(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131254
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】ボタン取付方法及びボタン
(51)【国際特許分類】
A44B 1/18 20060101AFI20170508BHJP
A44B 1/28 20060101ALI20170508BHJP
A44B 1/42 20060101ALI20170508BHJP
A44B 1/44 20060101ALI20170508BHJP
A41H 37/10 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
A44B1/18 A
A44B1/28 610C
A44B1/28 620D
A44B1/42 C
A44B1/44 E
A41H37/10 E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-527895(P2014-527895)
(86)(22)【出願日】2012年8月1日
(86)【国際出願番号】JP2012069596
(87)【国際公開番号】WO2014020725
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2014年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 建二
(72)【発明者】
【氏名】隅内 栄二
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第10202128(DE,A1)
【文献】
特開2008−036137(JP,A)
【文献】
実開昭57−157205(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41H 37/10
A44B 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボタン(10、10A、10B)をボタン取付部材(30)を用いて生地(1)に取り付ける方法にして、前記ボタン(10、10A、10B)がシェル部材(11)とシェル部材(11)に結合可能なコア部材(20)とを備え、前記ボタン取付部材(30)が複数本のピン(32)を含む該方法であって、
前記コア部材(20)をシェル部材(11)に対し不完全に結合させて、ボタン(10、10A、10B)を仮組立状態にする工程Aと、
前記ボタン取付部材(30)のピン(32)を生地(1)に次いで前記シェル部材(11)の底部(13)に貫通させる工程Bと、
前記仮組立状態のボタン(10、10A、10B)におけるコア部材(20)をシェル部材(11)に対し完全に結合させて、ボタン(10、10A、10B)を完成状態とすると共に、仮組立状態から完成状態へとシェル部材(11)に対し変位するコア部材(20)によりボタン取付部材(30)のピン(32)を塑性変形させる工程Cとを含み、
前記コア部材(20)は、その底面(21a)にドーム状に窪む凹部(24)を有し、前記ボタン取付部材(30)のピン(32)は、前記工程Cにおいて前記凹部(24)によって塑性変形させられ、
シェル部材(11)は上方に開放する中空円筒状の周側部(12)を含み、
コア部材(20)は前記周側部(12)に結合される円柱状の胴部(21)と、胴部(21)の上端部から半径方向外側に広がる頭部(22)とを含み、
前記工程Aにおける前記仮組立状態のボタン(10、10A、10B)は、コア部材(20)の頭部(22)の下面とシェル部材(11)の上面との間に間隙を有し、かつ、前記シェル部材(11)の周側部(12)に前記胴部(21)が結合されるボタン取付方法。
【請求項2】
前記コア部材(20)の底面(21a)とシェル部材(11)の底部(13)との間の間隔は前記仮組立状態から完成状態へと縮小する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数本のピン(32)を有するボタン取付部材(30)を用いて生地(1)に取り付けられるボタン(10、10A、10B)であって、
シェル部材(11)とコア部材(20)の2部品から構成され、
シェル部材(11)は上方に開放する中空円筒状の周側部(12)を含み、
コア部材(20)は前記周側部(12)に結合される円柱状の胴部(21)と、胴部(21)の上端部から半径方向外側に広がる頭部(22)とを含み、
