特許第6131638号(P6131638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131638
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】液晶ポリエステルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/02 20060101AFI20170515BHJP
   C08G 63/82 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   C08G63/02
   C08G63/82
【請求項の数】8
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2013-44943(P2013-44943)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-172953(P2014-172953A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小西 彬人
(72)【発明者】
【氏名】濱口 美都繁
(72)【発明者】
【氏名】梅津 秀之
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−167224(JP,A)
【文献】 特開2006−089714(JP,A)
【文献】 特開2004−256656(JP,A)
【文献】 特表2004−502828(JP,A)
【文献】 JISハンドブック 26 プラスチックI(試験),2014年 1月31日,第1版第1刷,999-1012
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m・24hr・atm以下であり、少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55〜85モル%含む液晶ポリエステル。
【化1】
【請求項2】
下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65〜80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55〜85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して5
0〜90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V
)の合計が実質的に等モルである請求項1に記載の液晶ポリエステル。
【化2】
【請求項3】
請求項1または2に記載の液晶ポリエステル100重量部に対して、充填材10〜200重量部を含有する液晶ポリエステル組成物。
【請求項4】
ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、請求項1または2に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項5】
窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの添加量が、ヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下である請求項4に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項6】
窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンが、脂肪族アミンである請求項4または5に記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項7】
窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が10.5以下である請求項4〜6のいずれか記載の液晶ポリエステルの製造方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の液晶ポリエステルまたは請求項3に記載の液晶ポリエステル組成物からなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルおよびその製造方法に関する。より詳しくは、高温高湿環境下で極めて優れた曲げ強度および耐トラッキング破壊性能を有する液晶ポリエステルとその製造方法、液晶ポリエステル組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の特性を有するポリマーが数多く開発され、市場に供されている。中でも、分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶ポリエステルなどの液晶性樹脂が、優れた成形性と機械的性質、絶縁性を有する点で注目され、電気・電子部品や機械部品に用途が拡大されつつある。
【0003】
これまでに、湿気による機器の誤作動や材料の劣化を防ぐために、高湿環境下における水蒸気バリア性に優れた液晶ポリエステルの検討がなされている。水蒸気バリア性に優れた液晶ポリエステルとして、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位と2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸に由来する繰り返し単位を含む芳香族液晶ポリエステルから溶融押出しされてなるフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、2,6−ナフチレン基を含む繰返し単位の含有量が全繰返し単位の合計量に対して40モル%以上である液晶ポリエステルから構成される層を有する各種積層シートや基板、前記液晶ポリエステルを含む中空樹脂筐体用樹脂組成物等が提案されている(例えば、特許文献2〜8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−342243号公報
【特許文献2】特開2012−089597号公報
【特許文献3】特開2012−158009号公報
【特許文献4】特開2012−167224号公報
【特許文献5】特開2012−169208号公報
【特許文献6】特開2012−169535号公報
【特許文献7】特開2012−186453号公報
【特許文献8】特開2012−186454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、電気・電子部品や機械部品には、高い曲げ強度や、優れた絶縁性を発揮するための耐トラッキング破壊性能が要求される。近年の機器の高性能化や高出力化、小型化や軽量化に伴い、機器内部がより高温となるため、かかる機器に用いられる部品には、高温高湿下に長時間さらされる環境においても、高い曲げ強度や耐トラッキング破壊性能を維持することが必要とされている。しかしながら、特許文献1〜8記載の技術では、高温高湿下における曲げ強度や耐トラッキング破壊性能がなお不十分であった。
【0006】
本発明は、電気・電子部品や機械部品に要求される、高温高湿環境下における曲げ強度と耐トラッキング破壊性能に優れる成形品を得ることのできる液晶ポリエステルとその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、高温高湿環境下において特定の水蒸気透過度を示す液晶ポリエステルにより、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能に極めて優れる成形品を得ることができることを見出し、以下の結論に達した。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)70mm長×70mm幅×1mm厚の試験片を用いて、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠して測定された、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度が0.05g/m・24hr・atm以下であり、少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55〜85モル%含む液晶ポリエステル、
【0009】
【化1】
【0010】
(2)下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65〜80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55〜85モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して50〜90モル%であり、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである上記(1)に記載の液晶ポリエステル、
【0011】
【化2】
【0012】
(3)上記(1)または(2)に記載の液晶ポリエステル100重量部に対して、充填材10〜 200重量部を含有する液晶ポリエステル組成物、
(4)ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させる液晶ポリエステルの製造方法であって、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する、上記(1)または(2)に記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(5)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの添加量が、ヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下である上記(4)に記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(6)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンが、脂肪族アミンである上記(4)または(5)に記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(7)窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が10.5以下である上記(4)〜(6)のいずれか記載の液晶ポリエステルの製造方法、
