【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、特に経済的かつ効率的なやり方での再成形を可能にする、ワークピースを再成形するためのデバイスおよび方法を提供することである。
【0014】
本発明に従うと、この目的は、請求項1に開示される特徴を示す方法と、請求項11に開示される特徴を示すデバイスとによって達成される。好ましい実施形態は、適切な従属請求項に記載される。
【0015】
本発明の方法は、延伸によるワークピースの再成形の間に、ワークピースが自身の中心軸の周りを回転し、かつワークピースが回転する際に、その半径方向外側領域は、ワークピースの半径方向内側領域の方向に材料の流れが誘導または支援されるように少なくとも1つの成形ローラの作用を受けることを特徴とする。
【0016】
本発明に従うと、このデバイスは、回転のためにダイおよびパンチが装着され、かつワークピースが延伸によって再成形されている間にワークピースの半径方向外側領域に作用するように適合された成形ローラが設けられ、その作用によってワークピースの半径方向内側領域の方向に材料の流れがもたらされるように設計される。
【0017】
本発明の基本的な考えは、延伸プロセスの際に、成形ローラによって半径方向外側領域から半径方向内側領域への材料の移動をもたらすか、または支援することである。再成形またはワークピースの半径方向外側領域に対する成形ローラの作用は、半径方向内向きに動く材料の意図的な流れが生じ得るように、すなわち材料が内方に動くことを強制されるようなやり方で行われてもよい。
【0018】
再成形ローラによって生成される材料の流れは、延伸プロセスの材料の流れを支援する。ワークピースの、延伸によって再成形される半径方向内側領域と半径方向外側領域との間の端縁における材料の脆弱化が、実質的に低減される。よってこの方法およびデバイスは、まさにこの移行点に重い負荷がかかるたとえばハブ、滑車、ディスクキャリヤ、またはねじれ振動ダンパなどの歯車装置構成要素の製造に特に好適である。加えて、材料の脆弱化なしに、前記移行点または端縁においてもっと小さい半径を成形することが可能である。さらに、その後材料が内向きに動くことによって、パンチとダイとの間に必要な加圧力を減らすことが可能になる。さらに、再成形ローラの作用は、半径方向外側領域の張力低減に寄与し得るために、波形成の低減にも寄与し得る。
【0019】
本発明の方法のさらなる利点は、再成形ローラによる周辺領域の再成形が、材料の高度の冷間硬化によってもたらされ得ることである。これは特に弾性の構成要素の経済的な製造に通じる。
【0020】
加えて、延伸による半径方向内側領域の再成形によって非常に自由な設計が可能となり、この場合には輪郭が必ずしも回転対称を示さなくてもよく、たとえば多角形の輪郭または波形などが成形され得る。材料の流れが改善されることによって、複雑な形のワークピースを製造することが可能になる。
【0021】
再成形されるワークピースは、特に平坦な材料、特にシート金属板からなっていてもよく、その一次寸法は中心軸に対して直角または半径方向である。たとえば、ワークピースは円形のブランクであってもよい。未処理のワークピースは、好ましくは中心軸に関して少なくとも実質的に回転対称である。
【0022】
ワークピースを延伸するプロセスは、好ましくはパンチとダイとの間の延伸間隙において行われる。このためにダイは中央自由空間または取入れチャンバを有し、その中に、延伸によってワークピースを再成形するためにパンチが入れられる。ダイの取入れチャンバの中にパンチを同軸に入れることによって、再成形が行われる。
【0023】
本発明に従うと、ワークピースは少なくとも特定の処理時間の間、パンチおよびダイによる延伸プロセスの作用と、成形ローラによる作用とを同時に受ける。よってこのデバイスは、ダイおよびパンチ、ならびに成形ローラによるワークピースの同時処理を提供するように構成される。
【0024】
ワークピースを延伸するプロセスは、軸方向成形部分と呼ばれる、ワークピースまたは半径方向外側領域の面から突出する部分を生じる。軸方向成形部分は、たとえばリング形状の壁、特にワークピースの中心軸の周りに延在する円筒形または円錐形の壁などを含んでもよい。軸方向成形部分の生成によって、ワークピースの半径方向周辺部にフランジ部分と呼ばれる半径方向外側領域が形成される。
【0025】
成形ローラは、特に圧力ローラまたはスピニングローラであってもよい。ワークピースに対する作用が半径方向外側領域の厚さを低減させ、このやり方で移動させられた材料は内方に強制される。再成形はワークピースを回転しながら行われる。さらに、材料を厚くするか、またはアプセット加工するためのプロファイリングローラが用いられてもよく、このローラは好ましくは半径方向に進行する。
【0026】
基本的に、材料が半径方向内向きに移動するよう強制するためには、成形ローラによって軸方向の圧力を生成するだけで十分であってもよい。しかし、もし成形ローラが半径方向の動きによってワークピースのフランジ部分を成形すれば、材料のより効果的な再分配が達成される。
【0027】
