(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転軸に一体回転可能に固定されたロータコア、及び前記ロータコアに埋め込まれる態様で固定されるとともに周方向において同一の極性が対向するように磁化された複数対の埋込磁石を有するロータと、
前記ロータコアにおける前記一対の埋込磁石に挟まれたロータ磁極部と対向するティースを有するステータコア、及び前記ティースに巻回されるコイルを有するステータと、
前記コイルへの電力供給を通じて前記ステータに回転磁界を発生させる制御装置とを備えた回転電機において、
前記回転軸に相対回転可能に支持されるとともに、補助磁石が固定されることにより供給体磁極部が形成された磁束供給体を備え、
前記ロータの回転時における前記磁束供給体の該ロータに対する相対回転角度が、前記ロータ磁極部の極性と該ロータ磁極部と対向する前記供給体磁極部の極性とが反対になる弱め角度、及び前記ロータ磁極部の極性と該ロータ磁極部と対向する前記供給体磁極部の極性とが同一になる強め角度で保持可能に構成され、
前記制御装置は、前記ロータの磁束方向の電流であるd軸電流を、前記磁束供給体の相対回転角度を変更するときには弱め界磁又は強め界磁を行うように供給し、それ以外のときには零とするように制御することを特徴とする回転電機。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、回転電機の第1実施形態を図面に従って説明する。
図1及び
図2に示す回転電機(電動モータ)1は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車の駆動源として用いられるものである。同図に示すように、回転電機1は、筒状のハウジング2と、ハウジング2内に収容されたステータ3と、ステータ3の径方向内側(内周側)に間隔を空けて配置されたロータ4と、電力供給を通じてステータ3に回転磁界を発生させる制御装置5とを備えている。つまり、本実施形態の回転電機1は、インナロータ型のラジアルギャップモータとして構成されている。
【0016】
ハウジング2は、一端側(
図1中、右側)が開口した有底円筒状のハウジング本体6と、ハウジング本体6の開口端を閉塞するように設けられる円板状のカバー7とを有している。ハウジング本体6の底部6aの中央には、軸方向に貫通した挿通孔8が形成され、カバー7の中央には、軸方向に貫通した挿通孔9が形成されている。
【0017】
ステータ3は、ハウジング本体6の筒状部6bの内側に固定された円筒状の円筒部11、及び円筒部11から径方向内側に向かって放射状に延びる複数(本実施形態では、12個)のティース12からなるステータコア13を備えている。ステータコア13は、珪素鋼板等の電磁鋼板を複数枚積層することにより構成されている。そして、各ティース12には、複数(本実施形態では、12個)のコイル15が巻装されている。なお、コイル15の接続端部15aは、ハウジング2の外部に引き出されて制御装置5に接続されている。
【0018】
ロータ4は、回転軸21と一体回転可能に固定された円筒状のロータコア22と、ロータコア22に埋め込まれる態様で固定された複数対(本実施形態では、4対)の埋込磁石23a,23bとを備えている。つまり、本実施形態のロータ4は、所謂埋込磁石型のロータとして構成されている。
【0019】
詳述すると、回転軸21は、円柱状に形成されており、底部6aの挿通孔8及びカバー7の挿通孔9に設けられた軸受24a,24bを介して回転可能に支持されている。ロータコア22は、各埋込磁石23a,23bが埋め込まれるコア本体25、コア本体25の両端に固定されてそれぞれ回転軸21と一体回転可能に連結される一対の連結部材26を有している。各連結部材26は、円環状に形成されるとともに、該連結部材26の中央に形成された嵌合孔32が回転軸21の外周に圧入されることにより、回転軸21と一体回転可能に連結されている。なお、コア本体25は、電磁鋼板を複数枚積層することにより構成され、連結部材26は、ステンレス綱等の非磁性材料により構成されている。
【0020】
図2に示すように、コア本体25は、比較的肉厚の円筒状に形成されるとともに、コア本体25には、埋込磁石23a,23bが内部に配置される複数対の空洞部31a,31bが周方向に等角度間隔で形成されている。空洞部31aは、軸方向に貫通した孔状に形成されており、同図において拡大して示すように、長手方向が径方向に沿った断面長方形状の主孔部31a1、及び主孔部31a1の径方向内側端部から周方向両側に延びた断面長方形状の保持孔部31a2を有している。空洞部31bは、空洞部31aと同様に、主孔部31b1及び保持孔部31b2を有している。
【0021】
埋込磁石23aは、空洞部31aの主孔部31a1に挿入される主磁石23a1、及び保持孔部31a2に挿入される保持磁石23a2により構成されている。主磁石23a1は、長方形板状に形成されたセグメント磁石からなり、ロータ4の軸方向と直交する断面形状は、上記主孔部31a1の断面形状に対応した長方形状とされている。また、保持磁石23a2は、長方形板状に形成されたセグメント磁石からなり、ロータ4の軸方向と直交する断面形状は、上記保持孔部31a2の断面形状に対応した長方形状とされている。そして、埋込磁石23aは、主磁石23a1が主孔部31a1に挿入されるとともに、保持磁石23a2が保持孔部31a2に挿入されることで、コア本体25(ロータコア22)に固定されている。なお、埋込磁石23bは、埋込磁石23aと同様に、主磁石23b1と保持磁石23b2とにより構成されており、主磁石23b1が主孔部31b1に挿入されるとともに、保持磁石23b2が保持孔部31b2に挿入されることで、コア本体25に固定されている。
【0022】
