特許第6131618号(P6131618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6131618-ゴム組成物および空気入りタイヤ 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131618
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ゴム組成物および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20170515BHJP
   C08L 101/06 20060101ALI20170515BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20170515BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20170515BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20170515BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20170515BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L101/06
   C08K3/04
   C08K3/36
   C08L71/00 Z
   C08L67/00
   B60C1/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-18644(P2013-18644)
(22)【出願日】2013年2月1日
(65)【公開番号】特開2014-148627(P2014-148627A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2016年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】築島 新
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】串田 直樹
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−003015(JP,A)
【文献】 特開2000−001573(JP,A)
【文献】 特開2007−326990(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/059468(WO,A1)
【文献】 特表2013−541627(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0207050(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−3/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム、フィラーおよび置換スルホニル基を有する化合物を含有し、
前記フィラーが、カーボンブラックおよび/またはシリカを含み、
前記化合物の重量平均分子量が500〜10000であり、
前記フィラーの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して5〜150質量部であり、
前記化合物の含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜20質量部であり、
前記化合物が、置換スルホニル基を側鎖に有するポリエーテル化合物またはポリエステル化合物であり、
前記ポリエーテル化合物が、下記式(1)で表される化合物であり、
前記ポリエステル化合物が、下記式(2)で表される化合物であるゴム組成物。
【化1】
(式中、mは1〜100の数を表し、nは5〜100の数を表し、R1は水素または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
【化2】
(式中、sは1〜100の数を表し、rは2〜50の数を表し、R2は水素または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
【請求項3】
請求項1に記載のゴム組成物をタイヤトレッドに用いた空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう。)のウェットグリップ性能を向上させ、転がり抵抗を低減させる手法として、フィラー(特にカーボンブラック、シリカ)を配合したゴム組成物を用いることが知られている。
また、このようなフィラーを配合する場合、フィラーの分散性を考慮して、シランカップリング剤やアルコキシシランを配合することが知られている(例えば、特許文献1〜2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−182885号公報
【特許文献2】特開平7−48476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らは、フィラーの含有量によっては、従来公知のシランカップリング剤やアルコキシシランを配合した場合においてもフィラーの分散性が劣る場合があることを明らかとした。
【0005】
そこで、本発明は、フィラーの分散性が向上し、ウェットグリップ性能および転がり抵抗に優れるタイヤを作製することができるゴム組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、置換スルホニル基を有する高分子化合物を特定量配合したゴム組成物を用いることにより、フィラーの分散性が向上し、ウェットグリップ性能および転がり抵抗に優れるタイヤを作製できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1)ジエン系ゴム、フィラーおよび置換スルホニル基を有する化合物を含有し、
上記フィラーが、カーボンブラックおよび/またはシリカを含み、
上記化合物の重量平均分子量が500〜10000であり、
上記フィラーの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して5〜150質量部であり、
