(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る釣竿の穂先竿の概念的な構成例を示す図である。以下、各実施形態の穂先竿は、複数に分割されて並継式等により継合して一本竿となる継竿、又は延べ竿、所謂ワンピース竿又は、振出竿の何れにも同等に適用することができる。また、以下の説明の中で、竿のある位置において、径が細い竿先側を穂先側又は先端側と称し、径が太い竿尻側を竿元側又は後端側と称している。
【0011】
図1に示すように、釣竿1は、穂先竿(1番節)4と、2番竿(2番節)5以降に竿元まで複数の継竿(図示せず)が継がれた構成例である。穂先竿4は、竿先となる金属製材料で形成される穂先部2と、樹脂材料から形成される穂持部3が接合されて一体的に形成される。
【0012】
本実施形態の穂先部2は、金属管材料にスエージング加工を用いて先細りテーパー加工により、穂先から直軸状に伸長させて、先端から竿径が拡径化するテーパー状の中空構造(所謂、チューブラー)に形成されている。穂先部2は、金属材料として、例えば、Ni−Ti系合金、Ni−Ti−Fe系合金、Ni−Ti−Cu系合金、βチタン合金(β相:体心立方晶)又は、Ni−Ti−Cr系合金等の材料を用いて、3%以上、好ましくは、5〜8%の弾性伸び(伸度)を有する合成金属が好適する。この例では、穂先部2は、少なくとも竿元側が中空構造(パイプ構造)で開口するように形成される。
【0013】
穂持部3は、カーボン等の強化繊維に樹脂を含浸した繊維強化樹脂シート、所謂プリプレグを巻回して、中空構造で竿尻側に向かい竿径が拡径化するテーパー状に形成される。 このシートの巻回は、シートの繊維の巻き付け方向によって剛性や曲がりの特性が異なっている。一般的な繊維方向は、釣竿の長手方向(直軸方向)に対して、平行又は直交する方向となるように巻き付けられている。さらに、交差方向、例えば、釣竿の長手方向(直軸方向)に対して、±45度の傾きを持つ、2方向の繊維方向を追加することにより、竿のねじれ防止、剛性や掛けカーブの特性を変えることができる。また、穂先部2と接合する穂持部3の先端には、穂先部2の開口端に内嵌される繋ぎ部3aが設けられている。
【0014】
この繋ぎ部3aは、中空な円筒形状、中空な円錐台形状、中実な円柱形状、及び中実な円錐台形状の何れかである。繋ぎ部3aは、穂先部2に嵌入されて接着剤等を用いて固定される。以下の説明において、繋ぎ部又は繋ぎ部材は、共に接着等を用いて接合固定される部位を示唆し、継合部又は継合部材は、共に着脱自在に嵌合する部位を示唆する。
【0015】
本実施形態の穂持部3は、繊維強化樹脂材からなる中空構造を例としているが、内部に同等又は異なる樹脂材料が充填されている中実構造であってもよい。また、穂持部3は、穂先部2と同様に、金属管材料を用いて同じ加工方法を用いて、中空構造又は中実構造で形成することも可能である。穂先部2と穂持部3を共に金属材料で形成する場合には、同じ金属材料だけではなく、異なる特性を持つ金属を組み合わせることで所望する曲がり具合と剛性とを設定することができる。例えば、穂先部2に対して、超弾性効果としなやかな曲がり具合を所望する場合、Ni−Ti系合金を採用し、穂持部3には、軽量化を考慮して、βチタン合金を採用する等、種々の組み合わせを実施することができる。
また、釣糸ガイドを設ける仕様の釣竿であれば、この接合箇所にガイドのフット部が掛かるように配置して、フット部を固定するために用いられる巻糸や樹脂材料を接合箇所の補強に利用することも可能である。
【0016】
尚、本実施形態の穂先部2は、中空構造を例として説明したが、接合部又は接合箇所が少なくとも中空構造であれば、穂先側においては、中空構造内に充填物、例えば樹脂部材を溶解して密に埋め込んだ中実構造として強度を上げてもよい。
さらに、後続する2番竿5に着脱可能に継合するために、穂持部3の竿元側には、ストレート状の円柱形状(中実)又は筒形状(中空)に形成された継合部3bが延出するように設けられている。この継合部3bは、後続する2番竿5の接合開口端に着脱可能に嵌入される。
【0017】
