特許第6131557号(P6131557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131557
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20170515BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170515BHJP
   H01M 2/18 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   H01M10/0585
   H01M10/052
   H01M2/18 Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-223190(P2012-223190)
(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-75305(P2014-75305A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】奥田 元章
(72)【発明者】
【氏名】南形 厚志
(72)【発明者】
【氏名】濱口 陽平
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−252023(JP,A)
【文献】 特開2012−178326(JP,A)
【文献】 特開2004−014528(JP,A)
【文献】 特開2011−165352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04−10/0587
H01M 2/14− 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部にタブが突出して設けられ、両面に正極活物質層を有する正極電極と、前記正極電極の一方の面を覆う第1セパレータと、前記正極電極の他方の面を覆う第2セパレータと、負極電極と、が積層されて構成された電極組立体を備えたリチウムイオン二次電池において、
前記タブと、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータとが前記端部に沿って溶着された第1溶着部と、
前記第1セパレータと前記第2セパレータとが溶着された第2溶着部と、
を備え、
前記第1溶着部は、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータにおける前記タブと積層方向に対向する第1領域において連続的に形成されるとともに、前記タブの幅全体に亘って形成されており、
前記第2溶着部は、前記第1領域以外の第2領域において断続的に複数形成されており、
記タブにおける前記正極電極の端部から突出した領域の基端側の部位には前記正極活物質層が形成されており、
前記タブに形成された前記正極活物質層の端部は、前記第1溶着部と重なることを特徴とするリチウムイオン二次電池
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、走行用モータへの供給電力を蓄える蓄電装置としての二次電池が搭載されている。二次電池は、例えば端部にタブが突出して設けられた正極電極及び負極電極がセパレータを介して積層されて構成された電極組立体を備えている。また、例えば特許文献1には、第1電極としての正極電極の両側に2枚のセパレータを配置して、正極電極の周囲を熱溶着する構成について記載されており、特に各セパレータにおいて正極タブ側の部位全体を線状に熱溶着することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−252023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、正極タブ側の部位全体を線状に熱溶着する構成においては、セパレータのシワの発生が懸念される。また、上記のような正極電極を2枚のセパレータで収容する電極組立体においては、セパレータに対する正極電極の位置ずれの抑制が求められる。
【0005】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、セパレータに対する正極電極の位置ずれを好適に抑制しつつ、セパレータにおけるシワの発生を抑制することができるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、端部にタブが突出して設けられ、両面に正極活物質層を有する正極電極と、前記正極電極の一方の面を覆う第1セパレータと、前記正極電極の他方の面を覆う第2セパレータと、負極電極と、が積層されて構成された電極組立体を備えたリチウムイオン二次電池において、前記タブと、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータとが前記端部に沿って溶着された第1溶着部と、前記第1セパレータと前記第2セパレータとが溶着された第2溶着部と、を備え、前記第1溶着部は、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータにおける前記タブと積層方向に対向する第1領域において連続的に形成されるとともに、前記タブの幅全体に亘って形成されており、前記第2溶着部は、前記第1領域以外の第2領域において断続的に複数形成されており、前記タブにおける前記正極電極の端部から突出した領域の基端側の部位には前記正極活物質層が形成されており、前記タブに形成された前記正極活物質層の端部は、前記第1溶着部と重なることを特徴とする。
