(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような綴じ機は、切起片を折曲して、切起片の先端部を冊子の反対面まで挿通し係止することで、複数の用紙を綴じ込む。したがって、複数の用紙を綴じた綴じ部は、切起片が重なる分、他の部分に比べて厚く、切起片の折曲側に盛り上がる。挿入口には、刃ユニットが進入する一方の面とは反対側の他方の面、すなわち冊子の載置面に、刃ユニットの先端部が一時的に進入する貫通孔が形成されている。したがって、冊子を綴じ、挿入口より冊子を引き抜くとき、切起片が折曲されて冊子の他の部分より厚くなった綴じ部が、刃ユニットの先端部が一時的に進入した貫通孔に引っ掛かることがある。
【0006】
特許文献1では、挿入口内の貫通孔に冊子の綴じ部が引っ掛かることを防止するため、載置面であって、貫通孔より手前に一対の突起部を形成している。一対の突起部は、貫通孔に綴じ部が引っ掛かった冊子を載置面から引き離し、冊子を挿入口から引き出す際の引っかかりが無くなるようにしている。
【0007】
しかしながら、突起部を設けた場合、綴じ部は、冊子の他の部分より厚く、突起部が設けられた部分を通ることはできない。したがって、突起部が貫通孔に対して近い位置に設けられている場合には、突起部と突起部との間の間隔が狭いことから、冊子の引き抜き可能範囲が狭くなってしまう。
【0008】
一方で、突起部と突起部との間の間隔を広くしたときには、冊子の引き抜き可能範囲を広くすることができる。しかしながら、突起部と突起部との間で冊子が撓みよれることがある。そうすると、冊子の他の部分より厚い綴じ部は、貫通孔に引っ掛かってしまうことがある。
【0009】
また、挿入口には、更に、冊子を構成する用紙の挿入枚数を規制する挿入規制突起部を形成することもある。しかしながら、挿入規制突起部も、貫通孔より手前に形成したときには、挿入規制突起部を避けるようにしか冊子を引き出すことができなくなる。
【0010】
このような綴じ機にあっては、折曲された切起片が再度開かないようにするため、また、切起片が折曲された綴じ部を、嵩張らないようになるべく薄くするため、切起片の折曲部分を挿入口内でしごく、すなわち圧縮変形させる必要がある。ところで、上述のように、挿入口内の突起部と綴り部との引っかかりを無くすようにする場合には、挿入口の間隔を広くすれば良い。しかしながら、挿入口の間隔を広くしたときには、切起片が折曲された綴じ部を挿入口内でしごくことができなくなる。一方で、綴り部を扱くため挿入口の間隔を狭くすると、突起部と綴り部とが引っ掛かるようになってしまう。このように、切起片の折曲部分のしごき(圧縮変形)と綴り部の突起部との引っかかりの関係は、トレードオフの関係にある。
【0011】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、挿入口の間隔を狭くしながら、綴り部の引っかかりを無くすことができる綴じ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る綴じ機は、複数の用紙が重ねられた冊子が挿入される挿入口が形成されたボディと、上記冊子に切起片を形成する打抜孔を形成する第1の刃と、この切起片の先端部が挿入される窓部を有すると共に上記切起片の先端部が係止されるスリットを形成する第2の刃と、上記切起片を折曲して先端部を上記窓部に挿入する押出カムとを有し、上記ボディ21の上記挿入口の相対する面の一方の面側に配設される刃ユニットと、上記刃ユニットを上記挿入口に出没するようにスライドし、上記第2の刃の窓部に上記切起片の先端部が係止された状態で、上記第2の刃を上記スリットから引き抜き、上記切起片の先端部を上記スリットに係止する駆動部とを備える。
【0013】
上記挿入口は、上記一方の面と対向する他方の面にダイが設けられ、このダイに、上記第1及び第2の刃及び押出カムが進入するダイ穴が形成され、上記ダイ穴の開口端
の前面側及び側面側の範囲に亘って、上記切起片が折曲され先端部が上記スリットに係止された上記用紙の綴じ部を、上記ダイ穴から上記冊子の引き抜き側へガイドするガイド部が形成されている。
【0014】
