特許第6131321号(P6131321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6131321断片的バイオインピーダンスを使用した腹膜透析の際に限外濾過体積をモニタリングおよび制御するシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131321
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】断片的バイオインピーダンスを使用した腹膜透析の際に限外濾過体積をモニタリングおよび制御するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/28 20060101AFI20170508BHJP
   A61B 5/05 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   A61M1/28
   A61B5/05 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-516254(P2015-516254)
(86)(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公表番号】特表2015-519967(P2015-519967A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】US2013044795
(87)【国際公開番号】WO2013185080
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年3月14日
(31)【優先権主張番号】61/657,271
(32)【優先日】2012年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507209609
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】チュー,ファンサン
(72)【発明者】
【氏名】レビン,ネイサン,ダブリュ.
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−044065(JP,A)
【文献】 特許第5450403(JP,B2)
【文献】 特許第5140369(JP,B2)
【文献】 特許第4574793(JP,B2)
【文献】 米国特許第07354417(US,B1)
【文献】 特表2013−508023(JP,A)
【文献】 特表2004−505708(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0131858(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/28
A61B 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断片的バイオインピーダンス分光学(segmental bioimpedance spectroscopy)(SBIS)により患者の腹膜腔内の流体の体積を測定して、患者の腹膜腔内の流体の限外濾過体積を決定する腹膜腔モニター(PCM);ならびに
患者の腹膜腔を充填するため、および限外濾過体積が経時的に変化しないか、有意に減少するかまたは有意な速度で減少している場合に、患者の腹膜腔から排液するための、PCMにより制御されるスイッチ
を含む、患者において腹膜透析(PD)を行うために、患者の腹膜腔に、ある体積のPD液を注入するための腹膜透析(PD)システム。
【請求項2】
断片的バイオインピーダンス分光学(SBIS)により患者の腹膜腔内の流体の体積を測定して、患者の腹膜腔内の流体の限外濾過体積を決定する腹膜腔モニター(PCM);および
限外濾過体積が経時的に変化しないか、有意に減少するかまたは有意な速度で減少している場合に、患者の腹膜腔から排液されるべきときを指示するための、PCMにより制御されるアラーム
を含む、患者において腹膜透析(PD)を行うために、患者の腹膜腔に、ある体積のPD液を注入するための腹膜透析(PD)システム。
【請求項3】
スイッチが、ワイヤレス通信により、PCMにより制御される、請求項1記載の腹膜透析(PD)システム。
【請求項4】
患者の腹膜腔内の流体の限外濾過体積が経時的に変化しないか、有意に減少するかまたは有意な速度で減少している場合に、患者の腹膜腔から排液するためにスイッチを制御する工程を含む、腹膜透析(PD)システムの作動方法であって、
