特許第6131262号(P6131262)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131262
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】複合構造
(51)【国際特許分類】
   A44C 21/00 20060101AFI20170508BHJP
   B21K 25/00 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   A44C21/00
   B21K25/00 Z
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-539197(P2014-539197)
(86)(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公表番号】特表2014-532563(P2014-532563A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】CA2012050773
(87)【国際公開番号】WO2013063700
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年10月27日
(31)【優先権主張番号】61/554,170
(32)【優先日】2011年11月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514110897
【氏名又は名称】ロイヤル カナディアン ミント
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】リー シャンヤオ
【審査官】 石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−212342(JP,A)
【文献】 特開2004−275667(JP,A)
【文献】 特開平07−000216(JP,A)
【文献】 特開2004−220114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 21/00
B21K 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外リングと、
お互いの上端に積み重ねられ、前記外リングの中に配置された2つの挿入物と、
前記2つの挿入物を互いに接着するために前記2つの挿入物の間に配置された少なくとも1つの中間層と、を備え、
前記外リング及び前記2つの挿入物のそれぞれが異なる材料で形成されており、
前記外リング及び前記2つの挿入物が多層めっきされた材料で形成されており、
それぞれの前記挿入物は、2つの対向する面及び外周表面を有する表面を有し、
前記外リング及びそれぞれの前記挿入物が、それぞれの前記挿入物の前記外周表面に形成された複数の凹部により互いに固定されており、
それぞれの前記凹部は、前記外周表面に開口部を有しており、
前記凹部の前記開口部の形状は、前記挿入物を積み重ねる方向に対して傾斜しており、
前記凹部の前記開口部の形状は、前記対向する面と同一平面上にある平面に対して傾斜しており、
前記凹部の前記開口部の幅は、前記凹部の前記開口部の深さよりも大きい、
流通コイン。
【請求項2】
前記凹部の前記開口部は、楕円形である
請求項1に記載の流通コイン。
【請求項3】
前記凹部の前記開口部は、V字形状である
請求項1に記載の流通コイン。
【請求項4】
前記凹部の前記開口部は、平行四辺形である
請求項1に記載の流通コイン。
【請求項5】
前記凹部が、0.1mmから0.3mmまでの深さを有する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の流通コイン。
【請求項6】
前記挿入物が円形である
請求項1〜5のいずれか1項に記載の流通コイン。
【請求項7】
前記挿入物が非円形である
請求項1〜5のいずれか1項に記載の流通コイン。
【請求項8】
前記外リングが円形である
請求項1〜6のいずれか1項に記載の流通コイン。
【請求項9】
前記外リングが非円形である
請求項1〜5及び請求項7のいずれか1項に記載の流通コイン。
【請求項10】
前記外リング及び前記2つの挿入物が金属製である
請求項1〜9のいずれか1項に記載の流通コイン。
【請求項11】
