特許第6131355号(P6131355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131355
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】X線走査方法及び走査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20060101AFI20170508BHJP
   G01N 23/18 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   G01N23/04
   G01N23/18
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-44778(P2016-44778)
(22)【出願日】2016年3月8日
(65)【公開番号】特開2016-200582(P2016-200582A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2016年3月8日
(31)【優先権主張番号】201510162286.8
(32)【優先日】2015年4月7日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515221794
【氏名又は名称】ヌクテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180699
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 渓
(72)【発明者】
【氏名】チャン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジン マー
(72)【発明者】
【氏名】チョンロン ヤン
【審査官】 立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/147314(WO,A1)
【文献】 特開2010−185888(JP,A)
【文献】 特開2015−118074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/04
G01N 23/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を射出しない場合に背景データを収集することと、
X線を射出するが検知通路内で走査物体がない場合にエアデータを収集することと、
物体を走査し、オリジナル走査データを収集することと、
前記背景データ及び前記エアデータに基づき前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得することと、を含み、
前記背景データ及び前記エアデータに基づき前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得するのは、
前記オリジナル走査データに基づき走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することと、
前記エアデータから前記エア領域のオリジナル走査データの値に最も近いエアデータを検索し、前記背景データ及び前記最も近いエアデータに基づき前記オリジナル走査データをゲイン修正し、走査画像データを取得することと、を更に含むことを特徴とするX線走査方法。
【請求項2】
前記背景データを収集するのは、
前記背景データに対し平均値を取り、平均背景データを取得することを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のX線走査方法。
【請求項3】
前記エアデータを収集するのは、
前記エアデータに対し平均値を取り、平均エアデータを取得することを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のX線走査方法。
【請求項4】
前記オリジナル走査データに基づき走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割するのは、
予め設定した閾値を利用して前記走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することを含むことを特徴とする請求項に記載のX線走査方法。
【請求項5】
前記オリジナル走査データに基づき走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割するのは、
閾値法、エッジ検出法又は領域拡張法を利用して前記走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することを含むことを特徴とする請求項に記載のX線走査方法。
【請求項6】
X線を射出しない場合に背景データを収集することと、
X線を射出するが検知通路内で走査物体がない場合にエアデータを収集することと、
物体を走査し、オリジナル走査データを収集することと、
前記背景データ及び前記エアデータに基づき前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得することと、を含み、
前記背景データ及び前記エアデータに基づき前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得するのは、
走査領域内における物体の配置が許可されないサブ領域をエア領域とし、走査領域内における他の領域を物体領域とすることと、
