(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の電子エミッタのうちのいずれをアクティブにすべきかを示している入力信号を受信して複数の出力を生成する入力部を備え、該複数の出力のそれぞれはそれぞれのエミッタの動作を制御し、またそれぞれの出力は、それぞれのエミッタに高電圧を供給することによりそれぞれのエミッタを駆動する第1状態か、それぞれのエミッタに互いに異なる電圧を供給することにより該エミッタの動作を停止させる第2状態か、該エミッタをそれぞれのエミッタに対する電圧の供給をとりやめることにより該出力が自由に変動し該エミッタを電気的に絶縁する浮遊状態とする第3状態にできることを特徴とするX線スキャナ用の制御システム。
何れの出力が第1状態なのかそして何れの出力が第2状態なのかを示すデータを保有する第1のレジスタと、何れの出力が第3状態なのかを示すデータを保有する第2のレジスタを備え、該第2のレジスタからのデータは該第1のレジスタからのデータよりも優先されることを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
それぞれの該出力が所定の順番で第1の状態にある間該ブランキング手段がオフ状態となるような逐次アクセスモードで該システムが動作可能であることを特徴とする請求項8に記載の制御システム。
該出力がそれぞれの駆動期間の間第1の状態にあり該ブランキング手段が該駆動期間相互の間にあるときオン状態となって全ての出力を第2の状態にするような非逐次アクセスモードで該システムが動作可能であることを特徴とする請求項9に記載の制御システム。
それぞれの該制御サブシステムの該ブランキング手段は、当該サブシステムからの複数の出力のうちのひとつが第1状態にあるときにオフ状態となり、他のサブシステムからの複数の出力が第1状態にあるときはオン状態となることを特徴とする請求項10に従属する請求項11に記載の制御システム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好ましい実施の形態について添付の図面とともに説明する。
【0010】
図1において、X線スキャナ50は、中央のスキャナ軸Zを中心とする円弧上に配列置されてスキャナ軸Zに向けてX線を発射するように指向している複数のX線エミッタユニット35の列を有する。複数のセンサ52の環状体がエミッタの内側に位置しており、スキャナ軸Zに向けて内向きとなっている。センサ52とエミッタユニット25はZ軸に沿って互いにずれて配置されており、それぞれのエミッタユニットから発せられたX線は、該エミッタに最も近い位置にあるセンサを通過してZ軸を通過し、最も遠い位置にあるセンサによって検出される。
【0011】
図2a、
図2bにおいて、それぞれのエミッタユニット25は電子エミッタ素子116を有し、該素子116は窒化アルミニウム(AIN)製のエミッタ支持ブロック117と、該ブロック117の上面120に設けられた仕事関数が低い複数のエミッタ118と、該ブロック117の下面121に設けられた白金(Pt)製のヒータ素子122を有する。複数のエミッタ118は白金を主成分とするインクで形成され高放射塗布剤で塗布される。又、ヒータ素子も白金を主成分とするインクにより形成される。エミッタはブロック117の上面120で互いに分離離散した領域を覆っており、ブロック117の長手方向で離間している。導電性材料よりなる接続ストリップ123がそれぞれのエミッタ118から延びており、ブロック117の側面の周りを囲むようにして下面121側にまで延び、下面上にコネクタパッド124を形成する。接続ストリップは互いに離間しており、それぞれのエミッタ118は他のエミッタ118からは電気的に絶縁されている。窒化アルミニウム(AlN)は熱伝導性が高い強靱なセラミック材であり、その熱膨張係数は白金(Pt)ときわめて合致している。アルミナ(Al
2O
3)は特性が窒化アルミニウムに類似するために、支持ブロック117の材料となり得る。これらの特性はX線管に適用するのに適した統合されたヒータ・電子エミッタ素子の設計につながるものである。
【0012】