前記流体の限外濾過体積は、ある体積の腹膜透析液が導入された患者の腹膜腔内の流体の体積を、断片的バイオインピーダンス分光学(segmental bioimpedance spectroscopy)(SBIS)により定期的に測定することにより決定されるものである、腹膜透析(PD)システムの作動方法。
【請求項5】
患者の腹膜腔を、さらなる体積の腹膜透析液で再充填するためにスイッチを制御する工程をさらに含む、請求項4記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2012年6月8日に出願された米国仮特許出願第61,657,271号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
腎臓機能不全または腎不全、特に末期腎臓疾患は、水および無機質を除去し、有害な代謝物を排出し、酸-塩基バランスを維持し、かつ電解質および無機質の濃度を生理学的範囲に制御する能力を身体から失わせる。尿素、クレアチニン、尿酸およびリンなどの毒性の尿毒症代謝排出物(uremic waste metabolite)は、体組織中に蓄積し、腎臓の濾過機能が戻らない場合はヒトの死を引き起こし得る。
【0003】
これらの排出毒素および過剰な水を除去することにより腎臓の機能を戻すために、透析が一般的に使用される。ある種の透析治療において、腹膜透析(PD)、滅菌、発熱物質非含有透析液が患者の腹膜腔に注入される。腹膜は天然の透析器として機能し、毒性の尿毒症代謝排出物および種々のイオンは、それらの濃度勾配により腹膜を通って患者の血流から透析液へと拡散する。同時に、流体は、浸透圧勾配により腹膜腔へと排出される。透析液は、除去され、廃棄され、かつ半連続的または連続的に新鮮な透析液と交換される。
【0004】
腹膜透析における患者の日常的な管理において、限外濾過による流体の除去は、正常な体液体積および血圧の維持に重要な役割を果たす。Arkouche W., Fouque D., Pachiaudi C., Normand S., Laville M., Delawari E., Riou J. P., Traeger J., and Laville M., Total body water and body composition in chronic peritoneal dialysis patients、J Am Soc Nephrol 8:1906-1914、1997;Lindholm B., Werynski A., and Bergstroem J., Fluid transport in peritoneal dialysis、Int J Artif Organs 13:352-358、1990;およびKorbet M. S., Evaluation of ultrafiltration failure、Advances in Renal Replacement Therapy 5(3):194-204、1998参照。流体体積を除去する腹膜の能力は、通常、クレアチニンなどの選択された物質(溶質)濃度の透析物 対 血漿(D/P)比を測定する標準的な腹膜平衡試験(PET)により評価される。それぞれの溶質について、輸送速度は、D/P比の範囲の増加において、低、低平均、高平均、および高に分類される。Twardowski Z. J., Nolph K. O., Khanna R., Prowant B. F., Ryan L. P., Moore H. L., and Nielsen M. P., Peritoneal Equilibration Test、Perit Dial Bull 7:138-147、1987;およびSmit W., Estimates of peritoneal membrane function-new insights、Nephrol Dial Transplant 21:ii16-ii19、2006(以下「Smit」)参照。クレアチニンの高D/P比は、透析物から患者の血液へのグルコースなどの低分子量浸透剤の高い吸収速度に関連するので、限外濾過の不首尾を反映し、そのため患者から透析物への流体の除去を可能にする浸透圧勾配の急速な消失を反映する。Smit参照。浸透圧勾配の消失後、透析物からの流体は、腹膜を通って患者に再吸収され得る。かかる過剰吸収患者において、排出体積は、最初の充填体積よりも少なくなり得、最大の望ましい限外濾過体積よりも確実に少なくなる。しかしながら、PD治療を施しながら、流体体積を除去する腹膜の能力をモニタリングするためのPETは使用できない。従来、全限外濾過体積(UFVM)は、PD治療の終わりの時点の全充填体積と全排出体積の重量差から決定されるので、治療サイクルにおいて、より早期に過剰吸収患者を同定することはできない。