(8)上記(1)または(2)に記載の液晶ポリエステルまたは上記(3)に記載の液晶ポリエステル組成物からなる成形品、
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶ポリエステルにより、高温高湿環境下において優れた曲げ強度および耐トラッキング破壊性能を有する成形品を得ることができる。特に、高温高湿環境下においてこれらの特性を必要とする電気・電子部品や機械部品に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明でいう重量は質量を意味する。
【0015】
液晶ポリエステルとは、異方性溶融相を形成するポリエステルである。液晶ポリエステルとしては、例えば、後述するオキシカルボニル単位、ジオキシ単位、ジカルボニル単位などから異方性溶融相を形成するよう選ばれた構造単位から構成されるポリエステルなどが挙げられる。
【0016】
本発明の液晶ポリエステルは、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度(以下、単に水蒸気透過度という場合がある)が0.05g/m・24hr・atm以下である。電気・電子部品や機械部品では使用条件により高温にさらされる可能性があることから、想定される高温環境下における代表的な特性として、温度80℃における水蒸気透過度に着目した。また、温度80℃において、水蒸気透過度の差異が明確に表される条件として、相対湿度40%における水蒸気透過度に着目した。水蒸気透過度が0.05g/m・24hr・atmより大きい場合、液晶ポリエステルが高温高湿環境下に晒されると、多量の吸湿により密度が低下し、成形品の曲げ強度が大幅に低下する。また、多量の吸湿により高温高湿環境下における耐トラッキング破壊性能が大幅に低下する。水蒸気透過度は、好ましくは0.04g/m・24hr・atm以下、より好ましくは0.03g/m・24hr・atm以下である。なお、水蒸気透過度の下限は0g/m・24hr・atmである。
【0017】
また、本発明の液晶ポリエステルの温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度と、温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度との差は、0.037g/m・24hr・atm以下が好ましい。より好ましくは0.027g/m・24hr・atm以下、さらに好ましくは0.022g/m・24hr・atm以下である。比較的低温である温度40℃の条件での水蒸気透過度が低い液晶ポリエステルであっても、温度80℃においては水蒸気透過度が高くなることがあるが、温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度と、温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度との差を上記の範囲とすることで、得られる液晶ポリエステルの曲げ強度および耐トラッキング破壊性能は、環境の変化による影響を受けにくくなる。
【0018】
液晶ポリエステルの水蒸気透過度を前述の範囲にする手段としては、例えば、液晶ポリエステルの構造を後述の好ましい態様とする方法、後述の好ましい製造方法により液晶ポリエステルを得る方法などが挙げられる。
【0019】
本発明における水蒸気透過度は、JIS K7129(付属書C,2008年)に準拠し、温度80℃および相対湿度40%、温度40℃および相対湿度90%の各条件で測定した値を指す。かかる水蒸気透過度は、例えば、GTR−30XATK(GTRテック)を用いて測定することができる。なお、測定試料には70mm長×70mm幅×1mm厚(フィンゲート)の射出成形角板を用いる。
【0020】
次に、液晶ポリエステルを構成する構造単位について説明する。
【0021】
オキシカルボニル単位の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸などから生成した構造単位が挙げられる。成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させる観点から、芳香族ヒドロキシカルボン酸から生成した構造単位が好ましく、中でもp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位が特に好ましい。
【0022】
ジオキシ単位の具体例としては、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシノール、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、クロロハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどの芳香族ジオールから生成した構造単位、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオールから生成した構造単位、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールから生成した構造単位などが挙げられる。成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させる観点から、エチレングリコールまたは芳香族ジオールから生成した構造単位が好ましく、中でも4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンから生成した構造単位が特に好ましい。
【0023】
ジカルボニル単位の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸から生成した構造単位などが挙げられる。成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させる観点から、芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位が好ましく、中でもテレフタル酸、イソフタル酸から生成した構造単位が特に好ましい。
【0024】
また、上記構造単位に加えて、p−アミノ安息香酸、p−アミノフェノールなどから生成した構造単位を、液晶性や特性を損なわない程度の範囲でさらに有することができる。
【0025】
液晶ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、ハイドロキノンから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、2,6−ジヒドロキシナフタレンから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶ポリエステルなどが挙げられる。
【0026】
本発明の液晶ポリエステルは、少なくとも2種のジオールに由来する構造単位を有し、その一方に4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する下記構造単位(II)を有することが好ましい。このような構造を有することにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。この場合において、ジオールに由来する全構造単位の合計100モル%中、下記構造単位(II)を55〜85モル%含むことが好ましい。構造単位(II)を55モル%以上含むことにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。57モル%以上がより好ましい。一方、構造単位(II)を85モル%以下含むことにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。75モル%以下がより好ましく、65モル%以下がさらに好ましい。
【0027】
【化3】
【0028】
本発明の液晶ポリエステルは、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成されることが好ましい。このような構造を有することにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる
【0029】
【化4】
【0030】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位を、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位を、構造単位(III)はハイドロキノンから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸から生成した構造単位を、構造単位(V)はイソフタル酸から生成した構造単位を各々示す。
【0031】
上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)の含有量は任意であるが、本発明の液晶ポリエステルの特性をより効果的に発揮させるためには次の含有量であることが好ましい。すなわち、構造単位(I)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して65〜80モル%であることが好ましく、より好ましくは68〜75モル%である。また、構造単位(II)は構造単位(II)および(III)の合計に対して55〜85モル%であることが好ましく、より好ましくは55〜75モル%であり、さらに好ましくは57〜65モル%である。また、構造単位(IV)は構造単位(IV)および(V)の合計に対して好ましくは50〜90モル%であり、より好ましくは60〜88モル%であり、さらに好ましくは70〜85モル%である。このような組成を満たす液晶ポリエステルは、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度がより低減され、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。
