【実施例】
【0046】
(Al
4SiC
4の製造)
図1にマイクロ波照射試験装置の概要を示す。マグネトロン型2.45GHzマイクロ波発振機をE波、H波調整を行うチューナに接続し、導波管を通して雰囲気制御型アプリケーターに接続する。チューナ及びアプリケーターは石英ガラスにより遮蔽し、石英ガラス板近傍より、アプリケーター内にArガスを流入し、雰囲気制御を行った。
【0047】
アプリケーター内では、
図1のようにサンプルを入れた反応容器を厚み75mm以上のアルミナ−シリカ系断熱材で覆う。試料温度は、容器底あるいは容器側面に熱電対を接触させ測定を行う。測温結果は、データロガーにより連続的に記録し、試料温度が1000〜1600℃に到達した際にマイクロ波照射を停止した。加熱時間は、1000℃到達までに25分、1600℃到達までに90分要した。ここで、サンプル(試料)は、金属Al粉末、金属Si粉末、及びC粉末を原料とし、モル比でAl:Si:C=4:1:4となるよう調整し、均一に混合したものを使用した。
【0048】
マイクロ波照射出力は、試料重量1gに対して10W以下の条件で設定した。マイクロ波照射時間は照射エネルギーが5kWh/kgとなるよう設定した。このマイクロ波照射加熱により得られた合成粉をマイクロ波合成により得られたAl
4SiC
4とした。
【0049】
得られたAl
4SiC
4の粒径についてはレーザーマイクロトラック法による分析機器により、レーザー吸光度範囲を0.01−0.2とし、Al
4SiC
4の屈折率を2.6と設定した上で、粒度分布を測定した。N=3で評価した平均値の結果をもって平均粒径を算出した。また、C原料として、黒鉛(平均粒径100〜300μm)を用いた場合、C微粉(カーボンブラック、平均粒径50〜60nm)を用いた場合、及び、C微粉と黒鉛の混合粉を用いた場合について、それぞれの合成後試料をSEMで観察した結果をそれぞれ
図2、3、4に示す。
【0050】
黒鉛を用いた場合、
図2に示したように、原料表面でAl
4SiC
4が反応し析出した様子が観察されたが、その粒径については、
図3のC微粉を用いて合成した場合と大きな差はなく、いずれも1μm以下の粒子が多数を占めた。
図4に示す通り、C微粉と黒鉛の混合粉を用いた場合も
図2、3と同様にAl
4SiC
4が微粉として合成されていることが確認された。
図3の右側には、一部で板状に析出した状態のものが確認されたが、その割合は極めて少なかった。また、これら3種類のC原料を用いて得られたAl
4SiC
4粉については、
図5に示す通り、レーザーマイクロトラックで粒度分布を測定した結果、3つの場合で同等の粒度分布を示しており、いずれもピーク(主ピーク)位置が1μm以下であることが確認された。このことは、SEM観察の結果とよく一致する。
【0051】
一方、比較対象とするために行った電気炉での合成は、タンマン炉等のカーボンヒーター及び反応容器としてカーボン坩堝から構成された装置を用いた。反応容器内には、マイクロ波照射加熱で用いたものと同じ金属Al粉末、金属Si粉末、及びC粉末を原料とし、モル比でAl:Si:C=4:1:4となるよう調整し、均一に混合したサンプル(試料)をセットした。炉内はArガス流入により還元雰囲気とし、試料温度はカーボン坩堝側面に接触した熱電対により測定した。そして、熱電対による温度が1600℃の条件で6時間焼成したものと、1600℃の条件で10時間焼成したものとを2種類得て、これらにより得られた合成粉を電気炉合成により得られたAl
4SiC
4とした。
【0052】
電気炉を用いた合成法により得られたAl
4SiC
4粉末をSEMで観察した結果について
図6に示す。先の
図2〜4に示したように、マイクロ波で合成した粉末は、電気炉合成の場合に比べ、1μm以下の粒子が多く、数10μmの板状粒子は少ない。また、板状粒子の存在形態についても電気炉の場合に比べ、より低密度な凝集体として存在していることが観察される。これに対して、
図6のように、電気炉で合成した場合、微粉形状でも1μm以上に粒成長していることが観察された。
【0053】
マイクロ波合成、電気炉合成により得られたAl
4SiC
4を、それぞれ窒素吸着5点測定法を用いて、BETの近似式から比表面積を算出した。以後、この比表面積の値をBET値とした。マイクロ波合成により得られたAl
4SiC
4、及び電気炉で6時間、10時間焼成することにより得られたAl
4SiC
