(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非熱硬化性ポリ(アミノアミド)−エピハロヒドリン(PAE)樹脂とポリビニルアルコール共重合体とを含むクレーピング接着剤であって、前記ポリビニルアルコール共重合体と前記PAE樹脂との重量比は、3:1から7:1であり、
前記ポリビニルアルコール共重合体は、
酢酸ビニル繰り返し単位と、
カルボキシラート繰り返し単位、スルホナート繰り返し単位、およびこれらの組み合わせより選ばれる官能性繰り返し単位と、を含み、
前記ポリビニルアルコール共重合体は、70から85モル%の加水分解度を有することを特徴とするクレーピング接着剤。
前記ポリビニルアルコール共重合体は、カルボキシル化ポリビニルアルコール共重合体又はスルホン化(sulfonated acid)ポリビニルアルコール共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載のクレーピング接着剤。
前記乾燥ウェブは、クレーピングブレードを用いて前記乾燥シリンダ表面から外される又は前記乾燥シリンダ表面から剥がされることを特徴とする、請求項6または請求項7のいずれか1項に記載の吸収シートの製造法。
前記乾燥ウェブは、前記乾燥シリンダ表面から外される際に、少なくとも90%の乾燥度であることを特徴とする、請求項6または請求項7のいずれか1項に記載の吸収シートの製造法。
前記柔軟剤は、前記ウェブ中の製紙用繊維メートルトン(トン)当たり、0.45から13.62kg(1から30ポンド)の添加率で前記ウェブに塗布されることを特徴とする、請求項6または請求項7のいずれか1項に記載の吸収シートの製造法。
前記クレーピング接着剤は、製紙用繊維メートルトン(トン)当たり0.91kg(2ポンド)から製紙用繊維メートルトン(トン)当たり6.81kg(15ポンド)に相当する割合で前記ヤンキードライヤの加熱した乾燥シリンダに塗布されることを特徴とする、請求項6または請求項7のいずれか1項に記載の吸収シートの製造法。
前記ウェブは、前記転送ニップに供給される前に、30%から90%までの濃度に乾燥されることを特徴とする、請求項6または請求項7のいずれか1項に記載の吸収シートの製造法。
前記ウェブは、前記転送ニップに供給される前に、通気乾燥、衝突空気乾燥、又はウェットプレスによって部分乾燥されることを特徴とする、請求項6または請求項7のいずれか1項に記載の吸収シートの製造法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
多くの実施の形態を参照しながら本発明を以下で述べる。これらの検討は説明のみを目的としている。添付の請求項に示す本発明の精神および範囲内にある特定の実施例に対する変形は、当業者には容易に理解されよう。
【0020】
本件で使用する用語には、次に示す例示的な定義に一致する、その通常の意味が与えられている。%は、指示に従って、重量パーセントまたはmol%を意味する。指示のない場合、%は重量パーセントを指す。但し、加水分解度は、ヒドロキシル繰り返し単位に加水分解されたポリ酢酸ビニル単位のmol%を指す。
【0021】
柔軟剤やクレーピング接着剤などの水性組成物に関して、「追加(add-on)」、重量比等は、乾燥ベースでの成分を指す。例えば、繊維メートルトン(トン)当たりの柔軟剤またはクレーピング接着剤の使用量とは、活性成分と絶対乾燥の繊維のみの重量を指す。接着剤および/または柔軟剤の水性組成物は、70〜95%以上が水である。
【0022】
別に指定のない限り、「坪量」、BWT、bwtなどは、279平方メートル(3000平方フィート)リームの製品の重量を指す。同様に、「リーム(ream)」は、別に指定(例えば、グラム/平方メートル(gsm))のない限り、279平方メートル(3000平方フィート)を意味する。濃度(consistency)とは、例えば、絶対乾燥ベースで計算した、発生期ウェブの固体の%を指す。「空気乾燥」は、慣例によりパルプでは約10%まで、紙では約6%までの残留水分を含んでいることを意味する。50%の水と50%の絶対乾燥パルプとを含む発生期ウェブの濃度は50%である。
【0023】
用語「セルロース系」、「セルロース系シート」等は、主成分としてセルロースを含む製紙用繊維を加えた、全ての製品を含むものである。「製紙用繊維」としては、バージンパルプまたはリサイクル(二次)セルロース系繊維、あるいはセルロース系繊維を含む繊維混合物が挙げられる。本発明のウェブの製造に適した繊維としては、非木材繊維と木材繊維が挙げられる。非木材繊維は、例えば、綿繊維または綿派生物、マニラ麻、ケナフ、サバイグラス(sabai grass)、亜麻、アフリカハネガヤ、麦わら、黄麻(jute hemp)、バガス、トウワタ綿毛繊維、パイナップル葉繊維などであり、木材繊維は、落葉樹および針葉樹から得られるものなど、例えば、針葉樹繊維(北方および南方針葉樹クラフト繊維など)、広葉樹繊維(ユーカリ、カエデ、カバノキ、アスペンなど)である。製紙用繊維は、硫酸塩、亜硫酸塩、多硫化物、ソーダパルプ化など、当業者に良く知られる数多くの化学パルプ化法のいずれかによって、原材料から取り出すことができる。所望であれば、塩素、二酸化塩素、酸素、アルカリ性過酸化物(alkaline peroxide)などを用いた化学的手段でパルプを漂白しても良い。本発明の製品は、通常の繊維(バージンパルプ由来のものでも、リサイクル資源由来のものでも良い)と、非常に粗製のリグニンの多い管状繊維、メカニカルパルプ(漂白したケミカルサーモメカニカルパルプ(BCTMP)など)との混合物を含むものでも良い。「完成紙料(furnishes)」およびその類語は、紙製品を作るための、製紙用繊維、必要に応じて湿潤強度樹脂、剥離剤などを含む水性組成物を指す。リサイクル繊維は、一般に50重量%以上が広葉樹繊維であり、75%〜80%以上が広葉樹繊維であることもある。
【0024】
本件でいう、「ウェブまたは完成紙料を圧縮脱水する」とは、脱水フェルト上でウェットプレスして、例えば、一部の実施の形態では、プレスロールとプレスシューとの間のニップ内で、ウェブが抄紙フェルトと接しているウェブ表面全体に連続的に機械的圧力をかけて、機械的に脱水することを指す。用語「圧縮脱水」は、例えば、Trokhanによる米国特許第4,529,480号、および、Farringtonらによる米国特許第5,607,551号の場合のように、主に熱的手段によってウェブの初期の脱水を行う工程と区別するために用いる。つまり、ウェブの圧縮脱水とは、例えば、30%以下程度の濃度の発生期ウェブに圧力をかけてウェブから水を除く、および/または、ウェブに圧力をかけてその濃度を約15%以上高くする、即ち、濃度を、例えば、30%から45%に上げることをいう。
【0025】
「クレーピングファブリック」、「転送ファブリック」等の用語は、本発明の工程の実施に適した模様の付いた布またはベルト(どちらを用いても良い)を指す。「ファブリック」には、その内容を本件に引用して援用する、Superらによる米国特許出願公開第2010/0186913号に記載されているような、一体構造の、または層を持つポリマベルトが含まれる。
【0026】
「ファブリック側」等の用語は、クレーピングファブリックに接しているウェブの側を指す。「乾燥機側」または「ヤンキー側」は、乾燥シリンダに接しているウェブの側、一般にウェブのファブリック側とは反対の側である。
【0027】
PVOH樹脂の特性粘度(characteristic viscosity)とは、その物質の4重量%水溶液の20℃での粘度を指す。
【0028】
「ファブリッククレープ比」は、クレーピングファブリックとフォーミングワイヤとの速度差を表しており、一般に、ファブリッククレープ直前のウェブ速度と、ファブリッククレープ直後のウェブ速度との比として計算する。フォーミングワイヤと転送面は一般に(但し、必ずしもではない)同じ速度で運転される。
ファブリッククレープ比 = 転送シリンダ速度 ÷ クレーピングファブリック速度
【0029】
ファブリッククレープは、次のように計算した百分率でも表すことができる。
ファブリッククレープ = [ファブリッククレープ比−1]×100%