前記胴部(21)は、その底面(21a)にドーム状に窪む凹部(24)を有し、
前記シェル部材(11)は、周側部(12)の定径部分の上端から上方へと次第に拡径して終端する湾曲状のフランジ部(14B)を含み、前記コア部材(20)の頭部(22)の下面側には、前記フランジ部(14B)を受け入れる上方に環状に窪むフランジ受け入れ部(23)が設けられ、
前記コア部材(20)は、胴部(21)の外周面に前記シェル部材(11)の一部を受け入れる窪み(25)を有し、前記窪み(25)は前記フランジ受け入れ部(23)のすぐ下にあり、
前記フランジ受け入れ部(23)に受け入れられた前記フランジ部(14B)は前記窪み(25)に入り込むボタン。
【請求項4】
前記シェル部材(11)は、周側部(12)に半径方向内側に突き出る突起(16)を有する請求項3に記載のボタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタン取付方法及びボタンに関し、更に詳しくは、シェル部材とコア部材からなるボタンを、複数のピンを有するボタン取付部材によって生地に取り付ける方法と、そのようなボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シェル部材とコア部材を含む複数部品から構成されるボタンが知られている。
図10は、そのようなボタン100を生地1とボタン取付部材110と共に示す断面説明図であり、
図11はボタン100をボタン取付部材110を用いて生地1に取り付けた状態を示す断面説明図である。ボタン100は、上方(上下は
図10及び11の紙面に基づく)を開放する金属製のシェル部材101と、シェル部材101内に収容される合成樹脂製のコア部材102と、シェル部材101の上端面を閉じる金属製のキャップ部材103との3部品から構成される。ボタン100はまた、ボタン胴部100aと、ボタン胴部100aの上端部から半径方向外側に円板状に広がるボタン頭部100bとに区分され、ボタン頭部100bが衣服等のボタン穴に出し入れされる。コア部材102の底面102aとシェル部材101の底部101aとの間には空隙が設けられ、また、コア部材102には、底面102aから上方にドーム状に窪む凹部102bが形成される。ボタン取付部材110は、円板状のベース部111と、ベース部111から突出する2本のピン112とを有する。ボタン100の生地1への取り付けは、ボタン取付部材110のピン102を生地1に貫通させ、次いでシェル部材101の底部101aに貫通させた後、ピン102をコア部材102の凹部102bでU字状に塑性変形させることによって行われる。
【0003】
従来のボタン100において、仮にシェル部材101の底部101aの上面中心とコア部材102の凹部102bの頂点との間の間隔(シェル−コア間隔)が小さいと、ボタン取付部材110のピン112が生地1及びシェル部材101の底部101aを貫通後すぐにコア部材102に接してしまい、この場合、ピン112が座屈し易くなる。これを防ぐため、ボタン100では、上記シェル−コア間隔を比較的大きく取っている。しかしながら、この場合、ピン112の先端が凹部102bに入ってコア部材102に接した後、引き続きピン112をシェル部材101内に底部101aから進入させることにより、ピン112が加締められるため、ピン112の長さを比較的長く設定する必要があり、ボタン取付部材110の製造コストが嵩むといった問題があった。また、ピン112が長いと、コア部材102の凹部102bによってピン112を安定的に一定に加締めることが難しくなるという問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記課題に鑑み、本発明は、ボタン取付部材のピンを比較的短く設定することができ、これにより、ボタン取付部材の製造コストを低く抑えたり、ピンを安定的に加締めることができるボタン取付方法及びボタンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、ボタンをボタン取付部材を用いて生地に取り付ける方法にして、前記ボタンがシェル部材とシェル部材に結合可能なコア部材とを備え、前記ボタン取付部材が複数本のピンを含む該方法であって、前記コア部材をシェル部材に対し不完全に結合させて、ボタンを仮組立状態にする工程Aと、前記ボタン取付部材のピンを生地に次いで前記シェル部材の底部に貫通させる工程Bと、前記仮組立状態のボタンにおけるコア部材をシェル部材に対し完全に結合させて、ボタンを完成状態とすると共に、仮組立状態から完成状態へとシェル部材に対し変位するコア部材によりボタン取付部材のピンを塑性変形させる工程Cとを含むボタン取付方法が提供される。