【0005】
そのため、腹膜透析中の患者について、限外濾過による流体除去のモニタリングの向上の必要がある。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
本発明は一般的に、患者の腹膜透析に関する。
【0007】
一態様において、患者において腹膜透析を実行するために、患者の腹膜腔内に、ある体積の腹膜透析(PD)液を注入するための腹膜透析(PD)システムは、断片的バイオインピーダンス分光学(segmental bioimpedance spectroscopy)(SBIS)により患者の腹膜腔内の流体の体積を測定して、患者の腹膜腔内の流体の限外濾過体積を決定する腹膜腔モニター(PCM)、ならびに患者の腹膜腔を充填するため、および限外濾過体積が経時的に変化しないか、有意に減少するかまたは有意な速度で減少している場合に、患者の腹膜腔から排液するための、PCMにより制御されるスイッチを含む。代替的に、スイッチの代わりに、該腹膜透析(PD)システムは、限外濾過体積が経時的に変化しないか、有意に減少するかまたは有意な速度で減少している場合に、患者の腹膜腔から排液されるべきときを指示するための、PCMにより制御されるアラームを含み得る。
【0008】
別の態様において、患者の腹膜透析の方法は、患者の腹膜腔に、ある体積の腹膜透析液を導入する工程、および断片的バイオインピーダンス分光学(SBIS)により患者の腹膜腔内の流体の体積を定期的に測定して、患者の腹膜腔内の流体の限外濾過体積を決定する工程を含む。次いで、該方法は、限外濾過体積が経時的に変化しないか、有意に減少するかまたは有意な速度で減少している場合に、患者の腹膜腔から排液する工程を含む。該方法は、患者の腹膜腔を、さらなる体積の腹膜透析液で再充填する工程を含み得る。
【0009】
本発明は、測定された体積の流体が腹膜腔に蓄積した後に患者の腹膜腔から排液し、患者への流体の望ましくない再吸収を最小化し、それにより、所望の体積の流体が患者から除去された後、透析治療サイクルを中断することを可能にするか、または患者への再吸収によりこの体積がさらに減少する前に限外濾過体積の有意な減少を認識することを可能にし、腹膜腔から排液して腹膜腔をさらなる体積の透析流体で再充填し、および透析治療を継続することを可能にする能力などの多くの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
前述のものは、添付の図面に図示されるように、本発明の好ましい態様の以下のより具体的な記載から明らかであり、該図面において、同様の参照記号は、異なる図面を通じて同じ部分を言及する。図面は必ずしも同じ縮尺である必要はなく、本発明の態様の説明に重点が置かれる。
図1図1は、腹膜腔内の流体体積の測定のための電極の例示的な設置の模式的な図示である。
図2図2は、電極の別の例示的な設置および腹膜腔内の流体の体積の測定の模式的な図示である。
図3図3は、図2に示す電極および座った姿勢の患者の腹膜腔の側面図である。
図4図4は、PD治療および透析物調節の模式的な図示である。腹膜腔モニター(PCM)からのシグナルに従った、腹膜腔からの流体の排液または腹膜腔への充填を制御するためのスイッチ(SW)が使用される。
図5図5は、腹膜透析治療の測定および制御のためのデバイスの例のブロック図である。
図6図6は、SBISを使用したPD治療の際の流体の交換を決定するためのフローチャートである。
図7図7は、時間(分)の関数としての患者#5の腹膜腔内の流体体積(%)の変化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は一般的に、患者の腹膜透析に関する。患者の腹膜透析の方法は、ある体積の腹膜透析流体を患者の腹膜腔に導入することを含む。当該技術分野において公知である任意の適切な腹膜透析液(すなわち腹膜透析流体)(例えば、Delflex(登録商標)、Fresenius Medical Care North America, Waltham MA)が使用され得る。PD流体の体積は、約1.5L〜約2.5L、好ましくは約2Lの範囲であり得る。この公知の体積を使用して、体積のバイオインピーダンス測定が較正される。該方法は、PD治療の際、例えば約1分、約5分、約30分等の間隔で、患者の腹膜腔内の流体の体積を定期的に測定する工程を含む。より頻度の高い測定により、より高い時間的分解がもたらされ、限外濾過体積における急速な変化の検出が可能になる。流体体積測定は、断片的バイオインピーダンス分光学(SBIS)によりなされる。