(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態以降において、既に説明した構成と同一又は類似する構成については、既に説明した構成に付した符号と同一の符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。
【0024】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るダイカストマシンDCの射出装置1の要部構成を示す模式図である。なお、
図1では、A−A線矢視方向における断面等を示す模式図(点線で囲まれた図)を併せて示している。
【0025】
(ダイカストマシン及び射出装置の概要)
ダイカストマシンDCは、例えば、固定金型103及び移動金型105を含む金型101の型開閉及び型締を行う不図示の型締装置、型締装置により型締された金型101に形成されたキャビティCaに成形材料(材料)としての溶湯(溶融状態の金属材料)を供給する射出装置1、並びに、溶湯が固化して形成された成形品を固定金型103又は移動金型105から押し出す不図示の押出装置等を含んで構成されている。ダイカストマシンDCは、例えば、横型締横射出型のダイカストマシンである。
【0026】
射出装置1は、一般的な射出装置と同様に、キャビティCaに連通するスリーブ3と、スリーブ3内を摺動してスリーブ3内の溶湯をキャビティCaに押し出すプランジャ(押し出し部材)5とを有している。
【0027】
また、射出装置1は、いわゆる全電動式の射出装置として構成されている。すなわち、射出装置1は、射出用電動機7及び増圧用電動機9とを有しており、プランジャ5は、基本的に、射出の全工程に亘って射出用電動機7及び増圧用電動機9の駆動力によって駆動され、ポンプやアキュムレータ等の油圧機器の駆動力によっては駆動されない。
【0028】
射出用電動機7は、主として、低速射出及び高速射出(狭義の射出)に利用されるものであり、増圧用電動機9は、主として増圧に利用されるものである。射出装置1は、射出用電動機7及び増圧用電動機9の駆動力をプランジャ5に伝達し、且つ、使用する電動機を工程の進行に応じて切り換えるために、プランジャ5とこれら電動機との間に介在する連結機構11を有している。
【0029】
また、射出装置1は、射出用電動機7の駆動力を連結機構11へ伝達するための射出用伝達機構13と、増圧用電動機9の駆動力を連結機構11へ伝達するための増圧用伝達機構15とを有している。
【0030】
その他、射出装置1(ダイカストマシンDC)は、上記の各装置等を制御するための制御装置17等を有している。
【0031】
(射出装置の各部の詳細)
以下、概ね上記の列挙順に各部の詳細を説明する。
【0032】
スリーブ3は、例えば、全体として概ね円筒状に形成されており、固定金型103に対して水平方向に挿通されて固定されている。スリーブ3の上面には、不図示のラドル等により溶湯をスリーブ3内へ供給するための給湯口3aが形成されている。
【0033】
プランジャ5は、例えば、スリーブ3内を摺動可能なプランジャチップ5aと、プランジャチップ5aからキャビティCaとは反対側へ延出するプランジャロッド5bとを有している。
【0034】
射出用電動機7及び増圧用電動機9は、例えば、回転式の電動機により構成されており、特に図示しないが、界磁及び電機子の一方を構成するステータと、界磁及び電機子の他方を構成し、ステータに対して回転するロータとを有している。なお、これらの電動機は、直流電動機であってもよいし、交流電動機であってもよいし、同期電動機であってもよいし、誘導電動機であってもよい。
【0035】
射出用電動機7及び増圧用電動機9は、例えば、サーボモータとして構成されている。すなわち、射出用電動機7は、その回転を検出する回転センサ7sを有し、回転センサ7sの検出値に基づいて、不図示のサーボアンプにより回転数のフィードバック制御がなされる。同様に、増圧用電動機9は、その回転を検出する回転センサ9sを有し、回転センサ9sの検出値に基づいて、不図示のサーボアンプにより回転数のフィードバック制御がなされる。
【0036】
射出用電動機7及び増圧用電動機9は、低慣性電動機により構成されていることが好ましい。すなわち、これら電動機は、定格トルクに対してロータのイナーシャが相対的に小さい電動機により構成されていることが好ましい。なお、低慣性電動機は、そのカタログ乃至は仕様書などにおいて、低慣性電動機である旨が記載されていることが多く、当該記載に基づいて低慣性電動機であるか否かを特定可能である。一般に、低慣性電動機は、ロータ径をロータの軸方向長さに対して相対的に小さくして構成されている。ただし、磁石材料、ロータ径、鉄心形状及び積厚等を最適化することにより低慣性が実現されたものも知られている。
【0037】
連結機構11は、油圧シリンダ(射出シリンダ)を含む液圧装置に類似した構成とされている。具体的には、連結機構11は、プランジャ5に連結されたピストンロッド19と、ピストンロッド19に固定されたピストン21と、ピストン21の背後に位置する加圧部材23と、ピストン21及び加圧部材23を収容するシリンダ部材25と、ピストン21の背後における液体(例えば油)の流入出を制御する液体制御部27とを有している。
【0038】
