(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脱マンノシル化されたリン酸化N−グリカンを含む糖タンパク質を生成する方法であって、真菌細胞に、該糖タンパク質をコードする核酸を導入する工程を含み、そして該糖タンパク質は、基礎をなすマンノースがリン酸化されている末端α−1,2マンノース結合を含み、ここで、該真菌細胞は、該基礎をなすマンノースがリン酸化される場合に末端α−1,2マンノース結合を加水分解して脱マンノシル化された糖タンパク質を生成する、マンノシダーゼまたは該マンノシダーゼの生物学的に活性な断片をコードする核酸を含むように遺伝子操作されており、該マンノシダーゼは、GH47ファミリーのマンノシダーゼまたはGH92ファミリーのマンノシダーゼである、方法。
前記メチロトローフの酵母は、Pichia pastoris、Pichia methanolica、Oogataea minutaおよびHansenula polymorphaからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
前記糸状菌は、Aspergillus caesiellus、Aspergillus candidus、Aspergillus carneus、Aspergillus clavatus、Aspergillus deflectus、Aspergillus flavus、Aspergillus fumigatus、Aspergillus glaucus、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus ochraceus、Aspergillus oryzae、Aspergillus parasiticus、Aspergillus penicilloides、Aspergillus restrictus、Aspergillus sojae、Aspergillus sydowi、Aspergillus tamari、Aspergillus terreus、Aspergillus ustus、Aspergillus versicolor、Neurospora、Trichoderma、FusariumおよびChrysosporiumからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
前記糖タンパク質は、病原体タンパク質、リソソームタンパク質、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、抗体もしくはその抗原結合断片、または融合タンパク質である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
前記LDSは、ファブリー病、ムコ多糖症I型、ファーバー病、ゴーシェ病、GM1ガングリオシドーシス、テイ・サックス病、サンドホフ病、GM2活性化因子疾患、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー、ニーマン・ピック病、シェイエ病、ハンター病、サンフィリポ病、モルキオ病、マロトー・ラミー病、ヒアルロニダーゼ欠損症、アスパルチルグルコサミン尿症、フコース蓄積症、マンノース蓄積症、シンドラー病、1型シアリドーシス、ポンペ病、濃化異骨症、セロイドリポフスチン沈着症、コレステロールエステル貯蔵病、ウォルマン病、多発性スルファターゼ欠損症、ガラクトシアリドーシス、ムコリピドーシス、シスチン症、シアル酸蓄積障害、マリネスコ・シェーグレン症候群を伴うカイロミクロン蓄積症、ヘルマンスキー・パドラック症候群、チェディアック・東症候群、ダノン病、または幸福顔貌骨異形成症である、請求項22に記載の方法。
基礎をなすマンノースがリン酸化される場合に、末端α−1,2マンノース結合を加水分解する、マンノシダーゼまたは該マンノシダーゼの生物学的に活性な断片を発現するように遺伝子操作された単離された真菌細胞であって、該マンノシダーゼは、GH47ファミリーのマンノシダーゼまたはGH92ファミリーのマンノシダーゼである、真菌細胞。
前記マンノシダーゼは、Aspergillus satoi由来であるか、または前記マンノシダーゼがCellulosimicrobium cellulans由来である、請求項24または26に記載の真菌細胞。
前記メチロトローフの酵母は、Pichia pastoris、Pichia methanolica、Oogataea minutaおよびHansenula polymorphaからなる群より選択される、請求項37に記載の真菌細胞。
前記糸状菌は、Aspergillus caesiellus、Aspergillus candidus、Aspergillus carneus、Aspergillus clavatus、Aspergillus deflectus、Aspergillus flavus、Aspergillus fumigatus、Aspergillus glaucus、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus ochraceus、Aspergillus oryzae、Aspergillus parasiticus、Aspergillus penicilloides、Aspergillus restrictus、Aspergillus sojae、Aspergillus sydowi、Aspergillus tamari、Aspergillus terreus、Aspergillus ustus、Aspergillus versicolor、Neurospora、Trichoderma、FusariumおよびChrysosporiumからなる群より選択される、請求項37に記載の真菌細胞。
前記標的糖タンパク質は、病原体タンパク質、リソソームタンパク質、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、抗体もしくはその抗原結合断片、または融合タンパク質である、請求項41または42に記載の真菌細胞。
前記LSDは、ファブリー病、ムコ多糖症I型、ファーバー病、ゴーシェ病、GM1ガングリオシドーシス、テイ・サックス病、サンドホフ病、GM2活性化因子疾患、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー、ニーマン・ピック病、シェイエ病、ハンター病、サンフィリポ病、モルキオ病、マロトー・ラミー病、ヒアルロニダーゼ欠損症、アスパルチルグルコサミン尿症、フコース蓄積症、マンノース蓄積症、シンドラー病、1型シアリドーシス、ポンペ病、濃化異骨症、セロイドリポフスチン沈着症、コレステロールエステル貯蔵病、ウォルマン病、多発性スルファターゼ欠損症、ガラクトシアリドーシス、ムコリピドーシス、シスチン症、シアル酸蓄積障害、マリネスコ・シェーグレン症候群を伴うカイロミクロン蓄積症、ヘルマンスキー・パドラック症候群、チェディアック・東症候群、ダノン病、または幸福顔貌骨異形成症である、請求項45に記載の真菌細胞。
前記MNN4ポリペプチドは、Yarrowia lipolyticaポリペプチド、Saccharomyces cerevisiaeポリペプチド、Ogataea minutaポリペプチド、Pichia pastorisポリペプチドもしくはCandida albicansポリペプチドである、請求項47に記載の真菌細胞。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
一般に、本文書は、すぐ接して基礎をなすマンノースがリン酸化される場合に末端α−1,2マンノース結合または末端α−1,2マンノース部分を加水分解するための方法および材料を提供する。本明細書に記載される方法および材料は、リソソーム中の蓄積産物の分解に関与する触媒酵素のそこなわれた活性によるリソソーム中の該蓄積産物の蓄積を特徴とする遺伝性代謝障害の1つの異なる群であるリソソーム蓄積障害(LSD)を有する患者を処置するための薬剤を生成するのに特に有用である。蓄積産物の集積は、細胞の機能障害および進行性の臨床症状をもたらす。異化酵素の欠損は、酵素補充療法(ERT)によって修正することができるが、但し、投与される酵素が罹患した細胞のリソソームへ導かれることができることを条件とする。リソソーム酵素は、典型的には、小胞体(ER)において合成され、分泌経路を介してゴルジ体へ輸送され、次いでリソソームへ動員される糖タンパク質である。本明細書に記載される方法および材料を用いて、微生物を基にしたプロセスは、脱マンノシル化したリン酸化N−グリカンを有する治療タンパク質を得るために使用することができる。したがって、本明細書に記載される方法および材料は、LSDのような代謝障害の処置のために糖タンパク質を調製するのに有用である。
【0019】
(マンノシダーゼ)
本文書は、基礎をなすマンノースがリン酸化される場合に、末端α−1,2マンノース結合または末端α−1,2マンノース部分を加水分解することができるマンノシダーゼをコードする単離された核酸を提供する。用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、本明細書においては互換可能に使用され、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、および核酸類似体を含有するDNA(またはRNA)を含む、RNAおよびDNAの両方を指す。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有することができる。核酸は、二本鎖または一本鎖(すなわち、センス鎖またはアンチセンス鎖)であることができる。ポリヌクレオチドの非限定例としては、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、siRNA、ミクロRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、枝分かれポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー、ならびに核酸類似体が挙げられる。
【0020】
「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書においては互換可能に使用され、長さまたは翻訳後修飾に関わらず、アミノ酸の任意のペプチド結合鎖を意味する。典型的には、本明細書に記載されるポリペプチド(例えば、マンノシダーゼまたは脱マンノシル化した標的タンパク質)は、該ポリペプチドが、調製物中の総タンパク質の少なくとも60重量%、例えば、試料中の総タンパク質の60%を構成する場合、単離されている。一部の実施形態においては、本明細書に記載される「ポリペプチドは、調製物中の総タンパク質の少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも99重量%からなる。
【0021】
「単離された核酸」は、天然に存在するゲノム(例えば、酵母ゲノム)における核酸の片側または両側に正常に隣接している核酸を含む、天然に存在するゲノムに存在する他の核酸分子から分離された核酸を指す。用語「単離された」は核酸に関して本明細書で使用する場合、天然に存在しない任意の核酸配列も含んでおり、なぜなら、このような非天然の配列は天然には見出されず、かつ天然に存在するゲノムにおいてじかに接触する配列を有さないからである。
【0022】
単離された核酸は、例えば、DNA分子であることができるが、但し、天然に存在するゲノムにおける該DNA分子にじかに隣接することが通常見出されている核酸配列のうちの1つは、除去されており、または不在であることを条件とする。したがって、単離された核酸は、他の配列とは独立した別個の分子(例えば、化学的に合成された核酸、またはPCRもしくは制限エンドヌクレアーゼ処理によって生成されたcDNAもしくはゲノムDNA断片)として存在するDNA分子、およびベクター、自律的に複製するプラスミド、ウイルス(例えば、任意のパラミクソウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、もしくはヘルペスウイルス)へと、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAへと組み込まれたDNAを含むが、これらに限定されない。加えて、単離された核酸は、ハイブリッド核酸または融合核酸の一部であるDNA分子のような操作された核酸を含むことができる。例えばcDNAライブラリーもしくはゲノムライブラリー内に、またはゲノムDNA制限消化物を含有するゲルスライス内にある何百〜何百万もの他の核酸のうちに存在する核酸は、単離された核酸とはみなされない。
【0023】
用語「外来性」は、核酸および特定の宿主細胞に関して本明細書において使用する場合、天然に見出されるような特定の細胞において生じない(かつその細胞から得ることができない)任意の核酸を指す。したがって、天然に存在しない核酸は、宿主細胞へと一旦導入されると該宿主細胞に対して外来性であるとみなされる。天然に存在しない核酸が、天然に見出される核酸配列の核酸部分配列または断片を含有することができることを留意することは重要であり、但し、該核酸は全体として天然には存在しないことを条件とする。例えば、発現ベクター内にゲノムDNA配列を含有する核酸分子は天然に存在しない核酸であり、したがって、宿主細胞へと一旦導入されると該宿主細胞に対して外来性であり、なぜなら、該核酸分子は全体(ゲノムDNAにベクターDNAを加えたもの)として天然には存在しないからである。したがって、全体として天然には存在しない任意のベクター、自律的に複製するプラスミド、またはウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)は、天然に存在しない核酸であるとみなされる。PCRもしくは制限エンドヌクレアーゼ処理によって生成されたゲノムDNA断片ならびにcDNAは、天然には見出されない別個の分子として存在するので、天然に存在しない核酸であるとみなされるということになる。天然には見出されない配置のプロモーター配列およびポリペプチドをコードする配列(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)を含有する任意の核酸が天然に存在しない核酸であることにもなる。天然に存在する核酸は、特定の細胞に対して外来性ともなり得る。例えば、酵母xの細胞から単離された全染色体は、一旦、該染色体が酵母yの細胞へと導入されると、酵母yの細胞に関して外来性の核酸である。