そして、一対の埋込磁石23a,23bの主磁石23a1,23b1は、周方向において一方の極性(例えば、N極)が対向するようにその板厚方向(ロータ4の周方向に略沿った方向)に沿って磁化(着磁)されている。これにより、主磁石23a1は、周方向一方側の主磁石23b1とは一方の極性が対向し、周方向他方側の主磁石23b1とは他方の極性(例えば、S極)が対向している。つまり、主磁石23a1は、周方向一方側の主磁石23b1のみでなく、周方向他方側の主磁石23b1とも同一の極性が対向するように着磁されていることになり、埋込磁石23aは、周方向両側に隣り合う埋込磁石23bのそれぞれと一対の埋込磁石を構成している。これにより、ロータコア22には、4対の埋込磁石23a,23bにより、該埋込磁石23a,23bに挟まれたロータ磁極部33が8つ形成されるとともに、異なる極性のロータ磁極部33が周方向に交互に並んでいる。なお、各ロータ磁極部33は、ステータ3のティース12と径方向に間隔を空けて対向している。また、保持磁石23a2,23b2は、ロータ磁極部33側に該ロータ磁極部33の極性と同一の極性が現れるように、その板厚方向(ロータ4の径方向に略沿った方向)に沿って磁化されている(
図3参照)。
【0023】
図1に示すように、制御装置5は、ロータ4の回転角に従う二相回転座標系(d/q座標系)におけるd軸電流及びq軸電流に基づいてコイル15に三相の駆動電力を供給することにより、ステータ3に回転磁界を発生させる。なお、d軸電流は、ステータ3に対してロータ4(ロータ磁極部33)の磁束方向(d軸方向)に磁極を発生させる電流であり、q軸電流は、ステータ3に対してd軸方向と電気角で90°ずれたq軸方向に磁極を発生させる電流である。そして、回転電機1は、ステータ3に発生する回転磁界と、ステータ3とロータ4との間を通過する磁束との関係に基づいてロータ4が回転するようになっている。
【0024】
次に、ロータ4の磁束量(ステータ3とロータ4との間を通過する磁束量)を可変とするための構成について説明する。
図1及び
図2示すように、回転電機1は、ロータ4の内周側に径方向に間隔を空けて配置されるとともにロータ4に対して相対回転可能な円筒状の磁束供給体41を備えている。そして、回転電機1では、磁束供給体41のロータ4に対する相対回転角度を変更することで、ロータ4の磁束量が変化する構成となっている。
【0025】
詳述すると、磁束供給体41は、円筒状の供給体コア43と、供給体コア43に固定される複数の補助磁石44とを備えている。なお、本実施形態の磁束供給体41には、ロータ4の磁極数(ロータ磁極部33の数)と等しい数の補助磁石44が設けられている。
【0026】
供給体コア43は、円筒状の支持部材45と、支持部材45の外周に固定される円筒状の磁石保持部材46とからなる。なお、支持部材45は、磁性材料により構成され、磁石保持部材46は、電磁鋼板を複数枚積層することにより構成されている。支持部材45の両端は、回転軸21の外周に設けられた軸受47a,47bを介してハウジング2及びロータ4に対して相対回転可能に支持されている。
【0027】
図2に示すように、磁石保持部材46には、補助磁石44が内部に配置される複数の空洞部48が周方向に等角度間隔で形成されている。空洞部48は、軸方向に延びる断面長方形の孔状に形成されるとともに、その断面のなす長方形の長手方向がその中央を通る径方向線に対して略直交するように形成されている。そして、同図において拡大して示すように、空洞部48は、その周方向中央位置がロータ磁極部33の周方向中央位置と径方向に対向した状態で、その長手方向両端部がロータ4における空洞部31a,31bの保持孔部31a2,31b2と径方向において対向するように形成されている。
【0028】
補助磁石44には、長方形板状に形成されたセグメント磁石が採用されている。補助磁石44におけるロータ4の軸方向と直交する断面形状は、上記空洞部48の断面形状に対応した長方形状とされており、補助磁石44は空洞部48内に挿入されることで供給体コア43に固定されている。つまり、補助磁石44は、その周方向中央位置がロータ磁極部33の周方向中央位置と径方向に対向した状態で、その長手方向両端部が保持磁石23a2,23b2と径方向において対向するように形成されている。そして、補助磁石44は、該補助磁石44によって形成される供給体磁極部49の極性が周方向に交互に異なるようにその板厚方向(ロータ4の径方向に略沿った方向)に沿って磁化されている。
【0029】
したがって、
図3(a)に示すように、ロータ磁極部33の極性と該ロータ磁極部33と径方向に対向する供給体磁極部49(補助磁石44)の磁極の極性とが反対になる弱め角度では、埋込磁石23a,23bで作られる磁束の一部がステータ3とロータ4との間を通過せず、ロータ4と磁束供給体41との間を通過する。これにより、ロータ4の磁束量(コイル15に対する鎖交磁束)が減少するため、誘起電圧の上昇を抑制してロータ4を高速回転させることが可能になる。また、磁束供給体41が弱め角度にある状態では、ロータ磁極部33の極性と供給体磁極部49の極性とが反対になるため、ロータ磁極部33と供給体磁極部49との間に作用する磁気的な吸引力によって、磁束供給体41の相対回転角度が保持される。なお、図面では、磁石の磁化方向を太線の矢印で示し、磁束の流れを破線の矢印で示している。
【0030】
一方、
図3(b)に示すように、磁束供給体41の相対回転角度が、ロータ磁極部33の極性と該ロータ磁極部33と径方向に対向する供給体磁極部49の磁極の極性とが同一になる強め角度では、ステータ3とロータ4との間を通過する埋込磁石23a,23bの磁束に磁束供給体41の磁束が加えられる。これにより、ロータ4の磁束量が増加するため、高いトルクを発生させることが可能になる。また、この状態では、補助磁石44の周方向両端部が反対の極性の保持磁石23a2,23b2と径方向において対向する。つまり、補助磁石44の一部が、埋込磁石23a,23bにおけるロータ磁極部33側と反対の極性の磁極と対向する。そのため、補助磁石44と埋込磁石23a,23b(保持磁石23a2,23b2)との間に作用する磁気的な吸引力によって、磁束供給体41の相対回転角度が保持される。
【0031】
