(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態(実施例)のうちの3例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図5、
図6における「0m」および「5m」は、車両Cに搭載されている車両用前照灯1から路面までの距離を示す。
【0011】
(実施形態1の構成の説明)
図1〜
図5は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態1を示す。以下、この実施形態1における車両用前照灯の構成について説明する。図中、符号1は、この実施形態1における車両用前照灯(たとえば、ヘッドランプやフォグランプなど)である。前記車両用前照灯1は、車両Cの前部の左右両側にそれぞれ装備されている。
【0012】
前記車両用前照灯1は、
図1に示すように、ランプハウジング2と、ランプレンズ3と、光源4と、リフレクタ5と、光軸調整機構6と、を備えるものである。前記ランプハウジング2および前記ランプレンズ3は、灯室7を画成する。前記灯室7内には、前記光源4および前記リフレクタ5が配置されている。前記光源4および前記リフレクタ5は、前記光軸調整機構6を介して前記ランプハウジング2に光軸調整可能に取り付けられている。
【0013】
前記光源4は、この例では、メタルハライドランプなどの高圧金属蒸気放電灯、高輝度放電灯(HID)などの放電灯である。前記光源4は、前記リフレクタ5にソケット8などを介して着脱可能に取り付けられている。なお、前記光源4は、前記の放電灯以外に、ハロゲン電球、白熱電球、LEDなどの半導体型光源を使用しても良い。
【0014】
前記リフレクタ5は、耐熱性の樹脂部材、たとえば、BMC(バルク状成形材料のガラス繊維強化熱硬化性プラスチック)からなる。前記リフレクタ5は、前側(前記車両用前照灯1の光の照射方向側)が開口し、かつ、後側が閉塞した中空の凹形状をなす。前記リフレクタ5の内凹面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていて、反射面9および疑似反射面10が形成されている。
【0015】
前記リフレクタ5は、前記光源4からの光(図示せず)を所定の配光パターンPで前記ランプレンズ3側に反射させる前記反射面9を有する反射部15と、前記反射部15の縁この例では全周縁から前記ランプレンズ3側に延設されている立壁部11、12、13、14と、から構成されている。
【0016】
前記反射部15は、
図1〜
図4に示すように、ほぼ回転放物形状の一部をなす。前記立壁部11、12、13、14は、板形状をなし、前記反射部15の四方すなわち右側、上側、左側、下側を囲う。これにより、前記リフレクタ5を小型化することができる。前記反射部15のほぼ中央部には、透孔16が設けられている。前記透孔16中には、前記光源4が挿入されている。
【0017】
前記反射部15の前記反射面9は、前記光源4から放射される光を前記ランプレンズ3側に反射させるものである。前記反射面9は、自由曲面(NURBS曲面)の反射面である。
【0018】
前記立壁部11、12、13、14の前記光源4と対向する面には、前記疑似反射面10が設けられている。前記疑似反射面10のうち、前記立壁部11、12、13、14の前記ランプレンズ3側の端部分以外の部分の前記疑似反射面10には、前記光源4からの光L1、L2、L3、L4を拡散反射光L10、L20、L30、L40として拡散させる光拡散部としてのローレット17が設けられている。
【0019】
前記ローレット17は、小さな湾曲した凹凸が、車両Cの前後方向(前記反射面9の光の反射方向、前記反射面9の光軸方向)に対して交差する方向(車両Cの左右方向および上下方向)に、連続して設けられていて、かつ、前記凹凸が車両Cの前後方向に延設されている。
【0020】
前記ローレット17が設けられていない前記立壁部11、12、13、14の前記ランプレンズ3側の端部分すなわち無光拡散部18の前記疑似反射面10は、曲面をなしている。
【0021】
(実施形態1の作用の説明)
この実施形態1における車両用前照灯1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0022】
光源4を点灯する。すると、光源4から放射される光の大部分は、リフレクタ5の反射面9でランプレンズ3側に反射される。この反射光は、所定の配光パターンPとしてランプレンズ3を透過して車両Cの前方および路面に照射される。
【0023】
また、光源4から放射される光の残りの大部分(光源4からの光)L1、L2、L3、L4は、リフレクタ5の立壁部11、12、13、14の疑似反射面10のローレット17で拡散反射光L10、L20、L30、L40として拡散反射される。
【0024】
すなわち、
図5に示すように、右側の立壁部11の疑似反射面10のローレット17において拡散反射された拡散反射光L10は、所定の配光パターンPの左側の路面(側壁、ガードレールなど)に矢印方向に拡散された別の配光パターンP10として照射される。
【0025】
上側の立壁部12の疑似反射面10のローレット17において拡散反射された拡散反射光L20は、所定の配光パターンPの下側(手前側)の路面(側壁、ガードレールなど)に矢印方向に拡散された別の配光パターンP20として照射される。
【0026】
左側の立壁部13の疑似反射面10のローレット17において拡散反射された拡散反射光L30は、所定の配光パターンPの右側の路面(側壁、ガードレールなど)に矢印方向に拡散された別の配光パターンP30として照射される。
【0027】
なお、下側の立壁部14の疑似反射面10のローレット17において拡散反射された拡散反射光L40は、所定の配光パターンPの上側に拡散された別の配光パターン(図示せず)として照射される。
【0028】
さらに、光源4からの光(光源4から放射される光の残りの大部分)L1、L2、L3、L4は、リフレクタ5の立壁部11、12、13、14の疑似反射面10の無光拡散部18の曲面で拡散反射光L11として拡散反射される。
【0029】
すなわち、
図5に示すように、右側の立壁部11の疑似反射面10の無光拡散部18の曲面において拡散反射された拡散反射光L11は、所定の配光パターンPの左側の路面(側壁、ガードレールなど)に矢印方向に拡散された別の配光パターンP11として照射される。
