特許第6131525号(P6131525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6131525-熱電変換素子の制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131525
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】熱電変換素子の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/28 20060101AFI20170515BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   H01L35/28 C
   H02N11/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-76457(P2012-76457)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-207178(P2013-207178A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】深田 隆文
【審査官】 田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−012768(JP,A)
【文献】 特開昭52−058830(JP,A)
【文献】 特開2007−159310(JP,A)
【文献】 特開2005−237058(JP,A)
【文献】 特開2008−022688(JP,A)
【文献】 特開2000−125578(JP,A)
【文献】 特開2003−235170(JP,A)
【文献】 特開平01−243830(JP,A)
【文献】 特開平02−128206(JP,A)
【文献】 特開昭63−140665(JP,A)
【文献】 特開昭59−147281(JP,A)
【文献】 特開昭51−059351(JP,A)
【文献】 特開昭51−076527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/28
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を電力に変換して出力する熱電変換素子(1)と、前記熱電変換素子(1)に並列接続する2個の直列接続された抵抗(R、R)と、前記2個の抵抗(R、R)のうちの片方の抵抗(R)にかかる電圧を外部からのトリガーのタイミングに合わせてコンデンサ(C)に保持させる電圧ホールド回路(3)と、前記コンデンサ(C)と前記熱電変換素子(1)との差電圧に応じて前記熱電変換素子(1)からの出力電流を制御する電流制御回路(5)と、前記電圧ホールド回路(3)のトリガーを発するタイミング回路(2)と、前記コンデンサ(C)と前記電流制御回路(5)との間に設けられたPWM発生回路(4)と、を備え、
前記タイミング回路(2)が、前記熱電変換素子(1)の開放電圧の発生時において前記トリガーを発して前記コンデンサ(C)に電圧を保持させた後に、その保持された電圧を前記PWM発生回路(4)を通じて前記電流制御回路(5)に出力することを所定の間隔で行い、
前記電流制御回路(5)は、前記熱電変換素子(1)と並列に接続されたダイオード(D)及びFETからなるスイッチング素子(St)と、前記熱電変換素子(1)に接続された接続端子(6)の片方に通じるコイル(L)とを備え、前記スイッチング素子(St)をオンオフすることにより、前記熱電変換素子(1)及び前記2個の抵抗(R、R)に流れる電流の大きさを制御する、ことを特徴とする熱電変換素子の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱電変換素子の制御装置に関し、更に詳しくは、熱電変換素子から低コストで効率よく電力を取り出すことができる熱電変換素子の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用の各種プラントや自動車などから発生するいわゆる「廃熱」を、有用な電気エネルギーに変換する技術として、温度差によって電力を発生することができる熱電変換素子が注目されている。
【0003】
この熱電変換素子の出力性能(電力カーブ)は、熱電変換素子への温度差により変化するという特徴を有している。例えば図3の例からは、熱電変換素子への温度差が大きくなると、熱電変換素子の開放電圧が高くなって、電力カーブのピーク(最大電力点)が増加することが分かる。従って、廃熱の有する熱エネルギーを効率的に利用するためには、熱電変換素子への温度差がどのように変わっても、常に最大電力点又はその近傍において電力を取り出すようにする制御を行う必要がある。
【0004】
このような制御の例として、熱電変換素子の温度差を温度センサで検出し、出力特性テーブルを用いて最大電力点を決定する制御方法が提案されている(特許文献1を参照)。しかしながら、この制御方法では、温度センサが高価であるためコストが増加するという問題があった。
【0005】
そのような問題を解決するために、通常の熱電変換素子の最大電力点は開放電力の約1/2にあるという特徴を利用して、熱電モジュールの出力電流が短絡電流の1/2となるように、熱電モジュールとDC−DCコンバータとの間に設けられたスイッチング素子をオンオフする制御装置が提案されている(特許文献2を参照)。
【0006】
しかしながら、上記の制御装置では温度センサが不要になる代わりに、熱電変換素子ごとにセンサや演算装置などが必要となるため、熱電モジュールを構成する熱電変換素子が多数になると、システムが複雑となってコストが増大してしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−22572号公報