【0007】
かかる発明によれば、第2溶着部によって各セパレータが連結され、第1溶着部によってタブと各セパレータとが連結されている。これにより、各セパレータ間の位置ずれが抑制されているとともに、セパレータに対する正極電極の位置ずれが抑制されている。
【0008】
ここで、各溶着部は熱処理によって形成されることが想定される。この場合、熱処理によって各セパレータが熱収縮して、各セパレータにシワが発生することが考えられる。一方、正極電極とセパレータとの位置ずれを抑制する観点に着目すれば、タブとセパレータとの溶着強度は高い方が好ましい。
【0009】
これに対して、本発明によれば、第1溶着部はタブの幅全体に亘って連続的に形成されている一方、第2溶着部は断続的に複数形成されている。これにより、タブとセパレータとの溶着強度を確保することを通じてセパレータに対する正極電極の位置ずれを好適に抑制しつつ、各溶着部を設けることに起因するシワの発生を抑制することができる
また、前記タブにおける前記正極電極の端部から突出した領域の基端側の部位には前記正極活物質層が形成されており、前記タブに形成された前記正極活物質層の端部は、前記第1溶着部と重なる。かかる発明によれば、正極電極全体に正極活物質層が形成されるようにする結果、タブの基端側の部位に正極活物質層が形成されている構成において、正極活物質層の端部が第1溶着部と重なる。当該第1溶着部は、溶着に係る熱処理によって電気伝導に係るリチウムイオンの移動が規制されている。これにより、正極電極全体に正極活物質層を形成することにより充放電に寄与する領域の拡大を図りつつ、タブに形成された正極活物質層に起因する電気伝導に係るリチウムイオンの析出物の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、セパレータに対する正極電極の位置ずれを好適に抑制しつつ、セパレータにおけるシワの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】二次電池の斜視図。
図2】電極組立体の分解斜視図。
図3】セパレータ、負極電極、正極電極の順に重ねた場合の正面図。
図4】第1溶着部及び第2溶着部の周辺を示す部分拡大図。
図5】(a)は5a−5a線断面図であり、(b)は5b−5b線断面図。
図6】比較例としての正極電極の正面図。
図7】別例の第1溶着部を示す部分拡大図。
図8】(a)は別例の正極収容体を示す斜視図であり、(b)は別例の正極収容体の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、蓄電装置について図1図5を用いて説明する。本蓄電装置は、車両(自動車及び産業用車両)に搭載されており、車両に搭載された走行用モータ(電動機)を駆動するのに用いられる。
【0018】
図1に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、リチウムイオン二次電池であり、その外郭を構成する金属製のケース11を備えている。ケース11は、四角箱状の容器12と、容器12の開口部分を塞ぐ矩形平板状の蓋13とからなる。このため、二次電池10は、その外郭が角型をなしている。ケース11には、電極組立体14及び電解質としての電解液(図示略)が収容されている。
【0019】
二次電池10は、ケース11外からアクセス可能な正極端子15及び負極端子16を備えている。正極端子15は、絶縁リング17によって絶縁された状態でケース11を貫通している。正極端子15の一部はケース11外に露出しつつ、別の一部はケース11内にある。負極側についても同様に、負極端子16は、絶縁リング17によって絶縁された状態でケース11を貫通している。
【0020】
図2に示すように、電極組立体14は、第1電極としての正極電極21と第2電極としての負極電極22とが、電気伝導に係るイオン(リチウムイオン)が通過可能な多孔質膜で形成された一対のセパレータ23,24を介して積層されて構成されている。各電極21,22及び各セパレータ23,24はそれぞれ、矩形のシート状である。
【0021】