ピストンロッド19は、例えば、カップリング29を介してプランジャ5の後端に同軸に連結されている。ピストン21は、ピストンロッド19の後端に固定されている。なお、ピストンロッド19及びピストン21は、別個に形成されて固定されていてもよいし、一体的に形成されることにより固定されていてもよい。また、ピストン21は、シリンダ部材25を摺動可能である。射出用電動機7の駆動力は、射出用伝達機構13を介してピストンロッド19及びピストン21に伝達され、さらには、これらに固定されたプランジャ5に伝達される。
【0039】
加圧部材23は、例えば、シリンダ部材25を摺動可能なピストンにより構成されている。シリンダ部材25において、ピストン21と加圧部材23との間には液体が満たされている。従って、加圧部材23は、その液体を加圧することにより、ピストン21に駆動力を伝達することができる。増圧用電動機9の駆動力は、増圧用伝達機構15を介して加圧部材23に伝達され、さらには、ピストン21の背後の液体、ピストン21及びピストンロッド19を介してプランジャ5に伝達される。
【0040】
シリンダ部材25は、例えば、概略、一般的な射出シリンダのシリンダ部材と同様に円筒状に構成されている。ただし、シリンダ部材25において、ピストン21よりも前側は、密閉されておらず、液体がない。例えば、シリンダ部材25の前方端は開放されており、また、シリンダ部材25の外周面(例えば上面)には射出用伝達機構13を配置するための開口25aが形成されている。従って、連結機構11においては、ピストン21を後退させるためにピストン21の前方に液体が供給されることはない。
【0041】
シリンダ部材25は、例えば、その前方端が射出フレーム31に固定されている。すなわち、シリンダ部材25は、油圧式の射出装置における射出シリンダと同様の固定方法によって型締装置に対して固定されている。
【0042】
液体制御部27は、アキュムレータ33と、制御弁35とを有している。
【0043】
アキュムレータ33は、主として、加圧部材23を停止させた状態で射出用電動機7の駆動力によってピストン21を前進させたときに(加圧部材23に対してピストン21が相対的に前進したときに)、ピストン21の背後に液体を補給することに寄与する。すなわち、アキュムレータ33は、ピストン21と加圧部材23との間の容積拡大に伴う液体の不足によってピストン21の背後に負圧が生じることを抑制することに寄与する。
【0044】
アキュムレータ33は、重量式、ばね式、気体圧式(空気圧式含む)、シリンダ式、プラダ式などの適宜な形式のアキュムレータにより構成されてよい。例えば、アキュムレータ33は、気体圧式、シリンダ式又はプラダ式のアキュムレータであり、アキュムレータ33内に保持されている気体(例えば空気若しくは窒素)が圧縮されることにより蓄圧され、その蓄圧された圧力により液体を放出する。
【0045】
上述のように、アキュムレータ33は、ピストン21を駆動するためのものではなく、液体を補給するためのものである。従って、アキュムレータ33は、比較的低圧のものでよく、ひいては、小型のものでよい。例えば、アキュムレータ33の気体室の圧力は、高圧ガス保安法において高圧と定義されている圧力(1MPa)よりも低くてよい。
【0046】
制御弁35は、主として、増圧用電動機9の駆動力によって加圧部材23を前進させたときに、ピストン21の背後の液体の排出を禁止することに寄与する。ピストン21と加圧部材23との間に液体が封入された状態とされることにより、加圧部材23の駆動力はピストン21に伝達される。
【0047】
制御弁35は、例えば、2ポート2位置の切換弁により構成されている。より具体的には、例えば、制御弁35は、ばねの付勢力によって位置する第1位置P1においては、アキュムレータ33からピストン21の背後への液体の流れを禁止し、その逆方向の流れを許容する逆止弁として機能し、パイロット圧によりばねの付勢力に抗して切り換えられた第2位置P2においては、アキュムレータ33からピストン21の背後への液体の流れを許容し、その逆方向の流れを禁止する逆止弁として機能する。
【0048】
射出用伝達機構13は、例えば、ラック・ピニオン機構により構成されている。具体的には、射出用伝達機構13は、射出用電動機7の出力軸に固定されたピニオン37と、ピニオン37と噛み合うとともに、ピストンロッド19に設けられたラック39とを有している。このラック・ピニオン機構により、射出用電動機7の回転は並進運動に変換され、ピストンロッド19及びピストン21に伝達される。
【0049】
なお、ラック39は、ピストンロッド19の上面、側面及び底面のいずれに設けられていてもよい。
図1では、ラック39がピストンロッド19の上面に設けられ、ピニオン37とラック39とがシリンダ部材25の上面に形成された開口25aを介して噛み合っている場合を例示している。上述のように、シリンダ部材25は、その前方端が射出フレーム31に固定されており、開口25aは、射出フレーム31よりも後方に位置している。
【0050】
増圧用伝達機構15は、例えば、プーリ・ベルト機構及びねじ機構(例えばボールねじ機構)を含んで構成されている。具体的には、増圧用伝達機構15は、増圧用電動機9の出力軸に固定されたプーリ41と、プーリ41に掛けられたベルト43と、ベルト43が掛けられたナット45と、ナット45に螺合されるとともに加圧部材23に固定されたねじ軸47とを有している。増圧用電動機9の回転は、プーリ41及びベルト43を介してナット45に伝達され、ナット45及びねじ軸47により並進運動に変換され、加圧部材23に伝達される。
【0051】