【0032】
本発明において、構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計は実質的に等モルであることが好ましい。ここでいう「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットとしては等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
【0033】
本発明の液晶ポリエステルの組成は、液晶ポリエステルが可溶な溶媒(例えば、ペンタフルオロフェノール/重テトラクロロエタン混合溶媒)に溶解した溶液を用いてH−核磁気共鳴スペクトル測定することにより求めることができる。
【0034】
本発明の液晶ポリエステルの融点(Tm)は、220〜350℃が好ましい。融点が220℃以上であれば、耐熱性を向上させることができる。270℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。一方、融点が350℃以下であれば、成形時の成形安定性を向上させることができる。345℃以下がより好ましく、340℃以下がさらに好ましい。
【0035】
本発明の液晶ポリエステルの溶融粘度は、1〜200Pa・sが好ましい。溶融粘度が1Pa・s以上であれば、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。10Pa・s以上がより好ましく、20Pa・s以上がさらに好ましい。一方、溶融粘度が200Pa・s以下であれば、流動性を向上させることができる。100Pa・s以下がより好ましく、50Pa・s以下がさらに好ましい。なお、本発明における液晶ポリエステルの溶融粘度は、液晶ポリエステルの融点+10℃の条件で、せん断速度1,000/sの条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0036】
本発明の液晶ポリエステルの製造方法は特に限定されないが、液晶ポリエステルを構成するモノマーを、液晶ポリエステルが溶融する温度で減圧下反応させ、重縮合反応を完了させる溶融重合法が好ましい。溶融重合法は均一な液晶ポリエステルを製造するために有利な方法であり、ガス発生量が少ない優れた液晶ポリエステルを得ることができる点で好ましい。ヒドロキシカルボン酸および/またはジオールにアシル化剤を反応させ、水酸基の少なくとも一部をアシル化した後、ジカルボン酸と脱酢酸重縮合反応させることが好ましく、例えば、所定量のp−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸、無水酢酸を、撹拌翼、留出管を備え、下部に吐出口を備えた反応容器中に仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら加熱して水酸基の少なくとも一部をアセチル化した後、液晶ポリエステルの溶融温度まで昇温し、減圧下において重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。
【0037】
アセチル化反応温度は、通常130〜300℃の範囲、好ましくは130〜200℃、より好ましくは130〜150℃の範囲である。アセチル化反応時間は、通常1〜6時間、好ましくは1〜3時間である。重縮合反応温度は、通常液晶ポリエステルの溶融温度、例えば、250〜365℃の範囲であり、好ましくは液晶ポリエステルの融点+10℃以上の温度である。重縮合反応時間は、通常30分間〜6時間、好ましくは30分間〜3時間である。重縮合反応時の減圧度は、通常0.1mmHg(13.3Pa)〜20mmHg(2660Pa)であり、好ましくは10mmHg(1330Pa)以下、より好ましくは5mmHg(665Pa)以下である。なお、アセチル化反応と重縮合反応は同一の反応容器で連続して行ってもよいし、異なる反応容器で行ってもよい。
【0038】
得られた液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルが溶融する温度で、反応容器内を、例えば、およそ1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、反応容器下部に設けられた吐出口よりストランド状に吐出することができる。
【0039】
本発明においては、脱酢酸重縮合におけるモノマーの反応性を制御することにより、反応初期に生成するオリゴマーのシークエンスを好適な範囲に制御することが好ましい。例えば、モノマーとしてp−ヒドロキシ安息香酸を用いる場合、270℃におけるオリゴマーの連鎖組成において、下記式(1)の値を25以上50以下とすることが好ましい。270℃におけるオリゴマーのシークエンスを制御することにより、得られる液晶ポリエステルのシークエンスをより容易に制御できる。これにより成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。下記式(1)の値は、270℃におけるオリゴマー単位量あたりの全ての2連鎖に対する構造単位(I)同士の2連鎖の割合を示している。270℃における下記式(1)の値を25以上とすることにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。30以上がより好ましく、35以上がさらに好ましい。一方、270℃における下記式(1)の値を50以下とすることにより、構造単位(I)の長連鎖に由来する不融異物生成を抑制することができ、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。47以下がより好ましく、45以下がさらに好ましい。このような範囲であると、脱酢酸重縮合反応初期に生成するオリゴマーのシークエンスを好適な範囲に制御することができる。オリゴマーのシークエンスを制御することにより、得られる液晶ポリエステルのシークエンスも制御可能となる。これにより成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。
([HBA−HBA]/[オリゴマー中の全ての2連鎖])×100 (1)
(式(1)中、[HBA−HBA]はオリゴマー単位量あたりの構造単位(I)同士の2連鎖の個数(モル)を示し、[オリゴマー中の全ての2連鎖]はオリゴマー単位量あたりの全ての2連鎖の個数(モル)を示す。)
【0040】
ここで、270℃におけるオリゴマーの連鎖組成は、核磁気共鳴(NMR)スペクトルによって測定できる。例えば、脱酢酸重縮合反応中、270℃において採取したオリゴマーをNMR試料管に50mg秤量し、ペンタフルオロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(混合比率:50/50w/w%)800μLに溶解して、UNITY INOVA500型NMR装置(バリアン社製)を用いて、観測周波数125MHz、温度80℃の条件で13C−NMRを測定し、166〜169ppm付近に観測される全2連鎖のピーク面積のうち、166.5〜167.5ppm付近に観測される構造単位(I)同士の連鎖由来のピーク面積から、式(1)の値を算出できる。
【0041】
脱酢酸重縮合反応初期に生成するオリゴマーのシークエンスを好適な範囲に制御する方法として、例えば、脱酢酸重縮合工程における温度200℃から270℃までの間の昇温時間を75分間以上95分間以下とする方法、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する方法などが挙げられる。温度200℃から270℃までの間の昇温時間を短くすれば、反応性の高いp−ヒドロキシ安息香酸の反応速度を他のモノマーに比べ相対的に向上させることができる。温度200℃から270℃までの間の昇温時間を75分間以上とすることにより、p−ヒドロキシ安息香酸長連鎖に由来する不融異物の生成を抑制することができ、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。一方、温度200℃から270℃までの間の昇温時間を95分間以下にすることにより、p−ヒドロキシ安息香酸の連鎖を適度に生成させ、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。また、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを添加することによっても、p−ヒドロキシ安息香酸の連鎖長を制御することができ、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンを少なくとも脱酢酸重縮合反応開始までに添加する方法がより好ましい。
【0042】
本発明における芳香族アミンとは、芳香環の水素原子の少なくとも一部を窒素原子に置き換えた化合物、すなわち芳香環の外に窒素原子を含む化合物をいう。窒素原子を2つ以上含む芳香族アミンとしては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノベンゼン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノベンゼン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、4,5−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンなどが挙げられる。また、窒素原子を2つ以上含む脂肪族ジアミンとしては、例えば、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,5−ジアミノペンタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも脂肪族アミンが好ましく、脱酢酸重縮合反応初期に生成するオリゴマーのシークエンスをより容易に制御することができる。これにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。
【0043】