外リングを供給し、
第1円形挿入物及び第2円形挿入物を供給し、
前記挿入物の外周表面に複数の凹部を形成し、
前記外リングと、前記第1円形挿入物と、前記第1円形挿入物及び前記第2円形挿入物を互いに接着するための少なくとも一つの中間層と、前記第2円形挿入物と、を続けてコインプレスに投入し、
前記外リング、前記第1円形挿入物、及び前記第2円形挿入物を押圧及び刻印して結合させる、流通コインの製造プロセスであって、
前記第1円形挿入物、前記第2円形挿入物、及び前記外リングは、異なる材料で形成され、かつ、多層めっきされた材料により形成され、そして、前記第1円形挿入物及び前記第2円形挿入物は、2つの対向する面及び外周表面を有する表面を有し、
それぞれの前記凹部は、前記外周表面に開口部を有しており、
前記凹部の前記開口部の形状は、前記挿入物を積み重ねる方向に対して傾斜しており、
前記凹部の前記開口部の形状は、前記対向する面と同一平面上にある平面に対して傾斜しており、
前記凹部の前記開口部の幅は、前記凹部の前記開口部の深さよりも大きい、
流通コインの製造プロセス。
【請求項12】
切り出された金属のブランクを用意し、
前記ブランクを縁取りし、
前記ブランクに内穴を形成してリングを形成し、
前記リングをアニールして金属の前記外リングを形成し、
金属の前記外リングにめっきを行う
ことにより前記外リングを形成する請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
切り出されたブランクを用意し、
バリを取り除き、
めっきを行う
ことにより前記挿入物を形成する請求項11又は12に記載のプロセス。
【請求項14】
さらに、前記めっきを行う前に、前記ブランクをアニールし、洗浄する
請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記流通コインは、請求項1〜10のいずれか1項に記載の流通コインである
請求項1114のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
請求項1115のいずれか1項に記載のプロセスによって形成される流通コイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的に複合構造に関し、例えば金属コイン等に関する。
【背景技術】
【0002】
バイメタルコインは、流通するコインとして多くの国で広く用いられている。そのようなバイメタルコインの多くは、例えば、外リングが白ニッケルで内部コアが金黄銅、又はそれとは逆の構成のように、2つの異なった色の金属から作られている。バイカラーやバイメタルのコインは、単色(mono-color)や単金属(mono-metal)のコインと比較して生産するのがより複雑なので、バイメタルコインはより高額の貨幣として通常用いられる。
【0003】
バイメタルコインを製造するために、ロック機構が2つの部材を互いに固定するために用いられる。下記はロック機構の一例である。
【0004】
1)コイン部材の表面に平行な一連の溝は、外リング、及び内部コアに形成された突起部(ridges)に形成される。2つの部材はコインプレスの力により結合される(例えば、米国特許第5094922号公報を参照してもらいたい)。
【0005】
2)コインを叩いている間の力によって結合する時に外リングからの材料が流れ込んで部分的に溝を満たすように、溝又は一連の不連続な溝は内部コアの外縁に形成される(例えば、米国特許第44728912号公報及び米国特許第5630288号公報を参照してもらいたい)。
【0006】
3)2つの部材を結合させるために突起部上の余分な材料が外リングの内側円周表面に流れ込まざるを得ないように、突起部は内部コアの外縁に形成される(例えば、米国特許第6189197号公報を参照してもらいたい)。
【0007】
4)外リング及び内部コアは、異なった厚さ及び硬さを有し、へり(lip)又は凸部(tongue)が形成されて、例えば内部コアのような薄い部材を覆う(例えば、米国特許第6044541号公報を参照してもらいたい)。溝又は突起部は使われていない。
【0008】