制御装置17は、例えば、CPU51及びメモリ53を含むコンピュータにより構成されており、入力部55を介して入力される電気信号に基づいて、各部を制御するための制御信号を生成し、その生成した制御信号を出力部57を介して各部へ出力する。
【0052】
制御装置17に入力される電気信号は、例えば、射出用電動機7の回転センサ7sの検出信号(Sg1)、増圧用電動機9の回転センサ9sの検出信号(Sg2)、ピストンロッド19(プランジャ5)の位置を検出する位置センサ59の検出信号(Sg3)、プランジャ5に付与されている力を検出する力センサ61の検出信号(Sg4)、アキュムレータ33の圧力を検出する圧力センサ63の検出信号(Sg5)、及び、ユーザの操作を受け付ける入力装置65からのユーザの操作に応じた操作信号である。
【0053】
制御装置79から出力される制御信号は、例えば、射出用電動機7、増圧用電動機9、制御弁35、及び、ユーザに各種の情報を提示する表示装置67を制御する制御信号である。
【0054】
位置センサ59は、例えば、ピストンロッド19の進退方向に沿ってピストンロッド19に設けられた不図示のスケール部とともに、磁気式又は光学式のリニアエンコーダを構成している。位置センサ59は、例えば、シリンダ部材25に設けられ、シリンダ部材25の内部においてスケール部と対向している。制御装置17は、位置センサ59からの検出信号に基づいて、プランジャ5の位置及び速度(射出速度)を特定可能である。なお、射出装置1においては、ピストン21の前側に液体がないことから、ピストンロッド19及びシリンダ部材25にリニアエンコーダを設けることが容易となっている。
【0055】
力センサ61は、例えば、プランジャ5とピストンロッド19との間に位置するロードセルを含んで構成されている。ロードセルは、例えば、歪ゲージ式のものである。制御装置17は、力センサ61からの検出信号に基づいて、プランジャ5に付与されている力、ひいては、溶湯に付与されている圧力を特定可能である。
【0056】
(射出装置の動作)
図2は、射出装置1の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0057】
図2において、横軸は時間tを示している。線L
Vは射出速度(プランジャ5の速度)を示し、線L
Pは射出圧力(プランジャ5が溶湯に付与する圧力)を示している。また、その上方側の線は、射出用電動機7のサーボロック状態(サーボON状態)での回転数またはサーボフリー状態(サーボOFF状態)、増圧用電動機9のサーボロック状態(サーボON状態)での回転数またはサーボフリー状態(サーボOFF状態)及び制御弁35の切換位置を示している。
【0058】
射出速度(線L
V)及び射出圧力(線L
P)から理解されるように、射出装置1は、概観すると、低速射出(期間T1)、高速射出(期間T2)、及び、増圧・保圧(期間T3)を順に行う。すなわち、射出装置1は、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止するために比較的低速でプランジャ5を前進させ、次に、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速でプランジャ5を前進させる。その後、射出装置1は、成形品のヒケをなくすために、プランジャ5の前進する方向の力によりキャビティ内の溶湯を増圧する。具体的には、以下のとおりである。
【0059】
(低速射出(T1):t0〜t1)
低速射出の開始直前において、射出装置1は、
図1に示す状態となっている。すなわち、ピストン21(プランジャ5及びピストンロッド19)並びに加圧部材23は、後退限等の初期位置に位置している。射出用電動機7及び増圧用電動機9は停止している。アキュムレータ33は充填が完了されている。制御弁35は第1位置P1とされ(OFFされ)、アキュムレータ33からの液体の放出を禁止している。
【0060】
固定金型103及び移動金型105の型締が終了し、溶湯がスリーブ3に供給されるなど、所定の低速射出開始条件が満たされると、制御装置17は、射出用電動機7を駆動する。その駆動力は、射出用伝達機構13を介してピストンロッド19及びピストン21に伝達される。ひいては、プランジャ5が前進する。すなわち、射出用電動機7の駆動力によって低速射出が行われる。
【0061】
また、制御装置17は、射出用電動機7の駆動開始とともに制御弁35を第2位置P2に切り換え(ONとし)、アキュムレータ33からピストン21の背後への液体の流れを許容する。これにより、既述のように、ピストン21の前進に伴う液体の不足を解消することができる。別の観点では、増圧用電動機9が停止されていること又は増圧用電動機9が低速であることに影響を受けずに、射出用電動機7によりプランジャ5を前進させることができる。
【0062】
プランジャ5の速度は、射出用電動機7の回転数の調整により制御される。具体的には、制御装置17は、位置センサ59により検出されるプランジャ5の速度に基づいて、射出用電動機7の回転数をフィードバック制御する。なお、
図2では、このときの射出用電動機7の回転数M
VLは一定とされ、ひいては、低速射出速度V
Lは一定とされている。ただし、多段変速が行われてもよい。
【0063】
(高速射出(T2):t1〜t3)
制御装置17は、位置センサ59の検出値に基づくプランジャ5の位置が所定の高速切換位置に到達すると、射出用電動機7の回転数をM
