(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131424
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】回転便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/12 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
E03D11/12
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-97503(P2016-97503)
(22)【出願日】2016年5月14日
(65)【公開番号】特開2017-36649(P2017-36649A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2016年11月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516144809
【氏名又は名称】株式会社アースウェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100119769
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 清
(72)【発明者】
【氏名】橋本 剛徳
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−116165(JP,A)
【文献】
特開2008−196300(JP,A)
【文献】
特開2010−47992(JP,A)
【文献】
特開平6−10398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00−7/00;11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平回転させることのできる回転便器であって、該回転便器は便器本体と、該便器本体を載せて水平回転する便器回転用台座からなり、
該便器回転用台座は回転部と固定部と、両者間に取りつけたスラストベアリング及びスイベルジョイントと、駆動モータとで構成され、
前記回転部は回転円板と大径歯車からなり、回転円板は上面に前記便器本体を載せるもので中央には前記スイベルジョイントの上方側フランジを固定する丸穴が形成され、前記大径歯車は前記スイベルジョイントの本体部を通過させる穴のある歯車で前記回転円板の下面側に前記丸穴と同芯に固定されており、
前記固定部は基台円板と円形リング状台板からなり、基台円板の中央には前記スイベルジョイントの下方側フランジを固定する丸穴が形成され、円形リング状台板は基台円板上に立設した4本支柱により水平支持されており、
前記スラストベアリングは円形リング形状で、リング状上板とリング状下板との間に鋼球を配してリング状上板がリング状下板に対して同芯で水平回転可能に構成されており、リング状下板には前記固定部の円形リング状台板が固定され、リング状上板には前記回転部の回転円板が固定されて回転部が固定部に対して水平回転可能とされており、
前記スイベルジョイントは相対回転部間で流体を案内する継手で、円筒状本体部の上方側フランジを前記回転円板の丸穴に、下方側フランジを前記基台円板の丸穴に固定して取りつけられ、上方側フランジには前記便器本体の排水管のフランジが固定されて便器本体が排出する排水がスイベルジョイントを通過して下方側フランジから排出されるように構成されており、
前記駆動モータは前記固定部の基台円板上に固定され、その出力軸に取りつけた小径歯車にて前記大径歯車を回転させることにより前記便器本体を載せた回転部を水平回転させるように構成されていることを特徴とする回転便器。
【請求項2】
便器本体を上面に固定して水平回転させるための便器回転用台座であって、該便器回転用台座は回転部と固定部と、両者間に取りつけたスラストベアリング及びスイベルジョイントと、駆動モータとで構成され、
前記回転部は回転円板と大径歯車からなり、回転円板は上面に前記便器本体を載せるもので中央には前記スイベルジョイントの上方側フランジを固定する丸穴が形成され、前記大径歯車は前記スイベルジョイントの本体部を通過させる穴のある歯車で前記回転円板の下面側に前記丸穴と同芯に固定されており、
前記固定部は基台円板と円形リング状台板からなり、基台円板の中央には前記スイベルジョイントの下方側フランジを固定する丸穴が形成され、円形リング状台板は基台円板上に立設した4本支柱により水平支持されており、
前記スラストベアリングは円形リング形状で、リング状上板とリング状下板との間に鋼球を配してリング状上板がリング状下板に対して同芯で水平回転可能に構成されており、リング状下板には前記固定部の円形リング状台板が固定され、リング状上板には前記回転部の回転円板が固定されて回転部が固定部に対して水平回転可能とされており、
前記スイベルジョイントは相対回転部間で流体を案内する継手で、円筒状本体部の上方側フランジを前記回転円板の丸穴に、下方側フランジを前記基台円板の丸穴に固定して取りつけられ、スイベルジョイントの上方側フランジに流入した便器本体の排水はスイベルジョイント内を通過して下方側フランジから流出するように構成されており、