すなわち、このように構成されたロータ4と磁束供給体41との間に作用するトルクは、
図4に示すように変化し、磁束供給体41の相対回転角度が弱め角度及び強め角度となる角度でゼロとなる。なお、
図4では、磁束供給体41をロータ4に対して時計回りに相対回転させる方向のトルクをプラスとし、磁束供給体41をロータ4に対して反時計回りに相対回転させる方向のトルクをマイナスとしている。
【0032】
次に、磁束供給体の相対回転角度の変更(作用)について説明する。
制御装置5は、瞬間的にd軸電流をステータ3のコイル15に供給し、弱め界磁又は強め界磁を行うことで磁束供給体41の相対回転角度を変更する。詳しくは、制御装置5は、磁束供給体41の相対回転角度を弱め角度から強め角度に変更する際に強め界磁を行い、強め角度から弱め角度に変更する際に弱め界磁を行う。なお、本実施形態の制御装置5は、磁束供給体41の相対回転角度を変更するとき以外の通常駆動時は、d軸電流(の目標値)をゼロとしている。
【0033】
すなわち、d軸電流がゼロの状態では、ステータ3に発生する磁極は、ロータ4の磁束方向(d軸方向)から電気角で90°ずれたq軸方向に発生する。ここで、弱め界磁が行われ、ステータ3におけるロータ磁極部33と対向する部位に該ロータ磁極部33と同一の極性の磁極が発生すると、ロータ4とステータ3との間を通過する磁束が減少する。そのため、弱め界磁が行われた状態では、磁束供給体41の相対回転角度は、ロータ4の磁束量が減少する弱め角度が安定な状態となる。したがって、磁束供給体41の相対回転角度が強め角度にある場合に、弱め界磁を行うことで、該磁束供給体41の相対回転角度が弱め角度に変化する。
【0034】
具体的には、
図5(a)に示すように、磁束供給体41の相対回転角度が強め角度にある状態(
図3(b)参照)で弱め界磁が行われると、N極のロータ磁極部33では、ステータ3側に流れていた磁束の一部が磁束供給体41側に流れるとともに、S極のロータ磁極部33では、磁束供給体41側に流れていた磁束の一部がステータ3側に流れるようになる。そのため、N極のロータ磁極部33に供給体磁極部49から磁束を流し込むことで反発力が発生するとともに、S極のロータ磁極部33から供給体磁極部49に磁束を吸い込むことで反発力が発生するようになる。その結果、磁束供給体41が相対回転し、ロータ磁極部33の極性と供給体磁極部49の極性とが反対になる弱め角度で安定する(
図3(a)参照)。
【0035】
一方、強め界磁が行われ、ステータ3におけるロータ磁極部33と対向する部位に該ロータ磁極部33と反対の極性の磁極が発生すると、ロータ4とステータ3との間を通過する磁束が増加する。そのため、強め界磁が行われた状態では、磁束供給体41の相対回転角度は、ロータの磁束量が増加する強め角度が安定な状態となる。したがって、磁束供給体41の相対回転角度が弱め角度にある場合に、強め界磁を行うことで、該磁束供給体41の相対回転角度が強め角度に変化する。
【0036】
具体的には、
図5(b)に示すように、磁束供給体41の相対回転角度が弱め角度にある状態(
図3(a)参照)で強め界磁が行われると、N極のロータ磁極部33では、磁束供給体41側に流れていた磁束の一部がステータ3側に流れるとともに、S極のロータ磁極部33では、磁束供給体41から流れ込んでいた磁束の一部がステータ3側から流れ込むようになる。そのため、N極のロータ磁極部33から供給体磁極部49に磁束を吸い込むことで反発力が発生するとともに、S極のロータ磁極部33に供給体磁極部49から磁束を流し込むことで反発力が発生するようになる。その結果、磁束供給体41が相対回転し、ロータ磁極部33の極性と供給体磁極部49の極性とが同一になる強め角度で安定する(
図3(b)参照)。
【0037】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)ステータ3のコイル15に供給するd軸電流を制御して弱め界磁又は強め界磁を行うことで、磁束供給体41の相対回転角度を変更できるため、磁束供給体41の相対回転角度を変更させるための構成を別途追加せずともよく、回転電機1を簡素な構成とすることができる。
【0038】
(2)磁束供給体41の相対回転角度をロータ4と磁束供給体41との間に作用する磁気的な力の釣り合いのみによって弱め角度及び強め角度で保持するようにしたため、回転電機1をより簡素な構成とすることができる。また、磁束供給体41の相対回転角度を変更する際に流すd軸電流の絶対値を小さくすることができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、回転電機の第2実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0040】
図6に示すように、ロータコア22の空洞部31a,31bは、それぞれ上記第1実施形態の主孔部31a1,31b1のみにより構成されており、空洞部31a,31bの軸方向と直交する断面形状は長方形状に形成されている。そして、空洞部31aと空洞部31bとは、周方向に間隔を空けるとともに断面のなす長方形の長手方向が互いに略平行となるように形成されている。
【0041】
埋込磁石23a,23bは、それぞれ上記第1実施形態の主磁石23a1,23b1のみにより構成されている。埋込磁石23a,23bにおけるロータ4の軸方向と直交する断面形状は、上記空洞部31a,31bの断面形状に対応した長方形状とされており、埋込磁石23a,23bは、空洞部31a,31b内に挿入されることでコア本体25(ロータコア22)に固定されている。そして、一対の埋込磁石23a,23bは、上記第1実施形態と同様に、周方向において一方の極性が対向するようにその板厚方向に沿って磁化されている。これにより、ロータコア22には、4対の埋込磁石23a,23bにより、該埋込磁石23a,23bに挟まれたロータ磁極部33が8つ形成されるとともに、異なる極性のロータ磁極部33が周方向に交互に並んでいる。
【0042】
