(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6131359
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】直流モータの中空型ロータ及びその巻線構造
(51)【国際特許分類】
H02K 23/40 20060101AFI20170508BHJP
H02K 23/00 20060101ALI20170508BHJP
H02K 23/54 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
H02K23/40
H02K23/00 A
H02K23/54
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-59648(P2016-59648)
(22)【出願日】2016年3月24日
【審査請求日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】104144666
(32)【優先日】2015年12月31日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】516087920
【氏名又は名称】信澤馬達有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼連信
【審査官】
池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3174334(JP,B2)
【文献】
特開平07−322552(JP,A)
【文献】
特開2015−070658(JP,A)
【文献】
特開平08−256458(JP,A)
【文献】
特開2013−074743(JP,A)
【文献】
特開平06−022521(JP,A)
【文献】
米国特許第05554903(US,A)
【文献】
米国特許第3729642(US,A)
【文献】
米国特許第4683393(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 23/40
H02K 23/00
H02K 23/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流モータに応用する直流モータの中空型ロータ及びその巻線構造であって、
前記直流モータは、収容空間を内部に有するハウジングを含み、
中空型ロータ構造は、整流子、出力部材及び中空型ロータを備え、
前記整流子は、前記収容空間内に取付けられるとともに、前記ハウジングの軸方向に沿って前記ハウジングの前端内壁に枢着され、前記整流子上の互いに隣り合う2つの整流片は、設定周波数に基づいてコイルへ送られる電流方向を反転し、それに伴い前記コイルに発生する電磁場も反転し、この方向転換過程は前記設定周波数に基づいて繰り返され、
前記出力部材は、前記収容空間内に取付けられ、前記ハウジングの軸方向に沿って前記ハウジングの後端内壁に枢着され、
前記中空型ロータは、電機子コアを含み、前記電機子コアには、複数ターンのコイルが巻き付けられ、前記中空型ロータ内には、軸方向に沿って軸孔が形成され、前記中空型ロータは、前記ハウジングの軸方向に沿って前記収容空間内に取付けられ、前記ハウジング内に固定された固定子との間に間隙が保持され、前記中空型ロータの前後端は、前記整流子及び前記出力部材とそれぞれ接続され、前記整流子及び前記出力部材が前記中空型ロータに伴って同期で回転し、各前記コイルの両端は、前記整流子上の互いに隣り合う前記2つの整流片にそれぞれ電気的に接続され、前記整流子からの電流を受け、対応した電磁場が前記中空型ロータに発生し、
前記電機子コアは、複数の珪素鋼板の組み合わせにより構成され、
前記整流子は、皿体及び複数の整流片を含み、
前記皿体の前面には、前記複数の整流片が設けられ、
前記複数の整流片は、互いに間隔をおいて設置され、
前記中空型ロータの前端は、前記皿体の後面に固定され、
前記中空型ロータの円周に沿って前記中空型ロータに固定されるとともに、前記整流子及び前記出力部材が前後端にそれぞれ接続された複数本の固定棒をさらに備えることを特徴とする、直流モータの中空型ロータ及びその巻線構造。
【請求項2】
前記電機子コアは、外電機子コア及び内電機子コアを含み、
前記外電機子コアは、複数の珪素鋼板の組み合わせにより構成され、軸方向に沿って複数の外コード溝が外表面に形成され、各前記外コード溝に前記各コイルが収容され、軸方向に沿って複数の第1の凹部が内表面に形成され、
