特許第6131410号(P6131410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131410
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】推進工法用掘進機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/087 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   E21D9/087 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-137928(P2015-137928)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-20231(P2017-20231A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2015年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】599111965
【氏名又は名称】株式会社アルファシビルエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】515330638
【氏名又は名称】清田エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081824
【弁理士】
【氏名又は名称】戸島 省四郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 栄治
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−210084(JP,A)
【文献】 特開平08−060985(JP,A)
【文献】 特開2013−231277(JP,A)
【文献】 特開2000−282786(JP,A)
【文献】 特開2000−064785(JP,A)
【文献】 特開平11−166390(JP,A)
【文献】 特開2003−193794(JP,A)
【文献】 特開2013−096181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/04−9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘進機の主管フードの先端から後方となる位置に隔壁を設け、同機内側の隔壁から隔壁中央部を介して前方へ突出させた回動軸の軸端に地盤を掘削する回転掘削カッタを取付け、同回動軸を回動する動力装置を隔壁後方ケーシング内に設け、掘進機後続胴管後方に地盤に埋設する推進管を後続させ、前記隔壁には排土口を開口し、同排土口に排土管を接続し、同排土管の途中に排土調圧バルブを設置し、排土口から進入した掘削土砂を排土管の排土調圧バルブを経て掘進機と掘進管内部を介して外部へ排出する推進工法用掘進機に於いて、回転掘削カッタの前面部分には地盤を掘削する複数のビットを前向きに設け、後方には隔壁面に延びた撹拌部材を設けるとともに、回転掘削カッタにその回転方向に向けて尖ったサイドカッタを複数取付け、しかも回転掘削カッタが、回動軸の先端部から放射状に取付けた複数本のスポークアームの前面に掘削用ビットを取付け、スポークアームの側面にサイドカッタを複数設けた構造とし、掘削された地盤の大径の固形粘土又は玉石を回転掘削カッタのサイドカッタで分断小割りして、排土口から取り込むようにしたことを特徴とする、推進工法用掘進機。
【請求項2】
前記サイドカッタが、回転方向に向けて巾が短くなる板体で、しかもその板体の周端に凹凸の鋸刃を強化形成したものである、請求項1記載の推進工法用掘進機。
【請求項3】
請求項2の板体のサイドカッタの板面が、回転方向に平行でなくこれと所要角度で傾斜して取付けられた、請求項2記載の推進工法用掘進機。
【請求項4】
