特許第6131531号(P6131531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131531
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】カップ型紙容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 3/08 20060101AFI20170515BHJP
   B65D 3/20 20060101ALI20170515BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   B65D3/08
   B65D3/20 A
   B65D81/34 U
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-113312(P2012-113312)
(22)【出願日】2012年5月17日
(65)【公開番号】特開2013-237479(P2013-237479A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古▲瀬▼ 清人
(72)【発明者】
【氏名】飯島 俊司
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−341649(JP,A)
【文献】 特表平10−500085(JP,A)
【文献】 特開昭55−079275(JP,A)
【文献】 特開2001−322621(JP,A)
【文献】 実開平07−026329(JP,U)
【文献】 特開2010−001031(JP,A)
【文献】 米国特許第04546915(US,A)
【文献】 実開昭63−059811(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 3/08
B65D 3/20
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙層と、紙層の両面に設けられた熱可塑性樹脂層と、カップ型紙容器の内面側に相当する、紙層と熱可塑性樹脂層との間に設けられた無機酸化物蒸着フィルムと、を有する厚さが0.6mm以下である積層体からなる1枚の扇形のブランクの胴部シール部がシールされ、4本の縦罫線が折られて、底面部を折り畳まれ、下部が矩形で、上部が広がった胴部が形成されてなるカップ型紙容器であって、
前記ブランクは、胴部下部に罫線を介して順次連設された底面部と底シール部を有し、底面部は、長辺が胴部下部に連接した底面三角板と、底面矩形板と、該底面矩形板の一辺と前記底面三角板の短辺とに連接した底面折込板と、が罫線を介して設けられ、
前記底面三角板の長辺をなす罫線を、胴部側に積層体の厚さの4枚分のオフセット幅だけ張り出した底面コーナーオフセット罫線としたことを特徴とするカップ型紙容器。
【請求項2】
前記底面コーナーオフセット罫線は、胴部側に円弧状に張り出したものであることを特徴とする請求項1に記載のカップ型紙容器。
【請求項3】
前記底面コーナーオフセット罫線は、胴部側に台形状に張り出したものであることを特徴とする請求項1に記載のカップ型紙容器。
【請求項4】
前記オフセット幅は、前記積層体の厚さの4枚分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカップ型紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食料品や飲料等を収納する紙容器に関し、特に電子レンジによる加熱調理に適したカップ型紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食料品や飲料を収納する容器としては、さまざまな材質のさまざまな形状の容器が用いられている。近年においては、地球環境保護意識の高まりを背景にして、再生産可能な資源である紙を用いた容器が特に注目されている。その中でもカップ形状の紙容器は、その使い易さや、作り易さから、本来の紙カップ用途の他に、各種の食料品、飲料等を収納する容器としても広く用いられている。
【0003】
カップ形状の紙容器の一般的な形状としては、図8(A)、(B)に示したように胴部材(200)と底面部材(300)からなり、逆トレー状に成形した底面部材(300)の周縁部(310)に、胴部材(200)の下端部を巻き込んで加熱圧着して、ボトムスリーブ(糸じり)(250)を形成したものが一般的である。胴部材(200)の上端部は、巻き込み成形後に潰してフランジ部(230)を形成し、別に準備した蓋材(図示せず)を剥離可能にシールして密封する。