正極電極21は、矩形状に形成された正極金属箔(例えばアルミニウム箔)21aと、当該正極金属箔21aの両面全体に形成された正極活物質層21bと、を有する。負極電極22は、正極金属箔21aよりも一回り大きく形成された矩形状の負極金属箔(例えば銅箔)22aと、当該負極金属箔22aの両面全体に形成された負極活物質層22bと、を有する。
【0022】
図3に示すように、負極電極22は、正極電極21よりも一回り大きく形成されており、詳細には負極電極22の隣り合う2辺のそれぞれの長さは、正極電極21の隣り合う2辺の対応する長さよりも長く設定されている。そして、負極活物質層22bは、正極活物質層21b全体を覆うことが可能となるように、正極活物質層21bよりも大きく形成されている。
【0023】
各セパレータ23,24は同一形状であって、正極電極21及び負極電極22よりも一回り大きく形成されている。詳細には、各セパレータ23,24の隣り合う2辺のそれぞれの長さは、負極電極22の隣り合う2辺の対応する長さよりも長く設定されている。つまり、各セパレータ23,24は、各電極21,22をオーバーラップして覆うことが可能な大きさに形成されている。
【0024】
電極組立体14を構成している状態において、正極活物質層21bは負極活物質層22bによって覆われ、且つ、正極電極21及び負極電極22は各セパレータ23,24によって覆われている。
【0025】
図2及び図3に示すように、正極電極21の端部21cには、正極タブ31が突出して設けられている。正極タブ31は、端部21cから、正極金属箔21aの一部が突出することによって形成されている。正極タブ31は、正極タブ31の突出方向と直交する方向に幅を有している。なお、突出方向と直交する方向は正極電極21の端部21cに沿う方向とも言える。
【0026】
正極タブ31の一部、詳細には突出方向の基端側の部位には、正極活物質層21bが形成されている一方、正極タブ31のその他の部位には正極活物質層21bが形成されておらず、金属部分が露出している。
【0027】
負極電極22の端部22cには、負極タブ32が突出して設けられている。負極タブ32は、端部22cから、負極金属箔22aの一部が突出することによって形成されている。負極タブ32は、突出方向の基端側の部位に負極活物質層22bが形成されている一方、その他の部位は負極活物質層22bが形成されておらず、金属部分が露出している。
【0028】
なお、正極電極21の隣り合う2辺のそれぞれの長さは、正極タブ31を除く長さであり、負極電極22の隣り合う2辺のそれぞれの長さは、負極タブ32を除く長さである。
図2に示すように、各電極21,22は、各タブ31,32の同一極性同士が積層方向に列状に配置される一方、異なる極性同士が積層方向に並ばないよう重なっている。そして、図1に示すように、各正極タブ31は、電極組立体14の積層方向の一端側に寄せて集められており、その集められた状態で上記一端側とは反対側の他端側に向けて折り返されている。各負極タブ32も同様に、電極組立体14の積層方向の一端側に集められた状態で他端側に向けて折り返されている。そして、電極組立体14は、各タブ31,32が形成されている側の部位と、各端子15,16が取り付けられている蓋13とが対向するようにケース11内に収容されている。
【0029】
各正極タブ31と正極端子15とは、金属で形成された正極導電部材51に溶接されることによって、電気的に接続されている。また、各負極タブ32と負極端子16とは、金属で形成された負極導電部材52に溶接されることによって、電気的に接続されている。これにより、各端子15,16にアクセスすることにより、電極組立体14の電力をケース11外に取り出すことができるとともに、電極組立体14に対して電力を供給することが可能となっている。
【0030】
図2に示すように、正極電極21、第1セパレータ23、及び第2セパレータ24はユニット化されて正極収容体60を構成している。当該正極収容体60について以下に詳細に説明する。
【0031】
正極収容体60は、各セパレータ23,24によって正極電極21が挟まれることによって形成されている。この場合、正極電極21の一方の面が第1セパレータ23によって覆われ、他方の面が第2セパレータ24によって覆われている。
【0032】
ここで、各セパレータ23,24が正極電極21よりも大きく形成されているため、正極収容体60において、各セパレータ23,24の一部は、積層方向から見て、正極電極21の各端部21c〜21fから外側にはみ出している。つまり、各セパレータ23,24は、積層方向から見て、正極電極21の各端部21c〜21fからはみ出した各はみ出し部61,62を備えている。各はみ出し部61,62は、各セパレータ23,24の周縁に沿って形成されている。
【0033】
正極収容体60は、正極タブ31と第1セパレータ23及び第2セパレータ24とが溶着された第1溶着部71を備えているとともに、第1セパレータ23と第2セパレータ24とが溶着された第2溶着部72を備えている。さらに、正極収容体60は、各セパレータ23,24を連結するものとして第3溶着部73を備えている。