本実施形態の磁束供給体41には、ロータ4の磁極数の半数の補助磁石44が設けられている。詳しくは、供給体コア43(磁石保持部材46)の空洞部48は、断面長方形の孔状に形成されており、その断面のなす長方形の長手方向長さが、一対の埋込磁石23a,23b間の間隔よりも長くなるように形成されている。補助磁石44の軸方向と直交する断面形状は、上記空洞部48の断面形状に対応した長方形状とされており、補助磁石44は空洞部48内に挿入されることで供給体コア43に固定されている。そして、補助磁石44は、供給体コア43の外周側に一方の極性のみが現れるように径方向に沿って磁化されている。これにより、供給体コア43における補助磁石44が設けられた周方向範囲が一方の極性の供給体磁極部49として形成され、供給体コア43における隣り合う補助磁石44間の周方向範囲が他方の極性の供給体磁極部49として形成されている。すなわち、本実施形態の磁束供給体41は、所謂ハーフマグネット型(コンシクエントポール型)のロータとして構成されている。
【0043】
したがって、
図7(a)に示すように、磁束供給体41の相対回転角度が弱め角度にある状態では、埋込磁石23a,23bで作られる磁束の一部がステータ3とロータ4との間を通過せず、ロータ4と磁束供給体41との間を通過するため、ロータ4の磁束量が減少する。また、この状態では、ロータ磁極部33の極性と供給体磁極部49の極性とが反対になるため、ロータ磁極部33と供給体磁極部49との間に作用する磁気的な吸引力によって、磁束供給体41の相対回転角度が保持される。
【0044】
一方、
図7(b)に示すように、磁束供給体41の相対回転角度が強め角度にある状態では、ステータ3とロータ4との間を通過する埋込磁石23a,23bの磁束に磁束供給体41の磁束が加えられるため、ロータ4の磁束量が増加する。また、この状態では、補助磁石44がロータ4における一対の埋込磁石23a,23bが設けられた周方向範囲よりも広い周方向範囲に亘って延在している。そのため、補助磁石44の周方向両端部と、埋込磁石23a,23bにおけるロータ磁極部33側と反対の極性の磁極との間に作用する磁気的な吸引力によって、磁束供給体41の相対回転角度が保持される。
【0045】
なお、このように構成されたロータ4と磁束供給体41との間に作用するトルクは、上記第1実施形態と同様に変化し(
図4参照)、磁束供給体41の相対回転角度が弱め角度及び強め角度となる角度でゼロとなる。また、磁束供給体41の相対回転角度は、制御装置5からステータ3のコイル15に瞬間的にd軸電流が供給され、弱め界磁又は強め界磁が行われることで変更される。
【0046】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2)と同様の効果を奏することができる。
(第3実施形態)
次に、回転電機の第3実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0047】
図8及び
図9に示すように、本実施形態のロータコア22には、ロータ磁極部33と同じ対数の空洞部31a,31bが形成されている。空洞部31a,31bは、それぞれ上記第1実施形態の主孔部31a1,31b1のみにより構成されており、空洞部31a,31bの軸方向と直交する断面形状は長方形状に形成されている。そして、空洞部31aと空洞部31bとは、周方向に間隔を空けるとともに断面のなす長方形の長手方向が径方向に対して互いに逆方向に傾くように形成されている。
【0048】
埋込磁石23a,23bは、それぞれ上記第1実施形態の主磁石23a1,23b1のみにより構成されている。埋込磁石23a,23bにおけるロータ4の軸方向と直交する断面形状は、上記空洞部31a,31bの断面形状に対応した長方形状とされており、埋込磁石23a,23bは、空洞部31a,31b内に挿入されることでコア本体25(ロータコア22)に固定されている。そして、埋込磁石23a,23bは、周方向において同一の極性(N極又はS極)が対向するとともに、ロータコア22における埋込磁石23a,23bに挟まれたロータ磁極部33の極性が周方向に交互に並ぶようにその板厚方向に沿って磁化されている。これにより、ロータコア22には、8対の埋込磁石23a,23bにより、8つのロータ磁極部33が形成されている。
【0049】
補助磁石44は、その断面のなす長手方向の長さが埋込磁石23a,23b間の最も狭い位置での間隔よりも短くなるように形成されている。つまり、補助磁石44は、磁束供給体41が弱め角度及び強め角度にある状態で、埋込磁石23a,23bと径方向において対向しないように形成されている。
【0050】
また、本実施形態の回転電機1には、磁束供給体41の相対回転角度を強め角度で保持する保持構造が設けられている。
詳しくは、
図8に示すように、ロータ4を構成する軸方向一方側(
図8中、左側)の連結部材26には、軸方向の磁束供給体41側に開口した有底円筒状のケース51が固定されており、ケース51内には、棒状の第1保持部材52、及び第1保持部材52を磁束供給体41側に付勢する保持付勢部材としてのコイルバネ53が収容されている。ケース51は、連結部材26において、一方の極性(例えばN極)のロータ磁極部33と軸方向に対向するような周方向位置に固定されている。第1保持部材52の先端には、凸形状とされた第1係合部54が形成されている。本実施形態の第1係合部54は、半球状に形成されており、第1係合部54の表面(外面)54aは、ロータ4の周方向(回転方向)に対して傾斜している。つまり、本実施形態では、表面54aが傾斜面に相当する。
【0051】
一方、支持部材45における連結部材26と軸方向に対向する対向面には、第1係合部54が係合する凹形状とされた複数(本実施形態では、4つ)の第2係合部55が形成されている。つまり、本実施形態では、支持部材45が第2保持部材として構成されている。各第2係合部55は、支持部材45において、一方の極性の磁極が径方向外側を向くように配置された補助磁石44と軸方向に対向するような周方向位置に形成されている。また、各第2係合部55の表面(内面)55aは、第1係合部54の表面54aの略全体が接触する半球状に形成されており、ロータ4の周方向(回転方向)に対して傾斜している。つまり、本実施形態では、表面55aが傾斜面に相当する。