前記エアデータから前記エア領域のオリジナル走査データの値に最も近いエアデータを検索し、前記背景データ及び前記最も近いエアデータに基づき前記オリジナル走査データをゲイン修正し、走査画像データを取得することと、を更に含むことを特徴とするX線走査方法。
【請求項7】
X線を射出するためのX線検査機と、
前記X線検査機と相対的静止を保持し、前記X線の検知信号を収集するための検知器と、
前記検知器に接続され、前記検知器により収集されたX線の検知信号を処理するためのプロセッサと、を含み、
前記検知器により収集されたX線の検知信号を処理するのは、
前記X線検査機が前記X線を射出しない場合に、前記検知器により収集された検知信号を背景データとすることと、
前記X線検査機が前記X線を射出するが検知通路内で走査物体がない場合に、前記検知器により収集された検知信号をエアデータとすることと、
前記X線検査機が前記X線を射出して物体を走査する場合に、前記検知器により収集された検知信号をオリジナル走査データとすることと、
前記背景データ及び前記エアデータに基づき前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得することと、を備え
前記プロセッサは、更に、
前記オリジナル走査データに基づき走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割すること、
前記エアデータから前記エア領域のオリジナル走査データの値に最も近いエアデータを検索し、前記背景データ及び前記最も近いエアデータに基づき前記オリジナル走査データをゲイン修正し、走査画像データを取得することに用いられることを特徴とするX線走査システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、更に、
前記背景データに対し平均値を取り、平均背景データを取得すること、及び/又は、
前記エアデータに対し平均値を取り、平均エアデータを取得することに用いられることを特徴とする請求項に記載のX線走査システム。
【請求項9】
前記システムは、
前記X線検査機と前記検知器との間の光路に固定され、前記X線検査機及び前記検知器と相対的静止を保持し、前記X線検査機により射出されたX線を視準するためのコリメータを更に含むことを特徴とする請求項に記載のX線走査システム。
【請求項10】
前記プロセッサは、更に、
予め設定した閾値を利用して前記走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することに用いられることを特徴とする請求項に記載のX線走査システム。
【請求項11】
前記プロセッサは、更に、
閾値法、エッジ検出法又は領域拡張法を利用して前記走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することに用いられることを特徴とする請求項に記載のX線走査システム。
【請求項12】
X線を射出するためのX線検査機と、
前記X線検査機と相対的静止を保持し、前記X線の検知信号を収集するための検知器と、
前記検知器に接続され、前記検知器により収集されたX線の検知信号を処理するためのプロセッサと、を含み、
前記検知器により収集されたX線の検知信号を処理するのは、
前記X線検査機が前記X線を射出しない場合に、前記検知器により収集された検知信号を背景データとすることと、
前記X線検査機が前記X線を射出するが検知通路内で走査物体がない場合に、前記検知器により収集された検知信号をエアデータとすることと、
前記X線検査機が前記X線を射出して物体を走査する場合に、前記検知器により収集された検知信号をオリジナル走査データとすることと、
前記背景データ及び前記エアデータに基づき前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得することと、を備え、
前記プロセッサは、更に、
走査領域内における物体の配置が許可されないサブ領域をエア領域とし、走査領域内における他の領域を物体領域とすること、
前記エアデータから前記エア領域のオリジナル走査データの値に最も近いエアデータを検索し、前記背景データ及び前記最も近いエアデータに基づき前記オリジナル走査データをゲイン修正し、走査画像データを取得することに用いられることを特徴とするX線走査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射検出分野に関し、特にX線走査方法及び走査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線による走査結像は安全検査、工業探傷、医療検査などの業界でよく用いられた技術的手段であり、特にセキュリティー用X線検査機は駅、桟橋、空港、展示会場などの場所で広く使用されている。ほとんどのX線走査システムはX線射出面が静止し、搬送システムで被検出物体を移動して射出面によって走査を行う。しかし、ある特定の条件で、被検出物体は移動されず、例えば、被検出物体は固定された工業用デバイスであり、或いは人体を検査する場合に、人体を移動すると、釣り合いをよく保つことができない。このとき、走査装置がX線射出面を移動することにより走査を行うだけである。したがって、被検出物体が静止したままで、X線走査装置がX線射出平面を移動することによって走査を行う結像システムを求められている。
【0003】