【0024】
マンノシダーゼをコードする核酸は、配列番号3、または配列番号4において示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有することができる。一部の実施形態においては、本明細書に記載される核酸は、配列番号5において示されるアミノ酸配列と少なくとも70%(例えば、少なくとも75、80、85、90、95、99、または100%)の同一性を有するマンノシダーゼポリペプチドをコードすることができる。特定のアミノ酸配列と配列番号5において示されるアミノ酸配列の間の%同一性は、以下のとおり決定することができる。まず、BLASTPバージョン2.0.14を含有する独立型バージョンのBLASTZ由来のBLAST 2 Sequences(Bl2seq)プログラムを使用してアミノ酸配列を整列させる。この独立型バージョンのBLASTZは、Fish&Richardsonのウェブサイト(例えば、www.fr.com/blast/)または米国政府の国立バイオテクノロジー情報センターのウェブサイト(www.ncbi.nlm.nih.gov)から得ることができる。Bl2seqプログラムを使用する方法を説明する指示は、BLASTZに添付のリードミーファイルにおいて見出すことができる。Bl2seqは、BLASTPアルゴリズムを使用して2つのアミノ酸配列間の比較を実行する。2つのアミノ酸配列を比較するために、Bl2seqのオプションは、以下のとおり設定される。−iは、比較されるべき第一のアミノ酸配列を含有するファイル(例えば、C:\seq1.txt)に対して設定され、−jは、比較されるべき第二のアミノ酸配列を含有するファイル(例えば、C:\seq2.txt)に対して設定され、−pはblastpに対して設定され、−oは任意の所望のファイル名(例えば、C:\output.txt)に対して設定され、かつ他のオプションはすべて該オプションのデフォルト設定のままである。例えば、2つのアミノ酸配列間の比較を含有する出力ファイルを生じるために、以下のコマンド、すなわちC:\Bl2seq −i c:\seq1.txt −j c:\seq2.txt −p blastp −o c:\output.txtを使用することができる。この2つの比較される配列が相同性を共有する場合、指定された出力ファイルは、それらの相同性の領域を整列した配列として示す。この2つの比較される配列が相同性を共有しない場合、指定された出力ファイルは整列した配列を示さない。類似の手順は、blastnを使用することを除き、核酸配列について行なわれてよい。
【0025】
一旦整列すると、マッチ数は、同一のアミノ酸残基が両配列中に存在する位置の数を計数することによって決定される。%同一性は、マッチ数を全長のマンノシダーゼポリペプチドアミノ酸配列の長さによって除した後に、結果として生じる値に100を乗じることによって決定される。
【0026】
%同一性の値は、最も近い10分の1の位に丸められることは留意される。例えば、78.11、78.12、78.13、および78.14は78.1へと切り捨てられるのに対し、78.15、78.16、78.17、78.18、および78.19は78.2と切り上げられる。長さの値が常に整数であることも留意される。
【0027】
多くの核酸が特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができることは認識される。遺伝暗号の縮重は、当該技術分野に周知であり、すなわち、多くのアミノ酸について、アミノ酸のためのコドンとして機能する1つを超えるヌクレオチドのトリプレットがある。例えば、所与のマンノシダーゼポリペプチドについてのコード配列におけるコドンは、特定の種(例えば、細菌または真菌)における最適な発現が、該種のための適切なコドンバイアス表を使用して得られるよう改変され得る。
【0028】
2つの核酸配列間の相同性を評価するために、ハイブリダイゼーションを使用することもできる。本明細書に記載される核酸配列、またはその断片もしくはバリアントは、標準的なハイブリダイゼーション技術に従ってハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。関心対象のプローブ(例えば、Aspergillus saitoiヌクレオチド配列の一部を含有するプローブ)の、試験源由来のDNAまたはRNAとのハイブリダイゼーションは、該試験源におけるプローブに対応するDNAまたはRNA(例えば、Aspergillus saitoiヌクレオチド配列)の存在の指標である。ハイブリダイゼーション条件は当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y.、6.3.1〜6.3.6、1991において得ることができる。中程度のハイブリダイゼーション条件は、30℃での2×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるハイブリダイゼーションに続く50℃での1×SSC、0.1%SDSにおける洗浄と等価として定義される。高度にストリンジェントな条件は、45℃での6×塩酸ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるハイブリダイゼーションに続く、65℃での0.2×SSC、0.1%SDSにおける洗浄と等価として定義される。
【0029】
本明細書における使用に好適なマンノシダーゼポリペプチドの他の候補物は、ヌクレオチドおよびポリペプチドの配列アラインメントの分析によって同定することができる。例えば、ヌクレオチド配列またはポリペプチド配列のデータベースに関する質問を実行することにより、マンノシダーゼポリペプチドのホモログおよび/またはオルトログを同定することができる。配列分析は、公知のマンノシダーゼアミノ酸配列を使用する非重複データベースのBLAST分析、Reciprocal BLAST分析、またはPSI−BLAST分析を包含することができる。40%超の配列同一性を有するデータベースにおけるマンノシダーゼポリペプチドは、マンノシダーゼポリペプチドとしての好適性についてのさらなる評価のための候補物として同定することができる。アミノ酸配列類似性は、ある疎水性残基の別の疎水性残基との置き換えまたはある極性残基の別の極性残基との置き換えのような保存的アミノ酸置換を可能にする。所望の場合、さらに評価されるべき候補物の数を絞るために、このような候補物の手動点検を実施することができる。
【0030】
本文書は、本明細書に記載されるマンノシダーゼの(i)生物活性のあるバリアントおよび(ii)その生物活性のある断片または生物活性のあるバリアントも提供する。マンノシダーゼの生物活性のあるバリアントは、配列番号5に示すアミノ酸配列または配列番号3および4に示すヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対する付加、欠失、または置換を含有することができる。置換を有するタンパク質は一般的に、50以下(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、または50を超えない)の保存的アミノ酸置換を有する。保存的置換とは、あるアミノ酸の、類似の特徴を有する別のアミノ酸との置換である。保存的置換には、以下の群内の置換が含まれる:バリン、アラニン、およびグリシン;ロイシン、バリン、およびイソロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリン、システイン、およびトレオニン;リシンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。非極性疎水性アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが含まれる。極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。正に帯電した(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシン、およびヒスチジンが含まれる。負に帯電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。上記の極性基、塩基性基、または酸性基のうちのある構成員の、同一群の別の構成員による任意の置換は、保存的置換であるとみなすことができる。対照的に、非保存的置換とは、あるアミノ酸の、類似していない特徴を有する別のアミノ酸との置換である。
【0031】
欠失バリアントは、(2つ以上のアミノ酸の)1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20のアミノ酸セグメントまたは非連続的な単一のアミノ酸を欠失することができる。
【0032】
付加(付加バリアント)には、(a)配列番号3もしくは4に示す核酸配列によってコードされるマンノシダーゼまたは配列番号5に示すアミノ酸配列を有するマンノシダーゼまたはその断片と、(b)内部または末端(CまたはN)の無関係のまたは異種性のアミノ酸配列とを含有する融合タンパク質が含まれる。このような融合タンパク質の文脈においては、用語「異種性アミノ酸配列」は、(a)以外のアミノ酸配列を指す。異種性配列は例えば、組換えタンパク質(例えば、FLAG、ポリヒスチジン(例えば、ヘキサヒスチジン)、赤血球凝集素(hemagluttanin)(HA)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、またはマルトース結合タンパク質(MBP))の精製に使用される配列であることができる。異種性配列は、診断用マーカーまたは検出可能なマーカーとして有用なタンパク質、例えば、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)であることもできる。一部の実施形態においては、融合タンパク質は、別のタンパク質由来のシグナル配列を含有する。ある宿主細胞(例えば、酵母宿主細胞)においては、標的タンパク質の発現および/または分泌は、異種性シグナル配列の使用によって増大することができる。一部の実施形態においては、融合タンパク質は、例えば抗体産生のための免疫応答を惹起するのに有用なキャリア(例えば、KLH)、または小胞体もしくはゴルジ装置の保持シグナルを含有することができる。異種性配列は多様な長さであることができ、一部の場合においては、異種性配列が結合する全長の標的タンパク質よりも長い配列であることができる。
【0033】
マンノシダーゼの生物活性のある断片または生物活性のあるバリアントは、野生型の全長の成熟タンパク質のマンノシダーゼ活性(例えば、脱マンノシル化すること)の少なくとも40%(例えば、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは100%、またはさらにそれより大)を有する。
【0034】
本明細書に記載されるマンノシダーゼを使用して、脱マンノシル化した標的分子を生成することができる。該方法は、インビトロまたはインビボで実施することができる。
【0035】
(糖タンパク質を脱マンノシル化する方法)
本明細書に記載する場合、リン酸化N−グリカンを含有する糖タンパク質は、基礎をなすマンノースがリン酸化される場合に末端α−1,2マンノース結合または末端α−1,2マンノース部分を加水分解することのできるマンノシダーゼを使用して脱マンノシル化することができる。このようなマンノシダーゼの非限定例としては、Aspergillus satoi(As)(Aspergillus phoenicisとしても公知)由来のマンノシダーゼまたはCellulosimicrobium cellulans(例えば、CcMan4)由来のマンノシダーゼが挙げられる。Aspergillus satoiマンノシダーゼのアミノ酸配列を配列番号5(
図15を参照されたい)およびGenBank受託番号BAA08634に示す。CcMan4ポリペプチドは、配列番号4に示すヌクレオチド配列(
図4を参照されたい)によってコードされる。
【0036】
Aspergillus satoiマンノシダーゼおよびCellulosimicrobium cellulansマンノシダーゼ(例えば、CcMan4)を組換えで産生することができる。マンノシダーゼポリペプチドをコードする単離された核酸分子は、標準的な技術によって生成することができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術は、本明細書に記載されるヌクレオチド配列を含有する単離された核酸を得るために使用することができる。PCRは、全ゲノムDNAまたは全細胞RNAに由来する配列を含む、DNAならびにRNAに由来する特定の配列を増幅するために使用することができる。一般的には、関心対象の領域の末端からのまたはそれを越えたところからの配列情報を使用して、増幅されるべきテンプレートの反対鎖と配列が同一または類似であるオリゴヌクレオチドプライマーを設計する。種々のPCR戦略も利用可能であり、該戦略によって、部位特異的ヌクレオチド配列改変は、テンプレート核酸へと導入することができる。単離された核酸は、単一の核酸分子として(例えば、ホスホルアミダイト技法を使用する3’から5’への方向における自動DNA合成を使用して)、または一連のオリゴヌクレオチドとしてのいずれかで、化学的に合成することもできる。例えば、オリゴヌクレオチド対がアニーリングされる場合に二本鎖が形成されるよう、各対が相補性のある短いセグメント(例えば、約15ヌクレオチド)を含有する所望の配列を含有する、1対以上の長いオリゴヌクレオチド(例えば、100ヌクレオチド超)を合成することができる。DNAポリメラーゼを使用してオリゴヌクレオチドを伸長し、結果として、オリゴヌクレオチド対あたり単一の二本鎖核酸分子を生じ、それを次にベクターへと連結することができる。単離された核酸は、例えば、天然に存在するDNAの変異誘発によって得ることもできる。
