2)1質量部、水39質量部を混合し、ビーズミル(RMB−400、ビーズ径1mm、アイメックス(株)製)で60分処理し、顔料分散ペーストを得た。実施例1のセルロースは、平均重合度167、体積平均粒径が19μmで複合体成分を実質的に含まないもの(すなわち非分散性セルロース)、比較例1のセルロースは、平均重合度241、体積平均粒径5μm、複合体成分を実質的に含まないもの、比較例2のセルロースはセルロース複合体(セルロース/カラヤガム/デキストリン=75/10/10質量比、セルロースの平均重合度142、複合体成分20質量%)をそれぞれ用いた(ペースト中の顔料は49.9質量%、樹脂は0.12質量%、顔料100質量部に対して、実施例1、比較例1はセルロースが2.5質量部、比較例2は1.875質量部)。
【0040】
その評価結果を表1に示す。実施例1は良好な懸濁安定性を示したが、比較例1は懸濁安定性が極めて悪く、比較例2も比較例1よりは良好であったものの、実施例1よりは悪かった。実施例1では沈降が認められなかったことより、再分散性を評価できなかったため、「−」とした。比較例1ではセルロースの平均重合度が大きいため、比較例2ではセルロースがセルロース複合体であるため機能の発現が悪かった。
【0041】
【表1】
【0042】
(実施例2、比較例3〜5)
実施例2では、固形分35質量%エポキシ系4級アンモニウム塩型の顔料分散樹脂(カチオン性樹脂)120質量部、カオリン100質量部、カーボンブラック2質量部、ジブチル錫オキシド8質量部、リンモリブデン酸アルミニウム18質量部、脱イオン水184質量部、平均重合度154、体積平均粒径22μm、複合体成分を実質的に含まないセルロース(すなわち非分散性セルロース)1質量部、水溶性成分をSGミルにて分散・混合し、顔料分散ペーストA(ペースト中に、顔料29.6質量%、樹脂9.7質量%、顔料100質量部に対してセルロースは0.78質量部)を得た。比較例3では上記平均重合度154のセルロースの代わりに、セルロース複合体(セルロース/キサンタンガム/デキストリン=75/5/20質量比、セルロースの平均重合度155、複合体成分25質量%)を用いた以外は実施例2と同様に操作を行い、顔料分散ペーストBを得た(顔料100質量部に対してセルロースは、0.585質量部)。比較例4では実施例2のセルロースの代わりに、平均重合度256、体積平均粒径25μm、複合体成分を実質的に含まないセルロース(非分散性セルロース)を用いた以外は実施例2と同様に操作を行い、顔料分散ペーストCを得た。また、比較例5ではセルロースを添加しない以外は同様に行い顔料分散ペーストDを作製した。
【0043】
続いて、前述の製法で得られた顔料分散ペーストを用いた電着塗料を製造した。別の容器にて脱イオン水145質量部、酢酸5質量部を計りとり、70℃でアミン変性エポキシ樹脂320質量部(固形分75質量部)、ブロックイソシアネート硬化剤190質量部(固形分25質量部)を激しく攪拌しながらゆっくりと加え、均一に分散させた。さらに脱イオン水を加えて固形分36質量%のエマルションを得た。
【0044】
このエマルション278質量部(固形分100質量部)に、顔料分散ペーストAを69部(固形分33部)、脱イオン水318部を加えて、均一に混合して、本発明の顔料分散ペーストAを含む電着塗料Aを得た(実施例2)。比較例3では顔料分散ペーストAの代わりに顔料分散ペーストBを、比較例4では顔料分散ペーストCを、比較例5では顔料分散ペーストDを、それぞれ69質量部を用いて、電着塗料B、C、Dを得た。この電着塗料A、B、C及びD中にそれぞれ鋼板を浸漬し、それをカソードとして室温で印加電圧250Vの条件で膜厚20μmで電着塗装し、水洗した後、160℃で10分間の焼付けを行った。電着塗料A、B、CとD、及び、その塗膜を評価した。評価結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
実施例2では、顔料分散ペースト、それを用いた電着塗料共に懸濁安定性・再分散性が良好で、塗膜の耐塩性・耐水性も良好であった。比較例3、4はセルロース類を何も用いていない比較例5に比べれば、顔料分散ペースト、及びそれを用いた電着塗料の懸濁安定性・再分散性はともに良かった。比較例4よりも比較例3が良好であったが、実施例2ほどではなかった。一方、比較例3、4は、塗膜後の耐塩性・耐水性が悪くなっていた。