VLからM
VHへ上昇させる。これにより、射出速度は比較的低速のV
Lから比較的高速のV
Hへ上昇し、高速射出が実現される。なお、射出速度の上昇に伴って、射出圧力も若干上昇してP
Lとなる。
【0064】
射出用電動機7の回転数の制御により高速射出が実現されることから、低速射出速度V
Lから高速射出速度V
Hに至るまでの昇速時間(T4)は、任意に設定可能である。なお、射出用電動機7が低慣性電動機である場合においては、より正確に昇速時間が制御される。例えば、V
L=0.20m/sからV
H=5.0m/sへの昇速を10ms程度で行うこともできる。
【0065】
また、制御装置17は、増圧が開始される前の適宜な時期において、増圧用電動機9の駆動を開始する。
図2では、高速射出速度V
Hへの昇速完了後から減速開始までの間(t2〜t3)において、増圧用電動機9の駆動が開始され、且つ、一定の回転数M
VIまで回転数が上昇されている場合を例示している。この回転数M
VIによる加圧部材23の前進速度は、射出用電動機7によるピストン21の前進速度(V
H)よりも低速であり、射出用電動機7の回転数の制御による高速射出速度V
Hの制御に影響を及ぼさない若しくは殆ど影響を及ぼさない。そして、このように予め増圧用電動機9を駆動しておくことにより、増圧への移行が円滑に行われる。
【0066】
(増圧・保圧(T3):t3〜t6)
制御装置17は、プランジャ5が所定の減速位置に到達するなど所定の減速開始条件が満たされると(t3)、射出用電動機7の回転数を下げる。これにより、プランジャ5は減速される。昇速と同様、この減速は射出用電動機7の回転数の制御により実現されることから、その減速時間(t3〜t4)は、任意に設定可能である。なお、
図2の射出用電動機7のタイミングチャートでは、減速時間を任意に設定可能であることを点線で示している。射出用電動機7を低慣性電動機により構成することにより、そのような減速時間の設定が好適になされることも昇速と同様である。なお、減速が開始されても、キャビティCaには溶湯が概ね充填されていることから、溶湯の圧力はP
L付近に保たれ又は上昇する。
【0067】
その後、射出用電動機7によるピストン21の前進速度が増圧用電動機9による加圧部材23の前進速度よりも遅くなると、ピストン21と加圧部材23との間の容積は縮小される。一方、この間の液体のアキュムレータ33への流れは制御弁35(第2位置P2)により禁止されている。従って、ピストン21の背後の液体は、加圧部材23により加圧され、その圧力が上昇する。これにより、増圧用電動機9の駆動力は、加圧部材23、ピストン21の背後の液体及びピストン21を介して、プランジャ5に伝達される。すなわち、増圧用電動機9の駆動力による増圧が実現される。
【0068】
そして、射出圧力は、昇圧時間(T5)の間に終圧である圧力P
Hに達する。この昇圧時間は、昇速時間や減速時間と同様に、射出用電動機7及び増圧用電動機9を適宜に制御することによって任意の長さに設定可能である。また、射出用電動機7及び増圧用電動機9を低慣性電動機により構成することにより、そのような昇圧時間の設定が好適になされることも同様である。例えば、P
L=30kgf/cm
2からP
H=500kgf/cm
2への昇圧を10ms程度で行うこともできる。
【0069】
その後、射出用電動機7は停止される(t4)。なお、ここでの停止は、例えば、トルクフリーの状態である。また、このとき、制御弁35は、第1位置P1に切り換えられ、アキュムレータ33からピストン21の背後への液体の流れが禁止され、その反対方向の流れが許容される。ただし、略同時に、制御弁35は加圧部材23に塞がれ、ピストン21の背後の液体のアキュムレータ33への流れは禁止される。
【0070】
保圧においては、溶湯の凝固に伴う収縮に応じて増圧用電動機9により適宜にプランジャ5を前進させ(速度V
I)、キャビティCa内の圧力を鋳造圧力P
Hに保つことできる。そして、一定の時間が経過すると、増圧用電動機9のトルクは徐々に下げられ、さらには、増圧用電動機9は停止され、保圧は完了する(t6)。
【0071】
なお、増圧及び保圧においては、増圧用電動機9のトルクを適宜に多段制御することによって、溶湯に付与する圧力の多段制御を行うことができる。
【0072】
(成形後)
成形品が凝固すると、不図示の型締装置により型開きが行われ、不図示の押出装置により成形品が型から押し出される。なお、射出装置1は、成形品を固定金型103から離型させるために、プランジャ5によりビスケットの押出しを行ってもよい。このとき利用される電動機は、例えば、増圧用電動機9である。
【0073】
その後、ピストン21は、射出用電動機7の逆回転により初期位置に戻され、加圧部材23は増圧用電動機9の逆回転により初期位置に戻される。ピストン21の後退によってその背後の液体は第1位置P1の制御弁35を介してアキュムレータ33に充填される。
【0074】
以上のとおり、本実施形態のダイカストマシンDCの射出装置1は、キャビティCaに成形材料を押し出すプランジャ5と、射出用電動機7と、増圧用電動機9と、これらの間に介在する連結機構11とを有している。連結機構11は、射出用電動機の駆動力が伝達され、プランジャ5と共に移動可能なピストン21と、ピストン21を摺動可能に収容するシリンダ部材25と、増圧用電動機9の駆動力が伝達され、ピストン21の背後の液体を加圧可能な加圧部材23と、ピストン21が加圧部材23に対して相対的に前進するときにピストン21の背後に液体を補給可能であり、加圧部材23が前進するときにピストン21の背後の液体の排出を禁止可能な液体制御部27とを有している。また、ピストン21の前側には液体がない。