【0006】
本発明では、シェル部材に対しコア部材が不完全に結合する仮組立状態のボタンを、シェル部材に対しコア部材が完全に結合する完成状態にしながら、ボタン取付部材のピンをコア部材による加締める。これにより、生地を貫通したボタン取付部材のピンを、加締め始める前にシェル部材内に底部から深く受け入れることができる。また、コア部材をシェル部材に対して変位させながらピンを加締めるため、この加締め時にピンをシェル部材内に更に受け入れる必要がない。そのため、ボタン取付部材のピンを比較的短くすることが可能となる。
【0007】
本発明において、シェル部材の材料として、アルミニウム合金、チタン合金、銅合金、マグネシウム合金等の金属を好ましく挙げることができるが、これらに限定されるものではない。コア部材の材料としては、汎用プラスチック、エンジニアリング・プラスチック等の熱可塑性樹脂を好ましく挙げることができるが、これらに限定されるものではない。生地には、織物、布、不織布、フェルト、皮、樹脂シート等が含まれる。また、本発明の好ましい実施形態において、ボタン取付部材のピンは2本であるが、これに限定されるものではない。更に、本発明の一実施形態において、ボタンは、シェル部材とコア部材の2部品から構成されるが、キャップ等の別の部材が付加され得る。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記コア部材の底面とシェル部材の底部との間の間隔は前記仮組立状態から完成状態へと縮小する。仮組立状態におけるコア部材の底面とシェル部材の底部との間の比較的大きい間隔に、ボタン取付部材のピンを、加締め前にシェル部材内に深く受け入れることができる。また、コア部材の底面とシェル部材の底部との間の間隔を仮組立状態から完成状態へと狭めながら、ボタン取付部材のピンをコア部材により加締めることができる。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記コア部材は、その底面にドーム状に窪む凹部を有し、前記ボタン取付部材のピンは、前記工程Cにおいて前記凹部によって塑性変形させられる。生地及びシェル部材の底部を貫通したボタン取付部材のピンは、凹部に受け入れられてコア部材に接した後、シェル部材に対し変位するコア部材の凹部の凹球面によって加締められる。
【0010】
本発明の一実施形態において、シェル部材は上方に開放する中空円筒状の周側部を含み、コア部材は前記周側部に結合される円柱状の胴部と、胴部の上端部から半径方向外側に広がる頭部とを含み、前記工程Aにおける前記仮組立状態のボタンは、コア部材の頭部の下面とシェル部材の上面との間に間隙を有してなる。この場合、ボタンが仮組立状態から完成状態となると、コア部材の頭部の下面とシェル部材の上面との間の間隙は実質的になくなる。
【0011】
本発明の別の側面によれば、複数本のピンを有するボタン取付部材を用いて生地に取り付けられるボタンであって、シェル部材とコア部材の2部品から構成され、シェル部材は上方に開放する中空円筒状の周側部を含み、コア部材は前記周側部に結合される円柱状の胴部と、胴部の上端部から半径方向外側に広がる頭部とを含み、前記胴部は、その底面にドーム状に窪む凹部を有するボタンが提供される。かかるボタンは、上述した本発明に係るボタン取付方法を使用して生地に取り付けることができる。すなわち、まず、シェル部材とコア部材を不完全に結合させた仮組立状態とする。次に、ボタン取付部材のピンを生地に次いでシェル部材の底部に貫通させる。その後、前記仮組立状態のボタンにおけるコア部材をシェル部材に完全に結合させて、ボタンを完成状態とすると共に、仮組立状態から完成状態へとシェル部材に対し変位するコア部材によりボタン取付部材のピンを加締める。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記シェル部材は、周側部の上端側から半径方向外側に延びるフランジ部を含み、前記コア部材の頭部は、前記フランジ部を受け入れるフランジ受け入れ部を有する。シェル部材のフランジ部は仮組立状態から完成状態となる際にコア部材のフランジ受け入れ部に受け入れられる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記シェル部材は、周側部に半径方向内側に突き出る突起を有する。