AlNは広バンドギャップ半導体の材料であり、半導体注入コンタクトはPtとAlNとの間で形成される。高動作温度で生じる注入電流を減らすために、注入コンタクトに代えてブロッキングコンタクトとするのが有益である。これは例えば、Ptの金属化製造の前に、AlN基材120上で酸化アルミニウム層を成長させることによって達成できる。AlN基材とPtエミッタとの間に酸化層を設けることにより、好ましいブロッキングコンタクトが形成できる。別の方法として、Ptに代えてタングステンやニッケルのような他の材料を用いることができる。特に、これらの金属は焼成プロセスにおいて、セラミック中に焼結して強固なハイブリッド素子となる。
【0013】
場合に応じてAlN基板上に第2の金属、例えばニッケル、を塗布するのが有効である。そのことにより酸化物であるエミッタの寿命が延びるかヒータの抵抗を制御できる。
【0014】
本実施の形態によるヒータ素子122を形成するために、プラチナ金属を幅1〜3ミリ厚さ10〜200ミクロンのトラックに形成し、室温において5〜200オームの耐トラッキング性を具備するようにする。ヒータの電圧を100ボルト未満に制限して基板である支持ブロックの上面120におけるエミッタパッド118に対する電気的なクロストークを回避するのが有益である。トラックに電流を流すことにより、トラックは加熱を開始し、この熱的エネルギが直接AlN基板内に分散される。AlNの熱伝導性が良好なために、基板全体にわたってAlNの熱は均一であり、10度〜20度以内である。電流や周囲環境に応じて、1100Cを超える安定した基板温度を達成できる。AlNもプラチナも共に酸素に対して耐性があるので、このような温度が空気中でも達成できる。しかし、X線管への適用に際しては、基板は真空中で加熱される。
【0015】
エミッタパッド118とヒータ素子122と接続ストリップ123は、要求されたパターンのもと印刷によって支持ブロック117の表面に設けられる。接続パッド124は多重印刷により複数のインク層を設けることで形成され、接続ストリップ123よりも厚く形成される。ヒータ素子122の両端部にあるコネクタは同様に形成される。支持ブロック117は1100C程度に加熱され、支持ブロック117の表面内にインクが焼結していく。次にエミッタパッド118は、有機バインダ入りの乳剤の形態をなすバリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)の炭酸塩材料で塗布される。この塗布は、電気泳動析出またはシルクスクリーン印刷を用いて行うことができる。使用する前にエミッタ素子116を搭載したとき、ヒータ素子122はブロック117を700Cを超えて加熱する。そのことにより炭酸塩材料がまず有機バインダを押しだし、次に炭酸塩が酸化物に変化する。このプロセスは活性化として公知である。エミッタパッド塗布剤の中に残る最も活性な物質は酸化バリウムであり、850〜950Cの動作温度において、電子放出密度は1mA/mm
2を超えている。
【0016】
図3において、それぞれのエミッタユニット25は、エミッタ素子116と、エミッタ素子116を電気的に制御する回路基板310と、それぞれのエミッタパッド118からの電子の抽出を制御するように構成されたグリッド312と、抽出された電子のビームを集束して陽極311上の標的領域に向けさせる集束素子314とを有する。下部にある回路基板310は、エミッタ相互で個別に制御される制御信号・電力信号のための真空のフィードスラスを備える。回路基板はガス放出性の少ない材料、例えばアルミナセラミック、にて形成されるのが最良である。
【0017】
エミッタ素子116はバネ付きの接続素子316によって回路基板310に接続されている。かかる構成により、回路基板310上においてエミッタ素子の物理的な支持ができ、また、それぞれの接続素子136は、それぞれのエミッタ素子116の接続パッド124と回路基板310上のそれぞれのコネクタとの間の電気的な接続をなす。それぞれの接続素子316は、上側チューブ318と下側チューブ320を有する。上側チューブ318の上端はエミッタ素子に接続されてそれぞれのコネクタパッド124と電気的に接続される。下側チューブ320は小径であり回路基板310上に載置され、該チューブの下端は回路基板310の関連する接点と電気的に接続されている。下側チューブ320の上端は上側チューブの下端内に摺動可能に受け入れられており、コイルバネ322がチューブ318,320間に介在して互いに弾発的に位置させ、それ故エミッタ素子116は回路基板310に対して弾性的に移動可能に位置される。
【0018】