上記挿入口には、上記綴じ部を厚さ方向に縮小する縮小部を形成することができる。また、上記ダイは、上記ボディと一体成形しても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ダイ穴の開口端には、切起片が折曲され先端部がスリットに係止された用紙の綴じ部を、ダイ穴から冊子の引き抜き側へガイドするガイド部が形成されている。したがって、綴じ部は、ダイ穴から引き出される際に、円滑に移動することができる。また、冊子の挿入口内には、冊子の綴じ部が引っ掛かることを防止する突起部を形成する必要がなくなり、その分、挿入口の間隔を狭くし、全体の更なる小型化を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した綴じ機について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1−
図4A、Bに示すように、本発明が適用された綴じ機11は、複数の用紙1aを重ねてなる冊子1を綴じる機器であって、ステープルではなく、用紙1aの一部を用いて、重ねられた用紙1を綴じる綴じ部2を形成する。具体的に、この綴じ機11は、前面側に冊子1が挿入される挿入口22が形成されたボディ21内に、綴じ部2を形成する刃ユニット41を収納し、この刃ユニット41を、ボディ21に取り付けられたレバー51を回動することでスライドし、挿入口22に挿入された冊子に綴じ部2を形成する。
【0019】
ここで、
図5(A)及び(B)を用いて、冊子1に形成され、重ねられた用紙1aを綴じる綴じ部2を説明する。この綴じ部2には、所定の綴じ位置にU字状に打ち抜かれた打抜孔3と、打抜孔3のU字の開口端に近接して形成されるスリット4とを有している。打抜孔3は、その内側に、切起片5を形成する。切起片5は、スリット4側を基端として折り返され、先端部5aが、スリット4に挿通され冊子1の反対側の面で係止される。これにより、用紙1aが重ねられた冊子1は、切起片5によって綴じられることになる。複数の用紙1aを綴じ込んだ綴じ部2は、折り返された切起片5が重なる分、盛り上がり、他の部分に比べて厚くなる。
【0020】
ボディ21は、
図1−
図4A、Bに示すように、それぞれがポリカーボネート等の合成樹脂をモールド成形してなる一対の半体21a,21bを突き合わせ結合することによって構成される。勿論、一対の半体21a,21bは、ここではネジ33によって一体に結合されるが、接着剤や溶着によって結合されても良い。
【0021】
一対の半体21a,21bを結合してなるボディ21は、主として刃ユニット41が配設される本体部23と、本体部23より一方に延出したグリップ部24とを有している。本体部23には、前面側に、綴じる冊子1が挿入される挿入口22が形成されている。挿入口22は、本体部23の高さ方向において、一方の側に偏倚した位置に形成されている。そして、本体部23の挿入口22を挟んだ大きい方が刃ユニット41が配設されるユニット配設部25となり、小さい方がパンチ台となるダイ部26となる。この挿入口22の高さ(幅)hは、最大綴じ枚数の厚さと略同じ又は若干大きな寸法に設定されており、例えば、最大綴じ枚数が8枚のときには、用紙1aの8枚分の厚さと略同じ又は若干大きくなるように設定されている。挿入口22のユニット配設部25側の一方の面22aには、刃ユニット41の第1及び第2の刃が挿入口22内に進入し得るようにする刃進入孔27が形成されている。挿入口22のダイ部26側の他方の面(以下、「載置面」とも言う。)22bは、ダイとなり、刃進入孔27に対向する位置に、第1及び第2の刃の先端部が進入するダイ穴28が形成されている。
【0022】
また、挿入口22は、最大綴じ枚数の厚さと略同じ又はより若干大きな寸法程度とすることで、ダイ穴28より引き出された冊子1の綴じ部2を、ダイ穴28より手前、すなわち冊子1の挿入側において、挿入口22のユニット配設部25側の一方の面22a及びダイ部26側の載置面22bで挟み、しごくことができるようにしている。すなわち、挿入口22のダイ穴28より手前の領域は、綴り部2をしごき、圧縮変形し、綴り部2の厚さを縮小する縮小部30として機能する。縮小部30としては、圧縮変形用の突起部や膨出部をユニット配設部25側の一方の面22a及び/又は載置面22bに形成し、ユニット配設部25側の一方の面22aと載置面22bとの間隔を狭くして構成しても良い。
【0023】
また、一般に、冊子1は、本体部23の前面側の挿入口22から挿入し、前面側から引き出すことが多い。そこで、挿入口22の前面側は、上下に拡幅され、冊子1を挿入口22の挿入する際の挿入ガイド部32となるようにしている。