【0030】
表面速度228.6mpm(750fpm)の転送シリンダから、速度152.4mpm(500fpm)のファブリックへクレープされたウェブは、1.5のファブリッククレープ比と、50%のファブリッククレープを持つ。リールクレープにおいて、リールクレープ比は、ヤンキー速度をリール速度で除して算出する。リールクレープを百分率で表すには、リールクレープ比から1を引き、その結果に100%を乗じる。
【0031】
総クレープ比は、リール速度に対するフォーミングワイヤ速度の比として計算し、%総クレープは次の式で求める。
総クレープ = [総クレープ比−1]×100%
【0032】
フォーミングワイヤ速度が609.6mpm(2000fpm)、リール速度が304.8mpm(1000fpm)の工程では、ラインまたは総クレープ比は2、総クレープは100%である。
【0033】
十分にリールクレープせずに、引っ張ってヤンキー乾燥シリンダから外した製品は、剥離したものとする。一般に、剥離した製品のリールクレープは1%未満である。
【0034】
PAE/ポリビニルアルコール共重合体クレーピング接着剤は、単一の組成物として塗布しても、その成分毎に塗布しても良い。より具体的には、ポリアミド樹脂を、ポリビニルアルコール(PVOH)、調整剤、他の必要に応じた成分とは別に塗布しても良い。
【0036】
後に述べるように、空隙容量および/または空隙容量比は、シートに無極性POROFIL(登録商標)液を染み込ませ、吸収された液体の量を測定して求める。吸収された液体の体積は、シート構造内の空隙容量に等しい。後に述べるように、重量増加百分率(PWI)は、シート構造内の繊維g当たりに吸収された液体のg数×100で表される。より詳細には、1枚重ねのシート試料それぞれに対し、8枚を選んで2.54cm×2.54cm(1インチ×1インチ)の正方形(流れ方向に2.54cm、横方向に2.54cm)(流れ方向に1インチ、横方向に1インチ)に切る。複数枚重ねの製品試料では、それぞれの層を別々のものとして測定する。複数枚重ねの試料は個々の1枚の層に分け、それぞれの層の位置からの8枚を試験に用いる。各試験片の乾燥重量を直近の0.0001gまで量り、記録する。約1.93g/cm
3の比重を持つPOROFIL(登録商標)液(品番9902458、英国、ベッズ、ルートン、ノースウェル・ドライブ、Coulter Electronics Ltd.製)を入れた皿に試験片を入れる。10秒後、ピンセットで試験片の一角の端を僅かに(1〜2mmまで)掴み、液体から取り出す。その角を上にして試験片を30秒間保ち、余分の液体を滴らせる。最後の滴を余りなく除くため、試験片の下端を4番濾紙(英国、メイドストン、Whatman Lt.)に軽く当てる(0.5秒以下の接触)。試験片の重さをすぐ(10秒以内)に量り、直近の0.0001gまで記録する。各試験片のPWI(POROFIL(登録商標)液(g)/繊維(g)で表示)は、次のように計算する。
PWI = [(W
2−W
1)/W
1]×100
式中、W
1は、試験片の乾燥重量(g)
W
2は、試験片の湿重量(g)
【0037】
8個全ての試験片それぞれのPWIを上記のようにして求め、8個の試験片の平均をその試料のPWIとする。
【0038】
空隙容量比は、PWIを1.9(液体の密度)で割って算出し、その比を百分率で示す。これに対し、空隙容量(g/g)は単に重量増加比、即ち、100で割ったPWIである。
【0039】
「湿潤粘着性」とは、一般に、ウェットウェブを乾燥するため、乾燥シリンダ上の接着剤塗膜がウェブをシリンダに付着させる能力を指す。
【0040】
本発明で用いられるポリアミド樹脂は、当該技術で公知のポリ(アミノアミド)−エピクロロヒドリン(PAE)樹脂である。PAE樹脂は、例えば、その内容を全て本件に引用して援用する、H. Espy著、“Wet-Strength Resins and Their Applications”,第2章、標題“Alkaline-Curing Polymeric Amine-Epichlorohydrin Resins”, (L. Chan編, TAPPI Press, 1994) に述べられている。本発明での使用に望ましいPAE樹脂としては、エピハロヒドリン、望ましくはエピクロロヒドリンと、水溶性ポリアミドとの水溶性ポリマ反応生成物が挙げられる。水溶性ポリアミドは、ポリアルキレンポリアミンと、約3〜約10個の炭素原子を含む飽和脂肪族二塩基カルボン酸から誘導した、第二級アミン基を持つものである。本発明に有用なPAE樹脂としては、反応性が高く部分架橋したPAE樹脂、反応性の低い部分架橋樹脂、またある望ましい実施の形態では、完全に架橋したPAE樹脂が挙げられる。完全および部分架橋PAEは、その内容を本件に引用して援用する、米国特許出願第2006/0207736号に記載されている。部分架橋または完全架橋のいずれでも、架橋の程度は反応条件によって制御可能である。完全架橋ポリマでは、エピハロヒドリンを分割しながらベースポリマに加え、各段階において粘度が終点に達して(burn-out)それ以上上がらなくなるまで高温で反応させる。次に、ポリマを酸性化し、二官能性エピハロヒドリンをプレポリマと完全に反応させる。加えるエピハロヒドリンの量を慎重に調節して、正確な粘度の終点を決める。部分架橋では、少し過剰のエピハロヒドリンを加え(完全架橋のものに比べて、分割して、または一度に)、反応が完全に終了する前に、所定の粘度終点まで反応させる。酸を加えて粘度の上昇を所定の終点で止める。これにより、エピハロヒドリンは完全に架橋せず、少量のクロロヒドリンペンダント残基が残る。
【0041】
架橋度の差は、全およびイオン性塩化物滴定(total and ionic chloride titrations)で判別できる。
13C NMRは、部分架橋樹脂中に存在するクロロヒドリンペンダント基を検出できる。更に、部分架橋材料の粘度は加熱によって上げることができ、また貯蔵の間に変化することがあるが、完全架橋材料は時間を経てもずっと安定である。
【0042】
一部の実施の形態では熱硬化性PAE樹脂を用いるが、別の実施の形態では非熱硬化性PAE樹脂を使用する。
【0043】
非熱硬化性カチオン性ポリアミド樹脂の非包括的リストは、Espyらによる米国特許第5,338,807号に見ることができ、その内容は本件に引用して援用する。非熱硬化性樹脂は、ジカルボン酸とメチルビス(3−アミノプロピル)アミンとのポリアミドを、水溶液中でエピクロロヒドリンと直接反応させて合成しても良い。カルボン酸としては、約2〜12個の炭素原子を含む飽和および不飽和ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸(pilemic)、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、テレフタル酸が挙げられる。アジピン酸とグルタル酸が望ましく、アジピン酸が最も望ましい。脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸(フタル酸など)のエステル、更に、このようなジカルボン酸またはエステルの組み合わせを用いても良い。これらの樹脂は一般に、多くの場合、ポリアミド/エピハロヒドリンのモル比が、1:0.33から1:0.1であることを特徴とする。
【0044】
本発明で使用する熱硬化性ポリアミド樹脂は、エピハロヒドリン樹脂と、第二級アミンまたは第三級アミンを含むポリアミドとの反応生成物から作ることができる。このような樹脂の調製では、まず、必要に応じて水溶液中、水溶性ポリアミドの製造に適した条件下で二塩基カルボン酸をポリアルキレンポリアミンと反応させる。樹脂の調製は、水溶性アミドをエピハロヒドリン、特に、エピクロロヒドリンと反応させて水溶性熱硬化性樹脂を生成して完了する。
【0045】
水溶性で熱硬化性のポリアミド−エピハロヒドリン樹脂の調製は、Kiemによる米国特許第2,926,116号、米国特許第3,058,873号、米国特許第3,772,076号に記載されており、それらの内容は全て本件に引用して援用する。ポリアミドの第二級アミン基は、望ましくは、ポリアルキレンポリアミン、例えば、ポリエチレンポリアミン、ポリプロピレンポリアミン、ポリブチレンポリアミン等から誘導し、様々な樹脂において、ジエチレントリアミン(DETA)が望ましい。