本発明において、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの窒素原子は、液晶ポリエステル主鎖との反応性の観点から、3級アミンであることが好ましい。
【0044】
また、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンは、炭素原子数、窒素原子数および酸素原子数の和が20以下であり、下記式(2)の値が0.3以下であることがより好ましい。このような化合物を添加すると、脱酢酸重縮合反応初期におけるモノマーの反応性をより容易に制御でき、反応初期に生成するオリゴマーのシークエンスを好適な範囲に制御することができる。これにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。また、脱酢酸重縮合により得られる液晶ポリエステル中に残存する化合物を低減することができる。
(化合物1分子中の窒素原子の数)/(化合物1分子中の窒素原子、炭素原子および酸素原子の総数)(2)
【0045】
また、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンは、その共役酸の水溶液中における酸解離定数(pKa)が10.5以下であることが好ましい。このような塩基性が比較的弱いアミンを用いることで、脱酢酸重縮合反応初期におけるモノマーの反応性をより容易に制御でき、反応初期に生成するオリゴマーのシークエンスを好適な範囲により容易に制御することができる。これにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。また、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの共役酸の水溶液中におけるpKaは7.5以上であることが好ましい。pKaが7.5以上であると、p−ヒドロキシ安息香酸の長連鎖に由来する不融異物の生成が抑制され、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。
【0046】
ここで、pKaの測定方法は、例えば、アミン化合物の水溶液を塩酸やヨウ素酸等の滴定液を用いて25℃で滴定し、あるいはアミン化合物の塩酸塩の水溶液を水酸化ナトリウム等の滴定液を用い25℃で滴定し、50%中和された時点におけるpH値から算出される。
【0047】
窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの添加量は、原料モノマーであるヒドロキシカルボン酸、ジオールおよびジカルボン酸の合計仕込み量100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下であることが好ましい。窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの添加量が0.01重量部以上であれば、脱酢酸重縮合反応初期におけるモノマーの反応性をより効果的に制御し、液晶ポリエステルの初期シークエンスを好適な範囲に容易に制御することができる。これにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。0.05重量部以上がより好ましい。一方、窒素原子を2つ以上含む芳香族または脂肪族アミンの添加量が1重量部以下であれば、脱酢酸重縮合反応初期におけるモノマーの反応性をより効果的に制御し、液晶ポリエステルの初期シークエンスを好適な範囲に容易に制御することができる。これにより、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。0.5重量部以下がより好ましい。
【0048】
本発明の液晶ポリエステルを製造する際に、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。例えば、液晶ポリエステルのポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕し、窒素気流下または減圧下、液晶ポリエステルの液晶開始温度−10〜−20℃(例えば、100〜300℃)の範囲で1〜50時間加熱し、所望の重合度まで重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。固相重合法は高重合度のポリマーを製造するために有利な方法である。
【0049】
液晶ポリエステルの重縮合反応は、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸、塩化水素などのブレンステッド酸や、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物などの触媒存在下で実施してもよい。
【0050】
上記本発明の液晶ポリエステルは、他の成分と組み合わせて液晶ポリエステル組成物としてもよい。例えば、本発明の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステルの機械強度その他の特性を付与するために充填材を含有してもよい。充填材としては、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの各種形状の充填材を挙げることができる。例えば、ガラス繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状またはウィスカー状充填材、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填材などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。上記充填材中、ガラス繊維および導電性が必要な場合にはPAN系炭素繊維が好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものであれば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどを挙げることができる。なお、充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤により処理されていてもよい。また、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0051】
本発明の液晶ポリエステル組成物において、充填材の含有量は、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対し、10〜200重量部が好ましい。充填材含有量が10重量部以上であれば、成形品の高温高湿環境下における水蒸気透過度をより低減し、高温高湿環境下における曲げ強度および耐トラッキング破壊性能をより向上させることができる。20重量部以上がより好ましく、30重量部以上がさらに好ましい。一方、充填材含有量が200重量部以下であれば、成形性および流動性に優れた液晶ポリエステル組成物が得られる。150重量部以下がより好ましく、100重量部以下がさらに好ましい。
【0052】
本発明の液晶ポリエステル組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどの非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル(PPO)、臭素化ポリカーボネート(PC)、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)を含有することができる。
【0053】
本発明の液晶ポリエステル組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、液晶ポリエステルにこれら成分をドライブレンドする方法や溶液配合する方法、液晶ポリエステルの重合時にこれら成分を添加する方法、液晶ポリエステルとこれら成分を溶融混練する方法などを挙げることができ、なかでも溶融混練する方法が好ましい。溶融混練には、公知の方法を用いることができる。溶融混練装置としては、例えば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを挙げることができる。なかでも二軸押出機が好ましい。溶融混練温度は、液晶ポリエステルの融点以上融点+50℃以下が好ましい。
【0054】
混練方法としては、1)液晶ポリエステル、充填材やその他の添加剤を元込めフィーダーから一括で投入して混練する方法(一括混練法)、2)液晶ポリエステルとその他の添加剤を元込めフィーダーから投入して混練した後、充填材および必要であればその他の添加剤をサイドフィーダーから添加して混練する方法(サイドフィード法)、3)液晶ポリエステルとその他の添加剤を高濃度に含む液晶ポリエステル組成物(マスターペレット)を作製し、次いで規定の濃度になるようにマスターペレットを液晶ポリエステル、充填材と混練する方法(マスターペレット法)などが挙げられる。また、充填材およびその他の添加剤を添加する方法としては、一括混練法、逐次添加法、高濃度組成物(マスター)を添加する方法等が挙げられ、いずれの方法でもかまわない。
【0055】
本発明の液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステル組成物は、通常の射出成形、押出成形、プレス成形などの成形方法によって、優れた表面外観(色調)および機械的性質、耐熱性、難燃性を有する成形品に加工することが可能である。ここでいう成形品としては、射出成形品、押出成形品、プレス成形品、シート、パイプ、フィルム、繊維などが挙げられる。特に、射出成形品において本発明の効果が顕著に得られるため好ましい。
【0056】
