特許第6131717号(P6131717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6131717
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   F24C1/00 370P
   F24C1/00 370B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-111280(P2013-111280)
(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-228264(P2014-228264A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 竜冬
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−190017(JP,A)
【文献】 特開2000−337635(JP,A)
【文献】 特開昭56−074533(JP,A)
【文献】 実開昭60−187818(JP,U)
【文献】 実開昭60−083808(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する調理室と、
空気を加熱する加熱手段およびこの加熱手段で加熱された空気を撹拌させる熱風ファンを備えた発熱室と、
前記調理室と前記発熱室とを連通する複数の通気孔が形成され、前記調理室と前記発熱室とを仕切る奥壁と、
前記熱風ファンを正逆回転可能に駆動させる複数の交流モータと、を備え、
前記調理室の奥壁に前記加熱された空気の吹出口を有する凸形状のエアリフレクションを左右対称に備え、前記エアリフレクションの前面部に前記吹出口が形成され、前記前面部が前記調理室の側壁側から中央へ向かって高さが次第に低くなるように前記奥壁に対して傾斜を有することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記複数の交流モータは正回転用交流モータと逆回転用交流モータからなり、
前記正回転用交流モータと前記逆回転用交流モータとを接続する動力伝達装置を備える
ことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記通気孔が左右対称に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記熱風ファンを直接駆動する一方の前記交流モータは、前記熱風ファンを間接的に駆動する他方の前記交流モータと接続する動力伝達装置を取付け可能な両軸モータであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などの被加熱物を熱風により加熱調理するオーブンレンジのような加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンベクションオーブンのような加熱調理器は、発熱室内に備えられた発熱部により加熱した空気をファンにより調理室へ供給し、調理室内に熱風を対流させて被加熱物を加熱している。しかし、ファンを駆動させるモータが一方向にしか回転せず、構造的に調理室内の各部において熱風の流れに差異が生じ、被加熱物に左右の加熱ムラが発生してしまうという課題があった。
【0003】
そこで従来は、ファンが一方向にしか回転しないものにあっては、調理室と発熱室との間に隔壁を設け、その隔壁に開口形成された調理室と発熱室とを連通する通気孔(パンチング)を調整することにより加熱ムラの低減を図るという提案がなされている(特許文献1)。
【0004】
また、調理室と発熱室とを仕切る隔壁に開口形成した熱風の吹出口の位置の調整や、ファンを正逆回転させる構成により、加熱ムラの低減を図るという提案もなされている(特許文献2,3,4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−27269号公報
【特許文献2】特開2004−61092号公報
【特許文献3】特開2003−207134号公報