【0046】
本発明で使用するPAE樹脂の例としては、(1)Process Applications Ltd.製の、ULTRACREPE HT(但し、これに限定しない)、(2)Nalco Chemical Co.製の、Nalco 64551(但し、これに限定しない)、(3)Ashland, Inc.製の、CREPETROL 1145、CREPETROL 3557(但し、これらに限定しない)が挙げられる。
【0047】
望ましいPAE樹脂のひとつ、Nalco 64551(登録商標)(完全に架橋した樹脂)は、表1に示す分子量特性(2−ビニルピリジン標準を用いて、GPCで測定)を持つ。
【表1】
【0048】
文中で用いる「ポリビニルアルコール樹脂」、「PVOH樹脂」、「PVOHポリマ」等の用語は、一般に、当該技術で良く知られるけん化によってポリ酢酸ビニルホモポリマまたは共重合体から調製するポリビニルアルコール樹脂を意味する。PVOH樹脂は、酢酸ビニルのホモポリマからも、酢酸ビニルの共重合体からも誘導される。
【0049】
一般に、ポリビニルアルコール樹脂は、酢酸ビニルホモポリマ、あるいは、酢酸ビニルと適当なコモノマおよび/またはその混合物との共重合体を材料とする。本発明で使用するPVOH樹脂は主に(50mol%より多い)酢酸ビニルモノマを材料とし、これを重合させた後、加水分解してポリビニルアルコールとする。望ましくは、樹脂は、酢酸ビニルが75mol%より多いものから誘導する。酢酸ビニルと共に、約0.1から約50mol%のコモノマが存在する。Finchら編、“Polyvinyl Alcohol Developments”(Wiley 1992), pp. 84、その他(and following)を参照のこと。コモノマは、主鎖部分の酢酸ビニルにグラフトさせ、あるいはこれと共重合させても良い。同様に、所望ならば、ホモポリマを共重合体と混合しても良い。一般に、アルコール溶液中でポリ酢酸ビニルをポリビニルアルコールに変換、即ち、加水分解(アルコーリシスとも呼ばれる)により−OCOCH
3基を−OH基に置換することができる。加水分解度とは、樹脂の、加水分解された酢酸ビニルモノマ含量のモル%を指す。
【0050】
ポリ酢酸ビニル−ポリビニルアルコールポリマおよび共重合体の製造法は、当業者には公知である。米国特許第1,676,156号、米国特許第1,971,951号、米国特許第2,109,883号、更に、様々な参考文献が、このような種類のポリマとその調製法について述べている。これらのポリマは、当該技術で知られているように、適当なコモノマを適度に組み込むことで官能化しても良い。特に、参考文献は、Ham著,"Vinyl Polymerization,"第1巻,第1部, Marcel Dekker, Inc., (1967) および、 Sorenson および Campbell著, "Preparative Methods of Polymer Chemistry," Interscience Publishers, Inc., New York (1961) である。スルホン酸官能化単位としては、望ましくは、2−メチルアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)および/またはそのナトリウム塩(NaAMPS)モノマが挙げられる。カルボン酸官能化単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等、およびそれらの塩から誘導した共重合体繰り返し単位が挙げられる。
【0051】
「カルボキシラート繰り返し単位」、「スルホナート繰り返し単位」等の用語は、それぞれ、カルボン酸基およびスルホン酸基を指し、これらの基の塩、典型的にナトリウム塩等が含まれる。
【0052】
本発明は、乾燥シリンダを使用し、そこにウェブを転送し、クレーピング接着剤で付着させる、適当な装置で実行することができる。適当な装置のひとつは、その内容を本件に引用して援用する、Edwardsらによる米国特許第7,704,349号に見られる。添付の
図1に見られるようなツインワイヤ抄紙機(twin wire former)を用いる場合、脱水フェルトへの転送に適した固体含量になるまで、真空ボックスとスチームシュラウドで発生期ウェブの状態を調整する。減圧を加えて、発生期ウェブをフェルトへ転送し易くしても良い。クレセント抄紙機では、フォーミングファブリックとフェルトの間で発生期ウェブを形成するため、この工程は不要である。後に述べるように、更にファブリッククレープした後、約35kN/mから約70kN/m(200から約400ポンド/直線インチ(PLI))の圧力で、ウェブをヤンキードライヤへパターンプレスしても良い。
【0053】
クレーピング接着剤組成物での使用に適した様々な添加剤は、当業者には一般に良く知られている。使用する添加剤の例としては、調整剤、剥離剤、粘着賦与剤、界面活性剤、分散剤、塩類、酸類、塩基類、油類、鉱物油、展着剤、ワックス類、防食剤が挙げられる。
【0054】
調整剤は一般に、接着剤薄膜の硬化を防ぐ。必要に応じて使用するクレーピング調整剤としては、第四級アンモニウム錯体、ポリエチレングリコール類などが挙げられる。調整剤の非制限的な例としては、グリコール(例えば、エチレングリコールまたはプロピレングリコール)およびポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、単糖類、またはオリゴ糖類)が挙げられる(但し、これらに限定しない)。市販品として入手可能な調整剤としては、Evonik Industries AG製、または、ペンシルベニア州ワシントンクロッシング所在のProcess Applications, Ltd.製のものが挙げられる。Evonik Industries AG製のクレーピング調整剤としては、VARISOFT(登録商標)222LM、VARISOFT(登録商標)222、VARISOFT(登録商標)110、VARISOFT(登録商標)222LT、VARISOFT(登録商標)110 DEG、VARISOFT(登録商標)238が挙げられる(但し、これらに限定しない)。適当な調整剤のひとつは、Process Applications, Ltd.製のFDA PLUS GBである。
【0055】
ヤンキードライヤのクレーピング表面における硬い薄膜の堆積を少なくするため、組成物にリン酸塩を加えても良い。リン酸塩の添加は接着剤組成物の耐食性を高める効果もあり、また湿潤剤としての効果もあると考えられる。リン酸塩添加剤を用いる場合、その量は通常、接着剤組成物の総固体重量の約5から約15重量%の範囲と考えられる。展着剤として有効なリン酸塩は、リン酸一アンモニウムである。
【化1】
【0056】
ウェブを形成した後、その上に噴霧する柔軟剤は公知である。このような材料としては、部分中和したアミンから誘導したアミドアミン塩が挙げられる。柔軟剤は、米国特許第4,720,383号、更に、Evans, Chemistry and Industry, 5 July 1969, pp. 893-903、Egan, J.Am. Oil Chemist's Soc., Vol. 55 (1978), pp. 118-121、Trivediら, J.Am.Oil Chemist's Soc., June 1981, pp. 754-756 に開示されており、その内容は本件に引用して援用する。柔軟剤は多くの場合、単一化合物ではなく、複合混合物としてのみ市販されている。以下では主要な種類に絞って論じるが、実施においては市販品として入手可能な混合物が一般的に用いられることを理解すべきである。
【0057】
Hercules TQ 218またはその同等品は適当な柔軟剤材料であり、これはオレイン酸とジエチレントリアミンとの縮合生成物のアルキル化により生成する。不足量のアルキル化剤(例えば、ジエチル硫酸)と、1段階だけのアルキル化工程を用い、次に、pHを調整して非エチル化種をプロトン化する合成条件では、カチオン性エチル化種とカチオン性非エチル化種とから成る混合物が生じる。生成したアミドアミンの一部(例えば、約10%)が環化してイミダゾリン化合物となる。この材料のイミダゾリン部分だけが第四級アンモニウム化合物であるため、この組成物は全体としてpHに敏感である。このため、この種の化学物質を用いて本発明を実施する際には、ヘッドボックス内のpHを約6から8、より望ましくは約6から約7、最も望ましくは約6.5から約7としなければならない。