前記駆動モータは前記固定部の基台円板上に固定され、その出力軸に取りつけた小径歯車にて前記大径歯車を回転させることにより前記回転部を水平回転させるように構成されていることを特徴とする便器回転用台座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレの水洗便器全体を水平回転させることのできる回転便器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者や身体不自由な人、車椅子に乗った人が利用するための専用トイレルームが各所に設置されるようになった。しかし、車椅子に乗った人が便器に移乗するのは簡単ではない。多くの場合、便器の向きは車椅子の方を向いているため移乗するには身体の方向を反転させて着座する必要があり、身障者や介護者には負担が大きい。この場合に便器の向きを自由に変えることができれば、移乗の負担は軽減される。また、便座から車椅子に戻る際の負担も軽減され、狭いトイレルーム内で車椅子の向きを変える負担も少なくなる。
【0003】
こうした問題を解決するため、例えば特許文献1にはブレーキ付きの回転便器が提案されている。しかし、この回転便器はグラファイト加工された平滑面を有する土台に回転便器を嵌め込んだだけの構成であるため、手動で便器を回転させる必要がある。手動で便器を回転させるのは車椅子に乗った人には容易でなく、介護者の手助けを必要とする問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−147842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術のこうした問題点を解決するためになされたもので、その課題は車椅子に乗った人でも容易に水平回転させることのできる回転便器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、水平回転させることのできる回転便器であって、該回転便器は便器本体と、該便器本体を載せて水平回転する便器回転用台座からなり、該便器回転用台座は回転部と固定部と、両者間に取りつけたスラストベアリング及びスイベルジョイントと、駆動モータとで構成され、前記回転部は回転円板と大径歯車からなり、回転円板は上面に便器本体を載せるもので中央にはスイベルジョイントの上方側フランジを固定する丸穴が形成され、大径歯車はスイベルジョイントの本体部を通過させる穴のある歯車で回転円板の下面側に前記丸穴と同芯に固定されており、前記固定部は基台円板と円形リング状台板からなり、基台円板の中央にはスイベルジョイントの下方側フランジを固定する丸穴が形成され、円形リング状台板は基台円板上に立設した4本支柱により水平支持されており、前記スラストベアリングは円形リング形状で、リング状上板とリング状下板との間に鋼球を配してリング状上板がリング状下板に対して同芯で水平回転可能に構成されており、リング状下板には前記固定部の円形リング状台板が固定され、リング状上板には前記回転部の回転円板が固定されて回転部が固定部に対して水平回転可能とされており、前記スイベルジョイントは相対回転部間で流体を案内する継手で、円筒状本体部の上方側フランジを前記回転円板の丸穴に、下方側フランジを前記基台円板の丸穴に固定して取りつけられ、上方側フランジには便器本体の排水管のフランジが固定されて便器本体が排出する排水がスイベルジョイントを通過して下方側フランジから排出されるように構成されており、前記駆動モータは前記固定部の基台円板上に固定され、その出力軸に取りつけた小径歯車にて前記大径歯車を回転させることにより便器本体を載せた回転部を水平回転させるように構成されていることを特徴とする回転便器である。
【0007】
このような構成によれば、押し釦スイッチにより駆動モータへの電源のオン/オフ、回転方向選択の操作を行なうことにより便器本体を任意の回転位置まで回転させて停止させることができる。この操作は高齢者や身体不自由な人、車椅子に乗った人、介護者でも簡単にできるため、移乗しやすい位置まで回転させることで便器への移乗がし易くなる効果を発揮する。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、便器本体を上面に固定して水平回転させるための便器回転用台座であって、該便器回転用台座は回転部と固定部と、両者間に取りつけたスラストベアリング及びスイベルジョイントと、駆動モータとで構成され、回転部は回転円板と大径歯車からなり、回転円板は上面に便器本体を載せるもので中央にはスイベルジョイントの上方側フランジを固定する丸穴が形成され、大径歯車はスイベルジョイントの本体部を通過させる穴のある歯車で回転円板の下面側に前記丸穴と同芯に固定されており、前記固定部は基台円板と円形リング状台板からなり、基台円板の中央にはスイベルジョイントの下方側フランジを固定する丸穴が形成され、円形リング状台板は基台円板上に立設した4本支柱により水平支持されており、前記スラストベアリングは円形リング形状で、リング状上板とリング状下板との間に鋼球を配してリング状上板がリング状下板に対して同芯で水平回転可能に構成されており、リング状下板には前記固定部の円形リング状台板が固定され、リング状上板には前記回転部の回転円板が固定されて回転部が固定部に対して水平回転可能とされており、前記スイベルジョイントは相対回転部間で流体を案内する継手で、円筒状本体部の上方側フランジを前記回転円板の丸穴に、下方側フランジを前記基台円板の丸穴に固定して取りつけられ、スイベルジョイントの上方側フランジに流入した便器本体の排水はスイベルジョイント内を通過して下方側フランジから流出するように構成されており、前記駆動モータは前記固定部の基台円板上に固定され、その出力軸に取りつけた小径歯車にて前記大径歯車を回転させることにより前記回転部を水平回転させるように構成されていることを特徴とする便器回転用台座である。