コネクタ素子316は複数のコネクタパッド124に電気的に接続しており、よって複数のエミッタパッド118に接続している。またコネクタ素子316はAlN基板117と機械的に接続しており基板(支持ブロック)117を支持している。バネ322はタングステン製が好ましいが、モリブデンその他の材料でもよい。電子放出エミッタ素子116の熱膨張によってバネ322が撓み、信頼性のある相互接続方法が提供できる。グリッド312と集束素子324は熱膨張の影響は少ないので、位置は固定されている。エミッタ素子116の上面は複数のサファイヤ球317よりなるスペーサによって、グリッド312との距離が一定に保たれている。即ち、エミッタ素子116の熱膨張や熱収縮している間でも、エミッタパッド118はサファイヤ球317を介してグリッド312に対しては移動不能に保持される。それぞれのエミッタパッド118の電位は放出電位とブロッキング電位(非放出電位)との間で切り替え可能である。放出電位はグリッド312の電位より低く、電子がエミッタ118からグリッド312方向に抽出される。ブロッキング電位はグリッド電位よりも高く、エミッタ118の表面上から電子は放れようとせず、仮に表面から放れてもエミッタ側に引き戻される。
【0019】
図4を併せて参照すると、グリッド312は薄いタングステンフォイルにより形成される。グリッド312はエミッタ素子116の上面120上を延び、更にエミッタ素子116の側面を通過し、エミッタの支持ブロックの下面121を含む平面を通過する。グリッド312は更に回路基板320のところまで下降して延び、回路基板の上面を含む面を通過し、回路基板の後面を含む面を通過する。グリッド312は多数の抽出領域313を有し、それぞれの領域はそれぞれのエミッタパッド118上に延びて、一連の狭い開口315が形成されている。複数の開口315は抽出領域の少なくとも50%を占める。それぞれの抽出領域313はエミッタパッド118とほぼ同等な領域を覆い、またエミッタパッド118の直上にある。抽出領域間のグリッド312の領域は隙間のないソリッドなものである。よって、グリッド312は個々のエミッタパッド118から放出された電子ビームを集束するのを助長する。開口315はタングステンフォイルを化学的にエッチングすることで形成される。よって、グリッド312は、開口315は別として、エミッタ素子116上でほとんど連続した層をなす。エミッタ素子の正面120とグリッド312の上部との間は、サファイヤ球317によって一定の隙間が保たれている。またグリッド312の側部はエミッタ素子116や回路基板310と離間している。そのためグリッド312はエミッタ素子116の両側面や上面全体を取り囲んで有効な熱遮蔽体を形成している。このように部分的に取り囲むことによってエミッタ素子からの放熱を減らすことができる。グリッド312のためにモリブデンのような他の材料を用いることができる。グリッド312は回路基板310上において電気的コネクタと接続されるので、その電位が制御可能である。グリッド312はエミッタパッド118に近い位置で支持されており、グリッドとエミッタパッドとの間の隙間は1ミリ程度である。かかる構成により、1mA/mm
2を越えるビーム電流を達成しつつも抽出電圧(即ちアクティブなエミッタパッド118とグリッドとの間の電圧の相違)を例えば200ボルト未満に低く維持することができる。
【0020】
集束素子314はそれぞれがそれぞれのエミッタ素子116の側部に沿って延びている。それぞれの集束素子314は絶縁性の取付部323上に取付けられ、グリッド312やエミッタ素子116とは電気的に絶縁されている。集束素子314は平坦な下部324と曲面部324を有する。平坦な下部324はグリッド312の側部と平行に且つ側部と離間して延びている。曲面部326は下部325からグリッドの上部を越えて上方に延び曲面形状をなしてグリッド方向に向かう。曲面部326の内方縁部328はエミッタの長さに沿って延びており、グリッド312と離間しており、横方向においてエミッタパッド118の縁部とほぼ同じ位置にある。かかる構成により、2個の集束素子314間の隙間が、幅に関してエミッタパッド118やグリッド312の開口領域とほぼ等しくなる。集束素子314は両者ともにグリッド312に対して負の電位に保持され、エミッタからの抽出された電子を幅方向において集束する電界をもたらす。集束素子はグリッド312から離間している外側の熱遮蔽体を構成し、そのことによりエミッタ素子116から離間した放熱を減らしている。