【0075】
従って、加圧部材23を置き去りにしてピストン21を前進させることができ、ひいては、増圧用電動機9をプランジャ5から切り離した状態で射出用電動機7によりプランジャ5を駆動できる。その一方で、加圧部材23によりピストン21の背後の液体を加圧することにより、増圧用電動機9によりプランジャ5を駆動できる。その結果、射出用電動機7により低速射出及び高速射出を行ったり、増圧用電動機9により増圧を行ったりするなど、工程毎に電動機を切り換え、全工程を電動で行うことができる。
【0076】
このような全電動化の効果としては、例えば、設定値の高度な再現性による品質の安定乃至は向上、射出動作時のみに必要な速度でサーボモータを駆動することによる省エネルギー化、油圧機器がないことによるメンテナンスの容易化、サイクルタイムの短縮乃至はラップ動作による生産性の向上が挙げられる。
【0077】
また、本実施形態の連結機構11では、各電動機により直線的に駆動される可動部材同士(ピストン21及び加圧部材23)の連結及び連結解除を行うことから、例えば、一の電動機を他の電動機により移動させるような構成(特許文献3参照)と比較して、イナーシャを小さくすることができる。また、例えば、クラッチ(回転式)を多用する構成(特許文献4参照)と比較して、コスト低減、メンテナンス性の向上、イナーシャの低減が期待される。
【0078】
さらに、連結機構11は、ピストン21と加圧部材23との間に液体を介在させていることから、これらを直接に当接させる構成(特許文献1参照)と比較して、例えば、液体(油)の収縮によってサージ圧を低減するなど、種々の衝撃を緩和することができる。その一方で、ピストン21の前側には液体がないことから、特許文献2と比較して、例えば、イナーシャを低減したり、メンテナンス性を向上させたりすることができる。
【0079】
また、本実施形態では、射出装置1は、射出用電動機7の駆動力をピストン21に伝達する射出用伝達機構13を更に有し、射出用伝達機構13は、射出用電動機7の回転を並進運動に変換してピストン21に伝達するラック・ピニオン機構を含む。
【0080】
従って、リニアモータよりも大きな出力を実現しやすい回転式の電動機を用いることができ、また、ねじ機構等を用いる場合(この場合も本願発明に含まれる)と比較して高速射出に必要なプランジャ速度を得ることが容易である。
【0081】
また、本実施形態では、射出装置1は、増圧用電動機9の駆動力を加圧部材23に伝達する増圧用伝達機構15を更に有し、増圧用伝達機構15は、増圧用電動機9の回転を並進運動に変換して加圧部材23に伝達するねじ機構を含む。
【0082】
従って、リニアモータよりも大きな出力を実現しやすい回転式の電動機を用いることができ、また、ラック・ピニオン機構等を用いる場合(この場合も本願発明に含まれる)と比較して増圧及び保圧に必要な大きな力を得ることが容易である。
【0083】
また、本実施形態では、液体制御部27は、ピストン21の背後に液体を供給可能なアキュムレータ33を含む。
【0084】
従って、例えば、タンクからピストン21の背後に液体を補給する場合(この場合も本願発明に含まれる)と比較して、速やかに液体を補給することができ、液体の不足によるプランジャ5の速度低下を抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態では、シリンダ部材25の外周面には、ピストン21の可動範囲よりも前方に開口25aが形成されており、射出用電動機7の駆動力は、開口25aを介してピストンロッド19に伝達される。
【0086】
このような構成は、ピストン21の前方に液体がないことにより可能となる。そして、例えば、ピストンロッド19のうちシリンダ部材25の前方端の開口から突出する部分にピニオン37を噛み合わせる場合(この場合も本願発明に含まれる)と比較して、射出用伝達機構13及び射出用電動機7を後方に配置することができる。その結果、例えば、射出用伝達機構13及び射出用電動機7に溶湯が飛散することが抑制される。また、例えば、溶湯の熱が射出用電動機7に及ぼす影響が低減される。
【0087】
また、本実施形態では、シリンダ部材25は、前方端が射出フレーム31に固定されている。
【0088】
従って、連結機構11は、液圧シリンダとは異なる機能を有する装置でありながら、液圧式の射出装置における液圧シリンダと同様に型締装置に対して固定されることになる。その結果、液圧式の射出装置と全電動式の射出装置1との互換性が高くなる。また、開口25aを利用する構成との組み合わせでは、射出用伝達機構13及び射出用電動機7を射出フレーム31の後方に位置させることができ、溶湯の飛散抑制等の効果が増大する。
【0089】
また、本実施形態では、低速射出及び高速射出において射出用電動機7の駆動力がピストン21に伝達され、増圧において増圧用電動機9の駆動力が加圧部材23に伝達される。
【0090】
従って、例えば、増圧用電動機9により低速射出及び増圧を行い、射出用電動機7により高速射出を行う場合(この場合も本願発明に含まれる)と比較して、電動機を効率的に利用することができる。また、加圧部材23の移動量が低減されるから、連結機構11の小型化が図られる。
【0091】