4をボールミルにより粉砕し、測定に供した。ボールミル粉砕は、直径20mmのアルミナボールで充填した容器内に合成粉を投入したものを、100rpmで回転させることにより行った。この時のBET値算出結果を、表2に示す。マイクロ波合成により得られたAl
4SiC
4は、電気炉合成の場合と比較して比表面積が高く、微細な粒子であることが確認された。
【0054】
【表2】
【0055】
電気炉合成により得られたAl
4SiC
4粉について、先のマイクロ波合成で得られたAl
4SiC
4粉の場合と同様にして、粒度分布をレーザーマイクロトラック法により測定した。レーザー吸光度範囲を0.01−0.2とし、Al
4SiC
4の屈折率を2.6と設定し、レーザーの分散から粒度分布を算出した。測定結果を
図7に示す。また、参考として、先のマイクロ波合成により得られたAl
4SiC
4粉(C原料としてC微粉を用いた場合)の結果を併せて記す。この
図7から分かるように、マイクロ波合成により得られたAl
4SiC
4は、電気炉合成の場合と比較し粒度が細かく、ピーク幅が狭いことから粒度の揃った合成粉が得られているのに対し、電気炉合成により得られたAl
4SiC
4では、いずれもピークが1μmを超える位置に存在した。
【0056】
マイクロ波による合成効率をさらに高めるため、試料内部の温度を測定した。測温方法は例えば
図8のような装置により、試料内部にアルミナ保護管を挿入し、試料昇温により加熱された保護管の温度を上部より測定を行う手法を採用した。アルミナ保護管は内径φ4〜8mmのものを用い、サンプル内への挿入深さは内径の5倍以上とした。放射温度計測温により、試料内部の温度からより正確なマイクロ波照射条件を設定した。
【0057】
従来の測温方法では、反応容器底部の温度が局所的に上昇した場合、反応容器内部の一部でAl
4SiC
4が合成される可能性があったが、試料内部の測温により、容器内全量のAl
4SiC
4合成が可能となった。また、試料内部に金属熱電対を挿入しマイクロ波照射を行うと、金属熱電対自身もマイクロ波吸収を受けて被加熱体となり、試料自身の測温が困難であることが発明者の実験により確認されている。特に、Al
4SiC
4合成のように高温を必要とする条件下では、高温下で原料が金属内に固溶しマイクロ波吸収体となり、局所的なマイクロ波吸収を受けて金属熱電対が溶融する場合があり、マイクロ波場における熱電対による試料内部連続測温は不可能である。放射温度計を用いた測温により、反応容器内で均一にAl
4SiC
4の合成が可能となっただけでなく、
図9に示すように平均粒径1μmを超えない範囲で、合成温度条件による粒度分布制御が可能となった。すなわち、1600℃到達後の保持時間が30分以内であれば平均粒径が0.2〜0.3μm、30分超〜60分以内のとき平均粒径は0.3〜0.7μm、60分を超える場合は0.7μm〜0.8μmとなった。なお、
図9に関しては、アルミナ保護管を通して測定された試料内部の温度が1600℃に達したところで合成反応を終了させた場合(保持時間0分)と、1600℃に達した状態で保持時間を30分、60分、120分にして合成反応を終了させた各場合とについて、それぞれ得られたAl
4SiC
4粉の粒度分布を測定したものである。
【0058】
図10は、上記のようにアルミナ保護管を挿入して試料内部の温度を放射温度計で測温して合成する方法により、混合粉温度を測定しながら合成した際、得られた合成粉末のXRDを測定して、最大ピークを100とした各結晶相のピーク比率をグラフで示したものである。この結果から分かるように、金属Siの融点(1414℃)以上に保つことにより、不純物なくAl
4SiC
4の合成を行うことが可能であった。なお、XRDのピークについては、Al
4SiC
4(2θ=56.10°)、Al
4C
3(2θ=55.04°)、SiC(2θ=35.63°)、Al(2θ=38.47°)、Si(2θ=28.45°)を評価し、各温度の測定結果において最大強度を示すピークを100としてXRDピーク指数を求めた。
【0059】
マイクロ波合成により得られたAl
4SiC
4のXRDパターンから到達温度に対するピーク強度変化をプロットしたものが先の
図10であるのに対し、同様に電気炉合成により得られたAl
4SiC
4の場合の1600℃での温度保持時間に対するピーク強度変化をプロットした図を
図11に示す。
図10の結果から、マイクロ波による合成では、純度の高いAl
4SiC