【特許文献4】特開平9−126402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、ファンが一方向にしか回転しない加熱調理器では、空気の流れが一定のため、通気孔の調整だけでは限界があり、どうしても被加熱物を加熱しにくいポイントが生じていた。また、空気の流れを左右対称にする目的で、正逆回転が可能なモータを用いた加熱調理器では、被加熱物の加熱ムラに対しての改善効果がある程度は得られるものの、モータの配置部位が発熱部に非常に近く高温になるため、その耐久温度から単純に配置することができなかった。
【0007】
さらに、上述のような熱風の吹出口位置調整や、ファンを正逆回転させる構成では、調理時における加熱ムラの改善効果が十分であるとはいえず、特に加熱室よりも調理室のほうが大きい加熱調理器では、調理室の奥隅への熱風の供給が困難であるため、調理室の奥隅で加熱ムラが顕著に生じてしまう問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、モータの配置部位に制約を受けることなく、被加熱物の加熱ムラに対しての改善効果を得ることが可能な加熱調理器を提供することを第1の目的とする。
【0009】
また、調理室の奥隅に生じる部分的な加熱ムラを十分に改善することが可能な加熱調理器を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願請求項1に係る加熱調理器では、交流モータは回転方向の制御が不可能であるが、その交流モータを複数使用すれば、発熱室で空気を撹拌する熱風ファンを正逆回転させることができる。また、交流モータは直流モータよりも比較的動作保障温度が高いので、モータの配置部位に制約を受けることなく、被加熱物の加熱ムラに対しての改善効果を得ることができる。また、調理室の奥壁に具備したエアリフレクションが、いわば調理室の奥隅まで熱風を流すダクトとして機能するため、調理室の奥隅に生じる部分的な加熱ムラを十分に改善することが可能な加熱調理器を提供できる。また、発熱室から調理室へ供給する熱風に方向性を付与し、調理室の奥隅まで熱風を流すことができる。
【0011】
本願請求項2に係る加熱調理器では、交流モータは回転方向の制御が不可能であるが、熱風ファンを正回転させる正回転用交流モータと、熱風ファンを逆回転させる逆回転用交流モータをそれぞれ使用すれば、熱風ファンを正逆回転させることができる。また、動力伝達装置によって他方の交流モータの回転力を一方の交流モータに伝達することができ、一方の交流モータの回転軸に熱風ファンを取付け固定すれば、その熱風ファンを容易に正逆回転させることができる。
【0012】
本願請求項3に係る加熱調理器では、熱風ファンを正逆回転させるのに伴い、発熱室で発生した熱風が通気孔を通して調理室に左右対称に吹出される。そのため、調理室内で熱風を左右対称に循環させることができる。
【0013】
本願請求項4に係る加熱調理器では、一方の交流モータとして、両軸モータを構成する回転軸の一端に熱風ファンを直接取付け固定する一方で、その回転軸の他端に、他方の交流モータからの回転力を受ける動力伝達部材を取付けることができ、複数の交流モータを使用しながらも、コンパクトな構造で熱風ファンを正逆回転することが可能になる。
【0014】
風ファンの形状を工夫することで、熱風ファンが正回転した場合と逆回転した場合の何れであっても、加熱された空気を左右対称に循環させ、被加熱物の加熱ムラをより効果的に改善できる。
【0015】
熱室の形状を工夫することで、熱風ファンが正回転した場合と逆回転した場合の何れであっても、加熱された空気を左右対称に循環させ、被加熱物の加熱ムラをより効果的に改善できる。
【発明の効果】
【0016】
本願請求項1に係る加熱調理器によれば、モータの配置部位に制約を受けることなく、被加熱物の加熱ムラに対しての改善効果を得ることができる。また、調理室の奥隅に生じる部分的な加熱ムラを十分に改善することが可能な加熱調理器を提供できる。また、発熱室から供給する熱風に方向性を付与し、調理室の奥隅まで熱風を流すことができる。
【0017】
本願請求項2に係る加熱調理器によれば、熱風ファンを容易に正逆回転させることができる。
【0018】
本願請求項3に係る加熱調理器によれば、調理室内で熱風を左右対称に循環させることができる。
【0019】