前記内電機子コアは、複数の珪素鋼板の組み合わせにより構成され、軸方向に沿って複数の内コード溝が内表面に形成され、各前記内コード溝に前記各コイルが収容され、軸方向に沿って複数の第2の凹部が外表面に形成され、前記内電機子コアの外表面は、前記外電機子コアの内表面に接合され、各前記第1の凹部は、各前記第2の凹部にそれぞれ対応して固定孔を形成して、各前記固定孔は、各前記固定棒を固定するために用い、前記固定棒と前記中空型ロータとが一体成形されることを特徴とする、請求項1に記載の直流モータの中空型ロータ及びその巻線構造。
【請求項3】
各前記コイルは、一端が前記整流片の一つと電気的に接続され、他端が前記外コード溝の一つの前端に挿入され、前記外コード溝に挿通されて前記外コード溝の後端から突出された後、前記外コード溝に対応した前記内コード溝の一つの後端に挿入され、かつ、前記内コード溝に挿通されて前記内コード溝の前端まで延び、かつ、斜め方向へ延びて隣り合う他方の前記外コード溝の前部に挿入され、他方の前記外コード溝に挿通されて他方の前記外コード溝の後端まで延び、他方の前記外コード溝に対応した他方の前記内コード溝の後端まで延び、他方の前記内コード溝に挿通されて他方の前記内コード溝の前端まで延び、他方の前記整流片と電気的に接続されることを特徴とする、請求項2に記載の直流モータの中空型ロータ及びその巻線構造。
【請求項4】
各前記固定棒の前端及び後端には、位置決め管がそれぞれ嵌合され、
前記位置決め管は、対応した前記固定孔の孔径より大きい外径を有し、前記固定棒の前端に位置する各前記位置決め管は、前記整流子と前記中空型ロータとの間に位置し、前記固定棒の後端に位置する各前記位置決め管は、前記出力部材と前記中空型ロータとの間に位置することを特徴とする、請求項2又は3に記載の直流モータの中空型ロータ及びその巻線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流モータ構造に関し、特に、中空型ロータを有し、特定方式により中空型ロータに巻線を行う直流モータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ(electric motor)は、電動装置とも称され、受けた電力を機械エネルギへ変換してから、他の装置を駆動させることができるため、モータは様々な製品(例えば、電気自動車、旋盤、扇風機、水ポンプなど様々な分野)に広く利用されている。一般にモータは電気エネルギの種類により、直流モータ(direct current,DC motor)、交流モータ(Alternating−Current,ACmotor)、パルスモータ(pulse motor)などに大別される。直流モータは、「回転数−トルク」、「電流−トルク」などの特性曲線は直線関係であるため、簡単で制御し易いである。電力調整器(SCR)の発明、及び磁石材料、カーボンブラシ、絶縁材料の改良に加え、変速制御に対する人々のニーズの高まりに伴い、直流モータは産業自動化にとって大切な技術となってきた。
【0003】
図1Aを参照する。
図1Aに示すように、従来の直流モータ1の基本アーキテクチャは、少なくともハウジング10、枢軸11、ロータ(rotor)12、固定子(stator)13及び整流子(commutator)14を含む。ハウジング10内には収容空間101が形成される。枢軸11は、ハウジング10内に枢着され、かつ、一端に設けられた出力軸111が突出されてハウジング10から露出されている。ロータ12は、複数の珪素鋼板の組み合わせにより構成されて枢軸11上に固設される。ロータ12上には、複数ターンのコイルが巻き付けられている。固定子13は、永久磁石により構成され、ロータ12の外周縁に対応するようにハウジング10の内壁に固設されてロータ12と間隔をおいて設置されている。整流子14は、収容空間101内に配設されて外部の電力を受けることができ、コイルと電気的に接続され、コイルへ送電するとともに、整流子14によりコイルへ送る電流の方向を変えることができる。フレミングの左手の法則又は右手の法則に基づき、導線が磁場内に配置されて導線に電流が流されると、導線が発生させた磁場が、元からある磁場の磁力線を横切り、導線を移動させる。そのため、ロータ12上のコイルが通電されて発生した磁場が、固定子13により発生された磁力線を横切り、回転トルクによりロータ12が回転され、電気エネルギが運動エネルギへ変換される。