【0021】
図3において、熱遮蔽体又は反射体330がエミッタ素子116と回路基板310との間に位置している。本実施の形態においては、熱遮蔽体330は雲母のシートに薄い金の層を塗布したものである。チタン層を金と雲母との間に介在させることで金の接着性が向上する。熱遮蔽体330はバネ付き接続素子316に支持される。接続素子316は遮蔽体330の穴を貫通している。遮蔽体の塗布された上面はAlN基板の下側の加熱された側に近い位置で離間して面している。遮蔽体330はエミッタ素子からの熱を反射してエミッタ素子側に戻すことにより、ヒータの効率が改善され放射熱伝達を通じて熱損失を低減している。グリッド312がエミッタ素子の上面と側部を取り囲み、遮蔽体330がエミッタ素子の下側を取り囲むことにより、エミッタ素子はその4面全てを遮蔽物で取り囲まれることとなる。熱の遮蔽はエミッタ素子116の複数の端部でも可能であるが、複数のエミッタ素子が互いに端部間で近接して配置されるので、かかる遮蔽はさほど重要ではない。遮蔽体330の基材としては雲母が用いられるが、チタンやその他多層赤外線ミラーなどの反射性の材料でもよい。エミッタ素子116とグリッド312との間に更なる類似した反射体を設けてもよい。
【0022】
図1に戻ると、スキャナは制御システムによって制御され、制御システムは
図1に示される機能ブロックでなされる様々な機能を実行する。システム制御ブロック54は画像表示ユニット56やX線管制御ブロック58や画像再構成ブロック60からのデータを受けて制御を行う。X線管制御ブロック58は集束制御ブロック62やエミッタ制御ブロック64や高電圧供給部68を制御する。集束制御ブロック62はそれぞれのエミッタユニット25における集束素子314の電位を制御する。エミッタ制御ブロック64はそれぞれのエミッタユニット25における個々のエミッタパッド118の電位を制御する。高電圧供給部68はそれぞれのエミッタブロックの陽極311に電圧を供給し、エミッタ素子118に電圧を供給する。像再構成ブロック60は、センサ制御ブロック70からのデータを受けて制御を行い、センサ制御ブロック70は、センサ52からのデータを受けて制御を行う。
【0023】
図5において、回路基板310はそれぞれのエミッタパッド118に対する高電圧プッシュプル出力段500を備え、それはエミッタパッド118に高電圧を供給してエミッタパッド118からの電子の放出を制御している。それぞれの出力段500は一対のトランジスタ、具体的には供給側506と接地側508との間で互いに直列に接続されているFET502、504を有する。高電圧出力510が2個のFETの間に接続されている。駆動入力512が第2のFET504に直接接続されており、またXORゲート514とインバータを介して第1のFET502に接続されている。XORゲート514は第2の入力enを備える。駆動入力が第1の入力である。入力enは通常はローレベルであり、XORゲート514の出力はこの入力と同じくなるが、
図6で以下に説明するように入力enは更なる制御のために用いられる。入力信号がローレベルのときはFET502はオンになり、出力510を供給電圧に接続し、第2のFET504はオフとなり出力510を接地から遮断する。それ故、出力電圧は瞬時に供給電圧にまで上昇する。入力信号がハイレベルのときは,第1のFET502はオフとなり、出力510は供給電圧から遮断され、第2のFET504はオンとなって接地され、そのため出力電圧は即座にゼロに低下する。よって、公知の制御方法のように、この出力段500によりエミッタは瞬時にオン、オフに切り替えられ、X線ビームのソースの位置は正確に制御される。入力値が中間レベルのとき、即ち、第2のFET504をオンに切り替えるほど高くなく又は第1のFET502をオンに切り替えるほどに低くないときは、両方のFETはオフとなり、出力は浮いた第3の状態となる。その状態では、出力は高出力供給の一定電位や接地からは接続されておらず、自由に変動する。このことはエミッタパッド118が電気的に絶縁された状態となり、エミッタパッド118からの電子の抽出が抑止される。
【0024】