本願請求項4に係る加熱調理器によれば、コンパクトな構造で熱風ファンを正逆回転することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施例における加熱調理器の前面斜視図である。
図2】同上、調理室の奥壁を取り外した発熱室を示す正面図である。
図3】同上、部分背面斜視図である。
図4】同上、熱風供給手段の断面斜視図である。
図5】同上、ファンの羽根の斜視図である。
図6】本発明の第2実施例における加熱調理器の前面斜視図である。
図7】同上、エアリフレクション、奥壁およびケーシングの分解斜視図である。
図8】同上、調理室の奥壁を取り外した発熱室を示す正面図である。
図9】同上、正逆回転機構を示す加熱調理器の部分背面斜視図である。
図10】発熱室から調理室への熱風の流れを示す説明図である。
図11】本発明の第3実施例における左側エアリフレクションの斜視図である。
図12】同上、左側エアリフレクションの底面図である。
図13】本発明の第4実施例におけるエアリフレクションの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明における加熱調理器の好ましい各実施例を説明する。なお、各実施例において、共通する箇所には共通する符号を付し、共通する部分の説明については重複を避けるため極力省略する。
【実施例1】
【0022】
図1図5は、本発明に係る加熱調理器の第1実施例を示すものである。各図において、1は加熱調理器の外郭をなす略矩形箱状の本体であり、本体1の内部には、食品などの被加熱物を収納するために、前面を開口した調理室2が配設される。調理室2を形成する周壁は、天井壁2aと、底壁2bと、左側壁2cと、右側壁2dと、奥壁2eとからなり、天井壁2aを上方に膨らませたドーム状とする一方で、天井壁2aを除く各壁2b〜2eを何れも平坦状として調理室2を形成している。ここでは図示しないが、本体1の前面には、調理室2の前面を閉じる開閉可能な扉が配設される。
【0023】
調理室2の後方には、熱風供給手段3を備える。この熱風供給手段3は、奥壁2eを共用としたケーシング4と、空気を加熱する加熱手段としての熱風ヒータ5と、調理室2内に加熱した空気を送り込んで循環させる熱風ファン6と、熱風ファン6を正方向或いは逆方向に回転させる熱風モータ7とにより構成され、ケーシング4の内部に配設された発熱室8には、熱風ヒータ5と熱風ファン6がそれぞれ配設される一方で、ケーシング4の外部には熱風モータ7が配設される。本実施例の熱風ファン6は、軸方向に取り入れた空気を、回転時の遠心力によって、軸方向と直角な放射方向に吐き出すいわゆる遠心ファンとして設けられており、管状の熱風ヒータ5は熱風ファン6の放射方向を取り囲んで配置される。熱風ヒータ5には、例えばシーズヒータ、マイカヒータ、石英管ヒータやハロゲンヒータなどを用いる。
【0024】
調理室2の奥壁2eには複数の円形の通気孔9が開口形成されており、この通気孔9によって、調理室2の内部と発熱室8の内部とが連通する構成となっている。複数の通気孔9は図1に示すとおり、熱風ファン6の軸方向中心に対向して配置される通気孔部9aと、この通気孔部9aを取り囲むように、熱風ファン6の放射方向に分散して配置される通気孔部9b,9c,9d,9e,9f,9g,9hとからなり、調理室2の正面側から見て左右対称に配置されているため、熱風ファン6の回転方向に拘らず調理室2に対称的に同じ熱風量を循環させて、調理室2内の温度を均一化させることができるようになっている。
【0025】
また、調理室2の左側壁2cと右側壁2dには、被加熱物を載置する皿(図示せず)を支持する支持部10が、上下2段で左右対称に配設されている。この皿は略角形で、調理室2に対して出し入れ可能に配設される。また、調理室2内に皿を上下2段に配置した状態では、皿により区画されてはいるものの、互いに連通する上中下3段の各空間が調理室2内に形成され、これらの各空間に熱風を送り出す通気孔9が、奥壁2eにそれぞれ配置される。これにより、調理室2内に皿を配置した状態であっても、その皿により区画された複数の空間を通して、調理室2内で熱風を対流させることができ、被加熱物の加熱ムラを低減することができる。この支持部10は上下2段に限られず、1段や3段以上であってもよい。
【0026】