また、上記のような射出装置1を用いてキャビティCaに成形材料を押し出して成形品を製造する成形品の製造方法においては、射出速度及び射出圧力が高精度に制御されることから、高品質な成形品が形成される。
【0092】
<第2の実施形態>
図3は、第2の実施形態に係る射出装置201の要部構成を示す模式図である。
【0093】
射出装置201は、第1の実施形態の射出装置1と射出用伝達機構の構成が相違する。すなわち、射出装置1の射出用伝達機構13がラック・ピニオン機構を含んで構成されていたのに対して、射出装置201の射出用伝達機構213はねじ機構を含んで構成されている。具体的には、以下のとおりである。
【0094】
射出用伝達機構213は、射出用電動機7の出力軸に固定されたプーリ241と、プーリ241に掛けられたベルト243と、ベルト243が掛けられたナット245と、ナット245に螺合されたねじ軸247とを有している。ねじ軸247は、ピストンロッド219の一部として構成されており、その軸回りの回転は適宜に(例えばボールスプラインにより)規制されている。
【0095】
従って、射出用電動機7の回転は、プーリ241及びベルト243を介してナット245に伝達される。そして、ナット245が回転することにより、ねじ軸247(ピストンロッド219)は並進運動を行い、ひいては、プランジャ5が駆動される。
【0096】
ねじ軸247は、射出用電動機7によって高速でプランジャ5を駆動することが容易化されるように、リードが比較的大きいものとされている。例えば、ねじ軸247のリードは、増圧用のねじ軸47のリードよりも大きい。ねじ軸247は、1条ねじであってもよいし、多条ねじであってもよい。
【0097】
射出用電動機7の駆動力は、第1の実施形態と同様に、シリンダ部材225の外周面に形成された開口225aを介してピストンロッド219に伝達される。具体的には、開口225aを介してベルト243が掛架されている。
【0098】
シリンダ部材225は、第1の実施形態と同様に、その前方端が射出フレーム31に固定されている。なお、シリンダ部材225の前方端は、ナット245を収容可能に拡径している。
【0099】
なお、位置センサ59は、適宜な形式のものとされて適宜な位置に設けられてよい。例えば、位置センサ59は、プランジャ5と共に移動するスケール部とリニアスケールを構成するものとされ、シリンダ部材225の外部に設けられていてもよい。また、例えば、位置センサ59は、レーザー側長器により構成され、プランジャ5と共に移動する部材と位置センサ59との距離を測定してもよい。
【0100】
以上のとおり、第2の実施形態では、射出装置201は、第1の実施形態と同様に、プランジャ5と、射出用電動機7と、増圧用電動機9と、これらの間に介在する連結機構211とを有している。連結機構211は、ピストンロッド及びシリンダ部材の具体的形状を除いては、第1の実施形態の連結機構11と同様のものである。従って、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の動作が可能であり、また、第1の実施形態と同様の種々の効果が奏される。
【0101】
<第3の実施形態>
図4は、第3の実施形態に係る射出装置301の要部構成を示す模式図である。なお、
図4では、B−B線矢視方向における断面等を示す模式図(点線で囲まれた図)を併せて示している。
【0102】
射出装置301は、第1の実施形態の射出装置1と連結機構の構成が相違する。より具体的には、射出装置301の連結機構311は、射出装置1の連結機構11と、ピストン21の背後の液体の流れを制御する液体制御部の構成が相違する。連結機構311の液体制御部327の構成は、以下のとおりである。
【0103】
液体制御部327は、液圧シリンダ333を有している。液圧シリンダ333は、シリンダ部材333aと、シリンダ部材333a内に摺動可能に収容されたピストン333bと、ピストン333bに固定され、シリンダ部材333aから延び出るピストンロッド333cとを有している。
【0104】
ピストンロッド333cには、ピニオン37と噛み合うラック333eが設けられている。また、ピストン333bの背後(ピストンロッド333cとは反対側)のシリンダ室は、ピストン21の背後のシリンダ室と連通されている。なお、ピストン333bの前方のシリンダ室には液体はない。
【0105】
液圧シリンダ333は、シリンダ部材25、ピストン21及びピストンロッド19と並列に配置されている。ピストンロッド333cの延び出る方向は、ピストンロッド19の延び出る方向と同一である。ピストンロッド333cのラック333eは、ピニオン37に対してピストンロッド19のラック39とは反対側においてピニオン37に噛み合っている。
【0106】
従って、射出用電動機7の駆動力がピニオン37に伝達され、ピストンロッド19が駆動されると、ピストンロッド333cは、ピストンロッド19とは反対方向へ移動する。そして、ピストンロッド19の前進時においては、ピストンロッド333cが後退し、ピストン333bの背後の液体がピストン333bに押し出されてピストン21の背後に補給される。また、ピストンロッド19の後退時においては、ピストンロッド333cが前進し、ピストン21の背後の液体は、ピストン333bの背後に収容される。
【0107】
なお、ピストンロッド19及びピストンロッド333cは、同一の速度で反対方向へ移動する。従って、過不足なく補給を行うために、ピストン21及びピストン333b(シリンダ部材25及びシリンダ部材333a)の径は同一とされている。