図6において、制御システムのエミッタ制御ブロック64は、多数のエミッタ制御装置600に入力されるべきデジタルのエミッタ制御信号を生成する。それぞれのエミッタ制御装置はそれぞれのX線エミッタユニット25における32個の電子エミッタパッドの動作を制御する。それぞれのエミッタ制御装置600は入力信号としてシリアル形式のデジタル信号Dinを受ける。このデジタル信号は、オンされるべきいずれかのエミッタや、オフされるべきいずれかのエミッタや、浮いた状態にすべきいずれかのエミッタを示すデータを含んでいる。この入力信号はプロセッサ601や多数のシフトレジスタ602、604、608、614に送られる。シフトレジスタは、32個のエミッタのそれぞれを制御するための出力段500の出力を制御し監視する。出力段500のうちの一つが32個の制御されたエミッタのそれぞれに対応する。
【0025】
プロセッサ600は制御信号CTRLやデータ信号DiN、クロック信号SCLKを受信し、シフトレジスタの動作やエミッタ制御装置600のその他の機能を制御するための多数の信号を出力するように構成されている。複数のレジスタのうちの一つはデータレジスタ602であり、32ビットの直列入力並列出力シフトレジスタである。このレジスタは、特定の周期のそれぞれのエミッタ118の要求された状態を示すデータを含むシリアルな入力信号Dinを受信し、プロセッサ601からの信号ld_datやクロック信号SCLKの制御に基づいてそのデータを読み込む。
【0026】
それは32個の要求された状態を並列入力並列出力データレジスタ604の複数の入力に出力するように構成されており、データレジスタ604はクロック信号XCLKの制御に基づいてそれらを読み込む。データレジスタ604はその並列出力において読み込まれたデータをそれぞれのNANDゲート606の3個の入力のうちの一つに伝える。NANDゲート606のその他の入力は全てハイであると仮定すると、それぞれのNANDゲート606の出力はそれぞれのエミッタ118がアクティブであればローとなり、アクティブでなければハイとなる。それぞれのNANDゲート606からの出力は排他的論理和ゲート(EOR)609の一つの入力に送られ、他の入力は極性信号POLを受信する。それぞれのEORゲート609からの出力は、それぞれの出力段500に入力され、それぞれの出力段は
図5に示されるように制御された高電圧出力HVoutをエミッタに供給する。極性信号POLはシステムの極性を反転する。例えば、グリッドが高電圧電位又は接地されているときは、ビームをオフするためにエミッタへの正の電圧が必要となり、エミッタが高電位であるか接地されているときは、ビームをオフするために負の電位が必要となる。XORゲートやPOL入力により回路が何れの形態にもなる。
【0027】
3値状態レジスタ608は第2の32ビットSIPOレジスタであり、シリアルな入力信号Dinを受信する。この信号はtri-stateか浮いた状態とすべき出力を示すデータを含んでいる。このデータは、入力信号から取り込まれ、信号ld_enとクロック信号SCLKの制御に基づいて3値状態レジスタ608に取り込まれる。このデータはそれぞれの出力段500に並列に出力され、出力enは出力段500が3値状態に切り替えるべきであればハイであり、それぞれのNANDゲート606からの出力によって決定されたように出力段がハイ又はローレベルにセットされるべきであればローとなる。
図3に戻ると、エネイブル信号enがハイのときは、出力段への入力信号がローであればエミッタは浮いた状態となる。シリアル入力信号Dinからのデータを使用して、いずれか一つまたはそれ以上のエミッタ118を3値状態に設定する。例えば、エミッタ118の所期稼働状態において全てのエミッタが3値状態となっているとき、又は短絡が生じて1個またはそれ以上のエミッタに影響がでたとき、例えばそれがグリッドに接続されたような場合に、影響を受けたエミッタを浮いた状態にすることによって短絡が緩和される。
【0028】
それぞれのNANDゲート606は、ブランキング信号BLAに接続される一つの入力を有する。そのためブランキング信号BLAがハイのときは、データレジスタ602からの出力にかかわらずNANDゲート606の出力はローとなる。ブランキング信号はいずれのNANDゲートの出力をブランクな状態に又はアクティブな状態に設定するのに用いられる。ブランクな状態では出力は一定であるか少なくとも入力データとは無関係である。アクティブな状態では出力は入力データによって制御される。更に別のチップ選択入力CSが全てのNANDゲートに設けられ、全体の制御チップ600をアクティブにするか非アクティブにするために用いられる。