本実施例では、被加熱物の加熱を行なう際に、熱風ヒータ5を通電するとその熱風ヒータ5が発熱すると共に、熱風モータ7を通電すると熱風ファン6が回転駆動し、調理室2内の空気が通気孔部9aを通して熱風ファン6に取り込まれ、熱風ファン6の放射方向に吹き出した空気が発熱した熱風ヒータ5に当たり、発熱室8の内部で熱風が生成される。その熱風が各通気孔部9b,9c,9d,9e,9f,9g,9hから調理室2の内部に送り込まれ、調理室2内で熱風が循環することで、調理室2内の被加熱物を加熱する構成となっている。
【0027】
被加熱物を入れる調理室2に均一化した熱風を送り込んで、熱風を調理室2内に均一に循環させるために、ケーシング4の外部には、熱風ファン6を正方向に回転駆動させる正回転用モータ11と、熱風ファン6を逆方向に回転駆動させる逆回転用モータ12が、それぞれ配設される。熱風モータ7を構成する正回転用モータ11および逆回転用モータ12は、何れもケーシング4の後方に設置され、熱風ヒータ5の近傍に配置されることを考慮して、比較的動作保障温度の高い交流モータを使用している。
【0028】
正回転用モータ11は本体1の背面中央に取り付けられ、その回転軸13はケーシング4の内部に突出して、熱風ファン6の中心部に直接接続される。これにより、正回転用モータ11を駆動すると、熱風ファン6を直接正回転させることができる。
【0029】
一方、逆回転用モータ12は加熱調理器の正面視において、正回転用モータ11の右上方に取り付けられている。正回転用モータ11の回転軸13と逆回転用モータ12の回転軸14には、それぞれプーリー15が取付け固定され、両プーリー15は動力伝達装置16を介して接続される。これにより、熱風ファン6を逆回転させる場合には、正回転用モータ11の駆動を停止させる一方で、逆回転用モータ12を駆動させ、逆回転用モータ12からの動力を、動力伝達装置16を介して回転軸13に伝達することで、その回転軸13に接続した熱風ファン6を逆回転させることができる。
【0030】
両プーリー15は、逆回転用モータ12で発生する回転軸14からの駆動力を、動力伝達装置16を介してロスなく正回転用モータ11の回転軸13に伝達するために、同一平面上に配設することが望ましい。
【0031】
本実施例では動力伝達装置16として、2個のプーリー15の間に懸架される周回可能な無端状のベルトを用いているが、回転軸13,14の間に介在するギヤなどを用いることもできる。また、逆回転用モータ12は動力伝達装置16を介して正回転用モータ11に接続可能な位置であれば、本体1のどの位置に取り付けてもよい。
【0032】
図5は、熱風ファン6単体の構成を示したものである。熱風ファン6は、正回転させる場合と逆回転させる場合で、熱風の吹き方や風量に顕著な差がなく、熱風の吹出し方向が正反対で風量が同様となる形状とすることが要求される。本実施例の熱風ファン6は、ここでは図示しない正回転用モータ11の回転軸13を中心に取付けた円形板状をなすロータ部17に、二箇所の折曲げ部を有する板部18を円環状に均等な間隔に複数取付けた遠心ファンである。各々の板部18は同形状であって、熱風ファン6の軸方向に沿って垂直に起立した羽19が設けられており、この羽19は直線状で、熱風ファン6の中心に対して対称に、つまり熱風ファン6の中心と羽19の熱風ファン6中心側の端とを通る直線上に配置される。このような熱風ファン6の形状によって、正回転と逆回転で風を切る量が同じになり、調理室2の内壁面から対称的に同じ熱風量を循環させることが可能になる。
【0033】
なお、熱風ファン6は、正回転させる場合と逆回転させる場合で、熱風の吹き方や風量に顕著な差がなく、熱風の吹出し方向が正反対で風量が同等となる形状であれば、他の形状のファンを使用することも可能であり、シロッコファン、ラジアルファン、ターボファンなどを用いてもよい。
【0034】
次に、上記構成の加熱調理器についてその作用を説明する。予め調理室2内に被加熱物を入れた状態で扉を閉め、キーにより熱風で調理を行なうような調理メニューを選択操作した後に、調理開始を指示入力すると、熱風ファン6が所望の回転数で一定時間毎に正方向または逆方向に回転方向を切替えるようなモータ制御信号が、図示しない制御回路で生成され、このモータ制御信号に基づいてモータ7への入力(電力)が制御される。
【0035】
