(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態に係る釣り用のスプールについて、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の魚釣用リール1は、
図1に示すように、スピニングリールであり、リール本体2と、リール本体2の前方に回転可能に設けられたロータ3と、リール本体2の前方に前後動可能に設けられたスプール10と、を主として備えている。
なお、以下の説明において、「前後」を言うときは、
図1に示した方向を基準とする。
【0015】
リール本体2の上部には、図示しない釣竿に装着される脚部2aが設けられている。また、リール本体2の前端部から前方に向けてスプール軸5(
図3(a)参照)が突出している。さらに、リール本体2には、スプール軸5を前後動させるためのオシレーティング機構(図示せず)が収容されている。
【0016】
魚釣用リール1では、リール本体2の側部に設けられたハンドル6を回転させることで、ロータ3を回転し、釣り糸は、ロータ3の一対の腕部3a,3a間に介在するベール7に案内されて、スプール10の外周面上に巻回される。
さらに、ロータ3の回転運動に同期してスプール10が前後動するため、釣り糸は、スプール10の外周面上に均等に巻回される。
【0017】
なお、リール本体2の後部に設けられた切換レバー8を切り替えることで、ロータ3が逆転不能な状態と、正逆転可能な状態とに切り替えることができる。
また、ベール7を
図1に示す巻取り位置から反対側に倒し、釣り糸の放出を阻害しない位置に保持することで、例えばキャスティングのときに、スプール10から釣り糸を放出することができる。
【0018】
スプール10は、
図2、
図3(a)に示すように、円筒状のスプール本体11と、スプール本体11の前端開口部に取り付けられた前壁部材12と、を備えている。
前壁部材12は、金属材料で形成され、円板状を呈している。前壁部材12の後端部がスプール本体11の前端開口部に嵌め込まれ、接着材により固定されている。
【0019】
前壁部材12の中心部には、
図3(a)に示すように、スプール軸5の前端部が連結される。そして、リール本体2内のオシレーティング機構(図示せず)によって、スプール軸5と共にスプール10が前後動するように構成されている。
【0020】
スプール本体11は、
図2(a)、(b)に示すように、円錐台状の胴部13と、胴部13の後方に配置された円筒状の連結部材50と、連結部材50を覆う円筒状のスカート部15と、の3つの部材から構成されている。
【0021】
胴部13は、外周面13aに釣り糸を巻回される部材である。
胴部13は、
図3(a)に示すように、前端部から後端部に向かうに従って漸次拡径し、胴部13の外周面13aが円錐台形状(テーパ状)になっている。このため、釣り糸の放出がスムーズになっている。
【0022】
胴部13は、プリプレグシート(繊維強化樹脂シート)Sを内金型Mの胴部面213に外装して緊締テープで固定しつつ、加熱成形することで形成されたものである。
なお、
図4に示すように、内金型Mとは、スプール本体11と同一形状を呈する部材であり、内金型Mの外周面は、円錐台状内の胴部面213と、胴部面213から径方向外側に立ち上がる円周状のフランジ部面214と、フランジ部面214から内金型Mの軸方向に延びる円周状のスカート部面215と、を備えたものである。また、胴部面213を構成する基部213aは円柱状をなしている
【0023】
胴部13は、複数のプリプレグシートSを積層させてなる積層構造である。
具体的に、実施形態の胴部13は、四枚のプリプレグシートS(以下、「本体用シート121〜124」と称する。
図9(d)参照)、および二枚のプリプレグシートS(以下、「外装用シート131,132」と称する。
図10(c)参照)を重ね巻いた積層体である。
なお、
図3における胴部13は、積層状態を分かり易く説明するため、二枚の本体用シートと、一枚の外装用シートから積層された状態を図示している。
【0024】
連結部材50は、
図3(a)に示すように、胴部13の外周面13aよりも径方向外側に延在する円周状のフランジ部14と、フランジ部14の内周端から前方に延びる胴部側円筒部16と、フランジ部14の外周端から後方に延びるスカート部側円筒部17と、を有する筒状部材である。