【0052】
そして、磁束供給体41の相対回転角度が強め角度になると、第1保持部材52がコイルバネ53に付勢されて移動し、第1係合部54が第2係合部55に凹凸係合することにより、該磁束供給体41の相対回転角度が保持されるようになっている。なお、コイルバネ53の付勢力(弾性係数)は、埋込磁石23a,23bと補助磁石44との間に作用する磁気的な吸引力及び反発力によっては、ロータ4と磁束供給体41とが相対回転せず、第1係合部54と第2係合部55との係合が解除されないような強さに設定されている。
【0053】
次に、磁束供給体の相対回転角度の変更(作用)について説明する。
図10(a)に示すように、磁束供給体41の相対回転角度が弱め角度である状態では、第1保持部材52の第1係合部54は、支持部材45の対向面における平坦な部位に接触する。ここで、強め界磁が行われると、上記第1実施形態と同様に、磁束供給体41の相対回転角度が強め角度となる。その結果、
図10(b)に示すように、第1保持部材52の第1係合部54が軸方向において対向する第2係合部55に対して凹凸係合し、磁束供給体41の相対回転角度が強め角度で保持される。
【0054】
一方、
図10(b)に示すように磁束供給体41の相対回転角度が強め角度にある状態で、弱め界磁が行われると、上記第1実施形態と同様に、弱め角度になるように磁束供給体41が相対回転する。ここで、上記のように第1及び第2係合部54,55の表面54a,55aが周方向に対して傾斜しているため、ロータ4と磁束供給体41とが相対回転すると、第1保持部材52にコイルバネ53の付勢方向と反対方向の押圧力が作用する。これにより、第1保持部材52がコイルバネ53の付勢力に抗してケース51内に押し戻されることで、上記
図10(a)に示すように、第1係合部54と第2係合部55との凹凸係合が解除され、磁束供給体41の相対回転角度が弱め角度となる。
【0055】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(3)磁束供給体41の相対回転角度が強め角度になると、ロータ4と一体回転する第1保持部材52の第1係合部54と、磁束供給体41の第2係合部55とが凹凸係合することにより、該磁束供給体41の相対回転角度が強め角度で保持されるようにした。そのため、磁束供給体41の相対回転角度を強め角度でしっかりと保持できる。
【0056】
(第4実施形態)
次に、回転電機の第4実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図11及び
図12に示すように、本実施形態のロータ4は、円柱状に形成されたロータコア61と、ロータコア61に埋め込まれる態様で固定された複数対(本実施形態では、4対)の埋込磁石62a,62bとを備えている。ロータコア61の中央には、軸方向に貫通した嵌合孔63が形成されており、この嵌合孔63が回転軸21の外周に圧入されることにより、回転軸21と一体回転可能に設けられている。なお、ロータコア61は、電磁鋼板を複数枚積層することにより構成されている。
【0058】
図12に示すように、ロータコア61には、埋込磁石62a,62bが内部に配置される複数対(本実施形態では、4対)の空洞部64a,64bが周方向に等角度間隔で形成されている。同図において拡大して示すように、空洞部64aは、軸方向に貫通した孔状に形成されており、長手方向が径方向に沿った断面長方形状の主孔部64a1、及び主孔部64a1の軸方向一端における径方向外側端部から周方向両側に延びた四角穴状の保持凹部64a2を有している。空洞部64bは、空洞部64aと同様に、主孔部64b1及び保持凹部64b2を有している。なお、本実施形態のロータコア61には、空洞部64a,64b内に配置された埋込磁石62a,62bで作られる磁束が内周側に流れることを抑制するための複数の空隙(フラックスバリア)65が形成されている。
【0059】
埋込磁石62aは、空洞部64aの主孔部64a1に挿入される主磁石62a1、及び保持凹部64a2に挿入される保持磁石62a2により構成されている。主磁石62a1には、長方形板状に形成されたセグメント磁石からなり、ロータ4の軸方向と直交する断面形状は、上記主孔部64a1の断面形状に対応した長方形状とされている。また、保持磁石62a2は、薄い長方形板状に形成されたセグメント磁石からなり、ロータ4の軸方向と直交する断面形状は、上記保持凹部64a2の断面形状に対応した長方形状とされている。そして、埋込磁石62aは、主磁石62a1が主孔部64a1に挿入されるとともに、保持磁石62a2が保持凹部64a2に挿入されることで、ロータコア61に固定されている。なお、埋込磁石62bは、埋込磁石62aと同様に、主磁石62b1と保持磁石62b2とにより構成されており、主磁石62b1が主孔部64b1に挿入されるとともに、保持磁石62b2が保持凹部64b2に挿入されることで、ロータコア61に固定されている。
【0060】
そして、一対の埋込磁石62a,62bの主磁石62a1,62b1は、周方向において一方の極性が対向するようにその板厚方向(ロータ4の周方向に略沿った方向)に沿って磁化されている。これにより、ロータコア61には、上記第1実施形態と同様に、4対の埋込磁石62a,62bにより、該埋込磁石62a,62bに挟まれたロータ磁極部66が8つ形成されるとともに、異なる極性のロータ磁極部66が周方向に交互に並んでいる。また、保持磁石62a2,62b2は、ロータ磁極部66側に該ロータ磁極部66の極性と同一の極性が現れるように、その板厚方向(ロータ4の軸方向に略沿った方向)に沿って磁化されている。
【0061】
図11及び