【0004】
このような上げ底状の紙容器に内容物を入れて電子レンジで加熱すると、胴部材(200)の部分は内容物が直接接しているため、100℃を超えて加熱されることはないが、ボトムスリーブ(250)の部分は、直接内容物に接していないため、電子レンジの特性によっては、100℃以上にまで加熱されて、図8(C)に示したように「焦げ」(400)を生じる現象が発生することがあった。
【0005】
これは、電子レンジのマイクロ波により、紙に含まれるセルロースが加熱されて発熱するためであると考えられている。多くの場合、電子レンジ内には、床面から約5mmの高さにマイクロ波が集中するホットスポットと呼ばれる部分が存在し、この高さはボトムスリーブ(250)の高さに相当する。またボトムスリーブ部分は、幾重にも紙を折り重ねているため、他の部分に比較して紙の量が多く、発熱量も大きくなる。
【0006】
この「焦げ」の発生現象は、電子レンジの特性や、電子レンジ内の置場所などにも関係し、必ずしも常に発生するものではないが、これが、カップ型紙容器を電子レンジ加熱用途に積極的に使用できない理由ともなっていた。
【0007】
特許文献1に記載された電子レンジ用紙カップは、この問題を解決するためになされたものであり、ボトムスリーブが形成されないようにするために、図8(D)に示したように、底面部材(300)を逆トレー状に成形することなく平面状とし、胴部材(200)も底面部材(300)に巻込まずに、90°に折り曲げて潰しただけにすることにより、ボトムスリーブが形成されないようにしたものである。
【0008】
特許文献1に記載された電子レンジ用紙カップは、図8(D)において、底面に折り曲げた胴部材(200)の端部(260)に皺が入りやすいため、底面部材(300)との熱シールが不完全になり、液漏れの原因となる危険性がある。
【0009】
特許文献2に記載された変形ボトム紙カップは、1枚のブランクから形成され、液漏れのないスタッキング適性のある紙カップを目的としてなされたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3953584号公報
【特許文献2】特開2003-341649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に記載された変形ボトム紙カップは、特に電子レンジによる加熱を目的としてなされたものではないが、液漏れの心配がなく、また通常の紙カップのようにボトムスリーブが存在しないため、電子レンジにおける焦げの問題も回避できる可能性があると考えられる。
【0012】
しかし、特許文献2に記載の紙カップは、構造上底面部における紙の重なりが非常に多いため、底面が平坦になりにくく、テーブルに載置した時にぐらぐらして自立安定性が悪いという問題があった。また紙の厚さによっては、電子レンジの加熱によって焦げが発生する可能性もある。
【0013】
本発明の解決しようとする課題は、底面の平坦性が良好であり、しかも電子レンジで直接加熱しても焦げが発生し難いカップ型紙容器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、紙層と、紙層の両面に設けられた熱可塑性樹脂層と、カップ型紙容器の内面側に相当する、紙層と熱可塑性樹脂層との間に設けられた無機酸化物蒸着フィルムと、を有する厚さが0.6mm以下である積層体からなる1枚の扇形のブランクの胴部シール部がシールされ、4本の縦罫線が折られて、底面部を折り畳まれ、下部が矩形で、上部が広がった胴部が形成されてなるカップ型紙容器であって、
前記ブランクは、胴部下部に罫線を介して順次連設された底面部と底シール部を有し、底面部は、長辺が胴部下部に連接した底面三角板と、底面矩形板と、該底面矩形板の一辺と前記底面三角板の短辺とに連接した底面折込板と、が罫線を介して設けられ、
前記底面三角板の長辺をなす罫線を、胴部側に積層体の厚さの4枚分のオフセット幅だけ張り出した底面コーナーオフセット罫線としたことを特徴とするカップ型紙容器である。
【0015】
本発明に係るカップ型紙容器は、1枚のブランクの下部を折り畳んで平坦な底面を形成したので、従来のカップ型容器と異なりボトムスリーブ(糸じり)が存在しないため、電子レンジで加熱した時に、焦げが発生しにくい。
【0016】