なお、本実施形態における連結部材50が、特許請求の範囲に記載される「筒状部材」に相当する構成である。
【0025】
胴部側円筒部16は、円筒状を呈し、胴部13に接合して胴部13とフランジ部14とを一体にするための部位である。
本実施形態の胴部側円筒部16は、胴部側円筒部16の外周面に胴部13の後端の内周面が接合されて、胴部13と連結部材50とを一体にしている。
フランジ部14は、円周状を呈し、胴部側円筒部16に接合する胴部13の外周面13aに対し、フランジ部14の前面が径方向外側に立ち上がっている。
このため、胴部13の外周面13aに沿って後方に移動した釣り糸がフランジ部14の前面に係止し、胴部13から釣り糸が脱落しないようになっている。
スカート部側円筒部17は、胴部側円筒部16の径よりも大径な円筒状を呈しており、スカート部15に接合してスカート部15とフランジ部14とを一体にするための部位である。
【0026】
図3(b)では、連結部材50を構成するプリプレグシートS(以下、「連結部用シート60」と称する)と、スカート部15との積層状態を分かり易く説明するために、厚みを誇張して示している。
連結部材50は、複数の連結部用シート60を内金型Mのフランジ部面214の近傍に環状に外装して緊締テープで固定しつつ、隣り合う連結部用シート60の端部同士を加熱接合することで形成されたものである。
連結部材50は、内層51と外層52との2層構造であって、内層51に、四枚の連結部用シート60A〜60Dが用いられ、また、外層52に、四枚の連結部用シート60E〜60Hが用いられている。
なお、内層51と外層52とに用いられる連結部用シート60A〜60Hは、同一形状である(
図5参照)。
【0027】
スカート部15は、フランジ部14の前面の外周端から後方に延びるように構成されており、釣り糸が後方側から回り込んで胴部13の内周側に入り込むことを防止する役割を果たす。
また、スカート部15は、プリプレグシートを湾曲させて円周状にし、そのプリプレグシートの両端を加熱接合することで形成されている。
【0028】
次に、スプール本体11の製造手順について説明する。
スプール本体11の製造は、まず、連結部材50を製造し、つぎに、連結部材50に対し、胴部13、スカート部15を構成するプリプレグシートSを加熱加圧成形する、という手順で行われる。
【0029】
連結部材50の製造に関し、まず、プリプレグシートSを切り抜いて、八枚の連結部用シート60(60A〜60H)を用意する。
図5に示すように、連結部用シート60は、長辺64と短辺65とからなる平行な対辺を有する台形状の台形部61と、長辺64から延出する矩形状のスカート部側延出部62と、短辺65から延出する矩形状の胴部側延出部63と、を有している。
なお、連結部用シート60の方向において、台形部61を中心として、スカート部側延出部62側を上側、胴部側延出部63側を下側と称する。また、台形部61の長辺64が延びる方向を左右方向と称する。
【0030】
図5に示すように、台形部61の上下方向の長さL1は、内金型Mのフランジ部面214の径方向の長さN1(
図4(a)参照)に対応している。
台形部61の長辺64の幅L2は、内金型Mのスカート部面215の全周の4分の1に対応した長さN2(
図4(a)参照)に形成されている。
台形部61の短辺65の幅L3は、内金型Mの胴部面213の基部213aの全周の4分の1に対応した長さN3(
図4(a)参照)に形成されている。
このため、台形部61の左右両端61a、61aの幅L4は、上部から下部側に向かうにつれて次第に幅狭になっている。
【0031】
なお、本実施形態においては、後述するように連結部用シート60を内金型Mの外周面に90度ずつ周方向にずらしながら配置し、連結部シート60の幅方向の一端を隣り合う連結部用シート60に重ね合わせて加熱接合する。このため、連結部用シート60全体が所定長幅広になっている。
【0032】
スカート部側延出部62の上下方向の長さL5は、内金型Mのスカート部面215の軸方向の長さN5(
図4(b)参照)に対応している。
胴部側延出部63の上下方向の長さL6は、内金型Mの胴部面213の基部213aの長さN6(