被検出物体が静止したままでX線射出面が移動する場合に、機械運動過程において不可避的に振動が存在して、走査過程においてX線検査機と検知器との間に完全に相対的に静止できないため、検知器が受信したX線の強度が不安定になる。このとき、依然として従来の修正方法を採用して収集された画像を処理すれば、即ち、現在で用いられた収集された画像に対して単純なデータ伝送及び簡単なノイズ低減処理分析を行う方法を実行したら、図1に示すように、画像には不可避的に縞状のノイズが発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は従来の技術において静止物体をX線走査するときに機械振動によるノイズの問題を解決するためのX線走査方法及び走査システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術課題を解決するために、本発明は、
X線を射出しない場合に背景データを収集することと、
X線を射出するが検知通路内で走査物体がない場合にエアデータを収集することと、
物体を走査し、オリジナル走査データを収集することと、
前記背景データ及び前記エアデータに基づき前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得することと、を含むX線走査方法を提供している。
【0006】
また、前記背景データを収集するのは、
前記背景データに対し平均値を取り、平均背景データを取得することを更に含む。
【0007】
また、前記エアデータを収集するのは、
前記エアデータに対し平均値を取り、平均エアデータを取得することを更に含む。
【0008】
また、前記背景データ及び前記エアデータに基づき前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得するのは、
前記オリジナル走査データに基づき走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することと、
前記エアデータから前記エア領域のオリジナル走査データの値に最も近いエアデータを検索し、前記背景データ及び前記最も近いエアデータに基づき前記オリジナル走査データをゲイン修正し、走査画像データを取得することと、を更に含む。
【0009】
また、前記オリジナル走査データに基づき走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割するのは、
予め設定した閾値を利用して前記走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することを含む。
【0010】
また、前記オリジナル走査データに基づき走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割するのは、
閾値法、エッジ検出法又は領域拡張法を利用して前記走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することを含む。
【0011】
また、前記背景データ及び前記エアデータに基づき前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得するのは、
走査領域内における物体の配置が許可されないサブ領域をエア領域とし、走査領域内における他の領域を物体領域とすることと、
前記エアデータから前記エア領域のオリジナル走査データの値に最も近いエアデータを検索し、前記背景データ及び前記最も近いエアデータに基づき前記オリジナル走査データをゲイン修正し、走査画像データを取得することと、を更に含む。
【0012】
一方、本発明は、
X線を射出するためのX線検査機と、
前記X線検査機と相対的静止を保持し、前記X線の検知信号を収集するための検知器と、
前記検知器に接続され、前記検知器により収集されたX線の検知信号を処理するためのプロセッサと、を含み、
前記検知器により収集されたX線の検知信号を処理するのは、
前記X線検査機が前記X線を射出しない場合に、前記検知器により収集された検知信号を背景データとすることと、
前記X線検査機が前記X線を射出するが検知通路内で走査物体がない場合に、前記検知器により収集された検知信号をエアデータとすることと、
前記X線検査機が前記X線を射出して物体を走査する場合に、前記検知器により収集された検知信号をオリジナル走査データとすることと、
前記背景データ及び前記エアデータに基づき前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得することと、を備えるX線走査システムを提供している。
【0013】
また、前記プロセッサは、更に、
前記背景データに対し平均値を取り、平均背景データを取得すること、及び/又は、
前記エアデータに対し平均値を取り、平均エアデータを取得することに用いられる。
【0014】
また、前記システムは、
前記X線検査機と前記検知器との間の光路に固定され、前記X線検査機及び前記検知器と相対的静止を保持し、前記X線検査機により射出されたX線を視準するためのコリメータを更に含む。
【0015】
また、前記プロセッサは、更に、
前記オリジナル走査データに基づき走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割すること、
前記エアデータから前記エア領域のオリジナル走査データの値に最も近いエアデータを検索し、前記背景データ及び前記最も近いエアデータに基づき前記オリジナル走査データをゲイン修正し、走査画像データを取得することに用いられる。
【0016】
また、前記プロセッサは、更に、
予め設定した閾値を利用して前記走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することに用いられる。
【0017】
また、前記プロセッサは、更に、
閾値法、エッジ検出法又は領域拡張法を利用して前記走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することに用いられる。
