【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明の要旨は、2層マルチストランド金属コードを製造する方法において、
‐ストランドの外側層を構成するN本のワイヤをストランドの内側層を構成する2本のワイヤ回りに螺旋状に巻いてストランドを形成し、
‐金属コードの不飽和外側層を構成する、事前に形成されたL(Lは2以上)本の外側ストランドを、金属コードの内側層を構成する、事前に形成されたK(Kは2以上)本の内側ストランド回りに螺旋状に巻き、
‐巻きコードの過剰加撚を実施し、
‐過剰加撚済みコードの釣り合わせステップを実施してコード中の残留トルクをゼロにし、
‐釣り合わされた過剰加撚済みコードの解撚ステップを実施することを特徴とする方法にある。
【0009】
マルチストランドコード(K+L)×(2+N)に施される一連の過剰加撚(オーバーツイスティング:所定よりも多く撚ること)ステップ、釣り合わせステップ及び解撚ステップにより、ベンチレーテッド(通風型)コード、即ち軸方向(ストランドの軸線方向に垂直な方向)に関してワイヤが分離されると共に軸方向(コードの軸線方向に垂直な方向)に関してストランドが分離されていることを特徴とするコードを得ることができる。具体的に言えば、ストランドを構成するワイヤとコードを構成するストランドは、過剰加撚ステップ中に塑性変形され、かくして、解撚ステップに続き、過剰加撚ステップ前のコードの初期曲率と比較して過剰の曲率を有する。この比較的大きな過剰曲率は、コードが休息状態にあるとき、特にコードが引っ張り力を受けていないとき、ストランドを構成するワイヤとコードを構成するストランドを軸方向に分離させる。この曲率は、ワイヤ又はストランドの各層の螺旋直径と螺旋ピッチ又は実際にはワイヤ又はストランドの各層の螺旋角度(コードの軸線から測定された角度)の両方によって定められる。
【0010】
このようにして製造されたコードは、“HE”型のものであり、即ち、高い弾性を有し、高い侵入性を有する。コードを弾性に作ることに加えて、ストランドの軸線及びコードの軸線に対するそれぞれのワイヤ及びストランドの分離により、ゴムが、各ストランドのワイヤ相互間及び互いに異なるストランド相互間を通るようになる。かくして、耐腐食性が向上する。
【0011】
定義上、ストランドの不飽和層は、この層中に、この層のL本のストランドと同一の直径を有する少なくとも1本の(L+1)番目のストランドをこの層に追加するのに十分な余地が存在するようなものであり、かくして、複数本のストランドが互いに接触関係をなすことが可能である。これとは逆に、この層は、この層のL本のストランドと同一の直径を有する少なくとも1本の(L+1)番目のストランドをこの層に追加するのに足るほどの余地がこの層中に存在しない場合に飽和状態であると呼ばれる。
【0012】
コードは、高い耐腐食性を有する。具体的に言えば、コードの外側層の不飽和により、2本の外側ストランド相互間にゴムのための少なくとも1つの通路開口部を作ることができ、その結果、ゴムは、タイヤの加硫中、効果的に侵入することができるようになる。各ストランドの2+N構造は、ゴムの通過を増強する。具体的に言えば、各ストランドは、細長い輪郭を備えたエンベロープを有し、これは、隣り合うストランドが互いに接触しないようにするのを促進し、かくして、ゴムの通過を促進する。
【0013】
さらに、コードは、顕著な強度特性を有する。コードの強度は、破断時におけるその力の値によって測定可能であり、かかる強度は、力に対する構造強度のその能力を特徴付けている。
【0014】
コードのマルチストランド構造(K+L)×(2+N)は、コードの優れた機械的強度、特に高い破断時力を与える。
【0015】
コードのこの構造により、比較的高い直線密度を有する保護クラウンプライ、例えばワーキング(実働)プライ又はクロスプライを製造することが可能である。かくして、タイヤの強度が大幅に向上する。
【0016】
コードが保護プライ中に用いられる場合、保護プライは、その高い侵入性により且つその高い弾性により、高い弾性を備えると共に高い耐腐食性を備え、高い侵入性により、ゴムは、コードを腐食性の作用剤から保護することができ、高い弾性により、コードは、路面とは無関係に容易に変形することができる。
【0017】
コードがワーキングプライ又はクロスプライ中に用いられる場合、コードは、その高い機械的強度、特にその圧縮疲労強度により、特に「割裂(cleavage)」と呼ばれているタイヤのショルダ領域中のクロスプライの端部の分離/亀裂発生現象に関して高い耐久性を与える。