【0034】
図4に示すように、第1溶着部71は、各はみ出し部61,62のうち正極タブ31と対向する第1領域Z1において、正極電極21の端部21cに沿う方向に連続的に形成されている。詳細には、第1溶着部71は、第1領域Z1全体に対して、最適な面圧を付与した状態で熱処理することによって形成されている。この場合、第1溶着部71は、正極タブ31の幅全体に亘って形成されており、第1領域Z1全体に形成されている。なお、第1領域Z1が面であることに着目すれば、各セパレータ23,24と、正極タブ31とは面溶着されていると言える。
【0035】
ここで、図4に示すように、正極活物質層21bの端部21bbは、第1領域Z1内に配置されており、第1溶着部71と重なる。このため、図5(a)に示すように、第1溶着部71は、正極タブ31における金属部分が露出した部位と各セパレータ23,24とを連結するとともに、正極活物質層21bと各セパレータ23,24とを連結している。なお、図示の都合上、図5(a)については、第1セパレータ23がある状態の断面図を示す。
【0036】
図4に示すように、第2溶着部72は、各はみ出し部61,62のうち正極電極21の端部21cよりも正極タブ31の突出方向の先端側であって第1領域Z1以外の第2領域Z2に形成されている。第2溶着部72は、第2領域Z2において正極電極21の端部21cに沿う方向に所定の間隔を隔てて断続的に複数形成されている。図5(b)に示すように、第2溶着部72は、各セパレータ23,24に対して、最適な面圧を付与した状態で熱処理することによって形成されており、各セパレータ23,24を連結している。
【0037】
なお、正極電極21の端部21cよりも突出方向の先端側にある各セパレータ23,24の端部23a,24aに着目すれば、第1溶着部71は、第1領域Z1において上記端部23a,24aに沿って連続的に形成されており、第2溶着部72は、第2領域Z2において上記端部23a,24aに沿って断続的に複数形成されているとも言える。
【0038】
第3溶着部73について説明すると、図2に示すように、第3溶着部73は、各はみ出し部61,62のうち、各溶着部71,72とは反対側の部位、詳細には正極電極21の端部21cと対向する端部21dから当該端部21dと直交する方向にはみ出した部位に設けられている。第3溶着部73は、各セパレータ23,24に対して最適な面圧を付与した状態で、熱処理することによって形成され、正極電極21の端部21cと対向する端部21dに沿う方向に所定の間隔を隔てて断続的に複数配置されている。正極電極21は、第1溶着部71及び第2溶着部72と、第3溶着部73とによって、正極タブ31の突出方向に沿う方向から挟まれている。
【0039】
次に本実施形態の作用について説明する。
第2溶着部72及び第3溶着部73によって、正極電極21が各セパレータ23,24からはみ出すことが規制されており、正極収容体60内に正極電極21が収容されている。この場合、第2溶着部72及び第3溶着部73は断続的に複数形成されているため、直線的に形成されている構成と比較して、熱処理に伴う各セパレータ23,24の熱収縮が低減されており、その分だけ各セパレータ23,24においてシワが発生しにくい。
【0040】
一方、第1溶着部71によって、正極収容体60内における正極電極21と各セパレータ23,24との位置ずれが規制されている。この場合、第1溶着部71は連続的、詳細には第1領域Z1全体に形成されているため、第1溶着部71による溶着強度が十分に確保されている。
【0041】
また、第1溶着部71においては、溶着に係る熱処理によってリチウムイオンが通過可能な孔が塞がれており、リチウムイオンの通過が規制されている。このため、図4に示すように、第1溶着部71において、正極活物質層21bと負極活物質層22bとが対向していない領域Zxが形成されている場合であっても、リチウムの析出が発生しにくい。
【0042】
以上詳述した本実施形態によれば以下の優れた効果を奏する。
(1)正極タブ31と、第1セパレータ23及び第2セパレータ24とが溶着された第1溶着部71、及び第1セパレータ23と第2セパレータ24とが溶着された第2溶着部72を設けた。そして、第1溶着部71を連続的に形成する一方、第2溶着部72を断続的に複数形成した。これにより、各セパレータ23,24に対する正極電極21の位置ずれの抑制と、各セパレータ23,24のシワの発生の抑制との両立を図ることができる。
【0043】
詳述すると、各セパレータ23,24のシワは、各セパレータ23,24の熱収縮に起因して発生する。このため、各セパレータ23,24のシワの発生を抑制する観点に着目すれば、熱処理を行う箇所の面積を狭くするべく、溶着箇所は断続的に複数形成される方が好ましい。一方、各セパレータ23,24に対する正極電極21の位置ずれを好適に抑制することに着目すれば、第1溶着部71の溶着面積が広い方が好ましい。特に、各セパレータ23,24と正極タブ31との溶着強度は、各セパレータ23,24同士の溶着強度と比較して低いため、第1溶着部71の溶着面積は大きい方が好ましい。