【0029】
それぞれの高出力HVoutはそれぞれの比較器612に入力され、出力値と閾値信号VREFとが比較され、出力駆動信号が閾値よりも高いか低いかを示すフィードバック出力を生成する。プロセッサ601からの信号 rd_fbの制御に基づき、すべての32個の出力信号についてのフィードバックデータは並列入力直列出力フィードバックレジスタ614に入力される。そしてフィードバックレジスタ614はフィードバックデータを直列フィードバック出力616に変換する。この出力616はいずれかの出力が過度の電流を供給していることを示し、それは例えば短絡の問題を示すことに用いられる。参照信号VREFの値はプロセッサ601によって設定される。
【0030】
シリアルな出力618はデータレジスタ602からも供給され、それぞれの出力信号が名目的にハイレベルかローレベルかを示す。プロセッサ601からの多重送信制御信号muxの制御に基づき、2個のシリアル出力はマルチプレクサー620によって多重送信され、単一のシリアルデジタル出力信号Doutが生成される。そのことによって、例えば装置のプログラミングをチェックするために予想された出力値が出力618からチェックでき、また正確な出力が実際に生じているかをチェックするために出力616からの実際の値がチェックできる。
【0031】
制御装置600はシーケンシャルアクセスモード、ランダムアクセスモード、ノンスキャニング又はレセットモードの3つの異なるモードで動作するように構成されている。シーケンシャルアクセスモードでは、X線ビームは複数のX線ソースの周りを順次スキャンされる。それゆえ全てのエミッタのそれぞれの全スキャンにおいて、それぞれの制御装置はスキャン中単一期間でアクティブとなり、その期間中それぞれのエミッタを駆動し、それぞれの駆動期間を順次制御する。ランダムアクセスモードでは、X線源がX線源アレイの周りを疑似ランダムの態様で移動する。それゆえ全てのエミッタのそれぞれのスキャンにおいて、それぞれの制御装置は一つの駆動期間において一つのエミッタを駆動し、次に他の装置600によって制御された複数のエミッタが起動している間多数の起動期間において停止し、次に別の複数のエミッタが起動しているときは更なる起動期間において再度起動する。シーケンシャルアクセスモードとランダムアクセスモードのいくつかの制御入力が
図7と
図8にそれぞれ示されている。信号LOADは、特別な信号ではなく、装置600が複数のエミッタのうちの一つにパワーを供給しているときの時間を示す。シーケンシャルアクセスモードでは、エミッタが順番に稼働している間、ブランキング信号BLAは、順次稼働する期間中ハイレベルに保持される。そのため出力は、データレジスタ604に取り込まれたデータを追跡している。ランダムアクセスモードにおいては、ブランキング信号は稼働期間のみハイとなる。稼働期間では装置600によって制御されているエミッタの内の一つは稼働している。そのため稼働期間中は、出力はデータレジスタ604にあるデータを追跡している。稼働期間の間の介在期間は、ブランキング信号はローであり、出力は全てオフされる。そのことによってこれら介在期間中に装置600によっていかなる処理が実行されようとも、装置の出力は影響されず、エミッタに対する制御に悪影響を及ぼさない。このモードは、上述したランダムアクセス方法のようなスキャニング本法にとって適切である。ランダムアクセス法では、スキャン中の多数の稼働期間の間電子が放出してX線が発生しているようなエミッタユニットが稼働しているが、他のエミッタユニットが稼働中の多数の介在期間中ではエミッタユニットは非稼働である。
【0032】
図9において、デフォルトモードである非スキャンモードでは、ブランキング信号はローに維持され、出力はすべてオフに維持され、全てのエミッタは非稼働となる。このモードは、例えばデータ収集システムの較正(キャリブレーション)を可能にするのに用いられる。
【0033】
データ入力信号DiNの形式は、5バイトのプログラミングパターンであって以下のような形式を持つ。
MSB Control word
Status/data word 0 (MSB)
Status/data word 1
Status/data word 2
LSB Status/data word 3 (LSB)
