(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131508
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】端子ボックス
(51)【国際特許分類】
H02S 40/34 20140101AFI20170515BHJP
H02G 3/16 20060101ALN20170515BHJP
【FI】
H02S40/34
!H02G3/16
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-99419(P2013-99419)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-220416(P2014-220416A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174780
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】田中 稔也
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄太
【審査官】
濱田 聖司
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102010034860(DE,A1)
【文献】
特開2001−24206(JP,A)
【文献】
特開2000−323737(JP,A)
【文献】
特開2011−49218(JP,A)
【文献】
特開2009−295743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 40/00−40/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールの裏面に取り付けられる端子ボックスであって、
前記太陽電池モジュールの裏面に面する底壁と、
前記底壁に対向する上壁と、
側壁と、
前記底壁と前記上壁と前記側壁とによって規定され、収容部品を収容する収容空間と、を備え、
前記底壁は、
前記底壁の周縁部に間隙を有するように互いを離して複数形成され、前記太陽電池モジュール側に突出する規制壁と、
複数の前記規制壁および前記底壁によって規定される充填空間と、前記収容空間と、を連通する連通孔と、を備え、
前記間隙は、前記充填空間と前記規制壁の外方の周辺空間とを連通させ、前記充填空間において、少なくとも前記連通孔から最も離れた領域に形成されている端子ボックス。
【請求項2】
前記規制壁は両面テープによって構成されている請求項1記載の端子ボックス。
【請求項3】
前記底壁は、多角形形状を有しており、
前記間隙は、前記多角形の角部に設けられている請求項1または2記載の端子ボックス。
【請求項4】
前記連通孔は、前記多角形の重心位置に設けられ、
前記間隙は、前記多角形の各々の角部に設けられている請求項3記載の端子ボックス。
【請求項5】
前記間隙は、前記多角形の第1の角部に設けられ、
前記連通孔は、前記多角形の重心に対して、前記第1の角部に対向する側に設けられている請求項3記載の端子ボックス。
【請求項6】
前記上壁は、前記充填空間および前記収容空間に充填剤を注入するための注入孔を備え、
平面視において、前記注入孔は少なくとも部分的に前記連通孔に重なる位置に設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の端子ボックス。
【請求項7】
前記収容部品は、平面視において、前記注入孔と前記連通孔との重なり部分の少なくとも一部が露出する位置に配置される請求項6記載の端子ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに接続される端子ボックス、特に、太陽電池モジュールに固定される側に底壁を備えた端子ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池モジュールには、その出力タブを接続する端子板を収容した端子ボックスが取り付けられている。この端子板には出力ケーブルが接続されており、その出力ケーブルを介して、太陽電池モジュールによって発電された電力が外部機器等に供給される。
【0003】
一般的に、端子ボックスは太陽電池モジュールの裏面に固定される。端子ボックスの固定は、例えば、端子ボックスの底壁の下面(太陽電池モジュールに固定される側の面)と太陽電池モジュールとを接着剤や充填剤(以下、接着剤等と称する)で接着する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の方法では、端子ボックスを太陽電池モジュールに押し付けて固定する際に、接着剤等が端子ボックスの外縁からはみ出すのを防止するために、端子ボックスの底壁の下面の外周縁部に規制壁を設けている。