図4(b)参照)に対応している。
以上のように、連結部用シート60は、内金型Mの外周面を周方向に四等分して展開した展開図に近似した形状になっている。
連結部用シート60の長辺64の両端には、スリット66、66が形成され、長辺64に沿って連結部用シート60を折り曲げやすくなっている。
【0033】
また、連結部用シート60に使用されるプリプレグシートSは、繊維方向SFが縦横に直交しているものを使用されている。
そして、連結部用シート60は、横方向に延在する繊維SF2の繊維方向SFに対して、連結部用シート60の長辺64および短辺65が平行となるように切りだされている。このため、繊維方向SFに対して長辺64および短辺65が斜めとなる場合よりも、連結部用シート60の上端部62bから下端部63bに亘って連続した繊維SF1の本数を多くすることができる。
また、台形部61、スカート部側延出部62、胴部側延出部63のそれぞれの左右両端部に亘って連続した繊維SF2の本数も多くすることができる。
この結果、連結部材50の剛性を高めることができる。
【0034】
つぎに、以下の手順により、八枚の連結部用シート60の折り曲げ成形を行う。
連結部用シート60のスカート部側延出部62を内金型Mのスカート部面215に乗せるとともに、連結部用シート60のスリット66を、内金型Mのスカート部面215とフランジ部面214と間に形成された角部に重なるように配置する。
連結部用シート60を加熱して連結部用シート60を構成する樹脂を軟化させる。そして、スカート部側延出部62の左右の端部62a、62aを上方から押し付けて、スカート部側延出部62を湾曲させて、スカート部側延出部62をスカート部面215に沿わせる。
【0035】
つぎに、スカート部側延出部62を抑えつけながら、台形部61、胴部側延出部63を内金型Mのフランジ部面214、胴部面213側に押し付け、連結部用シート60の長辺64を山折りにするとともに、短辺65を谷折りにして、クランク状に形成する。
さらに、胴部側延出部63の左右の端部63a、63aを胴部面213側に押し付けて、スカート部側延出部62を湾曲させる。
この手順により、
図6(a)に示すように、連結部材50を周方向に四等分したものが形成される。
【0036】
つぎに、
図6(b)に示すように、折り曲げ成形された四枚の連結部用シート60A〜60Dを、内金型Mの外周面に90度ずつ周方向にずらしながら配置し、四枚の連結部用シート60A〜60Dの端部同士を重ね合わせる。
詳細に説明すると、隣り合うスカート部側延出部62の端部62a、62a(
図5参照)同士を重ね合わせ、また、隣り合う台形部61の端部61a、61a(
図5参照)同士を重ね合わせ、さらに、隣り合う胴部側延出部63の端部63a、63a(
図5参照)同士を重ね合わせる。そして、緊締テープで固定する。
【0037】
そして、四枚の連結部用シート60A〜60Dの重ね合わせられた端部同士を加熱接合し、四枚の連結部用シート60A〜60Dを連続させて、環状の内層51が形成される。なお、接合後に、緊締テープの除去を行う。
なお、加熱接合されて径方向外側に突出する連結部用シート60A〜60Dの端部について、
図6(c)では省略する。
【0038】
さらに、
図6(c)に示すように、内層51の外周面に、四枚の連結部用シート60E〜60Hを90度ずつ周方向にずらしながら配置し、四枚の連結部用シート60E〜60Hの端部同士を重ね合わせる。
ここで、連結部用シート60E〜60Hは、内層51を構成する連結部用シート60A〜60Dとの接合部を覆うように、連結部用シート60A〜60Dに対して45度周方向にずらして配置する。
【0039】
そして、緊締テープの固定後に加熱成形を行い、連結部用シート60E〜60Hの重ね合わせられた端部同士と、内層51と外層52とを構成する連結部用シート60同士を加熱接合させ、緊締テープを除去する。
これにより、胴部側円筒部16とフランジ部14とスカート部側円筒部17とを有する連結部材50が形成される。
【0040】