本実施例では、正回転用モータ11には電力を供給し、逆回転用モータ12には電力の供給を遮断して、正回転用モータ11だけを駆動させることで、正回転用モータ11で発生した回転力を、その回転軸13から熱風ファン6に直接伝達して、当該熱風ファン6を正回転させる。また、逆回転用モータ12には電力を供給し、正回転用モータ11には電力の供給を遮断して、逆回転用モータ12だけを駆動させることで、逆回転用モータ12で発生した回転力を、その回転軸14から動力伝達装置16を介して回転軸13に伝達して、当該熱風ファン6を逆回転させることができる。
【0036】
この場合、交流モータは一方向にしか回転せず、回転方向の制御が不可能であるが、その交流モータを複数使用して、熱風ファン6を正回転させる正回転用モータ11と、熱風ファン6を逆回転させる逆回転用モータ12で構成すれば、発熱室8で空気を撹拌する熱風ファン6を正方向だけでなく、逆方向にも回転させることができる。また、交流モータは直流モータよりも比較的動作保障温度が高いので、モータ7の配置部位に制約を受けないという効果もある。
【0037】
熱風ファン6が正回転または逆回転すると、調理室2の内部から中央の通気孔部9aを通してケーシング4内の発熱室8に吸引された空気が、熱風ファン6の遠心力によって、羽19の回転方向の面に押されながら放射方向に風が吹き出し、熱風ファン7の略全周を取り囲む発熱した熱風ヒータ5に万遍なく当たって、調理室2と隔離された発熱室8で熱風が生成される。生成された熱風は、図1に示すように奥壁2eに開口した各通気孔部9b,9c,9d,9e,9f,9g,9hを通して、発熱室8から調理室2の内部に送り込まれる。これにより、通気孔9を介して調理室2の内外で熱風が循環して、調理室2内の被加熱物が加熱される。
【0038】
各通気孔部9b〜9hは、図1に示すような配置、形状、大きさに限られず、調理室2へ熱風を均等に供給するものであれば、様々な配置、形状、大きさが可能である。調理室2から空気を吸引する通気孔部9aも同様に、様々な配置、形状、大きさが可能である。
【0039】
上述した一連の動作で、熱風ファン6を正回転させた場合と、逆回転させた場合では、熱風ファン6の外周部で、空気(熱風)が押し付けられる羽19の回転方向の面が正反対になるが、本実施例では、直線状の羽19を熱風ファン6の中心に対して対称に配置しているので、熱風ファン6を正逆回転させたときに、熱風ファン6から熱風が吹出す方向は、羽19に対して正反対となり、それぞれの場合の風量は偏りなく同じになる。
【0040】
さらに、熱風ファン6の放射方向全周を取り囲むようにして熱風ヒータ5を配設し、その熱風ヒータ5に対向して、調理室2の内壁面をなす奥壁2eに通気孔9を開口形成すると共に、ケーシング4の内面に沿って、熱風が通気孔9に導かれるように、ケーシング4の形状を工夫することで、熱風ファン6の回転方向が切り替わる毎に、熱風の流れる方向が正反対に変わりつつも、熱風の風量が局部的に低下することなく、熱風ヒータ5から通気孔9を介して調理室2の内壁面から対称的に同じ熱風量を循環させることが可能になる。このように、熱風ファン6や、ケーシング4や、熱風ヒータ5の形状だけでなく、調理室2の奥壁2eに形成する通気孔9の位置を、本実施例のように左右対称にすることで、加熱した空気を左右対称に循環させることが可能になる。
【0041】
また、通気孔9から吹出す熱風は、ドーム状に形成された天井壁2aから左側壁2cや右側壁2dに沿って、調理室2内全体を包み込むように対流するので、この点でも調理室2内の温度分布を、より効果的に均一化させることができる。
【0042】
以上のように上記実施例では、食品などの被加熱物を収容する調理室2と、空気を加熱する加熱手段としての熱風ヒータ5の他に、この熱風ヒータ5で加熱された空気を撹拌させて、調理室2内に熱風を送る熱風ファン6を備えた発熱室8と、調理室2と発熱室8とを連通する複数の通気孔9が形成され、その調理室2と発熱室8とを仕切る奥壁2eと、熱風ファン6を正逆回転可能に駆動させる複数の交流モータとしての正回転用モータ11および逆回転用モータ12と、を備えている。
【0043】
この場合、交流モータでは不可能な回転方向の制御が、交流モータを2つ使用することにより発熱室8内で空気を撹拌する熱風ファン6を正逆回転させることが可能になる。また、交流モータは直流モータよりも比較的動作保障温度が高いので、モータの配置部位に制約を受けることなく、被加熱物の加熱ムラに対しての改善効果を得ることができる。