以上説明したように本実施形態によれば、穂先竿における金属材料からなる中空構造の穂先部は、繊維強化樹脂からなる穂先部に比べると、高い剛性を有し、且つ高い感度を維持している。さらに同径であれば、中実構造の穂先部に比べて軽量化を実現することができる。中空構造の穂先竿は、金属材料の選択及び厚み(竿の肉厚)を選択することで、剛性、掛けカーブ(魚が掛かった時の竿の曲がり形状)及び竿杆の径を設計仕様に合わせて比較的自由に設計できる。
【0018】
さらに、本実施形態では、穂先部の開口内部に穂持部3の繋ぎ部を内嵌する構造であるため、穂持部3の繋ぎ部(中空構造)を穂先部に被せる外嵌構造に対して、接合部の剛性を低く抑えることができ、急な曲率変化がない掛けカーブも実現される。従って、手に伝わる感度だけではなく、釣り人に対して見た目でも負荷の大きさ(釣れた魚の大きさ)が分かる。
【0019】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。
図2は、第2の実施形態に係る釣竿の穂先竿の接合部の構成例を示す図である。本実施形態は、穂先竿の穂先部と穂持部とがストレート状の繋ぎ部材を用いた接合、所謂インロー式の接合構造を有している。
【0020】
本実施形態の穂先部11は、第1の実施形態と同等の金属材料を用いて、中空構造又は、少なくとも接合部近傍が中空構造に形成されている。穂先部11は、穂先側に先細りとなるテーパー状を成し、インロー部材13を嵌入する中空構造の接合箇所11aのみがストレート状に形成されている。また、穂持部12は、カーボン等の強化繊維に樹脂を含浸した繊維強化樹脂シート、所謂プリプレグを巻回して、中空構造で竿尻側に向かい竿径が拡径化するテーパー状に形成される。穂持部12においても、インロー部材13を嵌入する中空構造の接合箇所12aのみがストレート状に形成されている。
【0021】
インロー部材13は、穂持部12と同等な樹脂材料を用いて、各接合箇所の内径に隙間なく嵌入される外径を有する直管の円筒形状(中空パイプ:中空構造)、又は、円柱形状(中実構造)に形成される。また、インロー部材13は、樹脂材料に限定されるものはなく、穂先部11と同等な金属材料を用いて、中空構造に形成してもよい。また、その剛性については、金属の種類の選択と厚みを調整することで調整可能である。
【0022】
通常は、インロー部材13が嵌入する穂先部11において、インロー部材13との重なり部分と非重なり部分との境において、剛性が段差的に異なっている。穂持部12においてもインロー部材13との重なり部分の境は同様である。これに対して、インロー部材13を中空構造にする、インロー部材13の剛性を僅かに下げることにより、これらの境部分の剛性の段差の立ち上がり又は立ち下がりの一部を傾斜させて、剛性の変化幅を小さくさせることができる。即ち、穂先部11から穂持部12への剛性の変化を少なくし、掛けカーブ特性の段差的な変化を緩和させることができ、感度の伝達がより改善される。
【0023】
インロー部材13の長さは、少なくとも嵌入される各接合箇所11a,12aを合わせた長さを有している。
図2に示すインロー部材13は、この合わせた長さよりやや長く形成され、接合時に隙間ができるように形成されている。この隙間は、必ずしも必要ではないが、接合代として利用する又は、少なくとも穂先部11を形成する金属における熱膨張を考慮した距離となっている。尚、竿の塗装時に、この隙間を接着剤の充填箇所として利用する。例えば、エポキシ樹脂等で埋めて、接合箇所11a,12aの間を平坦に繋ぐように加工してもよい。また、隙間を埋める部材は、固化した状態であっても、弾性を有する部材が好適する。
【0024】
さらに、インロー部材13は、1種類の材料で形成されるだけではなく、例えば、金属材料の外層と樹脂材料の内層とによる中空な積層構造であってもよい。反対に、樹脂材料の外層と金属材料の内層とによる中空な積層構造であってもよい。さらには、金属材料からなる筒形状の外層と、筒形状内に樹脂材料を充填した中実構造でもよい。
【0025】
本実施形態によれば、穂先部と穂持部との内部側にインロー部材を介在させて接合させることにより、接合箇所の外径を大きくすることなく、スムーズに接合させることができる。また接合部は、ストレート状となっているため、例えば、釣糸ガイドを取り付ける釣竿であれば、このストレート部分にガイドフットを配置することにより、釣糸ガイドをより安定させて固定することができる。また、ガイドフット部分が隙間部分を跨いで配置されることにより、穂先部と穂持部との接合箇所をより強固に接合させることができる。
