特許第6131668号(P6131668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131668
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】変速機のパーキング機構
(51)【国際特許分類】
   B60T 1/06 20060101AFI20170515BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20170515BHJP
   F16H 63/34 20060101ALI20170515BHJP
   B24C 11/00 20060101ALI20170515BHJP
   B24C 1/06 20060101ALI20170515BHJP
   F16D 65/28 20060101ALI20170515BHJP
   F16D 121/14 20120101ALN20170515BHJP
   F16D 125/28 20120101ALN20170515BHJP
【FI】
   B60T1/06 G
   F16D63/00 H
   F16H63/34
   B24C11/00 C
   B24C1/06
   F16D65/28
   F16D121:14
   F16D125:28
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-66434(P2013-66434)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-190432(P2014-190432A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】前本 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】小此木 健一
(72)【発明者】
【氏名】明石 浩平
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−009960(JP,A)
【文献】 特開2012−135864(JP,A)
【文献】 特開2006−346761(JP,A)
【文献】 特許第3212433(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
F16H 63/34
B60T 1/06
B24C 1/06
B24C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機の出力軸に設けられタイヤと直結されてタイヤをロックするためのパーキングギヤと、前記変速機内で揺動自在に設けられパーキング時に前記パーキングギヤと噛合してパーキングギヤをロックするためのパーキングポールと、該パーキングポールの作動レバー部に対して交差する方向に進退自在に設けられると共に、パーキング時にパーキングポールを作動する位置に進入され、かつ、非パーキング時に後退する位置に保持されるカム軸を有し、該カム軸に非パーキング時に前記作動レバー部と係合する非作用側円錐部を有すると共にその非作用側円錐部と連続し、かつ、作動レバー部をパーキングギヤにパーキングポールの爪が係合する位置に揺動する作用側円錐部を有するカム体と、を備えた変速機のパーキング機構において、
前記カム体の作用側円錐部の外周又は、前記パーキングポールの作動レバー部には、潤滑油を溜めておくためのディンプル面形成され、
前記ディンプル面は浸炭材からなり、前記ディンプル面のディンプルは、前記カムの作用側円錐部の外周面又は、前記パーキングポールの作動レバー部の表面に、直径0.12mm以上0.40mm以下の鋼球を50m/s以上の投射速度で投射して形成されると共に、直径が4μm以上20μm以下に形成され
前記パーキングポール及び前記作用側円錐部は浸炭材からなる
ことを特徴とする変速機のパーキング機構。
【請求項2】
前記鋼球の投射は、カバレージが100%以上となるようにされた請求項1に記載の変速機のパーキング機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機のパーキング機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1及び図3に示すように、変速機のパーキング機構は、変速機の出力軸に設けられタイヤと直結されてタイヤをロックするためのパーキングギヤと、変速機内で揺動自在に設けられパーキング時にパーキングギヤと噛合してパーキングギヤをロックするためのパーキングポールと、パーキングポールの揺動先端部に対して進退自在に設けられパーキングギヤをロックするときパーキングポールをパーキングギヤ側に揺動させるためのカム体とを備える。
【0003】
また、変速機内には、カム体がパーキングポールをパーキングギヤ側に揺動させるとき、カム体を支持するためのブロックが設けられている。
【0004】
すなわち、カム体はブロックとパーキングポールとの間に進入することにより、パーキングポールをパーキングギヤに噛合させてパーキングギヤの回転をロックするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−51174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両が坂道に駐車された場合、タイヤに発生した車重によるトルクは変速機内部のパーキングギヤ上に発生する。このトルクにより、パーキングポールには、カム体を押しつぶす方向の荷重Fが発生し、カム体は、パーキングポールとブロックとの間に挟み込まれる。また、この荷重Fにより、パーキングポール及びブロックと接触するカム体の接触面には摩擦保持力が発生し、カム体は自己ロックされることとなる。