Zhu F., Hoenich N. A., Kaysen G., Ronco C., Schneditz D., Murphy L., Santacroce S., Pangilinan A., Gotch F., and Levin N. W., Measurement of Intraperitoneal Volume by Segmental Bioimpedance Analysis During Peritoneal Dialysis、American Journal of Kidney Diseases、42:167-172、2003(以下「Zhu et al.」);およびLevin et al. 2008に対する米国特許第7,354,417号参照。このSBIS法において、図1に示されるように8個の電極110、120、130、140、150、160、170および180(例えば標準ECG電極)が体に配置される。4個の電極110、120、130および140は注入電流(injecting current)のための電極である。電極150と170、および160と180は、間隔Lの間の電圧の測定のための二組の電極である。注入電極と測定電極の間隔はDである。ケーブルホルダー185を使用して、電極ケーブル186をバンド187で固定し得る。腹膜腔内の流体の体積Vは、
【化1】
の関係に基づいて測定され、式中、Kpは、対象特異的較正定数であり、σは、腹膜腔内の流体の伝導性であり、Rは、RLとRRの平均であり、RLL/IおよびRRR/Iであり、ΦLは、電極160と180の間で測定された電圧であり、ΦRは、電極120と140の間(左)、および電極110と130の間(右)のそれぞれの電流Iの注入時に電極150と170の間で測定された電圧である。Kpは、任意の流体が腹膜腔に導入される前にRLBおよびRRBを得ること、次いで流体の所定の体積VC(例えば2L)を患者の腹膜腔に導入した後にRLAおよびRRAを得ることにより決定され得、VCは、時点Aと時点Bの間の流体体積の変化(ΔV)であり、次いで等式
【化2】
からKpが決定され、式中RB=(ΦLBRB)/(2I)およびRA=(ΦLARA)/(2I)である。
【0012】
代替的に、SBISは、仰向けの姿勢の患者で、例えば標準PETの間に、以下に記載されるように改変されたHydraバイオインピーダンスデバイスを使用して実施され得る。Zhu et al.;Hydra 4200 Analyzer, Xitron Technologgies Inc., San Diego, CA参照。図2に示されるように、該方法は、両腕(210および230)および両足(220および240)のそれぞれに配置された注入電流のための4個の電極210、220、230および240、ならびに体の両側の下部肋骨(250および270)および臀部(260および280)に配置された4個の測定電極250、260、270および280を含む。測定の間に、交流電流(例えば、5kHz、約0.05mA〜約0.7mAの範囲)が連続的に注入される。センサーのこの配置により、注入された電流は、体の両側の腹膜腔を突き抜ける。1つのみの断片(segment)を測定するためにHydra 4200 Analyzerが使用され得るので、該分析器は、体のいずれかの面上の断片間にスイッチ(示さず)を付加することにより改変された。一方の面の電極250と260の間および他方の面の電極270と280の間の断片の長さLは、例えば可撓性のテープを用いて測定し得る。対象255の領域内に含まれる断片的細胞外体積Vは、
【化3】
から計算され、式中、Rは、長さLを通る体の2面の間で測定された平均断片的抵抗であり、σは、細胞外体積の伝導性であり(21.28mS/cm)、Ksは、式
【化4】
を使用して、最初に充填された体積(V1)ならびに空(RE)および充填された腹膜腔(RF)の抵抗から決定される較正因子である。
【0013】
腹膜腔255内の抵抗の変化と流体体積の関係を確立するためのSBIS法の較正は、図3に示されるように、治療の開始時に既知の体積の透析物を導入することにより実施される。この方法についての較正因子Ksは、上述の8個の電極方法についての較正因子Kpと異なり得る。休止時の腹膜腔内の流体体積の増加は、この期間に生じる正味の限外濾過体積(UFVSBIS)と等しいとみなされる。最後の排液体積を計量して排液体積(DVM)を測定する。
【0014】