4合成に必要な容器内部温度は少なくとも1500℃が必要であることが確認された。一方、
図11の結果から、電気炉による合成では、純度の高いAl
4SiC
4合成に必要な焼成時間は少なくとも6時間を要することが確認された。
【0060】
(Al
4SiC
4粉末を添加して製造したMgO−Cれんが)
比較例1…電気炉合成Al
4SiC
4 2.4%添加、黒鉛13%、バインダー2%のMgO−C(予備混合あり)
比較例2…電気炉合成Al
4SiC
4 3.6%添加、黒鉛13%、バインダー2%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例3…マイクロ波合成Al
4SiC
4 2.4%添加、黒鉛13%、バインダー2%のMgO−C(予備混合なし)
本発明例4…マイクロ波合成Al
4SiC
4 3.6%添加、黒鉛13%、バインダー2%のMgO−C(予備混合なし)
本発明例5…マイクロ波合成Al
4SiC
4 2.4%添加、黒鉛13%、バインダー2%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例6…マイクロ波合成Al
4SiC
4 3.6%添加、黒鉛13%、バインダー2%のMgO−C(予備混合あり)
(なお、ここで言う%は、質量%を表す。)
【0061】
表3に示したように、黒鉛量を13%とし、バインダー量を2%、電気炉又はマイクロ波で合成したAl
4SiC
4粉末を2.4%あるいは3.6%、残部をMgOとした配合原料をハイスピードミキサーで混錬し、フリクションプレスによりプレス成型を行い、200〜300℃で乾燥することによりMgO−Cれんがを作製した。れんがは114mm×230mm×65mmの通常の並型形状で成型した。なお、上記バインダー量2%は、樹脂(フェノール樹脂やピッチ樹脂等)を含めた値である。また、混錬の際には、ウェットパンミキサーやニーダー等を用いたり、プレス成型をオイルプレスで行うなど、適宜公知の手段を採用することができる。
【0062】
上記方法により1500℃でマイクロ波合成した平均粒径0.3μmのAl
4SiC
4粉末を添加してMgO−Cれんがを製造する際、予めMgO粒子とAl
4SiC
4粉末を混合する予備混合を行った場合と、行わなかった場合のれんがの見掛気孔率について、電気炉で合成したAl
4SiC
4粉末を予備混合し添加した場合と比較して表3に示す。なお、見掛気孔率の測定はJIS R 2205に従って灯油式にて行った。
【0063】
また、上記で準備した各配合原料の混錬物を試料サイズφ50mm×50mmに成型し、1400℃×10hr還元焼成を事前に行った上で、大気雰囲気下において1400℃×5hrの試験焼成により耐酸化性試験を行った。酸化厚は、還元焼成後の試料をエポキシ樹脂に埋め込み、底面に平行に切断し、切断面における黄白色変色部の厚みを測定することにより求めた。耐酸化性試験の結果を表4に示す。
【0064】
表3に示したように、本発明例3〜6は比較例1および2と比べ、全体的に見掛気孔率が低く、表4に示すように酸化厚が小さいことから、高い耐酸化性を持つことが確認された。さらに予備混合を行った場合、れんが組織中にAl
4SiC
4粉末が凝集することなく均一に分散することで、焼成後も気孔を生成しにくい組織を形成でき、熱間で緻密な組織となった。その結果、表4に示す通り、予備混合を行っていない場合と比較し、予備混合して製造したMgO−Cれんがは酸化厚が小さく、さらに耐酸化性に優れた組織となることが確認された。また、マイクロ波で合成したAl
4SiC
4粉末は電気炉で合成した場合よりも微粉であるため、電気炉合成品で予備混合を行った場合よりも見掛気孔率が減少し、耐酸化性が向上する結果となった。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
比較例3…マイクロ波合成Al
4SiC
4 0%添加、黒鉛13%、バインダー2%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例8…マイクロ波合成Al
4SiC
4 1.2%添加、黒鉛13%、バインダー2%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例9…マイクロ波合成Al
4SiC
4 4.8%添加、黒鉛13%、バインダー2%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例10…マイクロ波合成Al