【0024】
載置面22bのダイ穴28の奥側には、
図2、
図6及び
図7に示すように、挿入口22への用紙1aの挿入枚数を規制する挿入枚数規制突部29,29が形成されている。冊子1の綴じ部2は、切起片5が折曲され重なる分、盛り上がり、他の部分に比べて厚くなる。このため、挿入口22の高さhは、最大綴じ枚数の厚さと同じ又は最大綴じ枚数より若干大きな寸法に設定されている。したがって、挿入口22には、用紙1aが最大綴じ枚数より多い冊子1が挿入することも可能である。そこで、挿入口22には、挿入枚数規制突部29,29を形成して、挿入枚数規制突部29,29の頂点と挿入口22のユニット配設部25側の面との間隔を、最大綴じ枚数の冊子1の厚さより小さくする。これにより、最大綴じ枚数より多い用紙1aが挿入口22に挿入されないようになり、刃ユニット41等が破損することを防止できる。
【0025】
また、挿入枚数規制突部29,29の頂点と挿入口22のユニット配設部25側の面との間隔は、最大綴じ枚数の冊子1の厚さより小さい。ここでは、挿入枚数規制突部29,29が載置面22bのダイ穴28の奥側に形成されているので、冊子1の引き抜き可能範囲を広くすることができる。勿論、挿入枚数規制突部29,29は、ダイ穴28より更に奥に形成するようにしても良い。
図8は、挿入口22のダイ部26側の載置面に挿入枚数規制突部29,29を形成しない例を示している。
図7の例は、挿入枚数規制突部29,29を形成しているが、冊子1の引き抜き可能範囲を、
図8に示す挿入枚数規制突部29,29を形成しない場合と略同程度にすることができる。
【0026】
図6−
図9に示すように、挿入口22のダイ部26側の載置面22bに形成されたダイ穴28の開口端(稜線)には、冊子1の綴じ部2を冊子の引き抜き方向にガイドするガイド部31が形成されている。このガイド部31は、綴じられた冊子1が引き出される可能性のある前面側及び側面側の範囲に亘って広くU字状に形成されている。また、ガイド部31は、ここでは、傾斜面、すなわちC面形状に形成されている。上述のように、挿入口22のダイ部26側は、切起片5がスリット4に挿通されるように折り曲げられる側で湾曲部が盛り上がる面である(
図17、
図18の綴じ部2の湾曲部5b参照)。ガイド部31は、C面形状をなすことで、打ち抜き時、ダイ穴28内に位置している綴じ部2が円滑に載置面22bに乗り上げ移動できるようにする。
【0027】
なお、ガイド部31の形状としては、
図10(A)に示すように、R面形状としても良く、また、
図10(B)に示すように、円弧形状としても良く、更に、
図10(C)に示すように、段差形状としても良い。また、
図11に示すように、ダイ穴28の周囲にリブ30aを形成し、リブ30aの頂面と挿入口22のユニット配設部25側の一方の面22aとの間を、綴り部2をしごき、圧縮変形し、綴り部2の厚さを縮小する縮小部30としても良い。この場合、リブ30aの頂面と挿入口22のユニット配設部25側の一方の面22aとの間が最大綴じ枚数の厚さと略同じ又は大きな寸法に設定されることになる。また、リブ30aの内側がガイド部31となる。また、挿入口22のダイ部26側の載置面22bにおいて、リブ30aの外側の領域30bは、リブ30aの頂面より一段低くなる。したがって、挿入口22は、広くなり、これから綴じる冊子1を挿入し易くすることができる。
【0028】
また、一般に、冊子は、本体部23の前面側の挿入口22から挿入し、前面側から引き出すことが多い。そこで、ガイド部31は、
図12(A)及び(B)に示すように、ダイ穴28の前面側(冊子1の引き出し側)のみに狭い範囲でU字状に形成するようにしても良い。この場合、ガイド部31は、本体部23の前面側、すなわちU字の湾曲部が、降下するC面、R面又は段差等の降下面31aで構成されており、背面側、すなわちU字の両端部が、上昇するC面、R面又は段差等の上昇面31bで構成されることになる。
【0029】
以上のように構成されるボディ21は、半体21a,21bを突き合わせ結合することで、本体部23とグリップ部24とを構成し、本体部23は、ユニット配設部25とダイ部26とを構成する。すなわち、ダイ部26は、半体21a,21bを突き合わせ結合するだけで、本体部23と一体的に構成することができる。したがって、ダイ部26を別部材で構成したときよりも、生産コストを削減することができ、また、ダイ部26(ダイ穴28)と刃ユニット41をガイドするスライドガイド部48との位置関係が安定し、例えば刃ユニット41の第1の刃43や第2の刃44がダイ穴28と干渉することを防止することができる。