【0037】
マンノシダーゼポリペプチドを組換え生成するために、マンノシダーゼポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含有するベクターを使用する。本明細書で使用する場合、「プロモーター」は、遺伝子が転写されるようにすることができるDNA配列を指す。プロモーターは、RNAポリメラーゼによって認識され、そのRNAポリメラーゼが転写を開始する。したがって、プロモーターは、RNAポリメラーゼが直接結合するかまたはRNAポリメラーゼの動員に関与するかのいずれかであるDNA配列を含有する。プロモーター配列は、「エンハンサー領域」も含まれ得、該領域は、タンパク質(すなわち、トランス作用因子であり、ほとんどが1群の転写因子のようである)と結合して遺伝子クラスターにおける遺伝子の転写レベルを高めることのできるDNAの1つ以上の領域(したがって、その名前を有する)である。エンハンサーは、コード領域の5’末端では典型的に、プロモーター配列とも異なることができる一方で、例えば、遺伝子のイントロン領域内または該遺伝子のコード領域に対して3’内にあることができる。
【0038】
本明細書で使用する場合、「作動可能に連結された」は、発現制御配列が関心対象のコード配列の発現を有効に制御するよう、遺伝子コンストラクト(例えば、ベクター)へと組み込まれることを意味する。
【0039】
発現ベクターは、コードされたポリペプチドの発現のために宿主細胞へと(例えば、形質転換またはトランスフェクションによって)導入したのち、精製することができる。マンノシダーゼポリペプチドの小規模または大規模な産生のために使用することのできる発現系は、上記核酸分子を含有する組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、プラスミドDNA発現ベクター、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、大腸菌(E.coli))、および該核酸分子を含有する組換え真菌発現ベクターで形質転換された真菌(例えば、S.cerevisiae、Yarrowia lipolytica、Arxula adeninivorans、Pichia pastoris、Hansenula polymorpha、またはAspergillusのような微生物を含むが、これらに限定されない。有用な発現系は、上記核酸分子を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系、および組換えウイルス発現ベクター(例えば、タバコモザイクウイルス)に感染させたまたは該核酸分子を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系も含む。マンノシダーゼポリペプチドは、哺乳類細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳類ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーターおよびサイトメガロウイルスプロモーター)を含有する組換え発現コンストラクトを有する細胞(例えば、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ヒト胎児由来腎臓293細胞、および3T3 L1細胞のような不死化した細胞系)を含む哺乳類発現系を使用して産生することもできる。
【0040】
典型的には、組換えマンノシダーゼポリペプチドに、FLAG、ポリヒスチジン(例えば、ヘキサヒスチジン)、赤血球凝集素(hemagluttanin)(HA)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、またはマルトース結合タンパク質(MBP)のような異種性アミノ酸配列をタグ付けして、該タンパク質を精製するのを支援する。タンパク質を精製するための他の方法には、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性および逆相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性電荷誘導クロマトグラフィーなどのようなクロマトグラフィー技術が含まれる(例えば、Scopes、Protein Purification:Principles and Practice、第3版、Springer−Verlag、New York(1993);BurtonおよびHarding、J.Chromatogr.A 814:71〜81(1998)を参照されたい)。
【0041】
脱マンノシル化した糖タンパク質を産生するために、基礎をなすマンノースがリン酸化される末端α−1,2マンノース結合または末端α−1,2マンノース部分を含有する標的分子を、好適な条件下で、マンノシダーゼまたは組換え産生されたマンノシダーゼを含有する細胞溶解産物と接触させる。好適なマンノシダーゼは上述されている。細胞溶解産物は、真菌細胞、植物細胞、または動物細胞を含む遺伝子操作された任意の細胞由来であり得る。動物細胞の非限定例としては、線虫、昆虫、植物、鳥類、爬虫類、および、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、アレチネズミ、イヌ、ネコ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、クジラ、サル、またはヒトのような哺乳類が挙げられる。
【0042】
標的分子(例えば、糖タンパク質)を精製されたマンノシダーゼまたは細胞溶解産物に接触させると、末端α−1,2マンノース結合を加水分解して、脱マンノシル化した標的分子を生成することができる。
【0043】
細胞溶解産物におけるマンノシダーゼ活性の活性度または完全性を保存する該細胞溶解産物を得るのに好適な方法には、該細胞溶解産物におけるN−グリコシル化活性の変化を保存または最小化する適切なバッファならびに/またはヌクレアーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、およびホスファターゼ阻害剤を含む阻害剤の使用を含めることができる。このような阻害剤は例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(P−アミノエチルエーテル)N,N,N1,N1−四酢酸(EGTA)のようなキレート剤、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、アプロチニン、ロイペプチン、アンチパインなどのようなプロテアーゼ阻害剤、ならびにホスフェート、フッ化ナトリウム、バナデートなどのようなホスファターゼ阻害剤が挙げられる。酵素活性を含有する溶解産物を得るのに適切なバッファおよび条件は、例えば、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(別冊47)、John Wiley & Sons、New York(1999);HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988);HarlowおよびLane、Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1999);Tietz、Textbook of Clinical Chemistry,第3版、BurtisおよびAshwood編、W.B.Saunders、Philadelphia(1999)に記載されている。
【0044】
細胞溶解産物は適宜、干渉する物質の存在を除去または最小化するようさらに処理することができる。所望の場合、細胞溶解産物は、細胞下分画(subcellular fractionation)、およびイオン交換クロマトグラフィー、疎水性および逆相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性電荷誘導クロマトグラフィーなどのようなクロマトグラフィー技術を含む、当業者に周知の種々の方法によって分画することができる。
【0045】
一部の実施形態においては、細胞溶解産物は、細胞小器官全体が無傷および/または機能的であるままで調製することができる。例えば、溶解産物は、無傷の粗面小胞体、無傷の滑面小胞体、または無傷のゴルジ装置のうちの1つ以上を含有することができる。無傷の細胞小器官を含有する溶解産物を調製して、該小器官の機能性について試験するのに好適な方法は、例えば、Moreauら(1991)J.Biol.Chem.266(7):4329〜4333;Moreauら(1991)J.Biol.Chem.266(7):4322〜4328;Rexachら(1991)J.Cell Biol.114(2):219〜229;およびPaulikら(1999)Arch.Biochem.Biophys.367(2):265〜273に記載されている。
【0046】
標的分子は、本明細書で使用する場合、基礎をなすマンノースがリン酸化される場合の、末端α−1,2マンノース結合または末端α−1,2マンノース部分を含有する任意の分子を指す。一部の実施形態においては、標的タンパク質は、ヒト糖タンパク質である。好適な標的タンパク質には、破傷風トキソイドまたはジフテリア(diptheria)トキソイドのような病原体タンパク質;サイトメガロウイルス(CMV)糖タンパク質B、H、およびgCIII、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)エンベロープ糖タンパク質、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンベロープ糖タンパク質、単純ヘルペスウイルス(HSV)エンベロープ糖タンパク質、エプスタイン・バーウイルス(EBV)エンベロープ糖タンパク質、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)エンベロープ糖タンパク質、ヒトパピローマウイルス(HPV)エンベロープ糖タンパク質、インフルエンザウイルス糖タンパク質、ならびに肝炎ファミリー表面抗原のようなウイルス表面タンパク質、リソソームタンパク質(例えば、酸性αグルコシダーゼ、αガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、セレブロシダーゼ、またはガラクトセレブロシダーゼ)、インスリン、グルカゴン、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、ならびにこれらの抗体または断片を挙げることができる。増殖因子には、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、骨形態形成因子(BMP)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、エリトロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、ミオスタチン(GDF−8)、増殖分化因子9(GDF9)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGFまたはFGF2)、上皮増殖因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)が含まれる。サイトカインには、例えば、IL−1〜IL−33(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、またはIL−15)のようなインターロイキンが含まれる。ケモカインには、例えば、I−309、TCA−3、MCP−1、MIP−1α、MIP−1β、RANTES、C10、MRP−2、MARC、MCP−3、MCP−2、MRP−2、CCF18、MIP−1γ、エオタキシン、MCP−5、MCP−4、NCC−1、Ckβ10、HCC−1、ロイコタクチン−1、LEC、NCC−4、TARC、PARC、またはエオタキシン−2が含まれる。腫瘍糖タンパク質(例えば、腫瘍関連抗原)、例えば、がん胎児性抗原(CEA)、ヒトムチン、HER−2/neu、および前立腺特異抗原(PSA)も含まれる[HendersonおよびFinn、Advances in Immunology,62,pp.217〜56(1996)]。
【0047】
一部の実施形態においては、標的タンパク質は、リソソーム蓄積障害と関連したものであることができ、該標的タンパク質は、例えば酸性αグルコシダーゼ、αガラクトシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、β−ヘキソサミニダーゼ、β−D−マンノシダーゼ、α−L−フコシダーゼ、アリールスルファターゼB、アリールスルファターゼA、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、アスパルチルグルコサミニダーゼ、イズロン酸−2−スルファターゼ、α−グルコサミニド−N−アセチルトランスフェラーゼ、β−D−グルクロニダーゼ(glucoronidase)、ヒアルロニダーゼ、α−L−マンノシダーゼ、α−ノイラミニダーゼ、ホスホトランスフェラーゼ、酸性リパーゼ、酸性セラミダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、チオエステラーゼ、カテプシンK、およびリポタンパク質リパーゼを含む。
【0048】
一部の実施形態においては、標的タンパク質は、それが別のポリペプチド配列に、またはポリマー、キャリア、アジュバント、免疫毒素、もしくは検出可能な(例えば、蛍光、発光、または放射性)部分に融合した融合タンパク質である。例えば、標的タンパク質は、低分子タンパク質の分子量を増加させるために、および/または循環滞留時間を延長するために、ポリエチレングリコールのようなポリマーに結合することができる。
【0049】