ここで、内層51を構成する連結部用シート60A〜60Dと、外層52を構成する連結部用シート60E〜60Hとは、45度ずつ周方向にずれて配置されている。このため、内層51の接合部を、外層52の連結部用シート60E〜60Hが補強する一方で、外層52の接合部を内層51の連結部用シート60E〜60Hが補強するようになり、単層で構成される場合よりも、高い剛性を有する。
つぎに、内金型Mの外嵌された連結部材50の胴部側円筒部16と、胴部13を構成するプリプレグシートS(各本体用シート121〜124、外装用シート131,132)との一体成形について説明する。
なお、
図9(a)〜(d)および
図10(b),(c)では、各本体用シート121〜124および各外装用シート131,132の積層状態を分かり易く説明するために、各本体用シート121〜124および各外装用シート131,132の厚みを誇張して示している。
【0041】
最初に、胴各本体用シート121〜124、外装用シート131,132のそれぞれについて説明する。
各本体用シート121〜124は、
図7(a)に示すように、円弧状に形成されたプリプレグシートである。各本体用シート121〜124は、同一形状に形成されている。
【0042】
本実施形態の各本体用シート121〜124は、一枚のシートS1から切り出されたものである。シートS1は、繊維方向SF,SFが一方向(
図7(a)の上下方向)に配設されたプリプレグシートである。
【0043】
シートS1内の各本体用シート121〜124は、繊維方向SFに直交する方向に並べられている。また、各本体用シート121〜124は同じ向きに配置されている。
そして、シートS1から切り出された各本体用シート121〜124は、繊維方向SFが同一になる。因みに、本実施形態の各本体用シート121〜124では、長手方向の一端の縁部121b〜124bと繊維方向SFとが直交し、他端の縁部121c〜124cと繊維方向SFとが斜めに交差している。
【0044】
二枚の外装用シート131,132は、
図10(a)に示すように、円弧状に形成されたプリプレグシート(繊維強化樹脂シート)である。各外装用シート131,132は、同一形状に形成されている。
なお、上述した、各本体用シート121〜124と、外装用シート131,132との形状は、内金型Mの胴部面213の外周面を展開した展開図と同一形状になっている。このため、展開図からはみ出るような部分がなく、皺が発生しないようになっている。
【0045】
各外装用シート131,132は、繊維方向SFが縦横に直交しており、表面に格子状の模様が形成されている。各外装用シート131,132は、
図10(c)に示すように、各本体用シート121〜124の外側に重ね巻かれる部材である。
各外装用シート131,132は、各本体用シート121〜124(
図7(a)参照)と同様に、一枚のシートS2から切り出されており、繊維方向SFが同一である。
本実施形態の各外装用シート131,132では、長手方向の一端の縁部131b,132bと繊維方向SFとが直交および平行し、他端の縁部131c、132cと繊維方向SFとが斜めに交差している。
【0046】
そして、最内層となる第一本体用シート121を内金型Mの外周面に巻き付ける。このとき、
図9(a)に示すように、Aの位置から第一本体用シート121を巻き始め、Aの位置において第一本体用シート121の両端部を重ね合わせる。これにより、第一本体用シート121は円錐台形状に巻かれた状態となる。
第一本体用シート121の両端部を重ね合わせた接合部121aでは、
図7(c)に示すように、両端部の繊維方向SF,SFが交差する。
なお、
図9(a)〜(d)および
図10(b),(c)では、各本体用シート121〜124および各外装用シート131,132の積層状態を分かり易く説明するために、各本体用シート121〜124および各外装用シート131,132の厚みを誇張して示している。
【0047】
続いて、
図9(b)に示すように、第一本体用シート121の外周面に第二本体用シート122を巻き付ける。このとき、Cの位置から第二本体用シート122を巻き始め、Cの位置において第二本体用シート122の両端部を重ね合わせる。Cの位置は、Aの位置に対して周方向(
図9(b)の右回り)に90度ずれた位置である。
これにより、第二本体用シート122の両端部を重ね合わせた接合部122aは、第一本体用シート121の接合部121aに対して周方向に90度ずれた位置に配置される。