【0030】
本体部23の内部に配設される刃ユニット41は、
図3、
図4B及び
図13に示すように、スライダ42を有し、このスライダ42に、冊子1に切起片5を形成する打抜孔3を形成する第1の刃43と、この切起片5の先端部が挿入されるスリット4を形成する第2の刃44と、切起片5を折曲する押出カム45とを有する。
【0031】
第1の刃43は、U字状に形成され、スライダ42に立設されている。この第1の刃43は、U字状の打抜孔3を形成し、舌状の切起片5を形成する。U字状の第1の刃43の開口端側には、近接して、スリット4を形成する第2の刃44が設けられている。スライダ42に立設された第2の刃44は、直線部44aの両側に拡幅端部44b,44bを有し、拡幅端部44b,44bが第1の刃43側に位置するようにスライダ42に立設される。この第2の刃44には、第1の刃43により形成された切起片5の先端部5aが挿入される窓部44cが形成されている。
【0032】
U字状の第1の刃43の内側には、切起片5を折曲する押出カム45が配設されている。この押出カム45は、両端部が第1の刃43及び/又はスライダ42に取り付けられた回動軸46に回動支持されている。この押出カム45は、一端部に、切起片5を第2の刃44の窓部44cに押し出すL字状に折曲した押出部45aと本体部23の刃進入孔27側の回動操作片27aによって押圧される被押圧部45bとを有する。このような押出カム45は、スライダ42内において、コイルバネ等の付勢部材47によって
図13中反矢印X方向に付勢されている。また、被押圧部45bは、第1の刃43と第2の刃44との間において、刃進入孔27側に臨まされ、刃進入孔27を区画する回動操作片27aに対向される。押出カム45は、押出部45aがU字状の第1の刃43の内側に退避した状態で、被押圧部45bが本体部23の刃進入孔27側の回動操作片27aによって押圧されたとき、付勢部材47の付勢力に抗して回動軸46を中心に
図13中矢印X方向に回動し、押出部45aを第1の刃43から突出させる。
【0033】
第1及び第2の刃43,44及び押出カム45が配設されるスライダ42は、スライドガイド部48によってガイドされて、挿入口22に挿入された冊子1の紙面に対して直交する方向(
図13中矢印Y方向及び反矢印Y方向)にスライドする。スライドガイド部48は、スライダ42のボディ21側を構成する半体21a,21bの内面と対向する側面に、挿入口22に挿入された冊子1の紙面に対して直交する方向に立設されたガイド片48aが形成され、このガイド片48aがスライダ42のボディ21側を構成する半体21a,21bの内面に立設され互いに平行な一対のガイド壁48b,48cで構成されたガイド溝48dに係合されることで、スライダ42をガイドする。勿論、スライドガイド部48は、スライダ42側がガイド溝48dで、半体21a,21bの内面側がガイド片48aであっても良い。
【0034】
図13中、矢印Y方向及び反矢印Y方向にスライドするスライダ42は、第1及び第2の刃43,44の刃先が挿入口22のユニット配設部25側の一方の面22aの刃進入孔27より挿入口22内に進入する。刃進入孔27は、押出カム45の被押圧部45bを押圧する回動操作片27aによって、第1の貫通部27bと第2の貫通部27cとに区画されている。第1の貫通部27bには、第1の刃43が進入し、第2の貫通部27cには、第2の刃44が進入する。
【0035】
以上のように構成された刃ユニット41は、
図3、
図4A及び
図4Bに示すように、レバー51に取り付けられる。レバー51は、基端部に回動支持孔52が形成され、先端側がボディ21のグリップ部24と協働して回動操作部53となる。レバー51の基端部には、更に、刃ユニット41を取り付ける取付溝54が形成され、取付溝54に、刃ユニット41の側面に形成された取付突部49が係合される。回動支持孔52には、ボディ21の一方の半体21aに形成された回動支持部57が挿入され、レバー51は、ボディ21側の回動支持部57によって、
図1、
図4A及び
図4B中矢印A方向及び反矢印A方向に回動自在に支持される。
【0036】