【0004】
上述したように、また
図1に示すように、従来の直流モータ1の全体構造は設計が硬直化して新規性が無く、メーカは伝動機構だけに対して改良を行うため、本発明者は、従来の直流モータのロータ構造を改良し、斬新な直流モータ構造を提供し、メーカは様々な使用目的に基づき、その他の部材(例えば、ロータ)の数又は取付け位置を容易に調整することができれば、ユーザのニーズを満たして市場において重要な位置を占めることができるはずである。
【0005】
前述した従来の直流モータのアーキテクチャを多数年利用すると分かるが、一部の部材(例えば、ロータ)の調整及び交換を行うことは容易でなかった。本発明者は、長年の実務経験に基づき研究及び実験を行い、効果が高く、メーカの実際の必要に応じて一部の部材を容易に調整することができる直流モータの中空型ロータ及びその巻線構造を遂に案出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は、直流モータの中空型ロータ及びその巻線構造を提供することにある。中空型ロータ構造は、直流モータに応用し、整流子、出力部材及び中空型ロータを含む。整流子及び出力部材は、中空型ロータの前後端にそれぞれ取り付けられ、整流子及び出力部材は、中空型ロータに伴って同期で回転する。中空型ロータは、電機子コアを含む。この電機子コアは、複数の珪素鋼板の組み合わせにより構成される。電機子コアには、複数ターンのコイルが巻き付けられ、中空型ロータ内には、軸方向に沿って軸孔が形成されている。中空型ロータは、ハウジングの軸方向に沿って直流モータのハウジング内に取付けられ、ハウジング内に固定された固定子との間に間隙が保持される。各コイルの両端は、整流子上の互いに隣り合う2つの整流片にそれぞれ電気的に接続され、整流子からの電流を受け、対応した電磁場が中空型ロータに発生する。メーカは、直流モータの動作性能を調整することができるように、必要に応じて中空型ロータの軸孔中に内固定子を設けるか、中空型ロータの外側に外固定子を設けるか、内固定子及び外固定子を同時に設けてもよい。
【0007】
本発明の第2の目的は、整流子を中空型ロータの軸孔中に取付け、出力部材を中空型ロータに取付けることにより、中空型ロータの前側に前固定子を設けるか、中空型ロータの後側に後固定子を設けるか、前固定子及び後固定子を同時に設け、直流モータの利便性を大幅に高めることができる、直流モータの中空型ロータ及びその巻線構造を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る直流モータを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る直流モータを示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る中空型ロータの一部を示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態に係る中空型ロータの1ターンのコイルを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1実施形態に係る中空型ロータの複数ターンのコイルを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係る中空型ロータを示す分解斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る直流モータを示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2実施形態に係る直流モータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は直流モータの中空型ロータ及びその巻線構造に係る発明である。従来の直流モータの構造は皆略同じであり、メーカが直流モータの性能を高める際、従来の直流モータ以外の装置(例えば、伝動機構)のみに改良を施していた。そのため、本発明者は、メーカに多くの選択が提供できるように、斬新な直流モータ構造を特別に設計し、直流モータ構造の「ロータ」の構造と、ロータ上に巻き付け方式とに改良を施した。ここで、本出願人が案出した斬新な「中空型ロータ」は、メーカが実際の必要に応じて当該「中空型ロータ」を利用し、固定子の数及び位置を調整することができるが、これらに関しては以下で述べる実施形態において詳細に説明する。なお本発明は、図面に示された構造のみに限定されるわけではなく、当業者であれば本発明の技術的特徴を理解した後、実施形態中の各部材の外観及び部材の数を調整し得ることをここで予め述べておく。