また底面を形成する際に、底面部において最も紙厚の厚くなる部分を望む折罫線である底面三角板の長辺をなす底面コーナー罫線を胴部側にオフセット幅だけ張り出して逃がすことにより、底面が平坦に仕上り、容器の安定性、自立性が高まる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、前記底面コーナーオフセット罫線が、胴部側に円弧状に張り出したものであることを特徴とする請求項1に記載のカップ型紙容器である。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、前記底面コーナーオフセット罫線が、胴部側に台形状に張り出したものであることを特徴とする請求項1に記載のカップ型紙容器である。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、前記オフセット幅が、前記積層体の厚さの4枚分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカップ型紙容器である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るカップ型紙容器は、1枚のブランクの下部を折り畳んで平坦な底面を形成したので、ボトムスリーブが存在しない。このため電子レンジで加熱した時に、焦げが発生しにくい。
【0022】
また底面を形成する際に、底面において最も紙厚の厚くなる部分を望む折罫線である、底面三角板の長辺をなす底面コーナー罫線を胴部側にオフセット幅だけ張り出した、底面コーナーオフセット罫線とすることにより、底面が平坦に仕上り、容器の安定性、自立性が高まった。
【0023】
また胴部と底面部が紙層を含むものであるため、断熱性があり、このため金属缶やガラス瓶と比較して加熱時の取扱いにおいて、手が熱くないなどの長所がある。
また、積層体の厚さが、0.6mm以下である場合には、底面部の総厚が5mm以下となるので、一般の電子レンジにおけるホットスポットの高さとの関係において、焦げの発生を防止する効果が高くなる。
【0024】
請求項2または3に記載の発明のように、底面三角板の長辺をなす底面コーナーオフセット罫線が、胴部側に円弧状または台形状に張り出したものである場合には、底面の成形が円滑にできる。
【0025】
また請求項4に記載の発明のように、前記罫線のオフセット幅が、前記積層体の厚さの4枚分である場合に、最も成形性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明に係るカップ型紙容器の一実施態様を示した斜視図である。
図2図2(A)は、図1に示したカップ型紙容器を下から見た状態を示した斜視図である。また図2(B)は、底面矩形板(10)を折り込む前の状態を示した斜視図である。
図3図3は、図1、2に示したカップ型容器のブランクを示した平面模式図である。
図4図4は、図2(A)のX−X’断面を示した断面模式図である。
図5図5は、図2(A)のY−Y’断面を示した断面模式図である。
図6図6は、底面コーナーオフセット罫線の説明図である。
図7図7は、底面コーナーオフセット罫線の説明図である。
図8図8(A)は、従来のカップ状紙容器の構造を示した斜視説明図である。図8(B)は、図8(A)に示した紙容器の部分断面模式図である。図8(C)は、ボトムスリーブ部に「焦げ」が発生した状態を示した斜視図である。図8(D)は、従来の他の形状の紙容器の部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面に従って、本発明に係る紙容器について詳細に説明する。
図1は、本発明に係るカップ型紙容器の一実施態様を示した斜視図である。また図2(A
)は、図1に示したカップ型紙容器を下から見た状態を示した斜視図である。また図2(B)は、片方の底面三角板(8)を開いた状態を示した斜視図である。また図3は、図1、2に示したカップ型容器のブランクを示した平面模式図である。
以下これらの図面を参照しながら説明する。
【0029】
本発明に係るカップ型紙容器(1)は、紙層と、紙層の両面に設けられた熱可塑性樹脂層とを有する積層体からなる1枚の扇形のブランク(BL)の胴部シール部(6)をシールし、4本の縦罫線(a、b、c、d)を折り、底面部(4)を折り畳んで、下部が矩形で、上部が広がった胴部(3)を形成してなるカップ型紙容器である。
【0030】
ブランク(BL)は、胴部(3)の下部に罫線を介して順次連設された底面部(4)と底シール部(5)を有する。
【0031】
底面部(4)は、長辺が胴部下部に連接した底面三角板(7、8)と、底面矩形板(9、10)と、底面矩形板の一辺と底面三角板の短辺とに連接した底面折込板(11、12)と、が罫線を介して設けられている。
【0032】
本発明に係るカップ型紙容器(1)は、底面三角板(7、8)の長辺をなす罫線を、胴部側にオフセット幅(OS)だけ張り出した底面コーナーオフセット罫線(e、g)としたことを特徴とする。
【0033】