【0009】
このような便器回転用台座を使用すれば、その上に水洗式便器本体を取りつけることによりその回転停止位置を任意に調整できる。便器からの排水も台座下側に排出させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る回転便器1及び便器回転用台座2の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る回転便器1の外観図、
図2はその回転便器1で使用している便器回転用台座2の外観斜視図、
図3は便器回転用台座2の分解斜視図、
図4は便器回転用台座2の片側断面図である。
【0012】
図1に示すように回転便器1は水洗式の便器本体3と、それを載せて水平回転する便器回転用台座2から構成される。便器本体3から排出される排水は、便器本体3の排水管4から便器回転用台座2の中央に取り付けたスイベルジョイント6を通って固定側の図示しない排水管に流れ込むように構成されている。便器本体3への洗浄水の供給は、図示しないフレキシブルホースで行なう。
【0013】
図3の分解斜視図に示すように、便器回転用台座2は上からスイベジョイント6の上方側部品6a、回転円板7、大径歯車8、駆動モータ9、スラストベアリング10、円形リング状台板11、4本の支柱12、基台円板13、スイベルジョイント6の下方側部品6bを備えて構成されている。このうち回転円板7、大径歯車8が水平回転する回転部15を構成し、円形リング状台板11、4本の支柱12、基台円板13が固定部16を構成する。回転部15と固定部16との間にはスラストベアリング10とスイベルジョイント6が取りつけられている。
【0014】
回転部15の回転円板7は上面に便器本体3を固定するための円板で、中央にはスイベルジョイント10の本体部を通過させる大きさの丸穴7aが形成されている。スイベルジョイント6の上方側部品6aは、丸穴7aに本体部に通した状態で上方側フランジを回転円板7上面側にボルト固定して取り付けられている。回転円板7の下面側には、スイベルジョイント10の本体部を通過させる大きさの穴のある大径歯車8が丸穴7aに同芯にボルト固定されている。
【0015】
固定部16は、円形リング状台板11を基台円板13上面に立設した4本の支柱12で水平支持して構成されている。基台円板13の中央にはスイベルジョイント10の下方側部品6bを取り付ける丸穴13aが形成されており、その丸穴13a上面側にスイベルジョイント10の下方側フランジをボルト固定して下方側部品6bを取りつける。
【0016】
回転部15の下面側と固定部16の上面側との間には、円形リング形状のスラストベアリング10が取りつけてある。スラストベアリングは回転体の軸方向に働く力(スラスト)を受け止める軸受けとして産業機器に広く使用されている軸受けである。本実施形態の便器回転用台座2に使用しているスラストベアリング10は円形リング形状で、
図5はそのベアリング部の断面図である。円形リング状の上板10aと円形リング状の下板10bとの間に鋼球10cを転動可能に取りつけ、上板10aが下板10bに対して回転可能とされている。上板10aと下板10bとが外れないように、それぞれの端部にはコ状の折り曲げ部10dを形成してかみ合わせてある。リング状上板10aには回転部15の回転円板7が固定され、リング状下板10bには固定部16の円形リング状台板11が固定される。これにより回転部15は固定部16に対して水平回転する。
【0017】
図6はスイベルジョイント6の片側断面図である。スイベルジョイントは相対回転部間で流体を案内する継手として産業機器に広く使用されている継手である。スイベルジョイント6の上方側部品6aのフランジを回転部15の回転円板7の丸穴7aに、下方側部品6bのフランジを固定部16の基台円板13の丸穴13aに固定して取りつけてある。上方側部品6a、下方側部品6bの本体部は共に円筒状で、下方側部品6bの外側に上方側部品6aが回転摺動可能に外嵌され、両者の摺動部には流体の漏洩を防ぐためのシール材18が取り付けられている。上方側フランジには便器本体3の排水管のフランジが固定され、便器本体3から排出された排水はスイベルジョイント6を通過して下方側フランジから図示しない固定側排水管に排出される。
【0018】
駆動モータ9は固定部16の基台円板13上に固定されており、その出力軸に取りつけた小径歯車9aは回転部15の回転円板7下面に取り付けた大径歯車8と噛合させてある。駆動モータ9を回転させると小径歯車9aが大径歯車8を回転させ、その回転により回転円板7は回転し、その回転円板7上に取り付けられた便器本体が水平回転する。
【0019】
以上説明した本実施形態の回転便器1は、水洗式の便器本体3が駆動モータ9で水平回転する便器回転用台座2上に設置されており、押し釦スイッチにより駆動モータ9への電源のオン/オフ、回転方向選択の操作を行なうことにより便器本体3を任意の回転位置まで回転させて停止させることができる。この操作は高齢者や身体不自由な人、車椅子に乗った人、介護者でも簡単にできるため、移乗しやすい位置まで回転させることで便器への移乗がし易くなる効果を発揮する。
【符号の説明】
【0020】
図面中、1は回転便器、2は便器回転用台座、3は便器本体、6はスイベルジョイント、7は回転円板、7aは丸穴、8は大径歯車、9は駆動モータ、9aは小径歯車、10はスラストベアリング、10aはリング状上板、10bはリング状下板、10cは鋼球、11は円形リング状台板、13は基台円板、13aは丸穴、14は支柱、15は回転部、16は固定部を示す。