制御ワードは次のようなビット構成を有する。
MSB 7 1 = load data register 0 = no action
6 1 = read status register 0 = read data register
5 1 = set tri-state register 0 = no action
4 1 = set BLA hi (Mode 1) 0 = normal action (Mode 2)
3 1 = set BLA Io (Mode 3) 0 = normal action (Mode 2)
2 Don't care
1 Don't care
LSB 0 Don't care
【0034】
従って、それぞれのエミッタの稼働期間中は一つの5バイトの入力信号が必要であり、信号は、4つのデータ・状態バイトによっていずれのエミッタを稼働すべきであるか、また制御バイトによってシステムが何れのモードになっているかを示す。スキャナのエミッタユニット25のそれぞれについて、エミッタ制御ブロック64は、制御装置600にデータ入力信号を送り、スキャナの全てのエミッタの動作を連係させる。
【0035】
図6に示されるように本実施の形態においては、下位の3ビットの制御ワードを用いてプログラムされたオンチップDACによって、閾値電圧が生成される。全ての32個の出力チャンネルに同様な閾値プログラム電圧が適用される。その場合制御ワードは以下のビットパターンに割り当てられる。
MSB 7 1 = load data register 0 = no action
6 1 = read status register 0 = read data register
5 1 = set tri-state register 0 = no action
4 1 = set BLA hi (Mode 1) 0 = normal action (Mode 2)
3 1 = set BLA Io (Mode 3) 0 = normal action (Mode 2)
2 1 = set threshold voltage 0 = no action
1 Threshold voltage DAC bit 1 (MSB)
LSB 0 Threshold voltage DAC bit 0 (LSB)
【0036】
次に動作について説明する。スキャンされる対象はZ軸に沿って通過し、エミッタパッドの電位を制御することによってX線ビームが発生し、それそれのエミッタパッド118からの電子が陽極311のそれぞれの標的位置に順次向けられ、対象を通過したX線源からのX線は、センサ52によって検出されたそれぞれのユニットに到達する。上述したように、いくつかの応用として、ビームがエミッタに沿って別々の工程でスキャンし、又別の応用としては、疑似ランダムの形態でエミッタパッド118間を切り替わり、エミッタの熱的負荷を分散させる。スキャンにおけるそれぞれのX線源点についてのセンサ52からのデータは、それぞれのデータセットとして記録される。X線源位置のそれぞれのスキャンによって得られるデータセットは解析がなされ、対象を通過する面についての画像が生成される。対象がZ軸に沿って通過するときにビームが繰り返しスキャンして、全体の対象について3次元の断層画像が得られる。
【0037】
別の実施の形態においては、
図3の接続素子316が逆になっている。しかし上側チューブ318を高温としバネ322を低温にするためには、バネ322を回路基板に近い位置としエミッタ素子118からは遠ざけるのが有利である。バネのクリープ現象は低温であるほど起こりにくいので、かかる構成によってバネの材料の選択の余地を広めることができる。
【0038】
図2aや
図2bの実施の形態に示される巻き付ける形態のコネクタ124の別の例として、エミッタパッド118とエミッタ素子116の裏側のコネクタとを接続するために、AlN基板120に複数の穴を形成して、穴に延びるプラチナ製の貫通孔コネクタとしてもよい。さらなる変更例としては、電源をAlN基板の上面と接続するためのクリップを用いてもよい。また、溶接されたアセンブリや、高温のはんだ付けアセンブリ、ホックスナップなどのプレススタッドやループ状のバネなどその他の機械的接続によってもコネクタの変更例となりうる。
【0039】
図10は別の実施の形態を示しており、