本発明に係るカップ型紙容器(1)は、底面が、平面状であり、通常の紙カップのようなボトムスリーブが存在しない。このため電子レンジで加熱した時に、焦げが発生しにくい。
【0034】
本発明に係るカップ型容器(1)は、少なくとも胴部(3)と底面部(4)が紙層を含むものであるため、断熱性があり、このため金属缶やガラス瓶と比較して加熱時の取扱いにおいて、手が熱くないなどの長所がある。また内容物が冷めにくいという長所もある。
【0035】
また底面を形成する際に、最も紙厚の厚くなる部分を望む折罫線である底面コーナーオフセット罫線(e、g)をそれぞれ胴部(3)側にオフセット幅(OS)だけ張り出して逃がすことにより、折りが安定し、底面が平坦に仕上り、容器の安定性、自立性が高まった。
【0036】
図1〜3を参照しながら、本発明に係るカップ型紙容器の成形手順について説明する。図3の平面ブランク図は、容器の外側となる、積層体の表面側から見た図である。実線は外形線を、細実線は山折罫線を、一点鎖線は谷折罫線を、点線は途中工程においては折られるが、最終仕上り状態においては、折られない状態となる罫線をそれぞれ示している。
【0037】
まずブランク(BL)を巻き回して左側の胴部シール部(6)と右側端部を重ねてシールし、筒状体を形成する。この例では、左右の胴部端部の表裏面をシールしているが、裏面同士を合掌シールしても良い。裏面同士を合掌シールしてから折り曲げて胴部に沿わせることにより、容器の内面に積層体の端部が露出しない構造とすることができる。
【0038】
次に、底面部(4)を折り畳んで底面を成形する。まず底面コーナー罫線(f、h)、底面コーナーオフセット罫線(e、g)と胴部シール部折込罫線(m)、底面折込罫線(n、o、p)、底シール部縦折罫線(u、v)を山折りし、同時に底面三角板折返し罫線(i、j、k、l)を谷折りして底面折込板(11、12)を底面三角板(7、8)の上に折り込みながら底面を形成する。
【0039】
底シール部(5)を合掌シールした後、底シール部折込罫線(r)を180°谷折りして底シール部を底面に接着させ、平坦な底面を得る。この時、底面矩形板(10)が底面の大部分を形成する。
【0040】
図4は、図2(A)のX−X’断面を示した断面模式図である。この断面位置は、底面の中央よりも底面コーナー罫線(f)側に少しずれた位置であり、最も積層体の重なりが多い位置となっている。図4では、底面コーナーオフセット罫線(e)の部分で8枚、底面コーナーオフセット罫線(g)の部分で7枚の積層体が積層されている。
【0041】
図5は、図2(A)のY−Y’断面を示した断面模式図である。この断面位置も、底面の中央よりも底面コーナーオフセット罫線(e)側に少しずれた位置であり、最も積層体の重なりが多い位置となっている。図5では、最大で7枚の積層体が積層されている。
【0042】
底面コーナー罫線(f、h)部分では、通常の直線的な折罫線でも円滑な成形ができるが、底面コーナーオフセット罫線(e、g)においては、罫線の下における積層体の集積が多くしかも偏った形で存在するため、通常の直線的な折罫線では、平坦な底面が形成し難い。
【0043】
発明者は、図6、7に示したように、この底面コーナー罫線を胴部側にオフセット幅(OS)だけ張り出して、底面コーナーオフセット罫線(e、g)とすることにより、平坦な底面が容易に成形できることを見出したものである。
【0044】
図6の例では、底面コーナーオフセット罫線(e)は、通常の直線状の罫線位置から円弧状に張り出したものである。オフセット幅(OS)については、積層体の厚さの2枚分から8枚分程度が好ましく、4枚分程度が最も好ましい結果が得られることが分かった。
【0045】
図7に示した例では、底面コーナーオフセット罫線(e)は、通常の直線状の罫線位置から台形状に張り出したものである。この場合の最適なオフセット幅(OS)も図6の場合と同様である。
【0046】
このように、本構造の紙容器においては、底面部における積層体の重積が多いため、従来の機械的な罫線構造では、平坦な底面を形成することができなかったのであるが、底面コーナー罫線のうち、底面三角板(7、8)の長辺をなす位置の2つを胴部側に張り出した底面コーナーオフセット罫線(e、g)とすることにより、底面の平坦性が改善されることを見出したものである。
【0047】
カップ型紙容器(1)の開口部は、通常カールした後に押し潰してフランジ部(2)とする。フランジ部(2)には、任意の蓋材を熱シールして密封容器とすることができる。開口部をフランジ部とせずにカールした状態で留め、単なる紙カップとして使用してもよい。
【0048】