(糖タンパク質を脱マンノシル化するインビボでの方法)
本明細書に記載される遺伝子操作された細胞は、脱マンノシル化した標的分子を産生するために使用することができる。例えば、細胞を基にした方法は、基礎をなすマンノースがリン酸化される場合に、末端α−1,2マンノース結合または末端α−1,2マンノース部分を加水分解することのできるマンノシダーゼをコードする核酸を含むよう遺伝子操作された真菌細胞に標的分子をコードする核酸を導入する工程であって、ここで、該細胞は、脱マンノシル化したリン酸化N−グリカンを含有する標的分子を産生する工程を含むことができる。一部の実施形態においては、上記マンノシダーゼおよび標的分子をコードする核酸は、該マンノシダーゼおよび標的分子が共分泌されるよう、分泌配列を含有する。
【0050】
本明細書に記載される遺伝子操作された細胞は、マンノシダーゼをコードする核酸を含有する。標的分子のインビボでの産生に好適な細胞は、
【0054】
このような細胞は、本明細書に記載されるような遺伝子操作の前に、種々の商業的供給源および研究資源施設(例えば、米国培養細胞系統保存機関(米国メリーランド州ロックヴィルなど)から得ることができる。標的分子には、本明細書に記載される任意の標的タンパク質などのタンパク質が含まれる(上を参照されたい)。
【0055】
細胞の遺伝子操作は、マンノシダーゼをコードする外来性核酸に加えて、(i)外側鎖伸長(OCH1)タンパク質をコードする内在性遺伝子の欠失、(ii)マンノシルリン酸化を促進してマンノース残基のリン酸化を増大させることができるポリペプチド(例えば、Yarrowia liplytica、S.cerevisiae、Ogataea minuta、Pichia pastoris、もしくはC.albicansに由来するMNN4ポリペプチド、またはP.pastorisに由来するPNO1ポリペプチド)をコードする組換え核酸の導入、(iii)OCH1タンパク質の機能的発現に干渉するRNA分子の導入または発現、(iv)N−グリコシル化活性を有する野生型(例えば、内在性または外来性)タンパク質をコードする(すなわち、N−グリコシル化活性を有するタンパク質を発現する)組換え核酸の導入、(v)上記の標的分子をコードする組換え核酸の導入、あるいは(v)N−グリコシル化活性を有するタンパク質をコードする1つ以上の内在性遺伝子のプロモーターエレメントまたはエンハンサーエレメントを変更し、したがってそれらののコードタンパク質の発現を変更などの1種類以上の遺伝子改変を含むことができる。RNA分子は、例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、アンチセンスRNA、またはマイクロRNA(miRNA)が含まれる。遺伝子操作には、N−グリコシル化活性を有して、付加(例えば、異種性配列)、欠失、または置換(例えば、点変異のような変異、保存的変異または非保存的変異)を有するタンパク質を産生するタンパク質をコードする内在性遺伝子を変更することも含まれる。変異は、(例えば、部位特異的変異誘発または相同組換えによって)特異的に導入することができ、または無作為に導入することができる(例えば、細胞は、例えばNewmanおよびFerro−Novick(1987)J.Cell Biol.105(4):1587)に記載されるように化学的に変異誘発され得る)。
【0056】
本明細書に記載される遺伝子改変は結果的に、(i)遺伝子改変細胞における1種類以上の活性の増大、(ii)遺伝子改変細胞における1種類以上の活性の低下、または(iii)遺伝子改変細胞における1種類以上の活性の局在性もしくは細胞内分布の変化、のうちの1つ以上を生じることができる。特定の活性の量の増大(例えば、マンノシルリン酸化を促進すること)は、マンノシルリン酸化を促進することのできる1種類以上のタンパク質を過剰発現させること、内在性遺伝子のコピー数の増加(例えば、遺伝子重複)、または内在性遺伝子によってコードされるタンパク質の発現の増大を刺激する該遺伝子のプロモーターもしくはエンハンサーの変更によることができる。1種類以上の特定の活性の低下は、変異体形態(例えば、ドミナントネガティブ形態)の過剰発現、特定の活性を有する1種類以上のタンパク質の発現を低下させる1種類以上の干渉性RNA分子の導入もしくは発現、または特定の活性を有するタンパク質をコードする1種類以上の内在性遺伝子の欠失によることができる。
【0057】
相同組換えによって遺伝子を破壊させるために、「遺伝子置換」ベクターは、選択可能なマーカー遺伝子を含むような方法で構築することができる。選択可能なマーカー遺伝子は、5’末端および3’末端の両方で、相同組換えを仲介するのに十分な長さの遺伝子の部分に作動可能に連結され得る。選択可能なマーカーは、URA3遺伝子、LEU2遺伝子、およびHIS3遺伝子を含む、宿主細胞栄養要求性を補完するかまたは抗生物質耐性を提供するかのいずれかである任意の数の遺伝子のうちの1つであることができる。他の好適な選択可能なマーカーには、酵母細胞に対してクロラムフェニコール耐性を与えるCAT遺伝子、またはβ−ガラクトシダーゼの発現による青色コロニーを結果として生じるlacZ遺伝子が挙げられる。次に、遺伝子置換ベクターの線状化DNA断片を、当該技術分野で周知の方法を使用して上記細胞へと導入する(下記を参照されたい)。その線状断片のゲノムへの組込みおよび上記遺伝子の破壊は、選択マーカーを基にして決定することができ、例えば、サザンブロット分析によって実証することができる。選択可能なマーカーは、例えばCre−loxPシステムによって宿主細胞のゲノムから除去することができる(下記を参照されたい)。
【0058】
あるいは、遺伝子置換ベクターは、破壊されるべき遺伝子の一部を含むような方法で構築することができ、該一部は、任意の内在性遺伝子プロモーター配列がまったくなく、かつ該遺伝子のコード配列のいずれもコードせず、または該コード配列の不活性断片をコードする。「不活性断片」とは、上記遺伝子の全長のコード配列から生成されるタンパク質の活性の例えば約10%未満(例えば、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または0%)を有するタンパク質をコードする遺伝子の断片である。上記遺伝子のこのような一部を、公知のプロモーター配列が該遺伝子配列に作動可能に連結されないものの、終止コドンおよび転写終結配列が該遺伝子配列の一部に作動可能に連結されるような方法で、ベクターに挿入する。このベクターはその後、遺伝子配列の一部において線状化し、細胞へと形質転換することができる。単一の相同組換えによって、この線状化ベクターを次に、上記遺伝子の内在性対応物に組み込む。
【0059】
発現ベクターは、自律的または組込み型であることができる。組換え核酸(例えばマンノシダーゼをコードする組換え核酸)は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、またはウイルス粒子のような発現ベクターの形態で細胞へと導入することができる。組換え核酸は、染色体外で維持することができ、または酵母細胞染色体DNAへと組み込むことができる。発現ベクターは、所望の核酸で形質転換した細胞の検出および/または選択を可能にするために、選択された条件下で細胞生存度に必要なタンパク質をコードする選択マーカー遺伝子(例えば、ウラシル生合成に必要な酵素をコードするURA3、またはトリプトファン生合成に必要な酵素をコードするTRP1)を含有することができる(例えば、米国特許第4,704,362号を参照されたい)。発現ベクターには、自律複製配列(ARS)も含めることができる。例えば、米国特許第4,837,148号は、Pichia pastorisにおけるプラスミドを維持するのに好適な手段を提供する自律複製配列を記載している。
【0060】
統合型ベクターは、例えば、米国特許第4,882,279号において開示されている。統合型ベクターには一般的に、少なくとも1つの第一の挿入可能なDNA断片、1つの選択可能なマーカー遺伝子、および1つの第二の挿入可能なDNA断片からなる連続的に配置された配列が含まれる。第一および第二の挿入可能なDNA断片は各々、長さ約200(例えば、約250、約300、約350、約400、約450、約500、または約1000、またはそれより長い)ヌクレオチドであり、かつ形質転換されるべき種のゲノムDNAの部分に対して相同的であるヌクレオチド配列を有する。発現のための関心対象の遺伝子(例えば、N−グリコシル化活性を有するタンパク質をコードする遺伝子)を含有するヌクレオチド配列は、マーカー遺伝子の前であろうと後であろうと、このベクターにおいて、第一の挿入可能なDNA断片と第二の挿入可能なDNA断片の間に挿入される。統合型ベクターは、関心対象のヌクレオチド配列の宿主細胞ゲノムへの組込みを促進するために、酵母形質転換前に線状化され得る。
【0061】
発現ベクターは、酵母(例えば、Yarrowia lipolytica、Arxula adeninivorans、P.pastoris、または他の好適な真菌種)プロモーターの制御下での組換え核酸の特色をなすことができ、該プロモーターによって、真菌細胞において発現することができる。好適な酵母プロモーターには、例えば、ADC1プロモーター、TPI1プロモーター、ADH2プロモーター、hp4dプロモーター、POXプロモーター、およびGal10プロモーターが含まれる(例えば、Guarenteら(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79(23):7410を参照されたい)。追加の好適なプロモーターは、例えば、ZhuおよびZhang(1999)Bioinformatics 15(7〜8):608〜611ならびに米国特許第6,265,185号に記載されている。
【0062】
プロモーターは、構成的または誘導性(条件的)であることができる。構成的プロモーターは、は、標準的な培養条件下で発現が一定であるプロモーターであると理解されている。誘導性プロモーターとは、1つ以上の誘導指示(Cue)に対して応答性であるプロモーターである。例えば、誘導性プロモーターは、化学的に調節されることができ(例えば、アルコール、テトラサイクリン、ステロイド、金属、または他の低分子のような化学的誘導剤の存在または不在によってその転写活性が調節されるプロモーター)、または物理的に調節され得る(例えば、光または高温もしくは低温のような物理的誘導因子の存在または不在によってその転写活性が調節されるプロモーター)。誘導性プロモーターは、化学的指示または物理的指示によってそれ自体が直接的に調節される1種類以上の転写因子によって間接的に調節されることもできる。
【0063】
遺伝子操作された他の改変も条件的であることができることは理解される。例えば、遺伝子は、例えばCre−loxP系のような部位特異的DNA組換え酵素を使用して、条件的に欠失させることができる(例えば、Gossenら(2002)Ann.Rev.Genetics 36:153〜173および米国特許出願公開第20060014264号を参照されたい)。
【0064】
組換え核酸は、スフェロプラスト技術または全細胞塩化リチウム酵母形質転換法のような種々の方法を使用して、本明細書に記載された細胞へと導入することができる。プラスミドまたは線状核酸ベクターの細胞への形質転換に有用な他の方法は、例えば、米国特許第4,929,555号、Hinnenら(1978)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 75:1929、Itoら(1983)J.Bacteriol.153:163、米国特許第4,879,231号、およびSreekrishnaら(1987)Gene 59:115に記載されており、これらの各々の開示は、それらのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれている。電気穿孔法およびPEG1000全細胞形質転換法も、CreggおよびRussel、Methods in Molecular Biology:Pichia Protocols、第3章、Humana Press、Totowa、N.J.、pp.27〜39(1998)に記載されているとおり使用してもよい。
【0065】
形質転換した真菌細胞は、新たな表現型の選択および検出のために(細胞の栄養要求性により)必要とされる生化学的産物の不在下で形質転換後に栄養要求性細胞を培養すること、または形質転換体に含有される耐性遺伝子の不在下で酵母に対して毒性のある抗生物質の存在下で培養することを含むがこれらに限定されない適切な技術を使用することによって選択することができる。形質転換体は、例えばサザンブロットまたはPCR分析によって評価することのできる、ゲノムへの発現カセットの組込みによって選択および/または実証することもできる。
【0066】
ベクターを関心対象の標的細胞に導入する前に、ベクターは、上に記載したとおり、大腸菌(E.coli)のような細菌細胞において増殖させる(例えば、増幅させる)ことができる。ベクターDNAは、ベクターDNAの細菌環境からの精製を結果として生じる、当該技術分野で公知の方法のうちの何らかによって、細菌細胞から単離することができる。精製されたベクターDNAは、大腸菌タンパク質が哺乳類細胞に対して毒性であることができるので、これらのタンパク質がプラスミドDNA調製物中に存在しないことを確保するために、フェノール、クロロホルム、およびエーテルで徹底的に抽出することができる。
【0067】
一部の実施形態においては、遺伝子操作された真菌細胞は、OCH1遺伝子またはその遺伝子産物(例えば、mRNAまたはタンパク質)を欠いており、OCH1活性を欠損している。一部の実施形態においては、遺伝子操作された細胞は、マンノシルリン酸化を促進することのできるポリペプチド(例えば、Yarrowia lipolytica、S.cerevisiae、Ogataea minuta、Pichia pastoris、もしくはC.albicansに由来するMNN4ポリペプチド、またはP.pastorisに由来するPNO1ポリペプチド)を発現する。例えば、真菌細胞は、Y.lipolytica由来のMNN4ポリペプチド(Genbank(登録商標)受託番号:XM_503217、Genolevures参照コード:YALI0D24101g)を発現することができる。一部の実施形態においては、遺伝子操作された細胞は、OCH1活性を欠損しており、マンノシルリン酸化を促進することのできるポリペプチドを発現する。