図13に示すように、本実施形態の磁束供給体41は、ロータ4の軸方向一端側に軸方向に間隔を空けて配置されるとともに、ロータ4に対して相対回転可能に設けられている。磁束供給体41は、円板状の供給体コア71と、供給体コア71に固定される複数の補助磁石72とを備えている。なお、本実施形態の磁束供給体41には、ロータ磁極部66の数と等しい数の補助磁石72が設けられている。
【0062】
供給体コア71の中央には、軸方向に貫通した貫通孔73が形成されている。そして、供給体コア71は、貫通孔73に設けられた軸受74を介して回転軸21に相対回転可能に支持されている。また、供給体コア71のロータ4との対向面には、円環状の固定溝75が形成されている。なお、供給体コア71は、磁性材料により構成されている。
【0063】
補助磁石72には、ロータ4の軸方向と直交する断面形状が扇形の板状に形成されたセグメント磁石が採用されている。補助磁石72の周方向に沿った幅は、ロータ磁極部66の周方向に沿った幅と略同一に形成されている。また、補助磁石72は、隣り合う補助磁石72との間に主磁石62a1,62b1の板厚と略同じ隙間を空けるとともに、固定溝75の内周側の側面との間に間隔を空けて固定溝75に挿入されている。そして、補助磁石72は、該補助磁石72によって形成される供給体磁極部76の極性が周方向に交互に異なるように軸方向に沿って磁化されている。
【0064】
したがって、
図14(a)に示すように、ロータ磁極部66の極性と該ロータ磁極部66と軸方向に対向する供給体磁極部76(補助磁石72)の磁極の極性とが反対になる弱め角度では、埋込磁石62a,62bで作られる磁束の一部がステータ3とロータ4との間を通過せず、ロータ4と磁束供給体41との間を通過する。これにより、ロータ4の磁束量が減少するため、誘起電圧の上昇を抑制してロータ4を高速回転させることが可能になる。また、磁束供給体41が弱め角度にある状態では、ロータ磁極部66の極性と供給体磁極部76の極性とが反対になるため、ロータ磁極部66と供給体磁極部76との間に作用する磁気的な吸引力によって、磁束供給体41の相対回転角度が保持される。
【0065】
一方、
図14(b)に示すように、磁束供給体41の相対回転角度が、ロータ磁極部66の極性と該ロータ磁極部66と軸方向に対向する供給体磁極部76の磁極の極性とが同一になる強め角度では、ステータ3とロータ4との間を通過する埋込磁石62a,62bの磁束に磁束供給体41の磁束が加えられる。これにより、ロータ4の磁束量が増加するため、高いトルクを発生させることが可能になる。また、この状態では、補助磁石72の周方向両端部が反対の極性の保持磁石62a2,62b2と径方向において対向する。つまり、補助磁石72の一部が、埋込磁石62a,62bにおけるロータ磁極部66側と反対の極性の磁極と対向する。そのため、補助磁石72と埋込磁石62a,62b(保持磁石62a2,62b2)との間に作用する磁気的な吸引力によって、磁束供給体41の相対回転角度が保持される。
【0066】
なお、このように構成されたロータ4と磁束供給体41との間に作用するトルクは、上記第1実施形態と同様に変化し(
図4参照)、磁束供給体41の相対回転角度が弱め角度及び強め角度となる角度でゼロとなる。また、磁束供給体41の相対回転角度は、制御装置5からステータ3のコイル15に瞬間的にd軸電流が供給され、弱め界磁又は強め界磁が行われることで変更される。
【0067】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2)と同様の効果を奏することができる。
(第5実施形態)
次に、回転電機の第5実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第4実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
図15に示すように、ロータコア61の空洞部64a,64bは、それぞれ上記第4実施形態の主孔部64a1,64b1のみにより構成されており、空洞部64a,64bの軸方向と直交する断面形状は、長手方向が径方向に沿った長方形状に形成されている。
【0069】
埋込磁石62a,62bは、それぞれ上記第4実施形態の主磁石62a1,62b1のみにより構成されている。埋込磁石62a,62bにおけるロータ4の軸方向と直交する断面形状は、上記空洞部64a,64bの断面形状に対応した長方形状とされており、埋込磁石62a,62bは、空洞部64a,64b内に挿入されることでロータコア61に固定されている。そして、一対の埋込磁石62a,62bは、上記第1実施形態と同様に、周方向において一方の極性が対向するようにその板厚方向に沿って磁化されている。これにより、ロータコア61には、4対の埋込磁石62a,62bにより、該埋込磁石62a,62bに挟まれたロータ磁極部66が8つ形成されている。
【0070】
図16に示すように、本実施形態の供給体コア71のロータ4との対向面には、ロータ4の磁極数の半数の扇形状の固定凹部81が形成されている。各固定凹部81の周方向に沿った幅は、ロータ磁極部66の周方向に沿った幅と主磁石62a1,62b1の幅との合計よりも大きく形成されている。また、供給体コア71のロータ4との対向面には、各固定凹部81の内周縁に連続する円環状の環状溝82が形成されている。
【0071】
補助磁石72のロータ4の軸方向と直交する断面形状は、固定凹部81と対応した扇形状とされており、固定凹部81に挿入されることにより、供給体コア71に固定されている。そして、補助磁石72は、ロータ4側に一方の極性のみが現れるように軸方向に沿って磁化されている。これにより、供給体コア43における補助磁石72が設けられた周方向範囲が一方の極性の供給体磁極部76として形成され、供給体コア71における隣り合う補助磁石72間の周方向範囲が他方の極性の供給体磁極部76として形成されている。
【0072】