本発明の液晶ポリエステルまたは液晶ポリエステル組成物を成形して得られる成形品は、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、リレーベース、リレー用スプール、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品;顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコン用モーターインシュレーター、パワーウインド等の車載用モーターインシュレーター、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプベゼル、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品;シャンプー、リンス、液体石鹸、洗剤等の各種薬剤用ボトル;薬液保存用タンク、ガス保存用タンク、冷却液タンク、オイル移液用タンク、消毒液用タンク、輸血ポンプ用タンク、燃料タンク、キャニスター、ウォッシャー液タンク、オイルリザーバータンクなどの薬液・ガス保存用タンク;医療器具用途部品;醤油、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌、食酢等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、清酒、ビール、みりん、ウィスキー、焼酎、ワイン等の酒類、炭酸飲料、ジュース、スポーツドリンク、牛乳、コーヒー飲料、ウーロン茶、紅茶、ミネラルウォーター等の清涼飲料水などの食品保存容器;および一般生活器具部品としてのタンク、ボトル状成形品やまたはそれらタンクなどの中空容器などに用いることができる。高温高湿環境下において優れた曲げ強度および耐トラッキング破壊性能を有することから、特に、リレーケース、プリント配線板などの電気・電子部品に有用である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明が実施例により限定されるものではない。実施例中、270℃におけるオリゴマーの連鎖組成、液晶ポリエステルの融点、液晶ポリエステルの溶融粘度、液晶ポリエステルの組成、液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステル組成物の水蒸気透過度、湿熱処理前後の曲げ強度、湿熱処理後の比較トラッキング指数(CTI)、芳香族または脂肪族アミンの共役酸の水溶液中におけるpKaは以下の方法により測定した。
【0058】
(1)270℃におけるオリゴマーの連鎖組成
脱酢酸重縮合反応中、270℃において採取したオリゴマーをNMR試料管に50mg秤量し、ペンタフルオロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(混合比率:50/50w/w%)800μLに溶解して、UNITY INOVA500型NMR装置(バリアン社製)を用いて、観測周波数125MHz、温度80℃の条件で13C−NMR測定を実施した。166〜169ppm付近に観測される全2連鎖のピーク面積のうち、166.5〜167.5ppm付近に観測される構造単位(I)同士の連鎖由来のピーク面積から、下記式(1)の値を算出した。
([HBA−HBA]/[オリゴマー中の全ての2連鎖])×100 (1)
(式(1)中、[HBA−HBA]はオリゴマー単位量あたりの構造単位(I)同士の2連鎖の個数(モル)を示し、[オリゴマー中の全ての2連鎖]はオリゴマー単位量あたりの全ての2連鎖の個数(モル)を示す。)
【0059】
(2)液晶ポリエステルの融点(Tm)
示差走査熱量計DSC−7(パーキンエルマー製)により、液晶ポリエステルを室温から20℃/分の昇温条件で昇温度した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の高温条件で室温までいったん冷却し、再度20℃/分の昇温条件で昇温度した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を融点とした。以下の製造例においては、融点(Tm2)をTmと記載する。
【0060】
(3)液晶ポリエステルの溶融粘度
高化式フローテスターCFT−500D(オリフィス0.5φ×10mm)(島津製作所製)を用いて、Tm+10℃、せん断速度1000/sの条件で液晶ポリエステルの溶融粘度を測定した。
【0061】
(4)液晶ポリエステルの組成
液晶ポリエステルをNMR試料管に50mg秤量し、ペンタフルオロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(混合比率:65/35w/w%)800μLに溶解して、UNITY INOVA500型NMR装置(バリアン社製)を用いて観測周波数500MHz、温度80℃の条件でH−NMR測定を実施した。7〜9.5ppm付近に観測される各構造単位由来のピーク面積比から、液晶ポリエステルの組成を分析した。
【0062】
(5)液晶ポリエステルおよび液晶ポリエステル組成物の水蒸気透過度
各実施例および比較例により得られたペレットを、熱風乾燥機を用いて150℃で3時間乾燥した後、ファナック製ファナックα30C射出成形機で射出成形し、70mm長×70mm幅×1mm厚(フィンゲート)の試験片を作製した。射出成形条件は、樹脂温度を融点+20℃、金型温度を130℃に設定し、充填下限圧+1MPaの圧力で行った。得られた試験片について、JISK7129(付属書C,2008年)に準拠し、GTR−30XATK(GTRテック)を用いて、(i)温度80℃および相対湿度40%、(ii)温度40℃および相対湿度90%の2条件で水蒸気透過度を測定した。
【0063】
(6)湿熱処理前後の曲げ強度
各実施例および比較例により得られたペレットを、熱風乾燥機を用いて150℃で3時間乾燥した後、ファナック製ファナックα30C射出成形機で射出成形し、7mm幅×127mm長×3.2mm厚の曲げ試験片を成形した。射出成形条件は、樹脂温度を液晶ポリエステルの融点+20℃、金型温度を130℃に設定し、充填下限圧+1MPaの圧力で行った。この試験片について、ASTMD790に準拠して曲げ強度を測定した。n数は6とし、各測定値から最大値および最小値を除いた4つの値の平均値を湿熱処理前の曲げ強度とした。また、この試験片を温度121℃、湿度100%、2atmの条件下(プレッシャークッカーテスト)で24時間静置して湿熱処理した後、ASTMD790に準拠して同様に曲げ強度を測定した。n数は6とし、各測定値から最大値および最小値を除いた4つの値の平均値を、湿熱処理後の曲げ強度とした。湿熱処理前後の曲げ強度測定値から、湿熱処理前の曲げ強度に対する湿熱処理後の曲げ強度の比を求めた。
【0064】
(7)湿熱処理後の比較トラッキング指数(CTI)
各実施例および比較例により得られたペレットを、熱風乾燥機を用いて150℃で3時間乾燥した後、ファナック製ファナックα30C射出成形機で射出成形し、80mm幅×80mm長×2mm厚の試験片を作製した。射出成形条件は上記(6)と同じとした。この試験片を温度121℃、湿度100%、2atmの条件下(プレッシャークッカーテスト)で24時間静置して湿熱処理した。湿熱処理後の試験片について、IEC60112に準拠して、0.1重量%塩化アンモニウム水溶液、白金電極を用い、試験片にトラッキングが生じる印加電圧(V:ボルト)を求めた。n数は6とし、各測定値から最大値および最小値を除いた4つの値の平均値を、この数値を比較トラッキング指数(V)とした。なお、比較トラッキング指数が高いほど、耐トラッキング破壊性能に優れることを示す。
【0065】
(8)芳香族または脂肪族アミンの共役酸の水溶液中におけるpKa
各実施例および比較例に用いた芳香族または脂肪族アミン化合物の水溶液を、塩酸を用いて25℃で滴定し、50%中和された時点におけるpH値からpKaを算出した。
【0066】
[実施例1]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が100分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、38であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に、反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−1)のペレットを得た。
【0067】
この液晶ポリエステル(a−1)のTmは333℃、溶融粘度は28Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位(構造単位(I))と4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))とハイドロキノン由来の構造単位(構造単位(III))の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、テレフタル酸由来の構造単位(構造単位(IV))およびイソフタル酸由来の構造単位(構造単位(V))の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0068】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0221g/m・24hr・atm、0.0093g/m・24hr・atmであった。
【0069】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0070】
[実施例2]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部、および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が85分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、36であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−2)のペレットを得た。
【0071】
この液晶ポリエステル(a−2)のTmは332℃、溶融粘度は27Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0072】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0262g/m・24hr・atm、0.0098g/m・24hr・atmであった。
【0073】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0074】