【0068】
脱マンノシル化の後、標的分子は単離することができる。一部の実施形態においては、標的分子は、酵母細胞内で維持され、細胞溶解の際に放出される。一部の実施形態においては、標的分子は、上記細胞からの該分子の分泌を誘導する、(外来性核酸に対して天然であるかまたは発現ベクターへと操作されるかのいずれかである)コード配列によって提供される機序を介して培養培地へと分泌される。細胞溶解産物または培養培地中のキャップを外されかつ脱マンノシル化した標的分子の存在は、該分子の存在を検出するための種々の標準的なプロトコルによって実証することができる。例えば、変更した標的分子がタンパク質である場合、このようなプロトコルは、変更した標的タンパク質に特異的な抗体(または該標的タンパク質自体)を使用するイムノブロッティングまたは放射性免疫沈降、変更した標的タンパク質に特異的なリガンド(または該標的タンパク質自体)の結合、または変更した標的タンパク質(または該標的タンパク質自体)の酵素の比活性についての試験が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0069】
一部の実施形態においては、単離後に、脱マンノシル化した標的分子は、例えば酵素的手段または化学的手段を使用して異種性部分に結合することができる。「異種性部分」は、変更した標的分子に(例えば、共有結合でまたは非共有結合で)結合した任意の構成要素を指し、該構成要素は、変更した標的分子に元々存在する構成要素とは異なる。異種性部分には、例えばポリマー、キャリア、アジュバント、免疫毒素、または検出可能な(例えば、蛍光、発光、または放射性)部分を含む。一部の実施形態においては、追加のN−グリカンは、変更した標的分子に付加することができる。
【0070】
標的分子のグリコシル化を検出するための方法には、DNAシーケンサー支援型(DSA)、フルオロフォア支援型炭水化物電気泳動(FACE)または表面支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析法(SELDI−TOF MS)が挙げられる。例えば、分析は、例えば糖タンパク質を変性させた後に、例えばメンブラン上へ固定化するDSA−FACEを利用することができる。上記糖タンパク質は次に、ジチオトレイトール(DTT)またはβ−メルカプトエタノールのような好適な還元剤を用いて還元することができる。上記タンパク質のスルフヒドリル基は、ヨード酢酸のような酸を使用してカルボキシ化することができる。次に、N−グリカンは、N−グリコシダーゼFのような酵素を使用して該タンパク質から放出することができる。N−グリカンは必要に応じて、還元アミノ化によって再構成および誘導体化することができる。誘導体化したN−グリカンは次に濃縮することができる。N−グリカン分析に好適な計測手段には、例えば、ABI PRISM(登録商標)377DNAシーケンサー(Applied Biosystems)が含まれる。データ分析は、例えばGENESCAN(登録商標)3.1ソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して実施することができる。単離されたマンノプロテインは、そのN−グリカン状態を確認するために、仔ウシ腸ホスファターゼのような1種類以上の酵素を使用してさらに処理することができる。N−グリカン分析の追加の方法には、例えば、質量分析(例えば、MALDI−TOF−MS)、順相、逆相における高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、およびイオン交換クロマトグラフィー(例えば、グリカンが標識されていない場合にはパルス電流検出を使用し、グリカンが適切に標識されている場合、紫外吸収または蛍光を使用する)が含まれる。Callewaertら(2001)Glycobiology 11(4):275〜281、およびFreireら(2006)Bioconjug.Chem.17(2):559〜564も参照されたい。
【0071】
(操作された細胞の培養物)
本文書は、本明細書に記載される遺伝子操作された細胞のうちの任意の実質的に純粋な培養物も提供する。本明細書において使用する場合、遺伝子操作された細胞の「実質的に純粋な培養物」とは、該培養物における生細胞の総数の約40%未満(すなわち、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、約0.1%未満、約0.01%未満、約0.001%未満、約0.0001%未満、またはさらにより小)が遺伝子操作された細胞、例えば細菌細胞、真菌細胞(酵母を含む)、マイコプラズマ細胞、または原生動物細胞以外の生細胞である。本文脈における用語「約」とは、関連した百分率が、指定された百分率の15%ほど指定された百分率を上回るまたは下回ることができることを意味する。したがって、例えば、約20%とは、17%〜23%であることができる。遺伝子操作された細胞のこのような培養物には、細胞および、増殖媒体、保存媒体、または輸送媒体が含まれる。媒体は、液体、半固形(例えば、ゼラチン媒体)、または凍結であることができる。上記培養物には、液体または半固形媒体で増殖する細胞、または、凍結保存媒体または輸送媒体を含む保存媒体または輸送媒体中で保存または輸送される細胞が含まれる。上記培養物は、培養容器または保存容器または基材(例えば、培養皿、培養フラスコ、もしくは培養チューブ、または保存バイアルもしくは保存チューブ)の中にある。
【0072】
本明細書に記載される遺伝子操作された細胞は、例えば、凍結した細胞懸濁液として、例えば、グリセロールまたはスクロースのような凍結保護物質を含有するバッファ中に、凍結乾燥した細胞として保存することができる。あるいは、上記細胞は、例えば、流動床乾燥もしくは噴霧乾燥、または任意の他の好適な乾燥方法によって得られる乾燥した細胞調製物として保存することができる。
【0073】
(代謝障害)
脱マンノシル化した分子は、種々の代謝障害を処置するために使用することができる。代謝障害とは、個々のヒト(または動物)細胞内でのエネルギー産生に影響する障害である。ほとんどの代謝障害は遺伝性であるが、一部は、食事、毒素、感染症などの結果として「後天的」であることができる。遺伝性代謝障害は、先天性代謝異常としても公知である。一般に、遺伝性代謝障害は、細胞の代謝過程における一部のプロセスに必要な酵素を失うことまたは不適切に構成されることを結果的に生じる遺伝的欠陥に起因する。最大のクラスの代謝障害は、炭水化物代謝の障害、アミノ酸代謝の障害、有機酸代謝の障害(有機酸性尿)、脂肪酸酸化およびミトコンドリア代謝の障害、ポルフィリン代謝の障害、プリン代謝もしくはピリミジン代謝の障害、ミトコンドリア機能におけるステロイド代謝障害の障害、ペルオキシソーム機能の障害、およびリソソーム蓄積障害(LSD)である。
【0074】
脱マンノシル化した1つ以上の分子(または該分子の薬学的組成物)の投与によって処置することのできる代謝障害の例としては、遺伝性ヘモクロマトーシス、眼皮膚型白皮症、プロテインC欠乏症、遺伝性血管性浮腫I型、先天性スクラーゼイソマルターゼ欠損症、クリグラー・ナジャーII型、ラロン症候群、遺伝性ミエロペルオキシダーゼ、原発性甲状腺機能低下症、先天性QT延長症候群、チロキシン結合グロブリン欠損症、家族性高コレステロール血症、家族性乳糜血症、無ベータリポタンパク血症(abeta−lipoproteinema)、低い血漿リポタンパク質Aレベル、肝損傷を伴う遺伝性気腫、先天性甲状腺機能低下症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノゲン血症、α1−アンチキモトリプシン欠損症、腎性尿崩症、神経下垂体性尿崩症、アデノシンデアミナーゼ欠損症、ペリツェウス・メルツバッハー病、フォンウィルブランド病IIA型、複合第V因子・第VIII因子欠損症、遅発性脊椎骨端異形成、コロイデレミア、I細胞病、バッテン病、毛細管拡張性運動失調、ADPKDすなわち常染色体優性多発嚢胞腎症、微絨毛性封入体病、結節硬化症、ローの眼脳腎症候群、筋萎縮性側索硬化症、骨髄異形成症候群、不全リンパ球症候群、タンジアー病、家族性肝内胆汁鬱滞、X染色体連鎖副腎白質ジストロフィー、スコット症候群、ヘルマンスキー・パドラック症候群1型および2型、ツェルヴェーガー症候群、近接短縮性点状軟骨異形成症、常染色体劣性原発性高シュウ酸尿症、モール・トラネビャエルグ(Tranebjaerg)症候群、脊髄性および延髄性筋萎縮症(spinal and bullar muscular atrophy)、原発性線毛運動不全(カルタゲナー症候群)、巨人症および先端巨大症、乳汁漏出、アジソン病、副腎性男性化、クッシング症候群、ケトアシドーシス、原発性または続発性アルドステロン症、ミラー・ディカー症候群、滑沢脳、運動ニューロン疾患、アッシャー症候群、ヴィスコット・オールドリッチ症候群、オピッツ症候群(Optiz syndrome)、ハンチントン病、遺伝性膵炎、抗リン脂質抗体症候群、オーバーラップ結合組織病(overlap connective tissue disease)、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、ブルガダ症候群、フィンランド型先天性腎炎症候群、デュービン・ジョンソン症候群,X染色体連鎖低リン酸血症(X−linked hypophosphosphatemia)、ペンドレッド症候群、新生児持続性高インスリン性低血糖症、遺伝性球状赤血球症、無セルロプラスミン血症、乳児神経セロイドリポフスチン沈着症、偽性軟骨形成不全症および多発性骨端骨形成不全症(multiple epiphyseal)、シュタルガルト様黄斑ジストロフィー、X染色体連鎖シャルコー・マリー・ツース病、常染色体優性網膜色素変性、ウォルコット・ラリソン症候群(Wolcott−Rallison syndrome)、クッシング病、肢帯筋ジストロフィー、ムコ多糖症(mucoploy−saccharidosis)IV型、フィンランド型遺伝性家族性アミロイドーシス(hereditary familial amyloidosis of Finish)、アンダーソン病、肉腫、慢性骨髄単球性白血病、心筋症、顔面生殖器形成不全症(faciogenital dysplasia)、捻転症、ハンチントン運動失調および脊髄小脳性運動失調、遺伝性高ホモシステイン血症(hereditary hyperhomosyteinemia)、多発ニューロパチー、下位運動ニューロン疾患、色素性網膜炎(pigmented retinitis)、セロネガティブ多発性関節炎、間質性肺線維症、レイノー現象、ウエゲナー肉芽腫症(Wegner’s granulomatosis)、タンパク尿(preoteinuria)、CDG−Ia型、CDG−Ib型、CDG−Ic型、CDG−Id型、CDG−Ie型、CDG−If型、CDG−IIa型、CDG−IIb型、CDG−IIc型、CDG−IId型、エーラース・ダンロス症候群、多発性外骨腫症、グリセリ症候群(1型または2型)、またはX染色体連鎖非特異的精神遅滞を挙げることができる。加えて、代謝障害には、ファブリー病、ムコ多糖症I型、ファーバー病、ゴーシェ病、GM
1ガングリオシドーシス、テイ・サックス病、サンドホフ病、GM
2活性化因子疾患、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー、ニーマン・ピック病(A型、B型、およびC型)、シェイエ病、ハンター病、サンフィリポ病、モルキオ病、マロトー・ラミー病、ヒアルロニダーゼ欠損症、アスパルチルグルコサミン尿症、フコース蓄積症、マンノース蓄積症、シンドラー病、1型シアリドーシス、ポンペ病、濃化異骨症、セロイドリポフスチン沈着症、コレステロールエステル貯蔵病、ウォルマン病、多発性スルファターゼ欠損症、ガラクトシアリドーシス、ムコリピドーシス(II型、III型、およびIV型)、シスチン症、シアル酸蓄積障害、マリネスコ・シェーグレン症候群を伴うカイロミクロン蓄積症、ヘルマンスキー・パドラック症候群、チェディアック・東症候群、ダノン病、または幸福顔貌骨異形成症などだがこれらに限定されないリソソーム蓄積障害も含めることができる。
【0075】
代謝障害の症状は多岐にわたっており、例えば、貧血、疲労、容易な紫斑形成、少ない血小板、肝腫脹、脾腫脹、骨格の弱化、肺の欠陥、感染症(例えば、胸部の感染症または肺炎)、腎臓の欠陥、進行性脳障害、発作、非常に濃い胎便、咳嗽、喘鳴、唾液または粘液の過剰産生、息切れ、腹痛、腸閉塞または消化管閉塞、妊孕性の問題、鼻の中のポリープ、指/足指の爪および皮膚の太鼓ばち指形成、手または足の疼痛、被角血管腫、少ない発汗、角膜およびレンズの混濁、白内障、僧帽弁逸脱症および/または僧帽弁逆流、心肥大、温度不耐症(temperature intolernce)、歩行困難、嚥下困難、進行性失明、進行性聴覚喪失、緊張低下、巨舌、反射消失、腰痛、睡眠時無呼吸、起座呼吸、傾眠、脊柱前弯、あるいは脊柱側弯のうちの1種類以上を含むことができる。欠損しているタンパク質または存在しないタンパク質の多様な性質および結果として生じる疾患の表現型(例えば、代謝障害の症候的呈示)により、所与の障害が一般的には、その特定の障害に対して特徴的な症状のみを示すことは理解される。例えば、ファブリー病患者は、温度不耐症、角膜回転、疼痛、皮疹、吐き気、または下痢のような、しかしこれらに限定されない上記の症状の特定の部分集合を示し得る。ゴーシェ症候群患者は、巨脾腫症、硬変、痙攣、緊張亢進、無呼吸、骨粗鬆症、または皮膚変色を示し得る。
【0076】
本明細書に記載される脱マンノシル化した1つ以上の分子の投与に加えて、代謝障害は、適切な栄養およびビタミン類(例えば、補因子療法)、理学療法、および疼痛用薬物適用によっても処置することができる。
【0077】