【0108】
また、液体制御部327は、ピストン21の背後の液体の流れを制御するための制御弁335を有している。制御弁335は、例えば、パイロット式の逆止弁により構成されている。制御弁335は、パイロット圧が導入されていないときは、ピストン333bの背後からピストン21の背後への流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。また、制御弁335は、パイロット圧が導入されると、双方の流れを許容する(開かれる)。
【0109】
従って、射出用電動機7の駆動力によりピストン21が前進するとき、ピストン333bの背後からピストン21の背後への液体の流れは許容される。また、増圧用電動機9の駆動力により加圧部材23を前進させ、ピストン21の背後の液体を加圧するとき、制御弁335にパイロット圧は導入されず、ピストン21の背後の液体の流出は禁止される。射出用電動機7の駆動力によりピストン21が後退するとき、制御弁335にパイロット圧が導入されることにより、ピストン21の背後からピストン333bの背後への液体の流れは許容される。
【0110】
以上のとおり、第3の実施形態では、射出装置301は、第1の実施形態と同様に、プランジャ5と、射出用電動機7と、増圧用電動機9と、これらの間に介在する連結機構311とを有している。連結機構311は、ピストン21の背後の液体の流れを制御するための構成(液体制御部)を除いては、第1の実施形態の連結機構11と同様のものである。従って、第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様の動作が可能であり、また、第1の実施形態と同様の種々の効果が奏される。
【0111】
さらに、第3の実施形態では、液体制御部327は、射出用電動機7の駆動力が伝達されて駆動され、ピストン21の背後に液体を供給可能な液圧シリンダ333を含む。
【0112】
従って、第1の実施形態と同様に、タンクからピストン21の背後に液体を補給する場合と比較して、速やかに液体を補給することができる。また、第1の実施形態と比較して、アキュムレータを設ける必要がなくなることから、メンテナンス性が向上すると期待される。
【0113】
(第4〜第7の実施形態)
図5(a)〜
図5(d)は、第4〜第7の実施形態の射出装置を説明する模式図である。
【0114】
なお、
図5(a)〜
図5(d)では、射出用伝達機構、増圧用伝達機構、液体制御部等は図示を省略されている。これらの不図示の構成は、第1〜第3の実施形態のいずれの構成とされてもよい。
【0115】
図5(a)に示す第4の実施形態では、加圧部材423は、その外径がシリンダ部材425の内径よりも小さくされている。従って、加圧部材423は、シリンダ部材425を摺動しない。このような加圧部材423によっても、ピストン21の背後の液体を加圧可能である。ひいては、第4の実施形態においても、第1〜第3の実施形態と同様の効果が奏される。
【0116】
図5(b)に示す第5の実施形態では、ピストン21と加圧部材23とは同軸的に配置されていない。例えば、シリンダ部材525は、L字に構成されており、加圧部材23は、ピストン21の移動方向に対して直交する方向に移動する。このような加圧部材23によっても、ピストン21の背後の液体を加圧可能である。ひいては、第5の実施形態においても、第1〜第3の実施形態と同様の効果が奏される。
【0117】
図5(c)に示す第6の実施形態では、
図5(a)に示した第4の実施形態と同様の加圧部材423が設けられている。そして、加圧部材423は、(広義の)射出工程の少なくとも一部の工程において、ピストン21の背後を直接的に押圧する。
【0118】
例えば、低速射出(速度V
L)を行うときにおいては、低速・増圧用電動機609により加圧部材423を駆動し、このとき、加圧部材423は、図示されているように、ピストン21の背後を直接的に押圧する。
【0119】
なお、このとき、高速用電動機607は、ピストン21と切り離されている。例えば、ピニオン37(
図1)と高速用電動機607との間には、一般的なクラッチ608が介在しており、クラッチ608は、非接続状態とされている。また、既述の実施形態と同様に、ピストン21の背後には液体が補給される。
【0120】
高速射出(速度V
H)を行うときにおいては、高速用電動機607が駆動されるとともに、クラッチ608が結合状態とされる。なお、このとき、加圧部材423は、ピストン21に置き去りにされ、ピストン21から離間する。
【0121】
増圧(圧力P
H)を行うときにおいては、既述の実施形態と同様に、加圧部材423によりピストン21の背後の液体を加圧する。
【0122】
このように、加圧部材423がピストン21を直接的に押圧する工程を含んでいても、液体を利用してピストン21と加圧部材423との連結及びその解除を行い、ひいては、電動機の切り換えを好適に行うことができる。
【0123】
図5(d)に示す第7の実施形態では、既述の実施形態と同様に、射出用電動機7により直線的に駆動される第1部材721(ピストンに相当)と、増圧用電動機9により直線的に駆動される第2部材723(加圧部材に相当)との連結及びその解除がなされる。ただし、その連結動作を行う連結機構711は、液体を利用していない。
【0124】