ブルガリア特許BG109647号公報は、3色と3種の金属のコインについて説明している。これらのコインは、流通するコインとは対照的に、コレクター向けコインのようである。コレクター向けコインは通常よく保護されている一方、流通するコインははるかに多くの使用に耐えることができなければならない。BG109647号公報は、流通するコインで用いるのに十分なロック機構について説明していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、本開示は、少なくとも3つの異なる部材、及びその製造プロセスを有する複合構造に関する。複合構造は、金属コインであってもよいが、金属コインである必要はない。一の実施形態において、複合構造は、外リングと、お互いの上端に積み重ねられ、外リングの中に配置された2つの挿入物と、を有する。外リング及び2つの挿入物のそれぞれは、異なる材料により形成されている。外リング及び挿入物のそれぞれは、挿入物の外周表面に形成された複数の凹部により互いに固定されている。構造は、2つの挿入物を互いに接着するために2つの挿入物の間に配置された少なくとも1つの中間層をさらに有する。3つの主要部材及び中間層は、刻印(coining)及び打ち付け(striking)の間の押圧する力により単一構造にされてもよい。一の実施形態において、外リング、一の内部コア、及び他方の内部コアは、異なる金属及び異なる色により形成されてもよい。このコインはセキュリティ特性を向上することができ、自動的な方法により生産することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様において、本開示は、外リングと、お互いの上端に積み重ねられ、前記外リングの中に配置された2つの挿入物と、を有し、前記外リング及び前記2つの挿入物のそれぞれが異なる材質で形成されており、前記外リング及び前記挿入物のそれぞれが、前記挿入物の外周表面に形成された複数の凹部により互いに固定されている複合構造を提供する。
【0011】
本開示の他の態様及び特徴は、添付の図面と合わせて具体的な実施形態の下記の説明を検討すれば、当業者にとって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示の実施形態は、あくまで一例として、添付された図面を参照しながら説明される。
【0013】
図1図1は、2つの挿入物を透視図で示した、開示された実施形態に係るコインの概略断面図である。
【0014】
図2図2は、開示された実施形態に係るコインの概略断面図である。
【0015】
図3a図3aは、開示された実施形態に関して、V字(chevron)形状の凹部を有する挿入物の概略図である。
【0016】
図3b図3bは、開示された実施形態に関して、斜線形状(angle)の凹部を有する挿入物の概略図である。
【0017】
図4図4は、開示された実施形態に関して、3つの主要部品を供給して取り付ける様子を示す概略図である。
【0018】
図5図5は、本発明の構造がどのようにして特有の電磁気的特徴(EMS:Electromagnetic Signature)を供給するかを示す概略図である。
【0019】
図6図6は、本発明の構造がどのようにして特有の電磁気的特徴(EMS:Electromagnetic Signature)を供給するかを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態では「金属」という用語は、金属合金、めっきされた金属、めっきされた金属合金を含むものとする。
【0021】
本実施形態における議論の多くは、コイン、その中でも特に金属コインに関するが、それに限定することを意図するものではない。非金属材料は、明らかに本実施形態に含まれており、ポリマー、セラミックス、及び複合材料を含み、それらに限定されない。コイン以外の構造、例えば、メダル、大メダル等も明らかに含まれる。
【0022】
一般的に、本開示は、少なくとも3つの異なる部材を有する複合構造、及びその製造プロセスに関する。複合構造は、金属コインであってもよいが、それである必要はない。一の実施形態では、複合構造は、外リングと、お互いの上端に積み重ねられ、外リングの中に配置された2つの挿入物と、を有する。外リング、及び挿入物のそれぞれは、異なる材料により形成されている。外リング、及び挿入物のそれぞれは、挿入物の外周表面に形成された複数の凹部により互いに固定される。複合構造は、2つの挿入物を互いに接着するために2つの挿入物の間に配置された少なくとも1つの中間層をさらに有してもよい。3つの主要な部材及び中間層は、刻印又は打ちつけの間の押圧する力により単一構造とされてもよい。一の実施形態では、外リング、一の内部コア、及び他方の内部コアは、異なる金属により形成されているとともに、異なる色である。このコインは、セキュリティを増強することができるし、自動的な方法で生産される。