【0018】
また、前記プロセッサは、更に、
走査領域内における物体の配置が許可されないサブ領域をエア領域とし、走査領域内における他の領域を物体領域とすること、
前記エアデータから前記エア領域のオリジナル走査データの値に最も近いエアデータを検索し、前記背景データ及び前記最も近いエアデータに基づき前記オリジナル走査データをゲイン修正し、走査画像データを取得することに用いられる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によるX線走査方法及び走査システムにおいて、静止物体をX線走査するときに、背景データ及びエアデータを測定すると共に走査データを処理することによって、機械振動によるノイズの問題を解決し、測定精度を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下、本発明の実施例又は従来の技術における技術案をより明確に説明するために、実施例又は従来の技術の説明では使用する必要がある図面を簡単に述べるが、勿論、以下の図面は本発明のいくつかの実施例であり、当業者にとって、創造的な労力をしないで、更にこれらの図面に基づきその他の図面を取得することができる。
図1】従来の技術において生成した縞状のノイズの模式図である。
図2】人体安全検査システムの構造模式図である。
図3】本発明の実施例のX線走査方法の基本的な流れの模式図である。
図4】本発明の実施例1におけるX線人体走査方法の流れの模式図である。
図5】本発明の実施例1における物体領域とエア領域との分割模式図である。
図6】本発明の実施例1における走査領域の限定方法の模式図である。
図7】本発明の実施例2におけるX線走査システムの構造模式図である。
図8】本発明の実施例における走査画像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にさせるために、以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術案を明確、完全に説明する。もちろん、当該説明する実施例は全部の実施例ではなく、本発明の一部の実施例である。本発明における実施例に基づいて、当業者は創造的な労力をしないで得られたすべての他の実施例は、本発明の保護範囲に含まれる。
【0022】
図2は被検出物体が静止したままでX線射出面が移動する人体安全検査システムを提供し、ベース1、ベース1に支持される支柱2、コリメータ取付面3、同期ベルト4、同期プーリー5、軸受台6、一体型アーム7、ナット25、ガイドスライダ26、ガイドレール27、モータ28、コリメータ調整装置29、及び支柱2に駆動可能に接続される走査結像装置150を備える。人体安全検査システムは、走査結像装置150が所定の方向、例えば図2における直交方向に沿って運動して走査操作するように駆動するための駆動機構100を備える。図2における走査結像装置150の放射線源、コリメータ及び検知器は一体型アーム7によって固定的に接続されて一体構造を形成する。
【0023】
本発明の実施例は、まずX線走査方法を提供し、図3を参照し、
X線を射出しない場合に背景データを収集するステップ301と、
X線を射出するが検知通路内で走査物体がない場合にエアデータを収集するステップ302と、
物体を走査し、オリジナル走査データを収集するステップ303と、
前記背景データ及び前記エアデータに基づき前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得するステップ304と、を含む。
【0024】
X線を射出するが検知通路内で走査物体がない場合にエアデータを収集するときに、X線検査機、検知器及びX線検査機によるX線射出面が走査過程において移動する。
【0025】
測定結果がより正確であるように、収集された背景データ及び/又はエアデータに対し平均値を取ることができる。好ましくは、方法は前記背景データに対し平均値を取り、平均背景データを取得し、又は前記エアデータに対し平均値を取り、平均エアデータを取得することを含んでよい。
【0026】
前記背景データ及び前記エアデータに基づき、前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得するのは、
前記オリジナル走査データに基づき走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することと、
前記エアデータから前記エア領域のオリジナル走査データの値に最も近いエアデータを検索し、前記背景データ及び前記最も近いエアデータに基づき前記オリジナル走査データをゲイン修正し、走査画像データを取得することと、を含んでよい。
【0027】
前記オリジナル走査データに基づき走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割するのは、予め設定した閾値を利用して前記走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することを含んでよい。
【0028】
前記オリジナル走査データに基づき走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割するのは、閾値法、エッジ検出法又は領域拡張法を利用して前記走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することを含む。
【0029】