【0026】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。
図3は、第3の実施形態に係る釣竿の穂先竿の接合部の構成例を示す図である。本実施形態は、穂先竿の穂先部11の竿元側の開口端に穂持部14の先端側に設けられた繋ぎ部15を嵌入する逆並継式の接合構造を有している。
本実施形態の穂先部11は、第1の実施形態と同等な金属材料を用いて、穂先から直軸状に伸長された中空構造又は、少なくとも接合部近傍が中空構造に形成され、穂先側に先細りとなるテーパー状を成し、繋ぎ部15が嵌入される開口端を有する中空構造の接合箇所11aのみがストレート状に形成されている。
【0027】
また、穂持部14は、カーボン等の強化繊維に樹脂を含浸した繊維強化樹脂シートを巻回して、中実構造のテーパー状に形成される。
穂持部14の先端には、接合箇所11aの内径に隙間なく嵌入される外径を有する直管の円筒形状(中空パイプ:中空構造)又は、円柱形状(中実構造)の繋ぎ部15が設けられている。また、穂持部14は、中空構造に形成してもよい。穂持部14の先端近傍は、接合箇所11aと同様な長さをストレート状に形成してもよい。
【0028】
繋ぎ部15の長さは、少なくとも接合箇所11aの長さ(嵌入される長さ)を有している。
図3に示す繋ぎ部15は、この長さよりやや長く形成され、接合時に隙間ができるように形成されている。この隙間は、必ずしも必要ではないが、設けるならば、少なくとも穂先部11を形成する金属における熱膨張を考慮した距離以上である。また、前述した第1の実施形態と同様に、隙間を例えば、エポキシ樹脂等で埋めて、接合箇所11aと穂持部14との間を平坦に繋ぐように加工してもよい。また、隙間を埋める部材は、固化した状態であっても、弾性を有する部材が好適する。
【0029】
本実施形態によれば、穂先部の中空構造の接続箇所に、穂持部の先端の設けた繋ぎ部を嵌入して接合させることにより、接合箇所の外径を大きくすることなく、スムーズに接合させることができる。また、ガイドフット部分が穂先部11と穂持部14とで隙間部分を跨いで、配置することにより、穂先部と穂持部との接合箇所をより強固に接合させることができる。
【0030】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について説明する。
図4は、第4の実施形態に係る釣竿の穂先竿の接合部の構成例を示す図である。本実施形態は、穂先竿の穂先部21の竿元側の竿径が段的に拡径化(大径化)された接合箇所21aの開口端に、穂持部22の先端側に設けられた繋ぎ部22aを嵌入する逆並継式の接合部を有している。
【0031】
本実施形態の穂先部21は、第1の実施形態と同等な金属材料を用いて、穂先から直軸状に伸長する中空構造又は、少なくとも接合部近傍が中空構造に形成される。その形状は、穂先側からテーパー状に竿径が広がり延伸する竿体が、接合箇所21aの手前で段的に繋ぎ部22aが嵌入できる竿径まで、竿体がテーパー状に拡径化(拡径部21b)し、さらに接合箇所21aがストレート状に伸びて開口端が設けられている。
【0032】
本実施形態において、接合箇所21a及び拡径部21bは、穂先部21側から延伸する竿体の厚さ(肉厚)と同じ厚さが維持されて形成される、又は、竿体の厚さを薄くして形成される。これは、竿径を拡径化すると、竿体自体の剛性が大きくなるため、厚さを薄くしても、拡径化する前の竿体の剛性を維持することができる。これらの接合箇所21a、拡径部21b及び繋ぎ部22aのそれぞれの厚さを調整することにより、接合部の剛性を調整することができる。
【0033】
また、穂持部22は、カーボン等の強化繊維に樹脂を含浸した繊維強化樹脂シートを巻回した中空構造で、繋ぎ部22aがストレート状に形成され、以降竿尻側に向かいテーパー状に竿径が広がるように形成される。尚、
図4には、中空構造の穂持部22を例として示しているが、繋ぎ部22aを含めて中実構造であってもよい。
【0034】