【0005】
一方、特許文献2には、底壁を備えない端子ボックスを固定する方法が開示されている。この特許文献2の方法では、端子ボックスの上壁に形成された充填剤注入孔から端子ボックスの内部に充填剤を注入し、その充填剤によって端子ボックスを太陽電池モジュールに固定している。
【0006】
また、この特許文献2では、端子ボックスの上壁に充填剤確認孔を設けて、この充填剤確認孔から充填剤があふれた際に、端子ボックスの内部に十分な量の充填剤が注入されたと判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−055520号公報
【特許文献2】特開2001−024206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の方法では、接着剤等のはみ出しを防止することはできるが、十分な量の接着剤等が塗布されていることを確認することは困難である。接着剤等の量が不足する場合には、接着不良を生じる可能性があるため好ましくない。一方、特許文献2の方法は、底壁を備えない端子ボックスでは、十分な量の充填剤が注入されたことを知ることができる。しかしながら、特許文献2の充填剤注入孔と充填剤確認孔とを、底壁を備えた端子ボックスに適用した場合、底壁と太陽電池モジュールとの間に十分な量の充填剤が注入されていないにもかかわらず、充填剤確認孔から充填剤があふれる恐れがある。これは、特許文献1のように、底壁に規制壁が形成されている端子ボックスでは、規制壁と太陽電池モジュールの裏面とに囲まれた空間の空気の逃げ場がなくなるため、特に問題となる。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、太陽電池モジュールに確実に固定できる端子ボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の太陽電池モジュールの裏面に取り付けられる端子ボックスの好適な実施形態の一つでは、前記太陽電池モジュールの裏面に面する底壁と、前記底壁に対向する上壁と、側壁と、前記底壁と前記上壁と前記側壁とによって規定され、収容部品を収容する収容空間と、を備え、前記底壁は、前記底壁の周縁部に
間隙を有するように互いを離して複数形成され、前記太陽電池モジュール側に突出する規制壁と、
複数の前記規制壁および前記底壁によって規定される充填空間と、前記収容空間と、を連通する連通孔と、を備え、前記
間隙は、前記充填空間と前記規制壁の外方の周辺空間とを連通
させ、前記充填空間において、少なくとも前記連通孔から最も離れた領域に形成されている。
【0011】
この構成では、底壁の連通孔を介して充填空間に注入された充填剤は、規制壁によって外方への広がりが規制される。また、充填剤が外方に広がる際には、充填空間に存在していた空気は外方に押される。この空気の逃げ場がない場合には、充填空間の内圧が上昇する。この内圧の上昇によって、充填剤の注入が阻害され、充填空間に空気溜りが形成されるおそれがある。しかしながら、上述の構成では、規制壁に設けられた間隙によって、充填剤に押された空気を充填空間の周辺空間に逃がすことができる。そのため、充填空間に空気溜りが形成されにくくなり、充填空間を充填剤で満たすことができる。これにより、端子ボックスを強固に固定することができる。
【0012】
また、充填空間に空気溜りが形成されていると、端子ボックスの温度が上昇した際にその空気が熱膨張し、端子ボックスと太陽電池モジュールとを離間させる方向(以下、剥がし方向と称する)への力が生じるおそれがある。しかしながら、上述の構成では、仮に充填空間に空気溜りが形成されたとしても、膨張した空気は間隙を介して周辺空間に流出することができる。そのため、端子ボックスに剥がし方向の力が作用することを回避することができ、端子ボックスの固定を維持することができる。
【0013】
本発明の端子ボックスの好適な実施形態の一つでは、前記規制壁は両面テープによって構成されている。この構成では、規制壁によって、端子ボックスを仮固定することができるため、端子ボックスの固定作業が容易となる。
【0014】
底壁は様々な形状で構成することができる。例えば、矩形を代表とする多角形形状とすることができる。底壁を多角形形状とした場合には、充填剤に押された空気は底壁の角部付近に集まりやすくなる。そのため、底壁を多角形形状とした場合には、間隙は多角形の角部に設けることが好ましい。これにより、空気溜りの形成を抑制することができる。なお、本発明の多角形とは厳密な多角形だけでなく、多角形とみなすことができる形状を含んでいる。また、本発明の角部は多角形の厳密な頂点位置だけでなく、頂点の近傍をも含んでいる。
【0015】
連通孔と間隙との位置関係も様々に設定することができる。例えば、連通孔を多角形の重心位置に設けることができる。この場合には、充填剤は多角形の重心から放射状に広がってゆく。そのため、間隙は多角形の各々の角部に設けることが好ましい。この構成によって、空気溜りの形成を抑制することができる。なお、本発明の重心は、厳密な重心位置だけでなく、重心近傍をも含んでいる。