図1に戻ると、連結ケーブル188を使用して、電極からのシグナルを腹膜腔モニター(PCM)190に移す。以下にさらに記載されるように、PCMを使用して、インピーダンスを測定し、ワイヤレスシグナルを伝達して、腹膜腔255を充填するかまたは腹膜腔255から排液420へ排液するために図4に示されるスイッチ(SW)410を制御する。代替的に、非自動化PD(例えば、連続移動性(continuous ambulatory)腹膜透析(CAPD))における使用について、可聴アラームまたは振動アラームは、患者または付添人に迅速に排液するように警告し得る。腹膜腔255からの流体の最初の排液および通常4時間の休止時間の腹膜腔255への2リットルの流体の注入後、SBISにより腹膜腔255内の流体の体積を定期的にモニタリングして、腹膜腔内の流体体積(VPC)をモニタリングする。腹膜腔255内の体積が最大体積に達した場合、または腹膜腔255内の体積が有意に減少する、例えば相対的な体積が約0.3L以上減少する場合、または腹膜腔255内の体積が、例えば10分より長い時間間隔にわたり有意に減少する、もしくは一定の時間、約10分〜約30分の範囲、好ましくは約10分間安定に維持される(すなわち、変化しない)場合、腹膜腔255から排液し得、その後、新たなPD透析物体積(例えば、2L)が、治療の終わりまで(通常4時間)注入され得る。腹膜腔255内の流体の体積の減少の有意な速度は、約0.03L/分以上の体積減少の速度であり得る。代替的に、腹膜腔255内の流体の体積の有意な減少は、約0.3L以上の相対的な体積減少であり得る。
【0015】
図5に示されるように、PCM 190は、低周波数範囲(例えば、約1kHz〜約300kHz)内の電極アレイ505からのインピーダンスデータを継続的に回収する(インピーダンス検出器510)。シグナル発生器525により生じる高周波数シグナル(例えば、5MHz)を使用する場合、ワイヤレス伝達器520を使用して、受信機530にインピーダンスシグナル535を送信し得る。受信機530は、アンテナ540からインピーダンスシグナル535を得て、シグナルプロセッサ550を使用して、図6に示されるフローチャートに従って、充填または排液するためにスイッチ(SW)410を開くべきかまたは閉じるべきかを決定し、結果をディスプレイ560に表示する。図6に示されるように、該方法は、工程610で患者のバイオインピーダンス分析(BIA)で開始し、工程620で、患者の腹膜腔への所定の体積(例えば、2L)の透析物充填が続く。次いで、工程630は、Kpを決定するための、充填の開始から充填の終わりまでの間隔Lを通過する抵抗の変化の較正である。続いて、腹膜腔内の透析物の体積を工程640で計算し、5分間のVPCの変化の傾斜の基準SVPCを工程650で確立する。工程655でSVPCが閾値レベル(例えば、0.03L/分)未満である場合は、工程660で排液するためにスイッチ410(SW)を開く。工程665で、30分間のVPCの変化(ΔVPC)の絶対値が所定の量(例えば0.1L)未満である場合は、工程670で排液するためにスイッチ410(SW)を開く。条件655および665のどちらも当てはまらない場合は、工程675で、治療時間が終わるまで治療を継続し、工程680で治療を終える。医師または看護師などの当業者は、本明細書の記載に基づいて、特定の患者に適切な排液のための異なる条件を調整または工夫し得る。
【0016】
PCMを腹膜透析(PD)システムと一体化し得、例えばLiberty(登録商標)Cycler、これは、患者において腹膜透析を実行するために、患者の腹膜腔に注入されるある体積のPD液、断片的バイオインピーダンス分光学(SBIS)により患者の腹膜腔内の流体の体積を測定して、患者の腹膜腔内に蓄積した流体の限外濾過体積を決定する腹膜腔モニター(PCM)、ならびに患者の腹膜腔を充填するため、および限外濾過体積が変化しないか、有意に減少するかまたは有意な速度で減少している場合に、患者の腹膜腔から排液するための、PCMにより制御されるスイッチを含み得る。Liberty(登録商標)Cycler、Fresenius Medical Care North America, Waltham, MA;米国特許第7,935,074号および米国特許出願第12/709,039号(US 2010/0222735 A1として公開)参照。
【0017】
一態様において、図6に示されるように、PD治療中に患者の腹膜腔から排液すること、および任意に透析物を交換すること(すなわち、患者の腹膜腔を再充填すること)の決定は、2つの基準:1) 腹膜腔内の体積変化の傾斜(SVPC)が約-0.03L/分未満、すなわちVPCが10分間に約0.3Lより大きく減少する、または2) VPCが30分間変化しない、に基づく。全治療時間中、条件1)または2)が満たされる場合、排液のためにスイッチ(SW)が自動で開き、腹膜腔から排液された後、治療が完了するまで、新たに2Lの体積の透析物が腹膜腔に注入される。代替的に、アラーム(例えば、可聴アラームまたは振動アラーム)は、患者または付添人に、排液を引き起こすように警告し得る。