【特許文献2】特開2007−12768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、熱電変換素子から低コストで効率よく電力を取り出すことができる熱電変換素子の制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明の熱電変換素子の制御装置は、熱を電力に変換して出力する熱電変換素子(1)と、前記熱電変換素子(1)に並列接続する2個の直列接続された抵抗(R、R)と、前記2個の抵抗(R、R)のうちの片方の抵抗(R)にかかる電圧を外部からのトリガーのタイミングに合わせてコンデンサ(C)に保持させる電圧ホールド回路(3)と、前記コンデンサ(C)と前記熱電変換素子(1)との差電圧に
応じて前記熱電変換素子(1)からの出力電流を制御する電流制御回路(5)と、前記電圧ホールド回路(3)のトリガーを発するタイミング回路(2)と、前記コンデンサ(C)と前記電流制御回路(5)との間に設けられたPWM発生回路(4)と、を備え、前記タイミング回路(2)が、前記熱電変換素子(1)の開放電圧の発生時において前記トリガーを発して前記コンデンサ(C)に電圧を保持させた後に、その保持された電圧を前記PWM発生回路(4)を通じて前記電流制御回路(5)に出力することを所定の間隔で行い、前記電流制御回路(5)は、前記熱電変換素子(1)と並列に接続されたダイオード(D)及びFETからなるスイッチング素子(St)と、前記熱電変換素子(1)に接続された接続端子(6)の片方に通じるコイル(L)とを備え、前記スイッチング素子(St)をオンオフすることにより、前記熱電変換素子(1)及び前記2個の抵抗(R、R)に流れる電流の大きさを制御する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱電変換素子の制御装置によれば、従来に比べて簡易な回路構成で熱電変換素子の最大電力点を追従する制御を行うので、熱電変換素子から低コストで効率よく電力を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態からなる制御装置の構成を示す回路図である。
図2】タイミング回路からのパルスの形状を示す波形図である。
図3】熱電変換素子の出力特性の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態からなる熱電変換素子の制御装置の回路構成を示す。
【0015】
この制御装置は、熱電変換素子1への温度差が変化した場合でも、常に熱電変換素子1の最大電力点において電力を取り出す最大電力点追従制御を行うものである。
【0016】
制御装置の回路は、熱電変換素子1に並列する2個の直列接続された抵抗R1、R2と、後者の抵抗R2にかかる電圧をタイミング回路2から発せられるトリガーのタイミングに合わせて保持する電圧ホールド回路3と、その電圧ホールド回路3の電圧と熱電変換素子1の出力電圧との差を演算する回路(オペアンプ)7Aとその出力に比例したPWM発生回路4を通じて接続する電流制御回路5とを有している。回路端部の外部接続端子6には、熱電変換素子1で発生した電力を外部機器で使用できるように昇圧又は降圧するコンバータなどが接続される。
【0017】
熱電変換素子1は、自動車や焼却炉などの排ガス経路などに設置され、排ガスが有する熱エネルギーを電気エネルギーである電力に変換する。実際の使用に際しては、個々の熱電変換素子1の起電力が非常に小さいため、複数個をまとめて熱電モジュールを構成させるようにする。
【0018】
トリガーを発するタイミング回路2には、矩形波を発生する発振回路などを用いることができる。電圧ホールド回路3は、コンデンサCとオペアンプ7Aとに接続する切替スイッチSwを出力側に有するオペアンプ7Bから構成されている。電流制御回路5は、熱電変換素子1と並列に接続されたダイオードD及びスイッチング素子Stと、接続端子6の片方に通じるコイルLとから構成されており、FETからなるスイッチング素子Stをオンオフすることにより、熱電変換素子1及び2個の抵抗R1、R2に流れる電流の大きさを制御することができる。
【0019】
このような制御装置における制御動作の内容を以下に説明する。
【0020】
PWM発生回路4を停止して電流制御回路5をオフした状態では、熱電変換素子1の電圧はほぼ開放電圧となる。ここで、抵抗R1にはE×R1/(R1+R2)の電圧が発生している。タイミング回路2のトリガーにより切替スイッチSwをオンにしてコンデンサCに電圧を記憶させると、オペアンプ7BはコンデンサCに記憶した電圧と熱電変換素子1との差電圧を出力する。この差電圧に比例してPWM回路4が駆動することにより、電流制御回路が電流を流して、熱電変換素子1の電圧が降下してE×R1/(R1+R2)になる。
【0021】
電流制御回路5を停止、開放電圧からの狙い電圧をコンデンサCに記憶⇒電流制御開始⇒電流制御回路5を停止、開放電圧からの狙い電圧をコンデンサCに記憶、を繰り返すことにより、熱電変換素子1の熱源温度が変化しても追従しての最大電圧制御が可能になる。
【0022】
このように、従来よりも簡易な回路構成により、熱電変換素子1の最大電力点追従制御を行うことができるので、熱電変換素子1から低コストで効率よく電力を取り出すことができる。また、タイミング回路2から発生されるトリガーを利用して、最大電力点追従を瞬間的に行うので、熱電変換素子1が複数となる熱電モジュールを使用する場合においてもコンバータなどに安定的に電力を供給することができる。
【0023】
制御装置においてタイミング回路2が動作を行う所定の間隔としては、熱エネルギーの変動状態にもよるが、自動車等へ適用する場合には30〜60秒の範囲とすることが望ましい。その場合、タイミング回路2から発せられるパルスは、例えば図2のような大きさの矩形波となる。
【符号の説明】
【0024】
1 熱電変換素子
2 タイミング回路
3 電圧ホールド回路
4 PWM発生回路
5 電流制御回路
6 外部接続端子
7A、7B オペアンプ
図1
図2
図3