【0058】
ジアルキルジメチル第四級アンモニウム塩などの第四級アンモニウム化合物も、特に、アルキル基が約10から24個の炭素原子を含む場合には適している。これらの化合物には、pHにあまり敏感ではないという利点がある。
【0059】
生分解性柔軟剤も使用できる。代表的な生分解性のカチオン性柔軟剤/剥離剤は、米国特許第5,312,522号、米国特許第5,415,737号、米国特許第5,262,007号、米国特許第5,264,082号、米国特許第5,223,096号に開示されており、その内容は全て本件に引用して援用する。この化合物は、第四級アンモニア化合物の生分解性ジエステル類、第四級化アミン−エステル類、および第四級アンモニウムクロリドで官能化した植物油系生分解性エステル類であり、ジエステルの、ジエルシルジメチルアンモニウムクロリドが代表的な生分解性柔軟剤である。
【0060】
一部の実施の形態において、柔軟剤組成物は、第四級アミン成分と非イオン界面活性剤とを含む。
【0061】
イオン対柔軟剤も使用できる。その内容を本件に引用して援用する、Oriaranらによる米国特許第6,245,197号を参照のこと。望ましいイオン対柔軟剤のひとつは、2%のアニオン性シリコーン(Lambent Syngard(登録商標)CPI)と、98%のイミダゾリニウム/PEGエステル混合物を含むものである。分析結果を表2に示す。
【表2】
1Im+は、メチルジオレイルイミダゾリニウムメチル硫酸である。Imは、ジオレイルイミダゾリンである。他のアミドは、直鎖ジオレイルジエチレントリアミンアミンとして計算する。PEGは、ポリエチレングリコールである。PEGジエステルは、PEG−400ジオレイン酸エステルとして計算する。PEGエーテルは、PEG−400トリデカノールとして計算する。PGは、プロピレングリコールである。
【0062】
ウェブをヤンキードライヤへ転送した後、ヤンキーシリンダを加熱するための加圧蒸気と高速エアフードを用いて、固体含量が約95%程度になるまで、例えば、場合により、98%以上まで乾燥する。ドクターブレードを用いてウェブをクレープし、リールに巻き取る。クレーピングドクターおよびクリーニングドクターでの線荷重は、例えば、約8.76kN/m(50ポンド/直線インチ(PLI))である。
【0063】
図1は、従来のツインワイヤ成形部12、フェルト走行部14、シュープレス部16、クレーピングファブリック18、およびヤンキードライヤ20を備えた、本発明の実施に適した抄紙機10の概略図である。成形部12には、複数のロール26、28、30、32、34、36と、フォーミングロール38で支えられた1対のフォーミングファブリック22、24がある。ヘッドボックス40は、フォーミングロール38およびロール26とファブリックの間のニップ42へ完成紙料を供給する。完成紙料は発生期ウェブ44となり、これを、例えば、真空ボックス46を用いて減圧をかけて、ファブリック上で脱水する。
【0064】
発生期ウェブは、複数のロール50、52、54、55で支えられた抄紙フェルト48へ進む。フェルトはシュープレスロール56に接触している。フェルトへ転送された時のウェブの濃度は低い。減圧を用いて転送し易くしても良く、例えばロール50を、所望ならば真空ロールとし、あるいは当該技術で公知のピックアップまたは真空シューとしても良い。ウェブがシュープレスロール56に達し、シュープレスロール56と転送ロール60との間のニップ58に入るときのウェブの濃度は10〜25%、望ましくは20〜25%程度である。転送ロール60は、所望ならば加熱したロールであっても良い。シュープレスロールの代わりに、ロール56を従来の吸引圧力ロールとしても良い。シュープレスを用いる場合、完成紙料からの水はシュープレスニップ内でフェルトへ押し出されるため、ロール54は、フェルトがシュープレスニップに入る前にフェルトから水を除去するのに効果的な真空ロールであることが望ましく、また推奨される。当業者であれば略図から分かるように、いずれの場合も、方向転換の際にウェブをフェルトにしっかり接触させておくため、54で真空ロールを使用することが一般に望ましい。
【0065】
ウェブ44は、圧力シュー62の力を借りて、ニップ58内でフェルトへウェットプレスされる。こうしてウェブはニップ58で圧縮脱水され、工程のこの段階で、一般に濃度が15%ポイント以上上がる。ニップ58に示されている構造配置は一般にシュープレスと呼ばれ、本発明において、転送ロール60は、ウェブ44を高速度で、一般に、304.8mpm〜1828.8mpm(1000fpm〜6000fpm)でクレーピングファブリック18へ搬送する転送シリンダとして働く。
【0066】
転送ロール60には滑らかな転送面64があり、必要ならばこれに接着剤および/または剥離剤を塗布する。ウェブ44は、高い角速度で回転している転送ロール60の転送面64に付着し、そのままウェブは矢印で示す流れ方向66に進み続ける。シリンダ上で、ウェブ44の繊維は一般に、見かけ上ランダムに分散している。
【0067】
方向66は、ウェブの流れ方向(machine-direction:MD)、抄紙機10の流れ方向を指しており、一方、幅方向(cross-machine-direction:CD)は、ウェブ平面内においてMDに対して垂直の方向である。
【0068】
図示されているように、ウェブ44は、一般に10〜25%程の濃度でニップ58に入り、クレーピングファブリック18(文中では時に、転送ファブリックと呼ばれる)に転送される時点では、約25〜約70%の濃度まで脱水および乾燥される。
【0069】
図のように、ファブリック18は、複数のロール68、70、72と、プレスニップロール74で支えられており、転送ロール60と共にファブリッククレープニップ76を形成する。
【0070】
クレーピングファブリックは、クレーピングファブリック18が転送ロール60に沿っている距離に亘ってクレーピングニップを形成している。つまり、転送シリンダに向けて相当の圧力がウェブにかけられている。この目的を達成するため、バッキング(または、クレーピング)ロール70には柔らかく変形可能な表面が備えられており、これによりクレーピングニップが長くなり、ファブリックおよびシートと接触点との間のファブリッククレーピング角が大きくなると考えられる。あるいは、ロール70としてシュープレスロールを用いて、高衝撃ファブリッククレーピングニップ76でのウェブとの接触効果を高めても良い。ニップ76でウェブ44はファブリック18へ転送され、流れ方向に進む。クレーピングニップで別の装置を用いると、ファブリッククレーピング角またはクレーピングニップからの離脱角の調節が可能である。このように、これらのニップパラメータを調節することで、繊維の性質と再分配の量、ファブリッククレーピングニップ76で起こる剥離/分離に影響を与えることが可能である。一部の実施の形態では、z方向の繊維間特性の再構築が望ましいことがあり、他のケースでは、ウェブの平面の性質だけに影響を与えることが望ましい場合もある。クレーピングニップパラメータは、ウェブ内の様々な方向への繊維配向に影響を与え、例えば、MDおよびCDの他に、z方向にも変化を生じることができる。どの場合でも、ファブリックはウェブよりもゆっくりと移動していて、大きな速度変化が起こるため、転送シリンダからクレーピングファブリックへの転送の衝撃は大きい。典型的に、ウェブはどの部分でも、転送シリンダからファブリックへ転送される際に10〜60%またはそれ以上クレープされる。
【0071】
クレーピングニップ76は一般に、どの場所でも、約0.32cmから約5.08cm(1/8”から約2”)、典型的に1.27cmから5.08cm(1/2”から2")のファブリッククレーピングニップ距離に亘って広がっている。2.54cm(インチ)当たり32本のCDストランドのあるクレーピングファブリックでは、ウェブ44は、ニップ内のどこででも、約4から64本の横糸繊維に当たることになる。