このような突起は、ボタンが仮組立状態から完成状態となった際、コア部材の胴部の外周面に食い込むことにより、コア部材をシェル部材から抜け難くする役割を果たし得る。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記コア部材は、胴部の外周面に前記シェル部の一部を受け入れる窪みを有する。このような窪みは、ボタンが仮組立状態から完成状態となった際、シェル部材の一部を受け入れることにより、コア部材をシェル部材から抜け難くする役割を果たす。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、仮組立状態のボタンを完成状態にしながら、シェル部材に対して変位するコア部材によってボタン取付部材のピンを加締めることができる。そのため、生地を貫通したボタン取付部材のピンを、加締め始める前にシェル部材内に深く受け入れることができ、また、この加締め時にピンをシェル部材内に更に受け入れる必要がない。そのため、ボタン取付部材のピンを比較的短くすることが可能となり、ボタン取付部材の製造コストを低く抑えたり、ピンを安定的に一定に加締めることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るボタンをボタン取付部材を用いて生地に取り付ける直前の状態を示す断面説明図であり、ボタンは仮組立状態にある。
【
図2】
図2は、ボタンの取付工程において、ボタン取付部材のピンが生地を貫通した時点を示す断面説明図である。
【
図3】
図3は、ボタンの取付工程において、ボタン取付部材のピンがシェル部材の底部を貫通した後、コア部材の凹部に入ってコア部材に接した時点を示す断面説明図である。
【
図4】
図4は、ボタンを生地に取り付けた状態を示す断面説明図であり、ボタンは完成状態にある。
【
図5】
図5は、ボタン取付部材のピンが生地を貫通した時点からピンの加締めが完了した時点までのコア部材の降下量とピンが受ける荷重との関係を表すグラフである。
【
図6】
図6は、本発明に係るボタンの変形例を示す断面説明図である。
【
図7】
図7は、本発明に係るボタンの別の変形例を示す断面説明図である。
【
図8】
図8は、
図7のボタンの一部を拡大した断面説明図である。
【
図9】
図9は、完成状態となった
図7のボタンの一部を拡大した断面説明図である。
【
図10】
図10は、従来のボタンを生地とボタン取付部材と共に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しつつ説明するが、本発明はそれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び均等の範囲内で変更等がなされ得る。
図1は、本発明の一実施形態に係るボタン10をボタン取付部材30を用いて生地1に取り付ける直前の状態を示す断面説明図である。ボタン10を生地1に取り付けるに当たり、ボタン10及びボタン取付部材30は、プレス装置の上方ダイ40及び下方ダイ50にそれぞれセットされる。ボタン10は、金属製のシェル(外殻)部材11と、シェル部材11に対し結合される金属製のコア部材20との2部品からなる。シェル部材11は、中空円筒状の周側部12と、周側部12の下端面(上下は
図1等の紙面に基づく。生地1を挟んで上方にボタン10が配置され、下方にボタン取付部材30が配置される。)を閉じる底部13と、周側部12の上端から半径方向外側に延びるフランジ部14とを含む。シェル部材11の周側部12は上方に開放している。シェル部材11の底部13には、後述するボタン取付部材30のピン32を、底部13の貫通時に受け入れる上方に窪む環状の窪み15が設けられる。コア部材20は合成樹脂製であってもよい。
【0018】
コア部材20は、シェル部材11の周側部12の内部に収容される中実円柱状の胴部21と、胴部21の上端部から半径方向外側に円板状に広がる頭部22とを含む。頭部22が胴部21の外周面から半径方向外側に突出する長さは、シェル部材11におけるフランジ部14が周側部12から半径方向外側に突出する長さの約2倍である。コア部材20の頭部22の下面側には、コア部材20がシェル部材11に完全に結合した時(