[実施例3]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸763重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル309重量部、ハイドロキノン79重量部、テレフタル酸255重量部、イソフタル酸136重量部、および無水酢酸1159重量部(フェノール性水酸基合計の1.07当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、330℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が88分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、33であった。その後、重合温度を330℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−3)のペレットを得た。
【0075】
この液晶ポリエステル(a−3)のTmは312℃、溶融粘度は29Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は70モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は70モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は70モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は65モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0076】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0385g/m・24hr・atm、0.0118g/m・24hr・atmであった。
【0077】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0078】
[実施例4]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸1271重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル214重量部、テレフタル酸191重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート221重量部および無水酢酸1280重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、330℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が90分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、28であった。その後、重合温度を330℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−4)のペレットを得た。
【0079】
この液晶ポリエステル(a−4)のTmは326℃、溶融粘度は13Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))とエチレングリコール由来の構造単位の合計に対する構造単位(II)の割合は50%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は89モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は100モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は100モル%であった。構造単位(II)およびエチレングリコール由来の構造単位の合計と、テレフタル酸由来の構造単位(構造単位(IV))は実質的に等モルであった。
【0080】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0491g/m・24hr・atm、0.0143g/m・24hr・atmであった。
【0081】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0082】
[実施例5]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル335重量部、ハイドロキノン22重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部、および無水酢酸1140重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が87分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、27であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−5)のペレットを得た。
【0083】
この液晶ポリエステル(a−5)のTmは335℃、溶融粘度は29Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は90モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は90モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0084】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0486g/m・24hr・atm、0.0140g/m・24hr・atmであった。
【0085】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0086】
[実施例6]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸576重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル311重量部、ハイドロキノン122重量部、テレフタル酸439重量部、イソフタル酸23重量部、および無水酢酸1065重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が83分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、38であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−6)のペレットを得た。
【0087】
この液晶ポリエステル(a−6)のTmは330℃、溶融粘度は26Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は60モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は95モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0088】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0474g/m・24hr・atm、0.0138g/m・24hr・atmであった。
【0089】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0090】
[実施例7]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸1037重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル148重量部、ハイドロキノン58重量部、テレフタル酸98重量部、イソフタル酸120重量部、および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が90分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、38であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−7)のペレットを得た。
【0091】
この液晶ポリエステル(a−7)のTmは337℃、溶融粘度は30Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は85モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は45モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0092】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0453g/m・24hr・atm、0.0132g/m・24hr・atmであった。
【0093】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0094】
[実施例8]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル186重量部、ハイドロキノン110重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部、および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が77分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、26であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−8)のペレットを得た。
【0095】
この液晶ポリエステル(a−8)のTmは334℃、溶融粘度は28Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は50モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は50モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0096】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0495g/m・24hr・atm、0.0144g/m・24hr・atmであった。