なお、磁束供給体41の相対回転角度が弱め角度にある状態では、ロータ磁極部66の極性と供給体磁極部76の極性とが反対になるため、ロータ磁極部66と供給体磁極部76との間に作用する磁気的な吸引力によって、磁束供給体41の相対回転角度が保持される。一方、磁束供給体41の相対回転角度が強め角度にある状態では、補助磁石72がロータ4における一対の埋込磁石62a,62bが設けられた周方向範囲よりも広い周方向範囲に亘って延在しており、補助磁石72の周方向両端部と、埋込磁石62a,62bにおけるロータ磁極部66側と反対の極性の磁極との間に作用する磁気的な吸引力によって、磁束供給体41の相対回転角度が保持される。また、このように構成されたロータ4と磁束供給体41との間に作用するトルクは、上記第1実施形態と同様に変化し(
図4参照)、磁束供給体41の相対回転角度が弱め角度及び強め角度となる角度でゼロとなる。さらに、磁束供給体41の相対回転角度は、制御装置5からステータ3のコイル15に瞬間的にd軸電流が供給され、弱め界磁又は強め界磁が行われることで変更される。
【0073】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2)と同様の効果を奏することができる。
(第6実施形態)
次に、回転電機の第6実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第4実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0074】
本実施形態のロータコア61は、上記第5実施形態のロータコア61と同様に構成され、磁束供給体41は、上記第4実施形態の磁束供給体41と同様に構成されている。そして、回転電機1には、上記第3実施形態と同様に、磁束供給体41の相対回転角度を強め角度で保持する保持構造が設けられている。なお、保持構造に関し、同一の構成については、上記第3実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
詳しくは、
図17に示すように、第1保持部材52及びコイルバネ53の収容されたケース51は、ロータコア61における径方向内側部分で、一方の極性(例えばN極)のロータ磁極部66と軸方向に対向するような周方向位置に固定されている。
【0076】
供給体コア71のロータコア61と軸方向に対向する対向面には、第1保持部材52の第1係合部54が係合する複数(本実施形態では、4つ)の第2係合部55が形成されている。各第2係合部55は、供給体コア71において、一方の極性の供給体磁極部76と径方向に対向するような周方向位置に形成されている。つまり、本実施形態では、供給体コア71が第2保持部材として構成されている。
【0077】
このように構成された回転電機1において、磁束供給体41の相対回転角度が弱め角度にある状態では、ロータ磁極部66の極性と供給体磁極部76の極性とが反対になるため、ロータ磁極部66と供給体磁極部76との間に作用する磁気的な吸引力によって、磁束供給体41の相対回転角度が保持される。このとき、第1保持部材52の第1係合部54は、ロータコア61の対向面における平坦な部位に接触する(
図10(a)参照)。一方、回転電機1において、磁束供給体41の相対回転角度が強め角度にある状態では、第1保持部材52の第1係合部54が軸方向において対向する第2係合部55に対して凹凸係合することによって磁束供給体41の相対回転角度が保持される(
図10(b)参照)。なお、磁束供給体41の相対回転角度は、制御装置5からステータ3のコイル15に瞬間的にd軸電流が供給され、弱め界磁又は強め界磁が行われることで変更される。
【0078】
(第7実施形態)
次に、回転電機の第7実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第4実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
図18に示すように、ハウジング2のカバー7には、ロータ4と軸方向に間隔を空けてステータ3が固定されている。つまり、本実施形態の回転電機1は、アキシャルギャップモータとして構成されている。
【0080】
詳述すると、
図18及び
図19に示すように、ステータ3は、円環状の環状部91及び環状部91から軸方向に延出される複数のティース92を有するステータコア93と、各ティース92に巻回されるコイル94とを備えている。ティース92は、ロータ4のロータ磁極部66と軸方向に間隔を空けて対向している。そして、コイル94の接続端部94aは、ハウジング2の外部に引き出されて制御装置5に接続されている。なお、ロータ4及び磁束供給体41は、上記第4実施形態または上記第5実施形態と同様に構成されている。
【0081】
そして、制御装置5は、ロータ4の回転角に従う二相回転座標系(d/q座標系)におけるd軸電流及びq軸電流に基づいてコイル94に三相の駆動電力を供給することにより、ステータ3に回転磁界を発生させる。そして、回転電機1では、ステータ3に発生する回転磁界と、ステータ3とロータ4との間を通過する磁束との関係に基づいてロータ4が回転するようになっている。
【0082】
このように構成された回転電機1においても、上記第1実施形態と同様に、磁束供給体41の相対回転角度は、制御装置5からステータ3のコイル94に瞬間的にd軸電流が供給され、弱め界磁又は強め界磁が行われることで変更される。
【0083】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態の(1),(2)と同様の効果を奏することができる。
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
【0084】
・上記第1実施形態では、埋込磁石23a,23bを別部材からなる主磁石23a1,23b1と保持磁石23a2,23b2とにより構成したが、これに限らず、主磁石23a1,23b1と保持磁石23a2,23b2とを一体化した形状の一部材の磁石によりそれぞれ構成してもよい。同様に、上記第4実施形態においても、埋込磁石62a,62bを主磁石62a1,62b1と保持磁石62a2,62b2とを一体化した形状の一部材の磁石によりそれぞれ構成してもよい。