【0044】
これに対して、本実施形態によれば、第2溶着部72は断続的に複数形成されている一方、第1溶着部71は連続的に形成されている。詳細には、第1溶着部71は面溶着となっている。これにより、上記に示した両立を図ることができる。なお、既に説明した通り、第2溶着部72は各セパレータ23,24同士の溶着であるため、その溶着強度は高い。このため、第2溶着部72が断続的に複数形成されている場合であっても、所望の溶着強度を確保することができる。
【0045】
(2)特に、溶着するべく熱処理を行う構成では、最適な面圧と加熱が必要となる。このため、溶着面積が広い場合には、溶着に必要な面圧を確保するために大きな荷重が要求される。となると、自ずと溶着させるための設備が大型なものとなり、コストが高くなり易い。これに対して、本実施形態によれば、面溶着する箇所は第1領域Z1に限定されているため、溶着に必要な面圧を確保し易くなっている。これにより、溶着に係るコストを削減することができ、それを通じて二次電池10のコストを削減することができる。
【0046】
(3)正極タブ31の一部に正極活物質層21bが形成される構成とした。これにより、正極金属箔21aの両面全体に正極活物質層21bを形成することができ、各活物質層21b,22bが対向する領域を広くすることができる。かかる構成において、正極タブ31に形成される正極活物質層21bの端部は、リチウムイオンの移動が規制された第1溶着部71と重なる。これにより、正極タブ31の一部に正極活物質層21bを形成することに起因したリチウムの析出を抑制することができる。
【0047】
詳述すると、通常、積層方向において正極活物質層21bに負極活物質層22bと対向しない非対向部が形成されることを抑制するべく、負極活物質層22bは、正極活物質層21bを覆うことが可能となるよう正極活物質層21bよりも大きく形成されている。また、例えば、図6に示すように、正極電極121においては、正極タブ31の基端側の部位に正極活物質層121bが形成されないように、正極活物質層121bの端部121bbは、正極電極121の端部121cよりも正極タブ31の突出方向とは反対方向に位置している。このため、正極電極121の端部121cに沿って、正極活物質層121bが形成されておらず正極金属箔121aが露出した正極未塗工部121dが形成される。この正極未塗工部121dが形成されている箇所は、充放電に寄与しない領域である。この場合、正極未塗工部121dが形成されず、且つ、正極タブ31に正極活物質層121bが形成されないように正極活物質層121bを形成することも考えられるが、そのような高い精度で正極活物質層121bを形成するのは、製造工程上困難である。
【0048】
これに対して、本実施形態によれば、第1溶着部71においてはリチウムイオンの移動が規制されている。これにより、正極金属箔21a全体に正極活物質層21bが形成されるようにした結果、正極タブ31の基端側の部位に正極活物質層21bが形成されたとしても、正極活物質層21bの端部21bbが第1溶着部71と重なっているため、リチウムは析出しない。したがって、正極金属箔21a全体に正極活物質層21bを形成することによる充放電に寄与する領域の拡大と、それに伴って生じ得るリチウムの析出の抑制との両立とを図ることができる。
【0049】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、第1溶着部71は連続的に形成されていたが、これに限られない。例えば、図7に示すように、正極電極21の端部21cに沿って断続的に複数形成された第1溶着部101を設けてもよい。この場合、第1溶着部101同士の間隔L1を、第2溶着部72同士の間隔L2よりも短くすればよい。なお、実施形態の第1溶着部71は、間隔L1が「0」のものであるとも言える。
【0050】
また、上記構成においては、第1領域Z1においてリチウムイオンの移動が可能な箇所が存在する。この場合、リチウムの析出が発生しないように、正極活物質層21bの端部21bbを、正極電極21の端部21cよりも突出方向とは反対方向に配置するとよい。
【0051】
○ 実施形態では、各はみ出し部61,62において、第1溶着部71及び第2溶着部72の反対側には、第3溶着部73が断続的に複数設けられていたが、これに限られない。例えば連続的に形成された溶着部を設けてもよいし、テープ、接着剤、又は縫合により連結する構成としてもよい。
【0052】