【0023】
図1は、一の実施形態を説明する。3つの主要部材は、外リング2、並びに、外リング2の中に連続して入れられた、異なる構成及び色を有する2つの異なる挿入物4,6である。3つの主要部材は異なる金属であってもよい。2つの挿入物4,6は、金属基板上に多層めっきのコーティングが施されていて、その結果多層の金属要素からなる特有の中間層が2つの挿入物4,6の間に形成されるように設計されていてもよい。3つの部材は、異なるめっき処理を施されていてもよい。例えば、外リング2は、ニッケル、銅、ニッケルめっきされた鋼でもよいし、第1挿入物4は、真ちゅう、青銅、銅、及びニッケルめっきされた鋼でもよいし、第2挿入物6は、銅、ニッケルめっきされた鋼でもよい。そのように構造化されたブランクから製造した結果、コインは3色を有するか、又は、すなわち、白いリング、赤い上部挿入物、及び黄色い下部挿入物に仕上げる。
【0024】
上述の例からの材料構成の観点では、3つの主要部材は交換可能といえる。すなわち、そのように構造化されたコインは、例えば、黄色いリング、赤い上部挿入物、及び白い下部挿入物を有してもよい。これは、デザイナーが選んでもよい多くの組み合わせの単なる一例である。
【0025】
図2を参照すると、3つの主要部材は、多層めっき構造としてデザイン及び設計されていて、例えば、図2に概念的に示されるように、外リング2は、鋼コア8と、第1層11、第2層12、及び第3層13のような3層のめっき層と、からなる。2つの挿入物4,6は、第4層14、第5層15、第6層16、第7層17、第8層18、及び第9層19のような異なる多層めっきの電気めっきをされた、2つの異なる金属基板からなる。2つのめっきされた挿入物の間の接触面9における合計6層は、合わせて20〜60μmであり最大で60μmの厚さを有してもよく、これらの層は、特有のセキュリティ特性、すなわち、コインの特有の電磁気信号(EMS:Electro Magnetic Signals)の組み合わせを得られるほど十分に厚い。
【0026】
本実施形態によると、上述のコインを生産するために下記のプロセスを用いてもよい。
【0027】
1. 金属若しくは金属合金のいずれか又はめっきされた材料を材料とする外リングを生産する。
a)金属または金属合金が用いられる場合、主要なステップは下記の通りである。
i.切り出されたブランクを用意する。
ii.予め定められた縁取りプロファイル(rimming profile)の縁取り区分(rimming segment)を用いた縁取りプロセスによりブランク端(blank edge)を用意する。
iii.穴あけプロセスにより内穴を用意し又は開ける。
iv.アニールして適切な硬さを得る。
b)めっきされた材料が用いられる場合、主要なステップは下記の通りである。
i.切り出されたブランクを用意する。
ii.予め定められた縁取りプロファイルの縁取り区分を用いた縁取りプロセスによりブランク端を用意する。
iii.穴あけプロセスにより内穴を用意し又は開ける。
iv.バリ取り(deburing)及びクリーニングをする。
v.アニーリング、クリーニング、及びバレルめっき、必要に応じて後アニーリングを含むめっきプロセスを行う。
【0028】
2. 外リングに対して異なる材料、例えば金属若しくは金属合金のいずれか又はめっきされた材料の第1内部挿入物を生産する。
a)金属または金属合金が用いられる場合、主要なステップは下記の通りである。
i.切り出されたブランクを用意する。
ii.少ない力での縁取り又はいわゆる「キスリミング(kiss rimming)」によりカットして、ブランクからバリをバリ取り又は除去する。
iii.特製の縁取り区分を用いることにより、切り出されたブランクの外周に(できる限り等間隔で)複数の凹部を用意する。例えば、傾いたパターン、V字、又は傾いたこぶであり、例えば、幅が0.5〜1.0mmの間であり、深さが約0.2mm(又は0.1mm〜0.3mm)である縁取り区分が凹部を形成するのに用いられる。このように形成された凹部は、打ちつけ又は刻印のときに挿入物と外リングとを互いに固定することができる。図3a及び図3bは、V字状の凹部20を有する挿入物(図3a)及び傾いた凹部22(図3b)を示す。角度のある凹部は鉛直方向(すなわち、積み上げられる方向、又は挿入物と外リングの間の接触方向に垂直な方向)から30°〜45°の角度を有してもよい。