【0072】
クレーピングニップ76内のニップ圧力、即ち、バッキングロール70と転送ロール60との間の荷重は、適切には3.50〜17.51kN/m(20〜100ポンド/直線インチ)、望ましくは7.00〜12.26kN/m(40〜70ポンド/直線インチ(PLI))である。
【0073】
適当なクレーピングまたは織り目加工を施した(textured)ファブリック(本件の明細書および請求項では時に、転送ファブリックとも呼ばれる)には、単層または多層、あるいは複合的な、望ましくは目の粗いメッシュの構造が含まれる。後に詳細に論じるように、ファブリック構造自体の重要度は、クレーピングニップ内のクレーピング面の形状よりも低い。多くの製品において、僅かに低いCDナックル(knuckles)のある長いMDナックルが非常に望ましい。ファブリックは、次の特性の少なくとも1つを備えている。(1)クレーピングファブリックのウェットウェブに接する側(「表」側)の、流れ方向(MD)のcm当たりのストランド数(メッシュ)は、3から18(ストランド/インチ(メッシュ)は10から200)であり、横方向(CD)のcm当たりのストランド数(カウント)は、3から18(ストランド/インチ(カウント)も10から200)である。(2)ストランドの直径は一般に0.13cm(0.050インチ)より小さい。(3)表側で、MDナックルの最高点とCDナックルの最高点との距離は約0.0025から約0.05または0.08cm(約0.001から約0.02または0.03インチ)である。(4)この2つの高さの間に、シートに三次元の凹凸の形状を与える、MDまたはCDストランドによって形成されたナックルがあっても良い。(5)製造工程および製品の性質に所望の効果を与えるよう、ファブリックを適当などの方向に配向させても良い。表側に長い縦糸のナックルがあると製品のMD畝が増え、あるいは、CD畝を多くしたい場合、表側に長いシュート(shute)ナックルがあると、ウェブが転送シリンダからクレーピングファブリックへ転送される際のクレーピング特性に影響する。(6)ファブリックを、見た目の良い、典型的に縦糸2から50本毎に繰り返される、ある種の幾何学模様を描くように作る。特に望ましいファブリックは、W013 Albany International多層ファブリックである。このファブリックは、一般に約0.25mmから約1mmの範囲の直径を持つモノフィラメントポリマ繊維でできている。特に望ましいファブリックは、その内容を本件に引用して援用する、Edwardsらによる米国特許第7,494,563号の
図7その他に示されている。あるいは、前述の米国特許出願公開第2010/0186913号に記載のような、特に、この出願公開の
図4および
図5に一般的に示されているようなポリマベルトを用いる。ポリマベルトには、一般に平らで、複数の錘形孔の開いた上側表面がある。ベルトの厚さは約0.2mmから1.5mmで、それぞれの孔には、錘形穴の上側外周周囲に、ベルト表面から上方へ伸びた上縁がある。上側表面の穴は、その間で孔を隔てる複数の平面部分または地で分けられている。
【0074】
必要に応じて、スプレーブームを用いてクレーピング接着剤を表面64aに塗布し、ウェブを付着させる。
【0075】
ファブリッククレープ後、ウェブはMD66に沿って進み続ける。18aで、例えば、望ましくは、ウェブをヤンキー乾燥シリンダ80へ転送する前に、シートのドライヤ側に柔軟剤を噴霧する。柔軟剤は、当該技術で公知の適当な構造のスプレーブームで塗布しても良い。柔軟剤を塗布した後、転送ニップ82内でウェブをヤンキー乾燥シリンダ80にウェットプレスする。ニップ82での転送は、一般に約25から約70%のウェブ濃度で起こる。このような濃度では、ウェブがファブリックから完全に外れるよう、ウェブをヤンキー乾燥シリンダ80の表面84に十分強く付着させるのは困難である。工程のこの状態は特に、高速乾燥フードを使用し、更に、高衝撃クレーピング条件を保つことが望ましい場合には重要である。
【0076】
これは、ヤンキーへ十分に付着させられないため、従来のTAD工程では高速フードを使用しないことを意味する。
【0077】
本発明により、中程度の水分を含むウェブ(濃度25〜70%)に特定の接着剤を用いると、ヤンキー乾燥シリンダに十分に付着して、装置の高速稼働と高噴射速度衝突空気乾燥が可能となることが分かった。ちなみに、本発明のポリ(ビニルアルコール)/ポリアミド接着剤組成物は、86で、必要に応じてスプレーブームまたは他の適当な装置を用いて塗布する。ヤンキー乾燥シリンダへの接着剤の典型的な添加率は、乾燥ベースで繊維メートルトン(トン)当たり、クレーピング接着剤が0.91kg(2ポンド)から約6.81kg(15ポンド)である。クレーピング接着剤の追加は、適切には、繊維メートルトン(トン)当たり約1.36〜4.54kg(3〜10ポンド)であり、一部のケースでは、典型的に、繊維メートルトン(トン)当たり1.82〜3.63kg(4〜8ポンド)である。
【0078】
柔軟剤は、ウェブをヤンキーへ転送する前に、18aまたは他の場所で、部分乾燥したウェブに前述のようにスプレーブームを用いて塗布しても良いが、柔軟剤をウェブ44に塗布するにはどのような適当な手段を用いても良い。柔軟剤は、ウェブ中の製紙用繊維メートルトン(トン)当たり0.45から13.62kg(1から30ポンド)の追加率で塗布し、より一般的には、ウェブ中の製紙用繊維メートルトン(トン)当たり0.91から6.81kg(2から15ポンド)の追加率で柔軟剤を塗布し、多くの場合、ウェブ中の製紙用繊維メートルトン(トン)当たり1.36から4.54kg(3から10ポンド)の柔軟剤を塗布する。
【0079】
ウェブは、加熱したシリンダであるヤンキー乾燥シリンダ80上、ヤンキーフード88内の高噴射速度衝突空気で乾燥する。シリンダが回るにつれてウェブ44はクレーピングドクター89によってシリンダからクレープされ、テイクアップロール90に巻き取られる。ヤンキードライヤからの紙のクレーピングは、その内容を本件に引用して援用する、米国特許第5,690,788号に開示されているものなどの、波状クレーピングブレードを用いて行っても良い。ティッシュ製品の製造に波状クレープブレードを用いると、多くの利点があることが分かっている。一般に、波状ブレードを用いてクレープしたティッシュ製品は、従来のクレープブレードを用いて製造した類似のティッシュ製品よりも、キャリパー(厚さ)が大きく、CD伸びが大きく、空隙容量が大きい。波状ブレードの使用によって生じたこれら変化は全て、ティッシュ製品の柔らかさの向上に相関する傾向がある。ウェブをウェットプレスおよびファブリッククレープする代わりに、ヤンキーに転送する前に、衝突空気乾燥機または通気乾燥機を用いてウェブを部分乾燥することもできる。衝突空気乾燥機は、次の特許および出願に開示されており、その内容は本件に引用して援用する。Ilvespaaetらによる米国特許第5,865,955号、Ahonenらによる米国特許第5,968,590号、Ahonenらによる米国特許第6,001,421号、Sundqvistらによる米国特許第6,119,362号、米国特許第6,432,267号。通気乾燥ユニットは当該技術においてよく知られており、その内容を本件に引用して援用する、Coleらによる米国特許第3,432,936号、Sanfordらによる米国特許第3,301,746号に記載されている。
【0080】
本件に記載のある種のクレーピング接着剤組成物を用いると、部分乾燥ウェブがヤンキーの乾燥シリンダに付着し、また、湿潤粘着性、再湿潤性、塗膜耐久性、および/または付着性の1つ以上が向上することで乾燥効率が向上し、および/または、装置の高速稼働性が改善され、および/または、接着不良からの破損による完成ウェブの廃棄が少なくなることが、本発明により分かった。
【0081】
本件に開示のクレーピング接着剤組成物は、単一の組成物として、あるいはその成分の1つ以上として乾燥シリンダに塗布しても良い。ある実施の形態では、単一組成物としてクレーピング接着剤組成物を乾燥シリンダに塗布する。別の実施の形態では、クレーピング接着剤組成物の成分を別々に乾燥シリンダに塗布し、乾燥シリンダ表面で混ぜ合わせる。更に別の実施の形態では、クレーピング接着剤組成物の成分をインラインで混合して、一緒に乾燥シリンダへ噴霧する。