閾値法は目標(即ち物体領域)と背景(即ちエア領域)のグレースケール閾値を区別することに用いられる。画像の内容は目標及び背景の両方のみを含むと、1つの閾値だけを選択することができ、単一閾値分割と呼ばれ、以上のような予め設定した閾値は単一閾値分割の1種である。エッジ検出法は、最も一般的なグレースケール中断に対する検出方法であり、一次及び/又は二次導関数を採用してオリジナル走査データに基づき画像のグレースケール中断を検出することで、画像の物体領域とエア領域とを分割する。領域拡張法の基本思想は、同様の特性を有する画素を集めて領域を構成し、まず、1つの種子点を選択し、次に、順次に種子画素周囲の類似画素を種子画素の所在する領域に合併することによって、オリジナル走査データにおける物体領域とエア領域とをそれぞれ取得する。
【0030】
前記背景データ及び前記エアデータに基づき前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得するのは、
走査領域内における物体の配置が許可されないサブ領域をエア領域とし、走査領域内における他の領域を物体領域とすることと、
前記エアデータから前記エア領域のオリジナル走査データの値に最も近いエアデータを検索し、前記背景データ及び前記最も近いエアデータに基づき前記オリジナル走査データをゲイン修正し、走査画像データを取得することと、を含んでよい。
【0031】
実施例1
本発明の実施例1は人体走査を行うためのX線走査方法を提供する。X線の射出面を固定し、被検査者がコンベヤーに立てて射出面を通過すると、移動過程で被検査者がバランスを維持しにくく、又は身体が揺れることで、検査効果に対し影響を及ぼすため、本実施例1の走査過程において、被検査者が所定の固定位置に立てて、射出平面に直交するように相対位置が固定されたX線検査機及び検知器を移動して走査を行う。走査過程において被検査者が静止を保持すればよい。
【0032】
走査過程における機械振動による画像における縞状のノイズを修正するために、図4を参照し、本発明の実施例1の走査方法は具体的に以下のステップを含む。
【0033】
ステップ401において、X線を射出しない場合に背景データを収集し、当該背景データに対し平均値を取る。
【0034】
このステップでは、X線を射出しない場合に背景データを収集する。背景データを収集する際にX線を生成しないため、走査過程における機械振動による検知器が受信したX線の強度が不安定である問題を発生しない。
【0035】
背景データの収集過程において、一定の時間の背景データを収集して平均値を取り、平均背景データZ(j)と記載し、j=1,...,n、jは検知器通路の番号を示す。
【0036】
ステップ402において、X線を射出するが検知通路内で走査人体がない場合にエアデータを収集し、平均値を取る。
【0037】
このステップでは、X線を射出するが検知通路内で走査物体がない場合にエアデータを収集する。エアデータの走査は検知器をゲイン修正するために行われる。エアデータを収集する過程において機械振動の影響を受けるため、エアデータに大きな変動がある。収集時、走査通路にいずれかの物体を配置せず、X線検査機、検知器が射出平面に直交するように運動して走査することによって、1組のエアデータF(i、j)を取得し、i=1,...,m、j=1,...,n。iはサンプリング時間の番号であり、走査過程で合計でm行のデータを取得し、jは検知器通路の番号を示し、合計でn個の検知器通路であり、m、nも収集された画像の高さ及び幅である。
【0038】
次に、得られたエアデータF(i、j)のすべての行を平均し、平均エアデータ
を取得する。
【0039】
ステップ403において、人体を走査し、オリジナル走査データを収集する。
【0040】
このステップでは、X線検査機及び検知器を移動することによって静止している人体を正常に走査してオリジナル走査データを収集する。人体を走査するときに得られたオリジナルデータをR(i、j)とし、i=1,…、m、j=1,…、n。
【0041】
ステップ404において、平均背景データ及び平均エアデータに基づきオリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得する。
【0042】
取得されたオリジナル走査データに対して平均背景データ及び平均エアデータに基づき背景修正及びゲイン修正を行う必要があり、つまり、データのプリ処理を行い、プリ処理後の画像をN(i、j)とする。以下、N(i、j)を計算する方法を詳しく説明する。
【0043】
まず、平均背景データ及び平均エアデータに基づき、オリジナル走査データを処理し、各サンプリング時間iのデータに対して以下の式によってT(i、j)を求め、


GMAXは走査画像が示すことができる最大のグレイレベルであり、a及びbは設定可能な定数であり、実際の走査状況に基づいて決められる。実際には、これは一般的なオリジナルデータのプリ処理方法であり、得られた走査画像T(i、j)に明らかな横縞がある。
【0044】
T(i、j)の上で、サンプリング時間ごとに取得されたオリジナル走査データに対して、取得された走査画像を人体が存在する物体領域と人体が存在しないエア領域(図5参照)とに分割することができる。
【0045】
領域分割時に、簡単に1つの予め設定した閾値tを採用し、値がtより大きい領域をエア領域とし、値がtより大きくない領域を物体領域とすることができるが、無論、その他の画像分割方法、例えば閾値法、エッジ検出法、領域拡張法などを採用してもよい。各行iに対して、エア領域に対応する列座標の集合をAiとし、つまり、第i行のオリジナル走査データを走査するときに、集合Aiに属するこれらの列でX線を吸収する物体がないため、これらの列を走査して得たデータがエアを走査するエアデータである。集合Aiにおける列に対して、エアデータF(i、j)から対応するオリジナル走査データの値に最も近い行kiを検索することができる。