また、回動支持孔52には、内周面に、捻りコイルバネ55のコイル部が配設される。この捻りコイルバネ55は、一方のアームがレバー51の係止溝51aに係止され、他方のアームがボディ21の一方の半体21aに形成された係止溝56に係止される。これにより、回動支持部57に回動支持されたレバー51は、捻りコイルバネ55の付勢力によって
図1、
図4A及び
図4B中反矢印A方向に回動付勢される。
図1、
図4A及び
図4Bに示すように、レバー51がグリップ部24から離間した開いた状態にあるとき、刃ユニット41は、本体部23に収まり、第1及び第2の刃43,44の刃先が挿入口22より退避した状態にある。したがって、挿入口22には、
図4A及びBに示すように、これから綴じる冊子1が挿入可能となっている。
【0037】
回動支持孔52の周囲には、円形のカラー58,58が配設され、ボディ21を構成する半体21a,21bとの摩擦を少なくし、円滑に、レバー51がボディ21に対して回動するようにしている。
【0038】
次に、以上のように構成された綴じ機11の冊子1を綴じる一連の動作を説明する。先ず、
図4A及び
図4Bに示すように、冊子1を綴じる前には、レバー51が捻りコイルバネ55の付勢力によって
図4A及び
図4B中反矢印A方向に回動付勢された状態にある。この状態では、刃ユニット41は、本体部23に収まり、第1及び第2の刃43,44の刃先が挿入口22より退避した状態にあり、挿入口22には、これから綴じる冊子1が挿入可能な状態となっている。これから綴じる冊子1は、挿入口22から奥まで挿入される。この際、挿入口22には、ダイ部26側の載置面22bに挿入枚数規制突部29,29が形成されている。したがって、挿入口22には、最大綴じ枚数より多い用紙1aが挿入口22に挿入されることを防止することができる。
【0039】
冊子1を綴じるときには、ユーザがグリップ部24とレバー51とを片手で把持して、レバー51が捻りコイルバネ55の付勢力に抗してグリップ部24に近接させる
図4A及び
図4B中矢印A方向に回動される。すると、
図14A及び
図14Bに示すように、刃ユニット41は、スライドガイド部48にガイドされながら、冊子1を打ち抜く
図14A及び
図14B中矢印Y方向にスライドされる。すると、刃ユニット41の第1の刃43は、挿入口22の刃進入孔27を構成する第1の貫通部27bより挿入口22内に進入し、第2の刃44は、刃進入孔27を構成する第2の貫通部27cより挿入口22内に進入する。これによって、冊子1には、第1の刃43によってU字状の打抜孔3が形成され、第2の刃44によってスリット4が形成されることになる。そして、冊子1を貫通した第1及び第2の刃43,44の刃先は、挿入口22のダイ部26側のダイ穴28に進入する。この際、U字状の第1の刃43内にある押出カム45は、押出部45aによって、U字状の打抜孔3によって形成された切起片5を略90°に折曲する。
【0040】
更に、レバー51が
図15A及び
図15B中矢印A方向に回動されると、刃ユニット41は、更に、冊子1を打ち抜く
図15A及び
図15B中矢印Y方向にスライドする。すると、U字状の第1の刃43内にある押出カム45の被押圧部45bは、挿入口22の刃進入孔27内の回動操作片27aが当接し押圧される。すると、押出カム45は、付勢部材47の付勢力に抗して回動軸46を中心に
図15A及び
図15B中矢印X方向に回動し、押出部45aを第1の刃43から突出させる。これにより、押出部45aは、略90°に折曲された切起片5を更に押圧し、切起片5の先端部5aを第2の刃44の窓部44cに挿入し、更に、押出部45a自身も窓部44cに進入する。かくして、切起片5は、略180°まで折り返されることになる。
【0041】
次に、ユーザがレバー51を放すと、レバー51は、捻りコイルバネ55の付勢力によって、
図16中反矢印A方向に回動する。すなわち、第1及び第2の刃43,44及び押出カム45が挿入口22に進入した状態にある刃ユニット41は、レバー51の位置が復帰方向に回動することに伴って、挿入口22より退避する
図16中反矢印Y方向にスライドする。これに合わせて、押出カム45は、被押圧部45bから刃進入孔27内の回動操作片27aが離間することで、付勢部材47の付勢力によって