【実施例】
【0018】
実施例
上述のように改変したHydra 4200 Analyzerを使用して、標準PETの間に、仰向けの姿勢の患者で断片的バイオインピーダンス分光学(SBIS)を実施した。Zhu et al参照。注入電流について4個の電極を両腕および両足に設置した。体の両側の下部肋骨および臀部に4個の測定電極を設置した。腹膜腔における抵抗の変化と流体体積の関係を確立するためのSBIS法の較正は、治療の開始時に既知の体積の透析物を導入することにより行った。休止期間中の腹膜腔における流体体積の増加は、この期間に生じる正味の限外濾過体積(UFVSBIS)と等しいとみなされた。最後の排液体積を計量して排液体積(DVM)を測定した。透析物クレアチニン濃度(DCre)を0時間、2時間および終わりの時点で測定した。PETの開始時に血漿クレアチニン濃度(PCre)を測定した。D/PはDCre/PCreにより計算した。
【0019】
表1に示すように、UFVDiffは、開始とその後の測定時間の間の正味のUFVSBISの変化を表す。各患者1、2および3のそれぞれでUFVM(0.64、0.63および0.26L)およびUFVSBIS(0.42、0.54および0.05L)を観察した。平均UFVMは、正味のUFVSBISと変わらず(0.51±0.22 対 0.34±0.26L)、平均DVM(各患者について2.62、2.5および2.25L)は、SBISにより推定したDVSBIS(それぞれについて2.0、2.2および2.21L)とほぼ等しかった(2.46±0.19 対 2.13±0.13L)。
【0020】
表1に示す結果は、PETの間のUFVの変化とクレアチニンの輸送の関係についての情報を提供する。限外濾過体積についての動的な情報の利用可能性は、腹膜の特徴の理解を補助する。この情報は臨床的な実施について、腹膜の個々の特徴に従ってPD手順を調整するために有用であり得る。
【0021】
さらに、限外濾過体積の定期的な測定により、表1に示されるように、患者1について約2時間の休止時間および患者2について約3時間の休止時間に生じた最大UFVDiffにおける、またはその付近での患者の腹膜腔からの排液が可能になり、治療の開始時から腹膜が透析物から流体を吸収して、負のUFVDiffを示す患者、例えば患者3の同定も可能になる。
【0022】
【表1】
【0023】
最適休止時間の例
腹部の両側面に二組の電極を設置した。断片的分光学(sBIS)を使用して、休止の間の流体変化を継続的にモニタリングした。2LのPD流体の点滴注入後、腹膜内の流体体積の変化からUFVを計算した。最適休止時間(ODT)は、PDの開始と、流体の再吸収が検出される時点の間の時間である。手動PDを使用して座っている姿勢で患者を2回試験した:1) 試験1、4時間の休止時間(DT)を有する規則的な手順、交換を通じてsBISでモニタリングした;2) 試験2、ODT手順、流体体積の変化の速度が、10分より長くマイナスになった(流体が吸収される)かまたは平坦になった(すなわち、変化しない)場合に透析物を排液した。実際のUFV(aUFV)は、排液体積と充填体積の重量差として規定した。
【0024】
3人の患者における予備的な結果(表2)は、aUFVは、sBISにより推定されるUFVと同じであったことを示す。第2の試験において、排液のための最適時間は、休止の最初の2時間以内であった。図7は、患者#5におけるPDの間の腹膜流体体積の変化を示す。
【0025】
【表2】
【0026】
腹膜内の流体体積の変化を継続的にモニタリングすることにより、sBISは、DTを最適にすることによるUFVの最大化を可能にする。UFVにおける任意のプラトーまたは減少は、透析物排液を喚起するはずである。交換毎にODTが提供され得、これは自動化PDで特に有利である。Kt/V目標に到達するためにはさらなる交換が必要であり得るが、該技術の重要な利点は、限外濾過体積を最大化する能力である。
【0027】
本明細中に引用される全ての特許、公開特許出願および参考文献の関連のある教示は、その全体において参照により援用される。
【0028】
本発明は、その好ましい態様に関して具体的に示され、記載されてきたが、形態および詳細における種々の変更が、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、本発明においてなされ得ることを当業者は理解しよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7