図4参照)、シェル部材11のフランジ部14を受け入れる上方に環状に窪むフランジ受け入れ部23が設けられる。更に、コア部材20は、胴部21の底面21aに上方にドーム状に窪む凹部24を有する。凹部24は、底面21aの外周に対し同心状であり、詳しくは後述するが、ボタン取付部材30のピン32を所要に塑性変形させる、すなわち加締めるためのものである。この凹部24はドーム状であり、ピン32の先端が凹部24に接触し、その形状に沿って塑性変形するため、2本のピン32において、一方のピン32の先端は他方のピン32に近づく方向に曲がるように塑性変形される。シェル部材11の周側部12の内径は、コア部材20の胴部21の外径よりもわずかに小さく形成される。そのため、コア部材20の胴部21をシェル部材11の周側部12に圧入することにより、シェル部材11の周側部12が半径方向外側にわずかに膨らみつつコア部材20とシェル部材11が一体的に結合する(
図4参照)。
図1に示すボタン10は、コア部材20の胴部21をシェル部材11の周側部12の途中まで挿入して、コア部材20がシェル部材11に対し不完全に結合した状態(以下「仮組立状態」という。)にある。仮組立状態において、コア部材20の胴部21がシェル部材11の周側部12を半径方向外側に押圧するため、コア部材20はシェル部材11から安易に分離しない。仮組立状態からコア部材20の胴部21をシェル部材11の周側部12に更に押し込んで、コア部材20とシェル部材11とが完全に結合した状態(以下「完成状態」という。)が
図4に示される。完成状態のボタン10は、ボタン胴部10aと、ボタン胴部10aの上端部から半径方向外側に円板状に広がるボタン頭部10bとに区分される。仮組立状態における不完全に結合した状態とは、完成状態に比べて、シェル部材11とコア部材20との結合状態での位置関係が異なる。具体的には、仮組立状態での、シェル部材11の一部からコア部材20の一部までの上下方向の寸法(間隔とも言う)が、完成状態の同寸法よりも大きい位置関係となっている。また、シェル部材11の底部13の上面中心点と、コア部材20の頭部22の上面中心点との寸法についても、仮組立状態では、完成状態の同寸法よりも大きい。さらに、言い換えると、仮組立状態では、コア部材20の頭部22の下面とシェル部材11の上面(例えば、
図1に表すフランジ部14の上面)との間に間隙を有する。ここで、頭部22の下面はフランジ受け入れ部23における面である。なお、シェル部材11にフランジ部14を形成しない場合もあり、このとき、シェル部材11の上面とは、周側部12の開放する側の端面である。
【0019】
ボタン取付部材30は、円板状のベース部31と、ベース部31から平行に突出し、先細りする2本のピン32とを有する。ベース部31には、金属製のキャップ33がベース部31の下面側から被せられる。キャップ33を除くベース部31とピン32とは、樹脂又は金属材料から一体に形成される。2本のピン32の先端間の間隔は、ボタン10のシェル部材11の底部13における窪み15の環径とほぼ同じである。
【0020】
次に、本発明に係るボタン取付方法の一実施形態として、ボタン10をボタン取付部材30を用いて生地1に取り付ける手順を説明する。ボタン10は、シェル部材11とコア部材20が事前に組み合わされて
図1に示す仮組立状態とされ、仮組立状態のボタン10のコア部材20の頭部22を上方ダイ40の底面から上方に窪むボタン保持部41に保持させる。また、ボタン取付部材30のベース部31が下方ダイ50の上面から下方に窪む取付部材保持部51に載置される。更にボタン10とボタン取付部材30の間に生地1が配される。この状態からプレス装置を作動させ、上方ダイ40を下方ダイ50に向かって降下させることにより、ボタン10が降下して、以下に述べるようにボタン取付部材30により生地1に固定される。なお、ボタン10の生地1への取り付けは、ボタン10を降下させる以外にも、静止状態のボタン10に対しボタン取付部材30を上昇させたり、ボタン10又はボタン取付部材30を水平方向に移動させて行うこともできる。
【0021】
図2は、上方ダイ40と共に降下中の仮組立状態のボタン10が、下方ダイ50に支持されたボタン取付部材30の2本のピン32に対し生地1を押し下げ、これによりピン32が生地1を上方に貫通し、ボタン10のシェル部材11の底部13における窪み15に入った時点を示す。
図3は、
図2の状態から上方ダイ40が更に降下し、ピン32がシェル部材11の底部13を貫通し、コア部材20の凹部24に入ってコア部材20に接した時点を示す。この時点で、生地1はボタン10のシェル部材11によりボタン取付部材30のベース部31に押し付けられ、ボタン10のシェル部材11はこれ以上下方に移動できない最下方位置にある。この状態から上方ダイ40が更に降下することにより、ボタン10におけるコア部材20のみが降下を続ける。これにより、