上記化合物の含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜20質量部であるゴム組成物。
(2)上記化合物が、置換スルホニル基を側鎖に有するポリエーテル化合物またはポリエステル化合物である上記(1)に記載のゴム組成物。
(3)上記ポリエーテル化合物が、後述する式(1)で表される化合物である上記(2)に記載のゴム組成物。
(4)上記ポリエステル化合物が、後述する式(2)で表される化合物である上記(2)に記載のゴム組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。
(6)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のゴム組成物をタイヤトレッドに用いた空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、フィラーの分散性が向上し、ウェットグリップ性能および転がり抵抗に優れるタイヤを作製できるゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔ゴム組成物〕
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム、フィラーおよび置換スルホニル基を有する化合物を含有し、上記フィラーがカーボンブラックおよび/またはシリカを含み、上記化合物の重量平均分子量が500〜10000であり、上記フィラーの含有量が上記ジエン系ゴム100質量部に対して5〜150質量部であり、上記化合物の含有量が上記ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜20質量部であるゴム組成物である。
【0011】
本発明においては、置換スルホニル基を有し、重量平均分子量が500〜10000の化合物(以下、「スルホニル基含有ポリマー」ともいう。)を特定量配合することにより、フィラーの分散性が向上し、ウェットグリップ性能および転がり抵抗に優れるタイヤを作製できる。
これは、詳細には明らかではないが、スルホニル基含有ポリマーがフィラーの表面に吸着することにより、フィラー同士の凝集を抑制することができたためと考えられる。
以下に、本発明のゴム組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0012】
<ジエン系ゴム>
本発明のゴム組成物に含有するジエン系ゴムは、主鎖に二重結合を有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、スチレン−イソプレンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、得られるタイヤの補強性が良好となる理由から、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)を用いるのが好ましい。
【0013】
<フィラー>
本発明のゴム組成物に含有するフィラーは、少なくともカーボンブラックおよび/またはシリカを含むものであれば特に限定されず、例えば、後述する金属酸化物や有機フィラーを併用するものであってもよい。
【0014】
(カーボンブラック)
上記カーボンブラックとしては、具体的には、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPE、SRF等のファーネスカーボンブラックが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記カーボンブラックは、ゴム組成物の混合時の加工性やタイヤの補強性等の観点から、窒素吸着比表面積(N2SA)が10〜300m2/gであるのが好ましく、20〜200m2/gであるのがより好ましく、タイヤのウェットグリップ性能がより良好となる理由から、50〜150m2/gであるのが好ましく、70〜130m2/gであるのがより好ましい。
ここで、N2SAは、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K 6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
【0015】
(シリカ)
上記シリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記シリカは、タイヤのウェットグリップ性能および転がり抵抗がより良好となる理由から、CTAB吸着比表面積が50〜300m2/gであるのが好ましく、70〜250m2/gであるのがより好ましく、90〜200m2/gであるのがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面への臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0016】
(その他)
上記フィラーは、金属酸化物(例えば、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタンなど)や有機フィラー(例えば、セルロース、レシチン、リグニン、デンドリマーなど)等を任意成分として含んでいてもよい。
【0017】
本発明においては、フィラーの分散性がより向上し、ウェットグリップ性能および転がり抵抗がより良好となる理由から、上記フィラーとして、少なくともカーボンブラックを用いるのが好ましい。
【0018】
また、本発明においては、上記フィラーの含有量は、後述するスルホニル含有ポリマーの添加効果が向上する、すなわち、フィラーの分散性がより向上し、ウェットグリップ性能および転がり抵抗がより良好となる理由から、上記ジエン系ゴム100質量部に対して5〜150質量部であり、30〜120質量部であるのが好ましく、50〜120質量部であるのがより好ましく、70〜120質量部であるのが更に好ましい。
また、上記カーボンブラックおよび/またはシリカの含有割合は、上記フィラーの総質量に対して50〜100質量%であるのが好ましく、80〜100質量%であるのがより好ましい。
【0019】
<スルホニル含有ポリマー>
本発明のゴム組成物に含有するスルホニル含有ポリマーは、置換スルホニル基を有し、重量平均分子量が500〜10000の化合物である。
ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定した値である。
【0020】
また、置換スルホニル基とは、スルホニル基(−S(=O)2−)に1つの水素原子または置換基(例えば、後述する炭素数1〜20の炭化水素基など)を導入した一価の官能基のことをいい、その具体例としては、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル、オクチルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル等のアルキルスルホニル基;メトキシスルホニル、エトキシスルホニル、tert−ブトキシスルホニル、n−デシルオキシスルホニル、n−ヘキサデシルオキシスルホニル等のアルコキシスルホニル基;フェノキシスルホニル、ナフチルオキシスルホニル等のアリールオキシスルホニル基;等が挙げられる。
【0021】
本発明においては、上記スルホニル含有ポリマーとしては、フィラーとの相互作用が良好となる理由から、上述した置換スルホニル基を側鎖に有するポリエーテル化合物またはポリエステル化合物が好適に挙げられる。
具体的には、上記ポリエーテル化合物としては下記式(1)で表される化合物が挙げられ、上記ポリエステル化合物としては下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
これらのうち、フィラー(特にカーボンブラック)の分散性がより向上し、ウェットグリップ性能および転がり抵抗がより良好となる理由から、下記式(1)で表されるポリエーテル化合物であるのが好ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
上記式(1)中、mは、1〜100の数を表し、10〜30の数であるのが好ましく、15〜25であるのがより好ましい。
また、nは、5〜100の数を表し、7〜50の数であるのが好ましく、10〜30の数であるのがより好ましい。
また、R1は、水素または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、炭素数1〜20のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ウンデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロプロピルメチル基、トリフルオロエチル基等)、炭素数2〜20のアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、炭素数6〜20のアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等)、炭素数7〜20のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等)、炭素数1〜20のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソ−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基、ノニノキシ基、デシロキシ基、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基等)、炭素数2〜20のアルキルアルコキシ基(例えば、メチレンメトキシ基(−CH2OCH3)、エチレンメトキシ基(−CH2CH2OCH3)、n−プロピレン−イソ−プロポキシ基(−CH2CH2CH2OCH(CH32)、メチレン−t−ブトキシ基(−CH2−O−C(CH33、ブチレンメトキシ基、ペンチレンメトキシ基、へキシレンメトキシ基、ヘプチレンメトキシ基、オクチレンメトキシ基、ノニレンメトキシ基、デシレンメトキシ基、メチレンエトキシ基、エチレンエトキシ基、プロピレンエトキシ基、ブチレンエトキシ基、ペンチレンエトキシ基、へキシレンエトキシ基、エチレンエトキシメトキシ基、シクロプロピルメトキシ基、シクロヘキシルメトキシ基、メチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等)であるのが好ましい。
【0024】
上記式(2)中、sは、1〜100の数を表し、1〜8の数であるのが好ましく、1〜5の数であるのがより好ましい。
また、rは、2〜50の数を表し、5〜30の数であるのが好ましい。
2は、水素または炭素数1〜20の炭化水素基を表し、その好適例は、上述した式(1)のR1と同様である。
【0025】
本発明においては、上記スルホニル含有ポリマーの含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜20質量部であり、1〜15質量部であるのが好ましく、3〜10質量部であるのがより好ましい。
【0026】
本発明のゴム組成物には、上述した成分の他に、シランカップリング剤、加硫または架橋剤、加硫または架橋促進剤、酸化亜鉛、オイル、老化防止剤、可塑剤等のタイヤ用ゴム組成物に一般的に用いられている各種の添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0027】
本発明のゴム組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等)を用いて、混練する方法等が挙げられる。
また、本発明のゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0028】
〔タイヤ〕
本発明の空気入りタイヤ(以下、単に「本発明タイヤ」ともいう。)は、上述した本発明のゴム組成物を用いた空気入りタイヤである。
図1に、本発明のタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明のタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
【0029】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
【0030】
本発明のタイヤは、例えば、本発明のゴム組成物が含有するジエン系ゴム、加硫剤または架橋剤、加硫促進剤または架橋促進剤の種類およびその配合割合に応じた温度で加硫または架橋し、トレッド部やサイドウォール部等を形成することにより製造することができる。