図16中反矢印X方向に回動する。これにより、押出カム45の押出部45aは、U字状の第1の刃43内に退避する。一方で、略180°まで折り返された切起片5の先端部5aは、第2の刃44の窓部44cに挿入された状態のままである。
【0042】
そして、レバー51が
図4A及びBの位置まで復帰すると、刃ユニット41も、
図17に示すように、初期位置、すなわち本体部23に収まり、第1及び第2の刃43,44の刃先が挿入口22より退避した状態となる。このとき、第2の刃44は、窓部44cに挿入されている切起片5の先端部5aを伴ってスリット4を通過し、切起片5の先端部5aを冊子1の反対側まで導出する。この後、第2の刃44は、切起片5の先端部5aを挿入口22内に残して、刃進入孔27を構成する第2の貫通部27cを介して挿入口22から本体部23内に退避する。これにより、挿入口22からは、綴じられた冊子1を引き出すことが可能な状態となる。
【0043】
図17に示すように、単に、切起片5の先端部5aがスリット4を通って反対側の面にまで導出された状態では、切起片5は、ダイ部26側の載置面22b側において、湾曲した湾曲部5bとなっている。すなわち、切起片5は、しっかりとした折り目線が付けられた状態で略180°折り返されていない。したがって、この湾曲部5bは、ダイ穴28内に入り込んだ状態になっている。
【0044】
図17に示す状態からユーザが綴じられた冊子1を挿入口22から引き出そうとすると、
図18に示すように、切起片5の湾曲部5bは、ダイ穴28の開口端に形成されたC面、R面又は段差等で構成されたガイド部31によって円滑に、すなわちダイ穴28の開口端に引っ掛かることなく、載置面22bへと乗り上げるようにして移動する。
【0045】
上述したように、挿入口22は、最大綴じ枚数の厚さと略同じ又は若干大きな寸法程度とすることで、ダイ穴28より引き出された冊子1の綴じ部2を、ダイ穴28より手前、すなわち冊子1の挿入側において、挿入口22のユニット配設部25側の一方の面22a及びダイ部26側の載置面22bで挟み、しごくことができるようにしている。したがって、ダイ穴28から引き出されたスリット4に挿通された切起片5は、
図19に示すように、ダイ穴28より手前の縮小部30において、圧縮変形され、しっかりと折曲される。これにより、
図20に示すように、綴じられた冊子1は、切起片5が開かない状態で挿入口22から引き出されることになる。冊子1を挿入口22から引き出すにあたっては、挿入枚数規制突部29,29がダイ穴28の奥側に形成されている。したがって、
図7及び
図8に示すように、冊子1は、挿入口22より挿入枚数規制突部29,29を形成しない場合と同じような範囲で引き出すことができる。なお、綴じ機1では、挿入枚数規制突部29,29を形成しなくても良い。
【0046】
以上のように構成された綴じ機1は、挿入口22のダイ部26側の載置面22bに形成されたダイ穴28の開口端に冊子1の綴じ部2を冊子の引き抜き方向にガイドするガイド部31が形成されている。したがって、
図17−
図20に示すように、刃ユニット41に綴じられたとき、切起片5の湾曲部5bは、ダイ穴28に進入した状態になっても、湾曲部5bは、C面、R面又は段差等で構成されたガイド部31によって円滑に、すなわちダイ穴28の開口端に引っ掛かることなく、載置面22bへと移動する。したがって、綴じ機1は、冊子1を挿入口22から引き出す際の操作性を向上することができる。これに伴い、綴じ機1では、挿入口22内に、冊子1の綴じ部2が引っ掛かることを防止する突起部を形成する必要がなくなり、その分、挿入口の間隔を狭くし、全体の更なる小型化を実現することができる。
【0047】
また、この綴じ機1は、成形品である左右一対の半体21a,21bを突き合わせ結合することで、ボディ21を構成し、内部に、刃ユニット41を配設するだけで組み立てることができることから生産効率の向上を実現することができる。また、左右一対の半体21a,21bを突き合わせることで、刃ユニット41をガイドするスライドガイド部48やダイ部26を設けることができる。したがって、スライドガイド部48とダイ部26との位置関係が安定し、刃ユニット41の第1の刃43や第2の刃44がダイ穴28と干渉することを防止することができる。
【0048】
ところで、成形品である左右一対の半体21a,21bを突き合わせ結合した綴じ機1では、冊子1を綴じるとき、ダイ部26に加わる冊子1を打ち抜く力によって、ダイ部26が撓むおそれがある。そこで、
図21及び