【0082】
図1およびブレードを用いたドライクレーピングに関連させて本発明を述べ、説明しているが、当業者には、所望ならば、Chouらによる米国特許第7,608,154号に記載されているように、剥離によってウェブを外しても良いことが理解されよう。同様に、本発明は、完成紙料を圧縮脱水して発生期ウェブを形成する工程と、同時に、ウェブを回転するバッキングシリンダに貼り付ける工程と、続いて、約30%から約60%の濃度で、転送ファブリックを用いてウェブを加熱したバッキングシリンダ表面からファブリッククレープする工程と、次に、ウェブをヤンキーへ転送する工程とを含む製造法に適しているが、別の方法でも、本発明のクレーピング接着剤を用いることは同じように有益である。
【0083】
本発明を実行する方法のひとつは、VoithのATMOS(登録商標)法として文献に記載されており、また、その内容を本件に引用して援用する、Scherbらによる米国特許第7,351,307号に記載されている。この方法は、ウェブを転送ファブリックと脱水ファブリックの間に挟むように、ウェブを転送ファブリック上に載せてウェブの一方の側に脱水ファブリックを接触させ、転送ファブリックと脱水ファブリックを通して連続的に吸気することで、ウェブを転送ニップに供給する前に部分乾燥する工程を含む。
【0084】
本発明での使用に適した更に別の方法は、その内容を本件に引用して援用する、米国特許出願公開第2010/0065234号に記載の、MetsoのNTT(登録商標)法である。更に、その内容を本件に引用して援用する、米国特許出願公開第2010/0139881号および米国特許出願公開第2002/0062936号も参照のこと。上記の出願の方法は、脱水ニップ内でウェブを転送ファブリックへウェットプレスしてウェブを部分乾燥する工程と、続いて、ウェブをヤンキー乾燥シリンダに貼り付ける工程を含む。
【実施例】
【0085】
次の実施例では、クレーピング接着剤組成物で使用するため、表3の様々な樹脂を試験した。
【表3】
【0086】
[実施例1]
実施例1では、本発明の例示的なクレーピング接着剤組成物の湿潤粘着性能について説明する。
【0087】
非自己架橋(non-self crosslinking)ポリマとして、様々な官能化および非官能化ポリビニルアルコールを用いた。セキスイCELVOL(登録商標)523は、88%加水分解した中位粘度のPVOHである。クラレPOVAL(登録商標)KL−318は、88%加水分解した中位粘度のカルボン酸含有PVOH共重合体である。クラレPOVAL(登録商標)KL−506は、77%加水分解した低粘度のカルボン酸含有PVOH共重合体である。使用したPAE樹脂は、Process Application Ltd.のULTRACREPE HT(PAE系の架橋性ポリマ)であった。
【0088】
この実施例1では、表4に掲げたPVOHとPAEとを所定の割合でボルテックスミキサを用いて混ぜ合わせ、6.5%の固体を含む水性組成物を調製した。それぞれのアルミニウム製秤量皿に0.5gの乾燥固体に相当する量が入るよう、この混合物を皿に注いだ。混合物を125℃の強制換気オーブンに3時間入れて薄膜を形成した。薄膜を割らずに曲げられる難易度を触覚で判断して柔軟性を求めた。湿潤粘着性を求めるため、Georgia-Pacific SofPull(登録商標)タオルの1平方インチ片を水道水で濡らし、余分な水を絞った。約103.42kPa(15psi)の力で、濡れたタオルを薄膜に押し付けた。テーブルから皿を持ち上げられるほどタオルが薄膜に貼り付いたら、濡れたタオルから薄膜が落ちるまでにかかる時間の長さ(秒で測定)を記録した。タオルと薄膜が長く貼り付いているほどスコアは高い。この実施例1の結果を表4に示す。
【表4】
【0089】
表4から分かるように、12.5%の官能化PVOH共重合体(クラレKL−506)と87.5%のPAL ULTRACREPE(登録商標)HTの割合のものでは、非官能化PVOHホモポリマ(セキスイCELVOL(登録商標)523)とPAL ULTRACREPE(登録商標)HTとの同じ比率のものと比較して、薄膜の外観に変わりはなかったが、湿潤粘着性の向上が見られた。50%:50%の比で作った同じ成分の組成物と比較した場合にも、あまり著しくはないが、湿潤粘着性の向上が見られた。
【0090】
[実施例2]
実施例2では、官能化PVOHと非官能化PVOHとの希釈特性について説明する。様々な官能化および非官能化ポリビニルアルコールを用いた。セキスイCELVOL(登録商標)523は、88%加水分解した中位粘度のPVOHである。クラレPOVAL(登録商標)KL−318は、88%加水分解した中位粘度のカルボン酸含有PVOH共重合体である。クラレPOVAL(登録商標)KL−506は、77%加水分解した低粘度のカルボン酸含有PVOH共重合体である。
【0091】
「メイクダウン(makedown)」温度は、希釈温度を表しており、クレーピング接着剤の再水和し易さを示している。再水和性の改良された接着剤は、一般に均一な分散を保つことで、吐出ノズルとフィルタの目詰まりを起こしにくくすると考えられる。クレーピング接着剤の再水和性は、所定温度での接着剤の溶解/希釈能力で表される。再水和性を求めるため、1滴の水道水を薄膜上に置いた。薄膜が溶解、膨潤、またはゴム状になるかどうかを評価した。
【表5】
【0092】
表5に示すように、クラレPOVAL(登録商標)KL−506が低温で容易に膨潤または溶解する能力は、再水和性の向上を示している。
【0093】
[実施例3]
実施例1と同様に一連の薄膜を調製した。即ち、表6に掲げたPVOHとPAEとを所定の割合でボルテックスミキサを用いて混ぜ合わせ、6.5%の固体を含む水性組成物を調製した。それぞれのアルミニウム製秤量皿に0.5gの乾燥固体に相当する量が入るよう、この混合物を皿に注いだ。混合物を125℃の強制換気オーブンに3時間入れて薄膜を形成した。試料の柔軟性/脆性を試験した。結果を表6に示す。PAL Ultracrepe HTは熱硬化性接着剤に分類される。この組成物は、PVOH共重合体のカルボキシル基と架橋する、PAEのアゼチジニウム含量を保つことができると考えられる。これは65%のPVOHと35%のPAEとの比で実証され、セキスイ混合薄膜に比べて、クラレ混合薄膜はより脆い、または丈夫であった。
【表6】
【0094】
[実施例4]
実施例4では、本発明の例示的なクレーピング接着剤組成物の接着性能について説明する。その内容を本件に引用して援用する、Grigorievらによる米国特許出願公開第2007/0208115号、“Use of Organophosphorus Compounds as Creping Aids”、4ページ、段落0045に記載の手法に従って試料を試験した。より詳細には、表7の配合物で得られる接着性を、湿潤粘着性引きはがし粘着力試験で測定した。この試験では、加熱した金属板から綿の細片を剥がすために必要な力を測定した。接着剤混合物はボルテックスミキサを用いて混合した。#40コーティングロッドを用いて接着剤薄膜を金属パネルに塗布した。約6.5%の活性成分(100%のPVOH薄膜は、5%固体であった)で、接着剤をパネルに塗布した。金属プレートを100℃に加熱した。この時点で、1.9kgの円筒形ローラを用いて濡れた綿の細片を薄膜に押しつけた。細片を貼り付けた後、金属プレートを105℃のオーブンに15分間入れて細片を乾燥した。次に、金属プレートを引張試験機に固定した。綿布の一端を試験機の空気式グリップで固定し、180°の角度でパネルから布を一定速度で剥いだ。剥がす間、金属プレートの温度は100℃に調節した。結果を表7に示す。
【表7】
【0095】
表7に示すように、非官能化PVOH/PAEの組み合わせの剥離力が最低であった。官能化PVOH(クラレPOVAL(登録商標)KL−506)単独では、非官能化PVOH(セキスイCEVOL(登録商標)523)と比較して、十分に良い接着性が得られない。官能化PVOH(クラレPOVAL(登録商標)KL−506)と非反応性PAE(Nalco 64551)との混合物で接着性の上昇が見られた。