本発明に係るカップ型紙容器(1)に用いる積層体としては、紙層の表裏面に熱可塑性樹脂層を設けたものの他に、紙層と容器の内面側の熱可塑性樹脂層との間に、ガスバリア層を設けたものも使用できる。ガスバリア層が存在することにより、容器に内容物を充填した後の保存性が向上する。ガスバリア層の材質を適宜選択することにより、常温長期保存が可能な製品とすることも可能となる。
【0049】
積層体の厚さとしては、底面部の重積を考慮して、0.6mm以下であることが望ましい。積層体の厚さが0.6mm以下であれば、底面部の厚さが電子レンジにおけるホットスポットの高さである5mmを超えないようにすることができる。
【0050】
紙層としては、通常のカップ原紙の他、白ボール紙、コートボール紙、アイボリー紙等の坪量160g/m〜400g/m程度の紙が使用できる。
【0051】
熱可塑性樹脂層としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
【0052】
ガスバリア層の材質としては、電子レンジによる加熱を前提として、ガスバリア性のプラスチックフィルムや無機酸化物蒸着フィルム等の、金属箔以外の材料を用いることが好ましい。
【0053】
ガスバリア性フィルムとしては、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ガスバリア性ナイロンフィルム、ガスバリア性ポリエチレンテレフタレートフィルム等のガスバリア性フィルムや、PETフィルム等に酸化アルミニウムや酸化珪素等の無機酸化物を蒸着させた無機酸化物蒸着フィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデンコーティング、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などのガスバリアコーティング層などを用いることができる。
【0054】
以下本発明に係る紙容器について実施例に基づいて説明するが、本発明に係る紙容器は、これらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0055】
坪量260g/mのカップ原紙の表面に絵柄を印刷した後、裏面に、(ポリエチレン12μm/シリカ蒸着PET12μm/低密度ポリエチレン60μm)の積層体を接着した後、押出機を用いて、表面に厚さ20μmの中密度ポリエチレン(MDPE)層を形成した。これを抜抜型を用いて罫線を入れ、図3に示したようなブランクを作成した。
【0056】
積層体の厚さは、0.4mmであり、ブランクにおけるオフセット幅は、0.8mmとした。
【0057】
得られたブランクを、成形機によって、底面部を成形し、図1図2に見られるような形状のカップ型紙容器を作製した。
【0058】
紙容器を通常のカップ充填ラインにのせ、液体を収納して蓋材を熱シールした。
【0059】
包装体の、蓋を一部開封し、電子レンジによって加熱すると、容器が破裂することもなく、また焦げが発生することもなかった。
【実施例2】
【0060】
積層体の構成を内側から順にLDPE、30μm/260gカップ原紙/シリカ蒸着PET、12μm/LDPE、30μmの構成とした。この積層体を用いてブランクを作成し、図1図2に示した構造の紙容器を成形した。なお蓋材としては、LDPE、30μm/シリカ蒸着PET、12μm/延伸ナイロン、25μm/LDPE、30μmの構成のものを使用した。それ以外は、実施例1と同様である。
【0061】
容器にポタージュスープを無菌充填した。得られた包装体は、常温保存が可能であり、使用時には、蓋材を一部剥がして蒸気抜き孔を開けた後、直接電子レンジで加熱することができた。容器が破裂したり、焦げが発生することもなかった。
【符号の説明】
【0062】
1・・・カップ型紙容器
BL・・・ブランク
2・・・フランジ部
3・・・胴部
4・・・底面部
5・・・底シール部
6・・・胴部シール部
7、8・・・底面三角板
9、10・・・底面矩形板
11、12・・・底面折込板
OS・・・オフセット幅
a、b、d、d・・・縦罫線
f、h・・・底面コーナー罫線
i、j、k、l・・・底面三角板折返し罫線
e、g・・・底面コーナーオフセット罫線
m・・・胴部シール部折込罫線
n、o、p・・・底面折込罫線
q、s・・・底シール部連れ折り罫線
q’、s’・・・底シール部罫線
r・・・底シール部折込罫線
r’・・・底シール部罫線
t、u、v、w・・・底シール部縦折罫線
200・・・胴部材
230・・・フランジ部
250・・・ボトムスリーブ
260・・・脚部
300・・・底面部材
310・・・周縁部
400・・・焦げ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8