【0048】
第二本体用シート122の接合部122aでは、第一本体用シート121の接合部121a(
図7(c)参照)と同様に、両端部の繊維方向SF,SFが交差する。
なお、第二本体用シート122の接合部122aにおいて繊維方向SF,SFが交差する角度は、第一本体用シート121の接合部121a(
図7(c)参照)において繊維方向SF,SFが交差する角度と同じになる。
【0049】
また、
図9(c)に示すように、第二本体用シート122の外周面に第三本体用シート123を巻き付ける。このとき、Eの位置から第三本体用シート123を巻き始め、Eの位置において第三本体用シート123の両端部を重ね合わせる。
Eの位置は、Cの位置に対して周方向(
図9(c)の右回り)に90度ずれた位置である。したがって、第三本体用シート123の接合部123aは、第二本体用シート122の接合部122aに対して周方向に90度ずれた位置に配置される。
第三本体用シート123の接合部123aにおいて繊維方向SF,SFが交差する角度は、第一本体用シート121の接合部121a(
図7(c)参照)において繊維方向SF,SFが交差する角度と同じになる。
【0050】
さらに、
図9(d)に示すように、第三本体用シート123の外周面に第四本体用シート124を巻き付ける。このとき、Gの位置から第四本体用シート124を巻き始め、Gの位置において第四本体用シート124の両端部を重ね合わせる。
Gの位置は、Eの位置に対して周方向(
図9(d)の右回り)に90度ずれた位置である。したがって、第四本体用シート124の接合部124aは、第三本体用シート123の接合部123aに対して周方向に90度ずれた位置に配置される。
第四本体用シート124の接合部124aにおいて繊維方向SF,SFが交差する角度は、第一本体用シート121の接合部121a(
図7(c)参照)において繊維方向SF,SFが交差する角度と同じである。
【0051】
このようにして、各本体用シート121〜124を重ね巻いて径方向に積層する。
続いて、
図10(b)に示すように、各本体用シート121〜124の積層体の外周面に第一外装用シート131を巻き付ける。このとき、Bの位置から第一外装用シート131を巻き始め、Bの位置において第一外装用シート131の両端部を重ね合わせる。Bの位置は、Aの位置に対して周方向(
図10(b)の右回り)に45度ずれた位置である。
第一外装用シート131の接合部131aでは、第一外装用シート131の両端部の繊維方向SF,SFが交差する。
【0052】
また、
図10(c)に示すように、第一外装用シート131の外周面に第二外装用シート132を巻き付ける。このとき、Fの位置から第二外装用シート132を巻き始め、Fの位置において第二外装用シート132の両端部を重ね合わせる。
Fの位置は、Bの位置に対して周方向(
図10(c)の右回り)に180度ずれた位置である。したがって、第二外装用シート132の接合部132aは、第一外装用シート131の接合部131aに対して周方向に180度ずれた位置に配置される。
第二外装用シート132の接合部132aにおいて繊維方向SF,SFが交差する角度は、第一外装用シート131の接合部131aにおいて繊維方向SF,SFが交差する角度と同じである。
【0053】
このようにして、各本体用シート121〜124の積層体に、両外装用シート131,32を重ね巻いて径方向に積層した後に、第二外装用シート132の外周面に緊締テープを連続的に巻き付けた後に、各本体用シート121〜124および各外装用シート131,132を加圧加熱成形して、各外装用シート131,132と、各本体用シート121〜124と、連結部材50(
図8参照)と、を一体化する。
これにより、四枚の本体用シート121〜24および二枚の外装用シート131,132を径方向に積層した胴部13(
図3(a)参照)が形成される。
【0054】
以上、実施形態に係る連結部材50によれば、連結部材50を構成する連結部用シート60(60A〜60H)の形状が、従来の台形状のプリプレグシートよりも、スプール本体11を周方向に等分割して展開した展開図に近似している。
このため、展開図からはみ出るような余分な部分が少なく、皺の発生が抑制されている。