iv.アニールして適切な硬さを得る。
b)めっきされた材料が用いられる場合、主要なステップは下記の通りである。
i.切り出されたブランクを用意する。
ii.バリ取り及び縁取りをして、予め定められた縁取りプロファイルの縁取り区分を用いた縁取りプロセスにより、わずかに縁取りされた縁部を設ける。
iii.アニーリングプロセスにより適当な硬さになるように軟化させる。
iv.洗浄、表面前処理、及びめっき、必要に応じて後アニーリングを含むバレルめっきプロセスによりめっきを行う。
v.特製の縁取り区分を用いることにより、切り出されたブランクの外周に(できる限り等間隔で)複数の凹部を用意する。例えば、傾いたパターン、V字型、又は傾いたこぶであり、例えば、幅が0.5〜1.0mmの間であり、深さが約0.2mm(又は0.1mm〜0.3mm)である縁取り区分が凹部を形成するのに用いられる。このように形成された凹部は、打ちつけ又は刻印のときに挿入物と外リングとを互いに固定することができる。
c)めっきされた材料が用いられる他の実施形態では、主要なステップは下記の通りである。
i.切り出されたブランクを用意する。
ii.バリ取り及び縁取りをして、予め定められた縁取りプロファイルの縁取り区分を用いた縁取りプロセスにより、わずかに縁取りされた縁部を設ける。
iii.アニーリングプロセスにより適当な硬さになるように軟化させる。
iv.特製の縁取り区分を用いることにより、切り出されたブランクの外周に(できる限り等間隔で)複数の凹部を用意する。例えば、傾いたパターン、V字型、又は傾いたこぶであり、例えば、幅が0.5〜1.0mmの間であり、深さが約0.2mm(又は0.1mm〜0.3mm)である縁取り区分が凹部を形成するのに用いられる。このように形成された凹部は、打ちつけ又は刻印のときに挿入物と外リングとを互いに固定することができる。
v.洗浄、表面前処理、めっき、及び後アニーリングを含むバレルめっきプロセスによりめっきを行う。
【0029】
3. 外リング及び第1挿入物に対して異なる材料、例えば異なる金属又はめっきされた材料のいずれかの第2挿入物を生産する。このプロセスはステップ2と類似しているが、異なる材料、例えば金属又はめっきされた材料を用いる。
【0030】
4. 図4に示すように、刻印ダイス(coining dies)と刻印環(coining collar)24のペアを用いる刻印プレスのセットアップにおいて、3つの別個のブランク供給システムが用いられ、上述した3つの主要部材を、プレスするために連続して供給及び配置する。まず、外リング2が配置され、そしてその次に下側の第1挿入物4が配置され、上側の第2挿入物6が続いて配置される。これらの配置は、シューラー(Schuler)高速刻印プレスのような自動化されたシステムによって実行されてもよい。
【0031】
5. 塑性変形及びスタンプ又は刻印の圧力による固定メカニズムにより3つの主要部材が結合されている間に、スタンプ又は刻印する。
【0032】
両方の内部挿入物の縁部プロファイルは、予め定められた縁取りプロファイルの縁取り区分を用いた縁取りプロセスにより形成されるわずかな面取りを有してもよい。外リングの厚さは、積み重ねられた2つの挿入物の合計の厚さよりもわずかに厚く、例えば0.1〜0.2mmほど厚い。
【0033】
複数の凹部は、例えば、V字型又は傾いたくぼみの形状をしていてもよい。凹部は、適切な固定を行うことができなくなるので、コインの円形の軸に平行な直線ではないという条件で様々な形状であってよい。凹部は、挿入物の円周に等間隔又は非等間隔で配置されていてもよい。これらの凹部は、挿入物及び外リングが互いに固定されるように、外リングから流入する材料にとって十分でなければならない。
【0034】
これまで説明した凹部を用いることにより、2つの薄い挿入物を用いるときでさえ、受け入れ難い寸法の変化を作り出すことなく、固定を実現できる。
【0035】
外リングの材料が挿入物の材料よりもわずかに柔らかい状況では、凹部を用いることなく複合構造を製造することを選択してもよい。この場合、わずかに柔らかい外リングの材料の厚さは、積み重ねられた挿入物の合計の厚さより大きくするべきである。凹部は、それにもかかわらず、このような場合に固定を向上するために用いられる。
【0036】
図5は、3つの主要部材が下記の通りである一の実施形態を示す。