図22に示すように、左右一対の半体21a,21bのダイ部26を構成部分の内面には、冊子1の打ち抜き方向の補強リブ34,34が一体に成形されている。これにより、ダイ部26は、機械的な強度が向上し、冊子1の打ち抜き方向の力によっても撓みにくくすることができる。
【0049】
更に、一方の半体21aのダイ部26を構成する部分には、
図21(A)に示すように、中心にネジ穴35aが形成されたボス35が立設されている。また、
図21(B)及び
図22に示すように、他方の半体21bのダイ部26を構成する部分には、中心にネジ33が挿通される貫通孔36aが形成されたボス35の先端部を凹部36が形成されている。ダイ部26は、一方の半体21aのボス35の先端部と他方の半体21bの凹部36とが嵌合することによって、更に機械的な強度を高めることができる。
【0050】
その他、一方の半体21aには、
図21(A)に示すように、レバー51の回動支持部57もボスとして機能し、回動支持部57の先端部が
図21(B)及び
図22に示す他方の半体21bの凹部57aに嵌合することによって強度補強がなされている。更に、グリップ部24を構成する部分にも、
図21(A)に示すように、一方の半体21aにボス37が設けられ、
図21(B)及び
図22に示す他方の半体21bにボス37の先端部が嵌合する凹部37aが設けられている。ボディ21は、左右一対の半体21a,21bがボスと凹部が嵌合する3カ所において、ネジによって結合されることで結合される。勿論、結合箇所は、ここで説明した3カ所に限定されるものではなく、4カ所以上であっても良いし、2カ所でも良い。但し、ダイ部26の部分では、強度補強の観点から、ボス35と凹部36とを設けるのが好ましい。
【0051】
ところで、綴じ機1は、繰り返し冊子1を綴じる作業を行うと、徐々に、内部に、第1及び第2の刃43,44が冊子1を打ち抜いた際に発生する紙粉が貯まることになり、次第に、円滑に刃ユニット41がスライドガイド部48にガイドされながらスライドしにくくなる。そこで、一対の半体21a,21bは、以下のように紙粉対策が施されている。以下、
図4A、B、
図15A、B及び
図22等を参照して説明する。
【0052】
先ず、スライドガイド部48のガイド溝48dを構成する一対のガイド壁48b,48cにおいて、内側のガイド壁48cは、両端部が外側のガイド壁48bより短く形成されている。これにより、ガイド溝48dに浸入した紙粉は、ガイド溝48dの両端部に溜まることなく、ガイド壁48cの両端部に形成された切欠部61,61からボディ21内に排出される。すなわち、ガイド溝48dに係合した刃ユニット41のスライダ42のガイド片48aは、紙粉に邪魔されることなく、終端まで移動することができる。
【0053】
また、内側のガイド壁48cに隣接する領域は、スライダ42がスライドするスライド領域62である。このスライド領域62にも、紙粉が溜まるおそれがある。そこで、挿入口22のユニット配設部25側の一方の面22aの内側には、紙粉が溜まる凹状の溜まり部63が形成されている。この溜まり部63は、底面が傾斜面64となっており、紙粉が溜まり部63に溜まらないようにしている。なお、スライド領域62には、刃ユニット41をスライド支持する凸状のスライド支持部67が形成されている。このスライド支持部67も、両端部に切欠部68を設けるようにして、紙粉がスライド領域62に溜まらないようにしている。
【0054】
更に、ダイ部26の内部も、紙粉が浸入する。ダイ部26の基端部は、連通部65によってグリップ部24側の空間と連通している。したがって、ダイ部26内の紙粉は、連通部65からグリップ部24側の空間へと移動することになる。
【0055】
ボディ21は、レバー51の付け根部分に、レバー51の移動範囲に亘ってレバー凹部66が形成され、レバー51とレバー凹部66との間には、間隙が形成されることになる。ボディ21内部の紙粉、すなわち、ユニット配設部25内に発生した紙粉やダイ部26内に発生した紙粉は、
図22中矢印Zで示すように、綴じ機1の通常の使用の中で発生する振動等によって、徐々に、レバー51とレバー凹部66との間の隙間より排出されることになる。このように、綴じ機1は、ボディ21に浸入した紙粉を、レバー51とレバー凹部66との間の隙間から排出されるようにして、繰り返し使用されても、刃ユニット41の動作不良が発生しないようにしている。