【0018】
「金属コード」という表現は、定義上、ワイヤで作られたコードを意味するものと理解され、これらワイヤは、大部分(即ち、これらワイヤの50%超)又は全体(ワイヤの100%)が金属材料で作られている。本発明は、好ましくは、スチールコード、より好ましくは以下において「炭素鋼」と呼ばれているパーライト(又はフェライト‐パーライト)炭素鋼又はステンレス鋼(定義上、スチールは、少なくとも11%クロム及び少なくとも50%鉄を含む)で作られたコードを用いて実施される。しかしながら、当然のこととして、他のスチール又は他の合金を用いることが可能である。
【0019】
炭素鋼を用いる場合、その炭素含有量(スチールの重量%)は、好ましくは、0.4〜1.2%、特に0.5%〜1.1%であり、これら含有量は、タイヤに必要な機械的性質とワイヤの実現可能性との良好な妥協点を表している。注目されるべきこととして、0.5%〜0.6%の炭素含有量がかかるスチールを最終的にコスト安にすることができる。というのは、かかるスチールは、引抜きが容易だからである。また、本発明の別の有利な実施形態では、意図した用途に応じて、特にコスト安及び高い引抜き容易性に鑑みて、低炭素含有量、例えば0.2%〜0.5%の炭素含有量を有するスチールが使用される。
【0020】
用いられる金属又はスチールは、特にこれが炭素鋼であるにせよステンレス鋼であるにせよいずれにせよ、それ自体、金属層で被覆されるのがよく、この金属層は、例えば、金属コード及び(又は)その構成要素の加工性又はコード及び(又は)タイヤそれ自体の使用特性、例えば、接着性、耐腐食性又は耐老化性を向上させる。
【0021】
好ましい一実施形態によれば、用いられるスチールは、黄銅(Zn‐Cu合金)又は亜鉛の層で覆われる。思い起こされることとして、ワイヤの製造プロセス中、黄銅又は亜鉛被膜は、ワイヤの引抜き並びにゴムへのワイヤの付着を容易にする。しかしながら、ワイヤは、例えばこれらワイヤの耐腐食性及び/又はゴムへのワイヤの付着性を向上させる機能を持つ黄銅又は亜鉛以外の薄い金属層、例えばCo、Ni、Al又は金属であるCu、Zn、Al、Ni、Co、Snのうち2種又は3種以上の合金の薄い層で覆われても良い。
【0022】
当業者であれば、スチールの組成及びこれらワイヤの最終加工硬化度をその特定の特別な要件に応じて調節することにより、そして例えば特定の追加の元素、例えばCr、Ni、Co、V又は種々の他の既知の元素を含むマイクロ合金化炭素鋼を用いることによってかかる特性を備えたスチールワイヤをどのように製造するかを知っている(これについては、例えば、(「マイクロ‐アロイド・スチール・コード・コンストラクションズ・フォア・タイヤズ(Micro-alloyed steel cord constructions for tyres)」,リサーチ・ディスクロージャ(Research Disclosure)34984,1993年5月;「ハイ・テンシル・ストレングス・スチール・コード・コンストラクションズ・フォア・タイヤズ(High tensile strength steel cord constructions for tyres)」,リサーチ・ディスクロージャ(Research Disclosure)34054,1992年8月を参照されたい)。
【0023】
好ましくは、K本の内側ストランドを螺旋状に巻く。
【0024】
好ましくは、次の順序で、即ち、
‐各内側及び外側ストランドを形成し、
‐事前に形成されたK本の内側ストランドを螺旋状に巻き、
‐事前に形成されたL本の外側ストランドを、事前に螺旋状に巻かれたK本の内側ストランド回りに螺旋状に巻く。
【0025】
有利には、各ストランドの外側層を不飽和状態にする。
【0026】
定義上、ワイヤの不飽和層は、この層中に、この層のN本のワイヤと同一の直径を有する少なくとも1本の(N+1)番目のワイヤをこの層に追加するのに十分な余地が存在するようなものであり、かくして、複数本のワイヤが互いに接触関係をなすことが可能である。これとは逆に、この層は、この層のN本のワイヤと同一の直径を有する少なくとも1本の(N+1)番目のワイヤをこの層に追加するのに足るほどの余地がこの層中に存在しない場合に飽和状態であると呼ばれる。
【0027】