【0016】
また、間隙を多角形の第1の角部に設けることもできる。この場合には、連通孔は、多角形の重心に対して、第1の角部に対向する側に設けることが好ましい。この構成によっても、空気溜りの形成を抑制することができる。
【0017】
本発明の端子ボックスの好適な実施形態の一つでは、前記上壁は、前記充填空間および前記収容空間に充填剤を注入するための注入孔を備え、平面視において、前記注入孔は少なくとも部分的に前記連通孔に重なる位置に設けられている。この構成によれば、注入孔から注入された充填剤は充填空間に注入されやすくなる。これにより、充填空間に空気溜りが形成される可能性を低減することができる。
【0018】
収容空間には、端子板やダイオード等の収容部品が収容されている。この収容部品は、上壁と底壁の間に設けられるため、配置場所によっては、充填剤の充填空間への供給を阻害するおそれがある。そのため、本発明の端子ボックスの好適な実施形態の一つでは、前記収容部品は、平面視において、前記注入孔と前記連通孔との重なり部分の少なくとも一部が露出する位置に配置される。この構成であれば、注入孔から注入された充填剤の充填空間への供給が阻害されにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】別実施形態における端子ボックスの底面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を用いて、本実施形態における端子ボックスを説明する。
図1,2はそれぞれ、端子ボックスの一部分解上方斜視図、下方斜視図である。端子ボックスは、
図1の姿勢で太陽電池モジュール(図示せず)の裏面に固定される。以下の説明では、
図1の姿勢を基準として上下を定める。
【0021】
図に示すように、本実施形態の端子ボックスは、いずれも樹脂製のボックス本体1および蓋体2を備えている。
【0022】
ボックス本体1は、収容部1aとケーブル保持部1bとを備えている。ケーブル保持部1bは、出力ケーブルCを挿通し固定する部分である。出力ケーブルCを介して、太陽電池モジュールによって発電された電力を外部負荷に供給する。
【0023】
以下の説明では、出力ケーブルCが接続されている側を後ろ、後ろに対向する側を前、前後方向に直交する方向を左右(または側方)と称する。
【0024】
収容部1aは、底壁11と底壁11の周縁から立設された3つの側壁12とを備えている。この底壁11と、側壁12と、ケーブル保持部1bの前方側の端面とによって、収容空間10が規定される。すなわち、収容部1aは、上方が開口する略箱状に構成されている。収容空間10の内部には、太陽電池モジュールの出力タブ(図示せず)を接続する端子板3(本発明の収容部品の例)が収容されている。具体的には、端子板3は底壁11の上面に固定されている。本実施形態では、2つの端子板3が備えられており、2つの端子板3の間はダイオード4(本発明の収容部品の例)により接続されている。各々の端子板3には、収容空間10内に案内された出力ケーブルCが接続されている。これにより、太陽電池モジュールと外部負荷とが電気的に接続され、太陽電池モジュールによって発電された電力を外部負荷に供給することができる。
【0025】
底壁11は、前方および左右の側壁12よりも外方に延出し、フランジ14を形成している。フランジ14の上面と側壁12の外面とにわたってリブ15が形成されている。このリブ15によって、フランジ14の強度を向上させている。
【0026】
左右の側壁12の上端部付近には、それぞれ2つの係止孔12aが形成されている。この係止孔12aに対して後述する蓋体2の係止爪22が嵌入するように構成されている。
【0027】
一方、蓋体2は、収容部1aの上方の開口、すなわち、収容空間10、を上方から塞ぐ、平板状の部材である。蓋体2の形状は収容部1aの平面視形状に適合しており、本実施形態では略矩形となっている。本実施形態では、蓋体2が上壁を構成している。
図1に示すように、蓋体2には、上面から下面に貫通する注入孔21が形成されている。蓋体2をボックス本体1に取り付けた際に、この注入孔21により、収容空間10と周辺空間とを連通させることができる。
【0028】
蓋体2の左右側の側面には、側方に突出する係止爪22が形成されている。上述したように、この係止爪22はボックス本体1の側壁12の係止孔12aに嵌入する。これにより、ボックス本体1に対して蓋体2が係止固定される。
【0029】
図2に示すように、本実施形態のボックス本体1の底壁11は平面視で略正方形となっている。底壁11の下面位置は、ケーブル保持部1bの下面よりも上方に位置するように構成されている。また、底壁11の下面の前側の角部に一対の脚部17が形成されている。脚部17の端面は、ケーブル保持部1bの下面と同一平面上に位置するように構成されている。そのため、一対の脚部17と、ケーブル保持部1bの下面とが、太陽電池モジュールの裏面に接触し、端子ボックスの取付姿勢を安定させることができる。