例えば、連結機構711は、ラチェット機構を直線状に展開して構成されたワンウェイクラッチである。そして、第1部材721の第2部材723に対する相対的な前進を許容し、第2部材723の第1部材721に対する相対的な前進を規制する。
【0125】
このような構成においても、第1の実施形態等と同様に、射出用電動機7の駆動力を第1部材721に伝達し、第1部材721を第2部材723に対して相対的に前進させつつ低速射出及び高速射出を行い、増圧用電動機9の駆動力を第2部材723に伝達し、第2部材723の第1部材721に対する相対的な前進を規制しつつ増圧を行うことができる。すなわち、射出用電動機7及び増圧用電動機9の切り換えを好適に行うことができる。
【0126】
なお、以上の実施形態において、射出用電動機7及び高速用電動機607はそれぞれ本発明の第1電動機の一例であり、増圧用電動機9及び低速・増圧用電動機609はそれぞれ本発明の第2電動機の一例であり、射出用伝達機構13及び213はそれぞれ本発明の第1伝達機構の一例であり、増圧用伝達機構15は本発明の第2伝達機構の一例であり、ピストン21及び第1部材721はそれぞれ本発明の第1部材の一例であり、加圧部材23、423及び第2部材723はそれぞれ本発明の第2部材の一例である。
【0127】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0128】
上述した種々の実施形態は、適宜に組み合わされてよい。例えば、第2の実施形態(
図3)のようなねじ機構によりピストン21を駆動する構成において、第3の実施形態(
図4)のような液圧シリンダ333が設けられてもよい。なお、この場合、例えば、液圧シリンダ333のピストンロッド333cは、プランジャ5に連結されたピストンロッド219と同様に、ねじ軸が設けられ、プーリ、ベルト、ナットを介して射出用電動機7の駆動力が伝達されてもよい。また、例えば、
図5(a)の加圧部材423が
図5(b)のようにピストン21に対して直交する方向に配置されてもよい。
【0129】
成形機(成形装置)は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、横型締縦射出、縦型締横射出であってもよい。液体は、油に限定されず、例えば水でもよい。
【0130】
射出用電動機7と増圧用電動機9とのように役割分担の異なる電動機は、適宜な数で設けられてよく、2つに限定されない。例えば、低速射出用電動機、高速射出用電動機及び増圧用電動機が設けられてもよい。
【0131】
また、役割分担が共通する電動機が複数設けられてもよい。例えば、射出用電動機7を2機設けて、プーリ等を介して同一のピニオン又はナットにその回転を伝達してもよい。同様に、増圧用電動機9を2機設けて、プーリ等を介して同一のナットにその回転を伝達してもよい。
【0132】
第1の実施形態(
図1)と第6の実施形態(
図5(c))との比較から理解されるように、複数の電動機の役割分担は適宜に設定されてよい。例えば、実施形態の射出用電動機7は、保圧が完了するまで増圧用電動機9と共に駆動されてよい。
【0133】
役割分担の異なる電動機は、実施形態において例示したようにその駆動時間の一部が重複していてもよいし、重複していなくてもよい。さらには、一の電動機が駆動されている間において、他の電動機の駆動が開始され且つ当該他の電動機の駆動が完了するように(利用される電動機の数が変化するように)されてもよい。例えば、上記のように、射出用電動機7は、保圧が完了するまで駆動されてもよい。
【0134】
電動機は、回転式のものに限定されず、リニアモータであってもよい。なお、この場合、リニアモータの駆動力をピストン(第1部材)又は加圧部材(第2部材)に伝達するための伝達機構及び伝達機構は設けられなくてもよい。
【0135】
加圧部材は、ピストンの背後の液体を加圧可能であればよく、形状、大きさ及び配置は、
図5(a)及び
図5(b)に示した以外にも適宜なものとされてよい。例えば、シリンダ部材を摺動する加圧部材は、ピストン(21)よりも小径とされ、シリンダ部材は、ピストンが摺動する大径部と加圧部材が摺動する小径部とを有するものとされてもよい。また、例えば、ピストンが摺動するシリンダ部材と、加圧部材が摺動するシリンダ部材とが別個に構成され、流路によってこれらシリンダ部材が連通されていてもよい。
【0136】
ピストン(21)の背後へ液体を供給する補給装置(アキュムレータ33等)は、ピストン21の背後において負圧が生じることを抑制できるように液体を供給できればよい。ただし、補給装置は、電動機によるピストンの前進をアシストするように液体を供給してもよい。
【0137】
押し出し部材は、プランジャに限定されない。例えば、押し出し部材として、スクリュを用いてもよい。
【0138】
実施形態では、ピストン又は第1部材の前側に「液体がない」としたが、本発明はこれに限られない。ピストン又は第1部材の前側に「液体が満たされていない」状態であってもよい。例えば、ピストンとシリンダ部材との潤滑に寄与する油がピストンの前側のシリンダ室に少量蓄えられていてもよい。
【0139】
なお、上記の実施形態で言う、ピストン又は第1部材の前側に「液体がない」とは、ピストン又は第1部材の前側から液圧が付与されるような態様で液体がないことを意味する。従って、例えば、ピストンとシリンダ部材との潤滑に寄与する油がピストンの前側においてシリンダ部材の内面を濡らしていたとしても、「液体がない」に含まれる。