4SiC
4 6.0%添加、黒鉛13%、バインダー2%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例11…マイクロ波合成Al
4SiC
4 1.0%添加、黒鉛3%、バインダー2%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例12…マイクロ波合成Al
4SiC
4 2.0%添加、黒鉛3%、バインダー2%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例13…マイクロ波合成Al
4SiC
4 3.0%添加、黒鉛3%、バインダー2%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例14…マイクロ波合成Al
4SiC
4 4.0%添加、黒鉛3%、バインダー2%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例15…マイクロ波合成Al
4SiC
4 0.5%添加、黒鉛1%、バインダー1.5%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例16…マイクロ波合成Al
4SiC
4 1.0%添加、黒鉛1%、バインダー1.5%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例17…マイクロ波合成Al
4SiC
4 1.5%添加、黒鉛1%、バインダー1.5%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例18…マイクロ波合成Al
4SiC
4 2.0%添加、黒鉛1%、バインダー1.5%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例19…マイクロ波合成Al
4SiC
4 3.0%添加、黒鉛1%、バインダー1.5%のMgO−C(予備混合あり)
本発明例20…マイクロ波合成Al
4SiC
4 4.0%添加、黒鉛1%、バインダー1.5%のMgO−C(予備混合あり)
(なお、ここで言う%は、質量%を表す。)
【0068】
上記の方法により、マイクロ波加熱を用いて原料粉が1600℃到達後、保持時間0分として合成し得られた平均粒径0.3μmのAl
4SiC
4粉末の添加量を変えたMgO−Cれんがを試作し、耐酸化性試験を行った。すなわち、上記の比較例3及び本発明例8〜20のように、黒鉛1〜13%、バインダー1.5〜2%、マイクロ波合成により得られたAl
4SiC
4を0〜6%、残部をMgOとした配合原料を、ハイスピードミキサーで混錬し、フリクションプレスによりプレス成型を行い、200〜300℃で乾燥することによりMgO−Cれんがを作製した。このときの配合においては、MgO−CれんがのC源として、添加した黒鉛のほか、バインダーの残炭分が利用される。なお、上記バインダー量1.5〜2%は、樹脂(フェノール樹脂やピッチ樹脂等)を含めた値である。
【0069】
上記で準備した各配合原料の混錬物を試料サイズφ50mm×50mmに成型し、1400℃×10hr還元焼成を事前に行った上で、大気雰囲気下において1400℃×5hrの試験焼成により耐酸化性試験を行った。酸化厚は、還元焼成後の試料をエポキシ樹脂に埋め込み、底面に平行に切断し、切断面における黄白色変色部の厚みを測定することにより求めた。様々な黒鉛量に対し、試験を行ったところ、
図12に示す結果となった。同じ黒鉛量のMgO−Cれんがについて、Al
4SiC
4添加量の増加に伴い、酸化層厚の値が低くなっていることが確認された。しかし、各々の試料について添加バインダー量を上回るような多量のAl
4SiC
4を添加しても耐酸化性向上効果は飽和する傾向にあった。また、耐酸化性は、酸化厚み測定によって評価しているため、同じ厚み内にカーボン量が多くなる黒鉛13%の場合が、酸化厚みが最も小さくなる結果となった。黒鉛1%の方が、黒鉛3%よりも耐酸化性に優れる結果となったのは、本発明例8〜20の配合原料において、樹脂等の残炭分を含め、黒鉛1%の配合原料の方が全体としてのC源として多かったためと考えられる。全体的に耐酸化性は、黒鉛13%、黒鉛1%、黒鉛3%の順に良好であったが、いずれもAl
4SiC