腐食からのコードの保護の程度は、コードの外側層の不飽和に関して説明した理由と同様な理由で向上する。特に、ゴムは、コードの内側層のストランドにより画定された中央チャネルまで侵入するようになる。かくして、かかるコードでは、ゴムは、各ストランド内及びストランド相互間に侵入する。
【0028】
好ましくは、金属コードの破断時力は、4000N以上、好ましくは5000N以上、より好ましくは6000N以上である。
【0029】
好ましくは、金属コードの破断時全伸び率At、即ち、その構造伸び率、弾性伸び率及び塑性伸び率の合計(At=As+Ae+Ap)は、4.5%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは5.5%以上である。
【0030】
構造的伸び率Asは、マルチストランドコード及び/又はその要素ストランド(素線)の構成及び実際の通気状態並びに更に該当する場合にはこれら要素ストランド及び/又はワイヤのうちの1本又は2本以上に対して行われる予備成形によりこれらの固有の弾性の結果として生じる。
【0031】
弾性伸び率Aeは、個々に取られた金属ワイヤの金属の実際の弾性の結果として生じる(フックの法則)。
【0032】
塑性伸び率Apは、個々に取られたこれら金属ワイヤの金属の弾性(降伏点を超える非可逆的変形)の結果として生じる。
【0033】
これら種々の伸び率及びその意味(これらは、当業者には周知である)は、米国特許第5843583号明細書、国際公開第2005/014925号パンフレット及び同第2007/090603号パンフレットに記載されている。
【0034】
有利には、金属コードは、1%以上、好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以上の構造的伸び率Asを有する。
【0035】
有利には、K=3又はK=4である。
【0036】
好ましくは、L=8又はL=9である。
【0037】
有利には、N=2、N=3、又はN=4である。
【0038】
好ましいコードは、構造(3+8)×(2+2)、(3+8)×(2+3)、(3+8)×(2+4)、(4+8)×(2+2)、(4+8)×(2+3)、(4+8)×(2+4)、(4+9)×(2+2)、(4+9)×(2+3)、及び(4+9)×(2+4)のコードである。
【0039】
ここで思い起こされるように、知られているように、ピッチは、コードの軸線に平行に測定された長さを表し、その後、このピッチを有するワイヤは、このコードのかかる軸線回りに丸一回転する。
【0040】
オプションとしての特徴によれば、
‐K本の内側ストランドの各々の内側ワイヤを3.6〜16mm(両端の値を含む)、好ましくは4〜12.8mm(両端の値を含む)のピッチで螺旋状に巻く。
‐K本の内側ストランドの各々の内側ワイヤの直径は、0.18mm〜0.40mm(両端の値を含む)、好ましくは0.20mm〜0.32mm(両端の値を含む)である。
‐K本の内側ストランドの各々の内側ワイヤのピッチと直径の比は、20〜40(両端の値を含む)である。
‐K本の内側ストランドの各々の外側ワイヤを3.1〜8.4mm(両端の値を含む)、好ましくは3.4〜6.7mm(両端の値を含む)のピッチで螺旋状に巻く。
‐K本の内側ストランドの各々の外側ワイヤの直径は、0.18mm〜0.40mm(両端の値を含む)、好ましくは0.20mm〜0.32mm(両端の値を含む)である。
‐K本の内側ストランドの各々の外側ワイヤのピッチと直径の比は、17〜21(両端の値を含む)である。
【0041】
かくして、一定の直径では、外側ワイヤは、好ましくは、内側のワイヤのピッチよりも短いピッチを有する。K本のストランドの各々の弾性が向上する。
【0042】
好ましくは、K本の内側ストランドの各々の内側層及び外側層を同一の加撚方向に巻く。コードの弾性の促進に加えて、内側層及び外側層を同一の方向に巻くことにより、2つの層相互間の摩擦力が最小限に抑えられ、従ってこれら層を構成するワイヤに対する摩耗が最小限に抑えられる。
【0043】
他のオプションの特徴によれば、
‐L本の外側ストランドの各々の内側ワイヤを7.2〜32mm(両端の値を含む)、好ましくは8〜25.6mm(両端の値を含む)のピッチで螺旋状に巻く。
‐L本の外側ストランドの各々の内側ワイヤの直径は、0.18mm〜0.40mm(両端の値を含む)、好ましくは0.20mm〜0.32mm(両端の値を含む)である。
‐L本の外側ストランドの各々の内側ワイヤのピッチと直径の比は、40〜80(両端の値を含む)である。