特に、成形ローラをワークピースの半径方向内側領域の方向または軸方向成形部分の方向に進めることによって、内向き方向の効果的な材料の流れを達成できる。このために、成形ローラは最初にワークピースの周辺領域に軸方向に置かれ、次いで半径方向に内向きに動かされる。材料が内向きに移動した結果として、作用を受けた領域における半径方向外側領域の軸方向の範囲、すなわち厚さが減少する。
【0028】
材料の外向きの流れを制限するために、ワークピースの半径方向外側領域は、好ましくはその外周側に沿って支持される。支持は好ましくは、材料の外向きの移動を制限するたとえばリングなどのアバットメントによって提供される。アバットメントは、好ましくはワークピースの周辺領域に対するストップを提供する。こうして、材料に成形ローラの作用が与えられると、その材料はほぼ内向きにしか動けず、その結果として、パンチとダイとの間の延伸間隙の方向に、またはフランジ部分と軸方向成形部分との間の移行境界の方向に効果的な材料の流れが起こる。
【0029】
ワークピースの半径方向外側領域における材料のあらゆる隆起をできる限り防ぐために、ワークピースの半径方向外側領域は好ましくは抑制ローラによって押し下げられる。抑制ローラはワークピースの周辺領域に対して置かれ、軸方向のあらゆる隆起を妨げるようにワークピースを軸方向に加圧する。抑制ローラは成形ローラとは異なり、好ましくはワークピースの再成形に積極的な役割を有さない。
【0030】
特に経済的な方法は、ダイの加圧表面においてワークピースの半径方向外側領域を再成形するステップを含む。よってダイは、ワークピースを延伸するための再成形ツール、および成形ローラによる再成形のための延伸チャックとして同時に機能する。このやり方で、ワークピースはダイにおいて延伸または深絞りによって再成形されると同時に、圧力圧延またはスピニングによって再成形され得る。
【0031】
ワークピースの半径方向内側領域を延伸することによって、たとえばボウルまたはスリーブなどの形の輪郭が成形されてもよい。スリーブ形状の輪郭を成形するために、最初にワークピースに中心開口部が形成されるか、または中心開口部を有する原材料ワークピースが用いられる。パンチおよびダイによる延伸によって、中心開口部が広げられてもよい。延伸プロセスは、延伸ツールによって材料が中心から強制されてより大きな直径を呈するようにして、再成形の間に開口の拡張を可能にする。
【0032】
本発明の方法の好ましい実施形態において、ワークピースの中央領域は、延伸プロセスの間に平滑化リングによって引っ張り成形される。このやり方で、延伸の際に軸方向部分の壁の厚さを効率的に低減でき、かつ材料の硬化を改善できる。少なくとも1個の成形ローラが、平滑化および/または再成形に必要な材料を延伸間隙に向けて供給する。
【0033】
成形ローラによってワークピースを再成形するとき、ワークピースの半径方向外側領域には定められた構造が形成されることが好ましい。ダイの加圧表面は、好ましくはこの目的のために対応する定められた構造を含み、その中で材料が成形ローラによって成形される。「定められた構造(defined structure,definierte Struktur(英、独訳))」は、特にレッジ、ノッチ、溝、フルート、または歯車の歯と理解されるべきである。このやり方で、延伸が行われる際に、ワークピースの周辺領域が特に効果的な態様で成形される。この方法によって、ワークピースのフランジ部分に、たとえば半径方向に向けられた軸方向の補強などが形成され得る。
【0034】
パンチを脈動する態様で母型に入れることによって、ワークピースの再成形の信頼性をさらに改善できる。材料の歪みを軽減するために、特に非常に短い時間系列において、各前進ストロークの後に短い逆行ストロークが続くことが好ましい。加圧プロセスの際に成形ローラの連続的な動きとパンチの脈動する動きとを組み合わせることによって、特に外側フランジと軸方向成形部分との間の移行端縁において、特に効率的な材料の硬化および成形がもたらされる。さらに、それはパンチによって歯車の歯を軸方向に形成するために必要な力を低減させる。
【0035】
加えて、漸進的延伸または深絞りによって、ワークピースにおけるクラック発生の危険性が低減される。
【0036】
この方法のさらに好ましい実施形態においては、ワークピースが最初にパンチによって予備延伸され、最初は静止しており、すなわち回転せず、その後にワークピースの回転および成形ローラの作用が続き、延伸プロセスが継続されるための設備が提供される。成形ローラの作用なしに予備延伸することによって、ワークピースの信頼性の高いセンタリングと、サイクル時間およびそれぞれの再成形時間の低減とが可能になる。
【0037】
好ましい実施形態において、ワークピースの再成形は、少なくとも大部分が直径を保持しながら、すなわち本質的に直径を低減させることなく行われる。このために、ワークピースの半径方向外側領域はこの目的のためにダイに適切に固定されてもよい。
【0038】
成形ローラは、付加する(interpolating,interpolierende(英、独訳))態様でパンチに対して進められることが好ましい。
【0039】