前記サイドカッタが、回転方向に向けて先細りとなった断面三角形状した側方ビットである、請求項1〜いずれか記載の推進工法用掘進機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管渠埋設工事等の地中において、地盤掘削して管渠・地下コンクリート通路・地下配線配管用通路を構築する工事で使用される推進工法に用いる掘進機の掘削時のカッタ室内からの排土に関する技術であって、地盤が粘土質又は自立性の高い硬質地盤において有用な掘進機の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、推進工法に用いる密閉型ボックス掘進機にて粘性土地盤等の掘進を行う場合、土圧式、泥土圧式、泥濃式の推進工法では、切羽部でカッタビットにより掘削された段階で大塊の粘性土が摘出される場合が多い。それが隔壁の排土口から排土路に取り込まれると、排土路途中の排土バルブやスクリューコンベア内で閉塞状態が発生し、排土作業が困難を極めることも多々あった。
【0003】
また、スポーク型カッタ構造(センタ駆動方式)においては玉石の混入地盤は排土バルブから摘出可能な寸法(礫径φ200mm〜φ400mm)である場合は、玉石地盤用カッタビットは切削型形状で破砕型カッタでないために、それなりに玉石取込時の負荷が大きく、又玉石は破砕されずにそのまま排土路に移送された。
【0004】
以上の様な場合、排土バルブ等を通過して貯泥槽にストックされる前の吐出口で、二次破砕を行ったり、残っている大きな玉石の排除処理のために人力での分別作業が必要となる。固形粘性土の場合は人力小割り作業に、玉石混入の場合はスクリーン等での簡易な分離を行った後に、人力にて集積・バッケト積込等の作業に多くの時間を費やしている。
別途の固結粘土層のスムーズな排土対策としては、排土口・吐出口の後方に小割り専用の回転式ドラムカッタ等を装着するか、油圧式や電動式のスライドカッタ(ギロチン方式)で固結粘土を分割する方法もあるが、掘削対照土質の変化や掘進速度との不調和で吐出口付近に堆積し、閉塞を生じる場合も多い。
【0005】
そのような問題を解決するため、粘性土が切羽でのカッタ掘削段階で分割され、カッタ室内(チャンバ内)で流動化される方法が一番効果的と思われる。しかし、固結粘性土は一定の大きさで大割れしやすく、その場合排土口径内の粘土塊は排土バルブ内をそのまま通過するために機内貯泥槽手前で二次的な処理を必要としていた。
【0006】
また、玉石混入地盤ではローラカッタを設置した破砕型カッタ掘進機を使用して一次破砕を行うことが望ましい。しかし、コスト面ではセンタ駆動方式が優位で、取込可能な礫径の地盤ではスポークタイプカッタ方式が採用されている。
よって、従来のスポーク型カッタ(センタ駆動方式)を使用した場合、粘性土硬質地盤の掘削時には固結粘性土質を細かく分割する装置又は作業が必要となり、玉石地盤ではカッタにて礫長径寸法の半分程度に破砕することが可能な装置又は分離人手作業が必要となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−272487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の問題点を別途大きな装置や機内の2次的人力作業をなくす目的があり、簡単なカッタ構造の変更で粘土質・玉石混入地盤でも排土を円滑に後方処理できるようにした掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 掘進機の主管フードの先端から後方となる位置に隔壁を設け、同機内側の隔壁から隔壁中央部を介して前方へ突出させた回動軸の軸端に地盤を掘削する回転掘削カッタを取付け、同回動軸を回動する動力装置を隔壁後方ケーシング内に設け、掘進機後続胴管後方に地盤に埋設する推進管を後続させ、前記隔壁には排土口を開口し、同排土口に排土管を接続し、同排土管の途中に排土調圧バルブを設置し、排土口から進入した掘削土砂を排土管の排土調圧バルブを経て掘進機と掘進管内部を介して外部へ排出する推進工法用掘進機に於いて、回転掘削カッタの前面部分には地盤を掘削する複数のビットを前向きに設け、後方には隔壁面に延びた撹拌部材を設けるとともに、回転掘削カッタにその回転方向に向けて尖ったサイドカッタを複数取付け、しかも回転掘削カッタが、回動軸の先端部から放射状に取付けた複数本のスポークアームの前面に掘削用ビットを取付け、スポークアームの側面にサイドカッタを複数設けた構造とし、掘削された地盤の大径の固形粘土又は玉石を回転掘削カッタのサイドカッタで分断小割りして、排土口から取り込むようにしたことを特徴とする、推進工法用掘進機
2) 前記サイドカッタが、回転方向に向けて巾が短くなる板体で、しかもその板体の周端に凹凸の鋸刃を強化形成したものである、前記1)記載の推進工法用掘進機
3) 前記2)の板体のサイドカッタの板面が、回転方向に平行でなくこれと所要角度で傾斜して取付けられた、前記2)記載の推進工法用掘進機