図4に示すように、コア部材20の胴部21がシェル部材11の周側部12内に深く入り込んで、ボタン10が完成状態となる。これと同時にボタン取付部材30のピン32が胴部21の凹部24の凹球面に沿って湾曲状(J字状)に塑性変形させられ、ボタン10が生地1に固定される。ボタン10が完成状態に至る際、シェル部材11のフランジ部14はコア部材20のフランジ受け入れ部23に受け入れられる。
【0022】
以上のボタン10では、シェル部材11の底部13の上面中心点とコア部材20の凹部24の頂点(最上位点)との間の上下方向の間隔(以下「シェル−コア間隔」という。)が、仮組立状態での比較的大きいG(
図1参照)から完成状態でのg(
図4参照)へと縮小する。そして、ボタン取付部材30のピン32が生地1及びシェル部材11の底部13を貫通してコア部材20の凹部24に入ってコア部材20に接する時点(
図3参照)では、ボタン10は仮組立状態でシェル−コア間隔Gであるため、ピン32が生地1及びシェル部材11の底部13を貫通後すぐにコア部材20に接することはない。そのため、ピン32が容易に座屈するようなことはない。また、ピン32の先端が凹部24に入ってコア部材20に接した後は、ピン32がシェル部材11内に底部13から更に進入することはなく、コア部材20が降下してピン32が加締められる。そのため、ピン32の長さを比較的短く設定することができる。一例ではあるが、従来におけるピンの長さが8mmに対し、本発明では7mmとでき、1mm短く設定できる。また、同じく一例ではあるが、仮組立状態でのシェル−コア間隔Gは5mmで、完成状態でのシェル−コア間隔gは2mmであり、従来におけるシェル−コア間隔は3.4mmである。そして、生地は1mmである。本発明にて、仮組立状態でのシェル−コア間隔Gに対するピンの長さを比較すると、シェル−コア間隔Gは、ピンの長さの半分よりも大きくなるようにしている。このため、ピン32の先端がコア部材20に接するまでに、ピン32の半分以上がシェル部材11内に入り込むため、従来のものよりも座屈が起こりにくい。また、一例であるが、仮組立状態では、コア部材20をシェル部材11から外そうとする力は、完成状態における力よりも小さい力で外れ、完成状態においては、通常の使用状態の力では外れることがない。また、シェル部材11の上面から底部13の上面までの寸法は9mm、コア部材20の胴部21の上下方向の寸法(コア部材20の頭部22の下面から胴部21の下面までの寸法)は8mmとしており、仮組立状態においては、胴部21はシェル部材11に5mm入り込んで結合される。つまり、仮組立状態にて、胴部21の下面(凹部24の周囲)とシェル部材11の上面(フランジ部14の上面)の寸法が5mmであり、胴部21の上下方向の寸法の半分以上がシェル部材11の内部に入り込んで結合されているため、仮組立状態が安定して維持することができる。そして、シェル部材11の上面とコア部材20の頭部22の下面との間には3mmの間隙を有し、完成状態においては、この3mmの間隙がなくなり、ほぼ0mmになる。
【0023】
図10及び
図11に示す従来のボタン100は、シェル部材101及びコア部材102の材料がボタン10のそれらと同じであり、また、上下方向長さ、ボタン胴部100a及びボタン頭部100bの外径が完成状態のボタン10のそれらと実質的に同じである。なお、ボタン100のシェア−コア間隔は仮組立状態のボタン10のシェア−コア間隔Gとほぼ同じである。更に、
図10及び
図11に示すボタン取付部材110は、ボタン取付部材30と、前者のピン112が後者のピン32よりも長い点以外は同じものである。ボタン100は、ボタン10と同様に、ボタン取付部材110のピン112が生地1及びシェル部材101の底部101aを貫通後すぐにコア部材102に接することはない。しかしながら、ボタン100では、ピン112の先端が凹部102bに入ってコア部材102に接した後もピン112がシェル部材101内に底部101aから進入して加締められる。そのため、ボタン取付部材110のピン112の長さはボタン取付部材30のピン32よりも長く設定される。
【0024】