【0007】
この自己ロックを解除するためには、パーキングポールとブロックの間からカム体を荷重Fが掛かった状態のまま引き抜く必要がある。
【0008】
しかしながら、勾配や車重が大きい場合、カム体とパーキングポールとの接触面は高荷重により油膜切れを起こし、この状態で解除操作を行うと、接触面が凝着し摩耗・摩滅するという課題があった。
【0009】
そして、パーキングポールと接触するカム体の接触面が摩滅すると、摩擦係数が極端に高くなり、カム解除の操作荷重が著しく増大し、程度が悪化するとロック解除不能に陥る可能性も考えられた。
【0010】
また、かかる事態を防ぐため、カム体等の部品のサイズを大きくしたり接触面積が大きくなるように形状を変更して接触面圧を減らさざるを得ないという課題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、カム体等の部品のサイズや形状を変更することなく、カム体とパーキングポールとの接触面の油膜切れを防ぐことができ、摩擦係数を低く安定させることができ、ロック解除に必要な操作力を低減できる変速機のパーキング機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、変速機の出力軸に設けられタイヤと直結されてタイヤをロックするためのパーキングギヤと、前記変速機内で揺動自在に設けられパーキング時に前記パーキングギヤと噛合してパーキングギヤをロックするためのパーキングポールと、該パーキングポールの作動レバー部に対して交差する方向に進退自在に設けられると共に、パーキング時にパーキングポールを作動する位置に進入され、かつ、非パーキング時に後退する位置に保持されるカム軸を有し、該カム軸に非パーキング時に前記作動レバー部と係合する非作用側円錐部を有すると共にその非作用側円錐部と連続し、かつ、作動レバー部をパーキングギヤにパーキングポールの爪が係合する位置に揺動する作用側円錐部を有するカム体と、を備えた変速機のパーキング機構において、前記カムの作用側円錐部の外周又は、前記パーキングポールの作動レバー部に、潤滑油を溜めておくためのディンプル面を形成したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カム体及びパーキングポールのサイズや形状を変更することなく、カム体とパーキングポールとの接触面の油膜切れを防ぐことができ、摩擦係数を低く安定させることができ、ロック解除に必要な操作力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係る変速機のパーキング機構の要部斜視図である。
図2図1の要部斜視図である。
図3】変速機のパーキング機構の概略説明図である。
図4】本実施の形態に係るディンプル面の撮影箇所を示す図である。
図5図4のA部を顕微鏡で撮影した金属組織を示す図である。
図6図5のD部を顕微鏡で撮影した金属組織を示す図である。
図7図4のB部を顕微鏡で撮影した金属組織を示す図である。
図8図7のE部を顕微鏡で撮影した金属組織を示す図である。
図9図4のC部を顕微鏡で撮影した金属組織を示す図である。
図10図9のF部を顕微鏡で撮影した金属組織を示す図である。
図11】ディンプル面を有するパーキングポールを使用した後、図4のB部相当部を撮影した図である。
図12】ディンプル面を有しないパーキングポールを使用した後、図4のB部相当部を撮影した図である。
図13】パーキングギヤのトルクと解除操作トルクとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る変速機のパーキング機構を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は変速機のパーキング機構の要部を斜め上方から視た斜視図であり、図2はカムを要部とした要部斜視図であり、図3は、シフトレバーからパーキングギヤまでのパーキング機構の概略構造を示す説明図である。
【0017】
なお、本実施の形態における特徴は、主にカム及びパーキングポールに後述する表面処理を施した点にあるため、図1及び図3については前述の背景技術の説明と兼用する。ただし、図1及び図3に示す構造は、本実施の形態の背景となった開発中の技術を示すものであり、公に知られたものとは限らない。
【0018】
図1図2及び図3に示すように、変速機のパーキング機構1は、変速機の出力軸2に設けられタイヤ(図示せず)をロックするためのパーキングギヤ3と、変速機内で揺動自在に設けられパーキングギヤ3と噛合してパーキングギヤ3をロックするためのパーキングポール4と、パーキング時にパーキングポール4をパーキングギヤ3側に押してパーキングギヤ3にパーキングポール4を噛合させるためのカム体5と、カム体5がパーキングポール4をパーキングギヤ3側に揺動させるとき、カム体5を支持するためのブロック6とを備える。
【0019】
パーキングギヤ3は、出力軸2、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び車軸(図示せず)を介してタイヤと直結されており、パーキングギヤ3の回転をロックすることでタイヤの回転がロックされるようになっている。パーキングギヤ3は、平歯車からなり、外周に歯3aを有する。