【0097】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0098】
[実施例9]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が100分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、37であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−9)のペレットを得た。
【0099】
この液晶ポリエステル(a−9)のTmは333℃、溶融粘度は27Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0100】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0244g/m・24hr・atm、0.0096g/m・24hr・atmであった。
【0101】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0102】
[実施例10]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、トリブチルアミン0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が92分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、26であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−10)のペレットを得た。
【0103】
この液晶ポリエステル(a−10)のTmは332℃、溶融粘度は27Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0104】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0440g/m・24hr・atm、0.0128g/m・24hr・atmであった。
【0105】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0106】
[実施例11]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が95分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、27であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−11)のペレットを得た。
【0107】
この液晶ポリエステル(a−11)のTmは333℃、溶融粘度は26Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0108】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0462g/m・24hr・atm、0.0134g/m・24hr・atmであった。
【0109】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0110】
[実施例12]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N−メチルイミダゾール0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が77分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、48であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−12)のペレットを得た。
【0111】
この液晶ポリエステル(a−12)のTmは336℃、溶融粘度は29Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0112】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0477g/m・24hr・atm、0.0139g/m・24hr・atmであった。
【0113】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0114】
[実施例13]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.001重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が100分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、28であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−13)のペレットを得た。
【0115】
この液晶ポリエステル(a−13)のTmは333℃、溶融粘度は28Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0116】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0468g/m・24hr・atm、0.0137g/m・24hr・atmであった。
【0117】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0118】
[実施例14]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン1.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が78分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、49であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−14)のペレットを得た。
【0119】
この液晶ポリエステル(a−14)のTmは337℃、溶融粘度は30Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0120】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0465g/m・24hr・atm、0.0135g/m・24hr・atmであった。
【0121】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0122】
[実施例15]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込んだ。同時に、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノベンゼン0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が81分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、47であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−15)のペレットを得た。
【0123】
この液晶ポリエステル(a−15)のTmは334℃、溶融粘度は29Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0124】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0411g/m・24hr・atm、0.0122g/m・24hr・atmであった。
【0125】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0126】
[実施例16]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸912重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル410重量部、テレフタル酸274重量部、イソフタル酸91重量部および無水酢酸1235重量部(フェノール性水酸基合計の1.1当量)を仕込んだ。同時に、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、テレフタル酸およびイソフタル酸の合計100重量部に対して、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.1重量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が90分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、49であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−16)のペレットを得た。
【0127】
この液晶ポリエステル(a−16)のTmは327℃、溶融粘度は27Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は100モル%であり、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位(構造単位(I))と、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、テレフタル酸由来の構造単位(構造単位(IV))およびイソフタル酸由来の構造単位(構造単位(V))の合計に対する構造単位(IV)の割合は75モル%であった。構造単位(II)と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0128】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0483g/m・24hr・atm、0.0121/m・24hr・atmであった。