【0010】
本発明の第1実施形態に係る直流モータの中空型ロータ及びその巻線構造は、直流モータ構造2に応用される。
図2に示すように、直流モータ構造2は、ハウジング20、中空型ロータ構造及び少なくとも1つの固定子を含む。第1実施形態のハウジング20は、円柱体を呈し、内部に収容空間200が形成され、後端に複数の出力孔201が形成されている。出力孔201は、収容空間200と連通する。本実施形態で述べる出力孔201は、出力部材23と外部の伝動機構とを接続するために用いる空間を指し、出力部材23を外部の伝達機構に接続することができる如何なる配設方式も本発明に含まれ、本発明は、出力孔201の実施方式を何ら制限するものではない。ハウジング20は、前蓋20A、後蓋20B及び外カバー20Cから構成されてなる。前蓋20A内には、複数のカーボンブラシ(carbon brush)204が取り付けられる。カーボンブラシ204は、外部の電流を受け、後蓋20Bには出力孔201が形成される。外カバー20Cは、中空管体状を呈し、前蓋20Aと後蓋20Bとの間に嵌合される。しかし、本発明の他の実施形態では、メーカは実際の必要に応じてハウジング20の方式を調整してもよい(本発明の第2実施形態については後述する)。
【0011】
図2を再び参照する。中空型ロータ構造は、整流子22、出力部材23及び中空型ロータ24を含む。整流子22は、収容空間200内に取付けられ、ハウジング20の軸方向でハウジング20の前端内壁に枢着される。出力部材23は、収容空間200内に取付けられ、ハウジング20の軸方向に沿ってハウジング20後端の内壁に枢着される。第1実施形態の整流子22は、前蓋20A中に位置し、皿体220と、複数の整流片221とを含む。これら複数の整流片221は、互いに間隔をおいて皿体220の前面に設置され、前蓋20A内のカーボンブラシ204と電気的に接続され、カーボンブラシ204から送られてくる外部電流を受ける。出力部材23は、後蓋20Bの出力孔201に対応した箇所に位置し、伝動部材が出力孔201を介して出力部材23と接続される。そのため直流モータ構造2が駆動するときに、直流モータ構造2が発生させる運動エネルギが順次、出力部材23及び伝動部材を介して負荷(例えば、変速機ケース)へ出力され、負荷が運動エネルギにより駆動される。ここで出力部材23は、本発明の中空型ロータ構造をより多くの機器又は装置に適用することができるように、伝動部材のタイプ(例えば、チェーン、ベルトその他の部材)に依り、対応した部材方式(例えば、ギア状、ハブその他の部材)を有してもよい。
【0012】
図2及び
図3を参照する。
図2及び
図3に示すように、中空型ロータ24は、電機子コアを含む。この電機子コアは、複数の珪素鋼板の組み合わせにより構成され、透磁率が高い。上述した電機子コアは、鉄片、鋼板、一体成形された鉄部材など電磁的効果により磁場を発生させる材料により構成され、本発明では特に限定されるわけではない。電機子コアは、軸方向に沿って軸孔240が内側に形成され、前端に整流子22が接続され、後端に出力部材23が接続される。中空型ロータ24上には、複数ターンのコイル27が巻き付けられる。各コイル27の両端には、整流子22上の互いに隣り合う2つの整流片221がそれぞれ電気的に接続され、整流子22からの電流を受けると、対応した電磁場が中空型ロータ24に発生する。また、整流子22上の互いに隣り合う2つの整流片221は、設定周波数に基づいてコイル27へ送られる電流方向を反転し、これに伴いコイル27に発生する電磁場も反転し、この方向転換過程は設定周波数に基づいて繰り返され、中空型ロータ24が磁場作用により回転されると、整流子22及び出力部材23も同期で回転される。
【0013】
図2及び