【0020】
パーキングポール4は、水平方向に延びる出力軸2と平行な軸7回り揺動自在に枢支された作動レバー部8と、作動レバー部8のパーキングギヤ3側に設けられパーキングギヤ3に係脱自在に噛合される爪9と、作動レバー部8の爪9とは反対側の面に設けられカム体5を受ける受部10とを備える。受部10は、凹状に形成されており、パーキング時にカム体5に圧着されるようになっている。また、受部10のカム体退出方向側の作動レバー部8には、カム体5を案内するためのガイド部11が形成されている。ガイド部11は、受部10からカム体5の退出方向に向かうにつれて拡径する凹状に形成されている。また、パーキングポール4は、パーキングギヤ3より下方に配置されており、カム体5から押されたとき以外は自重でパーキングギヤ3から離間するようになっている。パーキングポール4は浸炭材からなる。
【0021】
カム体5は、パーキングポール4の作動レバー部8に対して交差する方向に進退自在に設けられるカム軸12と、カム軸12の先端部に設けられる固定カム部13と、固定カム部13より基端側のカム軸12に軸方向移動可能に設けられる可動カム部14と、カム軸12に設けられ可動カム部14を先端側に付勢するバネ15とを備える。
【0022】
図3に示すように、カム軸12は、揺動自在な中間レバー機構16及びワイヤ17を介してシフトレバー18に連結されており、シフトレバー18がパーキングポジションPに移動されることで先端側(図中左側)に押されてパーキングポール4を作動する位置に進入され、シフトレバー18が他のポジションに移動されることで後退する位置に保持されるようになっている。中間レバー機構16は、カム軸12の基端に連結される第1レバー19と、シフトレバー18とワイヤ17を介して連結される第2レバー20と、レバー19と第2レバー20を連結するシャフト21とを備える。
【0023】
固定カム部13は、小径の筒状に形成されており、カム軸12に同軸に設けられている。固定カム部13は、パーキングポール4をパーキングギヤ3から離間させるように支持する。
【0024】
可動カム部14は、筒状の浸炭材からなり、カム軸12に挿通されるようになっている。可動カム部14は、先端側に形成され固定カム部13と同径の小径円筒部22と、後端側に形成される緩傾斜角円錐部(作用側円錐部)23と、小径円筒部22と緩傾斜角円錐部23の間に形成され緩傾斜角円錐部23より大きい傾斜角で小径円筒部22と緩傾斜角円錐部23を接続する円錐部(非作用側円錐部)24とを備える。小径円筒部22及び円錐部24は、非パーキング時に作動レバー部8と係合するようになっている。緩傾斜角円錐部23は、パーキングポール4の作動レバー部8と係合したとき、パーキングポール4の爪9がパーキングギヤ3に噛合する位置に作動レバー部8を揺動するようになっている。
【0025】
また特に、可動カム部14の緩傾斜角円錐部23の外周には、潤滑油を溜めておくためのディンプル面25が形成されている。
【0026】
ディンプル面25のディンプルは、可動カム部14の緩傾斜角円錐部23の外周面に鋼球を投射することで形成されている。具体的には、ディンプルは、直径0.12mm以上0.40mm以下の鋼球を50m/s以上の投射速度で投射して形成されており、直径が4μm以上20μm以下のマイクロディンプルとなっている。
【0027】
また、鋼球の投射は、カバレージが100%以上となるようにされている。なお、カバレージとは、対象物へのショット総量の指数である。具体的には、試験片にペンキを塗布し、ショットを行うと、ショットが当たった部分のペンキが剥げるものとしたとき、全面積のペンキが剥げるショット量を100%とし、全面積の半分のペンキが剥げるようなショット量を50%とするように、その状態となるショット量(通常は処理時間に比例)をカバレージとして定義される。
【0028】
ブロック6は、変速機に一体に設けられると共に、パーキングギヤ3の径方向外方にパーキングギヤ3に近接して設けられている。ブロック6には、カム体5をカム軸12の軸方向に案内するベース溝26が形成されると共に、カム軸12が先端方向に移動するとき可動カム部14の円錐部24に当接して可動カム部14をパーキングギヤ3側に案内すると共にベース溝26内に案内するためのベースガイド部27が形成されている。ベース溝26は、可動カム部14の緩傾斜角円錐部23の外径と同径の内径を有する断面円弧状に形成されており、可動カム部14を広い面積で受けられるようになっている。ベースガイド部27は、ベース溝26からカム体5の退出方向に向かうにつれて拡径する凹状に形成されている。
【0029】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0030】
図3に示すように、シフトレバー18がパーキングポジションPに移動されると、ワイヤ17を介して中間レバー機構16の第2レバー20が押される。この力は、シャフト21を介して第1レバー19に伝達され、第1レバー19が第2レバー20と同方向に回動する。これにより、カム軸12は先端側に押され、可動カム部14の円錐部24がパーキングポール4のガイド部11に押し付けられ、パーキングポール4がパーキングギヤ3側に揺動される。パーキングポール4の爪9がパーキングギヤ3の歯3aの先端に当たるなどしてパーキングギヤ3と噛合できなかった場合、可動カム部14は円錐部24をガイド部11に押し付けた状態の位置に留まる。パーキングギヤ3が微少回転してその歯3a間にパーキングポール4の爪9が位置されたとき、可動カム部14はバネ15の力でカム軸12の先端側へ移動し、パーキングポール4をパーキングギヤ3側にさらに揺動させてパーキングギヤ3とパーキングポール4の爪9とを噛合させる。この後、可動カム部14は緩傾斜角円錐部23の外周面をパーキングポール4の受部10及びブロック6に当接させた状態で止まる。
