【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、底部に油溜まり部(17)が設けられたケーシング(11)と、該ケーシング(11)内に収容されたシリンダ(31)と、該シリンダ(31)内に収容されて該シリンダ(31)とともに圧縮室(45)を形成するピストン(40)と、該ピストン(40)を貫通して上下方向に延び且つ該ピストン(40)を偏心運動させるクランク軸(20)と、該ピストン(40)よりも上方に配設されて該クランク軸(20)を回転駆動するモータ(12)と、該モータ(12)と該ピストン(40)との間に配設されて該クランク軸(20)を回転自在に支持する主軸受(34)とを備えた回転式圧縮機を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明は、前記モータ(12)のロータ(14)上面には、前記クランク軸(20)の軸心に対して偏心する上側バランスウエイト(15)が設けられ、
前記モータ(12)のロータ(14)下面には、前記上側バランスウエイト(15)の偏心方向と反対方向に下側バランスウエイト(16)が設けられ、
前記クランク軸(20)には、
下端部が前記油溜まり部(17)に開口するように上下方向に延び、該油溜まり部(17)から吸い上げられた油が流通するメイン通路孔(21)と、
上流端が前記メイン通路孔(21)の通路途中に開口し、下流端が前記クランク軸(20)の軸方向から見て前記下側バランスウエイト(16)が設けられた側で且つ前記主軸受(34)の内周面を臨む位置に開口する給油孔(22)と、
上流端が前記メイン通路孔(21)における前記給油孔(22)の上流端よりも上方位置に開口し、下流端が該給油孔(22)から周方向に離れた位置で且つ前記主軸受(34)と前記モータ(12)のロータ(14)との間の空間に開口するガス抜き孔(23)とが形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明では、モータ(12)のロータ(14)上面の上側バランスウエイト(15)と、ロータ(14)下面の下側バランスウエイト(16)とは、偏心方向が反対方向となるように設けられている。クランク軸(20)には、油溜まり部(17)から吸い上げられた油が流通するメイン通路孔(21)と、給油孔(22)と、ガス抜き孔(23)とが形成される。給油孔(22)の上流端は、メイン通路孔(21)の通路途中に開口し、下流端は、クランク軸(20)の軸方向から見て下側バランスウエイト(16)が設けられた側で且つ主軸受(34)の内周面を臨む位置に開口している。ガス抜き孔(23)の上流端は、メイン通路孔(21)における給油孔(22)の上流端よりも上方位置に開口し、下流端は、主軸受(34)とモータ(12)のロータ(14)との間の空間に開口している。ガス抜き孔(23)と給油孔(22)とは、周方向に離れた位置に開口している。
【0013】
このような構成とすれば、クランク軸(20)の片当たり時に主軸受(34)との隙間が大きくなる側、つまり、下側バランスウエイト(16)が設けられた側に給油孔(22)の下流端を開口させているから、クランク軸(20)と主軸受(34)との摺動面(28)に対して十分に油を供給することができる。その結果、摺動面(28)に対して確実に油膜を形成することができ、クランク軸(20)と主軸受(34)との焼き付きを抑えることができる。
【0014】
また、油ポンプやメイン通路孔(21)を通過する途中で発泡した冷媒ガスは、ガス抜き孔(23)を通って主軸受(34)とロータ(14)との間の空間に排出されるので、冷媒ガスが給油孔(22)から排出されないようにして摺動面(28)の潤滑不良を抑え、摺動面(28)を確実に潤滑できる。
【0015】
また、メイン通路孔(21)における給油孔(22)よりも上方位置にガス抜き孔(23)を形成しているので、クランク軸(20)を高速回転させた場合でも、ガス抜き孔(23)から油が排出されてしまうのを抑え、油上がりを低減させることができる。
【0016】
また、ガス抜き孔(23)の下流端と給油孔(22)の下流端とを周方向に離れた位置に開口させているので、給油孔(22)から摺動面(28)に供給された後で主軸受(34)の上部側から漏れ出した油が、ガス抜き孔(23)から排出された冷媒ガスによって吹き飛ばされてしまうことがない。これにより、油がミスト状となって油上がりが増大してしまうのを抑えることができる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、
前記ガス抜き孔(23)の下流端は、前記クランク軸(20)の軸方向から見て前記上側バランスウエイト(15)が設けられた側に開口していることを特徴とするものである。
【0018】
第2の発明では、クランク軸(20)の軸方向から見て上側バランスウエイト(15)が設けられた側には、ガス抜き孔(23)の下流端が開口している。
【0019】