【0096】
[実施例5]
実施例5でも、本発明の例示的な組成物の接着強度について説明する。
【0097】
セキスイCELVOL(登録商標)523とクラレPOVAL(登録商標)KL−506は、実施例1に述べたものと同じである。セキスイCELVOL(登録商標)350は、98%加水分解した高粘度のPVOHである。DuPont ELVANOL(登録商標)75−15は、完全に加水分解した中〜低粘度のPVOH/MMA共重合体である。DuPont ELVANOL(登録商標)85−82は、完全に加水分解した中位粘度のPVOHカルボキシル化共重合体である。
【0098】
PAE樹脂は、Nalco 64551(完全に架橋したPAE樹脂)であった。65%のPVOHと35%のPAEとを含む試料を実施例4のように調製した。実施例4と同様に行った剥離力試験の結果を表8に示し、
図2に図示する。
【表8】
【0099】
カルボン酸修飾PVOH(クラレPOVAL KL−506)を含む試料は、最も高い平均剥離力を示し、PVOH/MMA共重合体(ELVANOL 75−15)を含む試料が次点であった。カルボン酸修飾PVOH(ELVANOL 85−82)を含む試料は、88%加水分解した非官能化PVOH(CELVOL 523)を含む試料とほぼ同じ平均剥離力を示した。98%加水分解した非官能化PVOH(CELVOL 350)を含む試料の平均剥離力は最低であった。
【0100】
[実施例6]
実施例6も、本発明の例示的な組成物の接着強度について説明する。
【0101】
CELVOL(登録商標)523、POVAL(登録商標)KL−506、CELVOL(登録商標)350、ELVANOL(登録商標)75−15、ELVANOL(登録商標)85−82は、実施例1から実施例5に述べたものと同じである。クラレPOVAL(登録商標)PVA−505は、72〜75%加水分解した低粘度PVOHである。クラレPOVAL(登録商標)OTP−5は、85〜90%加水分解した低粘度カルボン酸含有PVOH共重合体である。クラレKL−118は、中位粘度の、95〜99%加水分解したカルボン酸含有PVOH共重合体である。クラレKL−318は、中位粘度の、85〜90%加水分解したカルボン酸含有PVOH共重合体である。セキスイULTILOC(登録商標)2012は、中位粘度の、95〜100%加水分解したスルホン化PVOHである。
【0102】
使用した非反応性PAE樹脂は、Nalco 64551(完全に架橋したPAE樹脂)であった。
【0103】
実施例4および実施例5と同様に、65%のPVOHと35%のPAEを含む試料を調製および試験し、また、PVOHが100%で、PAEを含まない試料も試験した。即ち、接着剤混合物はボルテックスミキサを用いて混合した。#40コーティングロッドを用いて接着剤薄膜を金属パネルに塗布した。約6.5%の活性成分(100%PVOH薄膜は、5%固体であった)で、接着剤をパネルに塗布した。金属プレートを100℃に加熱した。この時点で、1.9kgの円筒形ローラを用いて濡れた綿細片を薄膜に押しつけた。細片を貼り付けた後、金属プレートを105℃のオーブンに15分間入れて細片を乾燥した。次に、金属プレートを引張試験機に固定した。綿布の一端を試験機の空気式グリップで固定し、180°の角度でパネルから布を一定速度で剥いだ。剥がす間、金属プレートの温度は100℃に調節した。剥離力試験の結果を表9に示し、
図3に図示する。
【表9】
【0104】
更に、加水分解度のあまり高くない非官能化PVOH(KL−506)を65%含む、本発明によるクレーピング接着剤組成物試料は、非官能化PVOHを100%含む本発明ではない試料よりも27.5%という大きな剥離力の向上を示した。また、多くの試料で、官能化PVOHを65%含む本発明によるクレーピング接着剤組成物試料は、非官能化PVOHを100%含む本発明ではない試料よりも、10%以上の剥離力の向上を示した。
【0105】
[実施例7]
実施例4、実施例5、および実施例6の手法に続いて、35%のNalco 64551 PAEを加えて、または加えずに、表10Aに掲げたPVOH共重合体樹脂の剥離力を試験した。
【表10A】
【0106】
剥離試験の結果を表10Bに示す。
【表10B】
【0107】
PVOH共重合体の多くはPAE樹脂と有利には相互作用せず、これらのPVOH共重合体はいずれも、カルボキシル化およびスルホン化PVOH共重合体とPAE樹脂との混合物に見られるような十分な相乗効果を示さないことが分かった。
【0108】
[実施例8]
前述の
図1およびSuperらによる米国特許出願公開第2010/0186913号に関連して述べたようなベルトクレープ工程を用いて、機械走行性、塗膜の均一性と堆積速度、ベースシートの手触りとクレープ均一性に関して、ヤンキー塗膜の化学組成が最適となるよう、中心線条件を設定した。表11Aに、35重量%のNalco 64551 PAEと65%のポリビニルアルコールを含むコーティングパッケージの最適添加率をまとめた。対照としてセキスイCelvol(登録商標)523を使用し、クラレPoval(登録商標)KL−506共重合体を用いたクレーピング接着剤と比較した。対照に比べ、クラレKL−506の接着性は少ない添加率で良好であった。これは、ヤンキートルクの増大で裏付けられる。試験の際の観察から、スプレー柔軟剤が2.72kg/メートルトン(6ポンド/トン)でも、KL−506パッケージでは縁のフレアが無く、付着性が良いことが分かった。PVOHの添加率が少ないとコスト面で有利なだけでなく、シートの塗膜汚染の可能性が小さくなり、ヤンキー周囲での塗膜粉塵の発生も抑えられると考えられる。
【表11A】
【0109】
[ベースシートの物性]
表11Aに示した中心線目標値を用いて製造したベースシートの物性を表11Bに示す。上の表11Aから分かるように、ファブリッククレープとリールクレープは試験の間、一定であった。クレープ効果の指標として、クレープ比に対する高い伸びがしばしば用いられる。この試験の間、総クレープは一定にしているため、MD伸びを比較するだけで、対照に比べて供試した全ての塗膜で伸び(またはクレープ)が向上したことが分かる。
【0110】
空隙容量の重量%増加も、シートが吸収するPOROFIL(登録商標)液の量の測定により、シートがどの程度良くクレープされ、あるいは開いているかを測るために用いられるツールである。吸収の多さは開いている孔の多さに相関し、クレーピングが良いことに相関する。これも、クラレKL−506パッケージが対照より予想以上に良好にクレープされたことを裏付けている。
【表11B】
【0111】
[実施例9]
実施例8の材料と、Edwardsらによる米国特許第7,494,563号に記載のFO13クレーピング(転送)ファブリックを用いて追加試験を行い、
図1に示すように、ヤンキードライヤの直前でウェブに塗布したスプレー柔軟剤に対する、本発明のクレーピング接着剤の耐性を評価した。
【0112】
より多くのEvonik Varisoft GP B 100スプレー柔軟剤をウェブに塗布すると、シートがヤンキーへ転送される状態に悪影響を及ぼし、剥離を生じてクレープを粗くすることが立証されていることから、ウェブが圧力ロールの転送ニップへ入る前に、増量したEvonik Varisoft GP B 100スプレー柔軟剤を塗布した。これは、クレープまたはクリーニングブレードの交換直後に一般的に見られる。付着性の欠如は、シートが圧力ロールから外れてファブリックに追随、ヤンキー上の縁のフレア、ドライエンドでのシートハンドリングの緩さ、クレープ構造によって分かると考えられる。試験用マトリックスの開始状態を次の表12Aに掲げた。最適な塗膜は、スプレー柔軟剤が2.72kg/メートルトン(6ポンド/トン)のときで、それぞれに調節したスプレー柔軟剤の追加に対して一定のままであった。
【表12A】
【0113】
ベースシートの物理的特性の目標値を表12Bに示す。
【表12B】
【0114】
実施例9の際、リアルタイムで下記のようにコメントした。
【0115】
[セル1]
以下のコメントは、セル1(2.27kg/メートルトン(5ポンド/トン)のCelvol(登録商標)523 PVOHと、0.45kg/メートルトン(1ポンド/トン)のNalco 64551 PAE)についてである。