【0129】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0130】
[比較例1]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器に6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸829重量部、ハイドロキノン273重量部、テレフタル酸83重量部、2,6−ナフタレンジカルボン酸378重量部、および無水酢酸1227重量部(フェノール性水酸基合計の1.15当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が93分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−17)のペレットを得た。
【0131】
この液晶ポリエステル(a−17)のTmは333℃、溶融粘度は28Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸由来の構造単位が55モル%、ハイドロキノン由来の構造単位が22.5モル%、テレフタル酸由来の構造単位が5モル%、および2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位が17.5モル%であった。
【0132】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0597g/m・24hr・atm、0.0115g/m・24hr・atmであった。
【0133】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0134】
[比較例2]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸912重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル410重量部、テレフタル酸274重量部、イソフタル酸91重量部、および無水酢酸1235重量部(フェノール性水酸基合計の1.1当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が90分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、53であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−18)のペレットを得た。
【0135】
この液晶ポリエステル(a−18)のTmは327℃で、溶融粘度は27Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は100モル%であり、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位(構造単位(I))と、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、テレフタル酸由来の構造単位(構造単位(IV))およびイソフタル酸由来の構造単位(構造単位(V))の合計に対して構造単位(IV)は75モル%であった。構造単位(II)と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0136】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0550g/m・24hr・atm、0.0126g/m・24hr・atmであった。
【0137】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0138】
[比較例3]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸1132重量部、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸410重量部、および無水酢酸1169重量部(フェノール性水酸基合計の1.02当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、330℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が87分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、62であった。その後、重合温度を330℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−19)のペレットを得た。
【0139】
この液晶ポリエステル(a−19)のTmは320℃、溶融粘度は26Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位(構造単位(I))が70モル%、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸由来の構造単位が30モル%であった。
【0140】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0619g/m・24hr・atm、0.0146g/m・24hr・atmであった。
【0141】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0142】
[比較例4]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸829重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル223重量部、ハイドロキノン88重量部、テレフタル酸266重量部、イソフタル酸66重量部、および無水酢酸1072重量部(フェノール性水酸基合計の1.05当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で2時間反応させアセチル化を終了した後、350℃まで4時間で昇温した。このとき、200℃から270℃に至るまでの時間が100分間となるように、温度を制御しながら昇温を行った。また、前記方法で270℃におけるオリゴマーの組成分析を行い、前記式(1)の値を求めたところ、23であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間かけて1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、トルクが15kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして、液晶ポリエステル(a−20)のペレットを得た。
【0143】
この液晶ポリエステル(a−20)のTmは330℃、溶融粘度は28Paであった。また、前記方法により組成分析を行ったところ、ジオール由来構造単位中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は60モル%であり、構造単位(I)、構造単位(II)および構造単位(III)の合計に対する構造単位(I)の割合は75モル%、構造単位(II)と構造単位(III)の合計に対する構造単位(II)の割合は60モル%、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計に対する構造単位(IV)の割合は80モル%であった。構造単位(II)および構造単位(III)の合計と、構造単位(IV)および構造単位(V)の合計は実質的に等モルであった。
【0144】
また、(i)温度80℃および相対湿度40%における水蒸気透過度、(ii)温度40℃および相対湿度90%における水蒸気透過度は、それぞれ0.0538g/m・24hr・atm、0.0156g/m・24hr・atmであった。
【0145】
得られたペレットについて、前記(6)〜(7)に記載の方法で、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0146】
実施例1〜16および比較例1〜4の評価結果を表1〜2に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
実施例1〜16および比較例1〜4で得られた液晶ポリエステルに対して、さらに充填材を加えて、液晶ポリエステル組成物を作製した。各実施例および比較例において用いた充填材を次に示す。
充填材(B)
(b−1) 日本電気硝子製 ミルドファイバー(40M−10A)
(b−2) 日本電気硝子製 ガラスチョップドストランド(ECS03T747H)
(b−3) 山口雲母工業製 マイカ(A−21)
(b−4) 富士タルク工業製 タルク(PKP−80)。
【0150】
[実施例17〜36、比較例5〜12]
東芝機械製TEM35B型2軸押出機(噛み合い型同方向)に、シリンダーC1(元込めフィーダー側ヒーター)〜C6(ダイ側ヒーター)の、C3部にサイドフィーダーを設置し、C5部に真空ベントを設置した。ニーディングブロックをC2部、C4部に組み込んだスクリューアレンジを用い、液晶ポリエステル(a−1〜a−20)を表3〜4に示す配合量でホッパーから投入し、充填材(b−1〜b−4)を液晶ポリエステル100重量部に対して表3〜4に示す配合量でサイドフィーダーから投入し、シリンダー温度を液晶ポリエステルの融点+20℃に設定して溶融混練した。ダイからストランド状に吐出した液晶ポリエステル組成物を水冷バスにより冷却した後、ストランドカッターでペレタイズして液晶ポリエステル組成物のペレットを得た。得られたペレットについて、前記(5)〜(7)に記載の方法で、液晶ポリエステル組成物の水蒸気透過度、湿熱処理前後の曲げ強度および湿熱処理後の比較トラッキング指数の評価を行った。
【0151】
実施例17〜36および比較例5〜12の評価結果を表3〜4に示す。
【0152】
【表3】
【0153】
【表4】