【0030】
上側の立壁部12の疑似反射面10の無光拡散部18の曲面において拡散反射された拡散反射光(図示せず)は、所定の配光パターンPの下側(手前側)の路面(側壁、ガードレールなど)に矢印方向に拡散された別の配光パターンP21として照射される。
【0031】
左側の立壁部13の疑似反射面10の無光拡散部18の曲面において拡散反射された拡散反射光(図示せず)は、所定の配光パターンPの右側の路面(側壁、ガードレールなど)に矢印方向に拡散された別の配光パターンP31として照射される。
【0032】
なお、下側の立壁部14の疑似反射面10の無光拡散部18の曲面において拡散反射された拡散反射光(図示せず)は、所定の配光パターンPの上側に拡散された別の配光パターン(図示せず)として照射される。
【0033】
(実施形態1の効果の説明)
この実施形態1における車両用前照灯1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0034】
この実施形態1における車両用前照灯1は、立壁部11、12、13、14の疑似反射面10に設けられている光拡散部としてのローレット17により、光源4からの光L1、L2、L3、L4であって、所定の配光パターンPに寄与しない反射光を拡散反射光L10、L20、L30、L40として拡散させることができ、別の配光パターンP10、P20、P30を拡散させて目立たなくすることができ、ドライバーの視界の妨げとならない。
【0035】
しかも、この実施形態1における車両用前照灯1は、疑似反射面10のうち立壁部11、12、13、14のランプレンズ3側の端部分には光拡散部としてのローレット17が設けられていない、すなわち、疑似反射面10のうち立壁部11、12、13、14のランプレンズ3側の端部分が無光拡散部18である。このために、立壁部11、12、13、14の端部分において光拡散部としてのローレット17の凹凸が見えないので、見栄えを向上させることができる。
【0036】
特に、この実施形態1における車両用前照灯1は、光拡散部としてのローレット17が設けられていない立壁部11、12、13、14のランプレンズ3側の端部分の疑似反射面10すなわち無光拡散部18が、曲面をなしているので、光源4からの光L1、L2、L3、L4が曲面をなしている無光拡散部18で拡散されて反射する。このために、立壁部11、12、13、14のランプレンズ3側の端部分の疑似反射面10に光拡散部としてのローレット17が設けられていなくても、所定の配光パターンPに寄与しない反射光を拡散反射光L11として拡散させることができ、別の配光パターンP11、P21、P31を拡散させて確実に目立たなくすることができ、ドライバーの視界の妨げとならない。
【0037】
(実施形態2の構成作用効果の説明)
図6は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態2を示す。図中、
図1〜
図5と同符号は、同一のものを示す。以下、この実施形態2における車両用前照灯について説明する。
【0038】
前記の実施形態1における車両用前照灯1は、光拡散部としてのローレット17が設けられていない立壁部11、12、13、14のランプレンズ3側の端部分の疑似反射面10すなわち無光拡散部18が、曲面をなしているものである。これに対して、この実施形態2における車両用前照灯は、光拡散部としてのローレット17が設けられていない立壁部11、12、13、14のランプレンズ3側の端部分の疑似反射面10すなわち無光拡散部18が、平面をなしているものである。
【0039】
この実施形態2における車両用前照灯は、以上のごとき構成からなるので、
図6に示すように、立壁部11、12、13、14の疑似反射面10の無光拡散部18の平面において反射された反射光は、所定の配光パターンPの左側、下側、右側の路面(側壁、ガードレールなど)に拡散されない別の配光パターンP1、P2、P3として照射される。この実施形態2の別の配光パターンP1、P2、P3は、前記の実施形態1の別の配光パターンP10、P20、P30と比較して、拡散されていないので、光が若干強いが、光量が少ないので、さほど目立たない。
【0040】
(実施形態3の構成作用効果の説明)
図7は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態3を示す。図中、
図1〜
図6と同符号は、同一のものを示す。以下、この実施形態3における車両用前照灯について説明する。
【0041】
前記の実施形態1、2における車両用前照灯1は、光拡散部としてローレット17を使用するものである。これに対して、この実施形態3における車両用前照灯は、光拡散部としてシボ(微小の凹凸)19を使用するものである。すなわち、疑似反射面10のうち無光拡散部18以外の部分を、無光拡散部18よりも少し下げて、シボ19を設けるものである。
【0042】
この実施形態3における車両用前照灯は、以上のごとき構成からなるので、 前記の実施形態1、2における車両用前照灯1の作用効果とほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0043】
(実施形態1、2、3以外の例の説明)
なお、前記の実施形態1、2、3においては、反射部15の全周縁に立壁部11、12、13、14を設けるものである。ところが、この発明においては、立壁部を反射部の縁の一部に設けてもよい。
【0044】
また、前記の実施形態1、2、3においては、立壁部11、12、13、14が反射部15の四方を囲うものである。すなわち、立壁部11、12、13、14の正面視形状がほぼ四角形である。ところが、この発明においては、立壁部の正面視形状が反射部を囲う形状であれば、ほぼ四角形以外の形状であってもよい。たとえば、特許文献1のように、立壁部の正面視形状が楕円形状であってもよいし、また、一部が円弧(曲線)形状であってかつ一部が直線形状であってもよい。
【0045】
さらに、前記の実施形態1、3においては、立壁部11、12、13、14の端部分の全部に曲面の無光拡散部18を設けるものである。ところが、この発明においては、曲面の無光拡散部18を立壁部の端部分の一部に設けるものであってもよい。すなわち、目立たずドライバーの視界の妨げとならないような別の配光パターンの場合には、その別の配光パターンを形成する立壁部の無光拡散部に、曲面の無光拡散部18を設けなくてもよい。