4) 前記サイドカッタが、回転方向に向けて先細りとなった断面三角形状した側方ビットである、前記1)〜3)いずれか記載の推進工法用掘進機
にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、従来通り回転掘削刃の前面に設けたビットによって、地盤の切羽を掘削し、その後方の撹拌部材で撹拌して排土口へ掘削土砂を送り込むが、回転掘削カッタに回転方向に向って尖ったサイドカッタを設けているので、切り出された大きな固結粘土はこのサイドカッタで分断又は細断される。玉石の場合は、このサイドカッタが玉石と当って衝突破砕や衝撃破砕をおこして小割りする。これによって、隔壁の排土口から移送された粘土には大われの固結粘土は少なくなり、又玉石を小さく割られて取込まれることとなり、排土路を塞らせることなく円滑に排出させることができる。
これによって、排土路途中に大きな固結粘土を細断する二次的細断装置、玉石を小さく割る二次破砕装置、その他管内の重作業を省けるようにできた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1の掘進機S1の回転掘削カッタの取付状態を示す説明図である。
図2図2は、実施例1の回転掘削カッタを示す正面図である。
図3図3は、実施例1の回転掘削カッタを示す側面図である。
図4図4は、実施例1の三角板状サイドカッタと掘削用櫛歯状ビットを示す拡大図である。
図5図5は、掘削用シェル型ビット(切削型)を示す一部切欠正面図である。
図6図6は、掘削用シェル型ビット(切削型)を示す一部切欠平面図である。
図7図7は、図6のB−B断面図である。
図8図8は、実施例2の掘進機S2の回転掘削刃を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
玉石地盤では、本発明のサイドカッタは断面三角形の(ルーフ型)ビットを回転掘削刃の回転の前方となる横端に複数個設けるのがよい。
【0013】
粘土質の地盤では、本発明のサイドカッタは回転方向に尖った三角形状の板体を回転掘削刃の回転となる側端に複数個所取付けるのがよい。しかも、三角形状の板体の周端に鋸刃状の凹凸を設けると鋸刃で効率的に切断するようにできて、固結粘土を迅速に分割できるので好ましい。
【0014】
ルーフ型又は鋸刃状の三角形状の板体のサイドカッタは、掘削する地盤の質に応じて一方のみ又は両タイプで混在するように配置してもよい。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
【0016】
(実施例1)
図1図4に示す実施例1の掘進機S1は、固結粘土質地盤で主に使用する掘進機の例を示すものである。
【0017】
図中、S1は実施例1の固結粘土地盤用の掘進機、10〜15はその掘進機S1の構成部分であり、10は掘進機S1の円形状胴管、10aは同胴管の先端部の主管フード、11は同先端10aより後方内側に設けた隔壁、11aは同隔壁11の下方に開口した排土口、12は胴管10の先端10aより前方で回転する回転掘削カッタ、12aは同回転掘削カッタの回転基材の十字状スポークアーム、12bはスポークアーム12aの前面部に三角形の頂点の稜線が前方に突出するようにした断面三角形状の掘削用ルーフ型ビット、12cは同じスポークアーム12aの前面中央部で前方に突設するように設けた鋸歯状の小ビットを配置した掘削用鋸歯状ビット、12sはスポークアーム12aの先端の前部に取り付けた掘削用シェル型ビット、12sはシェル型ビット12sのチップ、12sはシェル型ビット12sの取付基端部、12dはスポークアーム12aの中央部に一文字状に設けた掘削用中央ビット、12eはスポークアーム12aの中間に回転方向に向って巾が短くなった三角形状の板体でスポークアーム12aの回転方向角度差をもって取付けられて傾斜するように取付け、且つ周端には鋸歯状の凹凸12gを設けた三角板状サイドカッタ、12fはスポークアーム12aから後方に向って突出した撹拌部材、13は回転掘削カッタ12のスポークアーム12aを回動させる回動軸、14は同回動軸を回転させる隔壁11後方のケーシング10内に設けた回動装置であり、15は排土管、15aは膨縮自在な排土管15の内部の排土調圧バルブである。
【0018】
この実施例1の掘進機S1に後続させた推進管(図示せず)を元押し装置(図示せず)で押圧して、掘進機S1の回動装置14を作動させると隔壁11の中心部を貫通した回動軸13が回転し、その先端に取付けた回転掘削カッタ12のスポークアーム12aが回転する。
【0019】