本発明においては、フィラーの分散性が向上し、ウェットグリップ性能および転がり抵抗に優れるという本発明の効果を活かす観点から、他の部材よりもフィラーの配合量が多いタイヤトレッド部を本発明のゴム組成物で形成することが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
(標準例1〜3、実施例1〜24および比較例1〜18)
下記第1表〜第3表に示す成分を、同表に示す割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、同表に示す成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、150℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。
次に、得られたマスターバッチに硫黄および加硫促進剤をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
次に、得られたゴム組成物を金型(15cm×15cm×0.2cm)中で、160℃で20分間加硫して加硫ゴムシートを作製した。
【0033】
<ペイン効果(フィラーの分散性の指標)>
調製したゴム組成物(未加硫)について、歪せん断応力測定機(RPA2000、α−テクノロジー社製)を用い、160℃で20分間加硫した後、歪0.28%の歪せん断応力G′と歪30.0%の歪せん断応力G′とを測定し、その差G′0.28(MPa)−G′30.0(MPa)をペイン効果として算出した。
算出した結果は、下記各表における標準例の値を100とする指数で表し、各表に示した。この指数が小さいほどペイン効果が小さくフィラーの分散性が優れることを意味する。
【0034】
<tanδ(−10℃)(ウェットグリップ性能の指標)>
得られた加硫ゴムシートについて、JIS K6394:2007に準拠し、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度−10℃の条件におけるtanδを測定した。
得られた結果は、下記各表における標準例の値を100とする指数で表し、各表に示した。この指数が大きいほどtanδが大きく、ウェットグリップ性能が優れることを意味する。
【0035】
<tanδ(60℃)(転がり抵抗の指標)>
得られた加硫ゴムシートについて、JIS K6394:2007に準拠し、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件におけるtanδを測定した。
得られた結果は、下記各表における標準例の値を100とする指数で表し、各表に示した。この指数が小さいほどtanδが小さく、転がり抵抗が優れる(小さい)ことを意味する。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
上記第1表〜第3表中の各成分は、以下のものを使用した。
・スチレン−ブタジエンゴム:E581〔ゴム分100質量部に対する油展量:37.5質量部(103.1質量部中のゴム分は75質量部)、スチレン含有量:40質量%、ビニル結合量:44質量%、旭化成社製〕
・ブタジエンゴム:Nippol BR 1220(日本ゼオン社製)
・カーボンブラック:ショウブラックN234(N2SA:115m2/g、キャボットジャパン社製)
・シリカ:Zeosil 1165MP(Rhodia社製)
・酸化亜鉛:亜鉛華3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(NOFコーポレーション社製)
・老化防止剤:N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(サントフレックス6PPD、Solutia Europe社製)
・プロセスオイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・スルホニル含有ポリマー1:上記式(1)で表されるポリエーテル化合物(式中、R1=C817、m=19、n=3,重量平均分子量:3000,Evonik Tegomer Da646)
・ポリエーテル化合物:未変性のポリエーテル化合物(ポリエチレングリコール#1,540、重量平均分子量:1500,ナカライテスク社製)
・スルホニル含有ポリマー2:上記式(2)で表されるポリエステル化合物(式中、R2=C817=3、=30,重量平均分子量:3000,Evonik Tegomer Da626)
・ポリエステル化合物:未変性のポリエステル化合物(OD−X−2376、重量平均分子量:1000,DIC社製)
・硫黄:油処理イオウ(軽井沢精錬所社製)
・加硫促進剤1:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーCZ−G、大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤2:1,3−ジフェニルグアニジン(Perkacit DPG、Flexsys社製)
【0043】
上記第1表〜第3表に示す結果から、スルホニル含有ポリマーを特定量配合したゴム組成物を用いることにより、フィラーの分散性が向上し、ウェットグリップ性能および転がり抵抗が良好となることが分かった(実施例1〜24)。
また、第1表に示す実施例1〜4と実施例5〜8との対比から、スルホニル含有ポリマーがポリエーテル化合物である方が、ウェットグリップ性能がより良好となることが分かった。同様のことが、第2表に示す実施例9〜12と実施例13〜16との結果からも分かった。
更に、第1表と第2表の対比から、カーボンブラックの含有量が多い方が、フィラーの分散性の改善効果が高く、ウェットグリップ性能および転がり抵抗がより良好となることが分かった。
更に、第1表と第3表の対比から、フィラーの含有量が同量であっても、フィラーとしてカーボンブラックを配合した方が、フィラーの分散性の改善効果が高く、ウェットグリップ性能および転がり抵抗がより良好となることが分かった。
【符号の説明】
【0044】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション
図1