この結果、連結部材50において、スプール本体11の外面を構成するフランジ部14の凹凸が低減し、胴部13に巻回された釣り糸がフランジ部14に係止することなく、スプール本体11からの放出がスムーズとなる。
【0055】
また、スプール10では、
図10(c)に示すように、四枚の本体用シート121〜124および二枚の外装用シート131,132を径方向に積層して胴部13(
図3(a)参照)が形成されているため、胴部13の剛性を高めることができる。
【0056】
また、スプール10では、
図7(a)に示すように、各本体用シート121〜124が同一の円弧形状かつ同一の繊維方向SFである。したがって、各本体用シート121〜124の接合部121a〜124a(
図9(d)参照)では、繊維が同じ重なり方となる。すなわち、各接合部121a〜124a(
図9(d)参照)では繊維が交差する角度が同一になる。
さらに、
図10(a)に示すように、各外装用シート131,132も同一の円弧形状かつ同一の繊維方向SFである。したがって、各外装用シート131,132の接合部131a,132a(
図10(c)参照)においても繊維が同じ重なり方となり、繊維が交差する角度が同一になる。
【0057】
これにより、スプール10では、
図9(d)に示す各本体用シート121〜124の接合部121a〜124aの剛性が同一になるとともに、
図10(c)に示す各外装用シート131,132の接合部131a,132aの剛性も同一になる。
そして、
図9(d)および
図10(c)に示すように、各本体用シート121〜124の各接合部121a〜124aおよび各外装用シート131,132の各接合部131a,132aは、胴部13(
図2(a)参照)の周方向に等間隔に配置されている。
【0058】
さらに、
図9(d)に示すように、各本体用シート121〜124は巻く方向が同一であるとともに、各本体用シート121〜124は胴部13の周方向に等間隔にずれて重なる。そのため、胴部13の周方向において各接合部121a〜124aの間の壁部(AからCの間の壁部、CからEの間の壁部、EからGの間の壁部、GからAの間の壁部)は、各本体用シート121〜124の繊維が同じ重なり方となる。すなわち、胴部13の周方向において各接合部121a〜124aの間の壁部は、繊維が交差する角度が同一になる。これにより、胴部13の周方向において各接合部121a〜124aの間の壁部の剛性が同一になる。
【0059】
同様に、
図9(d)に示すように、各外装用シート131,132は巻く方向が同一であるとともに、各外装用シート131,132は胴部13の周方向に等間隔にずれて重なる。そのため、胴部13の周方向において各接合部131a,132aの間の壁部(BからFの間の壁部、FからBの間の壁部)は、各外装用シート131,132の繊維が同じ重なり方となる。すなわち、胴部13の周方向において各接合部131a,132aの間の壁部は、繊維が交差する角度が同一になる。これにより、胴部13の周方向において各接合部131a,132aの間の壁部の剛性が同一になる。
【0060】
したがって、本実施形態のスプール10では、
図2(a)に示す胴部13の剛性をバランス良く高めることができ、胴部13の周方向の剛性を高めることができるため、胴部13をねじれや潰れに対して強くすることができる。
【0061】
以上、実施形態に係るスプール10について説明したが、本発明はこれに限定されない。
本実施形態では、
図6(b)、(c)に示すように、内層51と外層52との2層構造であったが、本発明は、単層構造や、3層以上の積層構造であってもよい。
また、本実施形態では、
図6(b)、(c)に示すように、一周あたりに四枚の連結部用シート60を用いているが、これに限定されない。
【0062】
また、本実施形態における連結部用シート60A〜60Hの端部(61a、62a、63a)の接合に関し、連結部用シート60A〜60Hの端部同士を重ね合わせているが、本発明はこれに限定されず、連結部用シート60A〜60Hの端部同士を突き合わせてもよい。
【0063】
また、実施形態では、プリプレグシートS(連結部用シート60)の端部(61a、62a、63a)を突き合わせた状態で接合しているが、本発明はこれに限定されず、端部同士を重ね合わせて接合してもよい。