【0044】
また本実施例において、熱風ファン6を回転させる熱風モータ7は、熱風ファン6を正方向に回転駆動させる正回転用モータ11と、熱風ファン6を逆方向に回転駆動させる逆回転用モータ12からなり、両モータ11,12は互いの動力を伝達する例えばベルトなどの動力伝達装置16を介して接続されている。
【0045】
この場合、交流モータは回転方向の制御が不可能であるが、熱風ファン6を正回転させる交流モータと、熱風ファン6を逆回転させる交流モータをそれぞれ使用すれば、熱風ファン6を正逆回転させることができる。また、動力伝達装置16によって他方の交流モータである逆回転用モータ12の回転力を、一方の交流モータである正回転用モータ11に伝達することができ、正回転用モータ11の回転軸13に熱風ファン6を取付け固定すれば、その熱風ファン6を容易に正逆回転させることができる。
【0046】
また本実施例において、複数の通気孔9を構成する通気孔部9b〜9hは、調理室2の内壁面である奥壁2eに左右対称に形成されている。
【0047】
この場合、熱風ファン6を正逆回転させるのに伴い、発熱室8で発生した熱風が通気孔9を通して調理室2に左右対称に吹出される。そのため、調理室2内で熱風を左右対称に循環させることができる。
【0048】
また本実施例において、熱風ファン6を直接駆動する正回転用モータ11は、熱風ファン6を間接的に駆動する逆回転用モータ12と接続する動力伝達装置16を取付けできるように、モータ本体の両側から回転軸13が突出した両軸モータを用いている。
【0049】
この場合、一方の交流モータとして、両軸モータを構成する正回転用モータ11の回転軸13の一端に熱風ファン6を直接取付け固定する一方で、その回転軸13の他端に、他方の交流モータからの回転力を受ける動力伝達装置16を取付けることができ、複数の交流モータとして正回転用モータ11と逆回転用モータ12を使用しながらも、コンパクトな構造で熱風ファン6を正逆回転することが可能になる。
【0050】
なお、他方の交流モータである逆回転用モータ12は、動力伝達装置16と接続する回転軸14を有する片軸モータでよい。
【0051】
また本実施例の熱風ファン6は、正回転する場合と逆回転する場合に、調理室2に加熱された空気を左右対称に循環させることが可能な形状を有している。
【0052】
この場合、熱風ファン6の形状を工夫することで、熱風ファン6が正回転した場合と逆回転した場合の何れであっても、調理室2に加熱された空気を左右対称に循環させ、被加熱物の加熱ムラをより効果的に改善できる。
【0053】
また本実施例の発熱室8は、熱風ファン6が正回転または逆回転する場合に、加熱された空気を左右対称に循環させることが可能な形状を有している。
【0054】
この場合、発熱室8の形状を工夫することで、熱風ファン6が正回転した場合と逆回転した場合の何れであっても、加熱された空気を左右対称に循環させ、被加熱物の加熱ムラ
をより効果的に改善できる。
【実施例2】
【0055】
図6図10は、本発明に係る加熱調理器の第2実施例を示すものである。本実施例の加熱調理器は、食品などの被加熱物を入れる調理室2と、空気を加熱する加熱手段としての熱風ヒータ5の他に、熱風ヒータ5で加熱された空気を調理室2内に送る熱風ファン6を備えた発熱室8と、熱風ファン6を正逆回転可能とする正逆回転機構20とを備えている。この正逆回転機構20は、第1実施例で説明した正回転用モータ11および逆回転用モータ12からなる熱風モータ7や、正回転用モータ11の回転軸13と逆回転用モータ12の回転軸14にそれぞれ取付け固定されるプーリー15や、2個のプーリー15の間に懸架される動力伝達装置16により構成されるが、これに限定されるものではない。
【0056】
また、オーブン後板を構成する調理室2の奥壁2eには、第1実施例と同様に、熱風ファン6の軸方向中心に対向して配置される通気孔部9aと、この通気孔部9aを取り囲むように、熱風ファン6の放射方向に分散して配置される通気孔部9b,9c,9d,9e,9f,9g,9hとからなる通気孔9が形成されている。
【0057】