所与の代謝障害の具体的な性質に応じて、患者は、いずれかの齢においてこれらの症状を示し得る。多くの症例においては、症状は、小児期にまたは青年期に示し得る。例えば、ファブリー病の症状は、少年期、例えば10歳または11歳で示し得る。
【0078】
本明細書で使用する場合、「代謝障害を発達させる危険にある」被験体とは、障害を発達させる素因、すなわち、酸性αグルコシダーゼ、αガラクトシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、β−ヘキソサミニダーゼ、β−D−マンノシダーゼ、α−L−フコシダーゼ、アリールスルファターゼB、アリールスルファターゼA、α−N−アセチルガラクトサミニダーゼ、アスパルチルグルコサミニダーゼ、イズロン酸−2−スルファターゼ、α−グルコサミニド−N−アセチルトランスフェラーゼ、β−D−グルクロニダーゼ(glucoronidase)、ヒアルロニダーゼ、α−L−マンノシダーゼ、α−ノイラミニダーゼ、ホスホトランスフェラーゼ、酸性リパーゼ、酸性セラミダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、チオエステラーゼ、カテプシンK、またはリポタンパク質リパーゼのような酵素における変異の結果として代謝障害を発達させる遺伝素因を有する被験体である。明らかに、「代謝障害を発達させる危険にある」被験体とは、関心対象の種内の被験体すべてではない。
【0079】
「障害を有すると疑われる」被験体とは、本明細書に記載される代謝障害のうちのいずれかなど代謝障害の1つ以上の症状を有する被験体である。
【0080】
(薬学的組成物および処置方法)
脱マンノシル化した標的分子は、治療有効量の該分子と1種類以上のアジュバント、賦形剤、キャリア、および/または希釈剤とを含有する薬学的組成物へと組み込むことができる。許容し得る希釈剤、キャリア、および賦形剤は典型的には、受容者の恒常性(例えば、電解質平衡)に有害に影響することはない。許容し得るキャリアには、生体適合性、不活性、または生体吸収可能な塩、緩衝剤、オリゴ糖または多糖、ポリマー、粘度改善剤、保存剤などが含挙げられる。ある例示的なキャリアは、生理食塩水(0.15M NaCl、pH7.0〜7.4)である。別の例示的なキャリアは、50mMリン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウムである。薬学的組成物の製剤化および投与についての技術に関するさらなる詳細は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.、米国ペンシルバニア州イーストン)において得ることができる。補充用活性化合物も上記組成物中に組み込むことができる。
【0081】
脱マンノシル化した分子を含有する薬学的組成物の投与は、全身性または局所性であることができる。薬学的組成物は、非経口投与および/または経口投与に好適であるよう製剤化することができる。具体的な投与様式には、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経皮投与、髄腔内投与、経口投与、直腸投与、口腔投与、局所投与、鼻投与、眼投与、関節内投与、動脈内投与、くも膜下投与、気管支投与、リンパ投与、膣投与、および子宮内投与が含まれる。
【0082】
投与は、薬学的組成物のボーラスによる周期的注入によることができるか、または外部(例えば、静脈内用の袋)または内部(例えば、生分解性埋没物、生体人工臓器、または植え込み型の改変N−グリコシル化分子産生細胞のコロニー)である貯蔵器からの静脈内投与または腹腔内投与によって中断されないでいることができ、もしくは持続的であることができる。例えば、米国特許第4,407,957号、同第5,798,113号、および同第5,800,828号を参照されたい。薬学的組成物の投与は、ポンプ(例えば、Annals of Pharmacotherapy,27:912(1993);Cancer、41:1270(1993);Cancer Research、44:1698(1984)を参照されたい)、マイクロカプセル封入(例えば、米国特許第4,352,883号、同第4,353,888号、および同第5,084,350号を参照されたい)、持続放出性ポリマー埋没物(例えば、Sabelの米国特許第4,883,666号を参照されたい)、マクロカプセル封入(例えば、米国特許第5,284,761号、同第5,158,881号、同第4,976,859号、および同第4,968,733号、ならびにPCT公開特許出願WO92/19195号、WO95/05452号を参照されたい)、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、もしくは他の好適な部位のいずれかへの注射、またはカプセル剤、液剤、錠剤、丸剤、もしくは持続放出製剤での経口投与のような好適な送達手段を使用して達成することができる。
【0083】
非経口送達系の例としては、エチレン−酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、植え込み可能な注入系、ポンプ送達、被包細胞送達、リポソーム送達、針送達系注射、無針注射、ネブライザー、エーロゾライザー、電気穿孔法、および経皮パッチが挙げられる。
【0084】
非経口投与に好適な製剤は、改変N−グリコシル化分子の滅菌水性調製物を便利に含有しており、好ましくは受容者の血液と等張である(例えば、生理学的塩類溶液)。製剤は、単位用量形態または複数回用量形態で提供することができる。
【0085】
経口投与に好適な製剤は、各々、あらかじめ決めておいた量の改変N−グリコシル化分子を含有するカプセル剤、カシェ剤、錠剤、もしくはロゼンジ、またはシロップ剤、エリキシル剤、乳剤、もしくは頓服水剤(draught)のような、水性リカーもしくは非水性液中の懸濁剤のような分離した単位として提供することができる。
【0086】
局所投与に好適な脱マンノシル化した分子は、哺乳類(例えば、ヒト患者)へ、例えばクリーム、スプレー、泡状物質、ジェル、軟膏、塗薬、またはドライラブ(dry rub)として投与することができる。ドライラブは、投与部位で再含水することができる。このような分子は、包帯、ガーゼ、またはパッチへも直接注入することができ(例えば、浸漬して、および乾燥して)、次に、それは局所的に適用することができる。このような分子は、局所投与のための包帯、ガーゼ、またはパッチに半液状、ゲル状、または完全に液状で維持することもできる(例えば、米国特許第4,307,717号を参照されたい)。
【0087】
治療有効量の薬学的組成物は、それを必要とする被験体へ、当業者によって確かめることのできる投与計画で投与することができる。例えば、組成物は、上記被験体へ、例えば1投薬あたり、被験体の体重1kgあたり0.01μg〜10,000μgの薬用量で全身投与することができる。別の例においては、薬用量は、1投薬あたり、被験体の体重1kgあたり1μg〜100μgである。別の例においては、薬用量は、1投薬あたり、被験体の体重1kgあたり1μg〜30μg、例えば、1投薬あたり、被験体の体重1kgあたり3μg〜10μgである。
【0088】
治療効能を最適化するために、脱マンノシル化した分子はまず、異なる投与計画で投与することができる。単位用量および計画は、例えば、哺乳類の種、その免疫状態、該哺乳類の体重を含む因子に左右される。典型的には、組織におけるこのような分子のレベルは、例えば、所与の処置計画の効能を決定するための臨床試験手順の一部として適切なスクリーニングアッセイを使用して監視することができる。
【0089】
脱マンノシル化した分子についての投与頻度は、医療従事者(例えば、医師または看護師)の技術および臨床的判断のうちにある。典型的には、投与計画は、最適な投与パラメータを確立し得る臨床試験によって確立する。しかしながら、上記従事者は、被験体の年齢、健康状態、体重、性別、および医学的状態に従ってこのような投与計画を変更してもよい。投与の頻度は、処置が予防的であるかまたは治療的であるかに応じて変更することができる。
【0090】
このような分子またはその薬学的組成物の毒性および治療的効能は、例えば細胞培養物または実験動物における公知の医薬手順によって決定することができる。これらの手順は、例えば、LD
50(集団の50%が致死する量)およびED
50(集団の50%における治療有効量)を決定するために使用することができる。毒性作用と治療効果の間の用量比は治療指数であり、それはLD
50/ED
50の比として表すことができる。高い治療指数を示す薬学的組成物が好ましい。毒性のある副作用を示す薬学的組成物を使用することはできるが、正常細胞(例えば、非標的細胞)に対する潜在的な障害を最小化し、それにより副作用を低減するために、影響される組織の部位にこのような化合物を向ける送達系を設計するよう注意を払うべきである。
【0091】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得たデータは、適切な被験体(例えば、ヒト患者)における使用のためのある範囲の薬用量を製剤化する上で使用することができる。このような薬学的組成物の薬用量は一般的に、ほとんどまたはまったく毒性を有さないED
50を含むある範囲の循環濃度内に収まる。薬用量は、採用される剤形および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変化してもよい。(例えば、被験体における代謝障害を処置するために)本明細書に記載されるように使用される薬学的組成物については、治療有効量は、細胞培養アッセイから最初に概算することができる。用量は、細胞培養において決定されるようなIC
50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する薬学的組成物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて処方することができる。このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0092】
本明細書において定義する場合、脱マンノシル化した分子の「治療有効量」とは、処置された被験体における医学的に望ましい結果(例えば、代謝障害の1種類以上の症状の改善)を生むことのできる分子の量である。治療有効量(すなわち、有効薬用量)には、被験体の体重または試料の重量の1キログラムあたりの化合物のミリグラム量またはマイクログラム量(例えば、1キログラムあたり約1マイクログラム〜1キログラムあたり約500ミリグラム、1キログラムあたり約100マイクログラム〜1キログラムあたり約5ミリグラム、または1キログラムあたり約1マイクログラム〜1キログラムあたり約50マイクログラム)を含めることができる。
【0093】
被験体は、任意の哺乳類、例えばヒト(例えば、ヒト患者)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、ヒヒ、またはサル)、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、アレチネズミ、ハムスター、ウマ、ある種の家畜(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、またはヤギ)、イヌ、ネコ、またはクジラであることができる。
【0094】
本明細書に記載される分子またはその薬学的組成物は、被験体へ、別の処置、例えば、代謝障害(例えば、リソソーム蓄積障害)のための処置との併用療法として投与することができる。例えば、併用療法には、被験体(例えば、ヒト患者)へ、代謝障害(例えば、リソソーム蓄積障害)を発達させる(または有すると疑われる)危険を有するまたは該危険にある被験体へ治療上の利点を提供する1種類以上の追加の薬剤を投与することを含めることができる。したがって、上記化合物または薬学的組成物および1種類以上の追加の薬剤は、同時に投与することができる。あるいは、上記分子を第一に投与し、かつ第二に上記1種類以上の追加の薬剤を投与することができ、またはその逆を行なうこともできる。
【0095】
以前の治療薬が特に毒性である場合(例えば、重大な副作用特性を有する、代謝障害に対する処置)においては、本明細書に記載される分子の投与を用いて、以前の治療薬の量を、毒性を有さずに同じかまたは改良された治療上の利点を与えるのに十分なレベルまで代償するおよび/または低下させることができる。
【0096】
本明細書に記載される薬学的組成物のうちの任意のものが、投与のための指示とともに、容器、パック、またはディスペンサーに含めることができる。
【0097】
以下は、本発明の実施例である。該実施例は、本発明の範囲をいずれかの方法で制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0098】
実施例1
(huGAA発現株の生成)
3コピーのヒトαグルコシダーゼ(酸性αグルコシダーゼ(GAA)または酸性マルターゼEC3.2.1.3としても公知)および2コピーのY.lipolytica MNN4遺伝子を含有する、Y.lipolytica株OXYY1589を構築した。OXY1589株の遺伝子型は、以下のとおりである。
【0099】
【化6】
【0100】
形質転換はすべて、異なる選択的マーカーについての改変を使用する十分に確立されたプロトコルに従って実施した。(別段の指定がない限り)すべての場合において、カナマイシン耐性遺伝子を発現プラスミドから除去するために、huGAA組込み断片をNotI制限消化によって得た。結果的に生じる断片をすべてアガロースゲル電気泳動によって分離した後に、正確なhuGAA断片をQiagenカラムにより精製した。ヒトGAA(huGAA)をY.lipolytica発現ベクターへとまずクローニングして、Y.lipolytica MNN4縦列発現ベクターを構築することによって、OXYY1589株を構築した。次に、最終のhuGAA産生株OXYY1589を得るために、3つの安定した組込み型形質転換を実施した。
【0101】
(Y.lipolyticaコドン最適化huGAA発現ベクター)