‐L本の外側ストランドの各々の外側ワイヤを4.1〜13.2mm(両端の値を含む)、好ましくは4.6mm〜10.6mm(両端の値を含む)のピッチで螺旋状に巻く。
‐L本の外側ストランドの各々の外側ワイヤの直径は、0.18mm〜0.40mm(両端の値を含む)、好ましくは0.20mm〜0.32mm(両端の値を含む)である。
【0044】
L本の外側ストランドの各々の外側ワイヤのピッチと直径の比は、23〜33(両端の値を含む)である。
【0045】
かくして、一定の直径では、外側ワイヤは、好ましくは、内側ワイヤのピッチよりも短いピッチを有する。L本のストランドの各々の弾性が向上する。
【0046】
好ましくは、L本の外側ストランドの各々の内側層及び外側層を同一の加撚方向に巻く。したがって、内側ストランドと同様な仕方で、このコードの弾性及び耐摩耗性が向上する。
【0047】
さらに別のオプションとしての特徴によれば、
‐内側ストランドを3.6〜16mm(両端の値を含む)、好ましくは4〜12.8mm(両端の値を含む)のピッチで螺旋状に巻く。
‐各内側ストランドのピッチと各内側ストランドのワイヤの直径の比は、20〜40(両端の値を含む)である。かくして、各内側ストランドのワイヤの全ては、同一の直径を有する。
‐外側ストランドを7.2〜32mm(両端の値を含む)、好ましくは8〜25.6mm(両端の値を含む)のピッチで螺旋状に巻く。
‐外側ストランドのピッチと各外側ストランドのワイヤの直径の比は、40〜80(両端の値を含む)である。かくして、各外側ストランドのワイヤの全ては、同一の直径を有する。
【0048】
かくして、一定の直径では、外側ストランドは、好ましくは、内側ストランドのピッチよりも大きなピッチを有する。
【0049】
好ましくは、金属コードの内側層及び外側層を同一の加撚方向に巻く。この巻きにより、2つの層相互間の摩擦力は最小限に抑えられ、従って、これら層を構成するワイヤに対する摩耗が最小限に抑えられる。
【0050】
有利には、ワイヤ及びストランドの全てを同一の加撚方向に巻く。これにより、コードの弾性が高められる。
【0051】
強度と構造的伸長化又は弾性の能力と耐久性と可撓性との間の最適化された妥協点を得るため、各ストランドの外側ワイヤ及び内側ワイヤの全ての直径が(これらワイヤが同一の直径を有するにせよそうでないにせよいずれにせよ)0.18mm〜0.40mm(両端の値を含む)、好ましくは0.20mm〜0.32mm(両端の値を含む)であることが好ましい。
【0052】
各ストランドに関し、内側ワイヤ及び外側ワイヤは、一方の層と他方の層との間で同一の直径を有しても良く異なる直径を有しても良い。好ましくは、一方の層と他方の層との間で同一の直径を有するワイヤが使用される。各ストランドの内側ワイヤは、好ましくは、スチール、より好ましくは炭素鋼で作られる。別個独立に、各ストランドの外側ワイヤは、好ましくは、スチール、より好ましくは炭素鋼で作られる。
【0053】
コードは、重車両、即ち、地下鉄車両、バス、路上輸送車両(ローリ、トラクタ、トレーラ)、オフロード車、農業機械又は建設プラント機械及び他の輸送又は取り扱い車両から選択された産業車両向きのタイヤのクラウン補強材のための補強要素として用いられることがことさら意図されている。
【0054】
好ましくは、タイヤは、上述したように、2つのビード内に繋留されると共に半径方向上にクラウン補強材が載ったカーカス補強材を有し、クラウン補強材自体の上にはトレッドが載っており、トレッドは、2つのサイドウォールによってビードに接合され、クラウン補強材はコードを有する。
【0055】
有利には、コードは、保護プライのための補強要素として用いられることが意図されている。変形例として、コードは、ワーキングプライのための補強要素として使用されることが意図されている。
【0056】
コードは又、他の実施形態では、他形式の車両向きのタイヤの他の部分を補強するために使用できる。
【0057】
かくして、例えば、コードをたが掛けプライ用の補強要素として用いることが想定できる。種々の実施形態によれば、かかるたが掛けプライは、1枚又は複数枚のカーカスプライと1枚又は複数枚のワーキングプライとの間、ワーキングプライ相互間、又は1枚又は複数枚のワーキングプライと1枚又は複数枚の保護プライとの間に半径方向に配置されるのが良い。
【0058】
本発明は、例示として与えられているに過ぎない以下の説明を図面を参照して読むと良好に理解されよう。