図4に示すように、本発明の第1実施形態に係る中空型ロータ24は、外電機子コア241及び内電機子コア242を含む。好適な実施形態において、外電機子コア241及び内電機子コア242は、複数の珪素鋼板の組み合わせにより構成される。外電機子コア241は、軸方向に沿って複数の外コード溝243が外表面に形成され、軸方向に沿って複数の第1の凹部244Aが内表面に形成される。内電機子コア242は、軸方向に沿って複数の内コード溝245が内表面に形成され、軸方向に沿って複数の第2の凹部244Bが外表面に形成される。外コード溝243及び内コード溝245には、コイル27が巻き付けられる。外電機子コア241と内電機子コア242とが一体化されると、外電機子コア241の内表面が内電機子コア242の外表面に接合され、各第1の凹部244Aは、各第2の凹部244Bにそれぞれ対応して固定孔244が形成され、固定孔244が中空型ロータ24の円周に沿って配列される。また、複数本の固定棒246は、互いに対応した各固定孔244中にそれぞれ挿入され、中空型ロータ24と一体化される。また、各固定棒246の前端は、中空型ロータ24から露出され、整流子22の皿体220の後面に固定される。各固定棒246の後端は、中空型ロータ24から露出されて出力部材23に固定される。このように、中空型ロータ24、整流子22及び出力部材23は、組み合わされて一体化されているため同期で回転される。
【0014】
図2及び
図4を再び参照する。
図2及び
図4に示すように、整流子22及び出力部材23が中空型ロータ24上のコイル27に接触されることを防ぐために、各固定棒246の前端及び後端には、位置決め管247がそれぞれ嵌合される。位置決め管247は、固定孔244の孔径より大きい外径を有するため、固定孔244中に挿入されることを防ぎ、整流子22と中空型ロータ24との間に位置するか、出力部材23と中空型ロータ24との間に位置し、整流子22及び出力部材23が中空型ロータ24上のコイル27に接触されることを防ぐ。ここで、本発明の他の実施形態では、中空型ロータ24、整流子22及び出力部材23を結合し、中空型ロータ24により整流子22及び出力部材23を同期で駆動させ、整流子22と出力部材23とが所定の間隔をおいて設置することができれば、メーカは他の方式を採用してもよいが、勿論これも本発明で述べる接続関係に含まれる。
【0015】
図2及び
図4を再び参照する。
図2及び
図4に示すように、外電機子コア241及び内電機子コア242は、それらの上に巻き付けられたコイル27により固定されて一体化され、外電機子コア241が内電機子コア242から外れることを防ぎ、複数の固定棒246が対応した複数の固定孔244中にそれぞれ固定される。以下、コイル27の巻き付け方式について説明するが、本発明の他の実施形態では、メーカーは異なる巻き付け方式によりコイル27を中空型ロータ24上に固定してもよい。
図5を参照する。
図5では、図面が複雑にならないように、中空型ロータ24及び1ターンのコイル27の一部のみが表示されている。外電機子コア241の外表面には、互いに隣り合う2つの外コード溝243A,243Bが形成されている。内電機子コア242の内表面には、互いに隣り合う2つの内コード溝245A,245Bが形成されている。外コード溝243Aは、内コード溝245Aに対応し、外コード溝243Bは、内コード溝245Bに対応する。また、コイル27Aは、一端が整流片221の一つと電気的に接続され、他端が外コード溝243Aの前端に挿入され、外コード溝243Aを介して外コード溝243Aの後端から突出された後、コイル27Aの他端が内コード溝245Aの後端に挿入され、かつ、内コード溝245Aに挿通されて内コード溝245Aの前端に至るまで延び、かつ、斜め方向へ延びて外コード溝243Bに挿入され、順次、外コード溝243B、外コード溝243Bの後端、内コード溝245Bの後端及び内コード溝245Bに挿通されてから内コード溝245Bの前端まで延び、他方の整流片221と電気的に接続される。前述したコイル27Aの巻付け方式は1ターンのコイル27Aと称される。
【0016】
また、
図2及び
図6に示すように、中空型ロータ24に複数ターンのコイル27を巻き付けるときは、内コード溝245Bの前端のコイル27A(
図5を参照する)を斜め方向へ延ばして外コード溝243Aの前端に挿入し、前述した巻付け方式を繰り返すだけで複数ターンのコイル27を形成することができる。また、コイル27と互いに隣り合う他方のコイル27Bの他端を内コード溝245Aの前端に至るまで延ばすと、コイル27Aの一端が他方のコイル27Bの他端とともに同一の整流片221と電気的に接続されるとともに、整流片221がコイル27Aの一端に電流を送ると、それは他方のコイル27Bの他端から送られた電流を受ける。その後、整流片221が方向転換を行う過程で、前述の電流方向が反転し、これにより各コイル27A,27Bには、電流方向により対応する電磁場が発生する。
【0017】
図2及び