【0046】
エアデータの列の集合Aiに対して、オリジナル走査データにおける第i行の値はエアデータにおける第ki行に最も近いものである。本実施例において、ユークリッド距離でベクトル間の距離を測定するが、無論、実際の状況に応じて都市ブロック距離、チェス盤距離などの他の距離で測定してもよい。ここで、機械振動とデータの変動が存在しているが、第i行のオリジナル走査データと第ki行のエアデータを走査するときに、システム全体の状態が最も近いため、第ki行のエアデータで第i行のオリジナル走査データを修正すると考えられる。

【0047】
上記の修正方法は平均エアデータF(j)による修正より合理的で、且つこれによる縞状のノイズを除去することができる。
【0048】
集合Aiの大きさは修正結果に影響を及ぼす1つの要素であり、Aiがなるべく多い列を含むことを確保するために、検知器の検知可能な範囲の幅を適切に増加し、或いは走査領域を限定し、エア領域の大きさを確保するようにする。例えば、走査通路の片側又は両側に一定の領域を分割し、これらの領域も走査及び結像の範囲に含まれるが、これらの領域に被走査物体又はその他の物体(図6を参照)を置くことを許可せず、このようにして、画像分割を必要とせず、直接的に物体の配置が許可されない領域に対応する画像部分をエア領域とする。
【0049】
実施例2
本発明の実施例2はX線走査システムを提供し、図7を参照し、
X線を射出するためのX線検査機71と、
前記X線検査機と相対的静止を保持し、前記X線の検知信号を収集するための検知器72と、
前記検知器72に接続され、前記検知器72により収集されたX線の検知信号を処理するためのプロセッサ73と、を含む。
【0050】
前記検知器72により収集されたX線の検知信号を処理するのは、
前記X線検査機が前記X線を射出しない場合に、前記検知器により収集された検知信号を背景データとすることと、
前記X線検査機が前記X線を射出するが検出通路内で走査物体がない場合に、前記検知器により収集された検知信号をエアデータとすることと、
前記X線検査機が前記X線を射出して物体を走査する場合に、前記検知器により収集された検知信号をオリジナル走査データとすることと、
前記背景データ及び前記エアデータに基づき前記オリジナル走査データをプリ処理し、走査画像データを取得することと、を備える。
【0051】
被検出物体が相対的に動かない走査方式を満たす必要があるときに、X線検査機71と検知器72を射出平面に直交する方向に沿って運動させ、且つX線検査機71と検知器72との間に相対的静止を保持し、走査を行うように、X線検査機71及び検知器72の両方は固定スタンド74に設置され、駆動装置で駆動される。
【0052】
更に、プロセッサ73は、
前記背景データに対し平均値を取り、平均背景データを取得すること、及び/又は、前記エアデータに対し平均値を取り、平均エアデータを取得することに用いられる。
【0053】
更に、システムは、前記X線検査機71と前記検知器72との間の光路に固定され、前記X線検査機71及び前記検知器72と相対的静止を保持し、前記X線検査機71により射出されたX線を視準するためのコリメータ75を更に備える。
【0054】
更に、プロセッサ73は、
前記オリジナル走査データに基づき走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割すること、
前記エアデータから前記エア領域のオリジナル走査データの値に最も近いエアデータを検索し、前記背景データ及び前記最も近いエアデータに基づき前記オリジナル走査データをゲイン修正し、走査画像データを取得することに用いられる。
【0055】
更に、プロセッサ73は、
予め設定した閾値を利用して前記走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することに用いられる。
【0056】
更に、プロセッサ73は、閾値法、エッジ検出法又は領域拡張法を利用して前記走査領域を物体が存在する物体領域と物体が存在しないエア領域とに分割することに用いられる。
【0057】
更に、プロセッサ73は、
走査領域内における物体の配置が許可されないサブ領域をエア領域とし、走査領域内における他の領域を物体領域とすること、
前記エアデータから前記エア領域のオリジナル走査データの値に最も近いエアデータを検索し、前記背景データ及び前記最も近いエアデータに基づき前記オリジナル走査データをゲイン修正し、走査画像データを取得することに用いられる。
【0058】
本発明の実施例によるX線走査方法及び走査システムを利用して静止物体に対してX線走査及びデータ処理を行った走査画像は、図8に示すように、図1と比べて明らかに分かるように、左側の空白領域と右側の走査物体の領域の縞状ノイズ現象はいずれも顕著に改善される。
【0059】
以上のように、本発明の実施例によるX線走査方法及び走査システムにおいて、静止物体をX線走査するときに、背景データとエアデータを測定するとともに走査データを処理することによって、機械振動によるノイズの問題を解決して、測定精度を向上させる。
【0060】
なお、以上の実施例は本発明の技術案を説明するためのものだけであり、制限するものではなく、上記実施例を参照して本発明を詳細的に説明したが、当業者は、依然として上記の各実施例に記載の技術案を修正し、或いはその一部の技術的特徴を等価切り替えることができ、これらの修正又は切り替えは、対応な技術案の趣旨が本発明の各実施例の技術案の精神及び範囲を逸脱しないものであると理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8