【0031】
パーキング位置が坂道であった場合、タイヤに発生した車重によるトルクはパーキングギヤ3上に発生し、パーキングポール4には、カム体5を押しつぶす方向の荷重が発生し、可動カム部14は、パーキングポール4とブロック6との間に挟み込まれる。このとき、変速機内では常に潤滑油が飛散されており、可動カム部14の緩傾斜角円錐部23の外周にはディンプル面25が形成されているため、そのディンプルに潤滑油が保持されている。
【0032】
この状態からシフトレバー18が操作されてパーキングポジションPから他のポジションに移動されると、カム軸12には、基端方向への力が作用し、可動カム部14にも基端方向への力が作用する。このとき、可動カム部14はパーキングポール4とブロック6との間に高荷重で挟み込まれているが、パーキングポール4と接触する緩傾斜角円錐部23の外周面のディンプルには潤滑油が保持されているため、油膜切れを起こす高い荷重の下でも、パーキングポール4と可動カム部14の接触部にはディンプルに保持された潤滑油が供給され、パーキングポール4と可動カム部14との接触面に油膜切れが発生することはない。このため、パーキングポール4と可動カム部14との接触面が凝着して摩耗・摩滅することはない。そして、パーキングポール4と可動カム部14との摩擦係数を低く安定させることができ、ロック解除に必要な操作力を低減できる。
【0033】
このように、緩傾斜角円錐部23の外周に潤滑油を溜めておくためのディンプル面25を形成したため、カム体5及びパーキングポール4のサイズや形状を変更することなく、カム体5とパーキングポール4との接触面の油膜切れを防ぐことができ、摩擦係数を低く安定させることができ、ロック解除に必要な操作力を低減できる。
【0034】
また、ディンプル面25は浸炭材からなり、ディンプル面25のディンプルは、カムの緩傾斜角円錐部23および円錐部24の外周面に、直径0.12mm以上0.40mm以下の鋼球を50m/s以上の投射速度で投射して形成されると共に、直径が4μm以上20μm以下に形成されるものとしたため、カム体5に確実にディンプル面25を形成できると共に、そのディンプルに確実に潤滑油を保持させることができる。
【0035】
また、鋼球の投射は、カバレージが100%以上となるようにするため、ディンプル面25に十分な数のディンプルを均等に形成でき、十分な量の潤滑油を保持できると共に、接触面に安定して潤滑油を供給できる。
【0036】
なお、カム体5は、非パーキング時にはパーキングポール4よりもカム軸12の基端側に位置され、カム軸12が先端方向に移動したときパーキングポール4とブロック6との間に進入するものについて説明したが、これに限るものではない。カム体5は、非パーキング時には、パーキングポール4よりもカム軸12の先端側に位置され、カム軸12が基端方向に移動したときパーキングポール4とブロック6との間に進入するものとしてもよい。この場合、カム体5は、軸方向の向きを逆にしてカム軸12に設けられるとよい。
【0037】
また、ディンプル面25は、可動カム部14の緩傾斜角円錐部23の外周に限るものではなく、パーキングポール4の作動レバー部8の表面に形成するものとしてもよい。これによってもカム体5とパーキングポール4との接触面に潤滑油を保持させておくことができ、油膜切れを防ぐことができ、ロック解除に必要な操作力を低減できる。
【0038】
図4図10は、パーキングポール4に上述の条件で鋼球を投射した後のディンプル面を電子顕微鏡で撮影した状態を示す。図示するように、各部に直径4〜20μmのディンプルを形成できることが分かる。
【0039】
また、図11は、本実施の形態にかかるパーキングポールの接触面に高面圧の負荷をかけて使用した後、撮影したもの(実施例)であり、図12はディンプル面を有しないパーキングポールを同一負荷条件で使用した後、撮影したもの(比較例)である。なお、図11に示すパーキングポールの最終仕上げ方法は、浸炭焼き入れ後、スケールを除去し、上述の条件で鋼球を投射して作動レバー部にディンプル面を形成したものである。図12に示すパーキングポールの最終仕上げ方法は、浸炭焼き入れ後、スケール除去のみ実施したものである。
【0040】
図12に示す比較例では、使用面で油膜切れが発生し、融着による表面のはく離が発生しているのに対し、図11に示す実施例では、使用面に融着によるはく離がなく、焼きつき限界荷重が向上していることが分かる。
【0041】
図13は、パーキングギヤ上のトルクとロック解除時のカム軸の操作トルクとの関係を表したものである。図中の実線は可動カム部の緩傾斜角円錐部の外周面の外周にディンプル面が形成されている場合を示し、破線はディンプル面が形成されていない場合を示す。
【0042】
図示するように、ディンプル面が形成されていない場合より、ディンプル面が形成されている場合の方がカム軸の操作トルクを小さく抑えられ、接触面の摩擦係数を低く安定化できていることが分かる。
【符号の説明】
【0043】
1 パーキング機構
2 出力軸
3 パーキングギヤ
4 パーキングポール
5 カム体
8 作動レバー部
9 爪
12 カム軸
23 緩傾斜角円錐部(作用側円錐部)
24 円錐部(非作用側円錐部)
25 ディンプル面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13