○ 実施形態では、第2領域Z2として、各はみ出し部61,62のうち正極電極21の端部21cよりも正極タブ31の突出方向の先端側であって第1領域Z1以外の領域を採用したが、これに限られない。第2領域は、各はみ出し部61,62のうち第1領域Z1以外の領域であればよい。例えば各はみ出し部61,62のうち正極電極21の端部21e又は端部21fからはみ出した領域を第2領域とし、その第2領域にて溶着部を断続的に複数形成してもよい。換言すれば、各セパレータ23,24を溶着する第2溶着部は、各はみ出し部61,62のうち第1領域Z1以外の領域の少なくとも一部に断続的に複数形成されていればよい。なお、第2領域は、第1領域Z1とは異なる領域とも言える。
【0053】
○ 実施形態では、2枚のセパレータ23,24によって正極電極21を覆う構成としたが、これに限られない。例えば、図8(a)及び図8(b)に示す正極収容体110は、一体のセパレータ111を折り曲げ、そのセパレータ111で正極電極21を挟むことによって構成されている。この場合、セパレータ111を折り曲げることによって形成された折り曲げ部112が、正極電極21の一方の面を覆う部位と、正極電極21の他方の面を覆う部位とを連結するものとして機能する。すなわち、正極電極21の両面を覆うことができれば、「第1セパレータ」と「第2セパレータ」とは別体であっても1の部材であってもよい。
【0054】
○ 実施形態では、各セパレータ23,24を覆う対象は正極電極21であったが、これに限られず、負極電極22としてもよい。
○ 実施形態では、第2溶着部72は、第2領域Z2全体に亘って断続的に複数形成されていたが、これに限られず、第2領域Z2の一部に亘って断続的に複数形成されている構成としてもよい。
【0055】
○ 実施形態では、正極活物質層21bは、正極電極21の両面に形成されていたが、これに限られず、少なくとも一方の面に形成されていればよい。同様に、負極活物質層22bは、負極電極22の少なくとも一方の面に形成されていればよい。
【0056】
○ 実施形態では、正極タブ31はその両面で、各セパレータ23,24と溶着されていたが、これに限られず、少なくとも一方のセパレータと接合されていればよい。
○ 実施形態では、二次電池10は車両に搭載されている構成としたが、これに限られず、他の装置に搭載される構成としてもよい。
【0057】
○ 本発明を、電気二重層コンデンサ等の他の蓄電装置に適用してもよい。
○ 実施形態では、二次電池10はリチウムイオン二次電池であったが、これに限られず、ニッケル水素等の他の二次電池であってもよい。要は、正極活物質層と負極活物質層との間をイオンが移動するとともに電荷の授受を行うものであればよい。
【0058】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)活物質層を有するとともに端部にタブが突出して設けられた第1電極と、前記第1電極の一方の面を覆う第1セパレータと、前記第1電極の他方の面を覆う第2セパレータと、前記第1電極とは異なる極性の第2電極と、が積層されて構成された電極組立体を備えた蓄電装置において、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータにおける前記タブと積層方向に対向する第1領域は、電気伝導に係るイオンの通過が規制されており、前記第1領域内に前記活物質層の端部が配置されていることを特徴とする蓄電装置。
【0059】
(ロ)端部にタブが突出して設けられた第1電極と、前記第1電極の一方の面を覆う第1セパレータと、前記第1電極の他方の面を覆う第2セパレータと、前記第1電極とは異なる極性の第2電極と、が積層されて構成された電極組立体を備えた蓄電装置において、前記タブと、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータの少なくとも一方とが前記端部に沿って溶着された第1溶着部と、前記第1セパレータと前記第2セパレータとが溶着された第2溶着部と、を備え、前記第1溶着部は、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータにおける前記タブと積層方向に対向する第1領域において1又は複数形成されており、前記第2溶着部は、前記第1領域以外の第2領域において断続的に複数形成されており、前記第1溶着部の間隔は前記第2溶着部の間隔よりも狭いことを特徴とする蓄電装置。
【0060】
なお、「第1溶着部の間隔」とは「0」を含むものである。すなわち、前記第1溶着部の間隔が「0」である場合には、第1電極の端部に沿って連続的に形成された第1溶着部が1つあることを意味し、第1溶着部の間隔が「0」ではない場合には、第1溶着部が断続的に複数あることを意味する。
【符号の説明】
【0061】
10…二次電池(蓄電装置)、14…電極組立体、21…正極電極、21b…正極活物質層、21bb…正極活物質層の端部、23…第1セパレータ、24…第2セパレータ、31…正極タブ、60…正極収容体、71…第1溶着部、72…第2溶着部、73…第3溶着部、101…別例の第1溶着部、121…比較例としての正極電極、Z1…第1領域、Z2…第2領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8