図5の出力段のそれぞれが別の出力段700に置換されている。出力710は、抵抗702を介して供給側706と接続されまたFET704を介して接地される。FETは入力712からの入力信号によってオン、オフが切り替わる。(便宜上XORゲートは図面で省略されている。)入力信号がハイであれば、FET704はオンとなり、出力710は接地される。入力信号がローとなると、FET704はオフとなり、出力は抵抗702を介して供給側と接続され、電子源をゆっくりとオンに切り替える。入力信号が再度ハイとなると、FET704は出力710を接地させ、電子源を急激にオフにする。
【0040】
図11a、
図11bに示される更なる実施の形態においては、それそれのエミッタ素子810はセラミック基板812により形成され、窒化アルミニウム(AlN)も用いることができるがアルミナ(Al
2O
3)が用いられる。基板812の表面816には金属製のエミッタパッド814が互いに独立して離間してスパッタコーティングによって設けられている。エミッタパッドはニッケル、プラチナ、タングステンなどの金属で形成することができ、活性の酸化層で覆われて
図2aや
図2bの実施の形態と同様に電子放出を向上させている。スパッタコーティングに際して、シャドウマスクを用いることで個々のエミッタパッド814のパターニングができる。
【0041】
基板についてエミッタパッドの反対側には、連続した導電性フィルム820の態様の加熱素子が設けられる。このフィルムはエミッタ素子810の裏側818全体を覆っている。加熱素子はスパッタコーティングによっても形成でき、エミッタ素子の両端部では更なるスパッタコーティングによって導電性フィルムがより厚くなっていて接点領域822、824を形成している。基板は非導電性であるため、加熱素子820はエミッタパッドとは電気的に絶縁されており、エミッタパッド相互も互いに絶縁されている。
【0042】
図12において、それぞれのエミッタ素子810は熱遮蔽構造体830によって支持される。熱遮蔽構造体830は、2個の縦材832、834と両側部間に延びて側部を互いに平行にかつ離間して保持する2個の横材836、838を有する。エミッタ素子810は、縦材832、834の上縁部間に横材836、838と平行に支持され(
図9参照)、エミッタパッド814は外側(即ち、図示されるように上方)に向いている。そして、回路カード840が縦材832、834の下縁部間に支持されている。
【0043】
縦材832、834と横材836、838はシリカ板材であり、レーザ切断によって連結した形状に形成されている。これらの板材は連結連動して安定した機械構造となる。エミッタ素子810に面しているシリカ材の一面側には高反射率で低放射率の材料である例えば金やチタンが塗布されている。または、シリカ材は多層の赤外線ミラーが塗布される。
【0044】
一連の複数の連結ワイヤ842はそれぞれの一端がそれぞれのエミッタパッド814に接続されており、熱遮蔽構造体830の外側を取り巻くように延びている。それぞれの連結ワイヤ842の他端は、回路カード840のそれぞれのコネクタに接続されている。相互接続の回路カード840は、スキャナの真空エンベロープの外側からの信号を伝送するのに用いられ、気密シールを通じて直接伝送するか、気密の電気的伝送部と係合する金属接点を通じて間接的に伝送する。
図3と同様なグリッド844がエミッタ素子810の上面を覆うように延び、また熱遮断構造体830の側部に沿って下降し、また縦材832、834から距離を隔てて延び、中に接続ワイヤが延びている絶縁ギャップから離れている。グリッド844の上部はエミッタ素子の上面816と約1ミリ程度のわずかの距離を隔てて平行である。集束素子846は熱遮断構造体830やエミッタ810の両側に配置されている。それぞれの集束素子は縦材832、834に沿って平行に延び、グリッド844の外側に絶縁ギャップを保つようにグリッドから離間して位置し、エミッタ素子810の側部を越えて上方に延びる。それぞれの集束素子の上縁部は、エミッタ素子810の上側に延び、集束ギャップが集束素子846間に提供され、集束ギャップは複数のエミッタパッド814の上を通るようにエミッタに沿って延びている。
【0045】
図3に示される実施の形態と同様に、グリッド844と集束素子846は適切な電位に接続され、それぞれの主要な機能を果たす他に付加的な熱遮蔽物として機能し、エミッタ素子810からの熱の放射を減らしている。