調理室2の左側壁2cと右側壁2dには、被加熱物を載置する略角形の皿(図示せず)を支持する支持部10として、上段の皿を支持する上段支持部25と、下段の皿を支持する下段支持部26が左右対称に配設される。上段支持部25は、調理室2の全高の約2/3の高さに配設されており、下段支持部26は、調理室2の全高の約1/3の高さに配設されている。両支持部25,26は前後方向に長い凸形状であって、上面27が水平となっている。
【0058】
調理室2内に皿を上下2段に配置した状態で、調理室2の奥壁2eには、上段の皿と下段の皿との間に位置して、矩形の開口部21が左右対称に形成されている。これらの開口部21は、通気孔部9b,9c,9d,9e,9f,9g,9hと同様に、発熱室8の内部で生成された熱風を調理室2側に送り出すものである。また、それぞれの開口部21を覆うように、調理室2の奥壁2eには、調理室2の内側から凸形状の部材からなるエアリフレクション22が、左右一対で取付け固定される。エアリフレクション22の前面部23には、複数の円形の吹出口24が形成されていると共に、エアリフレクション22の内部には、閉鎖された空間が形成されており、発熱室8から開口部21に勢いよく流入した熱風は、エアリフレクション22の内部空間でその方向性が失われ、吹出口24から略真
っ直ぐに整流された状態で、調理室2の内部に吹き出される。この熱風は、図10の白抜き矢印Sで示すように発熱室8から調理室2へ流れる構成となっている。
【0059】
本実施例では、特に調理室2の左右両側部における加熱分布を改善させるために、調理室2の左側壁2cと右側壁2dに近いエアリフレクション22の一側寄りに、吹出口24を集中して形成しているが、吹出口24や通気孔9の数や形成位置は、本実施例に限らず適宜選択可能である。その他の構成は、第1実施例で説明した通りである。
【0060】
本実施例では、熱風ファン6が正回転または逆回転して、調理室2の内部から通気孔部9aを通してケーシング4内の加熱室8に空気が吸引されると、その空気は熱風ファン6の遠心力によって放射方向に吹き出し、熱風ファン6の略全周を取り囲む発熱した熱風ヒータ5に万遍なく当たって、調理室2と隔離された加熱室8で熱風が生成される。熱風ヒータ5に当った熱風は、通気孔部9b,9c,9d,9e,9f,9g,9hを通して、皿で区画された調理室2内の各空間に流れ込み、調理室2内を循環して、調理室2内の被加熱物を加熱し、再び通気孔部9aに吸い込まれてゆく。
【0061】
また、こうした熱風の流れに加えて、開口部21からエアリフレクション22に勢い良く流れ込んだ熱風が、閉鎖されたエアリフレクション22内の空間で拡散して、その勢いが次第に緩和される。つまり、閉鎖空間であるエアリフレクション22内に吹き込まれる熱風は、熱風ファン6による周回方向への方向性が失われ、吹出口24から略真っ直ぐに整流された状態で、調理室2内部の皿で区画された中段の空間に吹き出される。このときエアリフレクション22は、調理室2の奥隅まで熱風を流すダクトとして機能するので、調理室2の奥隅に生じる部分的な加熱ムラを十分に改善しながら、熱風を調理室2内に循環させることができる。しかも、左右一対に設けたエアリフレクション22の前面部23には吹出口24が開口形成されており、発熱室8で発生した熱風が吹出口24を通して、調理室2内に整流された状態で左右対称に吹出される。そのため、調理室2内で熱風を左右対称に循環させ、調理室2内における被加熱物の加熱ムラを低減することができる。
【0062】
以上のように上記実施例では、食品などの被加熱物を収容する調理室2と、発熱ヒータ5およびこの発熱ヒータ5で加熱された空気を撹拌させる熱風ファン6を備えた発熱室8と、熱風ファン6を正逆回転可能とする正逆回転機構20とを備え、調理室2内に被加熱物を載置する上下二段の皿を配設した加熱調理器において、上段の皿と下段の皿との間に位置して、調理室2の奥壁2eに、加熱された空気の吹出口24を有する凸形状のエアリフレクション22を具備している。
【0063】
この場合、加熱された空気を撹拌する熱風ファン6が正逆回転することに加えて、調理室2の奥壁2eに具備したエアリフレクション22が、いわば調理室2の奥隅まで熱風を流すダクトとして機能するため、調理室2の奥隅に生じる部分的な加熱ムラを十分に改善することが可能な加熱調理器を提供できる。
【0064】