図3に示すように、本発明の第1実施形態において、直流モータ構造2には、外固定子21及び内固定子25の2つの固定子が設けられる。外固定子21及び内固定子25は、それぞれハウジング20内に固定される。外固定子21は、複数の外磁石211を含む。各外磁石211は、外カバー20C内に位置し、外カバー20C(即ち、ハウジング20)の円周に沿って外カバー20Cの内壁に固定される。各外磁石211は互いに間隔をおいて設置され、互いに隣り合う2つの外磁石211の極性は反転している。上述した各外磁石211は、1つの磁性部材又は極性方向が同じ複数の磁性部材によりユニットが構成されるが、本発明はこれだけに限定されるわけではない。中空型ロータ24は、ハウジング20の軸方向に沿って外固定子21内に取付けられ、外固定子21との間に第1の間隙24Aが保持され、中空型ロータ24が外固定子21内で自在に回転可能である。内固定子25は、複数の内磁石251を含み、軸受26A,26Bを介してハウジング20の円周に沿って中空型ロータ24の軸孔240内に固定され、中空型ロータ24との間に第2の間隙24Bが保持されるため、中空型ロータ24は内固定子25の外側で回転可能である。内磁石251は、互いに間隔をおいて設置され、互いに隣り合う2つの内磁石251の極性は反転している。前述した各内磁石251は、1つの磁性部材又は極性方向が同じ複数の磁性部材によりユニットが構成されているが、本発明では特に限定されているわけではない。本発明の他の実施形態では、メーカは必要に応じて、1つの固定子(例えば、外固定子21又は内固定子25)のみを設け、直流モータ構造2の体積を減らしてその生産コストを減らすことができる。
図2を再び参照する。
図2に示すように、整流子22からの電流を中空型ロータ24のコイル27が受けると、対応した電磁場が生成された後、この電磁場は、固定子(例えば、外固定子21又は内固定子25)上に設けられた複数の磁石(例えば、外磁石211又は内磁石251)により生成された磁場と排斥作用を発生させて中空型ロータ24を回転させ、出力部材23を同期で駆動させ、中空型ロータ24が発生させる低回転数及び高トルクの回転トルクを負荷に出力する。
【0018】
図4に示すように、前述した中空型ロータ24は、外電機子コア241と内電機子コア242との組み合わせにより構成され、軸方向に沿って対応する外コード溝243又は内コード溝245が形成されるが、メーカは実際に使用する際の必要に応じて中空型ロータの構造を調整することができる。例えば、第2実施形態では、
図7に示すように、中空型ロータ34は、電機子コアを含む。この電機子コアは、前電機子コア341と後電機子コア342との組合せにより構成される。前電機子コア341は、径方向に沿って複数の前コード溝343が前表面に形成され、径方向に沿って複数の第1の凹部344Aが後表面に形成されている。後電機子コア342は、径方向に沿って複数の後コード溝345が後表面に形成され、径方向に沿って複数の第2の凹部344Bが前表面に形成されている。前コード溝343及び後コード溝345には、コイルが配設され、その巻付け方式は
図5のように(即ち、前コード溝343が外コード溝243A,243Bに対応し、後コード溝345が内コード溝245A,245Bに対応する)、前電機子コア341と後電機子コア342とが一体成形されると、前電機子コア341の後表面が後電機子コア342の前表面に接合され、各第1の凹部344Aが各第2の凹部344Bにそれぞれ対応し、固定孔をそれぞれ形成する。これらの固定孔には、固定棒346が挿通され、固定棒346と中空型ロータ34とが一体成形される。
【0019】
図7〜
図9に示すように、中空型ロータ34内には、軸方向に沿って軸孔340が形成され、整流子32は、軸孔340内に取付けられる。第2実施形態において、整流子32は、皿体320及び複数の整流片321を含む。複数の整流片321は、皿体320の前面に互いに間隔をおいて取り付けられ、前蓋30A内のカーボンブラシ304と電気的に接続され、カーボンブラシ304からの外部電流を受ける。皿体320の周縁は、固定棒346の一端に接続され、固定棒346の他端は中空型ロータ34から露出されている。出力部材33は、皿体320の後側に固定され、その周縁が固定棒346の他端と接続される。そのため、中空型ロータ34が駆動されると、整流子32及び出力部材33が同期で駆動される。
【0020】
第2実施形態において、中空型ロータ34は、直流モータに使用することができ、
図7〜