以上説明したように本実施形態によれば、穂先部21を形成する金属材料には、繊維強化樹脂シートのように剛性には方向性がなく、穂先側からテーパー状に延伸する竿体の竿径を拡径化した接合箇所21a及び拡径部21bを一定の厚みで形成することにより、接合部の前後で大きく剛性が変化しない穂先竿を実現することができる。さらに、接合部を構成する接合箇所21a、拡径部21b及び穂持部34の厚みや重なり量(嵌入の長さ)を適切に設定することにより剛性が調整でき、所望する穂先竿の撓み具合を設計することができる。
【0035】
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態について説明する。
図5は、第5の実施形態に係る釣竿の穂先竿の接合部の構成例を示す図である。本実施形態は、穂先竿の穂先部31の竿元側の縮径化(径が小さくなる)した繋ぎ部31aを、穂持部32の先端側に設けられた接合箇所32aの開口端32bから嵌入する並継式の接合部を有している。
【0036】
本実施形態の穂先部31は、第1の実施形態と同等な金属材料を用いて、穂先から直軸状に伸長される中空構造又は、少なくとも接合部近傍及び繋ぎ部31aが中空構造に形成される。その形状は、穂先側から竿尻側に向かいテーパー状に竿径が広がり延伸する竿体が、接合部の手前で竿径がテーパー状に縮径化(縮径部31b)して、ストレート状の繋ぎ部31aに繋がっている。
【0037】
また、穂持部32は、カーボン等の強化繊維に樹脂を含浸した繊維強化樹脂シートを巻回した中空構造であり、繋ぎ部31aが嵌入される接合箇所32aは、ストレート状に形成され、竿尻側に向かいテーパー状に竿径が広がるように形成されている。
図5に示すように、接合箇所32aの開口端32bは、縮径部31bの傾斜(テーパー面)に合うように、逆傾斜の斜面に形成され、穂持部32に繋ぎ部31aが嵌入された場合には、穂先部31と穂持部32とが段差なくスムーズに繋がる。尚、
図5には、中空構造の穂持部32を例として示しているが、竿の途中から樹脂部材等により竿内部が充填された中実構造であってもよい。
【0038】
本実施形態において、穂先部31及び繋ぎ部31aの竿体は、同じ厚さに維持されて形成される、又は、繋ぎ部31a及び縮径部31bの厚さを厚くして形成される。これは、竿径を縮径化、即ち細くすると、竿体自体の剛性が小さくなるため、厚さを維持する又は厚くすることで、繋ぎ部31aの剛性を穂先部31の剛性と同じように維持することができる。勿論、これらの縮径部31b及び繋ぎ部31aと、接合箇所32aのそれぞれの厚さを調整することにより、接合部の剛性を調整することができる。これにより、それぞれ接合部と、接合部に繋がる穂先部31及び穂持部32と剛性の変化を小さくすることができる。
【0039】
以上説明したように本実施形態によれば、穂先部31の繋ぎ部31aを穂持部32に嵌入した接続部であり、繋ぎ部31aと接合箇所32aが傾斜面で当接しているため、竿体に働く剛性が分散されて、曲率の大きな変化が抑制され、所望する穂先竿の撓み具合を得ることができる。
【0040】
[第6の実施形態]
次に、第6の実施形態について説明する。
図6は、第6の実施形態に係る釣竿の穂先竿の接合部の構成例を示す図である。本実施形態は、穂先竿の穂先部41の途中から中空構造となった接合箇所41aに、穂持部42の先端側に設けられた繋ぎ部42aが嵌入する逆並継式の接合部を有している。
【0041】
本実施形態の穂先部41は、第1の実施形態と同等な筒形状の金属材料を用いて、スエージング加工を利用した先細りテーパー加工により、穂先から直軸状に伸長させて、先端から竿径が拡径化するテーパー状に形成されている。先細りテーパー加工における押しの加減によっては、中空構造41cから細い先端部分のパイプ形状を潰して、中実構造41bとなるように形成することできる。
図6に示すように、穂先部41は、少なくとも接合部近傍が中空構造41cに形成される。
【0042】
穂持部42は、前述した繊維強化樹脂シートを巻回して、中実構造で竿尻側に向かい竿径が拡径化するテーパー状に形成される。穂持部42の先端には、中空構造41cに嵌入するための円柱形状(中実構造)に形成される繋ぎ部42aが設けられている。繋ぎ部42aは、穂先部2に接合箇所41aに嵌入されて接着剤等を用いて固定される。
以上説明したように本実施形態によれば、接合部が中空構造の接合箇所41aに穂持部42の繋ぎ部が嵌入された接合であるため、剛性の変化を小さくすることができ、竿体の曲率の大きな変化が抑制され、所望する穂先竿の撓み具合を得ることができる。