110kDAのヒトGAA(huGAA)前駆体をコードするヌクレオチド配列を化学的に合成し、Y.lipolytica発現についてコドン最適化した。合成コンストラクトにおいては、上記タンパク質がアミノ酸57において開始するよう、プレhuGAAシグナルペプチドおよびプロhuGAAシグナルペプチドを除去した。huGAAの合成オープンリーディングフレーム(ORF)(
図1A)をY.lipolytica LIP2シグナル配列(プレ)の5’末端から3’末端までをインフレームで融合させ、2つのXxx−Ala切断部位のコード配列をその後に続け、発現ベクターへのクローニングのためのBamHI制限部位およびAvrIIの制限部位を隣接させた。上記コンストラクトは、誘導性POX2プロモーターの制御下にある。融合タンパク質の完全なアミノ酸配列を
図1Bに示す。
【0102】
発現ベクターの一般的な概略図を
図2に示す。細菌部分は、pHSS6プラスミドに由来したので、細菌複製起点(ori)およびカナマイシンに対する耐性を与えるカナマイシン耐性遺伝子(KanR)を含む。組込みカセットは、a)Yarrowia lipolyticaへの形質転換のための選択マーカー(URA3、LEU2、GUT2)、b)プロモーターから構成される発現カセット、c)インフレームでシグナル配列とともにhuGAAを挿入するためのマルチプルクローニングサイト(MCS)、およびd)LIP2遺伝子のターミネーターを含んでいた。組込みカセットは、Y.lipolyticaゲノムへの安定した非相同組込みのためにζ配列によって隣接させた。2つのNotI制限部位は、形質転換前の発現カセットの単離を可能にする。pRAN034プラスミド、pRAN036プラスミド、およびOXYP183プラスミドを使用して、URA3形質転換マーカー、LEU2形質転換マーカー、およびGUT2形質転換マーカーをそれぞれ含有するhuGAA発現ベクターpRAN058、pRAN059、およびpRAN060を生成した。
【0103】
(縦列YlMNN4発現ベクター)
YlMNN4遺伝子を、誘導性pPOX2プロモーターの制御下で、かつ(半)構成的hp4dプロモーターの制御下でクローン化した。YlMNN4のこれら2つの発現カセットを1つのベクターへと、ゲノムのADE2遺伝子座への標的化組込みのためのADE2遺伝子と選択的マーカーとしてのADE2遺伝子からなる隣接領域(PT)を保有する縦列コンストラクトとしてサブクローニングした。
【0104】
(中間株OXYY1569)
第一の形質転換は、中間の組換え株OXYY1569を作製するため、URA3マーカーおよびLEU2マーカーを使用して、pRAN058ベクターおよびpRAN059ベクターから精製した発現カセットの共形質転換であった。OXYY1569は、G014株のゲノムに無作為に組み込まれたpPOX2プロモーターの制御下でhuGAAの2つの発現コンストラクトを保有している。
【0105】
OXYY1569を以下のとおり選択した。Y.lipolyticaのゲノムへの外来性huGAA DNAの組込みを確認するために、ゲノムDNAのPCRスクリーニングを実施した。プライマーは、huGAAヌクレオチド配列由来の2552塩基対の断片を増幅させるよう設計した。少なくとも2コピーのhuGAA DNAの組込みを確認するために、ゲノムDNAのサザンブロット分析も実施した。詳細には、OXYY1569クローン由来のゲノムDNAをHindIIIで消化し、huGAA DIG標識した特異的プローブを使用して探査した。
【0106】
高レベルのhuGAAを分泌するクローンを選択するために、PCRスクリーニングおよびサザンブロットにおいて陽性として同定された無作為に選択したいくつかのクローンを、POX2誘導条件下で標準的な手順に従って振盪フラスコ中で増殖させた。すべての場合において、培養上清を誘導72時間後に回収し、標準的なウェスタンブロットおよび酵素活性アッセイ分析においてスクリーニングした。OXYY1569のN−グリカン分析は、OXYY1569における支配的な構造がMan
8GlcNAc
2であることを示した。
【0107】
(中間の株OXYY1584)
Y.lipolytica MNN4遺伝子の2つのコピーをそのゲノムに組み込んで、OXYY1584を生成するために、組換え株OXYY1569を形質転換した。プラスミドOXYP1479Bから切り出したSacII/XmaI由来の発現カセットを使用して、形質転換を実施した。Y.lipolyticaゲノムのADE2遺伝子座への標的化組込みのために発現カセットを設計した。組換え株をサザンブロット法およびグリカン分析の後に選択して、増大したリン酸化に関する該株の挙動を評価した。任意に選択したいくつかの形質変換体のゲノムDNAをSpeIで消化し、MNN4特異的なDIG標識したプローブを使用して探査した。Y.lipolyticaゲノムのADE2遺伝子座へのMNN4発現カセットの正確な標的化組込みは、4207塩基対および5683塩基対のバンドを生じるべきである。サザンブロット陽性クローンを標準的な振盪フラスコ手順で増殖させた。中間のクローンOXYY1584を選択するために、分泌したタンパク質のN−グリカン分析を実施した。親株OXXY1569と比較して、MNN4過剰発現後の支配的な構造は、Man
8GlcNAc
2(PMan)
1およびMan
8GlcNAc
2(PMan)
2であった。
【0108】
(産生株OXYY1589)
最終の原栄養体産生株OXYY1589を生成するために、huGAAの第三のコピーを組換えOXYY1584株のゲノムに組み込んだ。pRAN069からNotIで切り出した発現カセットを使用して形質転換を実施した。最初に、huGAAの追加のコピーの存在について、形質転換体のgDNAに関するPCRによってスクリーニングした。huGAA産生を評価するために、標準的な振盪フラスコ培養後の発現について、任意に選択したPCR陽性クローンをさらに分析した。最高レベルのhuGAAを発現するクローン(OXYY1589)をウェスタンブロット分析および酵素活性アッセイ後に選択した。M8のMP2−M8 N−グリカンおよびMP−M8 N−グリカンへの転換レベルが追加のhuGAA発現カセットの存在によって影響されないことも再確認した。
【0109】
実施例2
(OXYY1589株の流加培養)
OXYY1589株(実施例1)からhuGAAを産生するために、作業容積6〜8Lを有する撹拌した10Lタンクを使用して流加プロセスを確立した。上記プロセスを2つの相に分割した。
【0110】
1)バイオマス形成のためのグルコースに関するバッチ増殖
2)限定されたオレイン酸供給の支援による誘導による産物形成。
【0111】
典型的には、バッチ相は約20時間(h)であり、産生相はおよそ72時間であった。上記プロセスの終了時点で、培養ブロスを遠心分離し、上清を回収した。上清をGAAの精製のための出発材料として使用した(実施例3を参照されたい)。
【0112】
以下のパラメータを発酵中に制御した。エアレーションを1.5vvm空気(1分間あたり1容積あたりの容積)の一定値で維持した。溶存酸素(DO)を初期には30%で維持した。撹拌を600rpmから1200rpmへとDOレベルに応じて増大させた。一旦撹拌が最大値1200rpmに到達すると、その速度を一定のままにし、DO設定値を10%に設定した。10%DOを維持するために、酸素を50%の最大百分率で反応器へと加えた。泡沫の発生(foam evolution)を泡沫プローブによって制御した。泡沫検出のケースでは、消泡剤をバイオリアクターへ添加した。pH6.8の一定値を維持するために、14%(v/v)アンモニア(塩基)または10%リン酸を添加することによって、pHを制御した。全プロセスの間中、温度を28℃で一定のままにした。
【0113】
バイオマスを、600nmでの光学密度(OD600)の測定によって監視した。試料を蒸留水で2〜1000倍希釈して、分光光度計の直線範囲で値を得た。産物形成をウェスタンブロット分析および特異的酵素活性試験によって検出した。
【0114】
実施例3
(組換えhuGAA(rhGAA)の精製)
培養後の上清(実施例2を参照されたい)を、デプス濾過を介して清澄化した。次に、結果として生じる材料を、TFFを介して20倍濃縮し、10kDaのMNCOメンブラン(Millipore)で、20mMリン酸ナトリウム(pH6)および100mM NaClに対して透析濾過した。
【0115】
rhGAAの精製を、最高1M濃度までの硫酸アンモニウムを添加することによって開始した。遠心分離後、上清をToyopearl−Phenyl 650M(Tosoh Biosciences)を充填したXK16/40カラムにのせた。1Mから0Mへの硫酸アンモニウムの直線勾配を溶出に適用した。次に、rhGAAを含有する画分をプールし、10mM BIS−TRIS(pH6)へのバッファ交換に供した。0Mから1MへのNaClの直線塩勾配を使用する、ソース30Qを充填したTricorn 10/50またはXK25/20カラム(GE Healthcare)の陰イオン交換クロマトグラフィーを介して、さらなる精製を達成した。次に、結果として生じるGAA含有画分を濃縮した後、50mMリン酸ナトリウム(pH6)および200mM NaClであらかじめ平衡化しておいた最終のHiload 16/60superdex200ゲル濾過カラム(GE Healthcare)にのせた。比活性およびクーマシー染色したSDS−PAGEゲルにおける純度を基にして画分を選択した後、合一して、5〜10mg/mlの終濃度へと濃縮した。10kDaの分子量カットオフを備えた15mlのAmicon超遠心分離デバイス(Millipore)を使用して、タンパク質を濃縮した。
【0116】
rhGAAについての定性的スクリーニングの反応を、10:1または20:1の容積比で、0.35mM4−MUG、0.1%BSA、および100mM酢酸ナトリウム(pH4)からなる反応緩衝液を10μlまたは5μlの溶出画分へ添加することによって開始した。すべての反応を96ウェル平底マイクロタイタープレートにおいて実施した。37℃で30分間〜1時間のインキュベーション時間後、等容積の100mMグリシン(pH11)を添加して、反応を停止させ、蛍光原性反応産物4−メチルウンベリフェロンの放出を紫外光の下で観察した。比活性(単位/mgタンパク質)を、黄色のp−ニトロフェノラート反応産物の酵素放出を測定する合成基質p−ニトロフェニル−α−D−グルコピラノシド(PNPG)を用いる比色アッセイを使用して決定した。上記反応は、10μlの酵素溶液および90μlの基質反応緩衝液(150mMクエン酸−リン酸緩衝液(pH4)、1%BSA中の2mM PNPG)をマイクロタイタープレートの反応ウェル中で混合することによって開始し、その後37℃でインキュベートした。1〜2時間後、等容積の停止バッファ10%炭酸ナトリウム(pH12)を添加して、その反応をクエンチし、放出されたp−ニトロフェノール(PNP)をイオン化状態に転換した。バックグラウンド補正した吸光度およびp−ニトロフェノラート標準物質を405nmの波長で測定し、比活性を算出した。タンパク質濃度をビシンコニン酸(BCA)法を用いて決定した。1単位を、クエン酸−リン酸緩衝液(pH4.0)中の2mMの最終基質濃度において37℃、1分間当たり1nmolのPNPGから1nmolのPNPおよびD−グルコースへの変換を触媒する酵素の量として定義した。
【0117】
実施例4
(CcMan5およびCcMan4の発現)
CcMan4のORFおよびCcMan5のORFを、DsbAシグナル配列を含有して結果的にN末端ポリヒスチジンタグを有するタンパク質の発現を生じるpLSAH36ベクターへとクローン化した。上記タンパク質の発現を大腸菌(E.coli)BL21細胞において実施した。ペリプラズムに存するタンパク質を、Talonカラムを使用して単離および精製した。DsbA−CcMan5およびDsbA−CcMan4のORFのヌクレオチド配列を
図3および
図4に提供する。pLSAHCcMan5プラスミドおよびpLSAHCcMan4プラスミドの図解表示を
図5に与える。
【0118】
実施例5
(APTS標識したリン酸化N−グリカンのGH47α−マンノシダーゼによる脱マンノシル化)
Hypocrea jecorina(Hj)(アナモルフ:Trichoderma reesei)由来のGH47α−1,2−マンノシダーゼは、オリゴ糖Man9GlcNAc2由来の4つのα−1,2結合型マンノース糖をすべて逐次的に切断することができる(Maras,M.ら、J.Biotechnol、77:255〜263(2000))。類似の活性をAspergillus satoi(As)(Aspergillus phoenicisとしても公知)由来のα−1,2−マンノシダーゼについて記載されている(Ichishima E.ら、Biochem.J.、339:589〜597)。
【0119】
HjMan(Genbank nr AAF34579)をPichia pastorisにおいて発現させ、Maras,M.ら、J.Biotechnol,77:255〜263(2000)に記載されるとおり精製した。AsMan(Genbank番号BAA08634)の市販の酵素調製物は、Prozyme−Glyco社から入手可能である。
【0120】
H.jecorinaおよびA.satoi由来のα−1,2−マンノシダーゼを、Man
8GlcNAc
2(M8)糖、一リン酸化したManP−Man
8GlcNAc
2(MP−M8)糖、および/または二リン酸化した(ManP)
2−Man
8GlcNAc
2((MP)2−M8)糖を含有する、MNN4遺伝子を過剰発現するYarrowia lipolytica細胞に由来する8−アミノ−1,3,6,−ピレントリスルホン酸(APTS)標識した糖の混合物に関して試験した。
図6においては、潜在的な最終加水分解産物を概略的呈示で示しており、基礎をなすマンノースがリン酸化される場合に、α−1,2−マンノシダーゼは末端α−1,2−マンノースも加水分解できると想定される。キャップの外されたホスフェート残基を有するリン酸化N−グリカン(したがって、末端ホスフェートが存在するオリゴ糖)でα−1,2−マンノシダーゼの活性を試験することができるよう、MNN4糖を、ホスフェートのキャップ外し活性を有するCellulosimicrobium cellulans由来のGH92酵素であるCcMan5で処理した(