スポークアーム12aが回転すると、その前面部に設けた掘削用ルーフ型ビット12b,掘削用鋸歯状ビット12c,シェル型ビット12s,掘削用中央ビット12dが地盤の切羽に押し付けられて回転することで、切羽の土砂を掘削する。
【0020】
切羽の掘削によって大きな固結粘土が切り出されても、スポークアーム12aの側面に回転方向に突出するように取付けられた三角板状サイドカッタ12eが、大きな固結粘土を切り裂いて小さく分断する。この分断力は周縁に鋸歯状凹凸12gを設けたこと及びスポークアーム12aの半径方向と直角の円周方向と所要角度をもって傾斜するように取付けられたことで、回転力に伴う集中応力を期待してその固まりの分断力を効果的に高められる。
【0021】
このように、実施例1のスポークアーム12aに回転方向に突出するように取付けられた三角板状サイドカッタ12eがスポークアーム12aの回転によって固結粘土に刺し込まれ、鋸歯状凹凸12gと傾斜取付けによって切断力と分離力を与えて、固結粘土を効果的に小さく分断する。
これによって、固結粘土は小さくされて排土口11aに送られることになり、これと接合された排土管の途中の排土調圧バルブ15a・搬送用スクリュー等を閉塞することがないようにする。
【0022】
これによって、固結粘土質地盤で本実施例1の掘進機S1を使用すれば、排土路の途中での閉塞を少なくし、又大きな固結粘土の排土路途中における切断・分割装置又は分割作業を不要にできる。この実施例1の構造の掘進機S1は玉石混入地盤でも三角板状サイドカッタ12eが玉石を削ったり、破砕・分割して有効であり、玉石混入地盤にも効果がある。
【0023】
(実施例2)
図5に示す実施例2の掘進機S2は、玉石地盤用の掘進機の例である。
この実施例2の回転掘削カッタ12として、実施例1と同じ十字状スポークアーム12aを使用するが、スポークアーム12aの前面部に取付ける掘削用ビットとしてスポークアーム12aの半径先端と中間の位置で複数の小ビット100を前方向に突出するように鋸歯状に列設した掘削用鋸歯状ビット22cと、断面三角形状ビットに前方に突出するように掘削用ルーフ型ビット22bと、スポークアーム12aの回転中心部に一文字状に設けた掘削用中央ビット22dと、スポークアーム12aの先端のシェル型ビット12sとを設けている。
そして、サイドカッタとしてスポークアーム12a側面にルーフ型サイドカッタ22fをその断面三角形の頂点稜線が回転方向に突出するように複数個設けている。
【0024】
この実施例2の掘進機S2の使用方法は、実施例1の掘進機S1と同様である。
スポークアーム12aの前面部に設けた鋸歯状ビット22cとルーフ型ビット22bとシェル型ビット22sと中央ビット22dで切羽を掘削して切り崩し、切り崩された玉石はスポークアーム12aの側面で回転している三角板状サイドカッタ22eによって、強く回転力をもって打撃・割岩・破砕を受けて、小さく玉石を破砕する。
これによって、玉石は破砕されて小さくされて排土口11aから排土管15へ送られる。
取り込まれた玉石はサイドカッタ22fで強く破砕を受けて小さくなるため、排土管15内で詰ることもなく移送が可能となる。又、排土管15及びこれに続く排土路において、二次破砕装置の必要がなく、又大きな玉石を排除して別輸送装置で選別して送る人手作業も必要ない。
【0025】
尚、実施例1,2の掘進機のサイドカッタ12e,22e,22fは一例であり、これ以外に固結土の切断・分断できるもの、玉石をよく割って破砕するビットを採用してもよく、あるいは固結土向きサイドカッタと玉石破砕用のサイドカッタとを混在して設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、地中の暗渠・トンネル等の工事に適した掘進機であるが、その掘削の小径のものでも使用でき、又推進工法でない掘進機でも採用できる。
【符号の説明】
【0027】
S1 実施例1の掘進機
S2 実施例2の掘進機
10 胴管
10a 先端
11 隔壁
11a 排土口
12 回転掘削カッタ
12a スポークアーム
12b,22b 掘削用ルーフ型ビット
12c,22c 掘削用鋸歯状ビット
12d,22d 掘削用中央ビット
12e,22e 三角板状サイドカッタ
12f 撹拌部材
12g 凹凸
12s,22s シェル型ビット
12s チップ
12s 取付基端部
13 回動軸
14 回動装置
15 排土管
15a 排土調圧バルブ
22f ルーフ型サイドカッタ
100 小ビット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8