延伸のプロセスが達成されると、ワークピースがダイとパンチとの間の所定の位置に固定されている間に、特に圧力圧延、スピニング、平滑化、分割、および/またはプロファイリングによって、ワークピースを後成形するために、好ましくはさらなる再成形ステップが用いられる。たとえば、デバイス上で、延伸領域が少なくとも1つの成形ローラによってさらに成形されてもよい。加えて、延伸された領域は少なくとも1つのフロースピナ(flow spinner,Drueckwalze(英、独訳))によってさらに成形されてもよく、壁の厚さが少なくとも部分的に低減されてもよい。同時に、移動させられた材料が外部の歯車の歯を形成してもよい。
【0040】
このやり方で、好ましくは、ワークピースがダイとパンチとの間に固定されたままで、1つの同じ機械の上で複数の再成形ステップが行われる。代替的に、またはワークピースをダイとパンチとの間に固定することに加えて、必要であれば他の支持設備が提供されてもよい。
【0041】
このデバイスに関して、ダイは成形ローラに対するチャックの働きをし、かつリング形状の加圧表面を有することが好ましい。この場合の加圧表面は、ワークピースの中心軸に対して直角に延在するか、または回転軸に対してそれぞれ垂直に延在する。成形ローラは、ワークピースが加圧表面上にあるときにワークピースの周辺領域に作用するか、またはそれを再成形してもよい。
【0042】
ワークピースの半径方向外側領域に定められた表面構造を成形するために、好ましくはダイは適切な定められた構造を有する加圧表面を含む。構築された加圧表面は、たとえばレッジ、ノッチ、溝、フルート、および歯車の歯などを含んでもよい。
【0043】
さらに、ダイおよび/またはパンチは、ワークピースの半径方向内側領域に定められた輪郭を成形するために、対応する定められた輪郭、特に多角形の輪郭および/またはプロファイルを有してもよい。たとえば、ダイの取入れチャンバは、その輪郭を成形すべき軸方向成形部分の範囲におけるワークピースの外側輪郭に対応する、定められた内側輪郭を含んでもよい。軸方向成形部分の範囲におけるワークピースに対して定められた内側輪郭を成形するために、ダイは適切な外側輪郭を含んでもよい。特に、本発明のデバイスは、回転対称を有する形状およびこの回転対称を有さない形状の両方の製造に対して構成され得る。たとえば、多角形または波形の軸方向成形部分が製造され得る。
【0044】
延伸プロセスの間に、延伸された領域に内側および/または外側形状、好ましくはスプラインが成形されてもよい。加えて、この方法の間に、好ましくは底部のハブもしくはボウル領域、および/またはフランジの領域の外側および/または内側に、ヒルトカップリングが成形またはエンボス加工されてもよい。
【0045】
成形ローラに効果的な内向きの材料の流れを生じさせるために、好ましくは特に一体型のアバットメントリングが供給され、このアバットメントリングは、外向きの材料の流れを制限するためのストップ面を提供し、ならびに/または、ワークピースをセンタリングする働きおよび/もしくはワークピースにトルクを伝達する働きをする。加えて、アバットメントリングはいくつかの部品を含んでもよく、個々の部品すなわち部分は、好ましくは半径方向に駆動されてもよい。
【0046】
ダイは、好ましくは延伸のときにワークピースの内側領域を引っ張り成形するための平滑化リングまたは引っ張り成形リングを含む。平滑化リングは、ワークピースの軸方向部分が延伸されている間に材料を薄くすることができる。
【0047】
本発明に従うと、ダイおよびパンチの両方が回転のために駆動されることが好ましい。好ましくは、ダイおよびパンチの回転速度を同期させる同期デバイスが提供される。ダイおよびパンチの回転力によって、特に正確な再成形が達成される。
【0048】
デバイス内で、またはプロセス中に、延伸プロセスおよびその後の構成要素の除去を容易にする分離剤、特に潤滑剤が用いられることが好ましい。加えて、プロセスの間のより良好な熱除去に役立つエマルションが分離剤として用いられてもよい。
【0049】
しわの発生を防ぐために、延伸プロセスの間に材料を保持するための延伸リングが用いられてもよい。加えて、しわの発生を防ぐために、追加のローラがバックストップとして用いられてもよい。
【0050】
このデバイスには、好ましくはエゼクタならびに/または自動装填およびアンローディング手段が備えられてもよい。
【0051】
パンチおよび/または成形ローラの位置決めは、好ましくは経路制御アクスルまたは力制御アクスルによってもたらされてもよく、特に付加経路制御アクスルまたは力制御アクスルによってもたらされてもよい。
【0052】
本発明の方法を用いると、延伸される領域とは反対に延在し得る第2の軸方向に延在するハブ形領域を成形することがさらに可能である。第2のハブの成形は、たとえばスピニングもしくは分割によって、および/またはチャンバのある成形ローラによって達成されてもよい。単一のセットアップにおいて第3のハブを成形するために摺動スリーブツールを用いることも可能である。
【0053】
この方法は、ソース材料とほぼ同じ壁の厚さを有するハブを成形することを可能にする。
【0054】
添付の図面に示される好ましい実施形態を参照しながら、本発明を以下にさらに説明する。