図7)。CcMan5は、マンノース−ホスホ−マンノースジエステル結合における末端マンノースを除去する。
【0121】
別段の記載がない限り、AsManおよびHjManによるAPTS標識したN−グリカンへの反応はすべて、2mM CaCl
2を含む10mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.0)中で37℃、一晩実施した。CcMan5反応を室温かつpH7.0で、2mM CaCl
2を添加した10mM HEPES緩衝液を使用して実施した。ホスフェートがキャップを外されたグリカンの存在を確認するために、または末端ホスフェートを有する迅速に泳動されるグリカンの構造を同定することができるよう、仔ウシ腸ホスファターゼ(CIP)をその後、反応混合物に添加した。ホスフェート加水分解後に中性N−グリカンが得られるが、それはRNAseBから放出されたAPTS標識したN−グリカン由来の電気泳動図との比較を通じて同定することができる(Man9−5GlcNAc2)。
【0122】
図8においては、Man
8GlcNAc
2および一リン酸化糖ManP−Man
8GlcNAc
2を含有するN−グリカン調製物(パネルB)の、HjManおよびAsManによる加水分解についてのDSA−FACE電気泳動図を示す。両α−1,2−マンノシダーゼによって、Man
8GlcNAc
2はMan
5GlcNAc
2へと加水分解されたのに対し、ManP−Man
8GlcNAc
2の加水分解についての差が観察された。HjManは、2つのα−1,2結合型マンノースを放出した可能性が高い(パネルCにおけるManP−Man
6GlcNAc
2)。AsMan処理後に現れるわずかに迅速に泳動されるピークは、3つのα−1,2結合型マンノースの放出、したがって、ManP−Man
5GlcNAc
2の形成を示唆した(パネルD)。新たに形成された産物は、仔ウシ腸ホスファターゼ(CIP)による処理後に消失せず、ホスフェートがなおもマンノースでキャップ形成されていることが確認された(パネルEおよびパネルF)。
【0123】
パネルEにおける迅速に泳動するピークがManP−Man6GlcNAc2でありかつパネルDにおける該ピークがManP−Man
5GlcNAc
2であることを確認するために(
図8)、HjManおよびAsManによる実験をMNN4糖に関して反復し、まず該糖をホスフェートのキャップを外す酵素CcMan5(P−Man
8GlcNAc
2を生じる、
図8におけるパネルC)で処理した。α−1,2−マンノシダーゼとともに37℃で20分間、40分間、および180分間インキュベートした後、この反応混合物を100℃で3分間加熱することによって、この反応を停止させた。次に、CIP処理を実施した。HjManによる結果を
図9Aに示す。HjManは、P−Man
8GlcNAc
2をP−Man
7GlcNAc
2およびP−Man
6GlcNAc
2へと逐次的に切断した(パネルD〜パネルF)。AsManは、3つのα−1,2結合型マンノースを逐次的に除去して、P−Man
7GlcNAc
2、P−Man
6GlcNAc
2、およびP−Man
5GlcNAc
2の形成を結果として生じた。
図9Bを参照されたい。
【0124】
上記の結果(
図9Aおよび
図9B)は、MNN4グリカンのα−1,2−マンノシダーゼによる一晩の消化(
図8)とともに、α−1,6アーム(N−グリカンの右側のアーム(
図6Aおよび
図6Bにおいて概略的に示されている))のみがリン酸化されているかどうかを説明し得るに過ぎない。基礎をなすマンノースがリン酸化される場合、A.satoi α−1,2−マンノシダーゼのみが、末端α−1,2−マンノースを加水分解できる(リン酸残基は、マンノース残基でキャップ形成されており、またはキャップ形成されていない)。HjManのみが、2つのα−1,2結合型マンノースを非リン酸化型α−1,3アームから除去する。
【0125】
基礎をなすマンノースがリン酸化されている場合にAsManが末端α−1,2−マンノースを除去できかつHjManは除去できないという事実も、一リン酸化したManP−Man
8GlcNAc
2および二リン酸化した(ManP)
2−Man
8GlcNAc
2から構成されるMNN4調製物が使用される場合に確認される(
図10、パネルC)。AsManは、パネルDにおける迅速に泳動される2つの特別のピーク((ManP)
2−Man
7GlcNAc
2および(ManP)
2−Man
6GlcNAc
2の可能性が高い)の出現から観察されたように、(ManP)
2−Man
8GlcNAc
2を加水分解することができる。HjManは、(ManP)
2−Man
8GlcNAc
2を加水分解しなかった(
図10、パネルE)。
【0126】
実施例6
(Yarrowia lypolytica株において発現する高次のリン酸化N−グリカンを有する糖タンパク質のGH47α−マンノシダーゼによる脱マンノシル化)
ヒトリソソームα−グルコシダーゼhuGAAをY.lipolytica株OXYY1589において発現させて、高次のリン酸化N−グリカン構造を有する糖タンパク質を得た。huGAAを実施例3に記載したとおり精製した。
【0127】
HjManおよびAsManを2mM CaCl
2を有する100mM酢酸アンモニウム(pH5.0)中のhuGAAの溶液に添加した。この反応混合物を室温で一晩インキュベートした。本質的にはLaroy W.ら、Nature Protocols、1:397〜405(2006)に記載されるとおり、N−グリカンをPNGaseFで放出させ、APTSで標識した後、DSA−FACEにおいて分析した。α−1,2−マンノシダーゼ処理の前および後のN−グリカン特性を
図11に示す。精製されたhuGAAから放出されたN−グリカン混合物は、主としてManP−Man
8GlcNAc2および(ManP)
2−Man
8GlcNAc
2から構成されていた(
図11、パネルBおよびパネルE)。ManP−Man
8GlcNAc
2よりのわずかに迅速に泳動されるピークは、ManP−Man
7GlcNAc
2と定めることができた。非常に微量のMan
8GlcNAc
2およびMan
7GlcNAc
2しか存在しなかった。huGAAのHjManとのインキュベーション後、ManP−Man
8GlcNAc
2からManP−Man
7GlcNAc
2およびManP−Man
6GlcNAc
2への転換を観察したのに対し、(ManP)
2−Man
8GlcNAc
2は加水分解されなかった(
図11、パネルC)。パネルDにおける電気泳動図は、huGAAのAsManによる処理の後に得られた糖を示している。AsManは、(ManP)
2−Man
8GlcNAc
2を加水分解し、それとともに電気泳動図の左側には(ManP)
2−Man
7GlcNAc
2および(ManP)
2−Man
6GlcNAc
2を、ManP−Man
7GlcNAc
2およびManP−Man
6GlcNAc
2の隣に形成した。ManP−Man
5GlcNAc
2は、ManP−Man
8GlcNAc
2の加水分解からも形成された。これらのデータは、α−1,6アームがManP−Man
8GlcNAc
2構造においてリン酸化されること、および基礎をなすマンノースがリン酸化される場合に、糖タンパク質レベルにおいて、AsManが末端α−1,2−マンノースを加水分解することができることを確認している。HjMan活性は、中性Man8GlcNAc2 N−グリカンからのα−1,2結合型マンノースの放出、またはManP−Man
8GlcNAc
2の非リン酸化型α−1,3アームにおける2つのα−1,2結合型マンノースの除去に限定されていた。
【0128】
実施例7
(APTS標識したリン酸化N−グリカンのGH92α−マンノシダーゼによる脱マンノシル化)
CcMan4およびCcMan5を大腸菌(E.coli)において発現させ、異なる細胞画分を実施例4に記載したとおり単離した。ペリプラズム溶液の活性をMNN4過剰発現株に由来する(APTS)標識したN−グリカンに関して試験し、DSA−FACEにおいて分析した(
図12)。N−グリカンを、2mM CaCl
2を有する10mM HEPES緩衝液(pH7.0)におけるCcMan4、CcMan5とともに、または両酵素の混合物とともに室温で一晩インキュベートした。AsManを使用する対照実験が含まれ、実施例5に記載したとおり実施した。
図12Aに示す実験においては、主としてMan
8GlcNAc
2(M8)および一リン酸化したManP−Man
8GlcNAc
2(MP−M8)を含有するMNN4画分を使用した(パネルB)。CcMan4は、Man
8GlcNAc
2およびManP−Man
8GlcNAc
2をそれぞれMan
5GlcNAc
2およびManP−Man
5GlcNAc
2に加水分解した(パネルC)。AsManを使用して同じ反応産物を得た(パネルDおよび実施例5)。CcMan5は、2つのα−1,2マンノースの間のグリコシド結合を加水分解しなかった(したがって、Man
8GlcNAc
2ピークのシフトなし)が、ManP−Man
8GlcNAc
2におけるホスフェートのキャップを外し、迅速に泳動されるP−Man
8GlcNAc
2のピークを生じた(パネルE)。この反応混合物のCIPとのインキュベーション後、Man
8GlcNAc
2に対応するピークのみを観察している(パネルF)。CcMan4およびCcMan5の混合物は、Man
8GlcNAc
2およびManP−Man
8GlcNAc
2をMan
5GlcNAc
2およびP−Man
5GlcNAc
2にそれぞれ加水分解した(パネルG)。それゆえ、Man
5GlcNAc
2に対応するピークのみがCIP処理後に観察される(パネルH)。CcMan4はまた、AsManを使用しても観察されたように(パネルKおよび実施例5)、二リン酸化した(ManP)
2−Man
8GlcNAc
2を(ManP)
2−Man
6GlcNAc
2に加水分解した(
図12B、パネルJ)。CcMan4およびCcMan5の混合物は、P2−Man
6GlcNAc
2およびP−Man
5GlcNAc
2を生成した(パネルN)。
【0129】
CcMan4はしたがって、基礎をなすマンノースがリン酸化される場合に末端α−1,2−マンノースを加水分解することもできるα−1,2−マンノシダーゼである。CcMan4は、ホスフェートのキャップを外す酵素であるCcMan5と併用することができる。
【0130】
実施例8
(Yarrowia lypolytica株において発現する高次のリン酸化N−グリカンを有する糖タンパク質のGH92α−マンノシダーゼによる脱マンノシル化)
CcMan4およびCcMan5をY.lipolyticaにおいて発現するhuGAAとともにインキュベートした。この分析を実施例6に記載したとおり実施した。2mM CaCl
2を有する100mM HEPES緩衝液(pH7.0)をCcMan4およびCcMan5の両方について室温での一晩のアッセイにおいて使用した。DSA−FACE分析を
図13に示す。精製されたhuGAAから放出されたN−グリカン混合物は主として、ManP−Man
8GlcNAc
2および(ManP)
2−Man
8GlcNAc
2から構成された(パネルB)。ManP−Man
8GlcNAc
2よりもわずかに迅速に泳動されるピークは、ManP−Man
7GlcNAc
2と定めることができた。
【0131】
CcMan4は、huGAA糖タンパク質を脱マンノシル化した。電気泳動図(パネルC)においては、(ManP)
2−Man
6GlcNAc
2、ManP−Man
5GlcNAc
2、およびManP−Man
6GlcNAc
2に対応するピークが観察された。CcMan5との併用においては、ホスフェートがキャップを外された産物P2−Man
6GlcNAc
2、P−Man
5GlcNAc
2、およびP−Man
6GlcNAc
2をパネルEに示すとおり形成した。
【0132】
実施例9
(Yarrowia lypolytica株において発現する高次のリン酸化N−グリカンを有する糖タンパク質のGH47α−マンノシダーゼによる脱マンノシル化に関する追加の例)
小胞体ManIおよびゴルジ体ManIAは、GH47ファミリーに属する2クラスのIα−1,2−マンノシダーゼである。組換え発現した小胞体ManIおよびゴルジ体ManIAを室温で一晩、Y. lipolyticaにおいて発現したhuGAAとともにインキュベートした。この分析を実施例6および
図10に記載したとおり実施した。2mM CaCl
2を有する100mM HEPES緩衝液(pH7.0)を小胞体ManIについて使用したのに対し、ゴルジ体ManIAとのインキュベーションは、2mM CaCl
2を有する100mM MES緩衝液(pH6.0)において実施する。DSA−FACE分析を
図14に示す。
【0133】
小胞体ManIおよびゴルジ体ManIAの両方は、huGAA糖タンパク質を脱マンノシル化することができたが、該両方の活性は、ManP−Man
8GlcNAc
2のManP−Man
6GlcNAc
2への加水分解に限定された(それぞれ、パネルDおよびE)。この結果は、また、H.Jecorina由来のGH47α−1,2−マンノシダーゼ(HjMan、
図11、パネルC)を使用して得られたのに対し、A.satoi由来のGH47α−1,2−マンノシダーゼ(AsMan、
図11、パネルF)およびGH92 CcMan4(
図12、パネルC)は、(ManP)
2−Man
8GlcNAc
2およびManP−Man
8GlcNAc
2を(ManP)
2−Man
6GlcNAc
2およびManP−Man
5GlcNAc
2へそれぞれ刈り込んだ。
【0134】
(他の実施形態)
本発明は、その詳細な説明とともに記載されてきたが、上の記載は、本発明の範囲を明示するよう意図されており、かつ該範囲を限定するものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される。他の態様、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲内である。