図9に示すように、中空型ロータ34は、ハウジング30内に配設される。ハウジング30は、前蓋30A及び後蓋30Bを含む。中空型ロータ34は、前蓋30A及び後蓋30Bの収容空間中に位置し、前蓋30Aと後蓋30Bとの間の空隙には出力孔(
図2の出力孔201)が形成され、伝動部材は、出力孔を介して出力部材33と接続される。前固定子は、中空型ロータ34の前側に取り付けられ、中空型ロータ34との間に第1の間隔が保持されている。後固定子は、中空型ロータ34の後側に取り付けられ、中空型ロータ34との間に第2の間隔が保持されている。前固定子は、複数の前磁石311を含む。これら複数の前磁石311は、互いに間隔をおいて設置され、互いに隣り合う2つの前磁石311の極性は反転している。前述した各前磁石311は、1つの磁性部材又は極性方向が同じ複数の磁性部材によりユニットが構成されるが、本発明はこれだけに限定されるわけではない。後固定子は、複数の後磁石351を含む。これら複数の後磁石351は、互いに間隔をおいて設置され、互いに隣り合う2つの後磁石351の極性は反転している。前述した各後磁石351は、1つの磁性部材又は極性方向が同じ複数の磁性部材によりユニットが構成されているが、本発明はこれだけに限定されるわけではない。第2実施形態において、前磁石311が前蓋30A上に固定されて、後磁石351は後蓋30B上に固定され、前蓋30Aと後蓋30Bとの軸心位置は、軸杆39の両端にそれぞれ接続される。軸杆39の両端に近い箇所には軸受36A,36Bがそれぞれ設けられる。このように、中空型ロータ34、前固定子、後固定子の三者間は、お互いの磁場の排斥作用により、中空型ロータ34が回転され、整流子32及び出力部材33が駆動される。
【0021】
上述したことから分かるように、中空型ロータ構造により、メーカは実際の必要に応じて、内固定子、外固定子、前固定子、後固定子などの固定子その他の部材の数及び位置を調整し、直流モータの性能及び生産コストを効果的に制御することができる。当該分野の技術を熟知するものが理解できるように、本発明の好適な実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と領域を逸脱しない範囲で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0022】
1 直流モータ
2 直流モータ構造
10 ハウジング
11 枢軸
12 ロータ
13 固定子
14 整流子
20 ハウジング
20A 前蓋
20B 後蓋
20C 外カバー
21 外固定子
22 整流子
23 出力部材
24 中空型ロータ
24A 第1の間隙
24B 第2の間隙
25 内固定子
26A 軸受
26B 軸受
27 コイル
27A コイル
27B コイル
30 ハウジング
30A 前蓋
30B 後蓋
32 整流子
33 出力部材
34 中空型ロータ
36A 軸受
36B 軸受
39 軸杆
101 収容空間
111 出力軸
200 収容空間
201 出力孔
204 カーボンブラシ
211 外磁石
220 皿体
221 整流片
240 軸孔
241 外電機子コア
242 内電機子コア
243 外コード溝
243A 外コード溝
243B 外コード溝
244 固定孔
244A 第1の凹部
244B 第2の凹部
245 内コード溝
245A 内コード溝
245B 内コード溝
246 固定棒
247 位置決め管
251 内磁石
304 カーボンブラシ
311 前磁石
320 皿体
321 整流片
340 軸孔
341 前電機子コア
342 後電機子コア
343 前コード溝
344A 第1の凹部
344B 第2の凹部
345 後コード溝
346 固定棒
351 後磁石
【要約】
【課題】直流モータの利便性を大幅に高めることができる、直流モータの中空型ロータ及びその巻線構造を提供する。
【解決手段】直流モータは、収容空間を内部に有するハウジングを含む。中空型ロータ構造は、整流子22、出力部材23及び中空型ロータ24を備える。整流子22は、収容空間200内に取付けられるとともに、ハウジングの軸方向に沿ってハウジングの前端内壁に枢着される。整流子22上の互いに隣り合う2つの整流片221は、設定周波数に基づいてコイル27へ送られる電流方向を反転し、それに伴いコイル27に発生する電磁場も反転し、この方向転換過程は設定周波数に基づいて繰り返される。出力部材23は、収容空間200内に取付けられ、ハウジングの軸方向に沿ってハウジングの後端内壁に枢着される。
【選択図】
図2