【0085】
・上記第1及び第2実施形態において、上記第3実施形態と同様に、磁束供給体41の相対回転角度を強め角度で保持する保持構造を設けてもよい。また、上記第4及び第5実施形態において、上記第6実施形態と同様に、磁束供給体41の相対回転角度を強め角度で保持する保持構造を設けてもよい。
【0086】
・上記第2実施形態では、埋込磁石23aと埋込磁石23bとを、それぞれの断面のなす長方形の長手方向が互いに平行となるようにロータコア22に固定した。しかし、これに限らず、例えば
図20に示すように、埋込磁石23aと埋込磁石23bとを、それぞれの断面のなす長方形の長手方向が径方向に対して互いに逆方向に傾くようにロータコア22に固定してもよい。なお、この場合には、同図に示すように、補助磁石44は、該補助磁石44の一部が、埋込磁石23a,23bにおけるロータ磁極部33側と反対の極性の磁極と対向すれば、ロータ4における一対の埋込磁石23a,23bが設けられた周方向範囲よりも大きな周方向範囲に亘って延在しなくてもよい。
【0087】
・上記第3及び第6実施形態では、第1係合部54を凸形状とし、第2係合部55を凹形状としたが、これに限らず、第1係合部54を凹形状とし、第2係合部55を凸形状としてもよい。
【0088】
・上記第3及び第6実施形態では、第1及び第2係合部54,55の表面54a,55aをそれぞれ半球状に形成したが、これに限らず、例えば円錐状等に形成してもよい。要は、表面54a,55aが周方向に対して傾斜しており、ロータ4と磁束供給体41とが相対回転することにより、第1保持部材52にコイルバネ53の付勢方向と反対方向の押圧力が作用し、第1係合部54と第2係合部55との凹凸係合を解除するような形状であれば、表面54a,55aの形状は適宜変更可能である。また、第1及び第2係合部54,55のいずれか一方が周方向に対して傾斜した傾斜面を有していない構成としてもよい。
【0089】
・上記第3実施形態において、例えば磁束供給体41に第1保持部材52及びコイルバネ53を設け、ロータ4の連結部材26に第2係合部55を形成してもよい。なお、この場合、連結部材26が第2保持部材となる。同様に、上記第6実施形態において、磁束供給体41に第1保持部材52及びコイルバネ53を設け、ロータコア61に第2係合部55を形成してもよい。なお、この場合、ロータコア61が第2保持部材となる。
【0090】
・上記第3及び第6実施形態では、コイルバネ53を用いて第1保持部材52を付勢したが、これに限らず、例えば皿バネ等の他のバネ部材やゴム等の弾性体を用いて第1保持部材52を付勢してもよい。
【0091】
・上記第4〜第6実施形態において、磁束供給体41をロータ4の軸方向両側に設けてもよい。
・上記第1〜第6実施形態では、回転電機1をインナロータ型のラジアルギャップモータとして構成したが、これに限らず、アウタロータ型のラジアルギャップモータとして構成してもよい。
【0092】
・上記各実施形態では、補助磁石44,72をロータコア22,61に埋め込む態様で固定したが、これに限らず、ロータコア22,61の表面に固定してもよい。
・上記各実施形態では、補助磁石44,72としてセグメント磁石を用いたが、これに限らず、環状のリング磁石を用いてもよい。なお、この場合には、補助磁石44,72を供給体コア43に固定せず、補助磁石44,72自体をロータ4の径方向内側に回転可能に支持してもよい。つまり、磁束供給体41が補助磁石のみからなる構成としてもよい。
【0093】
・上記各実施形態では、磁束供給体41に、ロータ4の磁極数(ロータ磁極部33,66の数)と等しい数の補助磁石44,72を設けたが、ロータ4の磁極数と異なっていてもよく、その数は適宜変更可能である。
【0094】
・上記各実施形態では、磁束供給体41の相対角度を弱め角度とした場合に、全てのロータ磁極部33,66の極性と全ての供給体磁極部49,76の磁極の極性とが反対になるようにしたが、これに限らず、供給体磁極部49,76の幾つか(例えば1つ)は、ロータ磁極部33,66の極性と同一の極性が径方向において対向するようにしてもよい。同様に、磁束供給体41の相対角度を強め角度とした場合に、例えば供給体磁極部49,76の幾つかは、ロータ磁極部33,66の極性と反対の極性が径方向において対向するようにしてもよい。なお、磁束供給体41の相対角度を弱め角度又は強め角度とした場合に、全てのロータ磁極部33,66の径方向の中央位置と全ての供給体磁極部49,76の径方向の中央位置とが完全に一致しなくてもよいことはいうまでもない。
【0095】
・上記各実施形態では、本発明を電気自動車やハイブリッド自動車の駆動源に用いられる回転電機1に具体化したが、これに限らず、例えば電動パワーステアリング装置等の他の装置の駆動源として用いてもよく、また、発電機として用いてもよい。
【0096】
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記磁束供給体は、前記ロータとの間に径方向に間隔を空けて配置されるものであって、前記補助磁石の一部は、前記磁束供給体が前記強め角度にある状態で、前記一対の埋込磁石における前記ロータ磁極部側と反対の極性の磁極と径方向において対向するように形成されたことを特徴とする回転電機。
【0097】
(ロ)前記磁束供給体は、前記ロータとの間に軸方向に間隔を空けて配置されるものであって、前記補助磁石の一部は、前記磁束供給体が前記強め角度にある状態で、前記一対の埋込磁石における前記ロータ磁極部側と反対の極性の磁極と軸方向において対向するように形成されたことを特徴とする回転電機。
【0098】
(ハ)前記補助磁石は、前記磁束供給体が前記強め角度にある状態で、前記ロータにおける前記一対の埋込磁石が設けられた周方向範囲よりも広い周方向範囲に亘って延在するように形成されたことを特徴とする回転電機。