プリプレグシートSの端部を重ね合わせた接合によれば、プリプレグシートS同士が接合される面積が増加して、連結部材50の剛性を高めることができ、ねじれや潰れに対して強くすることができる。
【0064】
図11(a)に示すように、各プリプレグシート121〜124の一端の縁部121b〜124bと繊維方向SFとが交差する角度θ1と、各プリプレグシート121〜124の他端の縁部121c〜124cと繊維方向SFとが交差する角度θ2とを同一に形成してもよい。
この構成では、
図11(c)に示すように、接合部121aにおける繊維方向SFの角度と、接合部121aに隣接する壁部における繊維方向SFの角度とが同一になる。したがって、接合部121aの剛性と、接合部121aに隣接する壁部との剛性との差を小さくすることができ、胴部13の剛性をバランス良く高めることができる。
【0065】
また、
図11(b)に示すように、プリプレグシート121の両端部に亘って連続した繊維SF1を設けた場合には、プリプレグシート121を巻いたときに、周方向に連続した繊維SF1が設けられることになる。
この構成では、胴部13の周方向の剛性を高めることができ、胴部13をねじれや潰れに対して強くすることができる。
特に、
図11(a)に示すように、四枚のプリプレグシート121〜124の全てに、プリプレグシート121〜124の両端部に亘って連続した繊維SF1を設けた場合には、胴部13(
図2(a)参照)の周方向の剛性をより高めることができる。
【0066】
また、本実施形態では、
図9(c)に示すように、四枚の本体用シート121〜124を積層するとともに、
図10(c)に示すように、二枚の外装用シート131,132を積層しているが、本体用シートおよび外装用シートの枚数は限定されるものではない。
【0067】
また、本実施形態では、エポキシ樹脂に炭素繊維を含有させたプリプレグシートSによって、各本体用シート121〜124および各外装用シート131,132が形成されているが、樹脂および強化繊維の種類は限定されるものではない。
【0068】
また、実施形態では、台形部61とスカート部側延出部62と胴部側延出部63とを備えたプリプレグシートSを用いて、胴部13とスカート部15とを連結する連結部材50を製造した例をあげたが、本発明はこれに限定されず、たとえば、
図12に示すように、スプール本体11自体を製造してもよい。以下、スプール本体11を製造する場合について説明する。
【0069】
図12、
図13に示すように、スプール本体11の製造用のプリプレグシートS(以下、「スプール本体用シート80」と称する)は、内金型Mを周方向に四等分して展開した展開図に近似した形状であり、四枚一組で内金型Mの外周を周回するように構成されている。
スプール本体用シート80は、台形状の台形部61と、矩形状のスカート部側延出部62と、台形状の胴部側延出部163と、を有している。
なお、このスプール本体用シート80は、台形状の胴部側延出部163を有している点が、矩形状の胴部側延出部63を有している連結部用シート60との相違点である。
以下、相違点に絞って説明する。
【0070】
胴部側延出部163において、短辺65から胴部側延出部163の下端163bまでの長さL7は、内金型Mの胴部面213の軸方向の長さN7(
図4参照)に対応している。
また、胴部側延出部163の下端163bの長さは、内金型Mのスカート部面215の先端側全周の4分の1に対応した幅N8(
図4参照)に形成されている。このため、短辺65から胴部側延出部163の下端163bに向かうにつれて、胴部側延出部163の左右両端部163a、163aの左右方向の幅L8が幅狭になっている。
【0071】
そして、スプール本体用シート80を実施形態で説明したように折り曲げ成形を行い、内金型Mの周方向に90度ずつずらしながら、四枚の胴部側延出部163を配置し、端部を加熱接合することで、胴部13A、フランジ部14、スカート部15が一体なスプール本体11が形成される。
この変形例に係るスプール本体用シート80によれば、従来の台形状のプリプレグシートよりも、スプール本体を周方向に切り、展開した展開図に近似しているため、展開図からはみ出るような余分な部分が少なく、皺の発生が抑制される。