4添加量を増やすほど、耐酸化性は向上し、それぞれの黒鉛量に応じて必要なバインダー量が異なるため、このバインダー量の変化に伴って、Al
4SiC
4添加量に対する耐酸化性向上の挙動が異なる結果となった。なお、
図12中の「Gr」は黒鉛の添加量を表す。
【0070】
比較例4…電気炉合成Al
4SiC
4 0.5%添加、黒鉛1%のMgO−C(予備混合あり)
比較例5…電気炉合成Al
4SiC
4 1.0%添加、黒鉛1%のMgO−C(予備混合あり)
比較例6…電気炉合成Al
4SiC
4 1.5%添加、黒鉛1%のMgO−C(予備混合あり)
(なお、ここで言う%は、質量%を表す。)
【0071】
上記の比較例4〜6のように、電気炉合成により得られたAl
4SiC
4粉末を添加して作製したMgO−Cれんが試料について、耐酸化性試験を行った。
図13に、これらの電気炉合成により得られたAl
4SiC
4粉末を添加したMgO−Cれんがの酸化層厚測定結果を示す。なお、
図13では、先の本発明例15〜17に係るMgO−Cれんが試料の結果を併せて示している。
【0072】
図中に示す通り、比較例4〜6に対して、全体的に本発明例15〜17では酸化層厚が小さく、同じAl
4SiC
4粉末添加量において、マイクロ波合成品を添加した場合の方が、酸化層厚が小さい結果となった。酸化層厚の結果から、マイクロ波合成により得られたAl
4SiC
4粉末を適用したMgO−Cれんがは、電気炉合成によるAl
4SiC
4粉末を適用した場合に比べ耐酸化性に優れることが分かった。
【0073】
比較例7…金属Al 1%添加、黒鉛3%のMgO−C
比較例8…電気炉合成Al
4SiC
4 2.0%添加、黒鉛3%のMgO−C(予備混合あり)
(なお、ここで言う%は、質量%を表す。)
【0074】
上記の比較例7〜8に記載のMgO−Cれんがと、先の本発明例11〜13に係るMgO−Cれんがについて、それぞれ耐スポール試験を行った。耐スポール試験は、各れんがを形成する配合原料の混錬物を40mm×40mm×160mmの試料に成型して、予め1400℃×10hr還元焼成を行った後、1650℃に保持した溶銑中に100mm深さまで10分間浸漬し、10秒間水冷後、5分間放冷を行うサイクルを3回行い、試験前後の音速弾性率変化、及び試料表面の亀裂の有無を確認することで評価を行った。試験結果を表5及び
図14に示す。Al
4SiC
4を多く添加した試料は、1400℃焼成後の音速弾性率が高い値を示し、緻密質であることが確認された。耐スポール試験後、Al
4SiC
4添加試料はいずれも試料表面に亀裂等観察されず、耐スポール試験後の音速弾性率も添加量の増加に伴い、高い値を示した。従来の添加物(金属Alや金属Si等)により焼成後緻密質となるMgO−Cれんがは、耐スポール性が低いことが知られている。例えば、
図15のようにAl添加MgO−Cれんがであれば、同様の耐スポール試験を行った際、割れ・崩落等が起こる。これに対して、本発明に係るAl
4SiC
4添加により焼成後緻密質としたMgO−Cれんがは、焼成後音速弾性率の高いれんがであっても、耐スポール性は高いことが確認された。また、
図16の電気炉で合成したAl
4SiC
4の場合に比べ、マイクロ波合成品では耐スポール性に優れていることが確認された。
【0075】
【表5】
【0076】
従来、酸化防止剤として用いている金属Al(比較例7)を添加した場合と、本発明に係るAl
4SiC
4(本発明例11)を添加した場合のMgO−Cれんがについて、焼成前後組織のEPMAによるAlマッピング図を
図17に示す。Alの場合は表面から反応し、れんが組織内のMgガス及びCOガスと反応し凝集したスピネル組織を生成しているのに対し、Al
4SiC
4の場合、マトリックス全体にスピネルを生成し、反応物が凝集することなく、均一なマトリックスを形成していることが確認された。すなわち、マイクロ波合成によりさらに微粉での組織全体への分散が可能となり、亀裂伸展が起こりにくい組織となった。
図15の耐スポール試験で示した通り、Al
4SiC
4の添加量を十分増やした場合でも耐スポール性の高いれんがとなった。
【0077】
また、先の本発明例6に係るMgO−Cれんがを卓上ボールミルを用いて2rpmで回転し粉砕した試料について、粉末X線回折を行った結果を
図18に示す。この結果から分かるように、れんが作製における乾燥後であってもAl
4SiC
4は変質しておらず、MgO−Cれんがにおいても上述の通りのAl
4SiC
4としての反応特性を持つことが確認された。