【0030】
底壁11のうち、フランジ14の裏面およびケーブル保持部1bの直前位置には、下方、すなわち、太陽電池モジュール側に突出する規制壁13が形成されている。本実施形態では、この規制壁13は弾性を有する両面テープにより構成している。規制壁13の下面は、ケーブル保持部1bの下面と略同一平面上となっている。そのため、ボックス本体1を太陽電池モジュールに押し付ければ、ボックス本体1を仮固定することができる。なお、規制壁13は、底壁11の下面に一体的に形成されても構わない。
【0031】
規制壁13と底壁11の下面とによって、充填空間16が形成されている。後述するように、この充填空間には充填剤が注入され、端子ボックスを太陽電池モジュールに固定する。
【0032】
図2に示すように、規制壁13は底壁11の各辺に沿う長板状に構成されている。本実施形態では、底壁11は略正方形であるため、4つの規制壁13が形成されている。図に示すように、隣接する規制壁13どうしは互いに接触しないように配置されており、底壁11の角部において間隙13aが形成されている。この間隙13aによって、充填空間16と周辺空間とが連通する。
【0033】
図2に示すように、ボックス本体1の底壁11の前端側には出力タブ導入部11a,11bが形成されている。この出力タブ導入部11a,11bを介して、太陽電池モジュールの出力タブが収容空間10内に導入される。本実施形態では、平面視において、出力タブ導入部11a,11bの後端と端子板3の前端とが一致するように構成されている。
【0034】
また、ボックス本体1の底壁11を構成する多角形の重心付近には連通孔11cが形成されており、底壁11の後端側には連通孔11d,11eが形成されている。この連通孔11c,11d,11eによって、収容空間10と充填空間16が連通している。また、出力タブ導入部11a,11bによっても、収容空間10と充填空間16とが連通する。したがって、出力タブ導入部11a,11bも本発明の連通孔として機能する。
【0035】
図3は、端子ボックスの平面図である。ただし、この図では、蓋体2を透過して収容空間10の内部が見えるように描いている。
図3に示すように、端子板3やダイオード4等の収容空間10に収容される収容部品は、収容空間10と充填空間16との連通を阻害しないように配置されている。具体的には、平面視において、収容部品が連通孔11a〜11eのそれぞれの開口部分全体と重ならないように、収容部品が配置されている。すなわち、平面視において、連通孔11a〜11eのそれぞれが少なくとも部分的に見えるように、収容部品が配置されている。
【0036】
また、
図3に示すように、平面視において、注入孔21と連通孔11cとが少なくとも部分的に重なるように、これらの位置が定められている。また、ダイオード4は、平面視において、注入孔21と連通孔11cとの重なり部分全体に重ならないように配置されている。すなわち、平面視において、注入孔21と連通孔11cとの重なり部分が少なくとも部分的に見えるように、ダイオード4が配置されている。そのため、平面視において、注入孔21から連通孔11cを介して充填空間16を臨むことができる。
【0037】
以下に、太陽電池モジュールへの端子ボックスの固定方法を説明する。まず、2枚の端子板3をボックス本体1の底壁11の上面に固定する。ダイオード4を2枚の端子板3の間に接続する。そして、出力ケーブルCをケーブル保持部1bに挿通固定し、出力ケーブルCを端子板3に接続する。また、連通孔11a,11bを介して、太陽電池モジュールからの出力タブを収容空間10内に案内した状態で、規制壁13としての両面テープにより、ボックス本体1を太陽電池モジュールの裏面に仮固定する。そして、出力タブを端子板3に接続する。
【0038】
この状態で、収容空間10の上方から蓋体2を下方に押圧する。このとき、係止爪22によって、側壁12が外方に弾性変形し、さらに蓋体2を押圧すると係止爪22が係止孔12aに嵌入する。これにより、ボックス本体1に対して蓋体2が係止固定される。
【0039】
端子ボックスを本固定するために、注入孔21を介して充填剤が注入される。このときの様子が、
図4の側断面図に示されている。上述したように、平面視において、注入孔21から連通孔11cを介して充填空間16が臨めるため、注入孔21から収容空間10に注入された充填剤は、主に連通孔11cを介して充填空間16に供給される。連通孔11cを介して充填空間16に注入された充填剤は、重心付近から放射状に広がってゆく。
【0040】