このような構成とすれば、ガス抜き孔(23)の下流端を、クランク軸(20)の軸方向から見て上側バランスウエイト(15)が設けられた側に開口させているので、ガス抜き孔(23)の下流端と給油孔(22)の下流端とが周方向の反対側に開口することとなり、油上がりが増大するのをより確実に抑えることができる。
【0020】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記ガス抜き孔(23)は、前記メイン通路孔(21)の上端部から上方に延びる縦孔(23a)と、該縦孔(23a)に連続して径方向に延びて前記主軸受(34)と前記モータ(12)のロータ(14)との間の空間に開口する横孔(23b)とを有し、
前記縦孔(23a)は、前記横孔(23b)よりも小径に形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
第3の発明では、ガス抜き孔(23)は、メイン通路孔(21)の上端部から上方に延びる縦孔(23a)と、縦孔(23a)に連続して径方向に延びて主軸受(34)とモータ(12)のロータ(14)との間の空間に開口する横孔(23b)とを有する。縦孔(23a)の孔径は、横孔(23b)の孔径よりも小径となっている。
【0022】
このような構成とすれば、メイン通路孔(21)に繋がる縦孔(23a)の孔径が比較的小さく形成されているので、クランク軸(20)を高速回転させた場合でも、メイン通路孔(21)を流れる油が、ガス抜き孔(23)に向かって入り込みにくくなっている。一方、縦孔(23a)に連続する横孔(23b)の孔径は、縦孔(23a)の孔径よりも大きいので、ガス抜き孔(23)を通過する冷媒ガスの圧力損失を低減することができる。
【0023】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記クランク軸(20)と前記主軸受(34)との摺動面(28)は、該クランク軸(20)の外周面及び該主軸受(34)の内周面のうち少なくとも一方が窪むことで形成されたヌスミ部(27)を挟んで、上側摺動面(28a)と下側摺動面(28b)とに区画され、
前記給油孔(22)の下流端は、前記上側摺動面(28a)を臨む位置に開口していることを特徴とするものである。
【0024】
第4の発明では、クランク軸(20)と主軸受(34)との摺動面(28)は、ヌスミ部(27)を挟んで上側摺動面(28a)と下側摺動面(28b)とに区画される。そして、給油孔(22)の下流端が上側摺動面(28a)を臨む位置に開口しているので、主軸受(34)の上部寄りの位置に供給された油が流下することで、摺動面(28)全体に確実に油膜を形成することができる。
【0025】
第5の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記クランク軸(20)と前記主軸受(34)との摺動面(28)は、該クランク軸(20)の外周面及び該主軸受(34)の内周面のうち少なくとも一方が窪むことで形成されたヌスミ部(27)を挟んで、上側摺動面(28a)と下側摺動面(28b)とに区画され、
前記給油孔(22)の下流端は、前記主軸受(34)の内周面における前記上側摺動面(28a)と前記下側摺動面(28b)との間の面を臨む位置に開口していることを特徴とするものである。
【0026】
第5の発明では、給油孔(22)の下流端が主軸受(34)の内周面における上側摺動面(28a)と下側摺動面(28b)との間の面を臨む位置に開口しているので、主軸受(34)の上部側から油が漏れ出すのを抑えつつ、摺動面(28)に油膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、クランク軸(20)の片当たり時に主軸受(34)との隙間が大きくなる側、つまり、下側バランスウエイト(16)が設けられた側に給油孔(22)の下流端を開口させているから、クランク軸(20)と主軸受(34)との摺動面(28)に対して十分に油を供給することができる。その結果、摺動面(28)に対して確実に油膜を形成することができ、クランク軸(20)と主軸受(34)との焼き付きを抑えることができる。
【0028】
また、油ポンプやメイン通路孔(21)を通過する途中で発泡した冷媒ガスは、ガス抜き孔(23)を通って主軸受(34)とロータ(14)との間の空間に排出されるので、冷媒ガスが給油孔(22)から排出されないようにして摺動面(28)の潤滑不良を抑え、摺動面(28)を確実に潤滑できる。
【0029】
また、メイン通路孔(21)における給油孔(22)よりも上方位置にガス抜き孔(23)を形成しているので、クランク軸(20)を高速回転させた場合でも、ガス抜き孔(23)から油が排出されてしまうのを抑え、油上がりを低減させることができる。
【0030】
また、ガス抜き孔(23)の下流端と給油孔(22)の下流端とを周方向に離れた位置に開口させているので、給油孔(22)から摺動面(28)に供給された後で主軸受(34)の上部側から漏れ出した油が、ガス抜き孔(23)から排出された冷媒ガスによって吹き飛ばされてしまうことがない。これにより、油がミスト状となって油上がりが増大してしまうのを抑えることができる。