(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131610
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】円形ワークの径測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 21/10 20060101AFI20170515BHJP
G01B 11/08 20060101ALI20170515BHJP
G01B 5/08 20060101ALI20170515BHJP
G01B 11/12 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
G01B21/10
G01B11/08 Z
G01B5/08
G01B11/12 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-13982(P2013-13982)
(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-145640(P2014-145640A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 有史
(72)【発明者】
【氏名】兼重 健一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕之
【審査官】
八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭55−152411(JP,A)
【文献】
特開平6−213652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00− 5/30
G01B 11/00−11/30
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形ワークの周方向の複数位置で周面を直線的に横切る方向で前記円形ワークの位置ずれを検出するステップと、検出された位置ずれのずれ量に基づいて前記円形ワークの中心位置を決定するステップと、決定された中心位置を通る直線上で前記円形ワークの内径及び外径の少なくとも一方を測定するステップとを備え、かつ前記円形ワークを回転テーブル上に載置して当該回転テーブルの回転軸周りに旋回させることで前記円形ワークの周方向の複数位置で、前記回転テーブルの径方向での前記円形ワークの位置ずれを検出するようにし、前記回転テーブルの回転軸周りの周方向の一箇所に、回転テーブルの径方向において一定長さの直線上の各点の変位を検出する二次元変位センサを配設し、前記円径ワークの表面の特徴点位置の、前記直線の中央位置からのずれを前記径方向の位置ずれとする円形ワークの径測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円形ワークの
径測定方法に関し、特に径方向に位置ずれを生じている円形ワークの内径や外径を精度良く測定できる円形ワークの
径測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の径測定方法としては例えば特許文献1に示された方法がある。これは円形ワーク内でその内周面に向けて変位センサを旋回させてワーク内周の全周形状を得、全周形状からワーク中心位置や内径を算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−254742
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の方法では、円形ワークの中心と変位センサの旋回中心がずれていると、すなわち円形ワークが正確に位置決めされていないと測定誤差を生じ、また変位センサを旋回作動させる際の振動によっても測定誤差を生じるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、検出部を旋回させることなく、したがって振動による測定精度の低下を回避でき、しかも円形ワークの位置が所定の位置からずれていても高精度に円形ワークの内径ないし外径、あるいはその両方を測定することが可能な円形ワークの
径測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、
本発明の径測定方法では、円形ワーク(W)の周方向の複数位置で周面を直線的に横切る方向で前記円形ワーク(W)の位置ずれ(E1〜E4)を検出するステップと、検出された位置ずれ(E1〜E4)のずれ量に基づいて前記円形ワーク(W)の中心(O)位置を決定するステップと、決定された中心(O)位置を通る直線上で前記円形ワーク(W)の内径(D1)及び外径(D2)の少なくとも一方を測定するステップとを備え
、かつ前記円形ワーク(W)を回転テーブル(1)上に載置して当該回転テーブル(1)の回転軸(Ax)周りに旋回させることで前記円形ワーク(W)の周方向の複数位置で、径方向の位置ずれ(E1〜E4)を検出するようにし、前記回転テーブル(W)の回転軸(Ax)周りの周方向の一箇所に、回転テーブル(W)の径方向において一定長さの直線上の各点の変位を検出する二次元変位センサ(2)を配設し、前記円形ワーク(W)の表面の特徴点(Wp)位置の、前記直線の中央位置(As)からのずれを前記径方向の位置ずれ(E1〜E4)とする。
【0007】
本発明においては、検出部を旋回させる必要が無いから振動による測定精度の低下を回避できる。また、検出された位置ずれのずれ量に基づいて円形ワークの中心位置を決定しているから、円形ワークの位置が所定の位置からずれていても高精度に円形ワークの内径ないし外径、あるいはその両方を測定することができる。
そして、回転テーブルによって円形ワークを旋回させることで、円形ワークの周方向複数位置で、前記回転テーブルの径方向での前記円形ワークの位置ずれ検出を、円形ワークの周方向の同一箇所で行うことができ、さらには円形ワークの表面の特徴点位置の、前記直線の中央位置からのずれを簡易に検出することができる。