【0037】
1) 基板としての多層めっきされた軟鋼のリング、第1ニッケル層、中間銅層、及び表面ニッケル層からなる外リング2。
【0038】
2) 第1の金属又は第1の金属合金、例えば、赤みをおびたコイン銅(coinage copper)である上側挿入物6。
【0039】
3) 異なる構成及び表面色を有する第2の金属又は第2の金属合金、例えば、金黄色のアルミ青銅である下側挿入物4。
【0040】
そのような複合コインは、すなわち、外リングの白色仕上げ、上側表面の赤色仕上げ、及び下側表面の金黄色仕上げの3色を有することになるであろう。これらの3色は目立ち、それによってセキュリティ特性を提供する。
【0041】
電磁気的特徴に関して、例えば自動販売機のアプリケーションにとって、そのような複合コインは、コインの中央の上側及び下側の異なる材料により、高周波数及び/又は低周波数のセンサで検出されるような識別されたEMSを有するであろう。図5では、低周波26及び高周波28の領域が示されている。さらに、多層めっきがされた外リング及び現代の自動販売機の使用を考えると、それにより中央領域及び外周領域はコインの縁部に近くなり、特にこの場合には、リング領域は別々に検知され、このような複合コインは多数の特有のEMSパラメータを提供する。多くのコイン式自動販売機又はコイン検証機は、現在流通しているバイメタルコインを受け入れるように設計及び設定されているが、ここに説明されるようなトリメタルコインを評価及び検証するためのコイン検証機又は自動販売機を提供することは技術的に実現可能である。
【0042】
図6は、3つの主要部材がめっきされた材料であり、例えば、下記のような多層めっき材料である一の実施形態を示す。
【0043】
1) 基板としての多層めっきされた軟鋼のリング、第1ニッケル層、中間銅層、及び表面ニッケル層からなる外リング2。
【0044】
2) 基板としての多層めっきされた軟鋼のブランク、第1ニッケル層、及び表面ニッケル層からなる上側挿入物6。
【0045】
3) 基板としての多層めっきされた軟鋼のブランク、第1ニッケル層、中間銅層、及び表面の真ちゅう層又は青銅層からなる下側挿入物4。
【0046】
図6に示すように、この複合コインは、図5の実施形態と同様の異なる色の視覚的独自性に加えて、隠されており、かつ、中央コアに制限されている内部層構造30を有する。積層されたコアは、斜線の円領域で概略的に示すように、40〜60μmであってもよく、現代のベンディングセンサ(vending sensor)により検出されるであろう。結果として、この複合コインは、このように偽造からの保護の余裕のある独自かつ識別可能なEMSを提供する。低周波26及び高周波28の領域もまた示される。
【0047】
挿入物は、他の手段、例えば、冷間圧延プロセスで二層又は多層の異なる金属を被覆することにより生産された金属細片からの打ち抜きにより生産されてもよい。
【0048】
他の実施形態において、真ちゅう及び青銅の合金、又は、めっき若しくは多層めっきがされた真ちゅう及び青銅の外リング、並びに、単層又は多層のニッケルめっき及び単層又は多層の銅めっき(逆もまた成り立つ)がされた内部挿入物のように、外リング及び内部挿入物は材料の観点から交換可能である。他の実施形態において、外リングの材料と内部挿入物の材料は、めっきされた材料と金属との間で交換可能である。
【0049】
挿入物及び/又は外リングは、円形又は非円形(例えば、多角形、スカロップ(scallop)形状、ロゼッタフラワー(Rosetta flower)形状)であってもよい。円形が生産するのに最も単純である一方、多種多様な形状を用いてもよい。一の実施形態では、刻印が機械式又は油圧式の自動プレスにより行われる。刻印は、マニュアル操作のプレスにより行われてもよい。
【0050】
前述の説明では、説明の目的で、実施形態の完全な理解を提供するために多数の細部について説明されている。しかしながら、これらの特定の細部が必要とされないことは当業者にとって明らかであろう。
【0051】
上述の実施形態は、単なる例であることを意図している。変更、修正及び変形は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される範囲から逸脱することなく、当業者によって特定の実施形態に行うことができる。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6