図5は、本発明に係るボタン10と従来のボタン100を生地1に取り付ける際の、ボタン取付部材30、110のピン32、112が生地1を貫通した時点Aからピン32、112の加締めがそれぞれ完了した時点E、Gまでのコア部材20、102の降下量(ストローク)と、ピン32、112が受ける荷重との関係を表すグラフである。従来のボタン100では、ボタン取付部材110のピン112が生地1を貫通した時点Aからボタン100が更に降下すると、ピン112がシェル部材101の底部101aを貫通する時点Bまで荷重が上昇する。次いで、ピン112の先端がコア部材102の凹部102bに入ってコア部材102に接し(時点F)、この時点Fからピン112が加締められて荷重が更に上昇し、時点Gで加締めが完了する。時点Fから時点Gまでの加締め時にピン112にかかる荷重は約26kgから約70kgへと上昇する。また、時点Aから時点Gまでのコア部材102の降下量は7.5mmである。これに対し、本発明に係るボタン10では、ボタン取付部材30のピン32が生地1を貫通した時点Aからボタン10が更に降下してピン32がシェル部材11の底部13を貫通する時点Bまで荷重が上昇する点はボタン100とほぼ同じである。次いで、ピン32の先端がコア部材20の凹部24に入ってコア部材20に接する(時点C)。従来のボタン100ではピン112がシェル部材の101の底部101aを貫通した時点Bからコア部材102に接する時点Fまでのコア部材102の降下量は約2mmであるのに対し、本発明のボタン10では時点Bからピンがコア部材20に接する時点Cまでにコア部材20は約4mm降下する。このように、時点Bと時点Fの降下量に比べて時点Bから時点Cまでの降下量が大きいことで、底部を貫通したピンが多くシェル部材内に入り込んでいるため、従来のものよりも、ピンがシェル部材内に入りきる前に曲がる(座屈する)などが起こりにくい。時点Cからシェル部材11内に徐々に入り込むコア部材20によりピン32が加締めら、これにより荷重が更に上昇し、時点Eで加締めが完了する。時点Cから時点Eの途中の時点Dは、シェル部材11にコア部材20が完全に圧入された時点であり、その後、完成状態のボタン10は時点Eまで若干降下する。時点Cから時点Eまでの加締め時にピン32にかかる荷重は約33kgから約120kgへと大きく上昇する。また、時点Aから時点Eまでのコア部材20の降下量は9.5mmである。
【0025】
図6は、ボタン10の変形例であるボタン10Aの仮組立状態を示す。ボタン10Aは、次に述べる特徴部分(シェル部材11の突起16)を除きボタン10と同じものであるため、特徴部分以外はボタン10と同じ参照番号を用いて説明を省略する。ボタン10Aは、シェル部材11の周側部12の上下方向中間点よりやや下方に半径方向内側にわずかに突き出る環状の突起16を有する。突起16は仮組立状態におけるコア部材20の底面21aのすぐ下にある。突起16は、仮組立状態のコア部材20の胴部21がシェル部材11の周側部12内に入り込んで完成状態となった際、突起16がコア部材20の胴部21の外周面に食い込むことにより、コア部材20をシェル部材11から抜け難くする役割を果たす。
【0026】
図7は、ボタン10の更なる変形例であるボタン10Bの仮組立状態を示す。ボタン10Bは、次に述べる特徴部分(シェル部材11のフランジ14B及びコア部材20の窪み25)を除きボタン10と同じものであるため、特徴部分以外はボタン10と同じ参照番号を用いて説明を省略する。ボタン10Bは、コア部材20の胴部21の外周面におけるフランジ受け入れ部23のすぐ下に半径方向内側にわずかに窪む環状の窪み25を有する。また、ボタン10Bのシェル部材11は、周側部12の定径部分の上端から上方へと次第に拡径するように半径方向外側へと延びる湾曲状のフランジ部14Bを有する。ボタン10Bにおける周側部12に対するフランジ部14Bの曲率は、ボタン10に比べ小さい。
図8は、仮組立状態における窪み25及びフランジ部14Bを拡大して示す。この状態からボタン10Bが完成状態となると、
図9に拡大して示すように、フランジ部14Bがコア部材20のフランジ受け入れ部23に受け入れられる。これにより、湾曲状のフランジ部14Bがフランジ受け入れ部23により直角に近付くように変形させられ、これにより、フランジ部14Bの基端部である半径方向内側部分が窪み25に入り込む。フランジ部14Bの一部がコア部材20の窪み25に入り込むことにより、コア部材20をシェル部材11から抜け難くする役割を果たす。なお、窪み25は、コア部材20の胴部21の全周に連続するものでなくてもよく、複数であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 生地
10、10A、10B ボタン
11 シェル部材
12 周側部 1
13 底部
14、14B フランジ部
16 突起
20 コア部材
21 胴部
22 頭部
24 凹部
25 窪み
30 ボタン取付部材
31 ベース部
32 ピン