【0014】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の円形ワークの径測定方法によれば、検出部を旋回させることなく、したがって振動による測定精度の低下を回避でき、しかも円形ワークの位置が所定の位置からずれていても高精度に円形ワークの内径ないし外径、あるいはその両方を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態を示す、位置ずれ検出時の円形ワークの垂直断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態を示す、ワーク中心位置決定方法を説明する円形ワークの平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態を示す、ワーク中心位置決定方法を説明する円形ワークの平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態を示す、内外径測定時の円形ワークの垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0018】
図1において、断面同一のリング状の円形ワークWが回転テーブル1上に置かれており、回転テーブル1の上方位置には下方に向けて二次元レーザ変位センサ2が配設されている。当該変位センサ2は一定長さlの直線上でレーザ光Lを走査して三角測量の原理で当該直線上の各点の変位(本実施形態では高さ)を検出するものである。本実施形態では、テーブル周面に対向する上方位置で回転テーブル1の回転軸Axから一定距離離れて設けられた単一のレーザ変位センサ2によって、回転テーブル1の径方向の一定長さlの直線上で、円形ワークWの上側表面上の各点の高さを検出している。
【0019】
そして、本実施形態では特徴点として円形ワーク1の上側表面上の最高点Wpによって円形ワークWの位置ずれを検出している。すなわち、レーザ変位センサ2の走査中央位置を通る垂線As上に上記最高点Wpが位置する時を位置のずれ量E=0とし、最高点Wpが垂線Asよりも外径側に位置する時を正のずれ量、内径側に位置する時を負のずれ量とする。このようなずれ量Eの測定を、回転テーブル1を回転させて
図2に示すように回転テーブル1の互に直交する径方向の対称位置である四点で行う。
【0020】
図2は、円形ワークWの中心Oと回転テーブル1の回転軸Axが一致している場合を示しており、回転テーブル1を回転させて円形ワークWを旋回させ、その周方向のいずれの四点で位置ずれを測定しても、これらのずれ量E1,E2,E3,E4は同一値である。したがって下式(1)で円形ワークWの中心位置Oを求めると、そのX座標、Y座標は0となって、円形ワークWの中心Oは回転テーブル1の回転軸Axに一致している。
X=(E1−E2)/2 …(1)
Y=(E3−E4)/2
【0021】
円形ワークWはロボットアーム等で回転テーブル1上に搬送されてくるため、通常は
図3に示すように、円形ワークWの中心Oは回転テーブル1の回転軸Axからずれる。この場合にも、回転テーブル1を回転させて円形ワークWを旋回させ、その周方向の四点でそれぞれ垂線Asと最高点Wpの位置のずれ量E1,E2,E3,E4を測定すれば、上式より円形ワークWの中心位置OのX座標、Y座標を求めることができる。なお、回転テーブル1を設けず、レーザ変位センサ2を四箇所に設ける構成としても良い。
【0022】
このようにして円形ワークWの中心Oの位置を定めた後は、
図4に示すように、径測定器3を構成するリニアスケール31を、その中央Osの位置が円形ワークWの中心Oに一致するように移動させる。なお、測定する径方向において中央Osの位置を中心Oに正確に一致させる必要はない。リニアスケール31には一対のスライダ32,33がこれに沿って移動可能に設けられており、これらスライダ32,33には下端部にリニアスケール31に沿う内方側を測定領域Z1とするレーザ変位計34,35と、外方側を測定領域Z2とするレーザ変位計36,37が上下位置にそれぞれ設けられている。
【0023】
そこで、円形ワークWの外径を測定する場合には
図4(1)に示すように各レーザ変位計34,35を円形ワークWの外周に向けて位置させて、レーザ変位計34,35の測定領域Z1までスライダ32,33を移動させる。スライダ32,33の移動位置はリニアスケール31によって検出されているから、既知のリニアスケール31の全長、スライド量、および変位測定値から公知の方法で円形ワークWの中心Oを通る径方向の直線上での外周面間の距離、すなわち円形ワークWの外径D1を算出測定することができる。
【0024】
円形ワークWの内径を測定する場合には
図4(2)に示すように各レーザ変位計36,37を円形ワークWの内周に向けて位置させて、レーザ変位計36,37の測定領域Z2までスライダ32,33を移動させる。スライダ32,33の移動位置はリニアスケール31によって検出されているから、既知のリニアスケール31の全長、スライド量、および変位測定値から公知の方法で円形ワークWの中心Oを通る直線上での内周面間の距離、すなわち円形ワークWの内径を算出測定することができる。なお、以上の手順のうち、演算を要する部分は図略のコンピュータのような演算器で実行される。
【0025】
上記実施形態において、変位測定はレーザ等を使用した非接触式に限られず、タッチプローブのような接触式で行ってももちろん良い。また、内外径が既知の校正用ワークに対して予め上記手順で内外径を測定しておけば、その後の円形ワークの内外径の測定において正確な絶対値を得ることができる。
【0026】
上記径測定器のレーザ変位計を、円形ワークを挟むように上下位置に設けて、上下のワーク表面の各最高点を検出することで円形ワークの厚みを測定することが可能であり、この厚み測定の一環として上側表面の最高点に基づく上述の円形ワークの位置ずれ検出を行うようにしても良い。なお、ずれ量の検出は必ずしも円形ワーク表面の最高点によって行う必要はなく、他の目印になる特徴点を使用しても良い。また、円形ワークはリング状のものには限られない。
【符号の説明】
【0027】
1…回転テーブル、2…二次元レーザ変位センサ(二次元変位センサ)、3…径測定器、As…中央位置、Ax…回転軸、D1…内径、D2…外径、E,E1,E2,E3,E4…位置ずれ、O…中心、W…円形ワーク、Wp…最高点(特徴点)。