端子ボックスを太陽電池モジュールの裏面に仮固定した状態では、充填空間16には空気が存在している。そのため、充填剤は空気を外方に押しながら外方に向けて広がってゆく。外方に押された空気は規制壁13の内面に沿って、底壁11の角部付近に押されてゆく。この空気の逃げ場がない場合には、充填空間16の内圧が高まり、充填剤の注入が阻害され、充填空間16に空気溜りが形成される。充填空間16に空気溜りが形成されると、注入される充填剤の量が少なくなるため、端子ボックスの固定力が弱くなり好ましくない。しかしながら、本発明では、この底壁11の角部付近に押された空気は、間隙13aを介して外部に流出する。これにより、空気溜りが形成されにくくなり、端子ボックスを強固に固定することができる。
【0041】
また、充填空間16に空気溜りが形成された端子ボックスが熱を帯びると、充填空間16内の空気は膨張する。この空気の膨張は、端子ボックスに対してはがし方向の力を作用させる。すなわち、充填空間16に空気溜りが形成されていると、端子ボックスが剥がれ易くなる。一方、本発明では、仮に充填空間16に空気溜りが形成されたとしても、その空気溜りは底壁11の角部付近であるため、膨張した空気は間隙13aを介して外部に流出する。そのため、充填空間16の空気が膨張することにより、端子ボックスが剥がれ易くなるという不都合を回避することもできる。
【0042】
また、本実施形態では、連通孔11a,11b,11d,11eは、連通孔11cから見て角部方向に位置しているため、底壁11の上面に沿って流れた充填剤が連通孔11a,11b,11d,11eを介して充填空間に供給される。そのため、充填空間16の角部付近にも充填剤を行きわたらせ易くなっている。
【0043】
充填空間が充填剤で満たされたか否かは、間隙13aへの充填剤の流入、または、間隙13aから外部への充填剤の流出によって認知することができる。すなわち、間隙13aは、充填空間内の空気を排出する排出口としての機能と、充填空間内への充填剤の注入完了を確認する確認口としての機能と、を有している。なお、充填空間が充填剤で満たされた状態における、充填剤の間隙13aへの流入量、または間隙13aからの流出量(以下、流出量と総称する)は、使用する充填剤の粘度等の性質や間隙13aの数、大きさ、配置等によって異なる。そのため、使用する充填剤の粘度等毎に、間隙13aの数、大きさ、配置等を調整し、適切な充填剤の流出量を定めておくことが好ましい。
【0044】
なお、充填剤は収容空間10にも注入され、これにより収容空間10内の端子板3やダイオード4等の収容部品を保護している。
【0045】
このように、本発明の端子ボックスでは、規制壁13によって充填剤が不要に外方に広がることを防止しながら、規制壁13に形成された間隙13aによって空気溜りが形成されにくくなっている。
【0046】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態では、連通孔11cを底壁11の重心付近に設け、間隙13aを底壁11の各角部に形成したが、これらの配置はこれに限定されるものではない。例えば、
図5に示すように、1つの連通孔11cを底壁11の角部側に変位させ、その角部に対向する角部に間隙13aを形成しても構わない。この場合には、連通孔11cが形成されている側の角部付近が最初に充填剤で満たされ、その後、間隙13aに向かって空気を押しながら充填剤が広がってゆく。したがって、このような構成であっても、充填空間16の空気溜りの形成を抑制することができる。なお、充填空間の空気溜りの形成を抑制するためには、連通孔11cと間隙13aとを、底壁11の重心を中心として対向するように配置することが好ましい。ただし、連通孔11cや間隙13aの数や配置は本明細書で示したものに限定されるものではなく、本発明の目的を達する範囲において、適宜変更可能である。なお、充填剤が充填空間16に注入されやすくするために、注入孔21の位置は、連通孔11cに適合させることが好ましい。
【0047】
(2)上述の実施形態では、底壁11は略正方形であったが、底壁11の形状はこれに限定されるものではなく、他の多角形形状であっても構わないし、円や楕円等であっても構わない。
【0048】
(3)
上述の実施形態では、収容空間10の上方を蓋体2が塞ぐよう構成したが、収容空間16の下方を蓋体2が塞ぐように構成しても構わない。この場合、側壁12は上壁から垂下され、蓋体2は底壁11を構成する。
【0049】
(4)上述の実施形態では、間隙13aは底壁11の角部に設けたが、底壁11の辺部等の他の場所に設けても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、太陽電池モジュールに接続される端子ボックスに利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10:収容空間
11:底壁
11a、11b:出力タブ導入部(連通孔)
11c、11d、11e:連通孔
12:側壁
13:規制壁
13a:間隙
16:充填空間
2:蓋体(上壁)
21:注入孔
3:端子板(収容部品)
4:ダイオード(収容部品)