また本実施例のエアリフレクション22は、調理室2の奥壁2eに左右対称に配設されている。
【0065】
この場合、発熱室8で生成した熱風がエアリフレクション22に形成された吹出口24を通して調理室2に左右対称に吹出される。そのため、調理室2内で熱風を左右対称に循環させることができる。
【実施例3】
【0066】
図11および図12は、本発明に係る加熱調理器の第3実施例を示すものである。奥壁2eとエアリフレクション22以外の構成については第2実施例と同様である。
【0067】
本実施例において、調理室2の奥壁2eの中央には、略矩形状の凹部28が形成され、奥壁2eの左右両側に配置したエアリフレクション22は、その中央側が凹部28にまで延設して奥壁2eに接しており、エアリフレクション22は、開口部21を有する奥壁2eの調理室2側の面を基端として、そこから吹出口24を有する前面部23までの凸部の高さが、左右両側よりも中央側で低くなっている。
【0068】
本実施例においては、図12に示すとおりエアリフレクション22の凸部の最大高さ、すなわち最低接地部29から最高部30までの高さhが5mm以上となっている。
【0069】
本実施例では、エアリフレクション22の凸部の中央側の高さが低くなっているが、高さが5mm以上であれば、外側を高くしたり、全体の高さを一定にしてもよい。
【0070】
このように、エアリフレクション22の凸部の高さhを5mm以上に高くすることで、エアリフレクション22の内部空間の容積が増大し、熱風ファン6で撹拌された熱風がエアリフレクション22の内部空間で整流される。熱風が整流されることにより、エアリフレクション22の前面部23に形成されて複数の円形の吹出口24から調理室2へ熱風が効率よく供給される。
【0071】
以上のように本実施例では、エアリフレクション22の最低接地部29から最高部30までの高さhが5mm以上となっている。
【0072】
この場合、熱風ファン6で撹拌された熱風をエアリフレクション22の内部空間で十分に整流することが可能になり、調理室2への熱風供給の効率を上昇させて、発熱室8から調理室2へ供給する熱風の風量を多くすることができる。
【実施例4】
【0073】
図13は、本発明に係る加熱調理器の第4実施例を示すものである。エアリフレクション22以外の構成については第3実施例と同様である。
【0074】
本実施例のエアリフレクション22の前面部23には複数の円形の吹出口24が形成されており、この吹出口24から調理室2へ熱風が供給される。
【0075】
前面部23は、調理室2の側壁側から中央へ向かって高さが次第に低くなっており、奥壁2eの調理室2側の面に対して傾斜している。図13では、奥壁2eとエアリフレクション22の前面部23とのなす角θを示している。これにより、発熱室8から調理室2内に供給される熱風に方向性を付与し、被加熱物の加熱ムラが生じやすい調理室2の奥隅など所望の位置に熱風を流すことができる。
【0076】
また、調理室2の大きさや形状により、エアリフレクション22の前面部23の傾斜の方向や角度を調整することにより、調理室2への熱風の流れを適切に調整することができる。
【0077】
さらに、前面部23に形成された吹出口24の数、大きさ、位置を調整することにより熱風の流れを細かく調整することができる。
【0078】
以上のように本実施例では、エアリフレクション22の前面部23が奥壁2eに対して傾斜を有している。
【0079】
この場合、発熱室8から調理室2へ供給する熱風に方向性を付与し、調理室2の奥隅まで熱風を流すことができる。
【0080】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、第2実施例〜第4実施例では、一方向にのみ回転可能な正回転用モータ11と逆回転用モータ12をそれぞれ設けるのではなく、正逆回転が可能な単独の直流モータを、正逆回転機構20として用いてもよい。
【符号の説明】
【0081】
2 調理室
2e 奥壁
6 熱風ファン
8 発熱室
9 通気孔
11 正回転用モータ(一方の交流モータ)
12 逆回転用モータ(他方の交流モータ)
16 動力伝達装置
22 エアリフレクション
23 前面部
24 吹出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13