リール25292 − 2.72kg/メートルトン(6ポンド/トン)スプレー柔軟剤
シートの見かけは良好。端は締まっている。前側に塗膜が多く堆積する。
クリーナー交換:シートは良好にクレープ装置から出てくる。クレープ構造の見かけは良好。
リール25293 − 4.09kg/メートルトン(9ポンド/トン)スプレー柔軟剤
シートの見かけは良好。塗膜がすぐに堆積する。転送は良好。
クリーナー交換:転送が多少不良だが、すぐにきれいになる。ベースシートの見かけは良好。
リール25294 − 5.45kg/メートルトン(12ポンド/トン)スプレー柔軟剤
シートは良好にヤンキーから出てくる。残留物無し。転送は良好。
クリーナー交換:転送は良好のまま。塗膜は良く除去される。ベースシートの見かけは良好。
リール25295 − 6.81kg/メートルトン(15ポンド/トン)スプレー柔軟剤
シートの見かけは良好。転送は良好。ブレード離れがしっかりしている(Tight off the blade)。
クリーナー交換:ブレード離れは少々緩いが(A little loose off the blade but)、縁での転送は締まっている。ロールのできあがり(build)品質は、シートのゆれと、先のリールほど締まっていないことを示している。前縁、端から約1〜2cmに粗いクレープ。
リール25296 − 8.17kg/メートルトン(18ポンド/トン)スプレー柔軟剤
少量の残留物。縁のクレープがまだ粗い。ロール構造は、まだシートハンドリングが緩いことを示している。
クリーナー交換:転送損失無し。ベースシートの見かけは、縁にまだ粗いクレープがある以外は良好。
リール25297 − 9.53kg/メートルトン(21ポンド/トン)スプレー柔軟剤
まだ走行は良好。ヤンキーから離れるときのロール構造とシートハンドリングはまだ緩い。シート縁より内側のクレープはまだ良好に見える。前後縁に粗いクレープがある。
クリーナー交換:問題なし。
リール25298 − 10.9kg/メートルトン(24ポンド/トン)スプレー柔軟剤
塗膜の堆積は終日不安定であった。
クリーナー交換:シートは前のセルよりも著しく緩い。更に内側にも粗いクレープが出現。
【0116】
粗いクレープの兆候は、6.81kg/メートルトン(15ポンド/トン)スプレー柔軟剤においてであった。シート転送はセル全体で全く問題なく、シート縁にも全くフレアは生じなかった。手触りは、5.45kg/メートルトン(12ポンド/トン)のスプレー柔軟剤添加後も変化は見られなかった。
【0117】
[セル2]
以下のコメントは、セル2(2.27kg/メートルトン(5ポンド/トン)のクラレPOVAL(登録商標)KL−506 PVOHと、0.45kg/メートルトン(1ポンド/トン)のNalco 64551 PAE)についてである。
リール25310 − 2.72kg/メートルトン(6ポンド/トン)スプレー柔軟剤
シートの見かけは良好。
リール25311 − 4.09kg/メートルトン(9ポンド/トン)スプレー柔軟剤
見かけは良好。塗膜は前日よりも速く堆積するようである。残留物無し。
クリーナー交換:転送は良好。午前中いっぱい、縁はブレード上で僅かに折れ曲がっていた。今日は綿密に観察するつもりである(Will watch closely today)。クレープの様子は良好。シートの感触は良い。
リール25312 − 5.45kg/メートルトン(12ポンド/トン)スプレー柔軟剤
シートハンドリングは良好。後縁上に成形ボックス(moulding box)があるようには見えない。少量の残留物と少数のスポットが繰り返される。
クリーナー交換:縁は締まったまま(Stayed tight on edges)。転送損失なし。ロール構造は良好。
リール25313 − 6.81kg/メートルトン(15ポンド/トン)スプレー柔軟剤
スプレーノズルが詰まった。少量の残留物。スプレーノズルが流れた場所に多少の粗いクレープ。ノズルを清掃するつもりである(Will clean nozzles)。
リール25314 − 6.81kg/メートルトン(15ポンド/トン)スプレー柔軟剤
現在、スプレーの様子は良好。シートの様子は良好。ロール構造は締まっており、曲がりはない。
クリーナー交換:締まったままで、転送は良好、粗いクレープはない。
リール25315 − 8.17kg/メートル(18ポンド/トン)スプレー柔軟剤
粗いクレープなし。シート転送は良好。
クリーナー交換:シートが締まった。良好な様子。ドライエンドで後縁が緩み始めている。ベースシートクレープの様子は良好で、シートの感触は良い。
リール25316 − 9.53kg/メートルトン(21ポンド/トン)スプレー柔軟剤
ヤンキーの後縁には、本日の現在時刻までよりも多く発生した塗膜がある。シートの見かけは良好。クレープ装置から締まって出てくる。
クリーナー交換:転送損失無し。後縁は緩い。粗いクレープなし。
リール25317 − 10.9kg/メートルトン(24ポンド/トン)スプレー柔軟剤
良好な様子。後縁はまだ緩い。
クリーナー交換:シートが締まる。浮き(floating)が少ない。塗膜の破片が少ない。ベースシートの後縁に粗いクレープが少しある。
【0118】
粗いクレープの兆候は、10.9kg/メートルトン(24ポンド/トン)スプレー柔軟剤においてであった。シート転送は終日良好に保たれた。
【0119】
Celvol(登録商標)523での塗膜の不具合は、6.81kg/メートルトン(15ポンド/トン)のスプレー柔軟剤添加で起き、Poval(登録商標)KL−506での塗膜の不具合は、10.9kg/メートルトン(24ポンド/トン)のスプレー柔軟剤添加で起きた。つまり、高いスプレー柔軟剤添加率で粗いクレープ構造が無いことで測定したように、Poval(登録商標)KL−506の湿潤接着性は対照よりも良好である。
【0120】
走行性、シートハンドリング、粗いクレープは全て、この塗膜パッケージで使用した場合、クラレPoval(登録商標)KL−506 PVOHの接着性が、セキスイCelvol(登録商標)523よりも高いことを示している。
【0121】
本発明のクレーピング接着剤のスプレー柔軟剤に対する耐性は、
図4と
図5を比較すると特に明らかである。
図4は、対照接着剤を用いたシートを示しており、繊維メートルトン(トン)当たり2.72kg(6ポンド)の柔軟剤(リール25292)では、粗いクレープはなかった。粗いクレープは接着性が無いことの指標で、繊維メートルトン(トン)当たり6.81kg(15ポンド)の柔軟剤(リール25295)で現れ始める。繊維メートルトン(トン)当たり10.9kg(24ポンド)の柔軟剤(リール25298)では、シートの縁で接着性がほぼ完全に無いことを示している。
【0122】
一方、
図5は、本発明のクレーピング接着剤を用いると、2.72kg/メートルトン(6ポンド/トン)(リール25310)、6.81kg(15ポンド)/メートルトン(トン)(リール25314)、9.53kg(21ポンド)/メートルトン(トン)(リール25316)の全ての柔軟剤追加において粗いクレープが無いことを示している。10.9kg(24ポンド)/メートルトン(トン)で粗いクレープが多少見られる(リール25317)が、対照接着剤の、6.81kg(15ポンド)/メートルトン(トン)で見られるものよりずっと少ない。
【0123】
このように、本発明の組成物は、従来のPAE接着剤に比べ、予想以上に優れた接着性とスプレー柔軟剤に対する耐性を示す。
【0124】
本発明について詳細に述べてきたが、本発明の精神および範囲内の変形は当業者には容易に明らかであろう。前述の討論、当該技術の関連知見、および、それらの内容を全て本件に引用して援用する、「背景技術」および「発明を実施するための最良の形態」に関連して先に論じた同時係属中の出願などの参考文献については、更に記述の必要はないと考える。また、発明の態様および様々な実施の形態の部分を、全体または一部として、組み合わせ、または組み換えても良いことを理解すべきである。更に、当業者ならば、先の記述は例示のためだけであって、本発明を制限しようとするものではないことを十分に理解していよう。